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特開2024-57201吸着部材、吸着ローター及びそれらの製造方法
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  • 特開-吸着部材、吸着ローター及びそれらの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057201
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】吸着部材、吸着ローター及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20240417BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240417BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20240417BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20240417BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240417BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B01D53/26 220
B01J20/30
B01J20/10 D
B32B3/26
B32B27/30 Z
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163768
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(72)【発明者】
【氏名】冨塚 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】浦 幸正
(72)【発明者】
【氏名】八木 暁
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 達哉
【テーマコード(参考)】
4D052
4F100
4G066
【Fターム(参考)】
4D052AA00
4D052CA01
4D052CB01
4D052HA01
4D052HB02
4F100AA20
4F100AA20B
4F100AK22
4F100AK22B
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00B
4F100DC01
4F100DC01A
4F100DD12
4F100DD12A
4F100DG10
4F100DG10A
4F100GB56
4F100JK02
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JM01
4F100JM01B
4G066AA22A
4G066AA22B
4G066AA22D
4G066AC07D
4G066AC16D
4G066BA07
4G066BA28
4G066DA03
4G066FA28
4G066FA37
4G066FA38
(57)【要約】
【課題】 本発明は、耐熱性の高い吸着部材、吸着ローター及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、吸着剤及び前記吸着剤を担持している担持基材を含む吸着部材(10)であって、前記担持基材が、平坦状基材(11)、コルゲート状基材(12)、及びそれらの接着部(13)を含むハニカム構造体であり、かつ前記接着部(13)が、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマー、並びに塩基安定型コロイダルシリカ由来のシリカを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤及び前記吸着剤を担持している担持基材を含む吸着部材であって、
前記担持基材が、平坦状基材、コルゲート状基材、及びそれらの接着部を含むハニカム構造体であり、かつ
前記接着部が、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマー、並びに塩基安定型コロイダルシリカ由来のシリカを含む、吸着部材。
【請求項2】
前記接着部が、前記酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーを20質量%以上で含み、かつ前記シリカを80質量%以下で含む、請求項1に記載の吸着部材。
【請求項3】
前記平坦状基材及び/又は前記コルゲート状基材が、混抄紙を含む、請求項1に記載の吸着部材。
【請求項4】
前記吸着剤が、シリカゲルである、請求項1に記載の吸着部材。
【請求項5】
