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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006140
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】結束装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20240110BHJP
   B21F 23/00 20060101ALI20240110BHJP
   B21F 15/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
B21F23/00 B
B21F23/00 C
B21F15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106761
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 章
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健一
(72)【発明者】
【氏名】新藤 茂輝
【テーマコード(参考)】
4E070
【Fターム(参考)】
4E070AA01
4E070AB06
4E070AC03
4E070BA02
4E070BA18
4E070BD09
4E070BE01
4E070BF04
4E070BG06
4E070CA03
4E070CA04
4E070DA04
4E070DB04
(57)【要約】
【課題】鉄筋の結束に必要な量のワイヤを確実に引き出せるようにした結束装置を提供する。
【解決手段】結束装置100Aは、格子状に配設された鉄筋の交差箇所をワイヤWで結束する鉄筋結束機1Aと、鉄筋結束機1Aを、鉄筋の配設面に対して交差する方向に移動させる結束機移動部10Aと、ワイヤWが巻かれたリール20からワイヤWを引き出すワイヤ引き出し部2Aとを備え、ワイヤ引き出し部2Aは、ワイヤWの送り経路に設けられる引き出しローラ21を移動させるローラ移動部22を備え、ローラ移動部22は、リール20からワイヤWを引き出す方向と、引き出されたワイヤWから離れる方向に、鉄筋結束機1Aの移動に連動して引き出しローラ21を移動させる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを鉄筋の周囲に送り、鉄筋の周囲に送ったワイヤを捩じり結束する結束機構と、
前記結束機構を鉄筋の結束を行う結束位置と鉄筋から離れた退避位置との間で移動させる結束機構移動部と、
リールに巻かれたワイヤを引き出すワイヤ引き出し部とを備え、
前記ワイヤ引き出し部は、前記結束機構移動部の動作が伝達される伝達部を備え、
前記伝達部は、
前記結束機構移動部の動作で移動する前記結束機構の移動量に対し、前記ワイヤ引き出し部で引き出されるワイヤの量を異ならせた
結束装置。
【請求項2】
ワイヤを鉄筋の周囲に送り、鉄筋の周囲に送ったワイヤを捩じり結束する結束機構と、
前記結束機構を鉄筋の結束を行う結束位置と鉄筋から離れた退避位置との間で移動させる結束機構移動部と、
リールに巻かれたワイヤを引き出すワイヤ引き出し部とを備え、
前記ワイヤ引き出し部は、前記結束機構移動部の動作が伝達される伝達部を備え、
前記伝達部は、
前記結束機構移動部の動作で移動する結束機構の移動量で、鉄筋の結束に必要な量のワイヤを前記ワイヤ引き出し部で引き出す
結束装置。
【請求項3】
ワイヤを鉄筋の周囲に送り、鉄筋の周囲に送ったワイヤを捩じり結束する結束機構と、
前記結束機構を鉄筋の結束を行う結束位置と鉄筋から離れた退避位置との間で移動させる結束機構移動部と、
リールに巻かれたワイヤを引き出すワイヤ引き出し部と、
前記ワイヤ引き出し部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記結束機構移動部による前記結束機構の移動に合わせて、鉄筋の結束に必要な量のワイヤを前記ワイヤ引き出し部で引き出す
結束装置。
【請求項4】
前記ワイヤ引き出し部は、前記結束機構が結束位置と退避位置との間で移動する方向と異なる方向にワイヤを引き出す
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の結束装置。
【請求項5】
前記結束機構移動部は、鉄筋の配設面に対して交差する方向に前記結束機構を移動させる
請求項4に記載の結束装置。
【請求項6】
前記ワイヤ引き出し部は、前記結束機構が結束位置から退避位置へ移動する動作でワイヤを引き出す
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の結束装置。
【請求項7】
前記ワイヤ引き出し部は、前記リールが収容されるリール収容部と前記結束機構との間のワイヤの送り経路に設けられる引き出し部材を備え、前記結束機構が結束位置から退避位置へ移動する動作でワイヤを引き出す方向に前記引き出し部材を移動させ、前記結束機構が退避位置から結束位置へ移動する動作で引き出したワイヤから離れる方向に前記引き出し部材を移動させる
請求項6に記載の結束装置。
【請求項8】
前記ワイヤ引き出し部が前記リールからワイヤを引き出す動作で、前記結束機構と前記ワイヤ引き出し部との間のワイヤに掛かる負荷より、前記ワイヤ引き出し部と前記リールとの間のワイヤに掛かる負荷を大きくする
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の結束装置。
【請求項9】
前記リールの回転を抑制する制動部を備えた
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の結束装置。
【請求項10】
前記制動部は、前記結束機構が退避位置に移動すると、前記リールの回転を抑制する
請求項9に記載の結束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄筋をワイヤで結束する結束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物には強度を向上させるために鉄筋が使用されており、コンクリート打設時に鉄筋が所定の位置からずれないように、ワイヤで結束している。
【0003】
従来から、2本以上の鉄筋にワイヤを巻き、鉄筋に巻いたワイヤを捩じって当該2本以上の鉄筋をワイヤで結束する鉄筋結束機と称す結束機が提案されている。
【0004】
このような鉄筋結束機を、設置して使用する設備機器に適用した技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-35052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鉄筋結束機を、設置して使用する設備機器に適用する場合、ワイヤが巻かれたリールを、従前の鉄筋結束機に装填可能なサイズのリールより大型化して、ワイヤの収容量を増加させることが考えられる。
【0007】
しかし、従前の鉄筋結束機に装填可能なサイズのリールより大型化したリールを使用する場合、鉄筋結束機に備えられたワイヤを送る機構では、ワイヤの引き出し量が不足する可能性がある。このため、従前の鉄筋結束機に装填可能なサイズのリールより大型化したリールを使用する場合、鉄筋の結束に必要な量のワイヤを確実に引き出せるようにする必要がある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためなされたもので、鉄筋の結束に必要な量のワイヤを確実に引き出せるようにした結束装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、ワイヤを鉄筋の周囲に送り、鉄筋の周囲に送ったワイヤを捩じり結束する結束機構と、結束機構を鉄筋の結束を行う結束位置と鉄筋から離れた退避位置との間で移動させる結束機構移動部と、リールに巻かれたワイヤを引き出すワイヤ引き出し部とを備え、ワイヤ引き出し部は、結束機構移動部の動作が伝達される伝達部を備え、伝達部は、結束機構移動部の動作で移動する結束機構の移動量に対し、ワイヤ引き出し部で引き出されるワイヤの量を異ならせた結束装置である。
【0010】
本発明では、結束機構を結束位置と退避位置との間で移動させる動作における結束機構の移動量に対し、ワイヤ引き出し部で引き出されるワイヤの量を異ならせ、結束機構の移動量で、鉄筋の結束に必要な量のワイヤが引き出される。
【0011】
また、本発明は、ワイヤを鉄筋の周囲に送り、鉄筋の周囲に送ったワイヤを捩じり結束する結束機構と、結束機構を鉄筋の結束を行う結束位置と鉄筋から離れた退避位置との間で移動させる結束機構移動部と、リールに巻かれたワイヤを引き出すワイヤ引き出し部とを備え、ワイヤ引き出し部は、結束機構移動部の動作が伝達される伝達部を備え、伝達部は、結束機構移動部の動作で移動する結束機構の移動量で、鉄筋の結束に必要な量のワイヤをワイヤ引き出し部で引き出す結束装置である。
【0012】
本発明では、結束機構を結束位置と退避位置との間で移動させる動作で、鉄筋の結束に必要な量のワイヤが引き出される。
【0013】
更に、本発明は、ワイヤを鉄筋の周囲に送り、鉄筋の周囲に送ったワイヤを捩じり結束する結束機構と、結束機構を鉄筋の結束を行う結束位置と鉄筋から離れた退避位置との間で移動させる結束機構移動部と、リールに巻かれたワイヤを引き出すワイヤ引き出し部と、ワイヤ引き出し部を制御する制御部とを備え、制御部は、結束機構移動部による結束機構の移動に合わせて、鉄筋の結束に必要な量のワイヤをワイヤ引き出し部で引き出す結束装置である。
【0014】
本発明では、結束機構移動部による結束機構の移動に合わせて、鉄筋の結束に必要な量のワイヤが、結束機構でワイヤが使用されるタイミングでワイヤ引き出し部により引き出される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鉄筋の結束に必要な量のワイヤを、結束機構を移動させる力で引き出すことができる。これにより、ワイヤの引き出し量が不足することを抑制できる。
【0016】
また、本発明によれば、鉄筋の結束に必要な量のワイヤを、結束機構でワイヤが使用されるタイミングで引き出すことができる。これにより、ワイヤの引き出し量が不足することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】第1の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図である。
図1B】第1の実施の形態の結束装置の一例を示す正面図である。
