(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066501
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、及び、粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20240508BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240508BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240508BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20240508BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/08
C09J7/38
C09J7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185738
(22)【出願日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2022174517
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】谷元 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】緒方(辻) 渚
(72)【発明者】
【氏名】緒方 雄大
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB04
4J004DB03
4J004EA06
4J004FA08
4J040DF021
4J040EF282
4J040GA02
4J040GA05
4J040GA07
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040LA08
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】優れた高温接着性とポリオレフィンに対する優れた接着強度とを両立する粘着剤組成物を提供する。また、該粘着剤組成物を含有する粘着剤層を有する粘着テープを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、極性官能基含有モノマーに由来する構成単位と、末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位とを有するアクリル系共重合体、テルペン系樹脂で軟化点が120℃より大きく180℃以下である粘着付与樹脂T1、並びに、石油系樹脂、ロジン系樹脂、及び、キシレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種で軟化点が120℃より大きく180℃以下である粘着付与樹脂T2を含有し、前記アクリル系共重合体100質量部に対して、前記粘着付与樹脂T1の含有量が5質量部以上20質量部以下であり、前記アクリル系共重合体100質量部に対して、前記粘着付与樹脂T2の含有量が10質量部以上50質量部以下である粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、極性官能基含有モノマーに由来する構成単位と、末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位とを有するアクリル系共重合体、
テルペン系樹脂で軟化点が120℃より大きく180℃以下である粘着付与樹脂T1、並びに、
石油系樹脂、ロジン系樹脂、及び、キシレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種で軟化点が120℃より大きく180℃以下である粘着付与樹脂T2を含有し、
前記アクリル系共重合体100質量部に対して、前記粘着付与樹脂T1の含有量が5質量部以上20質量部以下であり、
前記アクリル系共重合体100質量部に対して、前記粘着付与樹脂T2の含有量が10質量部以上50質量部以下である
ことを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体100質量部に対して、軟化点が120℃以下である粘着付与樹脂の含有量が5質量部以下である請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記粘着付与樹脂T1が、テルペンフェノール樹脂を含む請求項1又は2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記粘着付与樹脂T2が、前記石油系樹脂及び前記ロジン系樹脂を含む請求項1又は2記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記アクリル系共重合体100質量部に対して、前記石油系樹脂の含有量が15質量部以上25質量部以下である請求項1又は2記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記アクリル系共重合体100質量部に対して、前記ロジン系樹脂の含有量が15質量部以上25質量部以下である請求項1又は2記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位は、エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有し、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位中、前記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が75質量%以上100質量%以下、かつ、
エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有さない、又は、前記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有し、前記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有する場合、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位中、前記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が25質量%以下である
請求項1又は2記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
基材層と、請求項1又は2記載の粘着剤組成物を含有する粘着剤層とを有する粘着テープ。
【請求項9】
前記粘着剤層のゲル分率は、10質量%以上70質量%以下である請求項8記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記基材層が、発泡構造を有する請求項8記載の粘着テープ。
【請求項11】