前記塩基安定型コロイダルシリカが、アンモニウムイオン安定型コロイダルシリカである、請求項4に記載の吸着部材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の吸着部材を含む、吸着ローター。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の吸着部材を含む、空気処理装置。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の吸着部材に、非吸着物質を含む空気を接触させることを含む、空気処理方法。
【請求項9】
平坦状基材及び/又はコルゲート状基材に接着剤を塗布すること、
前記接着剤が塗布された前記2つの基材を巻回すること又は複数の前記2つの基材を積層することによってハニカム構造体を得る工程、及び
前記平坦状基材及び/又はコルゲート状基材に吸着剤を担持させる工程、
を含み、
前記接着剤が、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーのエマルション及び塩基安定型コロイダルシリカを含む、吸着部材の製造方法。
【請求項10】
前記接着剤が、前記酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーのエマルションを固形分で20質量%以上含み、かつ前記塩基安定型コロイダルシリカを固形分で80質量%以下含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記吸着剤を担持させる工程が、前記ハニカム構造体に珪酸ソーダを適用する工程、及び前記珪酸ソーダが適用された前記ハニカム構造体を酸処理する工程を含む、請求項9又は10に記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着部材、吸着ローター及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造工場等の製造現場において、水分を除去したドライエアが用いられている。ドライエアを供給するための装置として、特許文献1に記載のような、シリカゲル等の吸着剤をハニカム構造体に担持させた吸着部材を具備した吸着ローターが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のような吸着部材は、吸着ローターの処理ゾーンにおいて高湿度空気の水分を吸着し、再生ゾーンにおいて加熱されて吸着した水分を放出する。回転運動する吸着ローターが、処理ゾーン及び再生ゾーンに吸着部材を通過させることで連続的に吸着を行ってドライエアを得ることができる。
【0004】
ハニカム構造体は、平坦状基材とコルゲート状基材とを接着剤で接着して巻き取ることで円筒状に形成される。吸着部材は、円筒状のハニカム構造体を複数に切断をした後、乾燥させて得られた生素子に対して吸着剤を担持させることで製造される。
【0005】
特許文献2では、平坦状基材とコルゲート状基材とをアクリル系エマルジョン及びコロイダルシリカを含む接着剤によって接着してハニカム構造体を形成している。その後、ハニカム構造体の生素子を、ケイ酸ナトリウム溶液に浸漬し、そして酸処理を行うことで、シリカゲルがハニカム構造体に担持された吸着部材が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61-252497号公報
【特許文献2】特開2021-181072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐熱性の高い吸着部材、吸着ローター及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
吸着剤及び前記吸着剤を担持している担持基材を含む吸着部材であって、
前記担持基材が、平坦状基材、コルゲート状基材、及びそれらの接着部を含むハニカム構造体であり、かつ
前記接着部が、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマー、並びに塩基安定型コロイダルシリカ由来のシリカを含む、吸着部材。
《態様2》
前記接着部が、前記酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーを20質量%以上で含み、かつ前記シリカを80質量%以下で含む、態様1に記載の吸着部材。
《態様3》
前記平坦状基材及び/又は前記コルゲート状基材が、混抄紙を含む、態様1に記載の吸着部材。
《態様4》
前記吸着剤が、シリカゲルである、態様1に記載の吸着部材。
《態様5》
前記塩基安定型コロイダルシリカが、アンモニウムイオン安定型コロイダルシリカである、態様4に記載の吸着部材。
《態様6》
態様1~5のいずれか一項に記載の吸着部材を含む、吸着ローター。
《態様7》
態様1~5のいずれか一項に記載の吸着部材を含む、空気処理装置。
《態様8》
態様1~5のいずれか一項に記載の吸着部材に、非吸着物質を含む空気を接触させることを含む、空気処理方法。
《態様9》
平坦状基材及び/又はコルゲート状基材に接着剤を塗布すること、
前記接着剤が塗布された前記2つの基材を巻回すること又は複数の前記2つの基材を積層することによってハニカム構造体を得る工程、及び
前記平坦状基材及び/又はコルゲート状基材に吸着剤を担持させる工程、
を含み、