図1C】第1の実施の形態の結束装置の一例を示す背面図である。
図1D】第1の実施の形態の結束装置の一例を示す上面図である。
図1E】第1の実施の形態の結束装置の一例を示す機能ブロック図である。
図2】本実施の形態の鉄筋結束機の内部構成の一例を示す要部側面図である。
図3A】結束部の一例を示す断面平面図である。
図3B】結束部の一例を示す断面平面図である。
図4A】第1の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図である。
図4B】第1の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図である。
図4C】第1の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図である。
図5A】第2の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図である。
図5B】第2の実施の形態の結束装置の一例を示す正面図である。
図5C】第2の実施の形態の結束装置の一例を示す背面図である。
図5D】第2の実施の形態の結束装置の一例を示す上面図である。
図5E】第2の実施の形態の結束装置の一例を示す機能ブロック図である。
図6A】第2の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図である。
図6B】第2の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図である。
図6C】第2の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図である。
図7A】第3の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図である。
図7B】第3の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図である。
図7C】第3の実施の形態の結束装置の一例を示す正面図である。
図7D】第3の実施の形態の結束装置の一例を示す機能ブロック図である。
図8A】第3の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図である。
図8B】第3の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図である。
図8C】第3の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図である。
図8D】第3の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図である。
図9A】制動部の一例を示す斜視図である。
図9B】制動部の一例を示す斜視図である。
図9C】制動部の一例を示す斜視図である。
図10A】制動部の一例を示す正面図である。
図10B】制動部の一例を示す正面図である。
図10C】制動部の一例を示す正面図である。
図11】制動部の他の例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、ワイヤで鉄筋を結束する結束装置の実施の形態について説明する。
【0019】
<第1の実施の形態の結束装置の全体構成例>
図1Aは、第1の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図、図1Bは、第1の実施の形態の結束装置の一例を示す正面図、図1Cは、第1の実施の形態の結束装置の一例を示す背面図、図1Dは、第1の実施の形態の結束装置の一例を示す上面図である。また、図1Eは、第1の実施の形態の結束装置の一例を示す機能ブロック図である。
【0020】
第1の実施の形態の結束装置100Aは、格子状に配設された鉄筋Sの交差箇所をワイヤWで結束する鉄筋結束機1Aと、鉄筋結束機1Aを、鉄筋Sの配設面に対して交差する略鉛直方向に結束位置と退避位置との間で移動させる結束機移動部10Aを備える。
【0021】
また、結束装置100Aは、鉄筋結束機1Aで使用されるワイヤWが巻かれたリール20からワイヤWを引き出すワイヤ引き出し部2Aと、リール20が収容されるリール収容部200Aを備える。
【0022】
更に、結束装置100Aは、結束装置100Aの全体を、鉄筋Sの配設面に沿って移動させる走行部14を備える。
【0023】
結束装置100Aは、格子状に配設された鉄筋Sに走行部14が乗って移動する構成であり、鉄筋Sの配設面が略水平な面となる。
【0024】
結束装置100Aの動作の概要を説明すると、結束装置100Aは、結束対象となる鉄筋Sの交差箇所に鉄筋結束機1Aの位置が合うように走行部14で移動し、結束機移動部10Aが鉄筋結束機1Aを待機位置から結束位置に移動させた後、鉄筋結束機1AがワイヤWで鉄筋Sを結束する。
【0025】
鉄筋結束機1Aで鉄筋Sの結束が終了すると、結束機移動部10Aが鉄筋結束機1Aを結束位置から待機位置に移動させる。また、鉄筋結束機1Aが結束位置から待機位置へ移動する動作に合わせて、次の結束動作で使用されるワイヤWを、ワイヤ引き出し部2Aがリール20から引き出す。
【0026】
次に、結束装置100Aの各部の構成について説明する。結束機移動部10Aは結束機構移動部の一例で、鉄筋結束機1Aが装着される結束機装着部11と、結束機装着部11を矢印C1、C2で示す上下方向に移動させる駆動部12と、ワイヤ引き出し部2Aと連結される連結部13を備える。駆動部12は、モータ、アクチュエータなど、移動量、移動方向及び移動速度などが制御可能な動力源と、動力源の動き(出力)を、結束機装着部11の矢印C1、C2方向への動きに変換する各種機構を備える。
【0027】
結束機移動部10Aは、結束機装着部11に装着された鉄筋結束機1Aを矢印C1で示す上方向に所定量移動させることで、鉄筋結束機1Aを退避位置に移動させる。また、結束機移動部10Aは、結束機装着部11に装着された鉄筋結束機1Aを矢印C2で示す下方向に所定量移動させることで、鉄筋結束機1Aを退避位置から結束位置に移動させる。
【0028】
ワイヤ引き出し部2Aは、鉄筋結束機1Aとリール収容部200Aとの間のワイヤWの送り経路に設けられる引き出しローラ21と、引き出しローラ21を移動させるローラ移動部22と、ワイヤWが送られる経路を変える経路誘導部材23a、23bを備える。
【0029】
引き出しローラ21は引き出し部材の一例で、軸21aを支点に回転可能な回転体で構成され、外周面にワイヤWが接する。
【0030】
ローラ移動部22は、リール収容部200Aに収容されたリール20からワイヤWを引き出す方向と、引き出されたワイヤWから離れる方向に引き出しローラ21を移動させる。ローラ移動部22は、本例では、引き出しローラ21がリール収容部200Aから離れ、リール収容部200Aに収容されたリール20からワイヤWを引き出す方向である矢印A1方向と、引き出しローラ21がリール収容部200Aに近づく方向である矢印A2方向に、引き出しローラ21を往復移動させる。矢印A1、A2方向は、鉄筋結束機1Aが結束位置と退避位置との間で移動する方向と異なる方向であり、ワイヤ引き出し部2Aは、本例では、鉄筋結束機1Aの移動方向に対して略直交する略水平方向にワイヤWを引き出す。
【0031】
ローラ移動部22は、結束機移動部10Aの動作が伝達され、鉄筋結束機1Aの移動に連動して引き出しローラ21を移動させる伝達部を構成する。そこで、ローラ移動部22は、引き出しローラ21が取り付けられる第1のリンク22aと、結束機移動部10Aを介して鉄筋結束機1Aと連結される第2のリンク22bを備える。ローラ移動部22は、第1のリンク22aと第2のリンク22bが、軸22cを支点に連動して回転可能となるように、第1のリンク22aが軸22cから一の方向に延伸し、第2のリンク22bが軸22cから他の方向に延伸する形態で、一体的に連結される。
【0032】
ローラ移動部22は、第1のリンク22aにおいて軸22cと反対側の端部に、引き出しローラ21が軸21aを支点として回転可能に取り付けられる。また、ローラ移動部22は、第2のリンク22bにおいて軸22cと反対側の端部に、結束機移動部10Aに連結される被連結部22dを備える。被連結部22dは、本例では、軸22cが延伸する方向に沿って第2のリンク22bから突出する円柱または円筒状の凸部で構成される。
【0033】
結束機移動部10Aの連結部13は、ローラ移動部22の被連結部22dの直径より若干大きい幅で開口し、鉄筋結束機1Aの移動方向に対して交差する方向に延伸する。
【0034】
結束装置100Aは、円柱または円筒状の凸部で構成される被連結部22dが、被連結部22dの直径より若干大きい幅で開口した溝で構成される連結部13に入ることで、ローラ移動部22と鉄筋結束機1Aが連結され、鉄筋結束機1Aの矢印C1、C2方向の動きがローラ移動部22に伝達される。
【0035】
結束装置100Aでは、矢印C1、C2で示す鉄筋結束機1Aの移動方向と、矢印A1で示すリール20からのワイヤWの引き出し方向が略直交する。そこで、ローラ移動部22は、矢印C1、C2で示す上下方向に沿った鉄筋結束機1Aの動きを、矢印A1、A2で示す水平方向に沿った引き出しローラ21の動きに変換する。
【0036】
このため、ローラ移動部22は、本例では、第1のリンク22aと第2のリンク22bがL状に連結され、第1のリンク22aと第2のリンク22bの交点に軸22cが設けられる。
【0037】
第1のリンク22aは、L状の部材の一方の辺をなし、矢印A1、A2で示す引き出しローラ21の移動方向に対して交差し、矢印C1、C2で示す鉄筋結束機1Aの移動方向に対して沿った方向である一の方向に軸22cから延伸する。また、第2のリンク22bは、L状の部材の他方の辺をなし、矢印C1、C2で示す鉄筋結束機1Aの移動方向に対して交差し、矢印A1、A2で示す引き出しローラ21の移動方向に対して沿った方向である他の方向に軸22cから延伸する。
【0038】
これにより、ローラ移動部22は、鉄筋結束機1Aが矢印C1方向に移動すると、第2のリンク22bの被連結部22dが設けられた側が矢印C1方向に移動することで、軸22cを支点に回転し、第1のリンク22aの引き出しローラ21が設けられた側が矢印A1方向に移動する。これにより、鉄筋結束機1Aが結束位置から退避位置まで、矢印C1方向に移動すると、引き出しローラ21は、リール収容部200Aから離れ、リール収容部200Aに収容されたリール20からワイヤWを引き出す矢印A1方向に移動する。
【0039】
