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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065015
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】エネルギーマネジメントシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240507BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J7/35 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173308
(22)【出願日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2022171930
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岐 淳
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 邦寿
(72)【発明者】
【氏名】福山 進二郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕也
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066JA01
5G066JA07
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503CB16
5G503GD04
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】主に、積雪期間に蓄電池が残量ゼロの状態になることを回避できるようにする。
【解決手段】
エネルギーマネジメントシステム5は、太陽光で発電する太陽光発電設備2と、充電が可能3な蓄電池と、通常時に、蓄電池3を、太陽光発電設備2の余剰電力を充電する動作モードで動作可能な制御部4と、を備える。
このエネルギーマネジメントシステム5では、蓄電池3は、積雪期間に買電充電を行う積雪期モードを備える。
制御部4は、積雪期間になったときに、蓄電池3を、通常時の動作モードから、積雪期モードに切り替えるようにしている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光で発電する太陽光発電設備と、
充電が可能な蓄電池と、
通常時に、前記蓄電池を、前記太陽光発電設備の余剰電力を充電する動作モードで動作可能な制御部と、
を備えたエネルギーマネジメントシステムであって、
前記蓄電池は、積雪期間に買電充電を行う積雪期モードを備え、
前記制御部は、積雪期間になったときに、前記蓄電池を、前記通常時の前記動作モードから、前記積雪期モードに切り替えることを特徴とするエネルギーマネジメントシステム。
【請求項2】
太陽光で発電する太陽光発電設備と、
充電が可能な蓄電池と、
少なくとも前記蓄電池の運転切替のコントロールを行う制御部と、を備えたエネルギーマネジメントシステムであって、
前記蓄電池は、通常時に、前記太陽光発電設備の余剰電力を充電し、前記太陽光発電設備の発電電力がなくなったら前記蓄電池から放電する動作モードで動作し、
積雪期間に、契約料金コース内の最も単価が安い時間帯に系統電力にて買電充電を行い、単価が高い時間帯に放電する積雪期モードで動作し、
前記制御部は、前記蓄電池の通常時の動作モードと前記積雪期モードとを自動で切り替える機能を有すると共に、
前記制御部は、前記積雪期間になったときに、前記蓄電池を、前記通常時の動作モードから、前記積雪期モードに切り替えることを特徴とするエネルギーマネジメントシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
電気で湯を沸かす電気給湯器を備え、
前記電気給湯器は、通常時に、前記太陽光発電設備の前記余剰電力で前記電気給湯器が湯沸かしを行う昼間沸き増しモードを備えると共に、
前記電気給湯器または前記制御部は、前記積雪期間になったときに、前記電気給湯器の前記昼間沸き増しモードを停止させることを特徴とするエネルギーマネジメントシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のエネルギーマネジメントシステムであって、
前記太陽光発電設備の前記余剰電力は、前記蓄電池への充電と、前記電気給湯器の前記昼間沸き増しモードによる湯沸かしとのうち、前記電気給湯器の湯沸かしに優先的に使用されることを特徴とするエネルギーマネジメントシステム。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のエネルギーマネジメントシステムあって、
前記積雪期間は、地域ごとの前記太陽光発電設備の発電量実績で判定され、
前記発電量実績は、過去の履歴又はその年の発電量で判断され、
前記積雪期間の判定は、コンピュータまたはユーザが行うことを特徴とするエネルギーマネジメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エネルギーマネジメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電設備と蓄電池とを備えた建物が存在している。このような建物では、蓄電池は太陽光発電設備などと共に、建物のエネルギーマネジメントシステムを構成する。このエネルギーマネジメントシステムでは、蓄電池は、複数の動作モード(例えば、グリーンモードや経済モードなど)を有しており、蓄電池の動作モードは切り替え得るようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
蓄電池の動作モードのうち、グリーンモードは、太陽光発電設備の余剰電力を蓄電池の充電に優先的に使用する動作モードである。グリーンモードは、買電充電しないことを基本とするが、例外的に、翌日の日射が少なく太陽光発電設備の発電が期待できない場合には、蓄電池に対して、夜間に強制的に買電充電するか、しないかを選択して指示できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-179836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、晴れて日射が多くなり太陽光発電設備の発電が期待できる状態であっても、太陽光発電設備(の太陽光パネル)の上に雪が積もっていると、積雪が日射を遮るので、太陽光発電設備は発電できなくなる。即ち、「日射はあるが発電はしない」という異常な状況になる。このような場合、建物のエネルギーマネジメントシステムでは、「日射はあるが発電はしない」という異常な状況を正しく認識するのが難しいために、正しい選択および指示がなされず、上記したグリーンモードだと、蓄電池は、夜間に強制的な買電充電がなされないので、そのままの状態で放置される。
【0006】
そのため、太陽光発電設備の上に数日に亘って雪が積もると、蓄電池は、充電されない日が連続することになる。その結果、蓄電池は、積雪の時期に残量ゼロの状態になって、その状態が継続してしまい、劣化の原因となる。
【0007】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、本発明は、
太陽光で発電する太陽光発電設備と、
充電が可能な蓄電池と、
通常時に、前記蓄電池を、前記太陽光発電設備の余剰電力を充電する動作モードで動作可能な制御部と、
を備えたエネルギーマネジメントシステムであって、
前記蓄電池は、積雪期間に買電充電を行う積雪期モードを備え、
前記制御部は、積雪期間になったときに、前記蓄電池を、前記通常時の前記動作モードから、前記積雪期モードに切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成によって、積雪期間に蓄電池が残量ゼロの状態になることなどを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1にかかるエネルギーマネジメントシステムの構成図である。
図2】外部のサーバが積雪期間を判定して、蓄電池を積雪期モードで動作させる場合の説明図である。
図3】日付のみで積雪期間を判定する場合のフローチャートである。
図4】日付および発電量実績で積雪期間を判定する場合のフローチャートである。
図5】実施例2にかかるエネルギーマネジメントシステムの構成図である。
図6】実施例3にかかる蓄電池の動作モードを制御部が自動で切り替える様子を示した図である。
図7】蓄電池の動作モードを切り替えるための年間のスケジュール表である。
図8】比較例および実施例にかかる、建物の1日の使用電力と、太陽光発電設備の発電電力とを示した図である。(a)は比較例となる売電モードの通常時、(b)は売電モードの積雪期間、(c)は実施例となるグリーンモードの通常時、(d)はグリーンモード(積雪期モード)の積雪期間である。
図9】積雪期間の目安を地域別に具体化したテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態は、図1図9を用いて詳細に説明される。
【実施例0012】
<構成>この実施例の構成は、以下の通りである。
【0013】
図1は、住宅などの建物1を示している。この建物1は、太陽光発電設備2と、蓄電池3と、制御部4とを備えている。蓄電池3は、太陽光発電設備2および制御部4と共に建物1のエネルギーマネジメントシステム5を構成する。
【0014】
エネルギーマネジメントシステム5は、少なくとも、蓄電池3を充電するためのシステムである。蓄電池3は、充電した電力を、建物1の負荷6などに使用することができる。そのため、エネルギーマネジメントシステム5は、建物1の電力供給システムとして使われる。
【0015】
ここで、建物1は、戸建住宅、集合住宅、オフィスビル、商業施設など、どのような種類のものでも良い。建物1は、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など、どのような構造のものでも良い。建物1は、電力会社などの商用電源7からの電力(系統電力)を、内部の負荷6へ供給するための分電盤8を備えている。分電盤8は、太陽光発電設備2、蓄電池3および制御部4にも電気的に接続される。また、分電盤8と、太陽光発電設備2と、蓄電池3とは、制御部4に対して情報の送受信が可能とされ、制御部4は、必要に応じて、分電盤8、太陽光発電設備2、蓄電池3を制御する。分電盤8は、情報処理能力を有している。
【0016】
