(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057683
(43)【公開日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ロックボルトの施工装置及び施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
E21D20/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164488
(22)【出願日】2022-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】手塚 仁
(72)【発明者】
【氏名】杉本 憲一
(72)【発明者】
【氏名】畔高 伸一
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 勉
(72)【発明者】
【氏名】間野 真至
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
(57)【要約】
【課題】建設機械で加圧流体膨張式のロックボルトの打設作業を行う場合において、打設作業を効率的に行えるようにする。
【解決手段】ロックボルトの施工装置は、建設機械と、建設機械のブームの前端側に設けられたガイドと、ガイド上を移動可能に設けられた押圧手段と、押圧手段の前端側に設けられた取付部50と、加圧流体膨張式のロックボルトの後端側を取付部に取付ける取付手段100とを備え、取付部は、前端開放の円筒状凹部51を備え、円筒状凹部は、円筒の内周面に流体圧供給機構(注水機構52)を備え、流体圧供給機構は、前側円環状密封手段及び後側円環状密封手段と、ロックボルトを膨張させるために必要な所定の流体圧を供給するための流体供給路を有した円環状流体圧供給部とを備え、取付手段は、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の円筒の中心線とが一致するように、ロックボルトの後端側を取付部の円筒状凹部に取付ける手段である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械と、
建設機械のブームの前端側に設けられたガイドと、
ガイド上に当該ガイドの延長方向に沿って移動可能なように設けられた押圧手段と、
押圧手段の前端側に設けられた取付部と、
加圧流体膨張式のロックボルトの後端側を取付部に取付ける取付手段とを備え、
取付部は、前端開放の円筒状凹部を備え、
円筒状凹部は、円筒の内周面に流体圧供給機構を備え、
流体圧供給機構は、円筒状凹部の内周面の前後に間隔を隔てて配置された前側円環状密封手段及び後側円環状密封手段と、前側円環状密封手段と後側円環状密封手段との間に配置されてロックボルトの内側にロックボルトを膨張させるために必要な所定の流体圧を供給するための流体供給路を有した円環状流体圧供給部とを備え、
取付手段は、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の円筒の中心線とが一致するように、
ロックボルトの後端側を取付部の円筒状凹部に取付ける手段であることを特徴とするロックボルトの施工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロックボルトの施工装置を用いたロックボルトの施工方法であって、
取付手段により、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の円筒の中心線とが一致するように、ロックボルトの後端側を取付部の円筒状凹部に取付ける第1のステップと、
取付部の円筒状凹部に取付けられたロックボルトを地山に形成された打設用の孔に挿入する第2のステップと、
後端側が取付部に取付けられた状態で打設用の孔に挿入されたロックボルトの内側に、円環状流体圧供給部の流体供給路を介してロックボルトを膨張させるために必要な所定の流体圧を供給して、ロックボルトを膨張させることにより、ロックボルトを打設用の孔に定着させる第3のステップとを備えたことを特徴とするロックボルトの施工方法。
【請求項3】
取付手段は、取付部と、水供給手段から取付部に供給される水圧を調整する水圧調整手段とを備えて構成され、
水圧調整手段は、水供給手段と、円環状流体圧供給部に連通する取付部の取水口と水供給手段とを繋ぐように設けられた注水路と、この注水路の中途に設けられた分岐管と、分岐管の分岐路に繋がれて注水路から分岐した水を外に排出するための排水路と、分岐路に設けられた流路開閉バルブと、流路開閉バルブの開閉操作部材と、両端が注水路に接続された分岐管の真直路に設けられた水圧計とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のロックボルトの施工装置。
【請求項4】
請求項3に記載のロックボルトの施工装置を用いたロックボルトの施工方法であって、
取付手段により、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の円筒の中心線とが一致するように、ロックボルトの後端側を取付部の円筒状凹部に取付ける第1のステップと、
取付部の円筒状凹部に取付けられたロックボルトを地山に形成された打設用の孔に挿入する第2のステップと、
後端側が取付部に取付けられた状態で打設用の孔に挿入されたロックボルトの内側に、円環状流体圧供給部の流体供給路を介してロックボルトを膨張させるために必要な所定の流体圧を供給して、ロックボルトを膨張させることにより、ロックボルトを打設用の孔に定着させる第3のステップとを備え、
ロックボルトの後端側の外周面には、当該外周面を一周する円環状に形成された円環状溝が形成されていて、かつ、円環状溝の溝底とロックボルトの内周面とに貫通する注水孔が形成されており、
第1のステップにおいては、水圧調整手段による水圧調整によって、取付部に、ロックボルトを膨張させることができずに、かつ、前側円環状密封手段及び後側円環状密封手段の密封機能を作動させるために必要な水圧を供給して、前側円環状密封手段とロックボルトの円環状溝よりも前方に位置されるロックボルトの外周面とを密着させた状態に維持させるとともに、後側円環状密封手段とロックボルトの円環状溝よりも後方に位置されるロックボルトの外周面とを密着させた状態に維持させることにより、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の円筒の中心線とが一致するように、ロックボルトの後端側が取付部の円筒状凹部に取付けられ、
第3のステップにおいては、水圧調整手段による水圧調整によって、取付部に、ロックボルトを膨張させるために必要な所定の水圧を供給することによって、前側円環状密封手段と後側円環状密封手段とをロックボルトの後端側の外周面に密着させた状態に維持させたまま、円環状流体圧供給部の流体供給路、ロックボルトの円環状溝、注水孔を介してロックボルトの内側に供給された所定の水圧によりロックボルトを膨張させてロックボルトを打設用の孔に定着させたことを特徴とするロックボルトの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械を用いて地山に加圧流体膨張式のロックボルトを打設するためのロックボルトの施工装置及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧流体膨張式(鋼管膨張型摩擦式)のロックボルトの後端側が取付けられる前端開放の円筒状凹部を備え、当該円筒状凹部の円筒内周面に、円環状密封手段(グリップリング14)及び円環状流体圧供給部(穴あき離間リング15)を有した流体圧供給機構を内蔵した取付部(チャック手段12)を用いたロックボルトの施工装置及び施工方法が知られている(特許文献1参照)。
上記ロックボルトの施工装置を用いた施工方法は、取付部を建設機械の前端側に設け、加圧流体膨張式のロックボルトの後端側を当該取付部の円筒状凹部に装着した後、当該ロックボルトを地山に形成された打設用に孔に挿入し、その後、取付部の流体圧供給機構を介して当該ロックボルトの内側に所定の水圧を供給することによって、ロックボルトを膨張させて、ロックボルトを打設用の孔に定着させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロックボルトが打設用に孔に挿入された後、取付部の流体圧供給機構を介してロックボルトの内側に所定の水圧(流体圧)を供給する際においては、ロックボルトの後端側の外周面と円環状密封手段の内周面との間の間隔が全周囲においてほぼ均等な状態になっていなければ、円環状密封手段が所期の正常な密封機能を発揮できないため、ロックボルトの内側に所定の水圧を供給することが難しくなり、ロックボルトを膨張させることができなくなったり、あるいは、ロックボルトを膨張させて打設用の孔に定着させるまでの時間(注水時間)がかかりすぎるようになってしまう可能性がある。