また、ローラ移動部22は、鉄筋結束機1Aが矢印C2方向に移動すると、第2のリンク22bの被連結部22dが設けられた側が矢印C2方向に移動することで、軸22cを支点に回転し、第1のリンク22aの引き出しローラ21が設けられた側が矢印A2方向に移動する。これにより、鉄筋結束機1Aが退避位置から結束位置まで、矢印C2方向に移動すると、引き出しローラ21は、リール収容部200Aに近づき、リール20から引き出したワイヤWから離れる矢印A2方向に移動する。
【0040】
ローラ移動部22は、第1のリンク22a及び第2のリンク22bの軸22cを支点とした回転動作で、第1のリンク22a及び第2のリンク22bの回転角度と、軸22cから引き出しローラ21の軸21aまでの径に応じた長さの円弧に沿った軌跡で、引き出しローラ21が移動する。
【0041】
また、ローラ移動部22は、第1のリンク22a及び第2のリンク22bの軸22cを支点とした回転動作で、第1のリンク22a及び第2のリンク22bの回転角度と、軸22cから被連結部22dまでの径に応じた長さの円弧に沿った軌跡で、被連結部22dが移動する。
【0042】
そして、ローラ移動部22は、被連結部22dに連結された鉄筋結束機1Aの移動量に対し、引き出しローラ21の移動によるワイヤWの引き出し量がn倍(n>1)となるように、軸22cから引き出しローラ21の軸21aまでの長さが、軸22cから被連結部22dまでの長さより長く構成される。
【0043】
これにより、ローラ移動部22は、鉄筋結束機1Aの矢印C1方向への移動に連動した第1のリンク22a及び第2のリンク22bの軸22cを支点とした回転動作で、引き出しローラ21を矢印A1方向に移動させ、鉄筋結束機1Aの移動量を超えた長さ分のワイヤWを、リール20から引き出すことができる。
【0044】
なお、ローラ移動部22は、被連結部22dに連結された鉄筋結束機1Aの移動量に対し、引き出しローラ21の移動によるワイヤWの引き出し量が同じとなるように、軸22cから引き出しローラ21の軸21aまでの長さが、軸22cから被連結部22dまでの長さと同じに構成されていても良い。また、引き出しローラ21を移動させるトルクを増幅させるため、軸22cから引き出しローラ21の軸21aまでの長さが、軸22cから被連結部22dまでの長さより短く構成されていても良い。
【0045】
経路誘導部材23aは、引き出しローラ21と鉄筋結束機1Aとの間のワイヤWの送り経路に設けられる。経路誘導部材23bは、経路誘導部材23aと鉄筋結束機1Aとの間のワイヤWの送り経路に設けられる。経路誘導部材23a、23bは、環状の部材で構成され、環状の部材の中心の穴部に2本のワイヤWが通されることで、水平方向に沿ったワイヤWの送り経路が上下方向に沿ったワイヤWの送り経路に曲げられる。
【0046】
引き出しローラ21が矢印A1、A2方向に移動する動作、鉄筋結束機1Aで鉄筋SをワイヤWで結束する動作、鉄筋結束機1Aが矢印C1、C2方向に移動する動作で、経路誘導部材23a、23bに対するワイヤWの導入方向が変わる。但し、経路誘導部材23a、23bのワイヤWが接する部位は曲面であるので、擦動による抵抗が増加することが抑制される。
【0047】
ワイヤ引き出し部2Aは、引き出しローラ21が矢印A1方向に移動してワイヤWを引き出す動作で、鉄筋結束機1Aと引き出しローラ21との間のワイヤWに掛かる負荷を軽減するため、引き出しローラ21の矢印B1で示す方向への回転は許容し、矢印B2で示す方向への回転は規制する一方向回転規制機構(ワンウエイクラッチ)24を備えても良い。
【0048】
一方向回転規制機構24は、本例ではラチェット構造で実現され、引き出しローラ21の周方向に沿って形成される歯部と、第1のリンク22a側に設けられ、歯部と噛み合う方向に付勢されて歯部と噛み合う爪部を備える。一方向回転規制機構24は、引き出しローラ21を矢印B1方向に回転させようとする力が加わると、爪部が歯部から外れ、引き出しローラ21が矢印B1方向に回転可能となる。これに対し、引き出しローラ21を矢印B2方向に回転させようとする力が加わると、爪部と歯部の噛み合いが維持され、引き出しローラ21の矢印B2方向への回転が規制される。
【0049】
引き出しローラ21が矢印A1方向に移動してワイヤWを引き出す動作では、引き出しローラ21と鉄筋結束機1Aとの間のワイヤWによって相対的に引かれる力が引き出しローラ21に掛かる。矢印B1で示す引き出しローラ21の回転方向は、引き出しローラ21と鉄筋結束機1Aとの間のワイヤWによって相対的に引かれる力が引き出しローラ21に掛かることで、引き出しローラ21が回転しようとする方向である。
【0050】
これに対し、引き出しローラ21が矢印A1方向に移動してワイヤWを引き出す動作では、引き出しローラ21とリール20との間のワイヤWによって相対的に引かれる力も引き出しローラ21に掛かる。矢印B2で示す引き出しローラ21の回転方向は、引き出しローラ21とリール20との間のワイヤWによって相対的に引かれる力が引き出しローラ21に掛かることで、引き出しローラ21が回転しようとする方向である。
【0051】
引き出しローラ21が矢印A1方向に移動してワイヤWを引き出す動作で、引き出しローラ21が回転しない、または矢印B2方向に回転すると、鉄筋結束機1Aと引き出しローラ21との間のワイヤWに掛かる負荷が増加する。鉄筋結束機1Aと引き出しローラ21との間のワイヤWに掛かる負荷が増加すると、鉄筋結束機1Aと引き出しローラ21との間のワイヤWに、引き出しローラ21の動きで鉄筋結束機1Aから引かれる力が掛かる。このため、ワイヤWが鉄筋結束機1Aから抜ける可能性がある。
【0052】
これに対して、引き出しローラ21が矢印A1方向に移動してワイヤWを引き出す動作で、引き出しローラ21が矢印B1方向に回転すると、鉄筋結束機1Aと引き出しローラ21との間のワイヤWに掛かる負荷が軽減する。鉄筋結束機1Aと引き出しローラ21との間のワイヤWに掛かる負荷が軽減すると、鉄筋結束機1Aと引き出しローラ21との間のワイヤWに、引き出しローラ21の動きで鉄筋結束機1Aから引かれる力が掛かることが抑制される。このため、ワイヤWが鉄筋結束機1Aから抜けることが抑制される。
【0053】
また、引き出しローラ21が矢印A1方向に移動してワイヤWを引き出す動作で、引き出しローラ21が矢印B1方向に回転すると、リール20と引き出しローラ21との間のワイヤWに掛かる負荷が増加する。リール20と引き出しローラ21との間のワイヤWに掛かる負荷が増加すると、リール20と引き出しローラ21との間のワイヤWに、引き出しローラ21の動きでリール20から引かれる力が掛かる。これにより、引き出しローラ21の矢印A1方向の移動量に追従して、十分な量のワイヤWがリール20から引き出される。
【0054】
結束装置100Aは、矩形の本体部101の一の側部に、鉄筋結束機1A、結束機移動部10A及びワイヤ引き出し部2Aの一部または全部が入る形状の凹部が設けられる。また、結束装置100Aは、本体部101の下面部に走行部14が設けられる。走行部14は、図示しないモータに駆動される無限軌道を備える。結束装置100Aは、格子状に配設された鉄筋Sに走行部14を構成する無限軌道が乗り、無限軌道が回転することで、鉄筋Sの配設面に沿って移動する。
【0055】
更に、結束装置100Aは、本体部101の上面部にリール収容部200Aが設けられる。リール収容部200Aは、鉄筋結束機1Aが2本のワイヤWで鉄筋Sを結束する構成の場合、2個のリール20が、回転の軸を鉛直方向に対して横向きとして、軸方向に沿って並べて同軸上に回転可能に収容される。また、リール収容部200Aは、各リール20から引き出された2本のワイヤWを、並列した形態で引き出しローラ21に誘導する経路誘導部材26を備える。
【0056】
経路誘導部材26は、リール収容部200Aと引き出しローラ21との間のワイヤWの送り経路に設けられる。経路誘導部材26は、環状の部材で構成され、環状の部材の中心の穴部に2本のワイヤWが通される。
【0057】
リール20は、ワイヤWがリール20の図示しないハブの軸方向に沿って位置を変えながら、径方向に重ねて巻かれている。このため、リール20からワイヤWが引き出される動作で、ワイヤWが引き出される位置がリール20の軸方向に沿って変わる。また、ワイヤWの使用量に応じて、ワイヤWが引き出される位置がリール20の径方向に沿って変わる。これにより、リール20からワイヤWが引き出される動作で、経路誘導部材26に対するワイヤWの導入方向が変わる。但し、経路誘導部材26のワイヤWが接する部位が曲面であるので、擦動による抵抗が増加することが抑制される。
【0058】
結束装置100Aは、結束機移動部10Aの駆動部12と、走行部14と、鉄筋結束機1Aが制御部110Aで制御される。結束装置100Aは、結束機移動部10Aが鉄筋結束機1Aを移動させる動作がローラ移動部22に伝達され、鉄筋結束機1Aの移動に合わせたローラ移動部22の動作で引き出しローラ21がワイヤWを引き出す。このため、制御部110Aは、結束機移動部10Aの駆動部12を制御することで、ワイヤ引き出し部2Aを制御する。
【0059】
<鉄筋結束機の構成例>
図2は、本実施の形態の鉄筋結束機の内部構成の一例を示す要部側面図である。
【0060】
鉄筋結束機1Aは結束機構の一例で、ワイヤWを矢印Fで示す正方向に送り、結束対象物である交差した2本の鉄筋Sの周囲に巻き回し、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWを、矢印Rで示す逆方向に送って鉄筋Sに巻き付けた後、ワイヤWを捩じり、鉄筋SをワイヤWで結束する。ワイヤWは、塑性変形し得る金属線で構成されたワイヤ、金属線が樹脂で被覆されたワイヤ、あるいは撚り線のワイヤなどが使用される。
【0061】
鉄筋結束機1Aは、上述した機能を実現するため、ワイヤWを正方向及び逆方向に送るワイヤ送り部3と、ワイヤ送り部3に送られるワイヤWをガイドするワイヤガイド4を備える。また、鉄筋結束機1Aは、ワイヤ送り部3で送られるワイヤWを鉄筋Sの周囲に巻き回す経路を構成するカール形成部5と、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWを切断する切断部6を備える。更に、鉄筋結束機1Aは、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWを捩じる結束部7と、結束部7を駆動する駆動部8を備える。
【0062】
鉄筋結束機1Aは、所定の形状の外装で覆われた本体部15の内部にワイヤ送り部3、ワイヤガイド4、切断部6、結束部7及び駆動部8が設けられる。また、本体部15から突出してカール形成部5が設けられる。鉄筋結束機1Aが結束装置100Aに使用される場合、カール形成部5が下を向く形態で使用される。以下、結束装置100Aに使用される鉄筋結束機1Aにおいて、カール形成部5が設けられる側を下側とする。