前記接着剤が、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーのエマルション、並びに塩基安定型コロイダルシリカを含む、吸着部材の製造方法。
《態様10》
前記接着剤が、前記酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーのエマルションを固形分で20質量%以上含み、かつ前記塩基安定型コロイダルシリカを固形分で80質量%以下含む、態様9に記載の製造方法。
《態様11》
前記吸着剤を担持させる工程が、前記ハニカム構造体に珪酸ソーダを適用する工程、及び前記珪酸ソーダが適用された前記ハニカム構造体を酸処理する工程を含む、態様9又は10に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性の高い吸着部材、吸着ローター及びそれらの製造方法を提供することを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の吸着部材10を含む吸着ローター100の1つの例を示している。
図2図2は、本発明の吸着部材の製造方法の1つの例を示している。
図3図3は、実施例における接着力の評価を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《吸着部材及び吸着ローター》
本発明の吸着部材は、吸着剤及び吸着剤を担持している担持基材を含む。ここで、担持基材が、平坦状基材、コルゲート状基材、及びそれらの接着部を含むハニカム構造体であり、かつその接着部が、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマー、並びに塩基安定型コロイダルシリカ由来のシリカを含む。
【0012】
本発明者らが鋭意検討したところ、特許文献2に記載の吸着部材において、アクリル系エマルジョンを、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーに変更するとともに、コロイダルシリカも従来用いられていた酸性型コロイダルシリカから塩基安定型コロイダルシリカに変更することによって、特許文献2に記載の吸着部材よりも耐熱性の高い吸着部材を形成できることを見出した。また、このような接着剤は、保存安定性も高く、また接着力が高い結果、吸着部材に高い機械的強度も提供できることが分かった。
【0013】
理論に拘束されないが、特許文献2に記載のようなアクリル系エマルジョンを用いた接着剤は、酸処理工程において、アクリル系ポリマーの側鎖にあるエステル基等が加水分解して分解生成物を生じるのに対して、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーでは側鎖が分解等しないため、ポリマーの分解生成物が発生しない。そして、ポリマー由来の分解生成物の有無に起因して、本発明の吸着部材は、高い耐熱性を有することができると考えられる。ハニカム構造体は、その構造上、蓄熱されやすく、吸着ローターが回転運動を停止した状態では特にポリマー由来の分解生成物の有無が耐熱性に影響を与えると考えられる。なお、アクリル系ポリマーからの分解生成物については、本発明者らの赤外分光法による解析によって、その発生が示唆された。
【0014】
図1は、吸着部材10を含む吸着ローター100を例示している。吸着ローター100は、吸着部材10、及び吸着部材10を処理ゾーン10aと再生ゾーン10bに隔てるセパレータ20を含み、吸着部材10は、吸着ローター100によって回転可能となっている。吸着部材10は、吸着剤(図示せず)及び吸着剤を担持している担持基材を含み、担持基材は、平坦状基材11、コルゲート状基材12、及びそれらの接着部13を含むハニカム構造体である。ハニカム構造体は、平坦状基材11とコルゲート状基材12との間に、通気部14を有している。
【0015】
吸着ローター100は、本分野で周知の他の構成を具備することができ、図示されていないが、例えば吸着部材10を格納するケーシング、及び吸着部材10を回転運動させるための回転機構を具備することができる。吸着ローター100は、吸着部材10の複数の分割体を具備することができる。
【0016】
湿分を含む外部からの空気流1は、吸着部材10の処理ゾーン10aを通過することによって、乾燥した空気流2に処理されて、クリーンルーム等のドライエアの使用場所に供給される。処理ゾーン10aにおいて水分を吸着した吸着部材10は、吸着ローター100内で回転することによって再生ゾーン10bに移動し、ここで高温の空気流3に晒されることで、吸着部材10は水分を脱離し、再度処理ゾーン10aに移動する。また、吸着部材10の再生ゾーン10bを通過して吸着部材10の水分を脱離させた高温の空気流3は、湿分を含む空気流4となる。
【0017】
〈吸着剤〉
本発明の吸着部材は、ハニカム構造体に吸着剤が担持される。ここで、吸着剤は、物理吸着剤であっても化学吸着剤であってもよく、例えば、水分を吸着するための除湿剤であってもよく、揮発性有機化合物を吸着するための吸着剤であってもよい。吸着剤の具体的な種類は特に限定されず、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、酸化アルミニウム、生石灰、シリカゲル、ゼオライト等の無機系吸着剤;及びポリアクリル酸塩、アルキレンオキサイド樹脂等の有機系吸着剤を挙げることができるが、特に、シリカゲルを用いることができる。