従って、ロックボルトが打設用に孔に挿入された後、取付部の流体圧供給機構を介してロックボルトの内側に所定の水圧を供給する際においては、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の円筒の中心線とが一致した状態となっていることが好ましい。
しかしながら、上述したロックボルトの施工装置及び施工方法によれば、ロックボルトの後端側が取付部の円筒状凹部に装着された後、流体圧供給機構に水圧が供給されていない状態では、円環状密封手段による密封機能が作動していないため、ロックボルトの中心線が円筒状凹部の円筒の中心線に対して傾いた状態になりやすい。従って、ロックボルトが打設用に孔に挿入された状態において、ロックボルトの中心線が円筒状凹部の円筒の中心線に対して傾いた状態になりやすく、このように、ロックボルトの中心線が円筒状凹部の中心線に対して傾いた状態になっていた場合には、円環状密封手段が所期の正常な密封機能を発揮できなくなって、ロックボルトの内側に所定の水圧を供給することが難しくなり、ロックボルトを膨張させることができなくなったり、あるいは、ロックボルトを膨張させて打設用の孔に定着させるまでの時間(注水時間)がかかりすぎるようになってしまうので、打設作業を効率的に行えない。
打設作業を人力で行う場合は、ロックボルトが打設用に孔に挿入された状態において、ロックボルトの中心線が円筒状凹部の中心線に対して傾いた状態になっていたとしても、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の中心線とが一致するように人力で修正することが可能である。
しかしながら、取付部を建設機械の前端側に設けて、当該建設機械で打設作業を行う場合、ロックボルトが打設用に孔に挿入された状態において、ロックボルトの中心線が円筒状凹部の中心線に対して傾いた状態になっている場合には、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の中心線とが一致するように修正することが困難となるので、上述したように、打設作業を効率的に行えないという課題があった。
本発明は、建設機械で加圧流体膨張式のロックボルトの打設作業を行う場合において、打設作業を効率的に行えるようにしたロックボルトの施工装置及び施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るロックボルトの施工装置は、建設機械と、建設機械のブームの前端側に設けられたガイドと、ガイド上に当該ガイドの延長方向に沿って移動可能なように設けられた押圧手段と、押圧手段の前端側に設けられた取付部と、加圧流体膨張式のロックボルトの後端側を取付部に取付ける取付手段とを備え、取付部は、前端開放の円筒状凹部を備え、円筒状凹部は、円筒の内周面に流体圧供給機構を備え、流体圧供給機構は、円筒状凹部の内周面の前後に間隔を隔てて配置された前側円環状密封手段及び後側円環状密封手段と、前側円環状密封手段と後側円環状密封手段との間に配置されてロックボルトの内側にロックボルトを膨張させるために必要な所定の流体圧を供給するための流体供給路を有した円環状流体圧供給部とを備え、取付手段は、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の円筒の中心線とが一致するように、ロックボルトの後端側を取付部の円筒状凹部に取付ける手段であることを特徴とする。
また、当該ロックボルトの施工装置を用いたロックボルトの施工方法であって、取付手段により、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の円筒の中心線とが一致するように、ロックボルトの後端側を取付部の円筒状凹部に取付ける第1のステップと、取付部の円筒状凹部に取付けられたロックボルトを地山に形成された打設用の孔に挿入する第2のステップと、後端側が取付部に取付けられた状態で打設用の孔に挿入されたロックボルトの内側に、円環状流体圧供給部の流体供給路を介してロックボルトを膨張させるために必要な所定の流体圧を供給して、ロックボルトを膨張させることにより、ロックボルトを打設用の孔に定着させる第3のステップとを備えたことを特徴とする。
また、上記施工装置において、取付手段は、取付部と、水供給手段から取付部に供給される水圧を調整する水圧調整手段とを備えて構成され、水圧調整手段は、水供給手段と、円環状流体圧供給部に連通する取付部の取水口と水供給手段とを繋ぐように設けられた注水路と、この注水路の中途に設けられた分岐管と、分岐管の分岐路に繋がれて注水路から分岐した水を外に排出するための排水路と、分岐路に設けられた流路開閉バルブと、流路開閉バルブの開閉操作部材と、両端が注水路に接続された分岐管の真直路に設けられた水圧計とを備えた構成とした。
また、当該ロックボルトの施工装置を用いたロックボルトの施工方法であって、取付手段により、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の円筒の中心線とが一致するように、ロックボルトの後端側を取付部の円筒状凹部に取付ける第1のステップと、取付部の円筒状凹部に取付けられたロックボルトを地山に形成された打設用の孔に挿入する第2のステップと、後端側が取付部に取付けられた状態で打設用の孔に挿入されたロックボルトの内側に、円環状流体圧供給部の流体供給路を介してロックボルトを膨張させるために必要な所定の流体圧を供給して、ロックボルトを膨張させることにより、ロックボルトを打設用の孔に定着させる第3のステップとを備え、ロックボルトの後端側の外周面には、当該外周面を一周する円環状に形成された円環状溝が形成されていて、かつ、円環状溝の溝底とロックボルトの内周面とに貫通する注水孔が形成されており、第1のステップにおいては、水圧調整手段による水圧調整によって、取付部に、ロックボルトを膨張させることができずに、かつ、前側円環状密封手段及び後側円環状密封手段の密封機能を作動させるために必要な水圧を供給して、前側円環状密封手段とロックボルトの円環状溝よりも前方に位置されるロックボルトの外周面とを密着させた状態に維持させるとともに、後側円環状密封手段とロックボルトの円環状溝よりも後方に位置されるロックボルトの外周面とを密着させた状態に維持させることにより、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の円筒の中心線とが一致するように、ロックボルトの後端側が取付部の円筒状凹部に取付けられ、第3のステップにおいては、水圧調整手段による水圧調整によって、取付部に、ロックボルトを膨張させるために必要な所定の水圧を供給することによって、前側円環状密封手段と後側円環状密封手段とをロックボルトの後端側の外周面に密着させた状態に維持させたまま、円環状流体圧供給部の流体供給路、ロックボルトの円環状溝、注水孔を介してロックボルトの内側に供給された所定の水圧によりロックボルトを膨張させてロックボルトを打設用の孔に定着させたことを特徴とする。
本発明に係るロックボルトの施工方法及び施工装置によれば、建設機械で加圧流体膨張式のロックボルトの打設作業を行う場合、ロックボルトが打設用に孔に挿入された状態において、ロックボルトの中心線と円筒状凹部の円筒の中心線とが一致した状態に維持されやすくなるため、ロックボルトを膨張させる際、前側円環状密封手段及び後側円環状密封手段に所期の正常な密封機能を発揮させることができるようになり、打設作業を効率的に行えるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】ロックボルトの説明図であり、(a)はロックボルトの側面図、(b)は(a)図におけるA-A断面図、(c)はロックボルトの鋼管部の膨張変化を示す図。
【
図5】前側円環状密封手段、及び、後側円環状密封手段の動作説明図。
【
図6】力伝達装置を示す図であり、(a)は力伝達装置の平面図、(b)は力伝達装置の側面図。
【
図9】中間伝達軸、及び、スイベルを分離して示した分解図。
【
図11】座金保持手段に座金が離脱可能に取付けられた状態を示す斜視図。
【
図12】座金保持手段と座金とを分離して示す斜視図。
【0007】
実施形態1
実施形態1に係るロックボルトの施工装置は、
