(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057101
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】変換テーブル作成方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
G01M17/007 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035695
(22)【出願日】2024-03-08
(62)【分割の表示】P 2021081566の分割
【原出願日】2021-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】琴尾 浩介
(72)【発明者】
【氏名】手島 崇
(72)【発明者】
【氏名】西宮 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 淳司
(72)【発明者】
【氏名】折井 大祐
(72)【発明者】
【氏名】古池 裕
(72)【発明者】
【氏名】神山 泰
(57)【要約】
【課題】操舵角変換テーブルを高精度に作成する変換テーブル作成方法を得る。
【解決手段】シャーシダイナモメータ1Bが用いる操舵角変換テーブルT1を作成する変換テーブル作成方法は、ハンドル用エンコーダ5、ターンテーブル用エンコーダ8及び変換テーブル作成部18を含む変換テーブル作成準備状態を設定し、複数種のハンドル角度に対応する複数種のタイヤ旋回角度を測定している。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回角度測定装置を用いて所定の車両における操舵角変換テーブルを作成する変換テーブル作成方法であって、
前記操舵角変換テーブルは複数種の角度ペア情報を有し、前記複数種の角度ペア情報は、複数種のハンドル角度に対応する形式で複数種のタイヤ旋回角度が示された情報であり、
前記所定の車両には、ステアリング操作時におけるハンドル角度を検出し、検出したハンドル角度を示すハンドル角度情報を得るハンドル用エンコーダが搭載され、
前記旋回角度測定装置は載置したタイヤのタイヤ旋回角度を計測して、タイヤ旋回角度を示すタイヤ旋回角度測定情報を得る旋回角度用エンコーダを有し、
(a) 前記旋回角度測定装置上に前記所定の車両のタイヤを配置するステップと、
(b) 前記ハンドル用エンコーダから前記ハンドル角度情報を受け、かつ、前記旋回角度用エンコーダから前記タイヤ旋回角度測定情報を受けるテーブル作成準備状態を設定するステップと、
(c) 前記所定の車両におけるステアリング操作によりハンドル角度を設定するステップと、
(d) 前記ステップ(c)のハンドル角度設定状態時における前記所定の車両のタイヤ旋回角度を前記旋回角度測定装置に計測させるステップとを備え、
前記ステップ(c)の実行後に前記ハンドル用エンコーダから前記ハンドル角度情報が得られ、前記ステップ(d)の実行後に前記旋回角度用エンコーダから前記タイヤ旋回角度測定情報が得られ、
(e) 前記ハンドル角度情報が示すハンドル角度と前記タイヤ旋回角度測定情報が示すタイヤ旋回角度との組合せを、前記複数種の角度ペア情報の1つとして記録するステップをさらに備え、
前記ステップ(c)で前記複数種のハンドル角度の全てが設定されるまで、前記ステップ(c)~(e)が繰り返し実行される、
変換テーブル作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は所定の車両における操舵角変換テーブルを作成する変換テーブル作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シャーシダイナモメータは、従来、車両(自動車)の走行に関する試験を行う際に用いられており、主要構成要素としてローラ装置を含んでいる。また、シャーシダイナモメータは、当該試験を行う際に、ローラ装置上に配置した車両を固定する車両固定機構(車両固定手段)をさらに有している。従来のシャーシダイナモメータとして、例えば、特許文献1に開示されたシャーシダイナモメータがある。
【0003】
特許文献1では、車両固定機構として、車両に対する試験の際に、車両の前後方向から車両固縛ロープを用いて、ローラ装置上に配置された車両を固定するロープ固縛構造が開示されている。
【0004】
また、ロープ固縛構造に代わる車両固定機構として、例えば、特許文献2に専用の車両固定構造が開示されている。
【0005】
図22及び
図23は特許文献1で代表される従来のシャーシダイナモメータ101を模式的に示す斜視図である。
図22は車両60の固定前の構造を示し、
図23は車両60の固定後の構造を示している。
図22及び
図23それぞれにXYZ直交座標系を示している。
【0006】
床面80に設けられた4つの開口部85に対応して4つのローラ装置102が設けられる。4つのローラ装置102はそれぞれローラ対120及びローラ支持機構122を有している。ローラ支持機構122は、ローラ対120における2つのローラが回転動作可能になるように、ローラ対120を支持している。なお、ローラ対120に代えて単体のローラを用いても良い。
【0007】
また、後方(-Y方向)側のローラ装置102はさらに支持基台124及び支持基台124上に設けられ、Y方向に延在する移動用レール123を有している。支持基台124は、ローラ支持機構122が移動用レール123に沿ってY方向に移動可能にローラ支持機構122を支持する。
【0008】
4つのローラ装置102それぞれにおいて、対応する開口部85からローラ対120の頂部が部分的に床面80上に露出している。また、4組のローラ対120は車両60の前輪及び後輪に対応する位置に配置されている。
【0009】
床面80上において、4つのローラ装置102の前方(+Y方向)及び後方(-Y方向)に、総計4本の車両固定用ポール103が設置されている。
【0010】
さらに、床面80上において、4つのローラ装置102の中央部前方に、エンジン冷却ファン106が設置されている。
【0011】
図23に示すように、4つのローラ装置102それぞれのローラ対120上に車両60の4つのタイヤ62が載置される。4つのタイヤ62はそれぞれ対応するローラ対120を構成する2つのローラ上に載置される。
【0012】
そして、車両固縛ロープ104を用いて車両60の前方が2つの車両固定用ポール103に対し固定される。同様に、車両固縛ロープ104を用いて車両60の後方が2つの車両固定用ポール103(
図23では図示せず)に対し固定される。
【0013】
また、
図23に示すように、一端が車両60の後方部に連結される排ガスホース107がさらに設けられる。排ガスホース107は、一端が入力口となり他端が出力口となり、車両60から排出される排気ガスを入力口(一端)で受け、出力口(他端)から排気ガスを外部に出力している。
【0014】
なお、
図23では、説明の都合上、床面80下の構造、後方の2つの車両固定用ポール103、前方のエンジン冷却ファン106の図示を省略している。
【0015】
シャーシダイナモメータ101の上述した車両固定機構によって、車両60が固定された後、車両60のステアリング操作(ハンドル操作)に伴う種々の試験を行うことができる。
【0016】
車両60のステアリング操作に伴う種々の試験を行うには、タイヤ62の旋回動作に適合するようにローラ120を旋回させるローラ旋回動作を行う必要がある。すなわち、シャーシダイナモメータ101はローラ旋回機能を備える必要がある。
【0017】
上述した特許文献1に開示されたシャーシダイナモメータは、ローラ旋回機能を備えている。
【0018】
図24は、従来のシャーシダイナモメータ101によるローラ旋回動作の動作内容を模式的に示す説明図である。同図(a)にハンドル4を示し、同図(b)にローラ装置102及びローラ装置102上に載置されたタイヤ62を示している。
【0019】
同図(b)に示すように、ローラ120の一方側に距離計64A及び64Bが設けられる。距離計64A及び64Bはそれぞれタイヤ62までの距離を計測している。ここ距離計64A及び64Bで測定された距離をdA及びdBとする。タイヤ62のローラ120上における正常配置状態では、距離条件{dA=dB=K}を満足する。なお、Kは定数である。
【0020】
ローラ装置102は図示しない旋回動作制御部の制御下でローラ旋回動作を行うことができる。車両60の走行試験を精度良く行うには、タイヤ62のタイヤ旋回角度に合致するように、ローラ120を旋回させる必要がある。
【0021】
旋回動作制御部は、距離計64A及び64Bから距離dA及びdBを示す距離情報を受け、上記距離条件{dA=dB=K}を満足するように、ローラ装置102にローラ旋回動作を実行させる。
【0022】
例えば、車両60において、ハンドル4に対するステアリング方向R4に沿ったステアリング操作に伴い、旋回方向R62に沿って破線で示すようにタイヤ62を旋回させた場合を考える。なお、タイヤ62のタイヤ旋回角度はハンドル角度に基づき決定される。
【0023】
旋回動作制御部の制御下で、ローラ装置102は上記距離条件を満足するように、旋回方向R62に沿って、ローラ120に対するローラ旋回動作が実行される。その結果、タイヤ62の旋回時において、常に正常配置状態になるように、ローラ装置102はローラ旋回動作を実行することができる。
【0024】
なお、距離計64A及び64Bに代えて、カメラを設ける方法も考えられる。以下、カメラを用いた方法について説明する。タイヤ62の側面の円周上に沿って複数の被検出体をタイヤ62に取り付ける。
【0025】
そして、複数の被検出体を示す被検出体画像情報を撮像できるようにカメラをローラ装置102に設け、上記被検出体画像情報が示す複数の被検出体の動きから、カメラに対するタイヤ62の変位角度を検出できるようにする。変位角度は、ローラ120上におけるタイヤ62の正常配置状態からの変位を示している。
【0026】