前記粘着剤組成物における、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位は、エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有し、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位中、前記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が75質量%以上100質量%以下、かつ、
エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有さない、又は、前記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有し、前記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有する場合、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位中、前記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が25質量%以下であって、
前記粘着剤組成物における、前記粘着付与樹脂T2は、前記石油系樹脂及び前記ロジン系樹脂を含み、
前記アクリル系共重合体100質量部に対して、前記石油系樹脂の含有量が15質量部以上25質量部以下、かつ、前記ロジン系樹脂の含有量が10質量部以上20質量部以下であり、
前記粘着剤層のゲル分率は、10質量%以上40質量%以下であり、
前記粘着テープ全体の厚みが、650μm以下である
請求項8記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物に関する。また、本発明は、該粘着剤組成物を含有する粘着剤層を有する粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品の組み立てのために粘着テープが用いられている。例えば、携帯電話、携帯情報端末(Personal Digital Assistants、PDA)等の携帯電子機器の組み立てのために粘着テープが用いられている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-242541号公報
【特許文献2】特開2009-258274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車輌部品を固定する用途に用いられる粘着剤組成物や粘着テープには、鋼板はもちろん、車輌部品によく用いられるポリプロピレン等のポリオレフィンに対する接着強度が求められる。また、使用環境が高温になり得るため、高温環境下でも充分な接着強度を有する必要がある。従来、ポリオレフィンに対する接着強度と高温接着性とを両立するためには、粘着テープを張り合わせる際にプライマー塗布等の易接着処理を被着体であるポリオレフィンに施す必要があったが、作業工程の増加等の観点から易接着処理がないことが求められていた。
【0005】
本発明は、優れた高温接着性とポリオレフィンに対する優れた接着強度とを両立する粘着剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該粘着剤組成物を含有する粘着剤層を有する粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示1は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、極性官能基含有モノマーに由来する構成単位と、末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位とを有するアクリル系共重合体、テルペン系樹脂で軟化点が120℃より大きく180℃以下である粘着付与樹脂T1、並びに、石油系樹脂、ロジン系樹脂、及び、キシレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種で軟化点が120℃より大きく180℃以下である粘着付与樹脂T2を含有し、上記アクリル系共重合体100質量部に対して、上記粘着付与樹脂T1の含有量が5質量部以上20質量部以下であり、上記アクリル系共重合体100質量部に対して、上記粘着付与樹脂T2の含有量が10質量部以上50質量部以下である粘着剤組成物である。
本開示2は、上記アクリル系共重合体100質量部に対して、軟化点が120℃以下である粘着付与樹脂の含有量が5質量部以下である本開示1の粘着剤組成物である。
本開示3は、上記粘着付与樹脂T1が、テルペンフェノール樹脂を含む本開示1又は2の粘着剤組成物である。
本開示4は、上記粘着付与樹脂T2が、上記石油系樹脂及び上記ロジン系樹脂を含む請求項1、2又は3の粘着剤組成物である。
本開示5は、上記アクリル系共重合体100質量部に対して、上記石油系樹脂の含有量が15質量部以上25質量部以下である本開示1、2、3又は4の粘着剤組成物である。
本開示6は、上記アクリル系共重合体100質量部に対して、上記ロジン系樹脂の含有量が15質量部以上25質量部以下である本開示1、2、3、4又は5の粘着剤組成物である。
本開示7は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位は、エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有し、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位中、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が75質量%以上100質量%以下、かつ、エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有さない、又は、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有し、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有する場合、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位中、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が25質量%以下である本開示1、2、3、4、5又は6の粘着剤組成物である。
本開示8は、基材層と、本開示1、2、3、4、5、6又は7の粘着剤組成物を含有する粘着剤層とを有する粘着テープである。
本開示9は、上記粘着剤層のゲル分率は、10質量%以上70質量%以下である本開示8の粘着テープである。
本開示10は、上記基材層が、発泡構造を有する本開示8又は9の粘着テープである。