太陽光発電設備2は、太陽光によって発電する設備である。太陽光発電設備2は、太陽光パネルなどの発電素子と、その他の付帯設備とを含む。太陽光発電設備2は、少なくとも付帯設備が情報処理能力を有している。太陽光発電設備2は、発電した電力(発電電力)を、負荷6で使用したり、商用電源7に売電したりすることができる。
【0017】
蓄電池3は、充電、放電が可能な電池である。蓄電池3は、建物1の負荷6に適した容量を有する。蓄電池3は、電池本体と、その他の付帯設備とを含む。蓄電池3は、少なくとも付帯設備が情報処理能力を有している。
【0018】
蓄電池3は、太陽光発電設備2の余剰電力の充電と、買電充電とのどちらかを行う。余剰電力は、太陽光発電設備2で発電した電力のうち、負荷6で使用(自家消費)したり、商用電源7に売電したりした残りの電力である。買電充電は、商用電源7から買った電力で蓄電池3を充電することである。蓄電池3は、商用電源7への売電はできない。
【0019】
蓄電池3は、複数の動作モード(例えば、グリーンモードや経済モードや充電モードなど)を有しており、通常の時(または通常時)には、蓄電池3は、いずれかの動作モードで動作される。蓄電池3の動作モードは、後述する制御部4によって切り替えられる。制御部4は、内部に蓄電池3の動作モードを切り替えるモード切替部などの機能部分を有しても良い。なお、蓄電池3の動作モードは、一般に、頻繁に切り替えるようなものではなく、最初に一度設定したら、以降はそのままで運転し続けられることが多い。
【0020】
グリーンモードは、太陽光発電設備2の余剰電力を蓄電池3の充電に優先的に使用する動作モードである。グリーンモードは、買電充電しないことを基本とする。ただし、グリーンモードは、買電充電ありの指示を出すことによって、買電充電することが可能である。この指示によって、例えば、翌日の日射が少なく太陽光発電設備2の発電が期待できない場合に、蓄電池3は、夜間に強制的に買電充電されるようにできる。
【0021】
経済モード(売電モード)は、太陽光発電設備2の余剰電力を商用電源7に売電する動作モードである。そして、蓄電池3は、夜間に買電充電される。経済モードは、太陽光発電設備2の電力の買取単価が高く、夜間の電力単価が安い場合に有利な動作モードである。
【0022】
また、充電モードは、蓄電池3を、夜間に買電充電する動作モードである。蓄電池3は、放電しない(自然放電による低下分は補充される)。
【0023】
これまでは、蓄電池3の動作モードは、有利な経済モードが主流であった。しかし、昨今は、買取単価の低下、夜間の電力単価の上昇が進み、また、太陽光発電設備2を設置した建物1に対する固定買取価格での買取期間が終了した建物1が増えている。そのため、太陽光発電設備2の余剰電力は、自家消費する方が有利な場合が増えている。よって、夜間に買電充電せず、余剰電力でのみ充電するグリーンモードが、蓄電池3の動作モードとして、今後の主流に成ると見込まれている。この場合、蓄電池3は、年間を通じて、グリーンモードで動作されることになる。
【0024】
制御部4は、蓄電池3を(直接)制御する装置である。制御部4は、通常時に、蓄電池3の動作モードを、グリーンモード、経済モード、充電モードのいずれかに切り替えることが可能である。この実施例では、制御部4は、蓄電池3を通常時にグリーンモードで動作させている。通常時は、一般的には、春期、夏期、秋期、冬期の一年中となるが、この実施例の場合には、後述する積雪期間(冬期の一部)以外のとき(非積雪期間)とする。なお、制御部4は、上記したように太陽光発電設備2や分電盤8なども制御可能となっている。
【0025】
制御部4は、独立した装置として構成することができる。また、例えば、蓄電池3の付帯設備にも情報処理能力を有する制御機器が含まれているので、この制御機器は、制御部4の全部または一部として使用することが可能である。即ち、蓄電池3は、内部の制御機器によって蓄電池3自身を制御できる。以下、制御部4は、独立した装置として説明する。
【0026】
制御部4を独立した装置とする場合、制御部4は、例えば、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)のための端末などとすることができる。HEMSは、建物1に関するエネルギーを総合的に管理するシステムであり、太陽光発電設備2、蓄電池3、分電盤8の他に、例えば、空調装置や、給湯器や、情報家電や、照明などの情報処理能力を有する各種の負荷6を管理制御することも可能である。なお、分電盤8を介して電力が供給される建物1の負荷6は、上記の他に、情報処理能力を有さないものも含まれる。
【0027】
また、エネルギーマネジメントシステム5は、建物1の外部にサーバ21を有しても良い。
【0028】
外部のサーバ21は、複数の建物1に設けられたエネルギーマネジメントシステム5を、建物1の外部から一括して管理するために設けられた、制御部4よりも上位の制御機器とされる。同じ地域に存在する複数の建物1は、グループを形成する。そして、外部のサーバ21は、グループごとに設けられる。外部のサーバ21は、グループ内の各建物1の各エネルギーマネジメントシステム5を個別にまたは一括して管理することができる。そのため、外部のサーバ21は、建物1の外側に設けられてはいるものの、各建物1のエネルギーマネジメントシステム5の一部として機能する。外部のサーバ21は、制御部4を介して蓄電池3を間接的に制御できる。よって、外部のサーバ21は、エネルギーマネジメントシステム5に含むことができる。この実施例では、外部のサーバ21は、各建物1に個別に設けられたエネルギーマネジメントシステム5の一部を形成するものとして説明する。
【0029】
外部のサーバ21は、制御部4に対して有線または無線で接続される。無線の場合、外部のサーバ21と制御部4とは、例えば、インターネットなどの広域情報通信網22を使って接続しても良い。外部のサーバ21は、例えば、地域全体のエネルギーを包括的に管理するCEMS(コミュニティ・エネルギー・マネジメント・システム)の端末としても良い。
【0030】
外部のサーバ21は、後述するように、過去の気象データや日射量のデータなどの天気予報や気象情報を外部から収集して分析できるようにしても良い。外部のサーバ21は、各エネルギーマネジメントシステム5に対して、上記した天気予報や気象情報およびその分析データや、制御部4、太陽光発電設備2、蓄電池3などの動作に関する設定情報(運転設定)や、その他の制御用の情報などを適宜送ることができる。運転設定は、蓄電池3がグリーンモードで動作する場合に、夜間に強制的に買電充電を行うかどうかについての情報を含んでも良い。過去は、例えば、前年度以前、または、今年度であっても現時点よりも前の時などとすることができる。
【0031】
また、サーバ21は、グルーブに属する各エネルギーマネジメントシステム5の制御部4から、各建物1に設けられた各機器(制御部4、太陽光発電設備2、蓄電池3など)の運転状況に関するデータなどを得ることができる。サーバ21は、各エネルギーマネジメントシステム5から集めた運転状況に関するデータをビッグデータとして分析して、より良い運転設定などを作成して、各エネルギーマネジメントシステム5へ送ることなどができる。
【0032】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例は、以下のような構成を備えても良い。
【0033】
(1)この実施例のエネルギーマネジメントシステム5では、
蓄電池3は、積雪期間に売電充電を行う積雪期モードを備えている。
制御部4は、積雪期間になったときに、蓄電池3を、通常時の動作モードから、買電充電を行う積雪期モードに切り替え得るようになっている。
【0034】
ここで、積雪期モードは、蓄電池3の保護を最優先とする動作モードであり、これまでにはなかった新しい動作モードである。積雪期モードは、積雪期間に、蓄電池3に対して強制的に買電充電を行わせる特別な動作モードである。積雪期モードは、単独で通年使われる動作モード(独立モード)ではなく、他の動作モード(例えば、グリーンモードなど)と組み合わせて(積雪期間のみに)使用される期間限定の追加モード(または拡張モード)である。これにより、積雪期モードは、グリーンモードなどの一部となって、積雪期間にのみ限定的に実行される。なお、積雪期モードは、グリーンモードよりも経済的に劣るので、積雪期間は短い方が好ましい。積雪期モードによる強制的な買電充電を行う時間帯は、昼間でも良いし、夜間でも良いし、一日中でも良い。強制的な買電充電を行う時間帯は、ユーザと電力会社との契約(契約料金コース)の内容に合わせて最も有利なものに決めれば良い。一般的には、買電充電は、安価になる夜間に行うのが好ましい。
【0035】
積雪期間は、冬期において、太陽光発電設備2が発電できなくなる、または、発電量が大きく低下する期間である。太陽光発電設備2は、太陽光発電設備2(の太陽光パネル)の上に雪が降って積雪が日射を遮ることで、発電量が低下する。積雪期間は、一年中で最も寒い、冬期の雪が降り易い時期(積雪時期)の一部または全部となる。積雪期間は、狭い意味では実際に太陽光発電設備2の上に積雪が生じている期間であるが、これを正確に把握することは難しいので、例えば、事前に予測された、雪が降って積雪が起こる可能性が高い期間や、冬期全体などに拡げても良い。そして、この予測された期間などを用いて、積雪期間の判定が行われる。エネルギーマネジメントシステム5は、積雪期間を判定するための積雪期間判定部を有しても良い。積雪期間は、暦によって一律に定めることが難しい不特定な期間であり、地域やその年の天候などによって異なる。また、積雪期間は、同じ地域であっても地形や建物1の状況などによっても異なる。よって、積雪期間の判定には、必要に応じて、これらの状況なども考慮することができる。
【0036】
制御部4は、積雪期間との判定がなされた場合に、(モード切替部が)蓄電池3を自動的に通常時の動作モードから積雪期モードに切り替える。これにより、蓄電池3は、積雪期間に、通常時(または通常期間)の動作モードから、積雪期モードに強制的に切り替えられる。積雪期間における、積雪期モードへの切り替えは、太陽光発電設備2の余剰電力を蓄電池3に充電するグリーンモードを、年間を通して行わせるように設定している場合に効果が発揮される。また、制御部4は、積雪期間でないと判定された場合に、蓄電池3を自動的に通常時の動作モードに戻す。ただし、制御部4は、ユーザの選択により、積雪期モードを実施しないように構成しても良い。
【0037】
積雪期間であるかどうかついての判定の仕方は、以下の通りである。
【0038】
(2)エネルギーマネジメントシステム5では、積雪期間は、日付のみで判定しても良い。
【0039】
ここで、積雪期間は、主に、開始日および終了日の日付で定められる。
