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特開2024-60468充電管理システム及び充電管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024060468
(43)【公開日】2024-05-02
(54)【発明の名称】充電管理システム及び充電管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240424BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240424BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240424BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J7/00 P
H02J7/34 F
H02J13/00 301A
H02J13/00 311A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167850
(22)【出願日】2022-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】志村 欣一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 雄司
(72)【発明者】
【氏名】細野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】土田 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】川島 晃浩
(72)【発明者】
【氏名】吉川 明成
(72)【発明者】
【氏名】石橋 秀一
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA11
5G066AA02
5G066AE01
5G066AE03
5G066AE09
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA10
5G503CB13
5G503EA05
5G503GD03
5G503GD04
(57)【要約】
【課題】電欠の可能性が抑制され、又事業所において契約電力量を超過する事態が抑制された状態で、電動車両が充電される充電管理システム,プログラムを提供する。
【解決手段】充電管理システム1は、通信部12を有する分析サーバ2により、契約電力量のもとで電力を消費する1以上の事業所にそれぞれ属する1以上のEV6に係る充電を管理するシステムである。分析サーバ2は、日射量、外気温、湿度、及び曜日の種別を説明変数として、機械学習により、目的変数として事業所のEV6の充電に係る充電電力量を除いた消費電力量を導出するモデルである電力需要予測モデル(電力需要予測モデル情報DM)を、事業所毎に形成する。更に、分析サーバ2は、形成された電力需要予測モデルに、予報に係る各説明変数を当て嵌めることで、事業所の消費電力量を予測して、EV6の充電電力量を、電力需要が契約電力量に対して余裕のある時間帯に割り振る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信部を有する管理コンピュータにより、契約電力量のもとで電力を消費する1以上の組織にそれぞれ属する1以上の電動車両に係る充電を管理するシステムであって、
前記管理コンピュータは、
(1-1)前記通信部により、前記組織が属する地域の日射量を示す日射量情報と、前記組織が属する地域の外気温を示す外気温情報と、前記組織が属する地域の湿度を示す湿度情報と、曜日及び祝日の少なくとも何れかを示すカレンダー情報とを、複数組、時間帯が互いに異なる状態で、前記組織毎に受信可能であり、
(1-2)各前記日射量情報が示す日射量、各前記外気温情報が示す外気温、各前記湿度情報が示す湿度、及び各前記カレンダー情報が示す曜日及び祝日の少なくとも何れかの種別を説明変数として、機械学習により、目的変数として前記組織の前記電動車両の充電に係る充電電力量を除いた消費電力量を導出するモデルである電力需要予測モデルを、前記組織毎に形成し、
(1-3)形成された前記電力需要予測モデルに、形成後に受信し又は演算した予報に係る前記日射量情報が示す予報日射量、予報に係る前記外気温情報が示す予報外気温、予報に係る前記湿度情報が示す予報湿度、及び前記カレンダー情報が示す曜日及び祝日の少なくとも何れかの種別を当て嵌めて、前記組織の前記消費電力量を予測すると共に、
(1-4)予測された前記消費電力量が前記契約電力量より小さい時間帯に、前記組織に属する前記電動車両の前記充電電力量を割り当てて、
(1-5)前記通信部により、割り当てた前記充電電力量を、前記電動車両側に送信する
ことを特徴とする充電管理システム。
【請求項2】
前記電力需要予測モデルは、回帰モデルを用いた前記機械学習により形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の充電管理システム。
【請求項3】
前記管理コンピュータは、
(1-4)予測された前記消費電力量が前記契約電力量より小さい時間帯に、前記組織に属する前記電動車両の前記充電電力量を割り当てる
ことに代えて、
(1-4’)予測された前記消費電力量に対しマージン閾値に基づく電力量であるマージン電力量を加えて算出されるマージン付加消費電力量が前記契約電力量より小さい時間帯に、前記組織に属する前記電動車両の前記充電電力量を割り当てる
ことを特徴とする請求項1に記載の充電管理システム。
【請求項4】
前記管理コンピュータは、更に、
(2-1)前記通信部により、前記電動車両の実際の走行に係る走行距離を示す走行距離情報と、加速度を示す加速度情報と、アップダウンを示すアップダウン情報と、車内温度を示す車内温度情報と、走行エリアの外気温を示す走行エリア外気温情報とを、複数組、時間帯が互いに異なる状態で、前記組織毎又は前記電動車両毎に受信可能であり、
(2-2)各前記走行距離情報が示す走行距離、各前記加速度情報が示す加速度、各前記アップダウン情報が示すアップダウン、各前記車内温度情報が示す車内温度、及び各前記走行エリア外気温情報が示す走行エリア外気温を説明変数として、機械学習により、目的変数として前記電動車両のSOCを導出するモデルであるSOC予測モデルを、前記組織毎又は前記電動車両毎に形成し、
(2-3)形成された前記SOC予測モデルに、形成後に受信し又は演算した予定目的地に対応する予定走行距離情報が示す予定走行距離、予定加速度情報が示す予定加速度、予定目的地に対応する予定アップダウン情報が示す予定アップダウン、予定車内温度情報が示す予定車内温度、及び予報走行エリア外気温情報が示す予報走行エリア外気温を当て嵌めて、前記電動車両のSOCを予測すると共に、
(2-4)予測された前記SOCの減少量に基づいて、前記充電電力量の算出、及び前記充電電力量の割り当ての少なくとも一方を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の充電管理システム。
【請求項5】
更に、前記組織に属する端末を備えており、
前記端末は、端末通信部と、端末表示部と、を有しており、
前記端末通信部は、予測された前記充電電力量及び予測された前記SOCを受信可能であり、
前記端末表示部は、予測された前記充電電力量による充電及び予測された前記SOCに基づいて算出された、前記電動車両に関する情報である電動車両関連情報を表示する
ことを特徴とする請求項4に記載の充電管理システム。
【請求項6】
前記電動車両関連情報は、走行可能距離である
ことを特徴とする請求項5に記載の充電管理システム。
【請求項7】
前記管理コンピュータは、
予測された前記SOCの減少量に基づいて、前記電動車両毎の前記充電電力量を把握し、
前記電動車両の運行スケジュールに基づいて、前記電動車両毎の前記充電電力量の割り当てを行う
ことを特徴とする請求項4に記載の充電管理システム。
【請求項8】
前記管理コンピュータは、
前記電動車両における予定使用開始時刻の早い順に、予定目的地に対し往復可能又は周回可能な前記電動車両毎の前記充電電力量の割り当てを行う
ことを特徴とする請求項7に記載の充電管理システム。
【請求項9】
