(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065353
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】音処理装置、誘導装置、音提供方法、および、音提供プログラム
(51)【国際特許分類】
H04S 7/00 20060101AFI20240508BHJP
A63B 71/06 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H04S7/00 340
A63B71/06 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174176
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】518236513
【氏名又は名称】connectome.design株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 弥来
(72)【発明者】
【氏名】柴田 由之
(72)【発明者】
【氏名】松本 崇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA07
5D162CC06
5D162CD07
5D162CD25
5D162DA04
5D162EG06
(57)【要約】
【課題】特別な装置を敷設することなく、ユーザに移動速度を直感的に把握させることができる技術を提供する。
【解決手段】音処理装置は、ユーザの移動速度を取得する速度取得部と、ユーザの頭部に装着される音再生装置からユーザに提供される音の仮想的な発生源である音源の位置をユーザに対しての予め定められた相対位置として表現する、立体音響処理を施し、移動速度と予め定められた規定速度との関係に応じて音源の位置を変更する、処理部と、音再生装置から立体音響処理を施した音を再生する再生部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音処理装置であって、
ユーザの移動速度を取得する速度取得部と、
前記ユーザの頭部に装着される音再生装置から前記ユーザに提供される音の仮想的な発生源である音源の位置を前記ユーザに対しての予め定められた相対位置として表現する、立体音響処理を施し、前記移動速度と予め定められた規定速度との関係に応じて前記音源の位置を変更する、処理部と、
前記音再生装置から前記立体音響処理を施した前記音を再生する再生部と、を備える、音処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音処理装置であって、
前記処理部は、
前記移動速度が前記規定速度よりも遅い場合、前記ユーザの進行方向に前記音源の位置を移動させて前記立体音響処理を施し、
前記移動速度が前記規定速度よりも速い場合、前記進行方向と反対方向に前記音源の位置を移動させて前記立体音響処理を施す、音処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の音処理装置であって、
前記処理部は、
前記移動速度が前記規定速度よりも遅い場合、前記音源が前記ユーザを追い抜くように前記音源の位置を移動させて前記立体音響処理を施し、
前記移動速度が前記規定速度よりも速い場合、前記音源が前記ユーザに追い抜かれるように前記音源の位置を移動させて前記立体音響処理を施す、音処理装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の音処理装置を用いる誘導装置であって、
前記ユーザの位置を示す位置情報を取得する位置取得部を備え、
前記処理部は、
前記ユーザを前方右側に誘導する場合、前記音源の位置を、前記ユーザの位置を略中心として、右回りに移動させて前記立体音響処理を施し、
前記ユーザを前方左側に誘導する場合、前記音源の位置を、前記ユーザの位置を略中心として、左回りに移動させて前記立体音響処理を施す、誘導装置。
【請求項5】
ユーザにより携帯されるコンピュータが、立体音響処理を施した音を提供する音提供方法であって、
前記ユーザの移動速度を取得する速度取得工程と、
前記ユーザの頭部に装着される音再生装置から前記ユーザに提供される音の仮想的な発生源である音源の位置を前記ユーザに対しての予め定められた相対位置として表現する、前記立体音響処理を施し、前記移動速度と予め定められた規定速度との関係に応じて前記音源の位置を変更する処理工程と、
前記音再生装置から前記立体音響処理を施した前記音を再生する音再生工程と、を含む、音提供方法。
【請求項6】
立体音響処理を施した音を提供する音提供プログラムであって、
ユーザの移動速度を取得する速度取得機能と、
前記ユーザの頭部に装着される音再生装置から前記ユーザに提供される音の仮想的な発生源である音源の位置を前記ユーザに対しての予め定められた相対位置として表現する、前記立体音響処理を施し、前記移動速度と予め定められた規定速度との関係に応じて前記音源の位置を変更する処理機能と、