【0018】
吸着剤は、担持基材の表面に添着されていてもよく、繊維状又は多孔質の担持基材であれば、基材内部に担持されていてもよい。
【0019】
〈担持基材〉
担持基材は、平坦状基材、コルゲート状基材、及びそれらの接着部を含むハニカム構造体である。本発明の有利な効果が得られる範囲において、平坦状基材は、実質的に平坦である必要はなく、コルゲート状基材は、波状形状を有している必要はなく、ハニカム構造体も、ハニカム形状である必要はない。平坦状基材とコルゲート状基材との接着部も、図1のような位置に限定される必要はない。これらの用語は、本分野において用いられている用語として知られている範囲において、様々な形状を有することができる。
【0020】
〈担持基材-基材〉
平坦状基材及び/又はコルゲート状基材の基材としては、フィルム、織布又は不織布、金属箔、発泡体、紙等を用いることができ、特に繊維を含む紙状基材を用いることができる。紙状基材に含まれる繊維としては、シリカ・アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維、ロックウール繊維、炭素繊維等の無機繊維;及びポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アラミド繊維、パルプ繊維、レーヨン繊維等の有機繊維が挙げられる。また、これらの繊維は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよく、無機繊維と有機繊維とを組合せたものであってもよい。また、平坦状基材及びコルゲート状基材は、同じ繊維を用いてもよいし、異なる繊維を用いてもよい。
【0021】
紙状基材は、上記のような繊維のみで構成されていてもよく、又は上記のような繊維を80質量%以上、90質量%以上、若しくは95質量%以上含む基材であってもよい。
【0022】
本発明においては、平坦状基材及び/又はコルゲート状基材の基材として、吸湿性粒子を含む混抄紙を用いることができる。
【0023】
混抄紙を用いた場合、平坦状基材とコルゲート状基材との接着の際に、吸湿性粒子が接着剤をすぐに乾燥させてしまい、接着力が低くなることがわかった。この場合、ハニカム構造体を製造した後、複数に分割する工程等において、平坦状基材とコルゲート状基材との接着が剥離してしまい、取り扱い性に問題が生じる場合があった。本発明においては、接着部が高い接着力を有しているため、混抄紙を用いた場合であっても、平坦状基材とコルゲート状基材との接着が剥離しにくいことが分かった。
【0024】
本明細書において混抄紙とは、上記のような繊維の隙間に、シリカゲル、ゼオライト、シリカ・アルミナ非晶質多孔体、メソポーラスシリカ、イオン交換樹脂、ポリアクリル酸塩樹脂、アルキレンオキサイド樹脂等の吸湿性粒子を予め抄き込んだ紙状基材をいう。混抄紙は、吸湿性粒子を分散した繊維溶液を紙状に抄くことで作製する。シリカゲルの種類は目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、低湿度時の吸湿力に優れるA型、高湿度時の吸湿力に優れるB型を、目的に応じて選択すればよい。あるいは、A型及びB型のシリカゲルを混合してもよい。
【0025】
混抄紙に含まれる吸湿性粒子は、製造過程で繊維の隙間で凝集した形態となる。一方、吸着剤が例えばシリカゲルであれば、ハニカム構造体に含浸させた珪酸ソーダを酸処理することでシリカゲルが形成される。この場合、混抄紙に含まれる吸湿性粒子の空隙の量は、ハニカム構造体の通気部に形成されたシリカゲルの空隙の量より多くなる。ここで、「空隙の量」とは、吸湿性粒子内部の細孔表面積を表す比表面積とは異なり、粒子と粒子の隙間に形成される隙間の単位体積当たりの量を意味する。「空隙の量」は、粒子をSEM等により撮像し、見た目の粗さから比較すればよい。粒子がランダムに凝集するほど、「空隙の量」は多くなり、SEM画像の見た目が粗くなる(微細な凹凸状が観察される)。一方、「空隙の量」が少なくなるほど、粒子が密に形成されることから、SEM画像の見た目が滑らかになる。
【0026】
また、「空隙の量」は、個々の粒子と粒子の隙間の量ではなく、所定量の粒子が凝集した領域における空隙の量(見た目の粗さ又は滑らかさ)を意味する。所定量の粒子が凝集した領域とは、SEM画像から見た粒子が凝集している任意の領域を意味する。したがって、領域には表面に形成されたクラック等は含まれない。換言すると、領域とは、SEM画像で観察される表面全体を意味するのではなく、あくまでも粒子が凝集している部分を意味する。
【0027】
混抄紙に含まれる吸湿性粒子と、吸着剤のシリカゲルとの違いについては、「空隙の量」に代え、「表面平滑性」、「表面性状」又は「表面粗さ」との用語を用いて違いを表してもよい。また、SEM画像から見た混抄紙に含まれる吸湿性粒子とシリカゲルの違いを、以下のように表してもよい。
・顆粒体が凝集した凹凸の表面を持つ吸湿性粒子と、表面が相対的に平らなブロック形状のシリカゲル。