【0063】
ワイヤ送り部3は、1本または並列された複数本のワイヤWを挟持して送る一対の送りギア30を備える。ワイヤ送り部3は、一対の送りギア30が、互いが近づく方向に付勢され、図示しない送りモータの回転動作が伝達されて送りギア30が回転する。これにより、ワイヤ送り部3は、一対の送りギア30の間に挟持したワイヤWを、ワイヤWの延在方向に沿って送る。複数本、例えば2本のワイヤWを送る構成では、2本のワイヤWが並列された状態で送られる。
【0064】
ワイヤガイド4は、矢印Fで示すワイヤWの正方向の送り方向に対して、ワイヤ送り部3の上流側と下流側の所定の位置に設けられる。なお、図2では、ワイヤ送り部3の上流側に設けたワイヤガイド4は図示していない。
【0065】
ワイヤガイド4は、ワイヤWの送り方向に沿って延伸する開口が設けられ、ワイヤWの正方向の送り方向に沿った上流側の開口に対し、下流側の開口の開口面積が小さく構成される。例えば、ワイヤガイド4は、正方向に送られるワイヤWの導入側の開口面積を最も大きくし、そこから徐々に開口面積が小さくなるようなテーパ状の開口で構成される。これにより、ワイヤガイド4は、正方向に送られてワイヤガイド4を通過するワイヤWを、一対の送りギア30の間及び切断部6にガイドする。
【0066】
鉄筋結束機1Aが2本のワイヤWで鉄筋Sを結束する構成では、ワイヤガイド4は、ワイヤWの正方向の送り方向に沿った下流側の開口が、2本のワイヤWの径方向の向きを規制する形状である。これにより、ワイヤガイド4は、正方向に送られてワイヤガイド4を通過する2本のワイヤWを、一対の送りギア30が並ぶ方向に沿って並列させ、一対の送りギア30の間及び切断部6にガイドする。
【0067】
カール形成部5は、ワイヤ送り部3で送られるワイヤWに巻き癖をつけるカールガイド50と、カールガイド50で巻き癖を付けられたワイヤWを結束部7に誘導する誘導ガイド51を備える。カール形成部5は、カールガイド50と誘導ガイド51が、本体部10から露出して設けられる。
【0068】
鉄筋結束機1Aでは、ワイヤ送り部3で送られるワイヤWの送り経路がカール形成部5で規制されることで、ワイヤWの軌跡が図2に破線で示すようなループRuとなり、ワイヤWが鉄筋Sの周囲に巻き回される。
【0069】
カール形成部5は、正方向に送られるワイヤWをガイドし、ワイヤWに巻き癖をつけるガイド部材53aとガイド部材53bを備える。ガイド部材53aは、カールガイド50においてワイヤ送り部3で送られるワイヤWの導入部側に設けられ、ワイヤ送り部3で送られるワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側に配置される。ガイド部材53bは、カールガイド50においてワイヤ送り部3で送られるワイヤWの排出部側に設けられ、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側に配置される。
【0070】
カール形成部5は、ガイド部材53aを退避させるガイド部材移動機構54を備える。ガイド部材移動機構54は、ワイヤWが鉄筋Sに巻き回された後、結束部7の動作と連動して、ガイド部材53aを退避させる。
【0071】
切断部6は、固定刃部60と、固定刃部60との協働でワイヤWを切断する可動刃部61と、結束部7の動作を可動刃部61に伝達する伝達機構62を備える。切断部6は、固定刃部60を支点軸とした可動刃部61の回転動作でワイヤWを切断する。伝達機構62は、結束部7の動作を、伝達部材75を介して可動刃部61に伝達し、結束部7の動作と連動して可動刃部61を回転させ、ワイヤWを切断する。
【0072】
結束部7は、ワイヤWが係止されるワイヤ係止体70と、ワイヤ係止体70を作動させるスリーブ71を備える。結束部7の詳細な構成は後述する。駆動部8は、モータ80と、減速及びトルクの増幅を行う減速機81を備える。
【0073】
鉄筋結束機1Aは、作業者が手に持って使用する形態のものを適用する場合、本体部15にハンドル部16を備え、ハンドル部16にバッテリ17が着脱可能に取り付けられる。結束装置100Aは、結束機移動部10Aの結束機装着部11に、鉄筋結束機1Aのハンドル部16が装着される。
【0074】
鉄筋結束機1Aは、ワイヤ送り部3で正方向に送られ、カール形成部5を通り鉄筋Sの周囲に巻き回されるワイヤWの送り経路に、ワイヤWの先端が突き当てられる送り規制部90を備える。
【0075】
また、鉄筋結束機1Aは、カールガイド50と誘導ガイド51との間の本体部15の端部に、カールガイド50と誘導ガイド51との間に入れられた鉄筋Sが突き当てられる突き当て部91を備える(図1B参照)。
【0076】
結束装置100Aに装着された鉄筋結束機1Aは、結束機移動部10Aの動作で結束位置に移動すると、カールガイド50と誘導ガイド51との間に鉄筋Sが入れられ、カールガイド50と誘導ガイド51との間に入れられた鉄筋Sが、突き当て部91に突き当てられる。
【0077】
<結束部の構成例>
図3A及び図3Bは、結束部の一例を示す断面平面図であり、次に、各図を参照して、結束部の構成について説明する。
【0078】
結束部7は、ワイヤ係止体70とスリーブ71を作動させる回転軸72を備える。結束部7と駆動部8は、回転軸72とモータ80が減速機81を介して連結され、回転軸72が、減速機81を介してモータ80に駆動される。
【0079】
ワイヤ係止体70は、回転軸72と連結されるセンターフック70Cと、センターフック70Cに対して開閉する第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lを備える。
【0080】
センターフック70Cは、回転軸72の軸方向に沿った一方の端部である回転軸72の先端に、回転軸72に対して回転可能、かつ、回転軸72と一体的に軸方向への移動が可能な構成を介して連結される。
【0081】
ワイヤ係止体70は、軸71bを支点とした回転動作で、第1のサイドフック70Rの先端側がセンターフック70Cに対して離接する方向に開閉する。また、第2のサイドフック70Lの先端側がセンターフック70Cに対して離接する方向に開閉する。
【0082】
スリーブ71は、回転軸72が挿入される空間の内周面に突出する図示しない凸部を有し、この凸部が、回転軸72の外周に軸方向に沿って形成された送りネジ72aの溝部に入る。スリーブ71は、回転軸72が回転すると、図示しない凸部と回転軸72の送りネジ72aの作用により、回転軸72の軸方向に沿った方向である上下方向へ、回転軸72の回転方向に応じて移動する。また、スリーブ71は、回転軸72と一体的に回転する。
【0083】
スリーブ71は、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lを開閉する開閉ピン71aを備える。
【0084】
開閉ピン71aは、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lに設けられた開閉ガイド孔73に挿入される。開閉ガイド孔73は、スリーブ71の移動方向に沿って延在し、スリーブ71と連動して移動する開閉ピン71aの直線方向の動きを、軸71bを支点とした第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lの回転による開閉動作に変換する形状を有する。
【0085】
ワイヤ係止体70は、スリーブ71が矢印D2で示す上方向に移動することで、開閉ピン71aの軌跡と開閉ガイド孔73の形状により、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、軸71bを支点とした回転動作でセンターフック70Cから離れる方向に移動する。
【0086】
これにより、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して開き、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に、ワイヤWが通る送り経路が形成される。
【0087】
第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して開いた状態では、ワイヤ送り部3で送られるワイヤWは、センターフック70Cと第1のサイドフック70Rの間を通る。センターフック70Cと第1のサイドフック70Rとの間を通るワイヤWは、カール形成部5に誘導される。そして、カール形成部5で巻き癖が付けられ、結束部7に誘導されたワイヤWは、センターフック70Cと第2のサイドフック70Lの間を通る。
【0088】
ワイヤ係止体70は、スリーブ71が矢印D1で示す下方向に移動することで、開閉ピン71aの軌跡と開閉ガイド孔73の形状により、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、軸71bを支点とした回転動作でセンターフック70Cに近づく方向に移動する。これにより、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して閉じる。
【0089】
第1のサイドフック70Rがセンターフック70Cに対して閉じると、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第1のサイドフック70Rとセンターフック70Cとの間を移動することが可能な形態で係止される。また、第2のサイドフック70Lがセンターフック70Cに対して閉じると、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間に挟まれたワイヤWが、第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cとの間から抜けない形態で係止される。
【0090】
スリーブ71は、ワイヤWの一方の端部である先端側を所定の方向に押して曲げることで、ワイヤWを所定の形状に成形する曲げ部71c1と、切断部6で切断されたワイヤWの他方の端部である終端側を所定の方向に押して曲げることで、ワイヤWを所定の形状に成形する曲げ部71c2を備える。
【0091】
スリーブ71は、矢印D1で示す下方向に移動することで、センターフック70Cと第2のサイドフック70Lで係止されたワイヤWの先端側を曲げ部71c1で押して、鉄筋S側へ曲げる。また、スリーブ71は、矢印D1で示す下方向に移動することで、センターフック70Cと第1のサイドフック70Rで係止され、切断部6で切断されたワイヤWの終端側を曲げ部71c2で押して、鉄筋S側へ曲げる。
【0092】