前記音再生装置から前記立体音響処理を施した前記音を再生する音再生機能と、をコンピュータに実現させる、音提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音処理装置、誘導装置、音提供方法、および、音提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、予め設定した速度を維持して走るトレーニングに用いる技術として、敷設設置したLED照明体を、設定した速度に応じて点灯する技術が記載されている。このLED照明体によって、ユーザは速度を直感的に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-35020号公報
【特許文献2】特開2015-79310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、多数のLED照明体を設置するする必要があるため、コストが高くなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の形態によれば音処理装置が提供される。この音処理装置は、ユーザの移動速度を取得する速度取得部と、前記ユーザの頭部に装着される音再生装置から前記ユーザに提供される音の仮想的な発生源である音源の位置を前記ユーザに対しての予め定められた相対位置として表現する、立体音響処理を施し、前記移動速度と予め定められた規定速度との関係に応じて前記音源の位置を変更する、処理部と、前記音再生装置から前記立体音響処理を施した前記音を再生する再生部と、を備える。
この音処理装置によれば、処理部は、ユーザの移動速度と規定速度との関係に応じて音源の位置を変えるよう音に立体音響処理を施すため、特別な装置を敷設することなく、ユーザに移動速度を直感的に把握させることができる。
(2)上記形態の音処理装置において、前記処理部は、前記移動速度が前記規定速度よりも遅い場合、前記ユーザの進行方向に前記音源の位置を移動させて前記立体音響処理を施し、前記移動速度が前記規定速度よりも速い場合、前記進行方向と反対方向に前記音源の位置を移動させて前記立体音響処理を施してもよい。
このような形態によれば、ユーザに移動速度を直感的に把握させることができる。
(3)上記形態の音処理装置において、前記処理部は、前記移動速度が前記規定速度よりも遅い場合、前記音源が前記ユーザを追い抜くように前記音源の位置を移動させて前記立体音響処理を施し、前記移動速度が前記規定速度よりも速い場合、前記音源が前記ユーザに追い抜かれるように前記音源の位置を移動させて前記立体音響処理を施してもよい。
このような形態によれば、ユーザに移動速度を直感的に把握させることができる。
(4)上記形態の音処理装置を用いる誘導装置は、前記ユーザの位置を示す位置情報を取得する位置取得部を備え、前記処理部は、前記ユーザを前方右側に誘導する場合、前記音源の位置を、前記ユーザ位置を略中心として、右回りに移動させて前記立体音響処理を施し、前記ユーザを前方左側に誘導する場合、前記音源の位置を、前記ユーザ位置を略中心として、左回りに移動させて前記立体音響処理を施にしてもよい。
このような形態によれば、ユーザを所望の位置に誘導させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】音提供処理の一例を示したフローチャートである。
【
図3】ユーザと仮想的な音源の位置との位置関係の一例を表した図である。
【
図4】ユーザの移動速度と規定速度との関係の一例を示した図である。
【
図5】第2実施形態における、音源の位置の一例を示す図である。
【
図6】第3実施形態における音提供システムの構成を示す図である。
【
図7】第3実施形態における、音源の位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態に係る音提供システム100の構成を示す図である。音提供システム100は、ユーザの移動速度に応じて、音源の位置を変えた音をユーザに提供する。音提供システム100は、音処理装置110と、サーバ120と、音再生装置130とを含む。
【0009】
音処理装置110は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータである。音処理装置110は、図示しない記憶領域に予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、移動速度取得部10と処理部30と音再生部40との、これらの各部の機能を実現する。ただし、これらの各部の機能の一部又は全部をハードウエア回路で実現してもよい。本実施形態においては、音処理装置110は、ユーザが保有するスマートウォッチである。音処理装置110には、ユーザに音によりユーザの走る速さに応じた音を提供するためのプログラムがインストールされている。ユーザは、プログラムを実行することにより、音提供システム100から走る速さに応じた音の提供を受けることができる。
【0010】