本開示11は、上記粘着剤組成物における、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位は、エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有し、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位中、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が75質量%以上100質量%以下、かつ、エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有さない、又は、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有し、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有する場合、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位中、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が25質量%以下であって、上記粘着剤組成物における、上記粘着付与樹脂T2は、上記石油系樹脂及び上記ロジン系樹脂を含み、上記アクリル系共重合体100質量部に対して、上記石油系樹脂の含有量が15質量部以上25質量部以下、かつ、上記ロジン系樹脂の含有量が10質量部以上20質量部以下であり、上記粘着剤層のゲル分率は、10質量%以上40質量%以下であり、上記粘着テープ全体の厚みが、650μm以下である本開示8、9又は10の粘着テープである。
以下、本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、粘着剤組成物の組成を検討し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、極性官能基含有モノマーに由来する構成単位と、末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位とを有するアクリル系共重合体を用いて検討した結果、粘着剤組成物の粘着力が向上することを見出した。更に、本発明者らは、このような粘着剤組成物に含有させる粘着付与樹脂について、軟化点の高い特定の粘着付与樹脂の組み合わせを用いることを検討した。その結果、優れた高温接着性とポリオレフィンに対する優れた接着強度とを両立することができる粘着剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位と、末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位とを有するアクリル系共重合体を含有する。
なお、本明細書中において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
上記アクリル系共重合体は、末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位が相互作用によって凝集し、擬似的な架橋点を形成した構造となっている。上記アクリル系共重合体がこのような構造を取ることで、上記粘着剤組成物は、ひずみが小さいときは架橋された粘着剤組成物のように硬い性質を示し、保持力が向上する。一方、剥離応力がかかってひずみが大きくなったときは、上記擬似的な架橋が切れて、上記アクリル系共重合体の分子が伸びることから、上記粘着剤組成物は、柔軟性が高い性質を示し、粘着力が向上する。つまり、上記粘着剤組成物が上記アクリル系共重合体を含有することで、上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とが向上する。
【0009】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸と直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1以上24以下のアルキル基を有するアルコールとを脱水縮合した(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル等が挙げられる。なお、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0010】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位は、エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有することが好ましい。上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有することにより、上記アクリル系共重合体の極性がより大きくなり、被着体との相互作用がより高まることで、上記粘着剤組成物の粘着力がより向上する。
【0011】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位中、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量の好ましい下限は75質量%である。上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が75質量%以上であることにより、上記アクリル系共重合体の極性が大きくなり、被着体との相互作用が高まることで、上記粘着剤組成物の粘着力が向上する。また、上記アクリル系共重合体の弾性率がより大きくなるため、高温環境下における上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とがより向上する。上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は90質量%である。
また、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量の上限は100質量%、即ち、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位は、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位のみから構成されていてもよい。
【0012】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位は、エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有していてもよい。
上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有する場合、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位中、上記エステル結合の酸素原子に結合している炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量の好ましい上限は25質量%である。上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が25質量%以下であることにより、上記アクリル系共重合体の極性がより大きくなり、被着体との相互作用がより高まることで、上記粘着剤組成物の粘着力がより向上する。また、上記アクリル系共重合体の弾性率がより大きくなるため、高温環境下における上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とがより向上する。上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量のより好ましい上限は10質量%であり、上記粘着剤組成物は上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有さないことが更に好ましい。