したがって、旋回動作制御部の制御下で、上記変位角度が“0”になるように、ローラ120に対するローラ旋回動作が実行される。その結果、タイヤ62の旋回時において、常に正常配置状態になるように、ローラ装置102はローラ旋回動作を実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2019-203869号公報
【特許文献2】特開2011-33517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
上述したように、従来のシャーシダイナモメータ101は、ローラ120上においてローラ120が常に正常配置状態となるように、ローラ120に対するローラ旋回動作を実行していた。
【0029】
しかしながら、タイヤ62のローラ120上での接地面箇所において、タイヤ62のゴム部分が潰れたり、タイヤ62の表面とローラ120の面との摩擦によってこじれが生じたりすることによって、タイヤ62に変形や膨らみが生じてしまう。すなわち、シャーシダイナモメータ101上での車両60の走行試験中にタイヤ62の形状に変化が生じてしまう。
【0030】
したがって、タイヤ62の形状変化に伴い、距離計64A及び64Bで検出される距離dA及びdB自体の精度が劣化してしまうため、上記距離条件を満足するように、ローラ120に対するローラ旋回動作を実行させても、タイヤ62を正常配置状態にできなくなる。
【0031】
その結果、本来のタイヤ62の旋回角度(切れ角度)に、ローラ120の操舵角度が正しく追従することが困難となり、車両60の操作側のハンドル4が重くなる現象等が発生してしまう問題点があった。なお、距離計64A及び64Bをカメラに代えても上記問題点を解消することができない。
【0032】
本開示は上記問題点を解決するためになされたもので、タイヤの膨らみ等の外乱ノイズが発生しても、精度良くローラ旋回動作を実行させることできるシャーシダイナモメータを得ることを目的とする。
【0033】
さらに、シャーシダイナモメータが利用する操舵角変換テーブルを高精度に作成する変換テーブル作成方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本開示に係る請求項1記載の変換テーブル作成方法は、旋回角度測定装置を用いて所定の車両における操舵角変換テーブルを作成する変換テーブル作成方法であって、前記操舵角変換テーブルは複数種の角度ペア情報を有し、前記複数種の角度ペア情報は、複数種のハンドル角度に対応する形式で複数種のタイヤ旋回角度が示された情報であり、前記所定の車両には、ステアリング操作時におけるハンドル角度を検出し、検出したハンドル角度を示すハンドル角度情報を得るハンドル用エンコーダが搭載され、前記旋回角度測定装置は載置したタイヤのタイヤ旋回角度を計測して、タイヤ旋回角度を示すタイヤ旋回角度測定情報を得る旋回角度用エンコーダを有し、(a) 前記旋回角度測定装置上に前記所定の車両のタイヤを配置するステップと、(b) 前記ハンドル用エンコーダから前記ハンドル角度情報を受け、かつ、前記旋回角度用エンコーダから前記タイヤ旋回角度測定情報を受けるテーブル作成準備状態を設定するステップと、(c) 前記所定の車両におけるステアリング操作によりハンドル角度を設定するステップと、(d) 前記ステップ(c)のハンドル角度設定状態時における前記所定の車両のタイヤ旋回角度を前記旋回角度測定装置に計測させるステップとを備え、前記ステップ(c)の実行後に前記ハンドル用エンコーダから前記ハンドル角度情報が得られ、前記ステップ(d)の実行後に前記旋回角度用エンコーダから前記タイヤ旋回角度測定情報が得られ、(e) 前記ハンドル角度情報が示すハンドル角度と前記タイヤ旋回角度測定情報が示すタイヤ旋回角度との組合せを、前記複数種の角度ペア情報の1つとして記録するステップをさらに備え、前記ステップ(c)で前記複数種のハンドル角度の全てが設定されるまで、前記ステップ(c)~(e)が繰り返し実行される。
【発明の効果】
【0035】
本開示の変換テーブル作成方法は操舵角変換テーブルを高精度に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本開示の実施の形態1であるシャーシダイナモメータを模式的に示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1のシャーシダイナモメータの平面構成を模式的に示す説明図(車両固定前)である。
【
図3】実施の形態1のシャーシダイナモメータの平面構成を模式的に示す説明図(車両固定後)である。
【
図4】実施の形態1の車両把持機構の詳細構造(平面構造)を模式的示す説明図である。
【
図5】実施の形態1の車両把持機構の詳細構造(断面構造)を模式的示す説明図である。
【
図6】
図4及び
図5で示したアームにおけるアーム軸部の断面構造を示す説明図である。
【
図7】
図4及び
図5で示したクランプ部及びその周辺構造(平面構造)の詳細を示す説明図である。
【
図8】
図4及び
図5で示したクランプ部及びその周辺構造(断面構造)の詳細を示す説明図である。
【
図9】実施の形態1の車両把持機構を用いた車両の固定方法を示すフローチャートである。
【
図10】車両の固定後における実施の形態のシャーシダイナモメータの構造を模式的に示す斜視図である。
【
図11】実施の形態1のシャーシダイナモメータによって車両が固定された状態で実行される車両シミュレーションの制御系の構成を示すブロック図である。
【
図12】実施の形態2のシャーシダイナモメータによって車両が固定された状態で実行される車両シミュレーションの制御系の構成を示すブロック図である。
【
図13】実施の形態2のシャーシダイナモメータにおけるダイナモ制御装置によるローラ旋回制御処理の動作原理を模式的に示す説明図である。
【
図14】ダイナモ制御装置によるローラ旋回制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図15】実施の形態2の変換テーブル作成方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図16】テーブル作成準備状態の構成を模式的にブロック図である。
【
図17】操舵角変換テーブルの具体例を示す説明図である。
【
図19】ラジアスゲージの平面構造を示す平面図である。
【
図20】ラジアスゲージの断面構造を示す断面図(その1)である。
【
図21】ラジアスゲージの断面構造を示す断面図(その2)である。
【
図22】従来のシャーシダイナモメータを模式的に示す斜視図(車両固定前)である。
【
図23】従来のシャーシダイナモメータを模式的に示す斜視図(車両固定後)である。
【
図24】従来のシャーシダイナモメータによるローラ旋回動作の動作内容を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<実施の形態1>
図1は本開示の実施の形態1であるシャーシダイナモメータ1を模式的に示す斜視図である。
図1は車両60の固定前の構造を示している。実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は床面80上で後に詳述する車両シミュレーションが実行可能である。
図1にXYZ直交座標系を示している。
【0038】
図1に示すように、床面10に設けられた4つのローラ用開口部15に対応して4つのローラ装置2が設けられる。4つのローラ装置2はそれぞれローラ対20、ローラ旋回機構21及びローラ支持機構22を有している。
【0039】
ローラ旋回機構21は、ローラ対20における2つのローラが回転動作可能になるように、ローラ対20を支持している。ローラ支持機構22はローラ旋回機構21がローラ旋回方向R2に沿って旋回動作可能に支持している。すなわち、ローラ旋回機構21は、後述する操舵角指示情報SG1に基づき、ローラ対20を旋回させるローラ旋回動作が実行可能である。
【0040】
また、後方(-Y方向)側のローラ装置2はさらに移動用レール23及び支持基台24を有している。移動用レール23は支持基台24上に設けられ、Y方向に延在している。支持基台24はローラ支持機構22が移動用レール23に沿ってY方向に移動可能に、ローラ支持機構22及びローラ支持機構22上のローラ旋回機構21及びローラ対20を支持する。なお、ローラ対20に代えて単体のローラを用いても良い。
【0041】
4つのローラ装置2それぞれにおいて、対応するローラ用開口部15からローラ対20の頂部が部分的に床面10上に露出している。また、4組のローラ対20は車両60の前輪及び後輪に対応する位置に配置されている。車両シミュレーションの実行時にローラ対20を構成する2つのローラ上にタイヤ62が載置される。
【0042】
なお、各ローラ装置2のうち、ローラ対20の一部(床面10から露出した頂部)を除く、ローラ旋回機構21、ローラ支持機構22、移動用レール23及び支持基台24は、全て床面10下に配置される。
【0043】
床面10上において、前方の2つのローラ装置2と後方の2つのローラ装置2との間に、総計4個の車両把持機構3が車両固定機構として設置されている。4つの車両把持機構3はそれぞれ床面10上に設けられ、車両60を固定する。なお、
図1では車両把持機構3を模式的に示しており、車両把持機構3の実際の構造とは異なる。
【0044】
さらに、4つのローラ装置2の中央部前方に、エンジン冷却ファン6が床面10の下方に配置される態様で設置されている。エンジン冷却ファン6は床面10に設けられた冷却用開口部16を介して、4組のローラ対20上に4つのタイヤ62が載置された車両60に向けて気流を形成する送風動作を行う。
【0045】
図2及び
図3はシャーシダイナモメータ1の平面構成を模式的に示す説明図である。
図2は車両60の固定前の平面構造を示し、
図3は車両60の固定後の平面構造を示している。なお、
図2及び
図3それぞれにXYZ直交座標系を示している。また、
図2及び
図3ではエンジン冷却ファン6及び冷却用開口部16の図示を省略している。
【0046】
図2に示すように、4つの車両把持機構3は4つのローラ装置2に対応して配置される。
図2及び