図1に示すように、トンネル空洞部Tから地山Mに加圧流体膨張式のロックボルト2を打設する作業を行うための装置であって、図外の建設機械と、建設機械のブーム32の前端側に設けられたガイド34と、ガイド34上に当該ガイド34の延長方向に沿って移動可能なように設けられた押圧手段3と、押圧手段3の前端側に設けられた取付部50と、ロックボルト2の後端側を取付部50に取付ける取付手段100とを備えている。
【0008】
上述したロックボルトの施工装置を用いたロックボルトの施工方法の全工程について説明する。
(1)まず、
図1(a)に示すように、トンネル空洞部Tから地山Mに加圧流体膨張式のロックボルトを打設するための打設用の孔Hを形成する。
(2)建設機械のブーム32の前端側に設けられたガイド34上に当該ガイド34の延長方向に沿って移動可能なように押圧手段3を設けるとともに、当該押圧手段3の前端側に前端開放の円筒状凹部51を有した取付部50を設ける(
図1(b),
図3,
図4参照)。
(3)取付手段100により、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致するように、ロックボルト2の後端側を取付部50の円筒状凹部51に取付ける(
図1(b),
図5(b)参照)。この際、
図1(b)に示すように、ガイド34の前端側に座金保持手段8を取付けて、座金9を座金保持手段8の凹部85内に保持させた状態にセット(
図11参照)した後、押圧手段3をガイド34の前端側に移動させることによって、ロックボルト2を前端側から座金9の中央貫通孔90に通す。
(4)
図1(c),
図1(d)に示すように、押圧手段3をガイド34の前端側に移動させることによって、打設用の孔Hにロックボルト2を挿入する。この際、座金保持手段8に保持された座金9の前側板面92を壁面Wに近接させ、その後、押圧手段3を前方に移動させながら、ロックボルト2を前進させることによって、ロックボルト2を孔Hに挿入する。そして、座金9の前側板面92と壁面Wとが接触して、押圧手段3を前方に移動させることができなくなった場合に、孔Hへのロックボルト2の挿入が完了する。
(5)
図1(d)に示すように、ロックボルト2を打設用の孔Hに挿入した後、後端側が取付部50に取付けられているロックボルト2の内側に取付部50を介して所定の水圧を供給することで、ロックボルト2を膨張させることにより、ロックボルト2を打設用の孔Hに定着させる。
(6)ロックボルト2を打設用の孔Hに定着させた後に、
図1(e)に示すように、押圧手段3を後退させて、ロックボルト2の打設作業を完了する。
【0009】
尚、本明細書において、前,後は、各図に示した方向と定義して説明する。
また、
図1においては、押圧手段3と取付部50との間に後述する力伝達装置1を設けた施工装置を図示している。即ち、
図1では、押圧手段3の前端側に設けられた力伝達装置1の前端に取付部50が設けられた構成の施工装置を図示しているが、本発明に係る施工装置は、当該力伝達装置1を用いずに、押圧手段3の前端側に直接的に取付部50を備えた構成の施工装置であってもよい。
【0010】
まず、
図2に基づいて、加圧流体膨張式(鋼管膨張型摩擦式)のロックボルト2について説明する。
ロックボルト2は、管状に構成され、管の内側に所定の流体圧を供給して膨張させることにより打設用の孔Hに定着させる構成のロックボルトである。
当該ロックボルト2は、
図2(a)に示すように、例えば、鋼管部20と、鋼管部20の前端側を封止する前端側封止部21と、鋼管部20の後端側を封止する後端側封止部22とを備えて構成される。
【0011】
鋼管部20は、例えば表面に溶融亜鉛とアルミニウムとマグネシウムとの合金めっき層を備え、
図2(b)に示すような断面形状に形成されている。
即ち、鋼管部20は、膨張変形前の初期状態では、
図2(b),(c)に示すように、管の延長方向と直交する断面が扁平な鋼管材の扁平断面の両端(管の径方向両端)を互いに近付けるように変形させて断面外形が円形に近い形になるように形成された異形鋼管により構成され、当該異形鋼管内に水圧(流体圧)を加えることにより膨張して円形鋼管状に変形するように構成されたものである。
【0012】
前端側封止部21は、鋼管部20の前端側の外周を覆うとともに鋼管部20の前端開口を封止する前端側封止スリーブ23と、前端側封止スリーブ23の前端に設けられた円錐状の前端コーン24とを備える。当該前端コーン24は、前端側封止スリーブ23と一体又は別体で設けられる。尚、前端側封止部21は、前端コーン24を備えない構成であってもよい。
【0013】
後端側封止部22は、鋼管部20の後端側の外周を覆う小径スリーブ25と、鋼管部20の後端側の外周を覆うとともに鋼管部20の後端開口を封止する注水用スリーブ26とを備える。
ロックボルト2の後端側となる注水用スリーブ26は、小径スリーブ25よりも後端側に設けられて外径が当該小径スリーブ25の外径よりも大径に形成されており、スリーブの中心線に沿った方向の中央側の外周面には、当該外周面を一周する円環状に形成された円環状溝27が形成されている。そして、当該円環状溝27の溝底から注水用スリーブ26の内面に貫通するとともに、当該注水用スリーブ26の内側に位置される鋼管部20の外面から内面に貫通する注水孔28が設けられている。
即ち、ロックボルト2の後端側の外周面には、当該外周面を一周する円環状に形成された円環状溝27が形成されていて、かつ、円環状溝27の溝底とロックボルト2の内周面とに貫通する注水孔28が形成されている。
【0014】
即ち、鋼管部20は、後述する取付部50、円環状溝27、注水孔28を介して、鋼管部20の内側に注水される水の圧力によって、
図2(c)に示すように、異形鋼管状から膨張して円形鋼管状に変形するように構成されている。
また、前端側封止部21及び後端側封止部22は、鋼管部20を異形鋼管状から円形鋼管状に変形させる水の圧力では変形しない材料(例えば、合成樹脂等)により形成されている。
【0015】
次に、取付部50について説明する。
図3に示すように、取付部50は、前端開放の円筒状凹部51を備えた、例えば注水ヘッドと呼ばれる円筒状部材により構成される。
図4に示すように、取付部50は、円筒状部材の前端側部分が円筒状凹部51として機能し、当該円筒状凹部51は、円筒の内周面51aに注水機構(流体圧供給機構)52を備えた構成となっている。
即ち、取付部50は、ロックボルト2の後端側に位置される注水用スリーブ26が挿脱可能に取付けられる円筒状凹部51を前端側に備え、かつ、当該円筒状凹部51が注水機構52を備え、当該円筒状凹部51に装着されたロックボルト2の内側に、図外の注水ポンプ等の水供給手段から供給された水を当該注水機構52を介して注水するための部材である。
【0016】
円筒状凹部51は、前端開口がロックボルト挿脱口に形成されて前後方向に延長する円筒状凹部であり、当該円筒状凹部51の前端側の内周面51aに注水機構52を備える。
円筒状凹部51の内周面51aを形成する円の直径寸法は、ロックボルト2の後端側に位置される注水用スリーブ26の外周面を形成する円の直径寸法に対応した寸法に形成されている。つまり、当該円筒状凹部51の内周面51aを形成する円の直径寸法は、注水用スリーブ26の外周面を形成する円の直径寸法よりも若干大きい寸法に形成される。
換言すれば、注水用スリーブ26は、円筒状凹部51に装着された場合、遊嵌状態に装着されるようになっており、装着後、取付手段100によって、後述する前側円環状密封手段55及び後側円環状密封手段56の密封機能が作動し、当該前側円環状密封手段55及び後側円環状密封手段56が注水用スリーブ26の外周面26fに密着した状態に取付けられることになる。
【0017】
注水機構52は、円筒状凹部51の内周円の直径寸法よりも大きい直径寸法に形成された溝底円周面53aを備えた円環状溝53と、当該円環状溝53内に設置された円環状密封手段及び円環状水圧供給部(円環状流体圧供給部)54とを備えて構成される。
即ち、円環状溝53の溝底円周面53aを形成する円と円筒状凹部51の内周面51aを形成する円とが同心の円により形成される。つまり、円環状溝53の溝底円周面53aの中心線と円筒状凹部52の内周面51aの中心線51Cとが一致するように形成されている。
【0018】
円環状密封手段は、例えば、
図4に示すように、前側円環状密封手段55、及び、後側円環状密封手段56により構成される。当該前側円環状密封手段55、及び、後側円環状密封手段56は、例えば、ゴムやシリコン等で形成された円環状パッキンにより構成される。
即ち、当該円環状溝53内の前側には前側円環状密封手段55が設置されて、円環状溝53内の後側には後側円環状密封手段56が設置され、円環状水圧供給部54が、前側円環状密封手段55と後側円環状密封手段56との間に挟まれた状態に設置されている。
つまり、前側円環状密封手段55の円環状前面と円環状溝53の前壁53fとが密着するように、前側円環状密封手段55が設置される。