【0013】
上記アクリル系共重合体中、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量の好ましい下限は50質量%であり、好ましい上限は90質量%である。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が上記の範囲内であることにより、粘着剤組成物が粘着力を発揮するための充分な柔軟性と凝集力とをより容易に両立することができる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は60質量%、更に好ましい下限は65質量%であり、より好ましい上限は80質量%、更に好ましい上限は75質量%である。
【0014】
上記末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体は、片末端に重合性不飽和二重結合を有していてもよく、両末端に重合性不飽和二重結合を有していてもよい。なかでも、適度な数の擬似的な架橋が形成されやすい観点から、片末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体が好ましい。
【0015】
上記末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体としては、例えば、片末端又は両末端に重合性不飽和二重結合を有する基を有する、エチレン-ブチレン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン重合体、プロピレン重合体、ブチレン重合体等が挙げられる。
なお、これらの末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記重合性不飽和二重結合を有する基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、スチリル基等が挙げられる。なかでも、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合性に優れることから、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
なお、本明細書中において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0017】
上記末端に(メタ)アクリロイル基を有するオレフィン系重合体としては、例えば、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するエチレンマクロモノマー、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するプロピレンマクロモノマー、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するエチレン-ブチレンマクロモノマー、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するエチレン-プロピレンマクロモノマー等が挙げられる。なかでも、後述するガラス転移温度を満たしやすくなり、上記粘着剤組成物の粘着力がより向上することから、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するエチレン-ブチレンマクロモノマー、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するエチレン-プロピレンマクロモノマーが好ましい。
なお、本明細書中において、「マクロモノマー」とは、重合可能な官能基を有する重量平均分子量1000以上10万以下程度のモノマーを指す。
【0018】
上記アクリル系共重合体中、上記末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位の含有量の好ましい下限は5質量%であり、好ましい上限は30質量%である。上記末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位の含有量が5質量%以上であることにより、上記アクリル系共重合体は適度な数の擬似的な架橋が形成され、上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とがより向上する。上記末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位の含有量が30質量%以下であることにより、上記粘着剤組成物の凝集破壊をより抑えることができる。上記末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は8質量%、更に好ましい下限は10質量%であり、より好ましい上限は27質量%、更に好ましい上限は25質量%である。
【0019】
上記アクリル系共重合体は、極性官能基含有モノマーに由来する構成単位を有する。
上記アクリル系共重合体が上記極性官能基含有モノマーに由来する構成単位を有することにより、被着体との相互作用が高まるため、上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とが向上する。また、上記粘着剤組成物が後述する架橋剤を含有する場合には、上記アクリル系共重合体が架橋剤を介して架橋された構造を有することにより、粘着剤組成物の粘着力と保持力とが向上する。このときの架橋度を調整することにより、後述する粘着剤層のゲル分率を適切な範囲に調整することができる。
【0020】
上記極性官能基含有モノマーに由来する構成単位としては、例えば、カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位、水酸基含有モノマーに由来する構成単位、アミド基含有モノマーに由来する構成単位、アミノ基含有モノマーに由来する構成単位等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とが更に向上する観点から、上記極性官能基含有モノマーに由来する構成単位は、カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位、及び、水酸基含有モノマーに由来する構成単位からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位を含むことが好ましい。