図3において、4つの車両把持機構3は、その配置箇所によって、車両把持機構3FL、車両把持機構3FR、車両把持機構3BL及び車両把持機構3BRに分類表記されている。
【0047】
2つの車両把持機構3FL及び3BLは車両60の左側(-X側;一方側面側)に対応して設けられる一方車両把持機構に分類され、2つの車両把持機構3FR及び3BRは車両60の右側(+X側;他方側面側)に対応して設けられる他方車両把持機構に分類される。すなわち、4(=2n(n=2))個の車両把持機構3は、2個の一方車両把持機構と2個の他方車両把持機構に分類される。
【0048】
図2に示すように、前方(+Y方向)かつ左(-X側)のローラ装置2の後方(-Y方向)に近接して車両把持機構3FLが配置され、前方かつ右(+X側)のローラ装置2の後方に近接して車両把持機構3FRが配置される。さらに、後方かつ左のローラ装置2の前方に近接して車両把持機構3BLが配置され、後方かつ右のローラ装置2の前方に近接して車両把持機構3BRが配置される。
【0049】
図2及び
図3に示すように、各車両把持機構3は構成要素として基台となる鉄板30を含んでいる。鉄板30上に車両把持機構3の把持本体部が位置決め配置される。
【0050】
図3に示すように、車両60は両側にロッカー61を有している。ロッカー61は、車両60の車体裾(ドア下)に存在する車体の外枠部分であり、板状を呈しており、「サイドシル」とも呼ばれる。
【0051】
図3において、2つのロッカー61に関し、左側のロッカー61はロッカー61Lに、右側のロッカー61はロッカー61Rに、それぞれ分類表記されている。
【0052】
図3に示すように、ロッカー61Lの前方の下方端部が車両把持機構3FLによって把持され、ロッカー61Lの後方の下方端部が車両把持機構3BLによって把持される。同様に、ロッカー61Rの前方の下方端部が車両把持機構3FRによって把持され、ロッカー61Lの後方の下方端部が車両把持機構3BRによって把持される。
【0053】
図4及び
図5は車両把持機構3の詳細構造を模式的示す説明図である。
図4は車両把持機構3の平面構造を示し、
図5は
図4のA-A断面構造を示している。なお、
図4及び
図5それぞれにXYZ直交座標系を示している。また、XYZ直交座標系は車両把持機構3FLを対象として示している。なお。4つの車両把持機構3それぞれの内部構造は同一である。
【0054】
これらの図に示すように、車両把持機構3は、鉄板30、ベース32、アーム33、クランプ部34及び押さえ板35を主要構成要素として含んでいる。ベース32、アーム33、及びクランプ部34の組合せ構造が車両把持機構3の把持本体部となる。
【0055】
鉄板30は把持本体構造を配置するため基台として機能し、
図5に示すように、表面30aは平面構造を呈している。
【0056】
ベース32は、
図4の破線で示すベース設置領域30r内において、鉄板30内の表面30a上に配置される。
【0057】
アーム33は棒状を呈している。
【0058】
ベース32はアーム33の一方端部側を回転可能に支持する。アーム33の一方端部側にアーム軸部33gが設けられる。
【0059】
図6はアーム33のアーム軸部33gの断面構造を示す説明図である。
【0060】
図6に示すように、アーム軸部33gにおいて、鉄管331の内周面に沿って中央にピン挿入空間333が設けられる。
【0061】
ベース32のアーム軸部33gのピン挿入空間333内にアーム固定用ピン43が挿入されることにより、ベース32とアーム33とが連結される。
【0062】
以下、本明細書において、互いに連結された状態のベース32とアーム33との組合せ構造を「ベース・アーム結合体」と呼ぶ。
【0063】
2つの押さえ板35は、ベース32を鉄板30上に固定するため、ベース32の両側(ベース32に対し±X方向側)上を跨がってY方向に延びて設けられる。2つの押さえ板35それぞれにおいて、Y方向の両端部がボルト46によって鉄板30に固定されている。
【0064】
2つの押さえ板35を鉄板30上に設けることにより、ベース32は鉄板30に固定される。
【0065】
その結果、ベース・アーム結合体において、アーム33はベース32のアーム固定用ピン43を回転軸として回転動作が可能となる。
【0066】
鉄板30の-Y方向側の端部領域にX方向に沿って複数のねじ止め用開口部41が設けられる。複数のねじ止め用開口部41のうち一のねじ止め用開口部41にボルト46の一端(-Y方向側)がねじ止めされる。同様に、鉄板30の+Y方向側の領域にX方向に沿って複数のねじ止め用開口部(図示せず)が設けられる。複数のねじ止め用開口部のうち一のねじ止め用開口部にボルト46の他端(+Y方向側)がねじ止めされる。
【0067】
アーム33の他方端部側の先端領域において、クランプ部34とアーム33とが連結される。
【0068】
図7及び
図8はクランプ部34及びその周辺構造の詳細を示す説明図である。
図7は
図4の拡大図に相当し、
図8は
図5の拡大図に相当する。
【0069】
図7及び
図8に示すように、クランプ部34は、互いに一体化したクランプ本体部34mと連結部34eとを含んでいる、クランプ本体部34mの中央領域の下方に連結部34eが設けられる。
【0070】
図7に示すように、クランプ部34のクランプ本体部34mは、把持用空間53を挟んで互いに対向する一対の弾性板材52A及び52Bと、把持用空間53、弾性板材52A及び52Bを挟んで互いに対向する一対の鉄製板材51A及び51Bとを有している。
【0071】
クランプ本体部34mにおいて、鉄製板材51Aと弾性板材52Aとは互いのYZ平面が密着する態様で連結され、鉄製板材51Bと弾性板材52Bとは互いのYZ平面が密着する態様で連結される。弾性板材52A及び52Bそれぞれの構成材料として例えば、弾性力を有し比較的柔らかく摩擦係数が比較的高い特性を有するゴムが考えられる。
【0072】
クランプ本体部34mの下方(-Z方向)において、X方向に沿って弾性板材52A及び52Bを貫通して、弾性板材52A及び52B間を締め付けて固定する2つのボルト44が取り付けられる。2つのボルト44は、把持用空間53を狭める方向に押圧力が付与される固定部材として機能する。
【0073】
クランプ部34の連結部34eはクランプ固定用ボルト45によってアーム33に固定される。具体的には、X方向に沿って、連結部34eを貫通してクランプ固定用ボルト45を取り付ける。クランプ固定用ボルト45によって、クランプ部34とアーム33とが固定した状態で連結される。
【0074】
さらに、必要に応じて、アーム33として、Y方向の長さが異なる複数種のアーム33を予め準備することが望ましい。例えば、
図4及び
図5の破線で示すように、Y方向の長さがより長い長尺アーム33Xを用いることにより、車両60のホイールベースに適した車両把持機構3を比較的簡単に得ることができる。
【0075】
図9は実施の形態1のシャーシダイナモメータ1において、車両把持機構3を用いた車両60の固定方法の処理手順を示すフローチャートである。以下、同図を参照して、車両60の固定手順を説明する。
【0076】
なお、ステップS1以前の準備状態は、4つのローラ装置2に対応して、床面10上に4つの鉄板30のみが配置された状態である。
【0077】
まず、ステップS1において、車両60のロッカー61に対し、単体のクランプ部34を取り付ける。
【0078】
車両60のロッカー61はYZ平面を有する板状を呈しており、少なくとも下方端部が突出した状態となっている。一方、クランプ部34はアーム33に連結される前の単体状態でありボルト44も取り付けられていない。
【0079】
したがって、単体のクランプ部34の把持用空間53にロッカー61の下方端部を挿入することにより、弾性板材52A及び52Bとロッカー61の下方端部との間の摩擦力によって、ロッカー61に単体のクランプ部34を仮に取り付けることができる。なお、クランプ部34の把持用空間53の厚みは、上記摩擦力によってロッカー61にクランプ部34を取り付けが可能な厚みに設定されている。
【0080】
この際、左側のロッカー61Lの前方の下方端部に対し車両把持機構3FL用のクランプ部34が仮取付けられ、ロッカー61Lの後方の下方端部に車両把持機構3BL用のクランプ部34が仮取付けられる。同様に、右側のロッカー61Rの前方の下方端部に対し車両把持機構3FR用のクランプ部34が仮取付けられ、ロッカー61Rの後方の下方端部に車両把持機構3BR用のクランプ部34が仮取付けられる。
【0081】
続いて、各クランプ部34をロッカー61の下方端部に固定する。具体的には、クランプ本体部34mの弾性板材52A及び52Bを貫通して、弾性板材52A及び52B間を締め付ける2つのボルト44を取り付ける。固定部材である2つのボルト44による締め付けにより、弾性板材52A及び52B間の把持用空間53が狭くなる押圧力が働く。
【0082】
その結果、ロッカー61の下方端部は、弾性板材52A及び52Bとの間に生じる摩擦力と、把持用空間53を狭める方向に働く上述した押圧力とより、ロッカー61に悪影響を与えることなく、4つのクランプ部34は車両60のロッカー61に強固に固定される。
【0083】
すなわち、左側のロッカー61Lの前方の下方端部に対し車両把持機構3FL用のクランプ部34が固定され、ロッカー61Lの後方の下方端部に車両把持機構3BL用のクランプ部34が固定される。同様に、右側のロッカー61Rの前方の下方端部に対し車両把持機構3FR用のクランプ部34が固定され、ロッカー61Rの後方の下方端部に車両把持機構3BR用のクランプ部34が固定される。
【0084】
このように、車両60のロッカー61(61L及び61R)に4つのクランプ部34のみの取り付けが行われる。
【0085】
続いて、ステップS2に示すように、4つのローラ装置2のローラ対20上に4つのタイヤ62が位置するように車両60を配置する。
【0086】
なお、ステップS1とステップS2とは実行順序を逆にしても良い。ただし、
図9で示すステップS1,S2の順で行う方が、比較的簡単に4つのクランプ部34を車両60のロッカー61に取り付けることができる。
【0087】
続いて、ステップS3において、ベース・アーム結合体をクランプ部34に対応して配置する。
【0088】