移動速度取得部10は、ユーザの移動速度を取得する。移動速度取得部10は、例えば、GPS(Global Positioning System)などの汎地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System(s)(GNSS))が検出した位置情報の移動履歴から、移動速度を算出する。本実施形態において、移動速度取得部10は、音処理装置110が備えるGPSアンテナ(図示せず)から取得したユーザ位置を示す経緯度を用いて移動速度を取得する。
【0011】
処理部30は、立体音響処理を音に施す。より具体的には、ユーザの頭部に装着される音再生装置130からユーザに提供される音の仮想的な発生源である音源の位置を、ユーザに対しての予め定められた相対位置としてユーザに認識されるように表現するように、立体音響処理を音に施す。一般的に、立体音響処理とは、音再生装置130により右耳および左耳から再生される音に、音量差、時間差、周波数特性の変化、位相の変化、残響の変化、の少なくとも一つ以上の処理を取り入れることにより音環境を立体的に再現させる処理である。立体音響処理の詳細については後述する。
【0012】
音再生部40は、処理部30が立体音響処理を施した音を音再生装置130に出力し、再生させる。
【0013】
サーバ120は、記憶部20を有する。記憶部20は、例えば、RAM、ROM、ハードディスクドライブ(HDD)である。記憶部20は、音処理装置110で処理を行い音再生装置130で再生する音を記憶している。
【0014】
音再生装置130は、音処理装置110から受信した信号が表す音を再生して出力する携帯型の装置である。音再生装置130は、ユーザの頭部に装着される装置であり、例えば、両耳に装着されるイヤホンやヘッドホンである。ユーザは、音再生装置130を頭部に装着して、ジョギングやランニング等のトレーニングを行う。
【0015】
図2は、音提供処理の一例を示したフローチャートである。音提供処理は、音提供システム100が音によりユーザに情報を提供する処理である。この処理は音提供システム100の動作中、所定の時間間隔で繰り返し実行される処理である。例えば、音提供システム100は、2秒毎に音提供処理を繰り返す。移動速度取得部10は、ステップS100においてユーザの移動速度を取得する。この工程を「速度取得工程」ともいう。本実施形態において、移動速度取得部10は、GPSアンテナを介して取得したユーザ位置の座標を示す位置情報を用いて移動速度を取得する。
【0016】
処理部30は、ステップS110において、ステップS100で取得した移動速度に応じて、音源の位置を変更させるよう音に立体音響処理を施す。この工程を「処理工程」ともいう。立体音響処理には、例えば、既存の立体音響の生成のためのアルゴリズムが使用される。音再生部40は、例えば、音処理装置110の記憶領域に記憶された立体音響処理プログラムを実行して、音に立体音響処理を施す。音に立体音響処理を施すことにより、右耳に再生される音のタイミングおよび音圧と、左耳に再生される音のタイミング及び音圧とに差異を生じさせることができる。例えば、音源に近い側の耳に再生される音のタイミングを、音源に遠い側の耳に再生される音のタイミングより早くし、音源に近い側の耳に再生される音の音圧を、音源に遠い側の耳に再生される音の音圧より大きくする。また、ユーザと音源との距離が大きくなるにつれて、音量を小さくするように立体音響処理を施す。これにより、ユーザに対する所望の位置に音源があるように表現できる。移動速度に応じた立体音響処理の詳細については後述する。
【0017】
音再生部40は、ステップS120において、ステップS110で処理部30が立体音響処理を施した音を音再生装置130に再生させる。この工程を「音再生工程」ともいう。
【0018】
図3は、ユーザPと仮想的な音源SSの位置との位置関係の一例を表した図である。以下では、処理部30が、ユーザが音源SSから音が再生されているよう認識できるように音に立体音響処理を施す場合を例として説明する。
図3においては、ユーザPと音源SSとをユーザの頭上から見た様子を表している。音源SSの位置情報は、音毎に記憶部20に記憶されていてもよく、ユーザが予め指定して情報が音処理装置110の記憶領域に記憶されもよい。音源SSの位置は、ユーザPの周囲を示す位置であり、真上や真下以外であることが好ましい。
【0019】
まず、処理部30は、選択された音の音源SSの位置情報を記憶部20から読み出す。位置情報は、ユーザPに対する音源の相対位置を示す情報である。より具体的には、位置情報は、水平面内において、ユーザPの正面方向Nに対する、ユーザPからみた音源SSの方向の相対的な角度r1と、音源SSまでの距離を含む情報である。なお、位置情報は、ユーザPに対する音源の相対位置を示す座標情報を含んでいてもよい。
【0020】
続いて、処理部30は、音源SSの位置情報と、音波が頭部や身体、耳介などでの反射や回折を経てユーザPの外耳道入口に到来するまでの伝達特性を記述した関数である頭部伝達関数とを用いて、音に立体音響処理を施す。
【0021】