なお、これらの極性官能基含有モノマーに由来する構成単位は単独で有していてもよく、2種以上を有してしてもよい。
【0021】
上記アクリル系共重合体が、上記カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位を有することにより、被着体との相互作用がより大きくなるため、上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とがより向上する。
上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイル酢酸、(メタ)アクリロイルプロピオン酸、(メタ)アクリロイル酪酸、(メタ)アクリロイルペンタン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。
【0022】
上記アクリル系共重合体が、上記水酸基含有モノマーに由来する構成単位を有することにより、上記アクリル系共重合体の架橋剤を介する架橋がより起こりやすくなり、上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とがより向上する。
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0023】
上記アクリル系共重合体中、上記水酸基含有モノマーに由来する構成単位の含有量の好ましい下限は0.01質量%であり、好ましい上限は2質量%である。上記水酸基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が0.01質量%以上であることにより、上記アクリル系共重合体の架橋剤を介する架橋がより起こりやすくなり、上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とがより向上する。上記水酸基含有モノマーに由来する構成単位の含有量が2質量%以下であることにより、上記アクリル系共重合体が硬くなりすぎず、上記粘着剤組成物の粘着力がより向上する。上記水酸基含有モノマーに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は0.05質量%であり、より好ましい上限は1質量%である。
【0024】
上記アミド基含有モノマーとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0025】
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2-ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0026】
上記アクリル系共重合体中、上記極性官能基含有モノマーに由来する構成単位の合計含有量の好ましい下限は0.1質量%であり、好ましい上限は10質量%である。上記極性官能基含有モノマーに由来する構成単位の合計含有量が0.1質量%以上であることにより、上記アクリル系共重合体と被着体との相互作用がより高まるため、上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とがより向上する。また、上記粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合には、上記アクリル系共重合体の架橋剤を介する架橋がより起こりやすくなり、上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とがより向上する。上記極性官能基含有モノマーに由来する構成単位の合計含有量が10質量%以下であることにより、上記アクリル系共重合体が硬くなりすぎず、上記粘着剤組成物の粘着力がより向上する。上記極性官能基含有モノマーに由来する構成単位の合計含有量のより好ましい下限は1質量%、更に好ましい下限は3質量%であり、より好ましい上限は8質量%、更に好ましい上限は6質量%である。
【0027】
上記アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は-100℃以上200℃以下の範囲内であることが好ましく、より好ましい上限は-20℃である。上記アクリル系共重合体のガラス転移温度が-20℃以下であることにより、上記アクリル系共重合体の分子がより伸びやすくなるため、上記粘着剤組成物の粘着力がより向上する。上記アクリル系共重合体のガラス転移温度の更に好ましい上限は-30℃、特に好ましい上限は-35℃である。また、上記粘着剤組成物が上記アクリル系共重合体を複数含有する場合には、上記粘着剤組成物に含有されるすべての上記アクリル系共重合体のガラス転移温度が-20℃以下であることが好ましい。
なお、上記アクリル系共重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定により測定することができる。より具体的には、窒素雰囲気下(窒素フロー、流量50mL/min)、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、「220C」等)を用いて、JIS K6240:2011に準拠した方法で、測定温度-100℃~200℃、昇温速度10℃/minの条件下で測定を行うこと等により、上記アクリル系共重合体のガラス転移温度を測定することができる。
【0028】
上記アクリル系共重合体のガラス転移温度は、上記アクリル系共重合体の材料となるモノマーの種類や量によって調節することができる。
【0029】
上記アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)の好ましい下限は50万であり、好ましい上限は200万である。上記アクリル系共重合体の重量平均分子量が50万以上であることにより、上記粘着剤組成物のバルクの凝集力が大きくなり、上記粘着剤組成物の粘着力と耐熱性とがより向上する。上記アクリル系共重合体の重量平均分子量が200万以下であることにより、上記粘着剤組成物が硬くなりすぎず、粘着力がより向上する。上記アクリル系共重合体の重量平均分子量のより好ましい下限は65万であり、より好ましい上限は150万である。
【0030】
上記アクリル系共重合体の多分散度の好ましい下限は1.0であり、好ましい上限は6.0である。上記アクリル系共重合体の多分散度が上記範囲内にあることにより、上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とがより向上する。上記アクリル系共重合体の多分散度のより好ましい下限は1.5であり、より好ましい上限は4.5である。
なお、上記多分散度は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を意味する。
【0031】
本明細書中において、上記重量平均分子量、上記数平均分子量、及び、上記多分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、測定したポリスチレン換算の分子量分布から求めることができる。具体的には、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Waters社製、「2690 Separations Module」等)を用いて、以下の条件で測定すること等により、求めることができる。