ステップS3では、アーム33の先端領域でクランプ部34の連結部34eとのクランプ固定用ボルト45による連結が可能になるように、ベース32を鉄板30のベース設置領域30r内に位置決め配置する。
【0089】
その結果、クランプ部34とアーム33の先端領域とがXY平面で平面視して重複するように、ベース・アーム結合体が鉄板30上に配置される。
【0090】
その後、ステップS4において、ベース32の両端部を跨がって2つの押さえ板35を設け、2つの押さえ板35それぞれの両端をボルト46によって鉄板30に固定する。
【0091】
その結果、ベース・アーム結合体が鉄板30に固定される。この際、アーム33は、ベース32が鉄板30に固定された状態で、アーム固定用ピン43を回転軸とした回転動作が可能となる。したがって、ベース32は、アーム33の一方端部側に存在するアーム固定用ピン43を回転軸としてアーム33を支持することになる。
【0092】
最後に、ステップS5において、クランプ部34をベース・アーム結合体に固定する。
【0093】
すなわち、X方向に沿って連結部34eを貫通するクランプ固定用ボルト45を取り付ける。
【0094】
その結果、クランプ固定用ボルト45によって、クランプ部34はベース・アーム結合体のアーム33に連結され、各々がロッカー61に固定された状態で4つの車両把持機構3が完成する。
【0095】
なお、クランプ部34はクランプ固定用ボルト45によってアーム33に固定した状態で連結される。
【0096】
加えて、4つの車両把持機構3において、ロッカー61の下方端部を挟みこむクランプ本体部34mの上部を除く全ては、車両60のアンダボディの下方に存在することになる。
【0097】
このように、シャーシダイナモメータ1は、ステップS1~S5を実行することにより、ローラ装置2の4つのローラ対20上に4つのタイヤ62が載置された状態で、4つの車両把持機構3によって車両60を固定することができる。
【0098】
図10は車両60の固定後におけるシャーシダイナモメータ1の構造を模式的に示す斜視図である。なお、
図10にXYZ直交座標系を示している。また、
図10では、説明の都合上、エンジン冷却ファン6、及び4つの車両把持機構3の図示を省略している。
【0099】
図10に示すように、4つのローラ装置2それぞれのローラ対20における2つのローラ上に車両60の4つのタイヤ62が載置される。そして、前述したように、車両60は、
図10では図示しない4つの車両把持機構3によって固定されている。
【0100】
また、
図10に示すように、一端が車両60の後方部に連結される排ガスホース7がさらに設けられる。排ガスホース7は、一端が入力口となり他端が出力口となり、車両60から排出される排気ガスを入力口(一端)で受け、出力口(他端)から排気ガスを外部に出力している。
【0101】
シャーシダイナモメータ1では、排ガスホース7の他端は床面10下に配置される。床面10は、排ガスホース7を床面10下に導くホース用穴の位置を調整する位置調整機能を有している。したがって、車両60の大きさ、排気ガス出力部の位置等に対応してホース用穴の位置を調整することができる。
【0102】
なお、上述した位置調整機能に代えて、床面10に複数種のホース用穴を予め設け、複数種のホース用穴のうち、試験対象の車両60に適した穴を適宜選択するようにしても良い。
【0103】
また、床面10上において、車両60の前方(+Y方向)にX方向を長手方向、Z方向を短手方向とした矩形状の画像シミュレータ12が設けられる。シミュレーション補助部材である画像シミュレータ12は、車両60から視覚認識可能な全景色を表示する表示機能を有している。
【0104】
さらに、床面10上において、車両60の中央部前方にターゲットシミュレータ11が設けられる。ターゲットシミュレータ11は車両60に対し、画像シミュレータ12よりさらに前方(+Y方向側)に配置される。シミュレーション補助部材であるターゲットシミュレータ11は、ターゲットが移動する動作を模擬する装置である。
【0105】
図11は実施の形態1のシャーシダイナモメータ1によって車両60が固定された状態で実行される車両シミュレーションの制御系の構成を示すブロック図である。
【0106】
同図に示すように、車両シミュレーションを実行する制御装置として、ダイナモ制御装置75及びADAS試験制御装置77が存在する。
【0107】
なお、「ADAS(Advanced Driver Assistance System)」は、「先進運転システム」を意味し、事故などの可能性を事前に検知し回避するシステムである。
【0108】
回転検出部であるダイナモメータ用検出器71は各ローラ装置2に搭載され、ローラ対20における2つのローラの回転状態を検出して、回転検出信号となる回転パルス信号S71を出力する。ダイナモメータ用検出器71として例えばパルス発生器(PLG(Pulse Generator))が用いられる。
【0109】
車両60にはハンドル用エンコーダ5が搭載され、ハンドル用エンコーダ5は車両60の運転者によるステアリング状態(ハンドル角度A60)を検出してハンドル角度情報S60を出力する。ハンドル用エンコーダ5として例えばパルス発生器が用いられる。
【0110】
なお、ハンドル用エンコーダ5に代えて車両ECU(Electronic Control Unit)73を用いてハンドル角度情報S60を出力するようにしても良い。なお、車両ECU73を用いる場合はCAN(Control Area Network)通信を用いて、ハンドル用エンコーダ5にて取得されたハンドル角度情報S60が出力される。
【0111】
車両60はさらに外界センサ74を有している。外界センサ74は、コーナーセンサ等に利用されるレーダ及びライダー(LiDAR)やサイドカメラ(サイド電子ミラー)が含まれる。
【0112】
外界センサ74は外界情報を検知し、検知した外界情報を指示する外界センス情報S74を出力する。外界情報として、例えば、ターゲットシミュレータ11の検知情報、ターゲットシミュレータ11までの距離情報、及びサイドカメラで認識された車両側面情報等が含まれる。
【0113】
ダイナモ制御装置75は回転パルス信号S71及びハンドル角度情報S60を受ける。ダイナモ制御装置75は回転パルス信号S71に基づき、車両60の速度(km/s)や加速度(m/s2)を算出し、車両速度や車両加速度を指示する速度信号SVをADAS試験制御装置77に出力する。
【0114】
さらに、ダイナモ制御装置75は、ハンドル角度情報S60に基づき、4つのタイヤ62の操舵角を指示する操舵角指示情報SG1をADAS試験制御装置77及びモータドライブ装置78に出力する。なお、操舵角指示情報SG1は、ステアリング検出信号S60が指示するステアリング情報に基づき、ローラ旋回機構21の旋回精度、旋回応答精度等を考慮して求められる。
【0115】
なお、回転パルス信号S71、ハンドル角度情報S60、外界センス情報S74、速度信号SV、操舵角指示情報SG1等の伝達は有線または無線の通信機能を利用して行われる。
【0116】
ADAS試験制御装置77は、速度信号SV、操舵角指示情報SG1及び外界センス情報S74に基づき、画像シミュレータ12及びターゲットシミュレータ11を制御して車両シミュレーションを実行する。具体的には画像シミュレータ12上に、車両60から視覚認識可能な全景色の表示内容を制御したり、ターゲットシミュレータ11の表示内容を制御したりする。なお、車両シミュレーションの実行時において、ターゲットシミュレータ11は画像シミュレータ12を透過して車両60から視覚認識可能になる。
【0117】
このように、ターゲットシミュレータ11及び画像シミュレータ12は、ADAS試験制御装置77の制御下で実行される車両シミュレーションにおけるシミュレーション補助部材として機能し、床面10上において、車両60の前方に配置される。
【0118】
一方、ローラ旋回機構21のモータドライブ装置78は操舵角指示情報SG1に基づき、駆動制御信号S78をローラ旋回用モータ25に出力する。ローラ旋回用モータ25は駆動制御信号S78に基づき旋回ベース28をローラ旋回方向R2に沿って旋回動作させる。旋回ベース28はローラ対20を回転自在に支持している。
【0119】
したがって、車両60のステアリング状態(ハンドル角度A60)に合致するように、旋回ベース28によって回転自在に支持されたローラ対20がローラ旋回方向R2に沿って旋回される。
【0120】
したがって、シャーシダイナモメータ1における車両シミュレーションは、ハンドル角度情報S60基づくローラ旋回機構21の制御処理を含んでいる。
【0121】
このように、ダイナモ制御装置75及びADAS試験制御装置77の制御下で、車両60に対する車両シミュレーションを実行することができる。したがって、ダイナモ制御装置75及びADAS試験制御装置77は車両シミュレーション用の制御装置として機能する。
【0122】
車両シミュレーションの実行時に、車両60は4つの車両把持機構3によって固定されている。
【0123】
この際、アーム33はアーム固定用ピン43を回転軸とした回転動作が可能である。したがって、アーム33の回転動作によって、4つの車両把持機構3は車両60の姿勢に追従して安定性良く車両60を固定することができる。
【0124】
具体的には、車両シミュレーションの実行期間における車両60の運転時(特に加減速時)に、車両60の姿勢が上下に傾く動作傾向がある。この際、アーム33の回転動作によって、車両60の動作傾向に追従することができる。
【0125】
(効果)
実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は主として以下の構成要素(a)~(c)を含んでいる。
【0126】
(a) ローラ旋回機構21を有するローラ装置2を含み床面10下に設けられる車両60の支持機構
(b) 車両把持機構3を含む車両60の固定機構
(c) ダイナモ制御装置75及びADAS試験制御装置77の制御下で、ターゲットシミュレータ11、画像シミュレータ12及びローラ旋回機構21を制御して車両シミュレーションを実行するシミュレーション実行
【0127】