コンピュータに読み込ませることにより、請求項1から請求項8の何れかに記載の管理コンピュータが形成される
ことを特徴とする充電管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両(EV)等の充電の管理が可能な充電管理システム、及び充電管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
充電管理装置として、特開2015-171188号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。
この装置では、充電所要時間に対する充電可能時間の比率である充電時間率が一定値より大きい電気自動車(電動車両)が有る場合に、電力源の電力値が許容最大値以下の範囲で、充電時間率に基づく優先順位が高い電動車両から順に充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-171188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の装置では、充電時間率に基づいて電動車両の充電の順序が決められている。よって、所望する電動車両における所望する時刻でのSOC(State Of Charge)が不十分であり、当該時刻において出発すると予定していた訪問箇所に到達する前に当該電動車両が電欠する可能性が存在する。これに対し、電欠する可能性の低減を重視すると、電動車両を充電する事業所等の充電箇所において、電動車両の充電により、使用電力量が契約電力量等の所定電力量を超える可能性が存在し、又夜間の電力単価が昼間の電力単価に比べて低廉である料金制等の時間帯別料金制の場合において、高価な時間帯に集中的に充電されて電気料金が嵩む可能性が存在する。
【0005】
そこで、本開示の主な目的は、事業所の電力需要等を所定程度以上の精度で予測することで、電動車両において電欠の可能性が抑制された状態で充電可能である充電管理システム、及び充電管理プログラムを提供することである。
又、本開示の別の主な目的は、事業所の電力需要等を所定程度以上の精度で予測することで、充電箇所において電動車両の充電のための電力量が使用電力量に含まれたとしても、使用電力量が所定電力量を超過する事態が抑制される充電管理システム、及び充電管理プログラムを提供することである。
更に、本開示の更に別の主な目的は、事業所の電力需要等を所定程度以上の精度で予測することで、充電箇所において電動車両の充電のための電力量が使用電力量に含まれたとしても、電気料金が抑制される充電管理システム、及び充電管理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、充電管理システムを開示する。この充電管理システムは、通信部を有する管理コンピュータにより、契約電力量のもとで電力を消費する1以上の事業所にそれぞれ属する1以上の電動車両に係る充電を管理するシステムである。管理コンピュータは、通信部により、事業所が属する地域の日射量を示す日射量情報と、事業所が属する地域の外気温を示す外気温情報と、事業所が属する地域の湿度を示す湿度情報と、曜日及び祝日の少なくとも何れかを示すカレンダー情報とを、複数組、時間帯が互いに異なる状態で、事業所毎に受信可能であっても良い。又、管理コンピュータは、各日射量情報が示す日射量、各外気温情報が示す外気温、各湿度情報が示す湿度、及び各カレンダー情報が示す曜日及び祝日の少なくとも何れかの種別を説明変数として、機械学習により、目的変数として事業所の電動車両の充電に係る充電電力量を除いた消費電力量を導出するモデルである電力需要予測モデルを、事業所毎に形成しても良い。更に、管理コンピュータは、形成された電力需要予測モデルに、形成後に受信し又は演算した予報に係る日射量情報が示す予報日射量、予報に係る外気温情報が示す予報外気温、予報に係る湿度情報が示す予報湿度、及びカレンダー情報が示す曜日及び祝日の少なくとも何れかの種別を当て嵌めて、事業所の消費電力量を予測しても良い。又更に、管理コンピュータは、予測された消費電力量が契約電力量より小さい時間帯に、事業所に属する電動車両の充電電力量を割り当てる。加えて、管理コンピュータは、通信部により、割り当てた充電電力量を、電動車両側に送信しても良い。
又、本明細書は、充電管理プログラムを開示する。この充電管理プログラムは、コンピュータに読み込まれると、当該コンピュータにおいて管理コンピュータを形成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の主な効果は、事業所の電力需要等を所定程度以上の精度で予測することで、電動車両において電欠の可能性が抑制された状態で充電可能である充電管理システム、及び充電管理プログラムが提供されることである。
又、本開示の別の主な効果は、事業所の電力需要等を所定程度以上の精度で予測することで、充電箇所において電動車両の充電のための電力量が使用電力量に含まれたとしても、使用電力量が所定電力量を超過する事態が抑制される充電管理システム、及び充電管理プログラムが提供されることである。
更に、本開示の更に別の主な効果は、事業所の電力需要等を所定程度以上の精度で予測することで、充電箇所において電動車両の充電のための電力量が使用電力量に含まれたとしても、電気料金が抑制される充電管理システム、及び充電管理プログラムが提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る充電管理システム及び関連する要素のブロック図である。
図2図1の動作例に係る全体動作を示すフローチャートである。
図3図2の事業所の電力需要予測処理を示すフローチャートである。
図4図2のEVの充電可能量予測処理を示すフローチャートである。
図5図2のEVの充電計画処理及び充電処理を示すフローチャートである。
図6図1の端末表示部において行われるEV運行スケジュールの表示を示す模式図である。
図7】具体例に係る直近1年分の予測誤差を考慮した所定期間における事業所の電力需要予測、並びにEV充電可能な時間帯及び電力量について示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施の形態の例が、その変更例と共に、適宜図面に基づいて説明される。
尚、当該形態は、下記の例及び変更例に限定されない。
【0010】
[1]構成等
図1は、当該形態に係る充電管理システム1及び関連する要素のブロック図である。
充電管理システム1は、管理コンピュータとしての分析サーバ2を含む。又、捉え方により、充電管理システム1は、更に、1以上の端末4、EV6即ち電動車両、EV6の充電器8、及び各種のサーバの少なくとも何れかを適宜含む。
【0011】
分析サーバ2は、サーバコンピュータである。尚、分析サーバ2は、サーバコンピュータではなく、パーソナルコンピュータ等であっても良い。
分析サーバ2は、充電管理サービスを提供する組織及び関連する組織の少なくとも一方に係る建物内に設置されている。尚、分析サーバ2の一部又は全部の機能は、機械学習機能を有する1以上のクラウドサービスにより実装されても良い。分析サーバ2の一部の機能がクラウドサービスで賄われる場合、分析サーバ2はクラウドサービスのサーバコンピュータと通信可能である。又、分析サーバ2は、充電管理サービスを受ける組織に係る建物内に設置されていても良い。充電管理サービスを受ける組織は、ここでは1以上の事業所である。充電管理サービスを受ける組織は、住宅等であっても良い。充電管理サービスを受ける組織は、充電管理サービスを受ける施設とも捉え得る。
【0012】
分析サーバ2は、記憶部10と、通信部12と、制御部14と、を有する。
分析サーバ2は、後述の機能を発揮させる命令群が記述された充電管理プログラムをコンピュータに読み込ませることにより形成され得る。
【0013】
記憶部10は、情報等を記憶する。記憶部10は、非一時的なコンピュータ可読の記憶媒体を含む。記憶部10は、例えばメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、及びソリッドステートドライブ(SSD)の少なくとも何れかである。
記憶部10には、電力需要予測モデル情報DM、SOC予測モデル情報SM、EV充電制御プログラムEC、地図情報MP、及びデータベースDBが記憶されている。