溶媒:テトラヒドロフラン
サンプル流量:1mL/min
検出器:示差屈折系RI
カラム:GPC KF-806L(昭和電工社製)
カラム温度(測定温度):40℃
注入量:20μL
【0032】
上記粘着剤組成物中、上記アクリル系共重合体の含有量は特に限定されないが、上記粘着剤組成物中で50質量%より大きいこと(すなわち、粘着剤組成物中の主成分であること)が好ましい。上記アクリル系共重合体の含有量が50%より大きいことにより、上記粘着剤組成物の粘着力と保持力とがより向上しやすくなる。
【0033】
本発明の粘着剤組成物は、テルペン系樹脂で軟化点が120℃より大きく180℃以下である粘着付与樹脂T1と、石油系樹脂、ロジン系樹脂、及び、キシレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種で軟化点が120℃より大きく180℃以下である粘着付与樹脂T2とを含有する。
上記粘着付与樹脂T1は、上記アクリル系共重合体との相溶性が良いため、上記アクリル系共重合体の内部に取り込まれやすい。その結果、上記末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位の相互作用による擬似的な架橋の形成を、粘着付与樹脂が阻害することを抑えることができるため、上記アクリル系共重合体の優れた粘着力を維持したまま、上記粘着剤組成物の粘着力を向上することができる。
また、上記粘着剤組成物が上記粘着付与樹脂T2を含有することにより、上記粘着剤組成物のポリオレフィンに対する接着強度が向上する。
【0034】
上記粘着付与樹脂T1及び上記粘着付与樹脂T2の軟化点は、120℃より大きく180℃以下である。
上記粘着付与樹脂T1及び上記粘着付与樹脂T2の軟化点が120℃より大きいことにより、上記粘着付与樹脂が耐熱性に優れ、高温における耐クリープ性が向上するため、上記粘着剤組成物の高温接着性が向上する。上記粘着付与樹脂T1及び上記粘着付与樹脂T2の軟化点が180℃以下であることにより、上記粘着剤層が硬くなりすぎず、上記粘着剤組成物の粘着力が向上する。上記粘着付与樹脂T1及び上記粘着付与樹脂T2の軟化点の好ましい下限は130℃、より好ましい下限は140℃であり、好ましい上限は170℃、より好ましい上限は160℃である。
なお、本明細書中において、上記粘着付与樹脂の軟化点の測定はJIS K2207の環球法により測定することができる。
【0035】
上記テルペン系樹脂は、テルペン化合物を重合させて得られた樹脂である。
上記テルペン化合物としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン、δ-3-カレン、ジメチルオクタトリエン、アロオシメン、ミルセン、オシメン、リナロール、コスメン等が挙げられる。
また、上記テルペン系樹脂内は、他の化合物が重合されていてもよい。なかでも、上記テルペン化合物と上記フェノール化合物とを重合させて得られたテルペンフェノール樹脂やその水素化体である水添テルペンフェノール樹脂が好ましい。上記粘着付与樹脂T1がテルペンフェノール樹脂を含むことにより、上記粘着剤組成物は被着体との相互作用がより高まり、上記粘着剤組成物の粘着力がより向上する。
上記フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ノリルフェノール、メトキシフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタレン、レゾルシノール、ピロカテコール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、フロログルシノール等が挙げられる。
なお、上記テルペン化合物、上記他の化合物、上記フェノール化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
軟化点が120℃より大きく180℃以下である上記テルペン系樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSレジンPX1250、YSポリスターG150(いずれもヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0037】
上記アクリル系共重合体100質量部に対して、上記粘着付与樹脂T1の含有量の下限は5質量部であり、上限は20質量部である。上記粘着付与樹脂T1の含有量が5質量部以上であることにより、上記粘着剤組成物の粘着力が向上する。上記粘着付与樹脂T1の含有量が20質量部以下であることにより、上記粘着剤組成物が硬くなりすぎず、上記粘着剤組成物の粘着力が向上する。上記粘着付与樹脂T1の含有量の好ましい下限は8質量部、より好ましい下限は10質量部であり、好ましい上限は17質量部、より好ましい上限は15質量部である。
【0038】
上記石油系樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、及び、これらの石油樹脂を水素化した脂肪族飽和炭化水素樹脂や脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリオレフィンに対する接着強度の向上の観点から、石油樹脂を水素化した脂肪族飽和炭化水素樹脂や脂環族飽和炭化水素樹脂が好ましい。
【0039】
軟化点が120℃より大きく180℃以下である上記石油系樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、アルコンP-140(荒川化学工業社製)等が挙げられる。
【0040】
上記アクリル系共重合体100質量部に対して、上記石油系樹脂の含有量の好ましい下限は15質量部であり、好ましい上限は25質量部である。上記石油系樹脂の含有量が15質量部以上であることにより、上記粘着剤組成物のポリオレフィンに対する接着強度がより向上する。上記石油系樹脂の含有量が25質量部以下であることにより、上記アクリル系共重合体における擬似的な架橋を阻害することをより抑えることができ、上記粘着剤組成物の粘着力がより向上する。
【0041】
上記ロジン系樹脂は、樹脂酸(例えば、アビエチン酸)を主成分とするロジン樹脂、及び、該ロジン樹脂の誘導体の樹脂である。
上記ロジン樹脂の誘導体の樹脂としては、例えば、不均化ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、樹脂酸の二量体(重合ロジン樹脂)、及び、ロジンエステル系樹脂が挙げられる。上記ロジンエステル系樹脂は、上記ロジン樹脂をアルコールによってエステル化させて得られた樹脂であり、例えば、ロジンエステル、不均化ロジンエステル、水添ロジンエステル、及び重合ロジンエステル等が挙げられる。
上記アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールが挙げられる。また、エステル化に用いたアルコールの水酸基の一部がエステル化に使用されずに樹脂内に含有されることで、水酸基価が上述した範囲に調整される。