そして、上述したように実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は主として以下の特徴(1)~(6)を有している。
【0128】
(1) 回転検出部となるダイナモメータ用検出器71は、ローラ対20の回転状態を検出して回転検出信号である回転パルス信号S71を得る。
【0129】
(2) ハンドル用エンコーダ5は、車両60のステアリング状態を検出してハンドル角度情報S60を得る。
【0130】
(3) ダイナモ制御装置75及びADAS試験制御装置77は、回転パルス信号S71、ハンドル角度情報S60及び外界センス情報S74に基づき、シミュレーション補助部材であるターゲットシミュレータ11や画像シミュレータ12を制御して車両シミュレーションを実行する。
【0131】
(4) 各ローラ装置2は、ローラ対20を旋回動作可能に支持するローラ旋回機構21を有する。
【0132】
(5) 車両60を固定する4つの車両把持機構3の大部分は、車両60のアンダボディの下方に配置される。
【0133】
(6) 車両シミュレーションの一部として、ダイナモ制御装置75の制御下でハンドル角度情報S60に基づき、ローラ旋回方向R2に沿ってローラ旋回機構21を旋回させるための制御処理が実行される。
【0134】
実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、制御装置となるダイナモ制御装置75の操舵角指示情報SG1による制御下で、ハンドル角度情報S60に基づきローラ旋回機構21を旋回させる処理を含む車両シミュレーションを実行している(上記特徴(6))。
【0135】
このため、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、直進以外のステアリング操作を含む多様な車両シミュレーションを実行することができる。
【0136】
したがって、ローラ対20に対するタイヤ62の角度を検出する方式の車両シミュレーションと比較して、応答速度が高い車両シミュレーションを実行することができる。
【0137】
加えて、シャーシダイナモメータ1における4つの車両把持機構3の大部分は、車両60のアンダボディの下方に配置される(上記特徴(5))ため、4つの車両把持機構3が外界センサ74の検出範囲に存在したり、4つの車両把持機構3がターゲットシミュレータ11や画像シミュレータ12の視界認識を妨げたりすることはない。
【0138】
その結果、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、4つの車両把持機構3によって車両60を安定性良く固定し、かつ、精度良く車両シミュレーションを実行することができる。
【0139】
実施の形態1のシャーシダイナモメータ1において、2個の一方車両把持機構(車両把持機構3FL及び3BL)それぞれのクランプ部34、及び2個の他方車両把持機構(車両把持機構3FR及び3BR)それぞれのクランプ部34によって、車両60の両側面のロッカー61(61L,61R)の下方端部が互いにバランス良く把持される。
【0140】
その結果、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、4個の車両把持機構3の把持動作によって、車両60をバランス良く固定することができる。
【0141】
4個の車両把持機構3それぞれのクランプ部34によって、把持用空間53内に位置するロッカー61の下方端部は、一対の弾性板材52A及び52Bによって挟み込む態様で把持され、固定部材である2本のボルト44によって把持用空間53を狭める方向に押圧力が付与される。
【0142】
したがって、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、弾性板材52A及び52Bによる摩擦力と、2本のボルト44による押圧力とによって、総計4箇所で車両60のロッカー61の下方端部をクランプ部34により把持して、車両60を安定性良く固定することができる。
【0143】
その結果、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、精度良く車両シミュレーションを実行することができる。
【0144】
実施の形態1のシャーシダイナモメータ1の排ガスホース7の他端は床面10下に配置される。このため、床面10上に存在する排ガスホース7を必要最小限に抑え、外界センサ74の死角に配置することができる。
【0145】
その結果、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、排ガスホース7によって車両60の排気ガスを外部に出力させ、かつ、精度良く車両シミュレーションを実行することができる。
【0146】
実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、エンジン冷却ファン6を床面10下に配置している。このため、エンジン冷却ファン6が外界センサ74の検出範囲に存在したり、エンジン冷却ファン6の存在がターゲットシミュレータ11や画像シミュレータ12の視界認識を妨げたりすることはない。
【0147】
その結果、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、エンジン冷却ファン6によって車両60を冷却し、かつ、精度良く車両シミュレーションを実行することができる。
【0148】
<実施の形態2>
図12は実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bによって車両60が固定された状態で実行される車両シミュレーションの制御系の構成を示すブロック図である。なお、シャーシダイナモメータ1Bの後述する制御系の一部を除き、
図1~
図10で示した実施の形態1のシャーシダイナモメータ1と同様な構成を呈している。
【0149】
すなわち、シャーシダイナモメータ1Bは、車両60の4つのタイヤ62を載置する4つのローラ20を有する4つのローラ装置2と、車両60を固定する車両固定機構となる4つの車両把持機構3とを備えている。なお、車両固定機構として4つの車両把持機構3に代えて、従来のロープ固縛構造等を採用しても良い。
【0150】
さらに、各ローラ装置2は、ローラ対20を支持するローラ旋回機構21を含んでおり、ローラ旋回機構21は、操舵角指示情報SG2に基づき、ローラ対20を旋回させるローラ旋回動作が実行可能である。
【0151】
したがって、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bは、シャーシダイナモメータ1と同様、
図10に示すように、車両60を固定して、ターゲットシミュレータ11及び画像シミュレータ12を利用した車両シミュレーションを行うことができる。
【0152】
以下、
図11で示した実施の形態1の制御系と同様な構成部分は同一符号を付して説明を適宜省略し、
図12を参照して、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bに固有の特徴を中心に説明する。
【0153】
図12に示すように、車両シミュレーションを実行する制御装置として、ダイナモ制御装置75B及びADAS試験制御装置77が存在する。
【0154】
車両60にはハンドル用エンコーダ5が搭載され、ハンドル用エンコーダ5は車両60の運転者によるステアリング状態(ハンドル角度A60)を検出して、ハンドル角度A60を示すハンドル角度情報S60を出力する。ハンドル用エンコーダ5として例えばパルス発生器が用いられる。
【0155】
なお、ハンドル用エンコーダ5に代えて車両ECU73を用いてハンドル角度情報S60を出力するようにしても良い。なお、車両ECU73を用いる場合はCAN通信を用いて、ハンドル用エンコーダ5にて取得されたハンドル角度情報S60が出力される。
【0156】
ダイナモ制御装置75Bは、実施の形態1のダイナモ制御装置75と同様、回転パルス信号S71及びハンドル角度情報S60を受ける。ダイナモ制御装置75Bは回転パルス信号S71に基づき、車両60の速度(km/s)や加速度(m/s2)を算出し、車両速度や車両加速度を指示する速度信号SVをADAS試験制御装置77に出力する。
【0157】
シャーシダイナモメータ1Bの制御系は、実施の形態1と異なり、テーブル格納部79をさらに有している。
【0158】
テーブル格納部79は操舵角変換テーブルT1を格納している。操舵角変換テーブルT1は複数種の角度ペア情報を有している。複数種の角度ペア情報は、複数種のハンドル角度に対応する形式で複数種のタイヤ旋回角度が示された情報である。テーブル格納部79はダイナモ制御装置75Bに操舵角変換テーブルT1を付与する変換テーブル付与部として機能する。操舵角変換テーブルT1は操舵角の追従制御を行うための重要な情報となる。
【0159】
ダイナモ制御装置75Bは、ローラ旋回機構21によるローラ旋回動作を制御するローラ旋回制御処理を実行する旋回動作制御部としても機能する。すなわち、ダイナモ制御装置75Bは、ローラ旋回機構21によるローラ対20に対するローラ旋回動作を制御するローラ旋回制御処理を実行する。
【0160】
具体的には、ダイナモ制御装置75Bは、操舵角変換テーブルT1を参照し、ハンドル角度情報S60に基づき、タイヤ62の決定操舵角を指示する操舵角指示情報SG2をADAS試験制御装置77及びローラ旋回機構21のモータドライブ装置78に出力する。
【0161】
ADAS試験制御装置77は、速度信号SV、操舵角指示情報SG2及び外界センス情報S74に基づき、画像シミュレータ12及びターゲットシミュレータ11を制御して車両シミュレーションを実行する。
【0162】
実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bは、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1と同様、実施の形態1で述べた構成要素(a)~(c)を含んでおり、実施の形態1で述べた特徴(1)~(6)を有している。
【0163】