また、後側円環状密封手段56の円環状後面と円環状溝53の後壁53rとが密着するように、後側円環状密封手段56が設置される。
また、円環状水圧供給部54の円環状前面と前側円環状密封手段55の円環状後面とが密着し、かつ、円環状水圧供給部54の円環状前面と前側円環状密封手段55の円環状後面とが密着するように、円環状水圧供給部54が設置される。
即ち、注水機構52は、円環状溝53内において、前側円環状密封手段55と円環状水圧供給部54と後側円環状密封手段56とが、前後方向に並ぶように配置されて、前側円環状密封手段55と円環状水圧供給部54とが密着し、かつ、円環状水圧供給部54と後側円環状密封手段56とが密着するように設置されて構成されたものである。
【0019】
円環状水圧供給部54は、例えば、金属性の円環部材により構成され、
図4に示すように、円環部材の外周面と内周面とに貫通するように形成された水供給路(流体供給路)54aが、円環部材の周方向に所定の間隔を隔てて複数個形成されている。
【0020】
つまり、注水機構52は、円筒状凹部51の内周面51aの前後に間隔を隔てて配置された前側円環状密封手段55及び後側円環状密封手段56と、前側円環状密封手段55と後側円環状密封手段56との間に配置されてロックボルト2の内側にロックボルト2を膨張させるために必要な所定の水圧(流体圧)を供給するための水供給路54aを有した円環状水圧供給部54とを備えた構成である。
【0021】
前側円環状密封手段55、円環状水圧供給部54、後側円環状密封手段56の外周面を形成する円の直径寸法は、円環状溝53の溝底円周面53aを形成する円の直径寸法よりも小さい寸法に形成される。
前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56の外周面に水圧が供給されていない状態においては、当該前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56の内周面を形成する円の直径寸法は、円筒状凹部51の内周面51aを形成する円の直径寸法よりも大きい寸法に維持され、当該前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56は、内周面が、円筒状凹部51の内周面51aよりも内側に突出しないように設けられている。
また、前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56は、外周面に一定の水圧が供給された場合に、内周面が縮径して、当該縮径した内周面が、円筒状凹部51に挿入されたロックボルト2の注水用スリーブ26の外周面26fに密着する所定の密封機能(シール機能)を備えた構成となっている。
また、円環状水圧供給部54の内周面を形成する円の直径寸法は、円筒状凹部51の内周面51aを形成する円の直径寸法よりも大きい寸法に形成されており、当該円環状水圧供給部54は、内周面が、円筒状凹部51の内周面51aよりも内側に突出しないように設けられている。
【0022】
また、円筒状凹部51における円環状溝53よりも後方側の位置には、当該円筒状凹部51に挿入されるロックボルト2の注水用スリーブ26の後端面26e(
図2(a)参照)が接触するストッパー57が設けられている。当該ストッパー57は、円筒状凹部51の中心線51Cに直交して取付部50を貫通するように設けられた例えばボルト48(
図3参照)の軸により構成される。
換言すると、円筒状凹部51は、内周面51aとストッパー57との組合わせにより、ストッパー57による凹部底が形成された前端開口の円筒状凹部である。尚、当該ストッパー57は、凹部底壁により構成されたものであってもよい。
また、
図3,
図4に示すように、取付部50の後端部には、後述の注水路201を構成する例えば注水ホースの終端が接続される取水口50aが設けられるとともに、取付部50の内部には、当該取水口50aと円環状溝53の溝底円周面53aとに連通する連通路58が形成されている。
【0023】
次に、取付手段100について説明する。
取付手段100は、
図5(b)に示すように、ロックボルト2の中心線と円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致するように、ロックボルト2の後端側である注水用スリーブ26部分を取付部50の円筒状凹部51に取付ける手段である。
【0024】
図3に示すように、取付手段100は、上述した取付部50と、図外の注水ポンプ等の水供給手段から取付部50に供給される水圧を調整する水圧調整手段200と備えて構成される。
例えば、
図3に示すように、水圧調整手段200は、水供給手段と、円環状水圧供給部54に連通路58を介して連通する取付部50の取水口50aと水供給手段とを繋ぐように設けられた注水路201と、この注水路201の中途に設けられたT字状の分岐管202と、分岐管202の分岐路203に繋がれて注水路201から分岐した水を外に排出するための排水路204と、分岐路203に設けられた流路開閉バルブ205と、流路開閉バルブ205の開閉操作レバー等の開閉操作部材206と、両端が注水路201に接続された分岐管202の直線管部分である真直路207に設けられた水圧計208とを備えて構成される。
【0025】
尚、建設機械は、ブームを有した例えばドリルジャンボ(登録商標)等と呼ばれる切羽穿孔機である。
また、切羽穿孔機には、例えば、複数本のブームが設けられ、少なくとも1つのブーム31の前端側には削孔装置4が設けられ、少なくとも1つのブーム32の前端側にはロックボルト取付装置5が設けられている。
尚、ブームとは、油圧シリンダ等のアクチュエータにより、起伏,伸縮,旋回等の機能を有した棒状構造体のことをいう。
ブーム31,32の前端側にはガイドセル33が設けられている。例えば、ガイドセル33は、ガイド34と、ガイド34に沿って摺動可能なキャリッジ35とを有する。
【0026】
押圧手段3としては、例えば削岩機(ドリフタ)を使用すればよい。
押圧手段3はキャリッジ35上に固定されており、図外のキャリッジ駆動機構を駆動させることによって、キャリッジ35及び押圧手段3がガイド34上を往復移動可能なように構成されている。
尚、押圧手段3は、取付部50及びロックボルト2に押圧力を付与する手段であれば、どのような手段であっても構わない。
【0027】
図1(a)に示すように、削孔装置4は、少なくとも、押圧手段3と、押圧手段3のシャンクロッド30の前端側に連結された削孔ロッド36とを備えて構成される。
また、
図1(b)に示すように、ロックボルト取付装置は、少なくとも、押圧手段3と、取付手段100(押圧手段3の前端側に設けられた取付部50+水圧調整手段200)と、座金保持手段8とを備えて構成される。
【0028】
ブーム31,32は、削孔ロッド36や取付部50を、所望の位置まで移動させるとともに所望の姿勢に維持する装置である。
即ち、ブーム31を駆動して、削孔装置4を、所望の位置まで移動させるとともに所望の姿勢に維持した後、押圧手段3をトンネル空洞部Tの壁面Wに向けて移動させて、削孔ロッド36の前端側に設けられた削岩ビット37を穿孔位置まで移動させる。その後、
図1(a)に示すように、キャリッジ駆動機構を駆動させながら押圧手段3を駆動させて、削孔ロッド36に回転力と打撃力とを付与しながら削孔ロッド36を押圧することにより、壁面Wから地山M中に向けて、ロックボルト2を挿入するための打設用の孔Hを削孔する。
また、押圧手段3のシャンクロッド30の前端側に、直接、又は、力伝達装置1を介して設けられた取付部50の円筒状凹部51にロックボルト2の後端側を取付けた後、ブーム32を駆動して、取付部5を、所望の位置まで移動させる(
図1(b)参照)。
その後、押圧手段3を孔Hに近付く方向に前進移動させることによって、ロックボルト2を孔Hに挿入する(
図1(c),(d)参照)。尚、ロックボルト2を孔Hに挿入する際には、ロックボルト2に回転力や打撃力を加えないことが好ましい。しかしながら、ロックボルト2を孔Hに挿入する際の抵抗が大きい場合等は、必要に応じて、押圧手段3でロックボルト2に打撃や回転を与えながらロックボルト2を孔Hに挿入するようにしてもよい。
【0029】
尚、力伝達装置1を用いない場合には、押圧手段3の前端側のシャンクロッド30に連結された図外の連結手段と取付部50とが上述したボルト48等により連結された構成とすることで、押圧手段3の前端側に取付部50が設けられた構成の施工装置とすればよい。
また、力伝達装置1を用いる場合には、
図1に示すように、押圧手段3の前端側のシャンクロッド30の前端側に図外の連結手段を介して力伝達装置1が連結され、かつ、