【0040】
日付のみで判定する場合、積雪期間かどうかの判定は、日付以外の要因を用いないで行われる。日付のみによる積雪期間かどうかの判定は、最も単純かつ容易で基本的な判定方法になる。
【0041】
情報処理能力を有する機器は、基本的な機能としてカレンダー機能を備えることができるため、カレンダー機能を使って日付のチェックを行うことで、積雪期間を判定することが可能となる。エネルギーマネジメントシステム5を構成する各機器(蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21)は、いずれも情報処理能力を有しており、カレンダー機能を備えているので、どれでも日付のチェックが可能である。この日付のチェックは、一年中、毎日行われる。
【0042】
積雪期間かどうかを判定するための日付のチェックは、実際に蓄電池3を積雪期モードで動作させる前までに行えば良い。そのため、例えば、当日に当日分のチェックを行ったり、前日に翌日分のチェックをしたり、前日より前に行ったりすることができる。この実施例では、適度な余裕を持てるように、日付のチェックは、前日に行っている。日付のチェックを行う日は、現在の日付と言うことができる。なお、情報処理能力を有する機器のカレンダー機能は、エネルギーマネジメントシステム5では、現在の日付を取得するための日付取得部として機能される。
【0043】
積雪期間の開始日と終了日の決め方は、以下の通りである。
【0044】
(2a)積雪期間の開始日と終了日は、例えば、ユーザ入力によって設定しても良い。
【0045】
ユーザ入力は、積雪期間の開始日と終了日とを、ユーザが自ら予測して決めるものである。ユーザが決めた開始日と終了日とは、エネルギーマネジメントシステム5を構成するいずれかの機器(蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21など)に対して、ユーザが、例えば、手入力や音声入力などによって設定する。エネルギーマネジメントシステム5は、上記したいずれかの機器に、ユーザ入力によって積雪期間を設定するための積雪期間入力部を有しても良い。ユーザ入力に関わった機器(例えば、制御部4など)は、他の機器(例えば、蓄電池3、外部のサーバ21など)へ開始日と終了日とを送って、互いに情報を共有するようにしても良い。これにより、エネルギーマネジメントシステム5を構成するどの機器でも積雪期間の判定ができるようになる。
【0046】
このように、ユーザ入力で積雪期間を設定することにより、ユーザは、自らの過去の経験、収集した情報、現在の気象や建物1の太陽光発電設備2の状況などに基づいて積雪期間を自由かつ独自に設定できる。また、ユーザは、実際の状況の変化などを見て積雪期間をきめ細かく設定・修正したり急な変更を行ったりすることができる。そのため、ユーザの意思が直接蓄電池3の制御に反映されると共に、実情に合った、より正確で適正な積雪期間の設定なども可能になる。よって、エネルギーマネジメントシステム5は、積雪期モードによる蓄電池3への買電充電の量を、ユーザの意思や判断能力を使って、ぎりぎりまで削減し、経済性を高めることが可能になる。
【0047】
(2b)また、例えば、積雪期間の開始日と終了日は、予め求めて、エネルギーマネジメントシステム5を構成するいずれかの機器に記憶させるなどして使用できるようにしても良い。
【0048】
積雪期間は、例えば、過去の気象データを使って、積雪期間の開始日と終了日にするべき日付を割り出すことで求めても良い。
【0049】
過去の気象データは、例えば、地域ごとの長期的な気象統計が使用できる。気象データとして地域ごとの長期的な気象統計を用いることで、その地域に応じた積雪期間を得ることが可能になる。
【0050】
更に、過去の気象データによって得られた積雪期間は、現在の気象データを用いて修正または微調整しても良い。現在の気象データは、長期予報などが使用できる。過去の気象データと現在の気象データを用いることで、現在の気象状況に応じたより正確な積雪期間を得ることが可能になる。現在の気象データを使う場合、積雪期間は、現在の気象データの変更に合わせて逐次更新するようにしても良い。
【0051】
過去の気象データなどから得られた積雪期間(の開始日と終了日)は、上記したように現在における積雪期間の予測日となる。そして、この積雪期間の予測日は、予めテーブル化しておくのが好ましい。テーブルは、例えば、地域ごとに積雪期間の開始日と終了日とをまとめた一覧データなどにする。積雪期間をテーブル化することで、エネルギーマネジメントシステム5を構成する各機器は、カレンダー機能を有してさえいれば、どの機器でもテーブルを使って積雪期間かどうかの判定ができるようになる。
【0052】
テーブルを地域ごとに用意するのは、例えば、「北へ行くほど単純に積雪期間が長くなって行く」などというように、積雪期間は単純なものでないからである。そのため、積雪期間は、例えば、緯度を示すパラメータによって比較的単純に算出することはできない。積雪期間は、同じ緯度であっても、海岸付近は積雪にならない(発電量が低下しない)のに対し、山間部は積雪になる(発電量が低下する)などのように、地形による影響を受ける。よって、テーブルは、地形の影響なども含めた地域別のものとする必要があり、そのために地域ごとの過去の気象データが使用される。
【0053】
地域は、エネルギーマネジメントシステム5に対して最初にユーザなどが行った初期設定から自動的に得ることができる。地域が特定されると、テーブルからその地域における積雪期間(開始日と終了日)が自動的に抽出され、必要に応じてエネルギーマネジメントシステム5に記憶される。
【0054】
積雪期間のテーブルは、エネルギーマネジメントシステム5の外部の情報端末(例えば、気象関係で使われている大型のコンピュータや、その他のコンピュータ)などで作成することができる。また、積雪期間のテーブルは、エネルギーマネジメントシステム5を構成する外部のサーバ21で作成することも可能である。外部のサーバ21は、過去の気象データなどに基づいて積雪期間のテーブルを算出するための積雪期間算出部を内部に有しても良い。
【0055】
作成された積雪期間のテーブルは、まず、外部のサーバ21に記憶される。外部のサーバ21は、積雪期間のテーブルを、地域内に形成されたグループに所属する建物1のエネルギーマネジメントシステム5の制御部4に送って制御部4に記憶させても良い。制御部4は、積雪期間のテーブルを、蓄電池3に送って蓄電池3(の付帯設備などに設けられた制御機器)に記憶させても良い。或いは、外部のサーバ21に記憶された積雪期間のテーブルは、制御部4や蓄電池3が、外部のサーバ21から逐次呼び出して使えるようにしても良い。エネルギーマネジメントシステム5を構成する機器は、メモリなどの記憶部に、ユーザ入力で設定された積雪期間や、積雪期間のテーブルを記憶するための積雪期間記憶部を有しても良い。
【0056】
なお、積雪期間のテーブルとユーザ入力とは、併用できるようにしても良い。例えば、積雪期間の開始日と終了日とは、テーブルで決められたものを、ユーザ入力で修正できるようにしても良い。
【0057】
そして、エネルギーマネジメントシステム5は、ユーザ入力やテーブルによって設定された積雪期間と、現在の日付とを比べて積雪期間であるかどうかを判定する。
【0058】
(3)また、エネルギーマネジメントシステム5では、積雪期間は、日付および太陽光発電設備2の発電量実績で判定しても良い。
【0059】
ここで、発電量実績は、太陽光発電設備2の発電量の実績のデータである。積雪期間を日付および発電量実績で判定する場合、積雪期間かどうかの判定は、日付と日付以外の要因(発電量実績)とを用いてそれぞれ行われる。日付および発電量実績は、どのような使い方をしても良いが、例えば、日付をメインの判定に使い、発電量実績をサブの判定に使うことなどができる。
【0060】
この場合、エネルギーマネジメントシステム5は、まず、日付を使って積雪期間かどうかの判定を自動的に行い、次に、上記判定の結果得られた積雪期間を、発電量実績を使って自動的に修正させても良い。具体的には、発電量実績が良好な日は、積雪期間から除外して除外日にする。これにより、例えば、日付が積雪期間内であっても、発電量実績が良ければ、積雪がないということなので、その日は除外日となって積雪期間から外される。
【0061】
このように、日付による積雪期間かどうかの判定を発電量実績で変更することにより、日付を使って判定された積雪期間を短くして、実際の発電量実績に合わせることができる。例えば、暖冬などのように雪が降らなかったシーズンに対しては、エネルギーマネジメントシステム5は、全ての日を除外日にすることなどが可能となる。よって、エネルギーマネジメントシステム5は、より実情に即した制御を行うことが可能となる。
【0062】
発電量実績は、太陽光発電設備2の実際の発電量を示すデータである。発電量実績は、制御部4でデータ収集され管理されると共に、外部のサーバ21へ送られて分析され、分析結果と共に管理される。発電量実績は、蓄電池3に送っても良い。例えば、制御部4や外部のサーバ21や蓄電池3は、内部に、太陽光発電設備2の発電量の実績を取得する発電量取得部を有しても良い。
【0063】
太陽光発電設備2の発電量は、積雪がなければ天候から精度良く予測することができる。これに対し、発電量は、積雪によって正確な予測ができなくなる。そのため、積雪によって発電予測量と実際の発電量実績とが乖離する。よって、電量実績は、太陽光発電設備2が積雪によって発電されていない状態かどうかの判定に用いることができる。
【0064】
なお、上記に替えて、または、上記に加えて、発電量実績は、その建物1が属する地域全体の、太陽光発電設備2の発電量実績に関するビッグデータを使っても良い。このようなビッグデータは、外部のサーバ21などに集められる。このビッグデータに基づく発電量実績は、外部のサーバ21から制御部4や蓄電池3に送っても良い。
【0065】
また、日付による積雪期間かどうかの判定と、発電量実績によって除外日を求める判定とは、エネルギーマネジメントシステム5を構成する機器のうちの、同じ機器で行わせても良いし、異なる別々の機器でそれぞれ行わせても良い。この実施例では、上記した二つの判定は、同じ機器で行わせている。
【0066】
(4)エネルギーマネジメントシステム5では、積雪期間は、発電量実績と、閾値との比較によって判定しても良い。
【0067】
ここで、発電量実績は、その建物1における、太陽光発電設備2の一定期間に亘る発電量の実績を示すデータとしても良い。一定期間は、例えば、現在(現時点)における直近の数日前までの期間としても良い。
【0068】