地図情報MPは、EV6が走行可能な道についての三次元の情報を含んでいる。即ち、地図情報MPには、道の各部分について、緯度経度(二次元の位置情報)に加え、標高(高さ情報)が含まれる。尚、地図情報MPは、二次元であっても良い。又、地図情報MPは、ラスタ形式及びベクタ形式の少なくとも何れかであっても良い。更に、地図情報MPは、外部の地図情報サーバから送信されるものであっても良い。
データベースDBには、実績電力情報FI、料金情報CI、気象情報WI、EV予約情報RI、EV充電状態情報SI、実績EV充電量情報EI、EV位置情報PI、EV車内温度情報TI、及びEV充電パターン情報NIが含まれている。
EV充電パターン情報NIは、EV6(が搭載する蓄電池)の種類に応じた、所定のSOCにおいて充電を開始した時刻からの経過時間と、SOCが十分(例えば98%以上)となるまでの充電電力及び積算充電電力量の少なくとも一方との関係を示す情報である。例えば、EV充電パターン情報NIは、充電電力について、充電開始直後に特定充電電力に達し、以後特定充電電力またはその隣接値で安定し、十分なSOCに近接すると減少するものであり、又積算充電電力量について、充電開始直後から経過時間に比例して上昇し、十分なSOCに近接すると上昇幅が緩やかになるパターンを示す。尚、充電パターン情報NIは、省略されても良い。又、充電パターン情報NI等は、交流直流変換時のロスを始めとする直流の充電器8の充電ロスを考慮したものであっても良い。
【0014】
通信部12は、ネットワークNEを介して、各種の装置等と通信可能である。ネットワークNEは、例えば、インターネット、ローカルエリアネットワーク、及び専用線の少なくとも何れかである。通信部12は、無線及び有線の少なくとも一方により通信可能である。
【0015】
制御部14は、分析サーバ2における各種の部分を制御するものであり、例えばCPUである。制御部14は、記憶部10と接続されており、記憶部10と協調して充電管理に係る制御を行う。記憶部10の非一時的なコンピュータ可読の記憶媒体に、EV充電制御プログラムEC等の制御プログラムが記憶されている。制御部14は、制御プログラムを逐次実行して、分析サーバ2の制御を行い、分析サーバ2に接続された各種の装置等の制御を行う。又、制御部14は、通信部12と接続されている。
尚、分析サーバ2は、更に、入力部及び出力部の少なくとも何れかを備えていても良い。入力部は、各種の情報を入力する部分であり、例えばキーボード、ポインティングデバイス及びマイクの少なくとも何れかである。出力部は、各種の情報を出力する部分であり、例えばモニタ、プリンタ、及びスピーカの少なくとも何れかである。入力部及び出力部は、例えばタッチパネルのように一体化されても良い。
【0016】
端末4は、端末記憶部20と、端末通信部22と、端末制御部24と、端末入力部26と、端末表示部28と、を有する。
端末4は、事業所の建物内に設置されている。
尚、端末4は、パーソナルコンピュータであっても良いし、タブレット等の携帯端末であっても良い。又、端末4は、可搬性を有していても良く、事業所の従業員等により携帯されて持ち運ばれても良い。
【0017】
端末記憶部20は、記憶される情報の一部又は全部を除き、記憶部10と同様に成る。
端末通信部22は、通信部12と同様に成る。端末通信部22は、ネットワークNEを介して、分析サーバ2と通信可能に接続されている。端末4は、空調機器AC側(例えば空調機器ACが設置された部屋)に配置されている。尚、制御コンピュータは、サーバコンピュータではなく、パーソナルコンピュータ等であっても良い。
端末制御部24は、実行するプログラムの一部又は全部を除き、制御部14と同様に成る。端末制御部24は、端末記憶部20、端末通信部22、端末入力部26、及び端末表示部28と、それぞれ接続されている。端末制御部24は、端末記憶部20と協調して充電管理及び表示に係る制御を行う。端末記憶部20の非一時的なコンピュータ可読の記憶媒体に、表示プログラム等の端末制御プログラムが記憶されている。端末制御部24は、端末制御プログラムを逐次実行して、端末4の制御を行う。
端末入力部26は、上述の入力部と同様に成る。
端末表示部28は、各種の情報を表示する部分であり、例えばモニタ及びプリンタの少なくとも一方である。尚、端末入力部26及び端末表示部28は、例えばタッチパネルのように一体化されても良い。
【0018】
典型的には、端末4は、事業所毎に扱われる。各事業所のユーザは、自身が使用可能である1以上のEV6等についての表示を、端末4において視認可能である。以下、説明の便宜のため、1つの事業所に属する1以上のEV6を管理する場合が、主に説明される。
【0019】
EV6は、蓄電池を搭載し、搭載した蓄電池に蓄積された電気エネルギーを用いて走行する。
尚、EV6は、蓄電池で駆動される電動機の出力によって走行するものであっても良いし、蓄電池で駆動される電動機の出力と、燃料で駆動されるエンジンの出力とを組み合わせて走行するものであっても良い。EV6は、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド車、電動バイク、電動自転車等である。
【0020】
充電器8は、1以上のEV6を充電する装置である。
充電器8は、ネットワークNEを介して、分析サーバ2等と接続されている。
充電器8は、事業所に設置される。
充電器8は、EV6に対して実際に充電された電力量である充電電力量を分析サーバ2に送信可能である。分析サーバ2は、送信されたそれぞれの充電電力量を、第1所定時間(例えば1日間)毎に積算し、その積算値を示す情報として実績EV充電量情報EIを記憶する。
尚、充電器8は、事業所に複数設置されても良い。
【0021】
気象データサーバWSは、サーバコンピュータであり、分析サーバ2と同様に成る。
気象データサーバWSは、気象情報WIを送信可能である。
気象情報WIは、第2所定時間(例えば1時間)毎の、事業所が属する地域の外気温を示す外気温情報を含んでいる。尚、気象情報WIは、第2所定時間毎の、事業所が属する地域の天気の種類(晴れ、曇り、雨等)を示す天気種別情報を含んでいても良い。
気象情報WIは、具体的な日時即ち暦を指定して問い合わせをすると、その暦における外気温情報を返信する。暦が将来である場合、天気予報に係る事業所が属する地域の外気温を示す予報外気温情報を返信する。
気象データサーバWSは、気象観測団体に属している。尚、気象データサーバWSは、充電管理サービスを提供する組織等に属していても良い。又、気象データサーバWSは、過去の外気温情報を返信するサーバ、及び将来の予報外気温情報を返信するサーバ等で分離されていても良い。
【0022】
電力データサーバPSは、サーバコンピュータであり、分析サーバ2と同様に成る。
電力データサーバPSは、実績電力情報FIを送信可能である。
実績電力情報FIは、第3所定時間(例えば30分間)毎の事業所の消費電力量に係る消費電力量情報を含む。かような第3所定時間を示す第3所定時間情報とこれに対応する消費電力量情報との組は、スマートメータにより取得可能である。尚、実績電力情報FIは、消費電力量情報に代えて、あるいは消費電力量情報と共に、事業所における第3所定時間毎の発電電力量又はこれに相当する第3所定時間毎の売電電力量を含んでいても良い。第3所定時間毎の発電電力量等は、事業所において、分析サーバ2に入力されても良い。
電力データサーバPSは、電力関連会社に属している。電力関連会社は、例えば、電力会社、電力販売会社、及び送電網管理会社の少なくとも何れかである。尚、電力データサーバPSは、充電管理サービスを提供する組織等に属していても良い。
【0023】
EV走行データサーバDSは、サーバコンピュータであり、分析サーバ2と同様に成る。
EV走行データサーバDSは、EV位置情報PI及びEV車内温度情報TIを送信可能である。
EV位置情報PI及びEV車内温度情報TIは、EV6毎に存在し、EV6の個体を示すEV識別情報と関連付けられている。
EV位置情報PIは、第4所定時間(例えば15分間)毎のEV6の位置を示す。EV位置情報PIは、例えばEV6に取り付けられたGPS受信器により取得可能である。取得されたEV位置情報PIは、取得された都度、あるいは事業所に戻った時点等において、EV走行データサーバDSに送信される。