図6に示すように、力伝達装置1の前端に設けられた連結部材49と取付部50とが上述したボルト48等により連結された構成とすることで、押圧手段3の前端側に力伝達装置1を介して取付部50が設けられた構成の施工装置とすればよい。
【0030】
また、力伝達装置1を用いない場合には、
図3に示すように、注水路201の終端が取付部50の取水口50aに接続される。
また、力伝達装置1を用いる場合には、注水路201の終端が後述するスイベル40に設けられた取水口41に接続され(
図1参照)、取付部50の取水口50aには、後述する水路管45の終端が接続される(
図6,
図9参照)。
即ち、実施形態に係る施工装置は、ロックボルト2の注水用スリーブ26を円筒状凹部51に装着した後、水圧調整手段200を操作することによって、水供給手段からの水が、注水路201及び連通路58を通過して、あるいは、注水路201、スイベル40、後述の円環状溝42、導水口43、水路管45、連通路58を通過して、円環状水圧供給部54の外周面に到達し、さらに、前側円環状密封手段55、後側円環状密封手段56の外周面に到達するように構成されている。
【0031】
上述したロックボルトの施工装置を用いたロックボルトの施工方法について説明する。
当該施工方法として、少なくとも、以下のステップを備える。
(1)取付手段100により、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致するように、ロックボルト2の後端側を取付部50の円筒状凹部51に取付ける第1のステップ。
(2)取付部50の円筒状凹部51に取付けられたロックボルト2を地山Mに形成された打設用の孔Hに挿入する第2のステップ。
(3)後端側が取付部50に取付けられた状態で打設用の孔Hに挿入されたロックボルトの内側に円環状水圧供給部54に水供給路54aを介してロックボルト2を膨張させるために必要な所定の水圧を供給して、ロックボルト2を膨張させることにより、ロックボルト2を打設用の孔Hに定着させる第3のステップ。
【0032】
ロックボルト2の注水用スリーブ26を取付部50の円筒状凹部51内に挿入して注水用スリーブ26の後端面26eをストッパー57に接触させた装着状態においては、
図6に示すように、注水用スリーブ26の前端部側が取付部50の前端面50fよりも若干前方に突出し、かつ、
図5(a)に示すように、注水用スリーブ26の外周面26fに形成された円環状溝27が円環状水圧供給部54の内側に位置される。
つまり、ロックボルト2の後端側の円環状溝27が、前側円環状密封手段55の後方でかつ後側円環状密封手段56の前方に位置されるように、ロックボルト2の後端側が取付部50の円筒状凹部51に装着される。
【0033】
このように、ロックボルト2の後端側が取付部50の円筒状凹部51に装着された状態において、取付部50への注水が行われていない場合には、
図5(a)に示すように、取付部50の円筒状凹部51に装着されたロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致しておらず、ロックボルト2の注水用スリーブ26の外周面26fと、前側円環状密封手段55,円環状水圧供給部54,後側円環状密封手段56の内周面、円筒状凹部51の内周面51aとが密着していない。即ち、ロックボルト2の注水用スリーブ26の外周面26fと、前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56の内周面、及び、円筒状凹部51の内周面51aとの間に、若干の隙間が生じる。
従って、上述のように、ロックボルト2の後端側が取付部50の円筒状凹部51に装着された状態で、ロックボルト2を打設用の孔Hに挿入するために移動させた際には、ロックボルト2が揺れ動きやすいので、当該ロックボルト2が打設用に孔Hに挿入された状態において、ロックボルト2の中心線2Cが円筒状凹部51の中心線51Cに対して傾いた状態になりやすい。このように、ロックボルト2の中心線2Cが円筒状凹部51の中心線51Cに対して傾いた状態のままで、ロックボルト2を膨張させるための注水作業を開始した場合、前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56が所期の正常な密封機能を発揮できず、ロックボルト2の内側に、ロックボルト2を膨張させるために必要な所定の水圧を供給することが難しくなる。このため、ロックボルトを膨張させることができなくなったり、あるいは、ロックボルトを膨張させて打設用の孔に定着させるまでの時間(注水時間)がかかりすぎるようになってしまうので、打設作業を効率的に行えない。
【0034】
そこで、実施形態1では、上述した取付手段100を備えた施工装置を用いて、取付部50の円筒状凹部51にロックボルト2の後端側を装着した後、水圧調整手段200を操作して、前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56の外周面に一定の水圧を供給することで、
図5(b)に示すように、前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56の内周面とロックボルト2の注水用スリーブ26の外周面26fとを密着させるようにすることで、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51aとが一致するように、ロックボルト2の後端側を取付部50の円筒状凹部51に取付けるようにした。
即ち、ロックボルト2の後端側を取付部50の円筒状凹部51に装着した後、上述した第1のステップにおいては、水圧調整手段200を操作して、前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56の密封機能を発揮させることができるが、ロックボルト2を膨張させることはできない一定の水圧を、取付部50の円環状溝53に供給する。このようにすることで、前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56の内周面とロックボルト2の注水用スリーブ26の外周面26fとが密着して、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致するように、ロックボルト2の後端側が取付部50の円筒状凹部51に取付けられるようにしたものである。
この場合、前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56の密封機能により、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致した状態が維持されるようになる。
従って、第2のステップにおいて、ロックボルト2を打設用の孔Hに挿入するために移動させた際に、ロックボルト2が揺れ動き難くなり、当該ロックボルト2が打設用に孔Hに挿入された状態において、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致した状態が維持されやすくなる。
よって、当該ロックボルト2が打設用に孔Hに挿入された後に、第3のステップにおいて、水圧調整手段200を操作して、ロックボルト2の内側に円環状水圧供給部54を介してロックボルト2を膨張させるために必要な所定の水圧を供給した場合、前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56の密封機能が正常に発揮された状態のまま、所定の水圧がロックボルト2の内側に供給されるので、所定の注水時間でロックボルト2を膨張させることができて、打設用の孔Hにロックボルト2を定着させることができるようになり、打設作業を効率的に行えるようになった。
【0035】
即ち、第1のステップにより、前側円環状密封手段55の外周面、及び、後側円環状密封手段56の外周面に、これら前側円環状密封手段55及び後側円環状密封手段56の密封機能を正常に作動させるために必要でかつロックボルト2を膨張させるには不足な一定の水圧が加わった場合、これら前側円環状密封手段55の内周面及び後側円環状密封手段56の内周面が、注水用スリーブ26の円環状溝27の前後側に位置する外周面26fに密着する。つまり、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致する状態にロックボルト2が円筒状凹部51に取付けられて、かつ、前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56の密封機能により、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致した状態が維持されるようになる。
【0036】
さらに、具定的に説明する。