したがって、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bは、実施の形態1のシャーシダイナモメータ1と同様な効果を奏する。
【0164】
(ローラ旋回制御処理)
図13は、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bにおけるダイナモ制御装置75Bによるローラ旋回制御処理の動作原理を模式的に示す説明図である。
【0165】
同図に示すように、旋回動作制御部としても機能するダイナモ制御装置75Bは、ハンドル4に取り付けられたハンドル用エンコーダ5からハンドル角度情報S60を受ける。前述したようにハンドル角度情報S60はハンドル角度A60を示している。
【0166】
さらに、ダイナモ制御装置75Bはテーブル格納部79から操舵角変換テーブルT1が付与されているため、操舵角変換テーブルT1の内容を常時参照することができる。
【0167】
図13に示すように、操舵角変換テーブルT1は、複数種のハンドル角度に対応する形式で複数種のタイヤ旋回角度が示される複数種の角度ペア情報を有している。
【0168】
図1~
図3で示される4つのローラ対20は、左タイヤ載置用のローラ対20L(左用ローラ)と右タイヤ載置用のローラ対20R(右用ローラ)とを含んでいる。すなわち、4つのローラ対20は、前輪用のローラ対20L、後輪用のローラ対20L、前輪用のローラ対20R及び後輪用のローラ対20Rに分類される。
【0169】
以下、実施の形態2では、説明の都合上、車両60は一般的な2つの前輪の操舵する前輪操舵を採用していると想定し、ローラ対20Lを前輪の左用ローラとし、ローラ対20Rを前輪の右用ローラとして説明する。
【0170】
したがって、複数種のタイヤ旋回角度は、前輪のローラ対20L用の複数種の左用タイヤ旋回角度と、前輪のローラ対20R用の複数種の右用タイヤ旋回角度とを含んでいる。
【0171】
4つのローラ旋回機構21は、ローラ対20Lを支持する左用ローラ旋回機構となるローラ旋回機構21Lと、ローラ対20Rを支持する右用ローラ旋回機構となるローラ旋回機構21Rとを含んでいる。
【0172】
前述したように、実施の形態2では、車両60は前輪操舵を採用していると想定しているため、ローラ旋回機構21Lは前輪用のローラ対20Lに対応して設けられ、ローラ旋回機構21Rは前輪用のローラ対20Rを対応して設けられる。
【0173】
ローラ旋回機構21Lは、ローラ旋回用モータ25L及び旋回ベース28Lを含み、ローラ旋回用モータ25Lによって旋回ベース28Lが旋回駆動される。旋回ベース28Lは、ローラ対20Lを回転自在に支持している。したがって、旋回ベース28Lの旋回に伴い、ローラ対20L自体の回転動作に影響を与えることなく、ローラ対20Lをローラ旋回方向R2に沿って旋回させることができる。
【0174】
ローラ旋回機構21Rは、ローラ旋回用モータ25R及び旋回ベース28Rを含み、ローラ旋回用モータ25Rによって旋回ベース28Rは旋回駆動される。旋回ベース28Rは、ローラ対20Rを回転自在に支持している。したがって、旋回ベース28Rの旋回に伴い、ローラ対20R自体の回転動作に影響を与えることなく、ローラ対20Rをローラ旋回方向R2に沿って旋回させることができる。
【0175】
ローラ旋回機構21L及び21R間でモータドライブ装置78は共用される。ダイナモ制御装置75Bはモータドライブ装置78に操舵角指示情報SG2を付与する。操舵角指示情報SG2はローラ旋回機構21L用の左用決定操舵角とローラ旋回機構21R用の右用決定操舵角とを指示している。
【0176】
モータドライブ装置78は操舵角指示情報SG2が指示する左用決定操舵角に基づく駆動制御信号S78Lをローラ旋回用モータ25Lに付与し、操舵角指示情報SG2が指示する右用決定操舵角に基づく駆動制御信号S78Rをローラ旋回用モータ25Rに付与する。駆動制御信号S78L及びS78Rは互いに独立した信号である。
【0177】
したがって、ローラ旋回用モータ25Lは駆動制御信号S78Lが指示する制御量で旋回ベース28Lをローラ旋回方向R2に沿って旋回させる。その結果、旋回ベース28Lによって支持されたローラ対20Lをローラ旋回方向R2に沿って旋回させることができる。
【0178】
同様に、ローラ旋回用モータ25Rは駆動制御信号S78Rが指示する制御量で旋回ベース28Rをローラ旋回方向R2に沿って旋回させる。その結果、旋回ベース28Rによって支持されたローラ対20Rをローラ旋回方向R2に沿って旋回させることができる。
【0179】
このように、左用ローラ旋回機構であるローラ旋回機構21Lは、操舵角指示情報SG2が指示する左用決定操舵角に基づき、左用ローラであるローラ対20Lを旋回させる左用ローラ旋回動作が実行可能である。
【0180】
同様に、右用ローラ旋回機構であるローラ旋回機構21Rは、操舵角指示情報SG2が指示する右用決定操舵角に基づき、右用ローラであるローラ対20Rを旋回させる右用ローラ旋回動作が実行可能である。
【0181】
上述したように、ローラ旋回機構21が実行するローラ旋回動作は、ローラ旋回機構21Lが実行する左用ローラ旋回動作とローラ旋回機構21Rが実行する右用ローラ旋回動作とを含んでいる。
【0182】
ダイナモ制御装置75Bは、最終的にモータドライブ装置78に操舵角指示情報SG2を付与することにより、ローラ旋回機構21にローラ旋回動作を実行させるローラ旋回制御処理が実行することができる。
【0183】
ローラ旋回制御処理は、左用ローラ旋回制御処理と右用ローラ旋回制御処理とを含んでいる。左用ローラ旋回制御処理は、ローラ旋回機構21Lによる左用ローラ旋回動作を制御する処理であり、右用ローラ旋回制御処理はローラ旋回機構21Rによる右用ローラ旋回動作を制御する処理となる。
【0184】
図14は、ダイナモ制御装置75Bによるローラ旋回制御処理の処理手順を示すフローチャートである。以下、同図を参照して、ローラ旋回制御処理の処理内容を説明する。
【0185】
ステップS11において、ダイナモ制御装置75Bは、ハンドル用エンコーダ5からハンドル角度情報S60を取得する。
【0186】
その後、ステップS12において、変換テーブル付与部であるテーブル格納部79から操舵角変換テーブルT1がダイナモ制御装置75Bに付与される。したがって、ダイナモ制御装置75Bは、操舵角変換テーブルT1を取得して、操舵角変換テーブルT1の内容を常に参照することができる。
【0187】
次に、ステップS13において、ダイナモ制御装置75Bは、操舵角変換テーブルT1を参照し、操舵角変換テーブルT1で示された複数種のタイヤ旋回角度のうち、ハンドル角度情報S60が示すハンドル角度A60に対応するタイヤ旋回角度を決定操舵角として決定する。
【0188】
前述したように、決定操舵角は左用決定操舵角及び右用決定操舵角を含んでいるため、ステップS13は、正確には以下のステップS13-1及びS13-2を含んでいる。
【0189】
S13-1…操舵角変換テーブルT1を参照して、操舵角変換テーブルT1で示された複数種の左用タイヤ旋回角度のうち、ハンドル角度情報S60が示すハンドル角度A60に対応する左用タイヤ旋回角度を左用決定操舵角として決定する。
【0190】
S13-2…操舵角変換テーブルT1を参照して、操舵角変換テーブルT1で示された複数種の右用タイヤ旋回角度のうち、ハンドル角度情報S60が示すハンドル角度A60に対応する右用タイヤ旋回角度を右用決定操舵角として決定する。
【0191】
その後、ステップS14において、ステップS13で決定した決定操舵角(左用決定操舵角+右用決定操舵角)を指示する操舵角指示情報SG2をローラ旋回機構21のモータドライブ装置78に付与する。
【0192】
モータドライブ装置78はローラ旋回機構21L及び21R間で共用される。このため、ステップS14の処理は、ローラ旋回機構21Lには、少なくとも左用決定操舵角を指示する操舵角指示情報SG2が付与され、ローラ旋回機構21Rには、少なくとも右用決定操舵角を指示する操舵角指示情報SG2が付与される処理となる。
【0193】
なお、モータドライブ装置78がローラ旋回機構21Lに特化した専用の装置であれば、左用決定操舵角のみを指示する操舵角指示情報SG2がモータドライブ装置78に付与されれば良い。同様に、モータドライブ装置78がローラ旋回機構21Rに特化した専用の装置であれば、右用決定操舵角のみを指示する操舵角指示情報SG2がモータドライブ装置78に付与されれば良い。
【0194】
このように、最終的にローラ旋回機構21に操舵角指示情報SG2を付与する処理がローラ旋回制御処理となる。そして、最終的にローラ旋回機構21Lに左用決定操舵角を指示する操舵角指示情報SG2を付与する処理が左用ローラ旋回制御処理となり、最終的にローラ旋回機構21Rに右用決定操舵角を指示する操舵角指示情報SG2を付与する処理が右用ローラ旋回制御処理となる。
【0195】
ステップS14の実行に伴いローラ旋回機構21は操舵角指示情報SG2に基づきローラ旋回動作を実行する。より具体的には、ローラ旋回機構21Lは操舵角指示情報SG2が指示する左用決定操舵角に基づき左用ローラ旋回動作を実行し、ローラ旋回機構21Rは操舵角指示情報SG2が支持する右用決定操舵角に基づき右用ローラ旋回動作を実行する。
【0196】
実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bのダイナモ制御装置75Bが実行するローラ旋回制御処理は、決定操舵角を指示する操舵角指示情報SG2をローラ旋回機構21(21L,21R)に付与する処理を含んでいる。決定操舵角(左用決定操舵角,右用決定操舵角)は、操舵角変換テーブルT1を参照して、ハンドル角度情報S60が示すハンドル角度A60に基づき決定される。
【0197】
操舵角変換テーブルT1は、複数種のハンドル角度に対応する形式で複数種のタイヤ旋回角度が示された複数種の角度ペア情報を有している。操舵角変換テーブルT1は、後に詳述するように、ハンドル用エンコーダ5やターンテーブル用エンコーダ8を有するラジアスゲージ9等を用いることにより、高精度な内容で事前に作成することができる。