結束部7は、回転軸72の回転動作と連動したワイヤ係止体70及びスリーブ71の回転を規制する回転規制部74を備える。結束部7は、回転軸72の軸方向に位置に沿ったスリーブ71の位置に応じて、回転規制部74が、回転軸72の回転に連動したスリーブ71の回転を規制し、回転軸72の回転動作でスリーブ71が矢印D1方向及び矢印D2方向に移動する。
【0093】
これにより、スリーブ71が回転せずに矢印D1方向に移動することで、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して閉じ、ワイヤWが係止される。また、スリーブ71が回転せずに矢印D2方向に移動することで、第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lが、センターフック70Cに対して開き、ワイヤWの係止が解除される。
【0094】
結束部7は、回転規制部74によるスリーブ71の回転の規制が解除されると、回転軸72の回転に連動してスリーブ71が回転する。
【0095】
これにより、ワイヤWを係止した第1のサイドフック70R及び第2のサイドフック70Lとセンターフック70Cが回転し、係止されたワイヤWが捩じられる。
【0096】
<第1の実施の形態の結束装置の動作例>
図4A図4B及び図4Cは、第1の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図で、各図を参照して、リール20からワイヤWを引き出し、鉄筋結束機1AでワイヤWを使用可能とする結束装置100Aの動作の一例について説明する。
【0097】
結束装置100Aは、鉄筋結束機1Aが結束動作を実行している工程では、図4Aに示すように、鉄筋結束機1Aが結束位置P1に移動している。鉄筋結束機1Aが図4Bに示す退避位置P2から図4Aに示す結束位置P1まで、矢印C2方向に移動すると、ローラ移動部22は、第1のリンク22aの引き出しローラ21が設けられた側が矢印A2方向に移動する。
【0098】
これにより、鉄筋結束機1Aが退避位置P2から結束位置P1まで、矢印C2方向に移動すると、引き出しローラ21は、リール収容部200Aに近づき、リール20から引き出したワイヤWから離れる矢印A2方向に移動する。そして、鉄筋結束機1Aが結束位置P1に移動していると、引き出しローラ21は、リール20から引き出されたワイヤWから離れた待機位置P10に移動した状態となる。
【0099】
なお、結束装置100Aは、鉄筋結束機1Aで結束動作が終了した状態で、待機位置P10に移動している引き出しローラ21が、リール20から引き出されたワイヤWと離れた状態となるように、結束動作でのワイヤWの使用量と、後述するワイヤWの引き出し量との関係が設定されている。
【0100】
結束装置100Aは、鉄筋結束機1Aで結束動作が終了すると、制御部110Aが結束機移動部10Aの駆動部12を制御して、鉄筋結束機1Aを結束位置P1から退避位置P2まで、矢印C1方向に移動させる。ローラ移動部22は、鉄筋結束機1Aが矢印C1方向に移動すると、第1のリンク22aの引き出しローラ21が設けられた側が矢印A1方向に移動する。
【0101】
これにより、鉄筋結束機1Aが結束位置P1から退避位置P2まで、矢印C1方向に移動すると、図4Bに示すように、引き出しローラ21は、リール収容部200Aから離れ、リール収容部200Aに収容されたリール20からワイヤWを引き出す矢印A1方向に移動する。そして、鉄筋結束機1Aが退避位置P2に移動すると、引き出しローラ21は、リール20からワイヤWを引き出した引き出し位置P20に移動した状態となる。
【0102】
なお、ローラ移動部22は、鉄筋結束機1Aの移動量に対して引き出しローラ21の移動によるワイヤWの引き出し量が、所定のn倍(n>1)となるように、軸22cから引き出しローラ21の軸21aまでの長さと、軸22cから被連結部22dまでの長さが設定されていても良い。
【0103】
これにより、鉄筋結束機1Aの結束位置P1から退避位置P2までの移動量に対し、引き出しローラ21の待機位置P10から引き出し位置P20までの移動によるワイヤWの引き出し量を、所定のn倍、例えば3倍程度にすることができ、次の結束動作で必要な量のワイヤWをリール20から引き出すことができる。このワイヤWの引き出し動作で、鉄筋結束機1Aの移動量を、次の結束動作で必要な量のワイヤWの引き出し量に合わせる必要がなく、鉄筋結束機1Aの移動量を減らして、結束装置100Aの小型化を図ることができる。
【0104】
結束装置100Aは、鉄筋結束機1Aの移動に連動したワイヤWの引き出し動作が終了した後、次の結束動作を開始すると、まず、鉄筋結束機1Aを退避位置P2から結束位置P1まで、矢印C2方向に移動させる。ローラ移動部22は、鉄筋結束機1Aが矢印C2方向に移動すると、第1のリンク22aの引き出しローラ21が設けられた側が矢印A2方向に移動する。
【0105】
これにより、鉄筋結束機1Aが退避位置P2から結束位置P1まで、矢印C2方向に移動すると、図4Cに示すように、引き出しローラ21は、リール収容部200Aに近づき、リール20から引き出したワイヤWから離れる矢印A2方向に移動する。そして、鉄筋結束機1Aが結束位置に移動すると、引き出しローラ21は、リール20から引き出したワイヤWから離れた待機位置P10に移動した状態となる。
【0106】
鉄筋結束機1Aが結束位置P1に移動すると、リール20から引き出しされたワイヤWは、鉄筋結束機1Aとリール20との間で弛んだ状態となる。これにより、鉄筋結束機1Aのワイヤ送り部3でワイヤWを送る動作で、リール20を回転させる負荷、引き出しローラ21を回転させる負荷がワイヤ送り部3に掛からない。
【0107】
なお、鉄筋結束機1Aは、上述したように、ワイヤWをワイヤ送り部3で正方向に送り、交差した2本の鉄筋Sの周囲に巻き回し、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWをワイヤ送り部3で逆方向に送って鉄筋Sに巻き付けた後、ワイヤWを捩じり、鉄筋SをワイヤWで結束する。このため、ワイヤWをワイヤ送り部3で正方向に送る動作で、ワイヤWが待機位置P10に移動している引き出しローラ21に接しない程度の余剰分を持たせて、リール20からのワイヤWの引き出し量が設定される。
【0108】
結束装置100Aでは、ワイヤWが巻かれたリール20を、従前の鉄筋結束機1Aに装填可能なサイズのリールより大型化して、ワイヤWの収容量を増加させることが考えられる。
【0109】
ワイヤWをワイヤ送り部3で正方向に送る動作で、ワイヤWが待機位置P10に移動している引き出しローラ21に接すると、鉄筋結束機1Aとリール20との間のワイヤWの余剰分が無くなり、以降は、鉄筋結束機1Aのワイヤ送り部3でワイヤWを正方向に送る必要がある。しかし、従前の鉄筋結束機1Aに装填可能なサイズのリールより大型化したリール20を使用する場合、鉄筋結束機1Aのワイヤ送り部3では、ワイヤWを十分に引き出すことができず、引き出し量が不足する可能性がある。
【0110】
これに対し、結束装置100Aのワイヤ引き出し部2Aは、鉄筋結束機1Aを移動させる力を利用して引き出しローラ21を移動させ、ワイヤWを引き出す構成であり、鉄筋結束機1Aのワイヤ送り部3に比較して、ワイヤWを引き出す力が強い。これにより、従前の鉄筋結束機1Aに装填可能なサイズのリールより大型化したリール20を使用する場合でも、鉄筋Sの結束に必要な量のワイヤWを確実に引き出すことができる。
【0111】
そして、ワイヤWをワイヤ送り部3で正方向に送る動作で、ワイヤWが待機位置P10に移動している引き出しローラ21に接しない程度の余剰分を持たせて、リール20からのワイヤWの引き出し量が設定される。これにより、鉄筋結束機1Aのワイヤ送り部3でリール20からワイヤWを引き出す必要がなく、ワイヤWの引き出し量が不足することが抑制される。
【0112】
したがって、交差した2本の鉄筋Sの周囲に巻き回すために必要な量のワイヤWを、ワイヤ送り部3で確実に送ることができる。また、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWを、矢印Rで示す逆方向に送って鉄筋Sに巻き付ける動作で、ワイヤWの長さが不足していることが抑制され、鉄筋Sに確実にワイヤWを巻き付けることができる。そして、鉄筋Sに確実にワイヤWを巻き付けることで、ワイヤWを捩じり、鉄筋SをワイヤWで結束する動作で、結束強度を向上させることができる。
【0113】
なお、結束装置100Aでは、制御部110Aは、引き出しローラ21を移動させてワイヤWを引き出す際に、駆動部12に掛かる負荷を検知可能である。そこで、制御部110Aは、ワイヤWを引き出す際の負荷が規定値より高い場合は、リール20から十分な量のワイヤWを引き出すことができないと判断し、鉄筋結束機1Aを結束位置P1から退避位置P2へ移動させる途中で、駆動部12による鉄筋結束機1Aの移動を停止して、警報を報知しても良い。
【0114】
また、リール20に巻かれたワイヤWの残量が減少すると、リール20に巻かれたワイヤWの残量が多い場合と比較して、ワイヤWを引き出す際の負荷が減少することから、制御部110Aは、駆動部12に掛かる負荷に基づき、リール20に巻かれたワイヤWの残量を算出できるようにしても良い。
【0115】
<第2の実施の形態の結束装置の全体構成例>
図5Aは、第2の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図、図5Bは、第2の実施の形態の結束装置の一例を示す正面図、図5Cは、第2の実施の形態の結束装置の一例を示す背面図、図5Dは、第2の実施の形態の結束装置の一例を示す上面図である。また、図5Eは、第2の実施の形態の結束装置の一例を示す機能ブロック図である。
【0116】
第2の実施の形態の結束装置100Bは、格子状に配設された鉄筋Sの交差箇所をワイヤWで結束する鉄筋結束機1Aと、鉄筋結束機1Aを結束位置と退避位置との間で移動させる結束機移動部10Bを備える。
【0117】
また、結束装置100Bは、鉄筋結束機1Aで使用されるワイヤWが巻かれたリール20からワイヤWを引き出すワイヤ引き出し部2Bと、リール20が収容されるリール収容部200Aを備える。
【0118】
更に、結束装置100Bは、結束装置100Bの全体を、鉄筋Sの配設面に沿って移動させる走行部14を備える。
【0119】
結束機移動部10Bは結束機構移動部の一例で、鉄筋結束機1Aが装着される結束機装着部11と、結束機装着部11を矢印C1、C2で示す上下方向に移動させる駆動部12と、ワイヤ引き出し部2Bと連結される連結部13Bを備える。駆動部12は、モータ、アクチュエータなど、移動量、移動方向及び移動速度などが制御可能な動力源と、動力源の動き(出力)を、結束機装着部11の矢印C1、C2方向への動きに変換する各種機構を備える。