EV車内温度情報TIは、第4所定時間毎のEV6の車内温度を示す。EV車内温度情報TIは、例えばEV6に取り付けられた温度センサにより取得可能である。取得されたEV車内温度情報TIは、取得された都度、あるいは事業所に戻った時点等において、EV走行データサーバDSに送信される。
尚、EV位置情報PI及びEV車内温度情報TIは、互いに異なる所定時間毎に取得されても良い。即ち、EV位置情報PIは第3-1所定時間毎とされ、EV車内温度情報TIは第3-2所定時間毎とされても良い。
EV走行データサーバDSは、充電管理サービスを提供する組織に属している。尚、EV走行データサーバDSは、事業所等に属していても良い。
【0024】
EV充電データサーバCSは、サーバコンピュータであり、分析サーバ2と同様に成る。
EV充電データサーバCSは、EV充電状態情報SIを送信可能である。
EV充電状態情報SIは、EV6毎に存在し、EV6の個体を示すEV識別情報と関連付けられている。
EV充電状態情報SIは、第5所定時間(例えば15分間)毎のEV6のSOCを示す。EV充電状態情報SIは、例えばEV6に取り付けられた蓄電池モニタにより取得可能である。取得されたEV充電状態情報SIは、取得された都度、あるいは事業所に戻った時点等において、EV走行データサーバDSに送信される。
EV充電データサーバCSは、充電管理サービスを提供する組織に属している。尚、EV充電データサーバCSは、事業所等に属していても良い。
【0025】
EV運行データサーバSSは、サーバコンピュータであり、分析サーバ2と同様に成る。
EV運行データサーバSSは、EV予約情報RIを送信可能である。
EV予約情報RIは、EV6毎に存在し、EV6の個体を示すEV識別情報と関連付けられている。
EV予約情報RIは、第6所定時間(例えば1時間)毎のEV6の予約状況を示す。EV予約情報RIは、例えばユーザがEV6を使いたい期間に応じて、事業所において端末4等で入力される。
EV運行データサーバSSは、充電管理サービスを提供する組織に属している。尚、EV運行データサーバSSは、事業所等に属していても良い。又、各種のサーバの少なくとも何れかは複数のサーバに分割されても良いし、各種のサーバの少なくとも何れか2つは統合されても良い。
【0026】
[2]動作等
[2-1]全体動作等
図2は、充電管理システム1の動作例に係る全体動作を示すフローチャートである。充電管理システム1の動作例は、コンピュータにより実行される充電管理方法の例に相当する。
尚、各種の動作のステップは、実質的に同等である他の1以上のステップに置き換えられても良いし、2以上のステップが統合されても良いし、処理の結果に影響を及ぼさない限り順序を入れ替えられても良い。動作のステップは、以下「S」と適宜略記される。
【0027】
分析サーバ2(制御部14)は、事業所の電力需要を予測すると共に(S1)、1以上のEV6の充電可能量を予測し(S2)、EV6の充電計画を立て(S3)、EV6の充電の指令を発する(S4)。
分析サーバ2は、充電計画(S3)に基づき、外部装置にEV6の充電計画値を送信して、外部装置と連携することが可能である(S5)。
【0028】
[2-2]事業所の電力需要予測の動作等
図3は、事業所の電力需要予測処理(S1)の詳細を示すフローチャートである。
分析サーバ2は、実績に係る各種の過去データを入手する(S11)。過去データには、実績電力情報FI、及び気象情報WIが含まれる。実績電力情報FI、及び気象情報WIは、それぞれ日時即ち暦と対応付けられている。実績電力情報FIは、EV6の充電に費やした電力量、即ち実績EV充電量情報EIで示される実績EV充電量を含まない。尚、実績電力情報FIは、EV充電量を含んでも良い。
そして、分析サーバ2は、事業所の電力需要予測モデルを構築して、そのモデルを示す情報である電力需要予測モデル情報DMを記憶する(S12)。
又、分析サーバ2は、S12で構築された電力需要予測モデルについて、予測誤差を計算する(S13)。
予測誤差は、様々な手法により算出可能であり、例えば、二乗平均平方根誤差(Root Mean Squared Error;RMSE)によっても良いし、平均絶対パーセント誤差(Mean Absolute Percentage Error;MAPE)によっても良い。
【0029】
更に、分析サーバ2は、所定タイミングにおいて、S13で算出された予測誤差を参照しつつ電力需要予測モデルの再構築又は更新を行って、新たな電力需要予測モデル情報DMとして記憶する(S14)。
そして、分析サーバ2は、S11~S14の適宜の繰り返しにより、より良い精度となることが見込まれる電力需要予測モデル及び電力需要予測モデル情報DMを形成する。所定タイミングは、ここでは第1所定期間毎であり、例えば1週間毎である。尚、所定タイミングは、第1所定期間毎に代えて、あるいは第1所定期間毎と共に、電力需要予測モデルの再構築又は更新を実行する旨の入力があったとき、及び過去データが所定量以上蓄積されたとき、の少なくとも何れか等であっても良い。又、S13の予測誤差の算出は、当該所定タイミングで行われても良いし、当該所定タイミングとは異なるタイミングで行われても良い。例えば、分析サーバ2は、当該所定タイミングより短い間隔で予測誤差を算出し、当該所定タイミングにおいて、これまでに算出された予測誤差の一部又は全部につき、平均等によって総合的に参照しても良い。あるいは、分析サーバ2は、所定タイミングに代えて、あるいは所定タイミングと共に、予測誤差あるいはこれに基づく演算値が所定閾値以上となった場合に、電力需要予測モデルの再構築又は更新を行っても良い。
分析サーバ2は、S11~S14の繰り返しをしつつ、図3のS15以降及び図2のS2以降を並行する。
【0030】
分析サーバ2は、電力需要予測モデルにつき、機械学習によって構築を行い、又再構築若しくは更新を行う。
機械学習は、どのような形式であっても良く、例えば回帰分析であっても良いし、時系列分析であっても良い。
回帰分析は、線形モデルを用いるもの(単回帰分析)であっても良いし、非線形モデルを用いるもの(重回帰分析)であっても良い。
時系列分析は、自己回帰モデル(Auto Regressive;AR)を用いるものであっても良いし、移動平均モデル(Moving Average;MA)を用いるものであっても良いし、自己回帰移動平均モデル(Auto Regressive Moving Average;ARMA)を用いるものであっても良いし、自己回帰差分移動平均モデル(Auto Regressive Integrated Moving Average;ARIMA)を用いるものであっても良い。
【0031】
電力需要予測モデルの機械学習において、分析サーバ2は、第2所定期間(例えば未分析の所定の一週間)にわたる、実績電力情報FIに係る消費電力量情報と、気象情報WIに係る外気温を示す外気温情報、日射量を示す日射量情報及び湿度を示す湿度情報と、実績EV充電量情報EIに係るEV6の充電電力量の積算値と、を教師データとして入力する。第2所定期間は、電力需要予測モデルの構築等を実行する所定タイミングに係る第1所定期間と同じであっても良いし、異なっていても良い。
分析サーバ2は、入力に基づいて機械学習を行い、所定日時(暦、事業所の開休業に関する曜日、祝日及び昼夜間の少なくとも何れか等、カレンダー情報LI)を適宜考慮に入れた外気温情報、日射量情報及び湿度情報に対応する、事業所の消費電力量、及びEV6の充電電力量の第1所定時間(1日)の積算値を予測するモデル、即ち電力需要予測モデルを形成していく。ここでは、分析サーバ2は、1日内の各時間帯(例えば0時から24時までの30分毎の各時間帯)を単位とした予測を行い、外気温情報、日射量情報及び湿度情報は当該時間帯の平均としてまとめられ、消費電力量及び充電電力量は当該時間帯の消費電力量とされる。又、カレンダー情報LIは、曜日及び祝日の少なくとも何れかを示す。尚、予測の単位及び要素の少なくとも何れか等は様々に変更可能であり、例えば、外気温情報等は当該1日内の1時間毎を単位として把握されても良い。又、事業所の消費電力量のモデルと、EV6の充電電力量の積算値のモデルとが区別されていても良い。更に、カレンダー情報LIに代えて、あるいはカレンダー情報LIと共に、事業所が営業しているかあるいは休業しているかを示す開休業情報が用いられても良い。開休業情報は、カレンダー情報LIと関連する。開休業情報は、カレンダー情報LIに含まれるものと扱われても良い。