そして、エネルギーマネジメントシステム5は、現在における直近の数日前までの太陽光発電設備2の発電量実績が閾値以下(または未満)かどうかで、例えば、翌日が積雪期間になるかどうかを判定しても良い。
【0069】
一定期間に亘る発電量としたのは、例えば、悪天候や落葉の飛来・堆積などによる、一過性の発電低下を弁別するためである。電力低下が一定日数の間連続していることを条件にすることで、積雪によって発電されていない状態は、判別可能である。
【0070】
一定期間を直近の数日前としたのは、上記したように一過性の発電低下を弁別しつつ、積雪期間の判定に、実際の発電量の日毎の変化を反映させるのに丁度良い期間だからである。直近の数日前までの発電量は、天候に応じて分かり易く変化するため、積雪期間かどうかの判定を毎日行うことで、実際の状況に合った積雪期間の判定ができるようになる。直近の数日前は、現時点になる日と、その数日前までの日を含む数日間である。現時点は、積雪期間かどうかの判定を行う日としても良い。数日は、積雪期間かどうかの判定に必要な発電量の実績が得られる日数であれば良く、例えば、3日間~7日間までの連続した日としても良い。
【0071】
閾値は、積雪期間かどうかを切り分けるための基準となる値である。閾値は、積雪による発電量の低下(積雪によって発電量が大きく低下した状態かどうか)を判別するのに適正となる値に定められる。閾値は、例えば、人為的に決めることや、外部のサーバ21、制御部4などによって自動的に決めることなどが可能である。閾値は、エネルギーマネジメントシステム5を構成する各機器にて共有される。そのために、エネルギーマネジメントシステム5を構成する機器は、閾値を算出する閾値算出部や、算出した閾値を記憶する閾値記憶部を内部に有しても良い。閾値記憶部は、メモリなどの記憶部に設けても良い。
【0072】
閾値を用いるのは、発電量がゼロであっても、測定回路の誤差や周辺回路からの誘導作用で発電データがゼロにならない場合があるからである。また、発電データがゼロでなくても、発電量が本来期待される電力に対して大きく低下した場合は、蓄電池3への十分な充電が期待できないため、このような場合も含める必要があるからである。よって、積雪期間の判定は、閾値を使って、閾値以下または未満になることを条件としている。これにより、閾値は、誤判定を減らすことや、積雪によって発電量が大きく低下した場合を含めるのに寄与する。
【0073】
そして、直近の数日前までの発電量が閾値よりも低い場合、翌日は積雪期間であると判定される(数日分の発電量<または≦閾値 → 積雪期間)。また、数日前までの発電量実績が閾値よりも高い場合、翌日は積雪期間ではないと判定される(数日分の発電量≧または>閾値 → 積雪期間でない)。なお、閾値は、どちら側に属すようにしても積雪期間の判定は可能である。
【0074】
(5)閾値は、固定閾値(一定値)または可変閾値(可変値)とすることができる。
【0075】
(5a)固定閾値は、例えば、過去の積雪期間の際の、数日分(発電量実績と同じ日数分)の発電量実績から得ることができる。
【0076】
積雪期間は、上記したように太陽光発電設備2(の太陽光パネル)の上に雪が積もることで太陽光発電設備2が発電できなくなるため、発電量実績が通常よりも低くなる。よって、過去の積雪期間において、通常よりも低くなったときの発電量実績の値は、固定閾値として使用することが可能である。過去は、現時点よりも前であれば良い。固定閾値は、シーズンを通して一定の値が使われる。そして、太陽光発電設備2の発電量実績は、固定閾値と比較することで、積雪期間かどうかを判定される。
【0077】
このように、閾値に、過去の数日分の発電量実績に応じた固定閾値を用いることにより、固定閾値は、過去の積雪期間を基準として容易に得られると共に、固定閾値によって積雪期間を有効に判定できるようになる。
【0078】
(5b)閾値は、日射量実績に応じた可変閾値とすることができる。
【0079】
ここで、日射量実績は、外部から得られる日射量のデータである。日射量実績は、例えば、外部のサーバ21などに集められる。外部のサーバ21は、外部からの日射量のデータを取得する日射量実績取得部を内部に有しても良い。日射量実績は、日毎に変動するので、閾値に日射量実績を使うことで、閾値は可変閾値となる。可変閾値は毎日更新される。
【0080】
上記したように、積雪期間は、太陽光発電設備2(の太陽光パネル)の上に雪が積もることで、太陽光発電設備2の発電量実績が、日射量実績から期待される発電予測量より、何割も低くなる。そのため、日射量実績から期待される太陽光発電設備2(の太陽光パネル)の発電予測量は、可変閾値を作成するためのベースとして使用することができる。なお、可変閾値は、日射量実績をどのような使い方をして求めても良い。
【0081】
例えば、可変閾値は、日射量実績から期待される太陽光発電設備2(の太陽光パネル)の発電予測量の何割かの値などとして設定することができる。即ち、発電予測量に対する発電量実績の割合が一定値以下となることを、積雪期間の判定の条件にできる。上記した割合は、例えば、過去の積雪期間のときの日射量実績と、そのときのエネルギーマネジメントシステム5の発電量実績との関係に基づいて最適に設定、調整すれば良い。そして、太陽光発電設備2の発電量実績は、日射量実績(から期待される発電予測量)に応じて得られた可変閾値と比較されることで、積雪期間かどうかが判定される。
【0082】
また、例えば、可変閾値は、統計学の回帰分析などを用いて求めても良い。この場合、回帰分析は、日射量実績(から予測される発電予測量)と実際の発電量実績との関係を分析するものとなり、座標平面に描いた日射量実績(発電予測量)と発電量実績との関係を示す直線状のグラフ(回帰直線)の傾きが回帰係数となる。この回帰係数は、可変閾値となり、この可変閾値は、積雪期間になると大きく変化するため、積雪期間の判定の条件に使用できる。
【0083】
具体的には、積雪期間は、例えば、直近の14日分の、日毎の発電量実績・日射量実績から求めた回帰係数aと、直近の5日分の、日毎の発電量実績・日射量実績から求めた回帰係数rとを用いて判定することができる。この場合、比較的長期に亘る回帰係数aは過去の発電量実績を代表する値(可変値)になり、比較的短期間の回帰係数rは現在の発電量実績を代表する値(可変値)になる。回帰係数aは、回帰係数rと同じ日数分かそれよりも長い日数分で、回帰係数rよりも古い日を含むデータから求めれば良い。そして、回帰係数aと回帰係数rとの割合、r/aが0.5以下(または、rが0.5a以下)である場合に、積雪による発電低下期間(積雪期間)が始まったものと判断しても良い。0.5は、例えば、過去における通常時の回帰係数と積雪期間のときの回帰係数とから得られた定数である。ただし、定数の値は、0.5には限らない。この場合、回帰係数aに定数を乗じたものが可変閾値に相当する。
【0084】
(6)エネルギーマネジメントシステム5では、積雪期間の判定は、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21のいずれかが行うようにしても良い。
【0085】
ここで、積雪期間の判定は、現在が積雪期間であるかどうかを判定することである。積雪期間の判定は、エネルギーマネジメントシステム5を構成する機器の少なくともいずれかが判定の主体となって行う。判定の主体は、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21のいずれか1つ以上によって行わせることができる。
【0086】
判定の主体となるエネルギーマネジメントシステム5を構成する機器は、内部にコンピュータを備える、または、コンピュータで構成されることで情報処理が可能となっている。コンピュータは、少なくともCPUなどの演算処理部と、メモリなどの記憶部とを有しており、記憶部に記憶されたソフトウェアを演算処理部が実行することによって、積雪期間の判定に必要な各種の機能を得るようにしている。そのため、判定の主体となるエネルギーマネジメントシステム5を構成する機器は、必要に応じて、ソフトウェアによって実現された上記したような機能部分を有して、これらを機能させ得るようにする。機能部分は、例えば、積雪期間入力部、積雪期間算出部、積雪期間記憶部、発電量取得部、日射量実績取得部、閾値算出部、閾値記憶部、日付取得部、積雪期間判定部、モード切替部などのいずれかとされる。判定の主体となる機器は、内部の機能部分によって、積雪期間かどうかを判定する。
【0087】
例えば、ユーザは、ユーザ入力によって積雪期間入力部に積雪期間を設定する。積雪期間算出部が、過去の気象データなどに基づいて積雪期間のテーブルを求める。積雪期間記憶部が、ユーザ入力で設定された積雪期間や、積雪期間のテーブルを記憶する。日付取得部が現在の日付を取得する。そして、積雪期間判定部が、日付取得部からの現在の日付と、積雪期間記憶部からの積雪期間とを比べて、現在が積雪期間かどうかを判定する。
【0088】
また、発電量取得部が太陽光発電設備2の発電量実績を取得する。閾値算出部が閾値を算出する。閾値記憶部が算出した閾値を記憶する。そして、積雪期間判定部が、発電量取得部からの発電量実績と、閾値記憶部からの閾値とを比べて現在が積雪期間かどうかを判定する。積雪期間判定部は、日付と発電量実績との両方によって積雪期間かどうかを判定する。
【0089】
この際、日射量実績取得部が外部からの日射量実績を取得しても良い。閾値算出部は、日射量実績などから可変閾値を求めても良い。積雪期間判定部は、閾値算出部からの可変閾値を用いて積雪期間かどうかを判定しても良い。
【0090】
(6a)蓄電池3が主体となって、積雪期間かどうかの判定を行う場合、蓄電池3は、主に、内部に備えられたカレンダー機能や、メモリなどの記憶部に記憶した上記テーブルや、発電量実績および閾値などを用いて、積雪期間かどうかを判定する。具体的な判定は、蓄電池3の付帯設備に備えられた制御機器の機能によって行われる。なお、積雪期間は、テーブルに替えて、または、加えて、ユーザ入力による設定を使っても良い。
【0091】
蓄電池3(の制御機器)が積雪期間であると判定すると、蓄電池3は、通常時の動作モードから積雪期モードになる。蓄電池3は積雪期モードになったことを、制御部4に伝える。制御部4は、蓄電池3が積雪期モードになったことを外部のサーバ21に伝える。これにより、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21の間で情報が共有される。
【0092】
反対に、蓄電池3(の制御機器)が積雪期間でないと判定すると、蓄電池3は、そのまま通常時の動作モードを継続するか、積雪期モードから通常時の動作モードに戻る。積雪期モードから通常時の動作モードに戻った場合、蓄電池3は通常時の動作モードに戻ったことを、制御部4に伝える。制御部4は、蓄電池3が通常時の動作モードに戻ったことを外部のサーバ21に伝える。これにより、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21の間で情報が共有される。