【0120】
結束機移動部10Bは、結束機装着部11に装着された鉄筋結束機1Aを矢印C1で示す上方向に所定量移動させることで、鉄筋結束機1Aを退避位置に移動させる。また、結束機移動部10Bは、結束機装着部11に装着された鉄筋結束機1Aを矢印C2で示す下方向に所定量移動させることで、鉄筋結束機1Aを退避位置から結束位置に移動させる。
【0121】
ワイヤ引き出し部2Bは、鉄筋結束機1Aとリール収容部200Aとの間のワイヤWの送り経路に設けられる引き出しローラ27と、引き出しローラ27を移動させるローラ移動部28と、ワイヤWが送られる経路を変える経路誘導部材23a、23bを備える。
【0122】
引き出しローラ27は引き出し部材の一例で、軸27aを支点に回転可能な回転体で構成され、外周面にワイヤWが接する。
【0123】
ローラ移動部28は、リール収容部200Aに収容されたリール20からワイヤWを引き出す方向と、引き出されたワイヤWから離れる方向に引き出しローラ27を移動させる。ローラ移動部28は、本例では、引き出しローラ27がリール収容部200Aから離れ、リール収容部200Aに収容されたリール20からワイヤWを引き出す方向である矢印A1方向と、引き出しローラ27がリール収容部200Aに近づく方向である矢印A2方向に、引き出しローラ27を往復移動させる。
【0124】
ローラ移動部28は、結束機移動部10Bの動作が伝達され、鉄筋結束機1Aの移動に連動して引き出しローラ27を移動させる伝達部を構成する。そこで、ローラ移動部28は、引き出しローラ27と連結される第1のベルト部281と、結束機移動部10Bを介して鉄筋結束機1Aと連結される第2のベルト部282を備える。
【0125】
第1のベルト部281は、回転可能な一対のプーリ281a、281bと、一対のプーリ281a、281bの間に架けられた第1のベルト281cを備える。第1のベルト部281は、矢印A1、A2方向に沿った一方の側にプーリ281aが設けられ、他方の側にプーリ281bが設けられ、矢印A1、A2方向に沿って走行可能となる向きで、第1のベルト281cが架けられる。
【0126】
第2のベルト部282は、回転可能な4個のプーリ282a、282b、282c、282dと、4個のプーリ282a、282b、282c、282dの間に架けられた第2のベルト282eを備える。
【0127】
第2のベルト部282は、矢印A1、A2方向に沿った一方の側にプーリ282aが設けられ、矢印C1、C2方向に沿った一方の側である下側にプーリ282bが設けられる。また、第2のベルト部282は、矢印A1、A2方向に沿った他方の側であって、矢印C1、C2方向に沿った他方の側である上側にプーリ282cが設けられ、プーリ282cと対向してプーリ282dが設けられる。
【0128】
更に、第2のベルト部282は、プーリ282bとプーリ282cの間では、矢印C1、C2方向に沿って走行可能となる向きで、プーリ282aとプーリ282cの間では、矢印A1、A2方向に沿って走行可能となる向きで、第2のベルト282eが架けられる。
【0129】
そして、ローラ移動部28は、第1のベルト部281のプーリ281aと、第2のベルト部282のプーリ282aが同軸上に設けられ、プーリ282aの回転に同期してプーリ281aが回転する。
【0130】
ローラ移動部28は、第1のベルト部281の第1のベルト281cにおいて、矢印A1、A2方向に走行する部位に、引き出しローラ27の支持部27bが連結される。また、ローラ移動部28は、第2のベルト部282の第2のベルト282eにおいて、矢印C1、C2方向に走行する部位に、結束機移動部10Bの連結部13Bが連結される。
【0131】
これにより、結束装置100Bは、結束機移動部10Bが鉄筋結束機1Aを矢印C1方向に移動させると、第2のベルト部282の第2のベルト282eにおいて、結束機装着部11が連結される部位が矢印C1方向に走行し、第2のベルト282eが架けられた各プーリが回転して、第2のベルト部282のプーリ282aが矢印E1方向に回転する。
【0132】
第2のベルト部282のプーリ282aが矢印E1方向に回転すると、第1のベルト部281のプーリ281aが矢印E1方向に回転する。第1のベルト部281のプーリ281aが矢印E1方向に回転すると、第1のベルト部281の第1のベルト281cにおいて、引き出しローラ27が連結される部位が矢印A1方向に走行する。
【0133】
したがって、結束装置100Bは、鉄筋結束機1Aが結束位置から退避位置まで、矢印C1方向に移動すると、引き出しローラ27がリール収容部200Aから離れ、リール収容部200Aに収容されたリール20からワイヤWを引き出す矢印A1方向に、待機位置から引き出し位置まで移動する。
【0134】
また、結束装置100Bは、結束機移動部10Bが鉄筋結束機1Aを矢印C2方向に移動させると、第2のベルト部282の第2のベルト282eにおいて、結束機装着部11が連結される部位が矢印C2方向に走行し、第2のベルト282eが架けられた各プーリが回転して、第2のベルト部282のプーリ282aが矢印E2方向に回転する。
【0135】
第2のベルト部282のプーリ282aが矢印E2方向に回転すると、第1のベルト部281のプーリ281aが矢印E2方向に回転する。第1のベルト部281のプーリ281aが矢印E2方向に回転すると、第1のベルト部281の第1のベルト281cにおいて、引き出しローラ27が連結される部位が矢印A2方向に走行する。
【0136】
したがって、結束装置100Bは、鉄筋結束機1Aが退避位置から結束位置まで、矢印C2方向に移動すると、引き出しローラ27がリール収容部200Aに近づき、リール20から引き出したワイヤWから離れる矢印A2方向に、引き出し位置から待機位置まで移動する。
【0137】
ローラ移動部28は、鉄筋結束機1Aの移動量に対し、引き出しローラ21の移動によるワイヤWの引き出し量がn倍(n>1)となるように、鉄筋結束機1Aの移動で回転する第2のベルト部282のプーリ282aより、プーリ282aと同期して回転し、引き出しローラ27を移動させる第1のベルト部281のプーリ281aの方が、直径が大きく構成される。
【0138】
これにより、ローラ移動部28は、鉄筋結束機1Aの矢印C1方向への移動に連動したプーリ281aの回転動作で、引き出しローラ27を矢印A1方向に移動させ、鉄筋結束機1Aの移動量を超えた長さ分のワイヤWを、リール20から引き出すことができる。
【0139】
なお、ローラ移動部22は、被連結部22dに連結された鉄筋結束機1Aの移動量に対し、引き出しローラ21の移動によるワイヤWの引き出し量が同じとなるように、第2のベルト部282のプーリ282aと、第1のベルト部281のプーリ281aの直径が同じに構成されていても良い。また、引き出しローラ21を移動させるトルクを増幅させるため、第1のベルト部281のプーリ281aより、第2のベルト部282のプーリ282aの方が、直径が大きく構成されていても良い。
【0140】
結束装置100Bは、結束機移動部10Bの駆動部12と、走行部14と、鉄筋結束機1Aが制御部110Bで制御される。結束装置100Bは、結束機移動部10Bが鉄筋結束機1Aを移動させる動作がローラ移動部28に伝達され、鉄筋結束機1Aの移動に合わせたローラ移動部28の動作で引き出しローラ27がワイヤWを引き出す。このため、制御部110Bは、結束機移動部10Bの駆動部12を制御することで、ワイヤ引き出し部2Bを制御する。
【0141】
<第2の実施の形態の結束装置の動作例>
図6A図6B及び図6Cは、第2の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図で、各図を参照して、リール20からワイヤWを引き出し、鉄筋結束機1AでワイヤWを使用可能とする結束装置100Bの動作の一例について説明する。
【0142】
結束装置100Bは、鉄筋結束機1Aが結束動作を実行している工程では、図6Aに示すように、鉄筋結束機1Aが結束位置P1に移動している。鉄筋結束機1Aが図6Bに示す退避位置P2から図6Aに示す結束位置P1まで、矢印C2方向に移動すると、ローラ移動部28は、第2のベルト部282の第2のベルト282eにおいて、結束機装着部11が連結される部位が矢印C2方向に走行し、第2のベルト282eが架けられたプーリ282aが矢印E2方向に回転する。
【0143】
第2のベルト部282のプーリ282aが矢印E2方向に回転すると、第1のベルト部281のプーリ281aが矢印E2方向に回転する。第1のベルト部281のプーリ281aが矢印E2方向に回転すると、第1のベルト部281の第1のベルト281cにおいて、引き出しローラ27が連結される部位が矢印A2方向に走行する。
【0144】
これにより、鉄筋結束機1Aが退避位置P2から結束位置P1まで、矢印C2方向に移動すると、引き出しローラ27は、リール収容部200Aに近づき、リール20から引き出したワイヤWから離れる矢印A2方向に移動する。そして、鉄筋結束機1Aが結束位置P1に移動していると、引き出しローラ27は、リール20から引き出されたワイヤWから離れた待機位置P10に移動した状態となる。
【0145】
結束装置100Bは、鉄筋結束機1Aで結束動作が終了すると、制御部110Bが結束機移動部10Bの駆動部12を制御して、鉄筋結束機1Aを結束位置P1から退避位置P2まで、矢印C1方向に移動させる。ローラ移動部28は、鉄筋結束機1Aが矢印C1方向に移動すると、第2のベルト部282の第2のベルト282eにおいて、結束機装着部11が連結される部位が矢印C1方向に走行し、第2のベルト282eが架けられたプーリ282aが矢印E1方向に回転する。
【0146】
第2のベルト部282のプーリ282aが矢印E1方向に回転すると、第1のベルト部281のプーリ281aが矢印E1方向に回転する。第1のベルト部281のプーリ281aが矢印E1方向に回転すると、第1のベルト部281の第1のベルト281cにおいて、引き出しローラ27が連結される部位が矢印A1方向に走行する。
【0147】
これにより、鉄筋結束機1Aが結束位置P1から退避位置P2まで、矢印C1方向に移動すると、図6Bに示すように、引き出しローラ27は、リール収容部200Aから離れ、リール収容部200Aに収容されたリール20からワイヤWを引き出す矢印A1方向に移動する。そして、鉄筋結束機1Aが退避位置P2に移動すると、引き出しローラ27は、リール20からワイヤWを引き出した引き出し位置P20に移動した状態となる。
【0148】
なお、ローラ移動部28は、鉄筋結束機1Aの移動量に対して引き出しローラ21の移動によるワイヤWの引き出し量が、所定のn倍(n>1)となるように、第2のベルト部282のプーリ282aより、第1のベルト部281のプーリ281aの方が、直径が大きく構成されていても良い。