形成された電力需要予測モデルに対し、特徴量(説明変数)として、将来の日時における所定時間帯の外気温情報である予報外気温情報に係る予報平均外気温と、当該所定時間帯の日射量情報である予報日射量情報に係る予報平均日射量と、当該所定時間帯の湿度情報である予報湿度情報に係る予報平均湿度とが入力されると、当該時間帯の予測に係る消費電力量を示す電力需要が出力され得、又当該時間帯の予測に係るEV6の充電電力量の積算値が出力され得る。
即ち、分析サーバ2は、日射量、平均外気温、平均湿度、及び曜日等の少なくとも何れかを説明変数とした、事業所の予測電力需要及び予測されるEV6の充電電力量の積算値の少なくとも一方を出力する電力需要予測モデルを形成する。曜日及び祝日の少なくとも一方は、事業所の開休業の種別に相当し得、即ち開業日(に相当し得る曜日等)であるかあるいは休業日(に相当し得る曜日等)であるかを示すものであり、曜日等を示す情報は、事業所が営業日であるかあるいは休業日であるかに関係するカレンダー情報LIに相当する。尚、カレンダー情報LIを把握する単位(時間帯)は、1日以外とされても良い。
尚、平均外気温に代えて、あるいは平均外気温と共に、当該時間帯内における最高外気温等が用いられても良い。同様の変更が、平均湿度等においてなされても良い。
【0032】
次いで、分析サーバ2は、事業所の電力需要予測のための特徴量を入手する(S15)。
ここでは、分析サーバ2は、気象データサーバWSから、気象情報WIのうち、第1特定時間(例えば48時間)後までの第2所定時間毎の予報外気温情報、予報日射量情報及び予報湿度情報を得る。分析サーバ2は、各予報外気温情報が示す予報外気温の平均である予報平均外気温を演算する。又、分析サーバ2は、カレンダー情報LIを参照して予測対象の曜日等を得る。
尚、分析サーバ2は、気象情報WIとして晴れ、曇り、雨等の天気種別を受信し、その天気種別に基づいて、予報外気温情報、予報日射量情報及び予報湿度情報の少なくとも何れかを演算しても良い。分析サーバ2は、この演算において、暦及び過去の気象データの少なくとも一方等の、他の情報を用いても良い。
【0033】
そして、分析サーバ2は、入手し演算した特徴量を電力需要予測モデルに当て嵌めることで、事業所の電力需要を予測する(S16)。
即ち、分析サーバ2は、予測したい日時から第1特定時間後までの期間における予報平均外気温及び曜日等を電力需要予測モデルに入力し、出力として当該期間における予測値としての事業所の電力需要を得る。
【0034】
そして、分析サーバ2は、時間帯(例えば0時から24時までの15分間ずつ)毎の充電可能な電力量の計算を行う(S17)。
例えば、分析サーバ2は、各時間帯における契約電力量から、予測値としての事業所の電力需要を各時間帯に均等に割り振った値である予測電力需要割り振り値を減算し、更にマージン閾値を減算して、時間帯毎の充電可能な電力量を算出する。
マージン閾値は、電力需要予測モデルを用いて予測した電力需要において見込まれる誤差の最大値である。尚、マージン閾値は、電力需要予測モデルの予測誤差の所定期間(例えば当該時間帯)内における最大値とされても良い。マージン閾値は、電力需要予測モデルの予測誤差と同様に、RMSE及びMAPEの少なくとも一方により算出されても良いし、電力需要予測モデルの予測誤差と異なる手法で算出されても良い。マージン閾値は、過去データからの時間帯別の予測値の実績値に対する差異が最も少ない場合の誤差の最大値とされても良い。
かように、各時間帯における契約電力量からマージン閾値が減算されることで、万が一実際の消費電力量が予測値から増えたとしても、マージン閾値分のマージンが存在することとなり、EV6の充電電力量と事業所の消費電力量とが加わった全体電力量が契約電力量を超える事態の発生が抑制される。
換言すれば、分析サーバ2は、各時間帯毎に予測された消費電力量である電力需要に対し、マージン閾値に係る電力量であるマージン電力量を加えて算出されるマージン付加消費電力量が、契約電力量より小さい時間帯に、EV6を充電するための充電電力量を割り当てる。
尚、マージンは、マージン閾値の0.8倍等とされたり、マージン閾値の1.2倍等とされたりすることで、マージン閾値に基づき調整された値とされても良い。又、契約電力量は、アグリゲータ及び電力会社の少なくとも一方等の電力供給側から要求されるデマンドレスポンス(DR)の要求値とされても良い。DR要求値は、時間帯に応じて変化し得る。
【0035】
[2-3]EVの充電可能量予測の動作等
図4は、EV6の充電可能量予測処理(S2)の詳細を示すフローチャートである。
分析サーバ2は、実績に係る各種の過去データを入手する(S21)。過去データには、EV6が実際に走行した際の位置を示す情報であるEV位置情報PI、EV6が実際に走行した際の車内温度を示す情報であるEV車内温度情報TI、及びEV6が実際に走行した日時及びエリアの気象情報WIが含まれる。EV位置情報PI、EV車内温度情報TI、及び気象情報WIは、それぞれ日時即ち暦と対応付けられている。
そして、分析サーバ2は、EV6のSOC予測モデルを構築して、そのモデルを示す情報であるSOC予測モデル情報SMを記憶すると共に(S22)、特定タイミング毎にSOC予測モデルの再構築又は更新を行って、新たなSOC予測モデル情報SMとして記憶して(S23)、S21~S23の適宜の繰り返しにより、より良い精度となることが見込まれるSOC予測モデル及びSOC予測モデル情報SMを形成する。特定タイミングは、ここでは電力需要予測モデルに係る所定タイミングと同じである。尚、電力需要予測モデルに係る所定タイミングとSOC予測モデルに係る特定タイミングとは、異なっていても良く、例えば所定タイミングの第1所定期間と特定タイミングの第1特定期間とが異なっていても良い。又、特定タイミングは、第1所定期間毎に代えて、あるいは第1所定期間毎と共に、SOC予測モデルの再構築又は更新を実行する旨の入力があったとき、及び過去データが特定量以上蓄積されたとき、の少なくとも何れか等であっても良い。電力需要予測モデルに係る過去データの所定量、及びSOC予測モデルに係る過去データの特定量は、同じであっても良いし、異なっていても良い。
分析サーバ2は、S21~S23の繰り返しをしつつ、図3のS24以降及び図2のS3以降を並行する。
【0036】
分析サーバ2は、SOC予測モデルにつき、機械学習によって構築を行い、又再構築若しくは更新を行う。
機械学習は、電力需要予測モデルの場合と同様に、どのような形式であっても良く、例えば回帰分析であっても良いし、時系列分析であっても良い。
尚、機械学習の形式は、電力需要予測モデルとSOC予測モデルとで一致していても良いし、異なっていても良い。
【0037】
SOC予測モデルの機械学習において、分析サーバ2は、第2特定期間(例えば未分析の特定の一週間)にわたる、EV6が走行している際のEV位置情報PI及びEV6が走行している際のEV車内温度情報TIの少なくとも一方から算出される値である走行特性値、並びに走行エリアの気象情報WIのうちの平均外気温、及びEV6のSOCに係るEV充電状態情報SIを、教師データとして入力する。
分析サーバ2は、入力に基づいて機械学習を行い、所定日時(暦)を適宜考慮に入れた走行特性値及び平均外気温に対応する、EV6のSOCの変化を予測するモデル、即ちSOC予測モデルを形成していく。ここでは、分析サーバ2は、1回の走行即ちEV6で1以上の目的地を訪れて事業所に戻るまでを単位とした予測を行い、外気温情報は当該走行の平均外気温としてまとめられ、EV車内温度情報TIは当該走行の平均車内温度としてまとめられ、EV充電状態情報SIは当該走行におけるSOCの減少幅とされる。尚、予測の単位及び要素の少なくとも何れか等は様々に変更可能であり、例えば、走行特性値は、EV6毎の1日間等での積算値とされても良い。
形成されたSOC予測モデルに対し、特徴量として、将来の日時の外気温情報である予報外気温情報に係る予報平均外気温、及び走行予定ルートに係る予定走行特性値が入力されると、当該日時の予測に係るEV6のSOCあるいはその変化が出力され得る。
【0038】
分析サーバ2は、SOC予測に必要な走行データを計測する(S24)。
ここでは、分析サーバ2は、EV走行データサーバDSから、実績に係るEV位置情報PI及びEV車内温度情報TIを得る。又、分析サーバ2は、気象データサーバWSから、EV6の走行時に係る走行エリアの気象情報WIを得て平均外気温を算出する。