【0093】
(6b)次に、制御部4が主体となって、積雪期間かどうかの判定を行う場合、制御部4は、主に、内部に備えられたカレンダー機能や、メモリなどの記憶部に記憶した上記テーブルや、発電量実績および閾値などを用いて、積雪期間かどうかを判定する。なお、積雪期間は、テーブルに替えて、または、加えて、ユーザ入力による設定を使っても良い。
【0094】
制御部4は、積雪期間であると判定すると、蓄電池3を制御して、蓄電池3を通常時の動作モードから積雪期モードにする。そして、制御部4は、蓄電池3を積雪期モードにしたことを外部のサーバ21に知らせる。これにより、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21の間で情報が共有される。
【0095】
反対に、制御部4は、積雪期間でないと判定すると、蓄電池3を通常時の動作モードのままにしておくか、蓄電池3を積雪期モードから通常時の動作モードに戻す。蓄電池3を積雪期モードから通常時の動作モードに戻した場合、制御部4は、蓄電池3を積雪期モードの動作モードにしたことを外部のサーバ21に知らせる。これにより、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21の間で情報が共有される。
【0096】
(6c)外部のサーバ21が主体となって、積雪期間かどうかの判定を行う場合、外部のサーバ21は、主に、内部に備えられたカレンダー機能や、メモリなどの記憶部に記憶した上記テーブルや、発電量実績および閾値などを用いて、積雪期間かどうかを判定する。なお、積雪期間は、テーブルに替えて、または、加えて、ユーザ入力による設定を使っても良い。
【0097】
外部のサーバ21は、積雪期間であると判定すると、制御部4に積雪期間であるとの運転設定を送る。制御部4は、外部のサーバ21からの積雪期間を知らせる運転設定によって、蓄電池3を制御して、蓄電池3を通常時の動作モードから積雪期モードにする。制御部4は、蓄電池3を積雪期モードにしたことを外部のサーバ21に知らせる。これにより、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21の間で情報が共有される。
【0098】
反対に、外部のサーバ21は、積雪期間でないと判定すると、制御部4に積雪期間でないとの運転設定を送る。制御部4は、外部のサーバ21からの積雪期間でないとの運転設定によって、蓄電池3を通常時の動作モードのままにしておくか、蓄電池3を積雪期モードから通常時の動作モードに戻す。蓄電池3を積雪期モードから通常時の動作モードに戻した場合、制御部4は、蓄電池3を積雪期モードにしたことを外部のサーバ21に知らせる。これにより、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21の間で情報が共有される。
【0099】
なお、積雪期間の判定は、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21の少なくとも1つ以上によって、行わせることができる。例えば、蓄電池3と制御部4とが協働して積雪期間の判定を行うようにしても良いし、制御部4と外部のサーバ21とが協働して積雪期間の判定を行うようにしても良い。また、例えば、蓄電池3と制御部4と外部のサーバ21の全てが協働して積雪期間の判定を行うようにしても良い。
【0100】
また、積雪期間の判定を複数の機器で行い得るようにする場合、複数の機器は、上位や下位などにランク付けして、下位の機器の判定を上位の機器によって変更できるようにしても良い。積雪期間の判定は、例えば、蓄電池3を下位の機器、制御部4を中位の機器、外部のサーバ21を上位の機器などとして行わせても良い。これにより、エネルギーマネジメントシステム5は、通常時の運転モードと、積雪期間の積雪期モードとを、同様の指揮命令系統に従って運用することが可能になる。または、積雪期間の判定は、例えば、制御部4を上位の機器、蓄電池3を下位または中位の機器、外部のサーバ21を中位または下位の機器などとして行わせても良い。これにより、エネルギーマネジメントシステム5は、建物1内の制御部4を中心にして、積雪期モードを有効に運用することが可能になる。
【0101】
<作用>この実施例の作用は、以下の通りである。
【0102】
図1に示すように、住宅などの建物1には、商用電源7からの電力が供給される。商用電源7からの電力は、分電盤8を介して建物1の内部へ導かれ、負荷6にて使用される。負荷6には、例えば、空調装置や、給湯器や、情報家電や、照明などの情報処理能力を有するものや、上記以外の情報処理能力を有さないものなど各種のものがある。
【0103】
住宅には、太陽光発電設備2が設置されており、太陽光発電設備2で発電した電力は、負荷6で使用したり、商用電源7に売電したりすることができる。太陽光発電設備2の発電電力のうち、負荷6で使用した残りの電力が余剰電力となる。
【0104】
住宅には、蓄電池3が設置されており、蓄電池3には、太陽光発電設備2で発電した電力や、商用電源7の電力が充電される。蓄電池3は、通常時には、例えば、グリーンモードや経済モードなどの複数の動作モードがあるうちの、いずれかの動作モードで動作される。例えば、グリーンモードは、太陽光発電設備2の余剰電力を蓄電池3に充電する動作モードである。
【0105】
住宅には、制御部4が設けられ、制御部4は、太陽光発電設備2や、蓄電池3や、分電盤8や、情報処理能力を有する負荷6などを適宜制御する。
【0106】
また、上記した建物1が存在する地域には、外部のサーバ21が設けられる。上記した地域では、地域内に存在する複数の建物1によってグループが形成され、外部のサーバ21は、グループに所属する複数の建物1のエネルギーマネジメントシステム5に接続される。外部のサーバ21は、グループ内の建物1の各エネルギーマネジメントシステム5との間で情報のやり取りを行う。よって、外部のサーバ21は、制御部4や、太陽光発電設備2や、蓄電池3と共に、エネルギーマネジメントシステム5の一部として機能する。
【0107】
外部のサーバ21は、各建物1のエネルギーマネジメントシステム5に設けられた制御部4に対し、制御部4、太陽光発電設備2、蓄電池3などの動作に関する設定情報(運転設定)などを送る。制御部4は、外部のサーバ21からの運転設定に基づいて、太陽光発電設備2、蓄電池3などを制御する。各建物1のエネルギーマネジメントシステム5の制御部4は、外部のサーバ21に、太陽光発電設備2、蓄電池3などの運転状況のデータなどを送る。
【0108】
そして、建物1のエネルギーマネジメントシステム5では、制御部4は、通常時には、蓄電池3を通常時の動作モードで動作させる。通常時は、例えば、太陽光発電設備2の余剰電力を蓄電池3に充電するグリーンモードで蓄電池3を動作させても良い。また、通常時の動作モードは、経済モードや充電モードなどとしても良い。
【0109】
グリーンモードは、翌日の日射が少なく太陽光発電設備2の発電が期待できない場合には、蓄電池3に対して、夜間に強制的に買電充電するかしないかを選択して指示を出すことができる。
【0110】
しかし、晴れて日射が多くなり太陽光発電設備2の発電が期待できる状態であっても、太陽光発電設備2(の太陽光パネル)の上に雪が積もっていると、積雪が日射を遮るので、太陽光発電設備2は発電できなくなる。即ち、「日射はあるが発電しない」という異常な状況となる。
【0111】
このような場合、建物1のエネルギーマネジメントシステム5は、「日射はあるが発電しない」という異常な状況を正しく認識するのが難しいために、正しい選択および指示がなされない。そして、グリーンモードだと、蓄電池3は、夜間に強制的な買電充電がなされないので、そのままの状態で放置される。すると、積雪期間に、蓄電池3が残量ゼロの状態になる。蓄電池3が残量ゼロの状態が続くと、蓄電池3は、過放電になって劣化する。
【0112】
その結果、例えば、非常時などに、残量ゼロで蓄電池3が全く利用できない状態が生じてしまう。積雪地域では、このような事態は冬期に生じ易いため、これまで、積雪地域では、蓄電池3は、余剰電力を充電しない動作モードで動作させることが多く、余剰電力の充電が可能な時期であっても買電充電させていることで、経済的には不利な状態となっていた。
【0113】
また、近年、蓄電池3が余剰電力の充電を行う場合に限り、太陽光発電設備2を大容量で発電させ得るようにした電力供給システムなども開発されている。しかし、上記したように、蓄電池3を、余剰電力を充電しないモードでしか動作させないのであれば、このような新たな電力供給システムは、そのメリットを生かせないことになる。
【0114】
このような状況に対応するため、エネルギーマネジメントシステム5は、上記した通常時での動作モードに対し、積雪期モードを追加して機能向上を図れるようにした。
【0115】
そのため、エネルギーマネジメントシステム5では、制御部4は、積雪期間に、蓄電池3を通常時の動作モードから積雪期モードに自動的に切り替えて、積雪期モードで動作させることができる。積雪期モードは、積雪期間に蓄電池3に対して強制的に買電充電を行わせる特別な動作モードである。これにより、積雪期間に、蓄電池3が残量ゼロの状態となって、残量ゼロの状態が継続されるのを防止できる。積雪期モードは、通常時の動作モードがグリーンモードである場合に効果が発揮される。グリーンモードは、積雪期モードによって欠点が補われるため、グリーンモードの活用範囲を拡げることができる。
【0116】
積雪期間が過ぎて通常時に戻ると、制御部4は、蓄電池3を積雪期モードから再び通常時の動作モードに自動的に切り替える。
【0117】
より具体的には、建物1のエネルギーマネジメントシステム5を構成する各機器、例えば、外部のサーバ21は、積雪期間であるかどうかについて判定することができる。この場合、外部のサーバ21は、図2に示すように、S1で、地域内の(グループに所属する)建物1かどうかを判定する。地域内の建物1である場合、外部のサーバ21は、S2で積雪期間かどうかを判定する。積雪期間である場合、外部のサーバ21は、S3で積雪モードの設定(運転設定)を行う。外部のサーバ21は、S4で建物1のエネルギーマネジメントシステム5の制御部4に、積雪モードの運転設定の指示を送る。そして、制御部4は、運転設定の指示を蓄電池3に送って、蓄電池3を積雪モードで動作させる。
【0118】