【0198】
また、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bにおけるダイナモ制御装置75Bはローラ旋回制御処理を実行する際、
図24で示した距離計64A及び64B等によって得られるタイヤ62の配置状態の検出情報を利用していない。このため、ローラ旋回制御処理がタイヤ62の膨らみ等の外乱ノイズの影響を受けることはない。
【0199】
したがって、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bは、操舵角変換テーブルT1を参照することにより、タイヤ62の膨らみ等の外乱ノイズが発生しても、ローラ旋回機構21に精度良くローラ旋回動作を実行させることできる。
【0200】
シャーシダイナモメータ1Bのダイナモ制御装置75Bが実行するステップS13は上述したステップS13-1及びS13-2を含み、ステップS14で付与される操舵角指示情報SG2は左用決定操舵角及び右用決定操舵角を指示している。
【0201】
したがって、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bは、旋回動作制御部であるダイナモ制御装置75Bによって、左用ローラ旋回制御処理及び右用ローラ旋回制御処理を実行することにより、左タイヤ用のローラ対20L及び右タイヤ用のローラ対20Rそれぞれを独立して精度良く旋回させることができる。
【0202】
(操舵角変換テーブルT1の作成)
図15は実施の形態2の変換テーブル作成方法の処理手順を示すフローチャートである。実施の形態2の変換テーブル作成方法は、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bが利用する操舵角変換テーブルT1を作成する方法である。したがって、実施の形態2の変換テーブル作成方法は、操舵角の追従制御を行うために必要不可欠な操舵角変換テーブルT1を作成する重要なツールとして位置付けられる。
【0203】
操舵角変換テーブルT1は後に詳述する旋回角度測定装置であるラジアスゲージ9を用いて得られ、所定の車両となる車両60における固有の情報となる。車両60には、車両60のステアリング操作時におけるハンドル角度を検出してハンドル角度情報S60を得るハンドル用エンコーダ5が搭載されている。
【0204】
実施の形態2の変換テーブル作成方法は、シャーシダイナモメータ1Bとは異なる変換テーブル作成環境下で実行される。ここでは、車両60が一般的な前輪操舵を採用し、前輪用に2つのラジアスゲージ9が用いられる変換テーブル作成環境を想定する。以下、
図15を参照して、実施の形態2の変換テーブル作成方法の処理内容を説明する。
【0205】
ステップS21において、2つのラジアスゲージ9上に前輪の左右のタイヤが位置するように、車両60を配置する。
【0206】
旋回角度測定装置であるラジアスゲージ9は、タイヤを載置した状態で、タイヤ旋回角度を計測し、タイヤ旋回角度と等価なテーブル回転角度を示すテーブル回転角度情報S8を得るターンテーブル用エンコーダ8を有している。ターンテーブル用エンコーダ8はタイヤ旋回角度測定情報としてテーブル回転角度情報S8を得る旋回角度用エンコーダとして機能する。
【0207】
次に、ステップS22において、変換テーブル作成準備状態を設定する。
図16は変換テーブル作成準備状態の構成を模式的にブロック図である。
【0208】
同図に示すように、変換テーブル作成部18は、ハンドル用エンコーダ5からハンドル角度情報S60を受け、旋回角度用エンコーダであるターンテーブル用エンコーダ8から、タイヤ旋回角度測定情報となるテーブル回転角度情報S8を受けている。この状態が変換テーブル作成準備状態となる。なお、変換テーブル作成部18として、例えば、シャーシダイナモメータ1Bのダイナモ制御装置75Bを用いても良い。
【0209】
図15に戻って、ステップS23において、車両60のステアリング操作によって一のハンドル角度を設定する。設定されたハンドル角度は、操舵角変換テーブルT1が有する複数種のハンドル角度の1つとなる。ステップS22にて、
図16に示す変換テーブル作成準備状態が設定されているため、ハンドル用エンコーダ5から変換テーブル作成部18にハンドル角度情報S60が自動的に付与される。
【0210】
したがって、ステップS23の実行後に、ハンドル用エンコーダ5からハンドル角度情報S60が得られる。ハンドル角度情報S60は設定されたハンドル角度A60を示している。
【0211】
その後、ステップS24において、ターンテーブル用エンコーダ8による操舵角の測定が行われる。すなわち、ステップS24は、ステップS23によるハンドル角度設定状態時におけるテーブル回転角度をラジアスゲージ9に計測させる処理となる。このテーブル回転角度が車両60のタイヤ旋回角度に合致する。
【0212】
図16に示した変換テーブル作成準備状態では、ターンテーブル用エンコーダ8から変換テーブル作成部18にテーブル回転角度情報S8が自動的に付与される。
【0213】
したがって、ステップS24の実行後に、旋回角度用エンコーダであるターンテーブル用エンコーダ8から、タイヤ旋回角度測定情報となるテーブル回転角度情報S8が得られる。テーブル回転角度情報S8はテーブル回転角度を示している。
【0214】
テーブル回転角度情報S8は、左用タイヤが載置された左用ラジアスゲージ9からのテーブル回転角度情報S8Lと、右用タイヤが載置された右用ラジアスゲージ9からのテーブル回転角度情報S8Rとを含んでいる。
【0215】
テーブル回転角度情報S8Lが左用タイヤの左用タイヤ角度を示し、テーブル回転角度情報S8Rが右用タイヤの右用タイヤ角度を示している。すなわち、テーブル回転角度情報S8が示すタイヤ角度には左用タイヤ角度と右用タイヤ角度とが含まれる。
【0216】
次に、ステップS25において、角度ペア情報S68が複数種の角度ペア情報の1つとして記録される。角度ペア情報S68は、ハンドル角度情報S60が示すハンドル角度A60と、テーブル回転角度情報S8が示すタイヤ角度(左用タイヤ角度、右用タイヤ角度)との組合せ情報である。
【0217】
その後、ステップS26において、想定した複数種のハンドル角度の設定が全て終了したか(YES)、否か(NO)が判定される。ステップS26でNOと判定された場合、ステップS23に戻り、以降、ステップS26でYESと判定されるまで、ステップS23~S26の処理が繰り返し実行される。2回目以降に実行されるステップS23では、角度ペア情報S68として、ステップS25にて記録されていない新たなハンドル角度が設定される。
【0218】
ステップS26でYESの場合に実行されるステップS27において、操舵角変換テーブルT1が完成する。すなわち、想定した複数種のハンドル角度の全てに対応して、複数種の角度ペア情報S68が記録された操舵角変換テーブルT1が完成する。
【0219】
完成した操舵角変換テーブルT1はテーブル格納部79に格納される。なお、ステップS25において角度ペア情報S68をテーブル格納部79に記録するようにしても良い。
【0220】
図17は操舵角変換テーブルT1の具体例を示す説明図である。同図に示すように、複数種のハンドル角度に対応する形式で複数種のタイヤ角度が示されている。同図において、「タイヤ角度-左」で示す欄に左用タイヤ角度が示され、「タイヤ角度-右」で示す欄に右用タイヤ角度が示されている。
【0221】
図18は角度θ(ハンドル角度、タイヤ角度)の方向を示す説明図である。同図に示す様に、第4象限から第1象限に向かう右旋回方向が負方向となり、第3象限から第2象限に向かう左旋回方向が正方向となる。
【0222】
図17(a)では、操舵角変換テーブルT1におけるハンドル角度が負の場合(右旋回の場合)の角度ペア情報を示しており、
図17(b)では、操舵角変換テーブルT1におけるハンドル角度が正の場合(左旋回の場合)の角度ペア情報を示している。また、ハンドル角度は例えば1/20度単位で設定され、タイヤ角度は例えば1度単位で設定される。
【0223】
図17に示すように、操舵角変換テーブルT1は複数種の角度ペア情報を有しており、複数種の角度ペア情報は、複数種のハンドル角度に対応する形式で複数種のタイヤ旋回角度が示された情報である。
【0224】
図17に示すように、複数種のハンドル角度は、ハンドル4を右方向に最大限旋回させた場合の右方向最大角度(負の最大値)から、ハンドル4を左方向に最大限旋回させた場合の左方向最大角度(正の最大値)にかけて、比較的小さな角度間隔毎に設定される。
【0225】
そして、複数種のハンドル角度に対応する複数種のタイヤ旋回角度は、複数種の左用タイヤ旋回角度と複数種の右用タイヤ旋回角度とを含んでいる。複数種のタイヤ旋回角度それぞれにおいて、左用タイヤ旋回角度と右用タイヤ旋回角度とは異なる値に設定されている。
【0226】
シャーシダイナモメータ1Bが用いる操舵角変換テーブルT1を作成する方法である、実施の形態2の変換テーブル作成方法は、ハンドル用エンコーダ5、ターンテーブル用エンコーダ8及び変換テーブル作成部18を含む変換テーブル作成準備状態を設定し、複数種のハンドル角度に対応する複数種のタイヤ旋回角度を測定している。
【0227】
このため、複数種のハンドル角度に対応する形式で複数種のタイヤ旋回角度を示した複数種の角度ペア情報を有する操舵角変換テーブルT1を高精度に作成することができる。
【0228】
その結果、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bは、所定の車両となる車両60に固有の操舵角変換テーブルT1を用いて、車両60のステアリング操作を伴う種々の試験を精度良く行うことができる。
【0229】
(ラジアスゲージ9)
図19はラジアスゲージ9の平面構造を示す平面図である。
図20及び
図21はラジアスゲージ9の断面構造を示す断面図である。なお、
図20は
図19のB-B断面を示し、
図21は
図19のC-C断面を示している。
図19~
図21それぞれにXYZ直交座標系を示している。
【0230】