・ざらざらした表面を持つ吸湿性粒子と、滑らかな表面を持つ合成シリカゲル。
【0028】
混抄紙は、上記のような吸湿性粒子を50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上含むことができ、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、又は60質量%以下で含むことができる。混抄紙は、上記のような繊維を10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、又は40質量%以上含むことができ、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下で含むことができる。例えば、混抄紙は、吸湿性粒子を50質量%以上90質量%以下で、かつ繊維を10質量%以上50質量%以下で含むことができる。
【0029】
平坦状基材及び/又はコルゲート状基材の秤量は、10g/m以上、30g/m以上、又は50g/m以上であってもよく、100g/m以下、50g/m以下、又は30g/m以下であってもよい。特に、基材が吸湿性粒子を含まない紙状基材である場合には、その秤量は、10g/m以上、15g/m以上、又は20g/m以上であってもよく、50g/m以下、30g/m以下、又は20g/m以下であってもよい。また、基材が混抄紙である場合には、その秤量は、50g/m以上、60g/m以上、又は80g/m以上であってもよく、100g/m以下、90g/m以下、又は80g/m以下であってもよい。
【0030】
平坦状基材及び/又はコルゲート状基材の厚みは、50μm以上、100μm以上、又は200μm以上であってもよく、500μm以下、300μm以下、又は200μm以下であってもよい。特に、基材が吸湿性粒子を含まない紙状基材である場合には、その厚みは、50μm以上又は80μm以上であってもよく、200μm以下、150μm以下、又は120μm以下であってもよい。また、基材が混抄紙である場合には、その厚みは、100μm以上又は150μm以上であってもよく、300μm以下、250μm以下、又は200μm以下であってもよい。
【0031】
〈担持基材-接着部〉
平坦状基材とコルゲート状基材との接着部は、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマー、並びに塩基安定型コロイダルシリカ由来のシリカを含む。
【0032】
酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーを接着部に用いた場合には、高い耐熱性が得られることがわかった。理論に限定されないが、吸着部材が長期間加熱される場合には、ポリマーの分解生成物が生じると考えられるが、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーを接着部に用いた場合には、シリカゲルを生成するための酸処理を行ったとしても、側鎖が分解等しないため、ポリマーの分解生成物が発生せず、高い耐熱性が得られると考えられる。
【0033】
酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーは、エマルジョン由来であってもよく、この場合、エマルジョンのpHは、3.0以上、4.0以上、又は5.0以上であってもよく、8.0以下、7.0以下、又は6.0以下であってもよい。例えば、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーのエマルジョンは、4.0以上7.0以下であってもよい。このような範囲のpHである場合には、塩基安定型コロイダルシリカとエマルジョンとを混合して得られた接着剤の保存安定性が高い。
【0034】
酢酸ビニル系ポリマーは、酢酸ビニルと随意にエチレンとを含むモノマー組成物から重合することができ、そのモノマー組成物はさらに他のモノマーを含むことができる。
【0035】
その他の共重合可能なモノマーとしては、例えば塩化ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、N-ビニルピロリドン、スチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0036】
酢酸ビニル系ポリマーの重合は例えば乳化重合によって行うことができる。したがって、酢酸ビニル系ポリマーとしては、酢酸ビニルポリマー又はエチレン-酢酸ビニルコポリマーのエマルションであってもよい。
【0037】
エチレン-酢酸ビニルコポリマーにおいて、エチレン、酢酸ビニル及び他のモノマーの割合は、質量比で、5~40:40~95:0~20であってもよく、例えば10~35:90~50:0~15であってもよい。
【0038】
ウレタン系ポリマーとしては、接着剤として用いられるウレタン系ポリマーを用いることができ、例えばそのような接着剤として、ウレタン系ポリマー接着剤、ウレタン系ポリマー溶剤系接着剤、ウレタン系ポリマーエマルション接着剤等が挙げられる。ウレタン系ポリマーとしては、例えば、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン、シリル化ポリウレタン等であってもよい。