これに対し、S1で、地域内の(グループに所属する)建物1でない場合、および、S2で積雪期間でない場合に、外部のサーバ21は、S5で通常通りの判定に基づく設定(運転設定)を行う。通常通りの判定とは、現在が通常時であると判定することである。外部のサーバ21は、S4で建物1のエネルギーマネジメントシステム5の制御部4に、通常時の運転設定の指示を送る。そして、制御部4は、運転設定の指示を蓄電池3に送って、蓄電池3を通常時の動作モード(グリーンモード)で動作させる。
【0119】
なお、S2で積雪期間でないと判定された場合(NOの場合)、S5の通常通りの判定に基づく設定は、通常期にグリーンモードとは別のモード(例えば、経済モードや充電モードなど)で蓄電池3を動作させるときに必要となる(実線矢印A)。S2で積雪期間でないと判定された場合(NOの場合)でも、通常期にグリーンモードで蓄電池3を動作させるのであれば、S5の通常通りの判定に基づく設定は特に行わなくても良い(破線矢印B)。
【0120】
なお、上記した積雪期間かどうかの判定は、制御部4または蓄電池3によっても、ほぼ同様に行わせることができる。
【0121】
そして、S2の積雪期間であるかどうかの判定は、以下のようにして行われる。この際、積雪期間は、例えば、その地域の過去の気象データに基づいて、予め、その地域における積雪期間の開始日・終了日を求めてテーブル化して、使用できるようにしておく。また、エネルギーマネジメントシステム5を構成する各機器のうち、少なくとも判定を行う機器は、機器に備えられたカレンダー機能から現在の日付を取得し、地域の情報は、エネルギーマネジメントシステム5の初期設定から取得しておく。現在の日付は、当日でも翌日でも良い。そして、現在の日付および地域は、上記したテーブルと対比される。
【0122】
例えば、日付のみで、積雪期間を判定する場合、図3に示すように、エネルギーマネジメントシステム5は、S11で現在の日付が開始日より後かどうかを判定する。現在の日付が開始日より後の場合、エネルギーマネジメントシステム5は、S12で現在の日付が終了日以前かどうかを判定する。現在の日付が終了日以前の場合には、エネルギーマネジメントシステム5は、S13で積雪期間であると判定する。一方、S11で現在の日付が開始日より後でない場合、S12で現在の日付が終了日以前でない場合、エネルギーマネジメントシステム5は、S14で積雪期間でないと判定する。
【0123】
また、例えば、日付および発電量実績で積雪期間を判定する場合、図4に示すように、エネルギーマネジメントシステム5は、S21で現在の日付が開始日より後かどうかを判定する。現在の日付が開始日より後の場合、エネルギーマネジメントシステム5は、S22で現在の日付が終了日以前かどうかを判定する。現在の日付が終了日以前の場合、エネルギーマネジメントシステム5は、S23で数日前までの発電量が閾値以下であるかを判定する。閾値以下の場合には、エネルギーマネジメントシステム5は、S24で積雪期間であると判定する。一方、S21で現在の日付が開始日より後でない場合、S22で現在の日付が終了日以前でない場合、S23で数日前までの発電量が閾値より高い場合には、エネルギーマネジメントシステム5は、S25で積雪期間でないと判定する。
【0124】
以上により、エネルギーマネジメントシステム5は、積雪期間かどうかを自動的に判定する。そして、積雪期間に、蓄電池3は、積雪期モードで動作される。通常時に、蓄電池3は、通常時の動作モードで動作される。
【0125】
なお、通常時の動作モードがグリーンモード以外の、例えば、経済モードや充電モードなどの場合、蓄電池3には買電充電が行われるため、蓄電池3は、積雪期間に残量ゼロの状態になることはない。よって、これらの動作モードの場合には、制御部4は、積雪期間であっても蓄電池3を積雪期モードにする必要はないが、積雪期モードにしても良い。この実施例では、制御部4は、蓄電池3を、通常時の動作モードがグリーンモードかどうかに拘わらず、一律に積雪期モードに切り替えるようにしている。グリーンモードのときのみに、積雪期モードに切り替えるようにする場合には、図2のフローチャートは、「現在の動作モードがグリーンモードか?」という判定が追加される。
【0126】
<効果>この実施例の効果は、以下の通りである。
【0127】
(効果 1)エネルギーマネジメントシステム5では、制御部4は、通常時に、少なくとも、太陽光発電設備2の余剰電力を蓄電池3に充電する動作モードで、蓄電池3を動作させることが可能になっている。そして、この実施例のエネルギーマネジメントシステム5では、蓄電池3は、通常時の動作モードに加えて、積雪期間に売電充電を行う積雪期モードを備えている。制御部4は、積雪期間になったときに、蓄電池3を、通常時の動作モードから、買電充電を行う積雪期モードに切り替え得るようになっている。制御部4は、積雪期間に蓄電池3を自動的に積雪期モードに切り替える制御を行って、蓄電池3を積雪期モードで動作させる。
【0128】
これにより、積雪期間に、蓄電池3は、積雪期モードになって強制的に買電充電される。そのため、例えば、日射量が十分に有るにも拘わらず、太陽光発電設備2の上に雪が積もることで、積雪が日射を遮って発電できないような場合でも、蓄電池3は、積雪期間に残量ゼロの状態になって、残量ゼロの状態が連続することが回避される。
【0129】
(効果 2)エネルギーマネジメントシステム5では、積雪期間は、日付のみで判定しても良い。このように、日付のみで積雪期間を判定することにより、例えば、予め積雪期間を定めておき、現在の日付をチェックして積雪期間と比べるだけで、エネルギーマネジメントシステム5は、自動的かつ容易に積雪期間を判定することができる。そして、エネルギーマネジメントシステム5は、容易に積雪期モードを実現できる。
【0130】
積雪期間は、ユーザ入力によって設定することや、過去の気象データなどを用いて予め求めておくことができる。
【0131】
ユーザ入力によって積雪期間を設定する場合、ユーザは、実際の天候の状況を伺いながら積雪期間を設定できる。そのため、実際の天候やその建物1の状況などに合った、より適正で正確な積雪期間の設定が可能になる。よって、エネルギーマネジメントシステム5は、積雪期モードでの運転による蓄電池3への買電充電の量が削減されて、経済性が高められる。
【0132】
加えて、ユーザ入力によって積雪期間を設定することで、ユーザは、蓄電池3の動作モードを自ら決定して、ユーザの意思通りに管理することができる。よって、エネルギーマネジメントシステム5は、ユーザにとって自由度の高いものになると共に、ユーザの意思に反して蓄電池3の動作モードが勝手に変わってしまうのを防止できる。また、ユーザ入力を一度行ってしまえば、蓄電池3は、毎年自動的に、ユーザの希望通りの積雪期間に積雪期モードに変更される。よって、ユーザは、ユーザ入力を毎年行わなくても、積雪期間に蓄電池3を確実に積雪期モードで動作させることができる。
【0133】
また、過去の気象データなどで求めた積雪期間を使うことで、ユーザは、ユーザ入力の手間をなくすことができると共に、エネルギーマネジメントシステム5は、ユーザが管理しなくても積雪期間に蓄電池3を自動的に積雪期モードで動作させることができる。
【0134】
(効果 3)エネルギーマネジメントシステム5では、積雪期間は、日付および太陽光発電設備2の発電量実績で判定しても良い。このように、日付および発電量実績で積雪期間を判定することにより、エネルギーマネジメントシステム5は、例えば、日付によって自動的に決めた積雪期間を、発電量実績を用いて自動的に修正・変更することができる。そのため、エネルギーマネジメントシステム5は、日付のみで積雪期間を判定する場合と同様の効果に加えて、発電量実績に応じた、より正確な積雪期間の自動的な判定が可能になる。即ち、積雪期間内であっても、発電量実績の状況によっては、その日は積雪期間でないものとなる。これにより、積雪期間が短くなって、エネルギーマネジメントシステム5は、積雪期モードによる蓄電池3への買電充電の量を削減できるので、経済性が高められる。
【0135】
(効果 4)積雪期間は、発電量実績と、閾値との比較によって判定しても良い。これにより、閾値によって、誤判定を削減することや、積雪によって発電量が大きく低下した場合を積雪期間に含めることができる。また、発電量実績を直近の数日前までの発電量とすすることで、一過性の発電低下を弁別しつつ、日毎の発電量の変化を反映させて実際の状況に合った積雪期間の判定を行うことが可能になる。
【0136】
(効果 5)閾値は、日射量実績に応じた可変閾値としても良い。このように、閾値に、日射量実績に基づいた可変閾値を用いることにより、積雪期間の判定に日射量の変化が反映されるため、エネルギーマネジメントシステム5は、悪天候が続いた場合の誤判定を減らすことが可能になる。
【0137】
(効果 6)エネルギーマネジメントシステム5では、積雪期間の判定は、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21のいずれかが行っても良い。これにより、積雪期間であるかどうかの判定は、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21のいずれかにて自動的に行わせることができる。
【0138】
そして、蓄電池3が積雪期間の判定を行う場合には、建物1に設けられている機器のみで積雪期モードを実現することが可能になる。そのため、例えば、通信障害などが生じて外部のサーバ21との連絡が途絶えた場合や、制御部4が故障した場合でも、積雪期モードの実施が可能である。また、蓄電池3が積雪期間の判定を行うことで、制御部4は、処理負担を減らすことができる。
【0139】
制御部4が積雪期間の判定を行う場合には、建物1に設けられている機器のみで積雪期モードを実現することが可能になる。そのため、例えば、通信障害などが生じて外部のサーバ21との連絡が途絶えた場合でも、積雪期モードの実施が可能である。また、制御部4は、エネルギーマネジメントシステム5を構成する機器の中では、ユーザにとって最も身近な機器となるため、気軽に操作できる。そのため、例えば、積雪期間をユーザ入力する場合に、ユーザは、最も容易に積雪期間の設定ができる。
【0140】
外部のサーバ21が積雪期間の判定を行う場合には、積雪期間の判定を、建物1の外側から、複数の建物1のエネルギーマネジメントシステム5に対して一括して行わせることができる。そのため、ユーザは、積雪期モードを意識する必要がなくなる。また、外部のサーバ21が積雪期間を判定する(または、運転設定の指示を出す)ことで、建物1側の機器を変更せずに、外部のサーバ21は、複数の建物1のエネルギーマネジメントシステム5に対して積雪期モードを実施させることができる。また、建物1側の機器は、処理負担を減らすことができる。
【実施例0141】
実施例2として、エネルギーマネジメントシステム5は、図5に示すように、