図3に示すように、ユーザPと音源SSとの位置関係は、右耳Erの方が左耳Elよりも音源SSに近くに位置するようになっている。そのため、立体音響処理を施された音は、右耳Erに再生される音のタイミングが、左耳Elに再生される音のタイミングより早い。また、右耳Erに再生される音の音圧は、左耳Elに再生される音の音圧より大きい。これにより、ユーザPは、立体音響処理を施された音が、ユーザの右斜め前である音源SSから再生されているように感じる。
【0022】
図4は、ユーザPと仮想的な音源SSの位置との位置関係の一例を示した図である。以下では、予め定められた音源SSの位置はユーザPの右横に示す位置P0であり、ユーザPの移動速度は速度Vhであり、規定速度は速度Vthである場合を例として説明する。本実施形態において、処理部30は、移動速度が規定速度よりも遅い場合、ユーザPの進行方向Dに音源SSの位置を移動させて立体音響処理を施す。より具体的には、処理部30は、音源SSの位置を位置P0から位置P2に移動させて立体音響処理を施す。また、処理部30は、移動速度が規定速度よりも速い場合、進行方向Dと反対方向に音源SSの位置を移動させて立体音響処理を施す。より具体的には、処理部30は、音源SSの位置を位置P0から位置P1に移動させて立体音響処理を施す。移動速度が規定速度よりも遅い場合、音源SSの位置は、ユーザPの右横から、ユーザPの右斜め前である位置P2に移動するため、ユーザPが音源SSを追いかけるように移動速度を速くする効果が得られる。
【0023】
本実施形態において、処理部30は、移動速度と規定速度との速度の差に応じて、音源を移動させる距離を決定する。処理部30は、例えば、ユーザが規定速度で、より具体的には、処理部30は、次の式(1)で移動させる距離Lを求めることができる。
【0024】
L=k×(Vth-Vh)…(1)
ここでは予め定められた係数である。
【0025】
以上で説明した本実施形態の音処理装置110によれば、処理部30は、ユーザの移動速度と規定速度との関係に応じて音源の位置を変えるよう音に立体音響処理を施す。これによってユーザに移動速度を直感的に把握させることができる。そのため、特別な装置を敷設することなく、ユーザに移動速度を直感的に把握させることができる。
【0026】
B.第2実施形態:
第2実施形態は、処理工程(
図2、ステップS110参照)において、処理部30が、移動速度と規定速度との関係に応じて、音源の位置をユーザが追い抜く、または追い抜かれるように移動させる点が、第1実施形態と異なり、他の工程は同一である。第2実施形態の音提供システム100の構成は、第1実施形態の音提供システム100の構成と同一であるため、音提供システム100の構成の説明は省略する。
【0027】
第2実施形態において、処理部30は、移動速度が規定速度よりも遅い場合、音源SSがユーザPを追い抜くように、音源SSの位置を移動させて立体音響処理を施す。また、処理部30は、移動速度が規定速度よりも速い場合、音源SSがユーザPに追い抜かれるように、音源SSの位置を移動させて音に立体音響処理を施す。
【0028】
図5は、第2実施形態における、音源SSの位置の一例を示す図である。例えば、処理部30は、立体音響処理において、移動速度が規定速度よりも遅い場合、音源SSをユーザの進行方向に移動させ、進行方向においてユーザから予め定められた距離離れた位置まで音源SSを移動させた後に、進行方向と反対方向においてユーザから予め定められた距離離れた位置に音源SSを移動させる。
図5に示すように、移動速度が規定速度と同じ速さであるタイミングt1において、処理部30は、音源SSが位置P0に位置するように音に立体音響処理を施す。移動速度が規定速度より遅いタイミングt2において、処理部30は、音源SSが位置P2に位置するように音に立体音響処理を施す。
【0029】
その後、処理部30は、音源SSをユーザPの進行方向Dに移動させる。
図5に示すように、タイミングt2よりも後の、移動速度が規定速度より遅いタイミングt3において、処理部30は、音源SSが位置P1に位置するように音に立体音響処理を施す。処理部30は、移動速度が規定速度以上となるまで、これらの立体音響処理を繰り返す。これにより、例えば、移動速度が規定速度以上となるまで音源SSが、繰り返しユーザPを追い抜く。
【0030】
以上で説明した第2実施形態の音処理装置110によれば、処理部30は、移動速度が規定速度よりも遅い場合、音源がユーザを追い抜くように、立体音響処理を施す。また、処理部30は、移動速度が規定速度よりも速い場合、音源がユーザに追い抜かれるように、立体音響処理を施す。そのため、ユーザに移動速度を直感的に把握させることができる。
【0031】
C.第3実施形態:
図6は、第3実施形態における音提供システム100Cの構成を示す図である。第3実施形態の音提供システム100Cは、誘導装置111を備える点が、第1実施形態の音提供システム100と異なる。
【0032】
誘導装置111は、音処理装置110と位置取得部50とを備える。CPUや、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータである。誘導装置111は、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、位置取得部50の機能を実現する。ただし、機能の一部又は全部をハードウエア回路で実現してもよい。誘導装置111は、ユーザを予め定められた位置に誘導する装置である。ユーザを誘導する位置は、ユーザによって定められてもよい。