【0039】
分析サーバ2は、入手した走行データから、SOC予測のための特徴量を抽出する(S25)。
ここでは、分析サーバ2は、特徴量の1つとして、地図情報MPを参照し、EV位置情報PIから走行毎の走行距離、加速度、及び積算高低差即ちアップダウンを算出する。走行距離、加速度、及びアップダウンは、走行データから算出される走行特性値である。尚、分析サーバ2は、地図情報MPを参照せずに走行距離等を算出しあるいは取得しても良く、例えば加速度は加速度センサにより検知されたものを用いても良いし、アップダウンは標高センサにより検知された標高の推移に基づいて把握されても良い。又、算出する各種の要素は適宜変更可能であり、例えば、アップダウンは登り方向のみの高低差を積算したものであっても良いし、加速度は省略されても良い。走行距離は走行距離情報で示され、加速度は加速度情報で示され、アップダウンはアップダウン情報で示される。
又、分析サーバ2は、当該走行における走行エリアの平均外気温をそのまま特徴量の1つとする。走行エリアの平均外気温は、EV6における空調機(エアコンディショナ)の使用と関連している。空調機の使用は、EV6の蓄電池のエネルギーを費やすことから、SOCの減少につながる。走行エリアの平均外気温は、走行エリア平均外気温情報で示される。
更に、分析サーバ2は、特徴量の1つとして、EV車内温度情報TIから平均車内温度を算出する。尚、平均車内温度は、走行特性値に含めても良い。又、特徴量の1つとして、平均車内温度に代えて、あるいは平均車内温度と共に、最高車内温度、時間帯毎の車内温度(車内温度の推移)、及び外気温と車内温度との温度差の少なくとも何れかが用いられても良い。
【0040】
そして、分析サーバ2は、特徴量をSOC予測モデルに当て嵌めることで、時間帯毎のEV6への充電可能な電力(充電可能量)の計算を行う(S26)。
ここでは、分析サーバ2は、EV予約情報RIで示されるEV6の予定走行に基づいて算出される、予定走行エリアの予定走行時間に係る予報平均外気温である予定走行エリア外気温情報と、予定走行距離と、予定アップダウンと、今までの実績と同程度と見込まれた予定加速度及び予定平均車内温度とについて、SOC予測モデルに当て嵌めて、予定走行に係るEV6のSOCの減少を予測し、その減少及び存在すればEV6の次の予定走行の出発時刻即ち予定使用開始時刻、及び1以上の予定目的地への到達及び事業所への帰還即ち予定目的地に対する往復又は周回に必要なSOC上昇量に対応可能な充電量を、時間帯毎に割り振る。この割り振りにおいて、分析サーバ2は、S17で算出された時間帯毎の充電可能な電力量を参照し、例えば割り振る充電電力量が充電可能な電力量を超えないように調整する。予定目的地が1箇所である場合、予定目的地に対する往復となり、予定目的地が複数箇所である場合、予定目的地に対する周回となる。
尚、分析サーバ2は、事業所毎に充電電力量の予測を行っても良い。この場合、例えば事業所に属する複数のEV6の走行特性値が合算される。
【0041】
[2-4]充電計画及び充電の各動作等
図5は、EV6の充電計画処理(S3)及び充電処理(S4)の詳細を示すフローチャートである。
分析サーバ2は、時間帯毎の充電可能な電力需要と時間帯毎のEV6への充電可能な電力とを参照する(S31)。
【0042】
次に、分析サーバ2は、EV6の運行計画情報即ち運行スケジュールを示すEV予約情報RIを参照する(S32)。
【0043】
続いて、分析サーバ2は、EV6の充電パターンを示すEV充電パターン情報NIを参照する(S33)。
【0044】
そして、分析サーバ2は、EV6の充電条件に応じた充電スケジュールの計算を行う(S34)。
充電条件として、ここでは次の3種が存在する。即ち、契約電力量超過抑制モード、電気料金抑制モード、及びCO抑制モードである。充電条件は、例えば、当該充電条件を示す充電条件情報の端末4への入力、及び分析サーバ2への送信により指定される。
分析サーバ2は、契約電力量超過抑制モードが指定された場合、例えば時間帯毎の充電可能な電力量の算出(S17)において、予測誤差の最大値の減算に加えて更に正の数であるの追加的な予備値を減算して、充電可能な電力量への対応により事業所の消費電力量が契約電力量を上回る事態が抑制されるようにする。
又、分析サーバ2は、電気料金抑制モードが指定された場合、例えば料金情報CIを参照して、EV6の充電に係る電気料金が抑制されるような充電スケジュールを計算する。
更に、分析サーバ2は、CO抑制モードが指定された場合、例えば時間帯毎の発電所(再生可能エネルギーを含む)のCO発生量の平均値を参照し、CO発生量が抑制されるような充電スケジュールを計算する。当該平均値は、例えば分析サーバ2の記憶部10に記憶される。
【0045】
又、分析サーバ2は、充電スケジュールの算出を、次のように行える。
即ち、分析サーバ2は、予測されたSOCの減少量に基づいて、EV6毎の必要な充電電力量を把握し、EV6の運行スケジュールに基づいて、EV6毎の充電電力量の割り当てを行える。分析サーバ2は、EV6が複数台ある場合には、EV6の運行スケジュールに基づいて、EV6毎の充電優先順位が判定され得る。
より詳しくは、分析サーバ2は、EV6における予定使用開始時刻の早い順に、予定目的地に対し往復可能又は周回可能なEV6毎の充電電力量の割り当てを、事業所の電力需要が契約電力量を超えないように行える。
例えば、分析サーバ2は、第1のEV6の現在のSOCが第2のEV6の現在のSOCより大きくても、第1のEV6の予定使用開始時刻が第2のEV6の予定使用開始時刻より早く、且つ第1のEV6の現在のSOCでは予定目的地に対し往復可能又は周回可能な走行可能距離に対応する予定SOC減少量を賄えない場合、第1のEV6を第2のEV6より先に、より大きい充電量で充電するスケジュールを立てる。又、分析サーバ2は、第1のEV6及び第2のEV6の少なくとも一方におけるSOCが予定SOC減少量を超える充電が予定使用開始時刻までに余裕を持って行える場合、料金情報CIを参照して、EV6の充電を、夜間等の電力単価の低廉な時間帯に割り振れる。
尚、予定SOC減少量を賄えるSOCは、予定SOC減少量に対して不足しないものであれば良く、予定SOC減少量と同じであっても良いし、予定SOC減少量に対して所定幅以上等の余裕を持つものであっても良い。第1のEV6及び第2のEV6等が何れも予定使用開始時刻までに余裕を持って充電可能である場合、それぞれのEV6の一部又は全部を同時にあるいは順次に、予定SOC減少量にかかわらず満充電まで充電するように充電電力量が割り振られても良い。又、分析サーバ2は、例えば第1のEV6を予定SOC減少量を賄えるSOCまで充電し、第2のEV6を予定SOC減少量を賄えるSOCまで充電した後、更に充電可能であれば第1のEV6を満充電等まで更に充電するように充電電力量を割り振っても良い。更に、分析サーバ2は、EV6の使用を優先する場合等において、一時的に契約電力量を超える状態で充電電力量を割り振っても良い。
【0046】
続いて、分析サーバ2は、EV6毎の第2特定時間(例えば48時間)先までの充電出力を計算する(S35)。尚、電力需要予測のための特徴量を入手する時間である第1特定時間と、第2特定時間とは、異なっていても良い。
この計算において、分析サーバ2は、S33で参照したEV充電パターン情報NI、及びS34で算出された充電スケジュールの少なくとも一方を参照可能である。
【0047】
そして、分析サーバ2は、S35で計算された充電出力に基づいて、充電器8へ、EV6毎の充電制御値を出力する(S36)。充電器8は、当該EV6が接続された場合、当該充電制御値に基づいてEV6を充電する。
かように、充電管理システム1では、分析サーバ2等により、事業所の電力需要パターン、及びEV6の運行スケジュールに基づき、EV6の充電が制御され、EV6が複数台である場合にはEV6毎の充電優先順位が判定され、もってEV6の運行に必要な充電量が効率的に割り振られ、事業所全体の消費電力が抑制可能となり、又電気料金の安い時間帯にEV6の充電をシフト可能として、EV6の使用に伴い生じ得る電力設備の増強及び契約電力量の上昇に基づく電気料金の高額化等の負担が抑制され得る。