電気で湯を沸かす電気給湯器9を備えても良い。
電気給湯器9は、通常時に、太陽光発電設備2の余剰電力で湯沸かしを行う昼間沸き増しモードを備えても良い。
この場合に、電気給湯器9または制御部4は、積雪期間になったときに、電気給湯器9の昼間沸き増しモードを停止させるようにしても良い。
【0142】
ここで、電気給湯器9は、建物1に設置される給湯機器であり、電気給湯器9には、例えば、ヒートポンプを備えて、大気の熱を回収して湯を沸かすように構成されたエコキュート(登録商標)などの機器がある。電気給湯器9は、太陽光発電設備2や蓄電池3などと同様に、分電盤8に電気的に接続される。電気給湯器9は、制御部4に対して情報の送受信が可能とされ、制御部4は、必要に応じて、電気給湯器9を制御する。また、電気給湯器9は、内部に情報処理能力を備えた制御機器を有している。よって、電気給湯器9の内部の制御機器も制御部4として、エネルギーマネジメントシステム5のために使用させることができる。
【0143】
電気給湯器9は、通常時に、電気料金単価の安い夜間に湯沸かしを行う夜間モードを備えており、夜間に湯沸かしして、溜めたお湯を昼間に使う、という使い方が一般的に行われている。
【0144】
しかし、昨今、太陽光発電設備2を設置した建物1においては、昼間の発電の余剰電力に対する買取価格が、深夜の買電単価を下回る場合が増えている。
【0145】
そこで、余剰電力の買取価格が、深夜の買電単価を下回る場合に備えて、近年、昼間沸き増しモードを備えた太陽光発電設備2の機器が出始めている。昼間沸き増しモードは、昼間の余剰電力を予測して、余剰電力が多い場合は、夜間の買電による湯沸かし量を減らして、昼間の余剰電力がある時間に沸き増しを行う運転モードである。
【0146】
この場合、昼間沸き増しモードを使うか使わないかの設定は、電気給湯器9の側からでも、制御部4(HEMSの端末など)からの側でも可能になっている。
【0147】
蓄電池3をグリーンモード(太陽光発電設備2の余剰電力を蓄電池3の充電に優先的に使用する動作モード)で使っている建物1では、同じく余剰電力を自家消費するために、電気給湯器9の昼間沸き増しモードをオンにすることが多い。
【0148】
すると、上記したように、積雪期間は、太陽光発電設備2の発電がないために、昼間の電気料金単価の高い時間帯に買電沸き増しすることになるので、夜間モードで夜間に沸き増しする場合よりも、経済的に不利となる。
【0149】
このような問題に対処するためには、電気給湯器9は、積雪期間以外の通常時には、昼間沸き増しモードを使うが、積雪期間には、昼間沸き増しモードを使わない、というように、積雪の状況に応じて、動作モードの切り替えを行うのが望ましい。
【0150】
そこで、電気給湯器9または制御部4は、通常時に、昼間沸き増しモードを行っている電気給湯器9に対し、積雪期間に、電気給湯器9の昼間沸き増しモードを停止させるようにする。これにより、上記した経済的な不利を回避することが可能になる。積雪期間の判断は、実施例1と同じに行う。また、積雪期間の判断には、電気給湯器9の内部の制御機器を使用させても良い。
【0151】
そして、積雪期間において、実施例1の、蓄電池3の夜間充電あり・なしを切り替える制御に合わせて、この実施例2の、電気給湯器9の昼間沸き増しモードのなし・ありを切り替える制御を追加する。これにより、積雪期間に電気給湯器9に生じる問題も解消することができる。そして、電気給湯器9は、積雪期間でも経済的に使用することができる。
【0152】
なお、上記以外の構成については、上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【実施例0153】
以下、図6図9を用いて実施例3を説明する。
【0154】
この実施例のエネルギーマネジメントシステム5は、上記各実施例に記載した様々な構成の組合せのうち、最も実用化に適したものをまとめて具体化したものである。
【0155】
<構成>この実施例の構成は、以下の通りである。
【0156】
(3-1)エネルギーマネジメントシステム5は、
図6(~図9)に示すように、太陽光で発電する太陽光発電設備2と、
充電が可能な蓄電池3と、
少なくとも蓄電池3の運転切替のコントロールを行う制御部4と、を備えている。
蓄電池3は、通常時に、太陽光発電設備2の余剰電力を充電し、太陽光発電設備2の発電電力がなくなったら蓄電池3から放電する動作モードで動作する。
蓄電池3は、積雪期間に、契約料金コース内の最も単価が安い時間帯に系統電力にて買電充電を行い、単価が高い時間帯に放電する積雪期モードで動作する。
制御部4は、蓄電池3の通常時の動作モードと積雪期モードとを自動で切り替える機能を有すると共に、
制御部4は、積雪期間になったときに、蓄電池3を、通常時の動作モードから、積雪期モードに切り替える。
【0157】
ここで、通常時は、積雪期間以外の期間(非積雪期間)である。エネルギーマネジメントシステム5では、通常時に、太陽光発電設備2の昼間などの発電電力を建物1内(の負荷6)で自家消費し、その余剰電力が蓄電池3に充電される(余剰充電)。余剰電力で蓄電池3が完全に充電されなかった場合には、蓄電池3は、買電によって充電しても良い。そして、太陽光発電設備2が発電しない夜間などには、蓄電池3に貯めた電力が使われる。
【0158】
蓄電池3は、通常時にグリーンモードで動作され、積雪期間にグリーンモードに追加された積雪期モードに切り替えられて、積雪期モードで動作される。積雪期モードは、ユーザと電力会社とが契約した契約料金コースの内容に合わせた最も有利なものにする。契約料金コース内の最も単価が安い時間帯は、ユーザと電力会社との契約によってそれぞれ異なる。この実施例では、例えば、夜間の時間帯が電気代の単価が安くなり、それ以外の朝、昼、夕方の時間帯が電気代の単価が高くなる契約としている。ただし、契約は、上記に限るものではない。系統電力は、電力会社による商用電源7のことである。
【0159】
(3-2)上記において、エネルギーマネジメントシステム5は、
電気で湯を沸かす電気給湯器9(図5)を備え、
電気給湯器9は、通常時に、太陽光発電設備2の余剰電力で電気給湯器9が湯沸かしを行う昼間沸き増しモードを備えると共に、
電気給湯器9または制御部4は、積雪期間になったときに、電気給湯器9の昼間沸き増しモードを停止させても良い。
【0160】
(3-3)上記において、エネルギーマネジメントシステム5では、
太陽光発電設備2の余剰電力は、蓄電池3への充電と、電気給湯器9の昼間沸き増しモードによる湯沸かしとのうち、電気給湯器9の湯沸かしに優先的に使用しても良い。
【0161】
ここで、余剰電力による優先的な電気給湯器9の湯沸かしは、通常時の昼間などに行われる。電気給湯器9の湯沸かしに使って余った電力は、蓄電池3の充電に使われる。余剰電力による優先的な電気給湯器9の湯沸かしは、積雪期間には、行わないようにする。この場合、電気給湯器9の湯沸かしは、電気代の単価が安くなる夜間に行うようにする。
【0162】
(3-4)上記において、エネルギーマネジメントシステム5では、
積雪期間は、地域ごとの太陽光発電設備2の発電量実績(図9)で判定されても良い。
発電量実績は、過去の履歴またはその年の発電量で判断されても良い。
積雪期間の判定は、コンピュータまたはユーザが行っても良い。
【0163】
ここで、発電量実績は、太陽光発電設備2の発電量の実績のデータであり、過去の履歴またはその年の発電量に基づいて地域別に求められ、テーブル化される。積雪期間の判定は、テーブルに基づいた積雪期間の設定や、積雪期間かどうかの日付のチェックなどとなる。コンピュータまたはユーザは、テーブルを用いて積雪期間の設定および積雪期間の切り替え日のチェックの少なくとも一方を行う。
コンピュータによる積雪期間の判定は、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21のいずれかが行っても良い。
【0164】
ここで、コンピュータは、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21に備えられたもののいずれかが使用される。
【0165】
なお、この実施例の上記した構成の詳細については、上記各実施例と同様にすることができる。
【0166】
<作用>この実施例の作用は、以下の通りである。
【0167】
図8(a)~(d)は、建物1の1日の使用電力と、太陽光発電設備2の発電電力とを示した図である。使用電力は鎖線で示され、発電電力は太い実線で示されている。このうち、(a)(b)は比較例であり、(c)(d)は実施例である。そして、(a)はこれまでの主流になっている売電モードの通常時の状態、(b)は売電モードの積雪期間の状態である。また、(c)は多雪地帯におけるグリーンモードの通常時の状態、(d)はグリーンモードの積雪期間の状態(積雪期モード)である。
【0168】
比較例について説明すると、これまでの売電モードの場合、図8(a)に示すように、通常時(非積雪期間、例えば、5月~10月)は、電気代の単価が安い夜間に、電気を買って使う買電を使用し、蓄電池3も夜間に買った電気(買電)で充電する(夜間充電)。そのため、蓄電池3は、朝になる直前が、最も充電量が多くなる。
【0169】
電気代の単価が高い、朝、昼、夕方には、蓄電池3に貯めた電力を放電しながら使用する。朝、昼、夕方に、太陽光発電設備2の発電電力があるときには、発電電力を使用(自家消費)することで、蓄電池3の使用を抑制する。
【0170】
この時期、太陽光発電設備2は発電電力が多くなるので、朝、昼、夕方に多量の余剰電力が生じる。生じた余剰電力は全て電力会社(商用電源7)に売る(売電する)。また、電気給湯器9の湯沸かしは、電気代の単価が安い夜間に行う。
【0171】
また、図8(b)に示すように、売電モードでは、積雪期間(例えば、11月~4月)も、動作モードの切り替えなどはなく、通常時と基本的に同じままとなるが、この時期は、太陽光発電設備2の発電電力が格段に少なくなる。そして、昼、夕方に生じた僅かな余剰電力は、売電する。即ち、売電モードにおいては、余剰電力は、積雪期間、非積雪期間に関わらず全て売電する。
【0172】
これに対し、この実施例のグリーンモードの場合、図8(c)に示すように、通常時(非積雪期間、例えば、5月~10月の)は、1日を通して蓄電池3に貯めた電力を放電しながら使用する。即ち、電気代の単価が安い夜間、電気代の単価が高い、朝、昼、夕方の時間帯に関わらず、蓄電池3の電力を使用する。朝、昼、夕方の太陽光発電設備2の発電電力があるときには、発電電力を使用(自家消費)することで、蓄電池3の使用を抑制する。
【0173】