【0039】
接着部は酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーを20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上含むことができ、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、又は45質量%以下で含むことができる。例えば、接着部は、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーを20質量%以上60質量%以下、又は30質量%以上50質量%以下で含むことができる。これらのポリマーは、長期間の加熱にさらされても分解生成物が発生しにくいため、接着部に多くのポリマーを含有でき、それにより高い接着力を提供できることがわかった。
【0040】
接着部のシリカは、塩基安定型コロイダルシリカに由来する。塩基安定型コロイダルシリカとしては、リチウムイオン安定型コロイダルシリカ、ナトリウムイオン安定型コロイダルシリカ、カリウムイオン安定型コロイダルシリカ、アンモニウムイオン安定型コロイダルシリカ等を挙げることができるが、特にナトリウムイオン安定型コロイダルシリカ及びアンモニウムイオン安定型コロイダルシリカを挙げることができる。
【0041】
これらの中でも特に、アンモニウムイオン安定型コロイダルシリカは、金属イオンを含んでいないため、特に半導体関連等の分野においては特に有利である。また、吸着剤としてシリカゲルを使用する場合にも、アンモニウムイオン安定型コロイダルシリカが好適に用いられる。アンモニウムイオン型コロイダルシリカに由来するシリカは、ナトリウムイオン安定型コロイダルシリカに由来する比較的多量のナトリウムを残留しておらず、酸性型コロイダルシリカと比較して抽出液のpHが高くなる。また、その抽出液おいて微量のアンモニウムイオンが検出されることがある。
【0042】
アンモニウムイオン型コロイダルシリカは、分散剤としてアンモニアを含むコロイダルシリカを含むことが好ましい。このようなNH4イオンで安定化されているコロイダルシリカ(アンモニア安定化タイプ)は、市販されており、例えば、日産化学工業株式会社のスノーテックスST-NXS、ST-NS、ST-N、ST-N30、ST-N40等を挙げることができる。
【0043】
接着部は、上記シリカを35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、又は55質量%以上含むことができ、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下で含むことができる。例えば、接着部は、上記シリカを40質量%以上70質量%以下、又は45質量%以上65質量%以下で含むことができる。
【0044】
接着部における酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーのシリカに対する質量比(ポリマー/シリカ)は、0.30以上1.50以下、0.50以上1.20以下、又は0.70以上1.0以下とすることができる。
【0045】
接着部は、さらに粘着付与剤、可塑剤、硬化剤、架橋剤、希釈剤、充填剤、増粘剤、顔料、老化防止剤、酸化防止剤、消泡剤、難燃剤、防腐剤、分散剤、湿潤剤、親水化剤等に由来する成分を含むことができる。
【0046】
《吸着部材及び吸着ローターの製造方法》
本発明の吸着部材の製造方法は、平坦状基材及び/又はコルゲート状基材に接着剤を塗布すること、前記接着剤が塗布された前記2つの基材を巻回すること又は複数の前記2つの基材を積層することによってハニカム構造体を得る工程、及び前記平坦状基材及び/又はコルゲート状基材に吸着剤を担持させる工程、を含み、前記接着剤が、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーのエマルション及び塩基安定型コロイダルシリカを含む。吸着ローターの製造方法は、回転可能に保持される吸着部材、及び吸着部材を処理ゾーンと再生ゾーンに隔てるセパレータを組み合わせることを含む。
【0047】
本発明の吸着部材及び吸着ローターの製造方法によって得られる吸着部材及び吸着ローターは、上記の本発明の吸着部材及び吸着ローターであってもよい。本発明の吸着部材及び吸着ローターの製造方法に関する各構成については、上記の本発明の吸着部材及び吸着ローターに関して説明した各構成を参照することができる。
【0048】
図2は、本発明の吸着部材の製造方法の1つの例を示している。この製造方法では、工程(a)において、平坦状基材を用意する。基材として混抄紙を用いる場合には、この段階で基材には吸湿性粒子が含まれている。なお、本発明の製造方法において、吸湿性粒子とは、以下に記載の吸着剤と同じ物質となることができるが、吸着剤とは異なるものとして言及する。
【0049】
工程(b)において、平坦状基材をコルゲート化処理することによって、コルゲート状基材を製造する。コルゲート化処理をする際に、コルゲート状基材の波形状頂部に接着剤を塗布して、平坦状基材と貼り合わせることによって、コルゲート状基材と平坦状基材との積層体を得る。