【0149】
これにより、鉄筋結束機1Aの結束位置P1から退避位置P2までの移動量に対し、引き出しローラ27の待機位置P10から引き出し位置P20までの移動によるワイヤWの引き出し量を、所定のn倍、例えば3倍程度にすることができ、次の結束動作で必要な量のワイヤWをリール20から引き出すことができる。このワイヤWの引き出し動作で、鉄筋結束機1Aの移動量を、次の結束動作で必要な量のワイヤWの引き出し量に合わせる必要がなく、鉄筋結束機1Aの移動量を減らして、結束装置100Bの小型化を図ることができる。
【0150】
結束装置100Bは、鉄筋結束機1Aの移動に連動したワイヤWの引き出し動作が終了した後、次の結束動作を開始すると、まず、鉄筋結束機1Aを退避位置P2から結束位置P1まで、矢印C2方向に移動させる。ローラ移動部28は、鉄筋結束機1Aが矢印C2方向に移動すると、第2のベルト部282の第2のベルト282eにおいて、結束機装着部11が連結される部位が矢印C2方向に走行し、第2のベルト282eが架けられたプーリ282aが矢印E2方向に回転する。
【0151】
第2のベルト部282のプーリ282aが矢印E2方向に回転すると、第1のベルト部281のプーリ281aが矢印E2方向に回転する。第1のベルト部281のプーリ281aが矢印E2方向に回転すると、第1のベルト部281の第1のベルト281cにおいて、引き出しローラ27が連結される部位が矢印A2方向に走行する。
【0152】
これにより、鉄筋結束機1Aが退避位置P2から結束位置P1まで、矢印C2方向に移動すると、図6Cに示すように、引き出しローラ27は、リール収容部200Aに近づき、リール20から引き出したワイヤWから離れる矢印A2方向に移動する。そして、鉄筋結束機1Aが結束位置に移動すると、引き出しローラ27は、リール20から引き出したワイヤWから離れた待機位置P10に移動した状態となる。
【0153】
鉄筋結束機1Aが結束位置P1に移動すると、リール20から引き出しされたワイヤWは、鉄筋結束機1Aとリール20との間で弛んだ状態となる。これにより、鉄筋結束機1Aのワイヤ送り部3でワイヤWを送る動作で、リール20を回転させる負荷、引き出しローラ27を回転させる負荷がワイヤ送り部3に掛からない。
【0154】
したがって、交差した2本の鉄筋Sの周囲に巻き回すために必要な量のワイヤWを、ワイヤ送り部3で確実に送ることができる。また、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWを、矢印Rで示す逆方向に送って鉄筋Sに巻き付ける動作で、ワイヤWの長さが不足していることが抑制され、鉄筋Sに確実にワイヤWを巻き付けることができる。そして、鉄筋Sに確実にワイヤWを巻き付けることで、ワイヤWを捩じり、鉄筋SをワイヤWで結束する動作で、結束強度を向上させることができる。
【0155】
なお、結束装置100Bでも、制御部110Bは、引き出しローラ27を移動させてワイヤWを引き出す際に、駆動部12に掛かる負荷を検知可能である。そこで、制御部110Bは、ワイヤWを引き出す際の負荷が規定値より高い場合は、リール20から十分な量のワイヤWを引き出すことができないと判断し、鉄筋結束機1Aを結束位置P1から退避位置P2へ移動させる途中で、駆動部12による鉄筋結束機1Aの移動を停止して、警報を報知しても良い。
【0156】
また、制御部110Bは、駆動部12に掛かる負荷に基づき、リール20に巻かれたワイヤWの残量を算出できるようにしても良い。
【0157】
<第3の実施の形態の結束装置の全体構成例>
図7A図7Bは、第3の実施の形態の結束装置の一例を示す斜視図、図7Cは、第3の実施の形態の結束装置の一例を示す正面図である。また、図7Dは、第3の実施の形態の結束装置の一例を示す機能ブロック図である。
【0158】
第3の実施の形態の結束装置100Cは、格子状に配設された鉄筋Sの交差箇所をワイヤWで結束する鉄筋結束機1Aと、鉄筋結束機1Aを結束位置と退避位置との間で移動させる結束機移動部10Cを備える。
【0159】
また、結束装置100Cは、鉄筋結束機1Aで使用されるワイヤWが巻かれたリール20からワイヤWを引き出すワイヤ引き出し部2Cと、リール20が収容されるリール収容部200Aを備える。
【0160】
更に、結束装置100Cは、結束装置100Cの全体を、鉄筋Sの配設面に沿って移動させる走行部14を備える。
【0161】
結束機移動部10Cは結束機構移動部の一例で、鉄筋結束機1Aが装着される結束機装着部11と、結束機装着部11を矢印C1、C2で示す上下方向に移動させる駆動部12を備える。駆動部12は、モータ、アクチュエータなど、移動量、移動方向及び移動速度などが制御可能な動力源と、動力源の動き(出力)を、結束機装着部11の矢印C1、C2方向への動きに変換する各種機構を備える。
【0162】
結束機移動部10Cは、結束機装着部11に装着された鉄筋結束機1Aを矢印C1で示す上方向に所定量移動させることで、鉄筋結束機1Aを退避位置に移動させる。また、結束機移動部10Bは、結束機装着部11に装着された鉄筋結束機1Aを矢印C2で示す下方向に所定量移動させることで、鉄筋結束機1Aを退避位置から結束位置に移動させる。
【0163】
ワイヤ引き出し部2Cは、鉄筋結束機1Aとリール収容部200Aとの間のワイヤWの送り経路に設けられる引き出しローラ29と、引き出しローラ29を移動させるローラ移動部290を備える。また、ワイヤ引き出し部2Cは、引き出しローラ29とリール20との間でワイヤWを誘導する第1のワイヤ誘導部291と、引き出しローラ29と鉄筋結束機1Aとの間でワイヤWを誘導する第2のワイヤ誘導部292とを備える。更に、ワイヤ引き出し部2Cは、ワイヤWが送られる経路を変える経路誘導部材23c、23dを備える。
【0164】
引き出しローラ29は引き出し部材の一例で、軸29aを支点に回転可能な回転体で構成され、外周面にワイヤWが接する。引き出しローラ29は、第1のワイヤ誘導部291と第2のワイヤ誘導部292との間に設けられる。
【0165】
ローラ移動部290は、モータ290aとベルト290bなどで構成される駆動機構を備え、引き出しローラ29の位置を、第1のワイヤ誘導部291と第2のワイヤ誘導部292との間のワイヤWに対して交差する矢印G1、G2方向に移動させる。
【0166】
ローラ移動部290は、モータ290aの駆動により引き出しローラ29を、第1のワイヤ誘導部291で誘導されるワイヤWがリール20から引き出される矢印G1方向に、待機位置から引き出し位置まで移動させる。また、ローラ移動部290は、モータ290aの駆動により引き出しローラ29を、リール20から引き出されたワイヤWから離れる矢印G2方向に、引き出し位置から待機位置まで移動させる。
【0167】
第1のワイヤ誘導部291は、軸を支点に回転可能な回転体で構成され、外周面にワイヤWが接し、ワイヤWが送られることで回転する。第1のワイヤ誘導部291は、引き出しローラ29が矢印G1方向に移動してリール20からワイヤWを引き出す動作で、ワイヤWがリール20から引き出される方向に力が掛かるようにワイヤWの送り経路を誘導する。
【0168】
第2のワイヤ誘導部292は、軸を支点に回転可能な回転体で構成され、外周面にワイヤWが接し、ワイヤWが送られることで回転する。
【0169】
ワイヤ引き出し部2Cは、引き出しローラ29が待機位置から引き出し位置に移動することで、リール20と第1のワイヤ誘導部291との間のワイヤWと、鉄筋結束機1Aと第2のワイヤ誘導部292との間のワイヤWを、第1のワイヤ誘導部291と第2のワイヤ誘導部292との間に引っ張る力を加える。
【0170】
そして、第1のワイヤ誘導部291で誘導されるワイヤWに掛かる負荷と、第2のワイヤ誘導部292で誘導されるワイヤWに掛かる負荷の大小の変化で、第1のワイヤ誘導部291側のワイヤWが送られるか、第2のワイヤ誘導部292側のワイヤWが送られるかが切り替えられる。これにより、鉄筋結束機1AでワイヤWを逆方向に送り鉄筋Sに巻き付ける動作で発生するワイヤWの余剰分が吸収され、かつ、リール収容部200Aに収容されたリール20からワイヤWが引き出される。
【0171】
経路誘導部材23c、23dは、第2のワイヤ誘導部292と鉄筋結束機1Aとの間のワイヤWの送り経路に設けられる。経路誘導部材23c、23dは、環状の部材で構成され、環状の部材の中心の穴部に2本のワイヤWが通されることで、水平方向に沿ったワイヤWの送り経路が上下方向に沿ったワイヤWの送り経路に曲げられる。経路誘導部材23c、23dのワイヤWが接する部位は曲面であるので、擦動による抵抗が増加することが抑制される。
【0172】
結束装置100Cは、結束機移動部10Cの駆動部12と、ローラ移動部290のモータ290aと、走行部14と、鉄筋結束機1Aが制御部110Cで制御される。制御部110Cは、結束機移動部10Cの駆動部12を制御して、鉄筋結束機1Aを移動させるタイミングに合わせて、ローラ移動部290のモータ290aを制御してワイヤ引き出し部2Bを作動させる。これにより、鉄筋結束機1Aで鉄筋Sの結束を行わないタイミングで、ワイヤ引き出し部2CがワイヤWを引き出す。
【0173】
<第3の実施の形態の結束装置の動作例>
図8A図8B図8C及び図8Dは、第3の実施の形態の結束装置の動作の一例を示す要部正面図で、各図を参照して、リール20からワイヤWを引き出し、鉄筋結束機1AでワイヤWを使用可能とする結束装置100Cの動作の一例について説明する。
【0174】
結束装置100Cは、鉄筋結束機1Aが結束動作を実行している工程では、図8Aに示すように、鉄筋結束機1Aが結束位置P1に移動している。また、鉄筋結束機1Aが結束動作を実行している工程では、ワイヤ引き出し部2Cは、モータ290aの駆動により、引き出しローラ29を引き出し位置P20から待機位置P10まで矢印G2方向に移動させる。
【0175】
これにより、鉄筋結束機1Aが結束動作を実行している工程では、引き出しローラ29は、後述するようにリール20から引き出されたワイヤWから離れた待機位置P10に移動した状態となる。
【0176】
結束装置100Cは、鉄筋結束機1Aで結束動作が終了すると、制御部110Cが結束機移動部10Cの駆動部12を制御して、図8Bに示すように、鉄筋結束機1Aを結束位置P1から退避位置P2まで、矢印C1方向に移動させる。また、鉄筋結束機1Aで結束動作が終了すると、制御部110Cがローラ移動部290のモータ290aを制御して、図8Cに示すように、ワイヤ引き出し部2Cは、モータ290aの駆動により、引き出しローラ29を第1のワイヤ誘導部291で誘導されるワイヤWがリール20から引き出される矢印G1方向に移動させる。