この時期は、太陽光発電設備2は発電電力が多くなるので、朝、昼、夕方に多量の余剰電力が生じる。生じた余剰電力は、蓄電池3の充電(余剰充電)、または、電気給湯器9の湯沸かし(昼間沸き増しモード)の少なくとも一方に使用する。朝、昼、夕方の余剰電力は、例えば、電気給湯器9の湯沸かしに優先的に使用しても良い。電気給湯器9の湯沸かしで余った残りの余剰電力は、蓄電池3の充電に使用する。
【0174】
この場合、蓄電池3は、夕方の余剰電力が生じているときが、最も充電量が多くなる。また、蓄電池3は、買電による夜間充電がほぼ不要になる。ただし、発電電力の少ない日などには、必要に応じて、不足分を買電により夜間充電しても良い。これらにより、グリーンモードは、通常時(非積雪期間)に、余剰電力を活用して電力の自給自足を目指すことができる。
【0175】
また、図8(d)に示すように、この実施例のグリーンモードでは、積雪期間(例えば、11月~4月)に積雪期モードとなって、電気代の単価が安い夜間に買電を使用し、蓄電池3も夜間に買電で充電(夜間充電)する。そのため、蓄電池3は、朝になる直前が、最も充電量が多くなり、太陽光発電設備2の発電電力が少なくなる分が補われる。電気代の単価が高い、朝、昼、夕方には、蓄電池3に貯めた電力を放電しながら使用する。朝、昼、夕方の太陽光発電設備2の発電電力があるときには、発電電力を使用(自家消費)することで、蓄電池3の放電量を削減する。
【0176】
この時期は、太陽光発電設備2の発電電力が少なくなる。そして、昼、夕方の僅かな余剰電力は、蓄電池3の充電に使用する。なお、昼、夕方の僅かな余剰電力は、電気給湯器9の湯沸かし(昼間沸き増しモード)に使用することもできるが、余剰電力による湯沸かしは停止しても良い。この場合、電気給湯器9の湯沸かしは、夜間の買電を使用する。また、余剰電力で湯沸かしを行った場合についても、不足分は、夜間の買電を使用することができる。これにより、グリーンモードは、積雪期間に積雪期モードとなって、蓄電池3を夜間に満タンにして、太陽光発電設備2の発電電力が少ない分を補うことができる。そのため、積雪期間に蓄電池3が残量ゼロの状態になることが回避される。そして、余剰電力も有効に活用できる。
【0177】
次に、蓄電池3の動作モードの切り替えについて説明する。図6は、図の左側の、積雪期間の積雪期モードと、図の右側の、通常時の動作モードとを、HEMSなどの制御部4が自動で切り替える様子を示している。なお、電気給湯器9の湯沸かしについては、省略しているが、上記と同様にすることができる。
【0178】
図の左側は、積雪期間を示しており、太陽光発電設備2の発電電力が無いか少ないことで、余剰電力が無いか少なくなるため、積雪期モードは、蓄電池3を夜間に買電充電(夜間充電)するようにしている。
【0179】
夜間充電するのは、夜間に電気代の単価が安くなる契約になっているからである。これにより、発電電力が少ない積雪期間も、夜間に蓄電池3が確実に充電されるので、安心が得られる。なお、積雪期間においても、余剰電力は、蓄電池3の充電などに使われる。
【0180】
図の右側は、通常時(または非積雪期間)を示しており、太陽光発電設備2の発電電力が多いことで、余剰電力が多くなるため、通常時の動作モードは、蓄電池3を余剰電力で充電(余剰充電)するようになっている。これにより、発電電力が多い通常時(非積雪期間)には、余剰電力を蓄電池3に充電(余剰充電)することで、余剰電力を十分に活用できるので、経済的となる。
【0181】
蓄電池3の動作モードの自動での切り替えは、HEMSなどの制御部4が行っている。これにより、ユーザは、切り替えに手間がかからない。なお、蓄電池3の動作モードの切り替えは、ユーザが行っても良い。
【0182】
次に、積雪期間について説明する。図7は、蓄電池3の動作モードを図6のように自動的に切り替えるための年間のスケジュール表である。このスケジュール表では、例えば、11月~4月の冬期全体を、多雪地帯における積雪期間とし、それ以外の5月~10月の期間を通常時(または非積雪期間)としている。なお、電気給湯器9の湯沸かしについては、省略しているが、上記と同様にすることができる。
【0183】
例えば、11月~4月の冬期全体を積雪期間とした場合、積雪期間は、太陽光発電設備2の余剰電力が無いか少ないので、蓄電池3を余剰充電し、余剰充電で足りない分を夜間充電で補っている。この場合、蓄電池3の充電のほとんどが夜間充電になる。
【0184】
5月~10月を通常時(または非積雪期間)とした場合、通常時は、太陽光発電設備2の余剰電力が多いので、蓄電池3を余剰充電している。この場合、蓄電池3の充電のほとんどが余剰充電になる。
【0185】
そして、制御部4は、積雪期間から通常時(または非積雪期間)へ移行する4月末または5月初めに、蓄電池3を積雪期モードから通常時の動作モードへと切り替える。また、制御部4は、通常時から積雪期間へ移行する10月末または11月初めに、蓄電池3を通常時の動作モードから積雪期モードへと切り替える。
【0186】
次に、積雪期間の判定について説明する。図9は、地域別の積雪期間の目安を具体化したテーブルである。縦軸が地域(県および市町村)、横軸が冬期を示す期間(10月~4月の(上旬、中旬、下旬などの)各時期)となっている。
【0187】
図で薄く塗り潰した部分は、気象庁の気象データに基づいて得た地域ごとの積雪期間であり、濃く塗り潰した部分は、2000件程度の過去の履歴またはその年の発電量を発電量実績として、地域ごとに分析して得た積雪期間である。この場合、発電量実績は、過去の電力データで発電量が実際にゼロになった期間の実績値(発電量ゼロ実績)となっている。それ以外の白塗りの部分は、冬期における、積雪期間以外とされる期間である。なお、このテーブルは時間の経過に伴って逐次更新することができる。
【0188】
積雪期間は、例えば、冬期全体となる11月1日~4月30日を初期値として、初期値を予め積雪期間入力部によって設定し、積雪期間記憶部に記憶しておく。これにより、冬期全体が積雪期間と設定される。そして、図9のテーブルなどを目安にして、ユーザなどが手入力で、初期値を地域に合わせて修正または設定変更できるようにしても良い。そして、積雪期間は、上記テーブルなどを目安に日付のチェックを行って、ユーザが判定するようにしても良い。また、積雪期間は、図9のテーブルや積雪期間記憶部の記憶内容などをコンピュータが参照して、コンピュータが設定変更や日付のチェックを行うことで、コンピュータが判定するようにしても良い。または、設定変更をユーザが行い、日付のチェックをコンピュータが行ったり、設定変更をコンピュータが行い、日付のチェックをユーザが行ったり、しても良い。
【0189】
特に、濃く塗り潰した発電量実績(発電量ゼロ実績)による積雪期間は、薄く塗り潰した気象データによる積雪期間よりも期間が短く精度の高いものになっている。そのため、ユーザなどは、気象データに基づく積雪期間を使用しても良いが、発電量実績による積雪期間を使用することで、より正確な積雪期間が得られるため、積雪期モードによる蓄電池3への買電充電の量を削減して、経済性を高めることが期待できる。なお、ユーザなどは、例えば、気象データによる積雪期間と、発電量実績による積雪期間とを参考にして、自宅周辺のより狭い範囲の地域の気候を考慮するなどにより、独自の積雪期間を作成して使用しても良い。
【0190】
<効果>この実施例の効果は、以下の通りである。
【0191】
(効果 3-1)エネルギーマネジメントシステム5は、太陽光で発電する太陽光発電設備2と、充電が可能な蓄電池3と、少なくとも蓄電池3の運転切替のコントロールを行う制御部4と、を備える。蓄電池3は、通常時に、太陽光発電設備2の余剰電力を充電し、太陽光発電設備2の発電電力がなくなったら蓄電池3から放電する動作モードで動作する。これにより、余剰電力を活用して電力の自給自足を目指すことができる。蓄電池3は、積雪期間に、契約料金コース内の最も単価が安い時間帯に系統電力にて買電充電を行い、単価が高い時間帯に放電する積雪期モードで動作する。これにより、蓄電池3を夜間などに満タンにして、太陽光発電設備2の発電電力が少ない分を補うことができると共に、積雪期間に蓄電池3が残量ゼロの状態になることを回避できる。制御部4は、蓄電池3の通常時の動作モードと積雪期モードとを自動で切り替える。制御部4は、積雪期間になったときに、蓄電池3を、通常時の動作モードから、積雪期モードに切り替える。これにより、ユーザは、蓄電池3の動作モードを切り替える必要をなくすことができる。
【0192】
(効果 3-2)エネルギーマネジメントシステム5は、電気湯を沸かす電気給湯器9を備える。電気給湯器9は、通常時に、太陽光発電設備2の余剰電力で電気給湯器9が湯沸かしを行う昼間沸き増しモードを行う。これにより、通常時の多い余剰電力を有効に自家消費することができる。電気給湯器9または制御部4は、積雪期間になったときに、電気給湯器9の昼間沸き増しモードを停止する。これにより、電気給湯器9は、夜間モードに戻って電気代の単価が安い夜間に沸き増しするようになるので、積雪期間でも経済的に使用することができる。
【0193】
(効果 3-3)エネルギーマネジメントシステム5では、太陽光発電設備2の余剰電力を、蓄電池3への充電と、電気給湯器9の昼間沸き増しモードによる湯沸かしとのうち、電気給湯器9の湯沸かしに優先的に使用する。これにより、余剰電力を電気給湯器9の湯沸かしに効率的に使用することができる。
【0194】
(効果 3-4)エネルギーマネジメントシステム5では、積雪期間は、地域ごとの太陽光発電設備2の発電量実績で判定する。発電量実績は、過去の履歴またはその年の発電量で判断する。積雪期間の判定は、コンピュータまたはユーザが行う。過去の履歴またはその年の発電量で判断された発電量実績は、地域ごとに分かり易くまとめてテーブル化することができるので、コンピュータまたはユーザは、まとめられたテーブルを使用することで、簡単かつ確実に積雪期間を判定することが可能になる。
【0195】
(効果 3-5)エネルギーマネジメントシステム5では、コンピュータによる積雪期間の判定は、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21のいずれかで行う。これにより、蓄電池3、制御部4、外部のサーバ21のいずれかは、内部に備えられた演算処理部を用いて積雪期間を判定することができる。
【0196】
なお、上記以外の構成は、上記各実施例のものと同様であり、上記各実施例と同様の作用効果を得ることができる。そして、上記各実施例の記載は、この実施例の記載とすることができる。
【符号の説明】
【0197】
1 建物
2 太陽光発電設備
3 蓄電池
4 制御部
5 エネルギーマネジメントシステム
7 商用電源(系統電力)
9 電気給湯器
21 サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9