【0033】
位置取得部50は、現在のユーザの位置であるユーザ位置を示す位置情報を取得する。位置取得部50は、例えば、GPSなどの汎地球航法衛星システムが検出した位置情報を取得する。本実施形態において、位置取得部50は、音処理装置110が備えるGPSアンテナ(図示せず)から位置情報を取得する。
【0034】
処理部30は、ユーザを前方右側に誘導する場合、音源の位置を、ユーザ位置を略中心として、右回りに移動させて立体音響処理を施す。また、処理部30は、ユーザを前方左側に誘導する場合、音源の位置を、ユーザ位置を略中心として、左回りに移動させて立体音響処理を施す。
【0035】
図7は、第3実施形態における、音源SSの位置の一例を示す図である。例えば、予め定められた音源SSの位置が、ユーザPの右隣である位置P0である場合、処理部30は、音源SSがユーザPを中心として矢印D2が示すように左回りに移動するように、音に音響処理を施す。これにより、音源SSがユーザPの右隣からユーザPの正面に移動するため、ユーザPは、音源SSとの距離および位置関係を保つように直感的に音源SSを避けるべく、矢印D3が示すように前方左側へと移動する。そのためユーザPを前方左側に誘導する事ができる。なお、再生される音は、音楽や、ニュース、英会話等の任意の音を採用できる。音は、不快音や威嚇するような音である必要はなく、音は通常の音楽で良い。そのため、ユーザには音を楽しみ続けてもらいながら誘導することができる。
【0036】
以上で説明した第3実施形態の誘導装置111によれば、処理部30は、ユーザを誘導させる位置に応じて、音源の位置を移動させる。そのため、ユーザを所望の位置に誘導させることができる。
【0037】
D.他の実施形態:
(D1)上述した実施形態において、音群情報は、サーバ120に記憶されている。これに限らず、音群情報は音処理装置110に記憶されていてもよい。すなわち、音処理装置110が記憶部20を備えていてもよい。また、音処理装置110はスマートウォッチに限らず、スマートフォンでもよい。
【0038】
(D2)上述した実施形態において、音再生装置130が音再生部40を備えていてもよい。
【0039】
(D3)上述した実施形態において、音源は1つである。これに限らず、音源は複数でもよい。例えば、ユーザの左右両方に音源が位置してもよい。
【0040】
(D4)上述した実施形態において、処理部30は、移動速度が規定速度よりも遅い場合、ユーザの進行方向に音源の位置を移動させて立体音響処理を施している。また、処理部30は、移動速度が規定速度よりも速い場合、進行方向と反対方向に音源の位置を移動させて立体音響処理を施している。これに限らず、処理部30は、移動速度が予め定められた速度範囲外である場合に、音源の位置を移動させて立体音響処理を施してもよい。すなわち、処理部30は、移動速度が予め定められた第1規定速度よりも遅い場合、ユーザの進行方向に音源の位置を移動させて立体音響処理を施し、移動速度が第1規定速度よりも速い第2規定速度よりも速い場合、進行方向と反対方向に音源の位置を移動させて立体音響処理を施してもよい。
【0041】
(D5)上述した第1実施形態において、処理部30は、式(1)を用いて音源を移動させる距離を定めている。すなわち、処理部30は、移動速度と規定速度との単純な差の大きさに応じて、音源を移動させる距離を定めている。これに限らず、処理部30は、例えば、移動速度と規定速度との差の大きさの3乗に応じて、音源を移動させる距離を定めてもよい。これにより、移動速度と規定速度との差をより直感的に把握することができる。
【0042】
(D6)上述した第3実施形態において、誘導装置111は、音処理装置110を備えている。これに限らず、音提供システム100Cが音処理装置110と誘導装置111とを備えていればよく、誘導装置111は位置取得部50のみを備え、音処理装置110と音処理装置110とは異なる装置であってもよい。
【0043】
(D7)上述した第3実施形態において、誘導装置111は、カーナビゲーションシステムに用いられてもよい。また、上述した実施形態において、音処理装置110は、車両の運転支援システムに用いられてもよい。この場合、音再生装置130は、開放型イヤホンであることが好ましい。
【0044】
(D8)上述した第3実施形態において、処理部30は、ユーザ位置を中心として、音源の位置を回転移動させている。これに限らず、処理部30は、ユーザ近辺の任意の位置を中心として音源の位置を回転移動させてもよい。
【0045】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
10…移動速度取得部、20…記憶部、30…処理部、40…音再生部、50…位置取得部、100、100C…音提供システム、110…音処理装置、111…誘導装置、120…サーバ、130…音再生装置