【0177】
これにより、引き出しローラ29は、リール20からワイヤWを引き出した引き出し位置P20に移動した状態となる。また、ローラ移動部290は、次の結束動作で必要な量のワイヤWをリール20から引き出すことができるように、引き出しローラ29の移動量が設定される。
【0178】
結束装置100Cは、ワイヤWの引き出し動作が終了した後、次の結束動作を開始すると、鉄筋結束機1Aを退避位置P2から結束位置P1まで、矢印C2方向に移動させる。また、ワイヤ引き出し部2Cは、モータ290aの駆動により、引き出しローラ29をリール20から引き出されたワイヤWから離れる矢印G2方向に移動させる。
【0179】
これにより、図8Dに示すように、引き出しローラ29は、リール20から引き出されたワイヤWから離れた待機位置P10に移動した状態となる。
【0180】
引き出しローラ29が待機位置P10に移動すると、リール20から引き出しされたワイヤWは、鉄筋結束機1Aとリール20との間で弛んだ状態となる。これにより、鉄筋結束機1Aのワイヤ送り部3でワイヤWを送る動作で、リール20を回転させる負荷、引き出しローラ29を回転させる負荷がワイヤ送り部3に掛からない。
【0181】
したがって、交差した2本の鉄筋Sの周囲に巻き回すために必要な量のワイヤWを、ワイヤ送り部3で確実に送ることができる。また、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWを、矢印Rで示す逆方向に送って鉄筋Sに巻き付ける動作で、ワイヤWの長さが不足していることが抑制され、鉄筋Sに確実にワイヤWを巻き付けることができる。そして、鉄筋Sに確実にワイヤWを巻き付けることで、ワイヤWを捩じり、鉄筋SをワイヤWで結束する動作で、結束強度を向上させることができる。
【0182】
なお、結束装置100Cでも、制御部110Cは、引き出しローラ29を移動させてワイヤWを引き出す際に、ローラ移動部290のモータ290aに掛かる負荷を検知可能である。そこで、制御部110Cは、ワイヤWを引き出す際の負荷が規定値より高い場合は、リール20から十分な量のワイヤWを引き出すことができないと判断し、引き出しローラ29を待機位置P10から引き出し位置P20へ移動させる途中で、ローラ移動部290のモータ290aによる引き出しローラ29の移動を停止して、警報を報知しても良い。
【0183】
また、制御部110Cは、ローラ移動部290のモータ290aに掛かる負荷に基づき、リール20に巻かれたワイヤWの残量を算出できるようにしても良い。
【0184】
<制動部の構成例>
図9A図9B図9Cは、制動部の一例を示す斜視図、図10A図10B図10Cは、制動部の一例を示す正面図で、リール20の回転を抑制する制動部210Aの構成及び動作の一例を示す。以下の例では、結束装置100Aに制動部210Aを備えた構成を説明する。
【0185】
制動部210Aは、リール20のフランジ部20aの外縁と接する制動部材211と、制動部材211を作動させる作動部材212を備える。
【0186】
制動部材211は、本例では軸211aを支点とした回転動作で、リール20のフランジ部20aと接する制動位置と、リール20のフランジ部20aから離れる退避位置との間を移動する。制動部材211は、制動位置に移動した状態で、矢印C1、C2に示す鉄筋結束機1Aの移動方向に沿った向きに延伸する作用面211bが形成される。制動部材211は、図示しないバネなどの付勢部材で、退避位置に向けて回転する方向に付勢される構成でも良いし、自重で退避位置に向けて回転する構成でもよい。
【0187】
作動部材212は、結束機移動部10Aにおいて鉄筋結束機1Aが装着される結束機装着部11に設けられ、矢印C1、C2に示す鉄筋結束機1Aの移動と連動して矢印C1、C2に移動する。作動部材212は、鉄筋結束機1Aが図4Aなどに示す結束位置P1に移動すると、図9A図10Aに示すように、制動部材211から離れる。制動部材211は、作動部材212が離れると、軸211aを支点とした回転動作で、リール20のフランジ部20aから離れる退避位置に移動する。
【0188】
鉄筋結束機1Aが結束位置P1から矢印C1方向に移動して、図4Bなどに示す退避位置P2に移動する動作で、作動部材212は、図9B図10Bに示すように、制動部材211の作用面211bに接する。制動部材211は、鉄筋結束機1Aの移動と連動して矢印C1方向に移動する作動部材212が作用面211bに接すると、軸211aを支点とした回転動作で、退避位置から制動位置に向けて回転する。
【0189】
鉄筋結束機1Aが退避位置P2に移動すると、作動部材212は、図9C図10Bに示すように、制動部材211の作用面211bを押し上げる。制動部材211は、鉄筋結束機1Aが退避位置P2に移動する位置まで、作動部材212が移動すると、軸211aを支点とした回転動作で制動位置に移動する。
【0190】
制動部210Aは、制動部材211が制動位置に移動すると、制動部材211がリール20のフランジ部20aに接する。リール20を2個備えた構成では、制動部材211は、それぞれのリール20のフランジ部20aと接する。これにより、リール20の回転が抑制される。
【0191】
上述したように、鉄筋結束機1Aが結束位置P1から退避位置P2まで、矢印C1方向に移動する動作で、引き出しローラ21が矢印A1方向に移動してリール20からワイヤWが引き出されることで、リール20が回転する。引き出しローラ21の矢印A1方向への移動の停止後、慣性によりリール20の回転が回転しようとするが、鉄筋結束機1Aが退避位置P2に移動して、引き出しローラ21が引き出し位置P20まで移動すると、制動部210Aは、制動部材211がリール20のフランジ部20aと接し、リール20の回転が抑制される。これにより、引き出しローラ21の移動の停止後に、慣性によりリール20の回転が継続することで、過剰な量のワイヤWがリール20から送り出されることが抑制される。
【0192】
また、制動部210Aは、制動部材211が制動位置に移動した状態で、作動部材212に押される作用面211bが、矢印C1、C2に示す鉄筋結束機1Aの移動方向に沿った向きに延伸する。これにより、矢印C1方向に移動する鉄筋結束機1Aの停止位置が、所定の退避位置より更に上方にずれたとしても、制動部材211がリール20のフランジ部20aを押す力が過剰になることが抑制され、制動部材211やリール20に過負荷が掛かることが抑制される。
【0193】
なお、結束装置100Aは、走行部14で走行する動作中は、鉄筋結束機1Aが退避位置P2に移動した状態である。これにより、制動部210の動作でリール20の回転が抑制されることで、結束装置100Aの移動による振動で、リール20が回転してワイヤWがリール20から送り出されることが抑制される。
【0194】
また、制動部は、鉄筋結束機1Aの移動と連動させずに、別の動力源で動作する構成でもよく、この場合、リール20からワイヤWを引き出すタイミングのみ、制動部材211をリール20から離れる方向に移動するように制御しても良い。
【0195】
更に、制動部は、制動部材がリール20のフランジ部20aの外縁と接する構成ではなく、フランジ部20aの側面に接する構成でもよい。
【0196】
図11は、制動部の他の例を示す上面図で、別の動力源で動作する制動部であって、制動部材がリール20のフランジ部20aの側面に接する構成である。
【0197】
制動部210Bは、リール20のフランジ部20aの側面と接する制動部材213と、制動部材213を作動させる作動部214を備える。2本のワイヤWで鉄筋Sを結束するため、2個のリール20を備えた構成では、それぞれのリール20に対応して2個の制動部材213がリール20の間に設けられる。
【0198】
各制動部材213は、リール20のフランジ部20aの側面に対して、近づく方向と離れる方向に移動可能に設けられ、リール20のフランジ部20aの側面と接する制動位置と、リール20のフランジ部20aの側面から離れる退避位置との間を移動する。
【0199】
作動部214は、本例では空気圧を動力源として制動部材213を動作させる。このため、作動部214は、図示しない圧縮空気の供給源からのホースが接続されるホース接続部214aを備える。
【0200】
なお、制動部210Bは、リール20のフランジ部20aの側面に制動部材213が接する構成であるため、制動部材213が制動位置に移動すると、リール20を軸方向に移動させようとする力が掛かる。そこで、リール20の軸方向に沿った移動を抑制するため、リール20を支持する軸215に位置規制部材216を備える。
【0201】
制動部21Bは、空気圧で作動する構成としたが、電気で駆動されるモータやアクチュエータで作動する構成でも良い。
【0202】
また、制動部は、振動や慣性による不用意なリール20の回転を抑制するためのものであることから、ロータリーダンパーやディスクダンパーなどと称す回転方向に負荷を架ける部材を、リール20の支持箇所に備えても良い。
【符号の説明】
【0203】
100A、100B、100C・・・結束装置、1A・・・鉄筋結束機(結束機構)、3・・・ワイヤ送り部、30・・・送りギア、5・・・カール形成部、6・・・切断部、7・・・結束部、8・・・駆動部、10A、10B、10C・・・結束機移動部(結束機構移動部)、11・・・結束機装着部、12・・・駆動部、13、13B・・・連結部、14・・・走行部、2A、2B、2C・・・ワイヤ引き出し部、21・・・引き出しローラ、22・・・ローラ移動部、22a・・・第1のリンク、22b・・・第2のリンク、22c・・・軸、22d・・・被連結部、23a、23b、23c、23d・・・経路誘導部材、24・・・一方向回転規制機構、25・・・経路誘導部材、26・・・経路誘導部材、27・・・引き出しローラ、27a・・・軸、28・・・ローラ移動部、281・・・第1のベルト部、281a、281b・・・プーリ、281c・・・第1のベルト、282・・・第2のベルト部、282a、282b、282c、282d・・・プーリ、282e・・・第2のベルト、29・・・引き出しローラ、29a・・・軸、290・・・ローラ移動部、290a・・・モータ、290b・・・ベルト、291・・・第1のワイヤ誘導部、292・・・第2のワイヤ誘導部、200A・・・リール収容部、20・・・リール、210A、210B・・・制動部、211・・・制動部材、211a・・・軸、211b・・・作用面、212・・・作動部材、213・・・制動部材、214・・・作動部、110A、110B、110C・・・制御部、W・・・ワイヤ
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11