【0050】
ここで、接着剤は、酢酸ビニル系ポリマー及び/又はウレタン系ポリマーのエマルション及び塩基安定型コロイダルシリカを含み、上記本発明の吸着部材の接着部を形成するために用いられる接着剤とすることができる。したがって、接着剤の構成は、上記接着部に関する構成を参考にすることができる。
【0051】
工程(c)において、平坦状基材及びコルゲート状基材の2つの基材の積層体を巻回する。これにより、図1に示すような、平坦状基材とコルゲート状基材とが交互に積層された円筒状のハニカム構造体を得ることができる。なお、図2に示す方法によって得られる吸着部材は、平坦状基材及びコルゲート状基材の2つの基材の積層体の巻回体であるが、直方体状の吸着部材を得る場合には、平坦状基材とコルゲート状基材とを所定の大きさで交互に積層して得ることができる。この場合には、工程(c)及び工程(d)を主に変更すればよい。
【0052】
工程(d)において、円筒状のハニカム構造体を、複数のハニカム構造体に切断することができる。この際には、接着部が平坦状基材とコルゲート状基材とを強い接着力で接着していることが好ましい。
【0053】
工程(e)において、吸着剤が担持される前の状態の生素子とも呼ばれるハニカム構造体を得る。
【0054】
工程(f)において、工程(e)で得られた生素子に吸着剤を担持させる。ここでは、生素子を珪酸ソーダ溶液に浸漬させる。これにより、平坦状基材とコルゲート状基材との接着性も高めることができる。
【0055】
珪酸ソーダ溶液は、市販の珪酸ソーダを水に溶解させることで作製することができる。所望の量の吸着剤を担持させ、かつハニカム構造体の通気部が目詰まりしないように、珪酸ソーダ溶液の濃度としては、例えば、20~50質量%、好ましくは25~45質量%、より好ましくは30~40質量%とすることができる。
【0056】
工程(g)において、珪酸ソーダを適用した生素子に酸処理を行って、吸着剤のシリカゲルを合成する。
【0057】
シリカゲル合成工程に用いる酸は、珪酸ソーダ溶液からシリカゲルを合成できれば特に制限はない。酸としては、例えば、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸、及びそれら酸の金属塩等、例えば、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩、硝酸カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩、硫酸鉄、硝酸鉄等の鉄塩が挙げられる。酸及び酸の金属塩は、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0058】
合成されるシリカゲルは、A型であってもB型であってもよい。酸処理の濃度を変える等の方法によって、目的に応じて所望の型となるように合成することができる。なお、珪酸ナトリウム溶液からシリカゲルを合成する際に、酸としてアルミニウム塩を用いた場合には、シリカアルミナゲルが得られる。本明細書において「合成シリカゲル」と記載した場合、「合成シリカゲル」には、酸に由来する金属塩を含んだシリカゲルも包含される。
【0059】
工程(h)において、シリカゲルを担持した状態の生素子を水等によって洗浄し、これを乾燥させることで、工程(i)において吸着部材が得られる。
【0060】
図2に記載の各工程は、本発明の製造方法の好ましい1つの実施形態を例示しているものであり、本発明の有利な効果が得られる範囲において、特にこの順序に限定されるものではない。また、上記の各工程は、全てが必要な工程ではなく、製造する吸着部材の実施形態に応じて、行わない工程があってもよい。
【0061】
《空気処理装置及び空気処理方法》
本発明は、さらに上記のような吸着部材を含む空気処理装置に関する。本発明の空気処理装置は、上記のような吸着部材を含むこと以外は、家庭又は工場で使用される通常の空気処理装置、例えば除湿機、空気清浄機、VOC処理装置等の空気処理装置の周知の構成を有することができる。
【0062】
本発明は、さらに上記のような吸着部材に、非吸着物質を含む空気を接触させることを含む空気処理方法に関する。本発明の空気処理装置は、上記のような吸着部材を用いること以外は、家庭又は工場で使用される通常の空気処理方法、例えば除湿方法、空気清浄方法、VOC処理方法等の空気処理方法の周知の構成を有することができる。なお、非吸着物質としては、水分、揮発性有機化合物等を挙げることができる。
【0063】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例0064】
《製造例》
〈比較例1:従来例〉
13.5質量%のアクリル系エマルジョン(3M,JA-7562)、86.3質量%の酸性型コロイダルシリカ(日産化学株式会社,ST-O-40)、増粘剤として0.1質量%のキサンタンガム(CP Kelco,ケルザン)及び消泡剤として0.1質量%のシリコーンエマルジョン(信越化学工業株式会社,KM-71)を含む、比較例1の接着剤を調製した。なお、この接着剤は、固形分で20質量%のポリマーと80質量%のシリカを含んでいた。