これらの図に示すように、ラジアスゲージ9は、ラジアスゲージ設置架台99上にフレーム90が設けられ、フレーム90上に複数の回転用玉94を介して平面視して円状のターンテーブル93が設けられる。
【0231】
複数の回転用玉94はフレーム90の表面に平面視して円周状に沿って設けられている。
図20及び
図21に示す例では、複数の回転用玉94は互いに異なる3つの円周に沿って設けられる。複数の回転用玉94は各々が回転可能な移動体となるため、ターンテーブル93は複数の回転用玉94を介してテーブル回転方向R9に沿った回転動作が行える。
【0232】
フレーム90は平面視して矩形状を呈しており、フレーム90の4つの角部それぞれの近傍の辺に密接して、2つのフレームずれ防止ボルト95がラジアスゲージ設置架台99の上面に設けられる。2つのフレームずれ防止ボルト95はフレーム90の動きを規制するために設けられる。
【0233】
したがって、総計8つのフレームずれ防止ボルト95によって、フレーム90の右方向DR、左方向DL、前方向DF及び後方向DBの動き量は所定範囲内に規制される。このため、ターンテーブル93はフレーム90と共に、右方向DR、左方向DL、前方向DF及び後方向DBの動くことができるが、その動き量は8つのフレームずれ防止ボルト95によって規制される。
【0234】
このように、ラジアスゲージ9のターンテーブル93はテーブル回転方向R9に回転可能であり、かつ、右方向DR、左方向DL、前方向DF及び後方向DBに沿って所定範囲内で直線移動可能である。
【0235】
タイヤ62を載置したターンテーブル93は、タイヤ62の旋回動作時にタイヤ62と一体化して回転する。したがって、ラジアスゲージ9のターンテーブル93は、車両60の旋回中心に関係無く、載置したタイヤ62のタイヤ旋回角度に合致するテーブル回転角度で回転することができる。
【0236】
ターンテーブル93の外周面に沿って、ターンテーブル93上に円弧状の角度目盛92が設けられる。また、ターンテーブル93の上方に針91が設けられる。針91の先端部は角度目盛92の一部に平面視して重複するように配置される。
【0237】
図20及び
図21に示すように、ターンテーブル93の下面の中央部に締結用部品96が設けられ、締結用部品96の中心部を貫通し回転動作可能にシャフト97が設けられる。シャフト97は上端がターンテーブル93の下面の中心に結合され、下端が架台開口部99Oを介してカップリング98の上部に結合される。
【0238】
さらに、カップリング98の下方にターンテーブル用エンコーダ8が取り付けられる。したがって、シャフト97はカップリング98を介してターンテーブル用エンコーダ8に結合される。
【0239】
上述したシャフト97は、ターンテーブル93の回転動作に連動して回転することができる。したがって、ターンテーブル用エンコーダ8は、シャフト97の回転状態に基づき、ターンテーブル93のテーブル回転角度を正確に検出することができる。ターンテーブル用エンコーダ8はテーブル回転角度を示すテーブル回転角度情報S8を外部に出力することができる。
【0240】
また、ターンテーブル用エンコーダ8は、
図24で示した距離計64A及び64Bのように、測定対象をタイヤ62本体としていないため、テーブル回転角度情報S8が示すテーブル回転角度は、タイヤ62の膨らみ等の外乱の影響を受けることはない。
【0241】
なお、テーブル回転角度は、人手によって角度目盛92上の針91の先端の位置を確認することによっても検出することもできる。ただし、実施の形態2の変換テーブル作成方法では、針91及び角度目盛92は利用しない。
【0242】
このように、ラジアスゲージ9に設けられたターンテーブル用エンコーダ8は、シャフト97の回転状態に基づき、ターンテーブル93のテーブル回転角度を検出し、検出したテーブル回転角度を示すテーブル回転角度情報S8を出力することができる。
【0243】
図21に示すように、ターンテーブル用エンコーダ8はエンコーダブラケット88によって支持されている。エンコーダブラケット88の一部がラジアスゲージ設置架台99の上部に固定されている。したがって、ターンテーブル用エンコーダ8はエンコーダブラケット88によって安定性良く支持される。
【0244】
このような構成のラジアスゲージ9は、前述したように、操舵角変換テーブルT1を作成するための旋回角度測定装置として用いられる。
図15で示す実施の形態2の変換テーブル作成方法を実行する際、左右のタイヤ用に2つのラジアスゲージ9が用いられる。
【0245】
以下、左タイヤ用のラジアスゲージ9をラジアスゲージ9L、右タイヤ用のラジアスゲージ9をラジアスゲージ9Rとする。そして、ラジアスゲージ9Lのターンテーブル93をターンテーブル93Lとし、ラジアスゲージ9Rのターンテーブル93をターンテーブル93Rとする。
【0246】
さらに、ラジアスゲージ9Lのターンテーブル用エンコーダ8をターンテーブル用エンコーダ8Lとし、ラジアスゲージ9Rのターンテーブル用エンコーダ8をターンテーブル用エンコーダ8Rとする。加えて、ターンテーブル用エンコーダ8Lから出力されるテーブル回転角度情報S8をテーブル回転角度情報S8Lとし、ターンテーブル用エンコーダ8Rから出力されるテーブル回転角度情報S8をテーブル回転角度情報S8Rとする。
【0247】
以下、
図19~
図21で示したラジアスゲージ9の使用内容を
図15で示す変換テーブル作成方法と対応づけて説明する。
【0248】
ステップS21の実行時にラジアスゲージ9Lのターンテーブル93L上に左のタイヤ62が位置し、ラジアスゲージ9Rのターンテーブル93R上に右のタイヤ62が位置するように車両60が配置される。
【0249】
この際、車両60の前輪となる左のタイヤ62の中心がターンテーブル93Lの中心上になるように配置され、かつ、車両60の前輪となる右のタイヤ62の中心がターンテーブル93Rの中心上になるように配置される。上記配置を行う際、車両60のホイールベース(前輪の車軸と後輪の車軸の間の長さ)と、トレッド(左右のタイヤの中心から中心までの距離)が考慮される。
【0250】
ステップS21の実行後は、ターンテーブル93L及び93Rそれぞれは、載置した(左または右の)タイヤ62の旋回に伴い、タイヤ62の旋回角度と同一のテーブル回転角度で回転する。したがって、ターンテーブル用エンコーダ8が出力するテーブル回転角度情報S8が示すテーブル回転角度が、タイヤ62の正確なタイヤ旋回角度となる。
【0251】
ステップS22の実行時に、テーブル回転角度情報S8が変換テーブル作成部18に付与できるように、変換テーブル作成部18とターンテーブル用エンコーダ8とを接続することにより、変換テーブル作成準備状態のターンテーブル用エンコーダ8側の構成を実現することができる。
【0252】
ステップS24の実行時に、ステップS23で設定したハンドル角度に対応する左タイヤ用のタイヤ旋回角度は、ターンテーブル用エンコーダ8Lによって測定される。したがって、ターンテーブル用エンコーダ8Lが出力するテーブル回転角度情報S8Lが示すテーブル回転角度が左用タイヤ旋回角度となる。
【0253】
同様に、ステップS23で設定したハンドル角度に対応する右タイヤ用のタイヤ旋回角度は、ターンテーブル用エンコーダ8Rによって測定される。したがって、ターンテーブル用エンコーダ8Rが出力するテーブル回転角度情報S8Rが示すテーブル回転角度が右用タイヤ旋回角度となる。
【0254】
このように、実施の形態2の変換テーブル作成方法に用いるラジアスゲージ9は、ターンテーブル用エンコーダ8を有しているため、
図15で示すステップS24の操舵角の測定処理を正確かつ自動的に行うことができる。
【0255】
また、発明者らによって、
図19~
図21で示したラジアスゲージ9を用いて、
図15で示した変換テーブル作成方法を実行して得られた操舵角変換テーブルT1は精度が高いことが確認されている。
【0256】
すなわち、実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bが車両60に対し、ステアリング操作に伴う試験を実施した場合、ダイナモ制御装置75Bが操舵角変換テーブルT1を参照してローラ旋回制御処理を実行することにより、左右のタイヤ62がローラ対20L及び20Rから逸脱することなく、常に正常配置状態を保つことが発明者らによって確認されている。
【0257】
<その他>
実施の形態1のシャーシダイナモメータ1及び実施の形態2のシャーシダイナモメータ1Bでは、2個の一方車両把持機構と2個の他方車両把持機構とからなる4個の車両把持機構3を用いたがこれに限定されない。すなわち、n(≧1)個の一方車両把持機構とn個の他方車両把持機構とからなる2n個の車両把持機構3を有するシャーシダイナモメータであれば良い。
【0258】
実施の形態2の変換テーブル作成方法において、車両60が一般的な前輪操舵を採用する場合を想定したが、後輪操舵や4輪操舵に適用することができるのは勿論である。
【0259】
後輪操舵の場合、
図15で示すステップS21において、2つのラジアスゲージ9上に後輪の左右のタイヤが位置するように、車両60を配置する必要がある。
【0260】
4輪操舵の場合、
図15で示すステップS21において、前輪用の2つのラジアスゲージ9上に前輪の左右のタイヤが位置し、後輪用の2つのラジアスゲージ9上に後輪の左右のタイヤが位置するように、車両60を配置する必要がある。その結果、ステップS24において、4つのテーブル回転角度情報S8(前輪左用、前輪右用、後輪左用、後輪右用)が得られることになる。
【0261】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0262】
1,1B シャーシダイナモメータ
2 ローラ装置
3 車両把持機構
4 ハンドル
5 ハンドル用エンコーダ
8 ターンテーブル用エンコーダ
9 ラジアスゲージ
10 床面
18 変換テーブル作成部
20,20L,20R ローラ対
21,21L,21R ローラ旋回機構
25,25L,25R ローラ旋回用モータ
28,28L,28R 旋回ベース
60 車両
62 タイヤ
75,75B ダイナモ制御装置
93 ターンテーブル
97 シャフト
98 カップリング
T1 操舵角変換テーブル