水圧調整手段200は、前側円環状密封手段55及び後側円環状密封手段56による所定の密封機能(シール機能)を正常に作動させるために必要な一定の水圧Xを、前側円環状密封手段55の外周面、及び、後側円環状密封手段56の外周面に供給するための手段である。
例えば、一定の水圧Xが10MPaである場合、水圧計208のメータ209が10MPaを示すように、作業員が開閉操作部材206を操作して、取付部50に10MPaの水圧を供給することにより、前側円環状密封手段55及び後側円環状密封手段56による所定の密封機能が正常に実現されて、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致するように、ロックボルト2の後端側が取付部50の円筒状凹部51に取付けられ、ロックボルト2の姿勢が維持される。
そして、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致するように、ロックボルト2の姿勢が維持された状態で、ロックボルト2を打設用の孔Hに挿入した場合、当該ロックボルト2が打設用に孔Hに挿入された状態において、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致した状態が維持されやすくなる。
その後、ロックボルト2を膨張させるために必要な所定の水圧Yの水を取付部50を介してロックボルト2の内側に供給することで、ロックボルト2を膨張させて当該ロックボルト2を地山Mに定着させる。
例えば、所定の水圧Yが25MPaである場合、水圧計208のメータ209が25MPaを示すように、作業員が開閉操作レバー206を操作して、取付部50に25MPaの水圧を供給することにより、前側円環状密封手段55及び後側円環状密封手段56による所定の密封機能が正常に実現された状態のまま、円環状水圧供給部54に形成された水供給路54a、ロックボルト2の円環状溝27、注水孔28を経由して、ロックボルト2の鋼管部20内に25MPaの水圧が供給される。従って、鋼管部20が水圧で異形鋼管状から円形鋼管状に膨張変形して孔Hの内壁に定着する。
この場合、前側円環状密封手段55,後側円環状密封手段56の密封機能が正常に発揮された状態のまま、所定の水圧Yがロックボルト2の内側に供給されやすくなる。従って、所定の注水時間でロックボルト2を膨張させることができて、打設用の孔Hにロックボルト2を定着させることができるようになり、打設作業を効率的に行えるようになる。
【0037】
即ち、第1のステップにおいては、水圧調整手段200による水圧調整によって、取付部50に、ロックボルト2を膨張させることができずに、かつ、前側円環状密封手段55及び後側円環状密封手段56の密封機能を作動させるために必要な一定の水圧を供給することによって、
図5(b)に示すように、前側円環状密封手段55とロックボルト2の円環状溝27よりも前方に位置されるロックボルト2の外周面26fとを密着させた状態に維持させるとともに、後側円環状密封手段56とロックボルト2の円環状溝27よりも後方に位置されるロックボルト2の外周面26fとを密着させた状態に維持させるようにした。これにより、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致するように、ロックボルト2の後端側が取付部50の円筒状凹部51に取付けられることになる。
また、第3のステップにおいては、水圧調整手段200による水圧調整によって、取付部50に、ロックボルト2を膨張させるために必要な所定の水圧を供給することによって、前側円環状密封手段55と後側円環状密封手段56とをロックボルト2の後端側の外周面26fに密着させた状態に維持させたまま、円環状水圧供給部54の水供給路54a、ロックボルト2の円環状溝27、注水孔28を介してロックボルト2の内側に供給された所定の水圧によりロックボルト2を膨張させてロックボルト2を打設用の孔Hに定着させるようにした。
【0038】
実施形態1に係るロックボルトの施工装置及び施工方法によれば、建設機械に、加圧流体膨張式のロックボルト2の打設作業を行なわせる場合に、ロックボルト2が打設用に孔Hに挿入された状態において、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致した状態に維持されやすくなるため、ロックボルト2を膨張させる際、前側円環状密封手段55及び後側円環状密封手段56に所期の正常な密封機能を発揮させることができるようになり、打設作業を効率的に行えるようになった。
つまり、ロックボルト2が打設用に孔Hに挿入された状態において、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致する可能性が高くなるので、前側円環状密封手段55及び後側円環状密封手段56による所定の密封機能が正常に実現された状態のまま、ロックボルト2の内側に所定の水圧を供給することができるようになり、打設用の孔Hにロックボルト2を挿入後、所定の注水作業時間でロックボルト2を膨張させることができるようになるため、ロックボルト2の打設作業を効率的に行えるようになった。
【0039】
次に、座金保持手段8について説明する。
加圧流体膨張式(鋼管膨張型摩擦式)のロックボルト2の場合、孔Hに挿入されて定着するロックボルト2の後端部に、トンネル空洞部Tの壁面Wを支えるための座金9が設けられる。
即ち、
図1(b)に示すように、ガイド34の前端側に、座金保持手段8が設けられ、当該座金保持手段8に上述した座金9が離脱可能に保持される。
【0040】
座金保持手段8は、
図10乃至
図12に示すように、座金保持枠80と、ガイド34に対する取付部81とを備えて構成される。
座金保持枠80は、枠板部82と、後板部83とを備える。
枠板部82は、例えば枠の中心線が前後方向に延長する四角形状の枠体の上枠部の中央部が欠損して開口した枠状板により形成される。
後板部83は、枠板部82の後端縁より枠板部82の枠の内側に延長し、かつ、中央に上部開口の円形状の中央貫通孔84が形成された板により形成される。
枠板部82の枠の内面と後板部83の前板面とが互いに直交する面に形成される。
そして、枠板部82の枠の内面と後板部83の前板面とで構成された凹部85内に座金9が離脱可能に保持される。
例えば、凹部85の底面となる後板部83の前板面における4つの角部近傍の位置には、座金保持手段8に座金9を保持させる手段としての磁石86が取付けられている。
枠板部82の枠の内径は、座金9を形成する例えば四角形の板(プレート)の外径寸法よりも若干大きい寸法に形成される。
そして、座金9の後側板面91と凹部85の底面を形成する後板部83の前板面とが対向した状態で当該座金9が凹部85に収納されて、座金9の後側板面91が磁石86,86…に吸着されることにより、当該座金9が凹部85内に離脱可能に保持される。
尚、座金保持手段8は、取付部81がボルト等の固定手段87によってガイド34に固定されることにより、ガイド34に固定状態に取付けられている。
【0041】
従って、座金保持手段8の凹部85内に保持された座金9の中央貫通孔90にロックボルト2を通した状態で(
図1(b)参照)、ロックボルト2を壁面Wの打設位置まで移動させた後、孔Hに挿入する際に、座金保持手段8に保持された座金9がロックボルト2の軸ずれ防止手段(セントラライザー)として機能するので、ロックボルト2を孔Hに挿入する作業を容易に行えるようになる。
【0042】
尚、座金9の中央貫通孔90の径寸法は、ロックボルト2の小径スリーブ25の外周径に対応した径寸法に形成されている。
従って、孔Hへのロックボルト2の挿入が完了した状態においては、座金9の中央貫通孔90の内周面と小径スリーブ25の外周面とが近接した状態となって、座金9は、小径スリーブ25の周面上に位置され、かつ、座金9の後側板面91と注水用スリーブ26の前端面29(小径スリーブ25の外周面と注水用スリーブ26の外周面との境界となる段差面(
図2(a)参照))とが近接した状態となる。
その後、
図1(e)に示すように、ブーム32を操作して、ロックボルト取付装置5を孔Hから離れる方向に移動させる。
これにより、力伝達装置1の取付部50が注水用スリーブ26から外れる。さらに、座金保持手段8が孔Hから離れる方向に移動する際に、座金9が座金保持手段8の磁石86,86…から外れるとともに、当該座金9が注水用スリーブ26の前端面29に引っ掛かる(係合する)ので、ロックボルト2の後端部に、トンネル空洞部Tの壁面Wを支えるための座金9が取付けられることになる。
【0043】
上述した座金保持手段8を備えた場合、座金保持手段8の凹部85内に保持された座金9の中央貫通孔90にロックボルト2を通すことで、座金保持手段8に保持された座金9をロックボルト2の軸ずれ防止手段として機能させることができるようになり、ロックボルト2を孔Hに挿入する作業を容易に行えるようになる。