【0065】
基材として混抄紙を使用して、上記の接着剤を用いて、直径500mmで高さ400mmの円筒状ハニカム構造体を製造した。なお、混抄紙は、65質量%のシリカゲル(A型シリカゲル、富士シリシア化学社製サイリシア740)、15質量%のガラス繊維及び20質量%の有機繊維を含み、秤量83g/m、厚み197μmであった。
【0066】
その後、円筒のハニカム構造体を半分に切断した。これを珪酸ソーダに浸漬し、硫酸アルミニウムによって酸処理をして、水洗及び乾燥させて、実施例1の吸着部材を製造した。
【0067】
〈比較例2〉
15.5質量%のエチレン-酢酸ビニル系エマルジョン(住化ケムテックス株式会社,スミカフレックス400HQ)、84.3質量%の酸性型コロイダルシリカ(日産化学株式会社,ST-O-40)、増粘剤として0.1質量%のキサンタンガム(CP Kelco,ケルザン)及び消泡剤として0.1質量%のシリコーンエマルジョン(信越化学工業株式会社,KM-71)を含む、比較例2の接着剤を調製した。なお、この接着剤は、固形分で20質量%のポリマーと80質量%のシリカを含んでいた。
【0068】
その後、比較例1と同様にして吸着部材を製造しようとしたが、接着剤の粘度が高くなり、接着剤の均一な塗布ができなかったため、吸着部材の製造は行わなかった。
【0069】
〈実施例1〉
12.0質量%のエチレン-酢酸ビニル系エマルジョン(住化ケムテックス株式会社,スミカフレックス400HQ)、87.8質量%のアンモニウムイオン型コロイダルシリカ(日産化学株式会社,ST-N-30)、増粘剤として0.1質量%のキサンタンガム(CP Kelco,ケルザン)及び消泡剤としてシリコーンエマルジョン(信越化学工業株式会社,KM-71)を含む、実施例1の接着剤を調製した。なお、この接着剤は、固形分で20質量%のポリマーと80質量%のシリカを含んでいた。
【0070】
その後、比較例1と同様にして吸着部材を製造した。
【0071】
〈実施例2〉
29.9質量%のエチレン-酢酸ビニル系エマルジョン(住化ケムテックス株式会社,スミカフレックス400HQ)、69.9質量%のアンモニウムイオン型コロイダルシリカ(日産化学株式会社,ST-N-30)、増粘剤として0.1質量%のキサンタンガム(CP Kelco,ケルザン)及び消泡剤としてシリコーンエマルジョン(信越化学工業株式会社,KM-71)を含む、実施例1の接着剤を調製した。なお、この接着剤は、固形分で44質量%のポリマーと56質量%のシリカを含んでいた。
【0072】
その後、比較例1と同様にして吸着部材を製造した。
【0073】
《評価》
〈蓄熱性試験〉
半分に分割された吸着部材の中心位置(すなわち、円筒の円平面の中心から直径1/4の位置だけ外方向の位置かつ高さ方向で中心の位置)から高さ方向に110mm上の位置で熱電対を設置して、150℃の炉内に吸着部材を置いた場合の温度変化を測定した。その結果、実施例1の結果は、実施例2の結果とほぼ同一であり、温度の上昇は認められなかった。
【0074】
〈引張強度試験〉
シリカゲルを生成する前のハニカム構造体(生素子)の状態、及び最終の吸湿部材の状態で、引張強度の試験を行って、接着部の接着力の評価を行った。
【0075】
引張強度は、次のように測定した:
(1)吸着部材を積層方向と平行となるように5cmの立方体状に切断し、引張強度測定用の試験体を得る。
(2)試験体を110℃×1時間乾燥し、重量を電子天秤で測定し、また3辺の長さをノギスで測定する。
(3)試験体のハニカム構造体の積層方向の上下に、エポキシ接着剤を用いて引張試験用の冶具を接着する。
(4)試験体を引張試験機(島津製作所、島津製作所・小型卓上試験機Ez-LX)に取り付けて、試験体に1mm/minで連続的に引張加重を加え、破断時の荷重を1N単位まで求める。
(5)積層方向の引張強度は、次式によって求める:
σ=F/(A×B)
(ただし、σ:引張強度[N/cm]、F:試験体破断時の荷重[N]、試験体のA寸[cm]、試験体のB寸[cm])
【0076】
その結果を、図3に示す。図3(a)は、生素子の状態での引張強度の結果を示しており、図3(b)は、最終製品の状態での引張強度の結果を示している。
【0077】
図3から明らかなように、比較例1よりも、実施例2の方が、生素子の状態であっても、最終製品の状態であっても高い接着力を有していた。なお、実施例1は、比較例1と同程度の接着力であった。
【0078】
〈保存安定性試験〉
比較例1及び実施例1~2の接着剤を常温で静置して、コロイダルシリカの分散安定状態が保持されるかどうかの試験を行った。
【0079】
その結果、比較例1の接着剤は、2日間程度でコロイダルシリカのシリカが凝集して沈殿が発生して接着剤として使用できなくなった。一方で、実施例1~2の接着剤は、1週間経過後であってもコロイダルシリカのシリカが分散された状態を維持することができた。
【符号の説明】
【0080】
1 湿分を含む空気流
2 乾燥した空気流
3 高温の空気流
4 湿分を含む空気流
10 吸着部材
10a 処理ゾーン
10b 再生ゾーン
11 平坦状基材
12 コルゲート状基材
13 接着部
14 通気部
100 吸着ローター
図1
図2
図3