そして、充電管理システム1は、カーボンニュートラル、脱炭素の実現等に鑑みEV6の普及が進む中、EV6の充電を経済的価値に優れた状態で管理することができ、事業所でのEV6の導入及び充電管理による環境価値の向上に資する。
【0048】
[2-5]EV運行スケジュールの表示動作等
図6は、EV運行スケジュールの表示を示す模式図である。
分析サーバ2は、上述のS5に関連し、電力需要予測モデル情報DMに特徴量を当て嵌めて得られる事業所の電力需要及びEV6への充電可能電力量の予測、並びにSOC予測モデル情報SMに特徴量を当て嵌めて得られるEV6のSOCの変化予測に基づいて、EV6の走行可能距離の変遷予測を算出し、端末4に送信可能である。ここでは、算出当日の1日間の走行可能距離の変遷が予測されて算出される。
【0049】
端末4(端末制御部24)は、電動車両関連情報としてのEV6の走行可能距離に係る変遷予測を端末通信部22において受信すると、端末記憶部20において記憶すると共に、例えば図6で示されるように、端末表示部28において、EV運行スケジュールとして表示する。
尚、分析サーバ2は、電動車両関連情報として、EV6の走行可能距離に代えて、あるいは走行可能距離と共に、SOC等を算出し、端末4がSOC等を表示しても良い。又、分析サーバ2は、各種の予測値と共に、実績値即ち過去データを送信し、端末4が実績値を表示しても良い。更に、端末4への入力等で指定された日時におけるEV運行スケジュールが、計算され、送信され、表示されても良い。加えて、EV運行スケジュールの表示、及びそのための分析サーバ2から端末4への各種の情報の送信は、様々なタイミングで行うことができ、例えば、第7所定時間(15分間)毎に直前の情報に基づいて送信され表示されても良いし、端末4へ表示あるいはその更新を要求する入力があった場合に送信され表示されても良いし、関係する情報の少なくとも何れかについて更新があった場合に、最新の情報に基づいて、リアルタイムで送信され表示されても良いし、これらが適宜組み合わせられても良い。
【0050】
図6の例では、事業所に属する2台のEV6の種別が、車種28Aとして表示されている。
又、各EV6の最大走行可能距離即ち航続距離が、走行距離28Bとして表示されている。各EV6の走行距離28Bは、何れも300km(キロメートル)である。
【0051】
更に、8時、9時等の各時刻を示すタイムバー28Cが表示されている。
又、EV1号車に係るEV6について、8時から12時まで〇〇支店を目的地とした予約が入っている旨、即ち具体的なEV予約情報RIが表示されている。
尚、EV予約情報RIに代えて、あるいはEV予約情報RIと共に、当該予約の走行で予測されるSOCの減少量等が、算出され、送信され、表示されても良い。又、タイムバー28Cの下側への表示に応じた入力等により、当該EV6の予約を受け付けて、EV予約情報RIを発行しても良く、即ちEV運行スケジュールの表示がEV6の予約受付表示を兼ねても良い。EV6の予約は、目的地及び使用予定時間を入力して行われても良い。新たなEV6の予約の入力が確定された場合、当該予約の走行で予測される残り走行可能距離28D等が、算出され、送信されて、更新されたEV運行スケジュールが表示されても良い。
【0052】
又更に、EV1号車に係るEV6について、8時から12時までの走行で予測されるSOCの減少から算出された、12時即ちEV予約情報RIにおける使用終了予定時刻における残り走行可能距離28Dが、100kmであることが表示されている。
又、充電可能電力量の予測に従い、EV1号車に係るEV6が12時に充電器8に接続されて充電開始されると、13時の時点で残り走行可能距離28Dが150kmに延び、14時の時点で残り走行可能距離28Dが200kmに延び、15時の時点で残り走行可能距離28Dが250kmに延び、16時の時点で残り走行可能距離28Dが300kmに回復する予定である旨、表示されている。
【0053】
同様に、EV2号車に係るEV6について、11時から13時まで△△大学を目的地とした予約が入っている旨、即ち具体的なEV予約情報RIが表示されている。
又更に、EV2号車に係るEV6について、11時から13時までの走行で予測されるSOCの減少から算出された14時の時点での残り走行可能距離28Dが、200kmであることが表示されている。
又、充電可能電力量の予測に従い、EV2号車に係るEV6が14時に充電器8に接続されて充電開始されると、15時の時点で残り走行可能距離28Dが250kmに延び、16時の時点で残り走行可能距離28Dが300kmに回復する予定である旨、表示されている。
【0054】
[3]具体例等
以下、充電管理システム1の具体例が説明される。
【0055】
2つの事業所において、電力需要が予測された。A事業所は、1年間の累積降雪量が10センチ未満の日本における温暖地に所在している。B事業所は、1年間の累積降雪量が60センチ前後の日本における寒冷地に所在している。
各事業所における西暦2019年の1年分の日射量、平均外気温、平均湿度、及び曜日を説明変数とし、消費電力量を目的変数として、機械学習により、電力需要予測モデル情報DMが形成された。又、この電力需要予測モデル情報DMにおける学習中の予測誤差として、RMSE及びMAPEが算出された。尚、ここでの機械学習及び予測誤差の算出は、機械学習機能を有するクラウドサービスにより行われた。
A事業所に対しては、2種類の予測モデルが用いられた。1つは、複数種類の回帰モデルのアンサンブル学習による予測モデルであって、各回帰モデルの結果についてまとめるためのモデルを更に構築したものであるスタックアンサンブル回帰モデルである。もう1つは、複数種類の時系列モデルのアンサンブル学習による予測モデルであって、各時系列モデルの結果を投票とみて多数決により見出された結果を全体の結果とするものであるヴォーティングアンサンブル時系列モデルである。
B事業所に対しては、2種類の予測モデルが用いられた。1つは、複数種類の回帰モデルのアンサンブル学習による予測モデルであって、各回帰モデルの結果を投票とみて多数決により見出された結果を全体の結果とするものであるヴォーティングアンサンブル回帰モデルである。もう1つは、上述のヴォーティングアンサンブル時系列モデルである。
そして、この電力需要予測モデル情報DMに基づいて予測された各事業所における予測消費電力量と、実際に使用された消費電力量である実績消費電力量とが、西暦2020年の1年にわたり取得され、予測値の予測誤差として、RMSE及びMAPEが算出された。
これらの予測誤差が、次の表1に示される。
【0056】
【表1】
【0057】
A事業所の回帰モデルにおける学習中のRMSEは4.94、MAPEは5.12であり、時系列モデルにおける学習中のRMSEは1.46、MAPEは1.94であった。
A事業所の回帰モデルにおける予測値のRMSEは16.87、MAPEは14.38であり、時系列モデルにおける予測値のRMSEは16.92、MAPEは18.26であった。
B事業所の回帰モデルにおける学習中のRMSEは8.24、MAPEは4.89であり、時系列モデルにおける学習中のRMSEは4.43、MAPEは2.58であった。
B事業所の回帰モデルにおける予測値のRMSEは14.94、MAPEは8.81であり、時系列モデルにおける予測値のRMSEは15.44、MAPEは9.80であった。
何れの予測誤差も所定程度以下となっており、各事業所において電力需要の予測ができている。
特に、予測値の場合、時系列モデルの予測誤差に比べ、回帰モデルの予測誤差の方が、総じて小さくなっている。
【0058】
又、併行して、各事業所における、時間帯毎の充電可能な電力の計算が行われた。
図7は、2019年の1年分の予測誤差を考慮した2020年内の所定期間におけるA事業所の電力需要予測、並びにEV6の充電可能な時間帯及び電力量について示すグラフである。図7のグラフの横軸は時間であり、縦軸は電力需要又は充電可能電力量である。縦軸は、より詳しくは時間帯(30分間)毎の消費電力量(kWh/30分)である。kWhは、キロワットアワーである。
【0059】
図7において、実線で示されるマージンのないA事業所の電力需要の予測値は、1日毎に略周期的に変化し、始業時間直前である7時頃までは1日の最小値に近い値をとり、7時頃から急激に増加し、昼休憩の12時から13時までの前後でピークとなり、終業時間に対応する18時頃にかけて減少し、1日の最小値に近い値をとるパターンを繰り返す。