即ち、座金保持手段8を備えた施工装置を用いた場合、ロックボルト2の径寸法とほぼ同じ径寸法に形成された中央貫通孔90、つまり、ロックボルト2の径寸法よりも若干大きい径寸法に形成された中央貫通孔90を有した座金9を用いることができ、座金保持手段8に保持された座金9の中央貫通孔90にロックボルト2の前端側を貫通させることによって、ロックボルト2が軸ずれし難くなる。
従って、ロックボルト2の軸心と打設用の孔Hの径中心とを一致させ易くなり、打設作業をスムーズかつ正確に行えるようになる。
特に、加圧流体膨張式のロックボルト2を、変形しないように、打設用の孔Hにスムーズかつ正確に打設することができるようになり、加圧流体膨張式のロックボルト2を正常に膨張させることができるようになるから、加圧流体膨張式のロックボルト2の打設作業をスムーズかつ正確に行えるようになる。
一方、座金保持手段8に相当する構成を備えていない場合、ロックボルトの打設作業をスムーズかつ正確に行い難い。
【0044】
また、座金保持手段8に相当する構成を備えていない場合、ブームを移動させた時にロックボルトの前端から座金が落下する虞があったが、実施形態1のように、座金保持手段8を備えた施工装置を用いた場合、ロックボルト2の打設位置決めのためにブーム32を移動させる際に、座金保持手段8に座金9が保持されていることによって、座金9の不測の落下が防止される。
【0045】
また、座金保持手段8を備えた施工装置を用いた場合、ロックボルト2の後端部に取付けられる座金9を保持するための座金保持手段8をガイド34の前端側に設置し、ブーム32を駆動して座金保持手段8に保持された座金9を打設用の孔Hの周囲の壁面Wに近接させることができるようにして、ロックボルト2を打設した後に、ブーム32を駆動して座金保持手段8を壁面Wから離れる方向に移動させることで、座金保持手段8から座金9を離脱させるようにしている。
従って、座金9として、上述した四角形状の板で形成された座金9を用いた場合には、座金9は、ロックボルト2の打設後に、座金保持手段8に保持されていた姿勢のままでロックボルト2の後端部に取付けられた状態となる。このため、各ロックボルト2,2…に取付けられた各座金9,9…の辺縁が水平方向や垂直方向に延長するように統一された状態となるようにできる。即ち、四角形状の板で形成された各座金9,9…の辺縁が、水平方向や垂直方向に揃うように、各座金9,9…を各ロックボルト2,2…の後端部に取付けることができるようになるので、ロックボルト打設後の壁面Wに設置された各座金9,9…の辺縁が水平方向や垂直方向にきれいに揃った状態の施工壁面を構築できるようになる。
一方、座金保持手段8に相当する構成を備えていない場合には、四角形状の板で形成された座金を用いた場合、座金がロックボルトの軸心を回転中心として回転しやすくなるので、ロックボルト打設後の壁面に設置された各座金の辺縁が水平方向や垂直方向に揃わない可能性が高くなる。
【0046】
即ち、座金保持手段8を備えた施工装置を用いた場合、ロックボルト2の打設作業をスムーズかつ正確に行えるようになるとともに、座金9の不測の落下を防止できるようになり、しかも、各ロックボルト2,2…の打設後の壁面Wに設置される各座金9,9…の並びを綺麗に揃えることができるようになる。
【0047】
次に、押圧手段3と取付部50との間に力伝達装置1を設けた場合の施工装置について説明する。
力伝達装置1は、
図6に示すように、後側伝達軸11と、中間伝達軸12と、前側伝達軸13と、後側伝達軸11の前端部と中間伝達軸12の後端部とを連結する後側連結手段15と、中間伝達軸12の前端部と前側伝達軸13の後端部とを連結する前側連結手段16と、スイベル40とを備えて構成される。
【0048】
後側連結手段15、及び、前側連結手段16は、それぞれ、摺動機構6と、制限機構7とを備えている。
【0049】
図7,8に示すように、摺動機構6は、前後に配置される伝達軸のうちの一方の伝達軸61の一端部に形成された球面63と、前後に配置される伝達軸のうちの他方の伝達軸62の一端部に形成されて球面63と接触する凹部である球面座64とで構成され、球面63と球面座64とが接触して摺動するように構成されている。
即ち、摺動機構6は、一方の伝達軸61の一端に設けられた球面63と他方の伝達軸62の一端に設けられた球面座64とが摺動する球面摺動機構により構成されている。
尚、
図7,8においては、一方の伝達軸61が前側伝達軸13であり、他方の伝達軸62が中間伝達軸12である場合、即ち、前側連結手段16を図示している。
【0050】
球面63は、一方の伝達軸61の一端部(例えば前側伝達軸13の後端部)に設けられた板部65の板面(後板面)65aより突出するように形成された半球状の球面により構成される。
球面座64は、他方の伝達軸62の一端部(例えば中間伝達軸12の前端部)に設けられた板部66の板面(前板面)66aより窪むように形成されて球面63と全面接触する半球状の凹面により構成される。
板部65,66は、例えば円形の板面を有した円形板部により構成される。
【0051】
即ち、板部65の板面65aは、一方の伝達軸61の中心線61Cと直交する面上に位置され、球面63は、当該板面65aより突出するように形成された半球状の球面により構成され、当該球面63の中心が一方の伝達軸61の中心線61C上に位置されるように構成されている。
また、板部66の板面66aは、他方の伝達軸62の中心線62Cと直交する面上に位置され、球面座64は、当該板面66aより窪むように形成された半球状の凹面により構成され、当該球面座64の中心が他方の伝達軸62の中心線62C上に位置されるように構成されている。
【0052】
制限機構7は、次のように構成される。
まず、
図8に示すように、一方の伝達軸61の中心線61Cと他方の伝達軸62の中心線62Cと一致させ、かつ、球面63と球面座64とを接触させた状態において、一方の伝達軸61の板部65の板面65aと他方の伝達軸62の板部66の板面66aとが所定の間隔Sを隔てて互いに平行に対向するように構成されている。
【0053】
また、一方の板部65の板面65aにおける周縁側において、一方の伝達軸61の中心線61Cを中心とした周方向に互いに90°隔てた4箇所に、板部65を貫通する図外のボルト通し孔が形成されている。同様に、他方の板部66にも図外のボルト通し孔が形成されている。
そして、例えばボルト70の軸部を一方の板部65のボルト通し孔及び他方の板部66のボルト通し孔に貫通させた後、ボルト70の軸部を圧縮コイルばね72のばね中空部に貫通させ、その後、ボルト70の軸部の前端側からナット73を締結することにより、他方の板部66とナット73との間に圧縮コイルばね72が装着された状態に構成される。
【0054】
当該制限機構7を備えているので、
図7に示すように、一方の伝達軸61の中心線61Cと他方の伝達軸62の中心線62Cとの交差角度αが所定の角度になった場合には、一方の板部65の板面(後板面)65aの周縁65bと他方の板部66の板面(前板面)66aとが接触することにより、交差角度αが所定の角度よりも大きくならないように制限される。
即ち、一方の伝達軸61の中心線と61Cと他方の伝達軸62の中心線62Cとの交差角度αが所定の角度よりも大きくならないように、摺動機構6の摺動動作範囲を制限する制限機構7を備える。
尚、制限機構7は、交差角度αが、例えば、所定の角度5°よりも大きくならないように構成されている。
【0055】
即ち、当該制限機構7は、球面63と球面座64とを接触させた状態において、一方の伝達軸61の板部65の板面(後板面)65aと他方の伝達軸62の板部66の板面(前板面)66aとが所定の間隔Sを隔てて互いに平行に対向するように構成され(
図8参照)、かつ、一方の伝達軸61の中心線61Cと他方の伝達軸62の中心線62Cとの交差角度αが所定の角度になった場合には、一方の板部65の板面65aの周縁65bと他方の板部66の板面66aとが接触して、交差角度αが所定の角度よりも大きくならないように制限する構成となっている。
【0056】
尚、後側連結手段15の詳細な図示は省略するが、当該後側連結手段15も、上述した前側連結手段16と同様に構成される。
また、後側連結手段15、及び、前側連結手段16は、圧縮コイルばね72が装着された構成であるため、一方の伝達軸61の中心線61Cと他方の伝達軸62の中心線62Cとが交差する屈曲状態からの復元性能に優れた構成となる。
【0057】
当該力伝達装置1を設けた施工装置の場合、
図6に示すように、前側伝達軸13の前端部に、加圧流体膨張式のロックボルト2の後端部が装着される上述した取付部50が設けられることになる。即ち、前側伝達軸13の前端部と取付部50とが、連結部材49、ボルトで連結された施工装置となる。
また、後側伝達軸11の後端部には、押圧手段3のシャンクロッド30の前端部と連結するためのねじ部等の連結部18が設けられている。
つまり、ロックボルト2の後端部である注水用スリーブ26の部分が、取付部50内に取付けられ、前側伝達軸13の後端部と中間伝達軸12の前端部とが摺動機構6及び制限機構7を有した前側連結手段16により連結され、中間伝達軸12の後端部と後側伝達軸11の前端部とが摺動機構6及び制限機構7を有した後側連結手段15により連結され、後側伝達軸11の後端部に形成されたねじ部等の連結部18と押圧手段3のシャンクロッド30の前端部に形成されたねじ部等の図外の連結部とが図外の連結手段を介して連結されることによって、押圧手段3からの力(押圧力や回転力等)が力伝達装置1を介して取付部50,ロックボルト2に伝達されるように構成される。
従って、上述した力伝達装置1によれば、摺動機構6を備えたので、押圧手段3からの力がロックボルト2に伝わりやすくなり、ロックボルト2を孔Hに挿入する作業の作業効率を向上できるようになる。
また、上述した力伝達装置1によれば、制限機構7が機能して、一方の伝達軸61の板部65と他方の伝達軸62の板部66とが接触した場合でも、押圧手段3からの力がロックボルト2に伝達されるので、押圧手段3のシャンクロッド30の中心線とロックボルト2の中心線とが同一直線上に位置しない状態となったとしても、押圧手段3からの力がロックボルト2に伝わりやすくなり、ロックボルト2を孔Hに挿入する作業の作業効率を向上できるようになる。
【0058】
図9に示すように、スイベル40は、ロックボルト2の鋼管部20内に水を供給するための注水路201(
図1参照)を構成する例えば水供給用の可撓性の注水ホースが接続される取水口41を備え、力伝達装置1の軸(後側伝達軸11、中間伝達軸12、前側伝達軸13)が回転しても回転しないように中間伝達軸12に装着されて、取水口41を介して供給された水を力伝達装置1の軸に形成された水路に供給するための筒状部材である。
そして、当該力伝達装置1を設けた施工装置の場合、水供給手段に接続された注水路201、中間伝達軸12に形成された取水口41を介してスイベル40に供給された水が、スイベル40の内側に形成された図外の水路、中間伝達軸12の外周面を一周するように形成された円環状溝42、円環状溝42の溝底に形成された導水口43、当該導水口43から連通して中間伝達軸12の内側の設けられた図外の水路、当該水路の水出口44と取付部50の取水口50aとを連結する水路管45を経由して、取付部50に供給されるように構成される。
尚、
図9に示すように、中間伝達軸12は、例えば、スイベル40の筒内側を貫通する貫通軸部12sを後端側に備えたスイベル装着軸12Aと、スイベル装着軸12Aが着脱可能に連結される連結軸12Bとに分離可能に構成されている。
そして、例えば、スイベル装着軸12Aの後端部に設けられた雄ねじ部12aと連結軸12Bの前端部に設けられた雌ねじ部12bとがねじ結合されることによって、スイベル装着軸12Aと連結軸12Bとが着脱可能に連結される構成となっている。
つまり、スイベル40は、スイベル装着軸12Aに設けられた鍔部12xと連結軸12Bの前端に設けられ鍔部12yとの間の貫通軸部12sの軸周りに、当該貫通軸部12sと一緒に回転しないように装着される。
即ち、力伝達装置1は、伝達軸としての貫通軸部12sと一緒に回転しないように当該貫通軸部12sに装着されて、取水口41から取込まれた水を伝達軸(中間伝達軸12、前側伝達軸13)に設けられた水路を介して取付部50に供給するスイベル40を備えた構成である。
【0059】
力伝達装置1を設けた施工装置を用いた場合、図外の注水ポンプ等の水供給手段からの水が、注水路201、スイベル40、中間伝達軸12(スイベル装着軸12A)、水路管45、取付部50、ロックボルト2の円環状溝27、注水孔28を経由して、ロックボルト2の鋼管部20内に供給されることによって、鋼管部20が水圧で異形鋼管状から円形鋼管状に膨張変形して孔Hの内壁に定着することになる。
【0060】
力伝達装置1を設けた施工装置によれば、摺動機構6及び制限機構7を有した後側連結手段15、及び、前側連結手段16を備えたので、ロックボルト2に無理な力が加わることを防止できて、ロックボルトを孔H内に真っすぐに挿入できるようになる。
特に、加圧流体膨張式のロックボルト2の場合、鋼管部20が曲がってしまうと、鋼管部20内への注水を確実に行えなくなり、ロックボルト2を孔Hの孔壁に定着させることが出来なくなることがあるので、加圧流体膨張式のロックボルト2を孔H内に真っすぐに挿入できるようになることは、当該加圧流体膨張式のロックボルト2の打設作業を正確かつ確実に行えるようになるという、優れた効果をもたらすものである。
【0061】
また、後側連結手段15、及び、前側連結手段16が摺動機構6及び制限機構7を備えているので、押圧手段3のシャンクロッド30の中心線とロックボルト2の中心線とが同一直線上に位置しない状態となった場合でも、押圧手段3からの力がロックボルト2に伝わり易くなり、ロックボルトを孔H内に真っすぐに挿入する作業を効率的に行えるようになる。
【0062】
また、力伝達装置1は、後側伝達軸11と、中間伝達軸12と、前側伝達軸13と、後側伝達軸11の前端部と中間伝達軸12の後端部とを連結する後側連結手段15と、中間伝達軸12の前端部と前側伝達軸13の後端部とを連結する前側連結手段16とを備えるので、後側伝達軸11、中間伝達軸12、前側伝達軸13の軸の屈曲方向の自由度が増すとともに、ロックボルト2に無理な力が加わることを、より効果的に防止できるようになる。
【0063】
また、力伝達装置1は、スイベル40を備えるので、力伝達装置1の軸(後側伝達軸11、中間伝達軸12、前側伝達軸13)を回転させた場合に、スイベル40の取水口41に連結された注水路201を構成する注水ホースが軸に絡まってしまうことを防止できるようになる。つまり、力伝達装置1の軸を回転させても、取水口41に連結された注水ホースが軸に絡まないようにできる。
【0064】
実施形態2
実施形態1では、取付部50と水圧調整手段200とを備えた取付手段100を例示したが、取付手段は、機械的な手段であってもよい。
例えば、
図4の円筒状凹部51におけるストッパー57の位置の直前位置の内周面51aを形成する円の直径寸法が、ロックボルト2の後端側の外周面を形成する円の直径寸法に対応した寸法に形成された円筒状凹部を設けて、当該円筒状凹部を取付手段として機能させるようにしてもよい。
即ち、円筒状凹部51のストッパー57と後側円環状密封手段56との間の円筒状凹部51の内周面51aに形成された当該内周面51aよりも小径の内周面を有した取付手段としての円筒状凹部に、ロックボルト2の後端部を嵌合させる構成としてもよい。
実施形態2に係る取付手段を備えた施工装置であっても、ロックボルト2の後端部を取付手段としての当該円筒状凹部に嵌合させることにより、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の中心線51Cとが一致するように、ロックボルト2の後端側を取付部50の円筒状凹部51に取付けることができるようになり、かつ、当該ロックボルト2が打設用に孔Hに挿入された状態において、ロックボルト2の中心線2Cと円筒状凹部51の円筒の中心線51Cとが一致した状態が維持されやすくなるから、実施形態1と同様に、打設作業を効率的に行えるようになる。
【0065】
また、各実施形態では、水圧で膨張変形させる加圧流体膨張式のロックボルト2を例示したが、空気圧で膨張変形させる加圧流体膨張式のロックボルトを使用してもよい。
即ち、ロックボルトとしては、水や空気などの流体圧によって膨張変形する加圧流体膨張式のロックボルトを用いればよい。
【符号の説明】
【0066】
2 ロックボルト、2C ロックボルトの中心線、3 押圧手段、
26 注水用スリーブ(ロックボルトの後端側)、
26f 注水用スリーブの外周面(ロックボルトの外周面)、
27 円環状溝、28 注水孔、32 ブーム、34 ガイド、50 取付部、
51 円筒状凹部、51C 円筒状凹部の中心線、52 注水機構(流体圧供給機構)
54 円環状水圧供給部(円環状流体圧供給部)、54a 水供給路(流体供給路)、
55 前側円環状密封手段、56 後側円環状密封手段、100 取付手段、
200 水圧調整手段、201 注水路、202 分岐管、203 分岐管の分岐路、
204 排水路、205 流路開閉バルブ、206 流路開閉バルブの開閉操作部材、
207 分岐管の真直路、208 水圧計、H 打設用の孔、M 地山、
T トンネル空洞部、W 壁面。