又、破線で示されるマージン閾値を加味した電力需要の予測値は、マージンのない電力需要の予測値の上方に位置している。更に、A事業所の契約電力量が、水平な一点鎖線で示されている。分析サーバ2は、マージン閾値を加味した電力需要の予測値が契約電力量を超えない時間帯に、EV6を充電可能な充電電力量を割り振る。例えば、分析サーバ2は、予測された1台のEV6の充電電力量分以上にマージン閾値を加味した電力需要の予測値が契約電力量に対して余裕がある時間帯に、そのEV6を充電可能な充電電力量を割り振る。あるいは、分析サーバ2は、電気料金がより低廉であり又契約電力量に対してより余裕のある夜間の時間帯に、EV6の充電電力量を割り当てても良い。
【0060】
他方、図7において点線で示されるA事業所の消費電力量の実績値は、例えば図7の左から3,4,5番目の山で見受けられるように、誤差によって、マージンのない電力需要の予測値を超えることがある。
このように消費電力量の実績値がマージンのない電力需要の予測値を超えたとしても、分析サーバ2ではマージン閾値を加味した電力需要の予測値に基づいてEV6を充電可能な充電電力量を割り当てるため、A事業所の総合的な消費電力量が契約電力量を超える事態の発生は、抑制される。
【0061】
[4]作用効果等
かような充電管理システム1は、次のような作用効果を奏する。
即ち、充電管理システム1は、通信部12を有する分析サーバ2により、契約電力量のもとで電力を消費する1以上の事業所にそれぞれ属する1以上のEV6に係る充電を管理するシステムである。分析サーバ2は、(1-1)通信部12により、事業所が属する地域の日射量を示す日射量情報と、事業所が属する地域の外気温を示す外気温情報と、事業所が属する地域の湿度を示す湿度情報と、カレンダー情報LIが示す曜日及び祝日の少なくとも何れかを示すカレンダー情報LIとを、複数組、時間帯が互いに異なる状態で、事業所毎に受信可能である。又、分析サーバ2は、(1-2)各日射量情報が示す日射量、各外気温情報が示す外気温、各湿度情報が示す湿度、及び各カレンダー情報LIが示す曜日及び祝日の少なくとも何れかの種別を説明変数として、機械学習により、目的変数として事業所のEV6の充電に係る充電電力量を除いた消費電力量を導出するモデルである電力需要予測モデル(電力需要予測モデル情報DM)を、事業所毎に形成する。更に、分析サーバ2は、(1-3)形成された電力需要予測モデルに、形成後に受信し又は演算した予報に係る日射量情報が示す予報日射量、予報に係る外気温情報が示す予報外気温、予報に係る湿度情報が示す予報湿度、及びカレンダー情報LIが示す曜日及び祝日の少なくとも何れかの種別を当て嵌めて、事業所の消費電力量を予測する。又更に、分析サーバ2は、(1-4)予測された消費電力量が契約電力量より小さい時間帯に、事業所に属するEV6の充電電力量を割り当てる。加えて、分析サーバ2は、(1-5)通信部12により、割り当てた充電電力量を、EV6側に送信する。
よって、充電管理システム1では、事業所の電力需要を所定程度以上の精度で予測することができる。従って、充電管理システム1では、EV6において電欠の可能性が抑制され、又電力需要が契約電力量に対して余裕のある時間帯に充電電力量を割り振ることで事業所において契約電力量を超過する事態が抑制された状態で、EV6が充電される。又、充電管理システム1では、電力単価が低廉な時間帯に充電電力量が割り振られることで、EV6の充電のための電気料金が抑制される。
【0062】
又、電力需要予測モデルは、回帰モデルを用いた機械学習により形成される。よって、電力需要の予測の誤差が、より抑制される。
更に、分析サーバ2は、(1-4)予測された消費電力量が契約電力量より小さい時間帯に、事業所に属するEV6の充電電力量を割り当てることに代えて、(1-4’)予測された消費電力量に対しマージン閾値に基づく電力量であるマージン電力量を加えて算出されるマージン付加消費電力量が契約電力量より小さい時間帯に、事業所に属するEV6の充電電力量を割り当てる。よって、契約電力量を超える事態の発生が、より一層抑制される。
【0063】
加えて、分析サーバ2は、(2-1)通信部12により、EV6の実際の走行に係る走行距離を示す走行距離情報と、加速度を示す加速度情報と、アップダウンを示すアップダウン情報と、車内温度を示す車内温度情報と、走行エリアの外気温を示す走行エリア外気温情報とを、複数組、時間帯が互いに異なる状態で、事業所毎又はEV6毎に受信可能である。又、分析サーバ2は、(2-2)各走行距離情報が示す走行距離、各加速度情報が示す加速度、各アップダウン情報が示すアップダウン、各車内温度情報が示す車内温度、及び各走行エリア外気温情報が示す走行エリア外気温を説明変数として、機械学習により、目的変数としてEV6のSOCを導出するモデルであるSOC予測モデル(SOC予測モデル情報SM)を、事業所毎又はEV6毎に形成する。更に、分析サーバ2は、(2-3)形成されたSOC予測モデルに、形成後に受信し又は演算した予定目的地に対応する予定走行距離情報が示す予定走行距離、予定加速度情報が示す予定加速度、予定目的地に対応する予定アップダウン情報が示す予定アップダウン、予定車内温度情報が示す予定車内温度、及び予報走行エリア外気温情報が示す予報走行エリア外気温を当て嵌めて、EV6のSOCを予測する。又更に、分析サーバ2は、(2-4)予測されたSOCの減少量に基づいて、充電電力量の算出、及び充電電力量の割り当ての少なくとも一方を行う。
よって、充電電力量に関する処理の精度が、より一層良好となる。
【0064】
更に、分析サーバ2は、事業所に属する端末4を備えている。端末4は、端末通信部22と、端末表示部28と、を有している。端末通信部22は、予測された充電電力量及び予測されたSOCを受信可能である。端末表示部28は、予測された充電電力量による充電及び予測されたSOCに基づいて算出された、EV6に関する情報である電動車両関連情報を表示する。電動車両関連情報は、走行可能距離である。
よって、EV6の運行スケジュールの管理がより容易になり、ユーザはEV6をより利用し易くなる。
【0065】
又更に、分析サーバ2は、予測されたSOCの減少量に基づいて、EV6毎の充電電力量を把握し、EV6の運行スケジュールに基づいて、EV6毎の充電電力量の割り当てを行う。
又、分析サーバ2は、EV6における予定使用開始時刻の早い順に、予定目的地に対し往復可能又は周回可能なEV6毎の充電電力量の割り当てを行える。
よって、ユーザは運行スケジュールに係る予定使用開始時刻から予定目的地に向かいそれぞれ訪問のうえで事業所に帰還するEV6の使用を行え、充電管理システム1では、EV6の使用に係る電欠の発生が抑制されて利便性の低下が抑制された状態で、電力需要が契約電力量に対して余裕のある時間帯に充電電力量が割り振られることで、事業所において契約電力量を超過する事態が抑制され、又電力単価が低廉な時間帯に充電電力量が割り振られることで、EV6の充電のための電気料金が抑制される。
【0066】
加えて、充電管理プログラムがコンピュータに読み込まれると、分析サーバ2が形成される。
よって、充電管理プログラムにより、事業所の電力需要を所定程度以上の精度で予測する充電管理システム1を提供することができる。従って、充電管理プログラムで形成された充電管理システム1により、EV6において電欠の可能性が抑制され、又電力需要が契約電力量に対して余裕のある時間帯に充電電力量を割り振ることで事業所において契約電力量を超過する事態が抑制された状態で、EV6が充電され得る。又、充電管理プログラムで形成された充電管理システム1により、電力単価が低廉な時間帯に充電電力量が割り振られることで、EV6の充電のための電気料金が抑制される。
【符号の説明】
【0067】
1・・充電管理システム、2・・分析サーバ(管理コンピュータ)、4・・端末、6・・EV(電動車両)、12・・通信部、22・・端末通信部、28・・端末表示部、DM・・電力需要予測モデル情報、LI・・カレンダー情報、PI・・EV位置情報(走行距離情報、加速度情報、アップダウン情報)、SM・・SOC予測モデル情報、TI・・EV車内温度情報(車内温度情報)、WI・・気象情報(日射量情報、外気温情報、湿度情報、走行エリア外気温情報)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7