なお、ロジン樹脂をエステル化した樹脂がロジンエステル樹脂、不均化ロジン樹脂をエステル化した樹脂が不均化ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂をエステル化した樹脂が水添ロジンエステル樹脂、重合ロジン樹脂をエステル化した樹脂が重合ロジンエステル樹脂である。
【0042】
軟化点が120℃より大きく180℃以下である上記ロジン系樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ペンセルD-160(荒川化学工業社製)等が挙げられる。
【0043】
上記アクリル系共重合体100質量部に対して、上記ロジン系樹脂の含有量の好ましい下限は15質量部であり、好ましい上限は25質量部である。上記ロジン系樹脂の含有量が15質量部以上であることにより、上記粘着剤組成物のポリオレフィンに対する接着強度がより向上する。上記ロジン系樹脂の含有量が25質量部以下であることにより、上記粘着剤組成物が硬くなりすぎず、上記粘着剤組成物の粘着力がより向上する。上記ロジン系樹脂の含有量のより好ましい下限は10質量部、より好ましい上限は20質量部である。
【0044】
上記粘着付与樹脂T2は、上記石油系樹脂及び上記ロジン系樹脂を含むことが好ましい。上記石油系樹脂は、上記粘着剤組成物のポリオレフィンに対する接着強度を大きく向上することができる一方、上記アクリル系共重合体中の上記末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位による擬似的な架橋を阻害しやすく、上記粘着剤組成物の粘着力を低下させやすい。
上記ロジン系樹脂は、上記粘着剤組成物のポリオレフィンに対する接着強度における向上はやや小さいものの、上記アクリル系共重合体中の上記末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体に由来する構成単位による擬似的な架橋の阻害を抑えることができるため、上記粘着剤組成物の粘着力を維持することができる。
したがって、上記粘着付与樹脂T2が上記石油系樹脂及び上記ロジン系樹脂を含むことにより、上記粘着剤組成物は充分な粘着力を維持したまま、ポリオレフィンに対する接着強度をより向上することができる。
【0045】
上記キシレン系樹脂は、酸触媒下でm-キシレンとホルムアルデヒドとを反応して重合させることにより得られた樹脂である。
また、上記キシレン系樹脂内に、更に他の化合物が重合されていてもよく、該他の化合物としては、例えば、フェノール化合物が挙げられる。なかでも、フェノール化合物が重合されていることが好ましい。上記キシレン系樹脂内に、上記フェノール化合物が重合されていることにより、上記粘着付与樹脂T2の極性がより大きくなり、上記アクリル系共重合体との相溶性がより良くなるため、上記粘着剤組成物の粘着力がより向上する。上記キシレン系樹脂内に重合されるフェノール化合物としては、上記テルペンフェノール樹脂内に重合されるフェノール化合物と同様のものを用いることができる。
なお、上記他の化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
軟化点が120℃より大きく180℃以下である上記キシレン系樹脂は市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、GHP-150(フドー社製)等が挙げられる。
【0047】
上記アクリル系共重合体100質量部に対して、上記粘着付与樹脂T2の含有量の下限は10質量部であり、上限は50質量部である。上記粘着付与樹脂T2の含有量が10質量部以上であることにより、上記粘着剤組成物のポリオレフィンに対する接着強度が向上する。上記粘着付与樹脂T2の含有量が50質量部以下であることにより、上記粘着剤組成物が硬くなりすぎず、粘着力が向上する。上記粘着付与樹脂T2の含有量の好ましい下限は15質量部、より好ましい下限は20質量部であり、好ましい上限は40質量部、より好ましい上限は30質量部である。
【0048】
上記粘着剤組成物は、上記粘着付与樹脂T1とも上記粘着付与樹脂T2とも異なる粘着付与樹脂を含有していてもよい。
【0049】
上記アクリル系共重合体100質量部に対して、軟化点が120℃以下である粘着付与樹脂の含有量の好ましい上限は5質量部である。上記軟化点が120℃以下である粘着付与樹脂の含有量が5質量部以下であることにより、上記粘着剤組成物の高温接着性がより向上する。上記軟化点が120℃以下である粘着付与樹脂の含有量のより好ましい上限は1質量部であり、上記粘着剤組成物は上記軟化点が120℃以下である粘着付与樹脂を含有しないことが最も好ましい。
【0050】
上記粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。上記粘着剤組成物が架橋剤を含有することにより、上記アクリル系共重合体が架橋剤を介して架橋された構造を有することにより、粘着剤組成物の粘着力と保持力とがより向上する。このときの架橋度を調整することにより、後述する粘着剤層のゲル分率を適切な範囲内に調整することができる。
【0051】
上記架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等が挙げられる。なかでも、後述する粘着剤層のゲル分率を適切な範囲内に調整しやすくなり、該粘着剤層を有する粘着テープの粘着力と保持力とがより向上することから、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0052】
上記アクリル系共重合体100質量部に対して、上記架橋剤の含有量の好ましい下限は0.1質量部であり、好ましい上限は5質量部である。上記架橋剤の含有量が上記範囲内にあることにより、後述する粘着剤層のゲル分率を適切な範囲内に調整しやすくなり、該粘着剤層を有する粘着テープの粘着力と保持力とがより向上する。上記架橋剤の含有量のより好ましい下限は0.5質量部であり、より好ましい上限は3質量部である。
【0053】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、無機微粒子、導電微粒子、酸化防止剤、発泡剤、有機充填剤、無機充填剤等の従来公知の微粒子及び添加剤を含有してもよい。
【0054】
基材層と、本発明の粘着剤組成物を含有する粘着剤層を有する粘着テープも本発明の1つである。
本発明の粘着テープは、上記粘着剤組成物を含有する粘着剤層を有することにより、高温接着性とポリオレフィンに対する接着強度とを両立することができる。
【0055】
上記粘着剤層のゲル分率の好ましい下限は10質量%であり、好ましい上限は70質量%である。上記粘着剤層のゲル分率が10質量%以上であることにより、上記粘着剤層のバルクの凝集力が高まり、上記粘着テープの耐熱性や保持力がより向上する。上記粘着剤層のゲル分率が70質量%以下であることにより、上記粘着剤層がより伸びやすくなり、上記粘着テープの粘着力がより向上する。上記粘着剤層のゲル分率のより好ましい下限は20質量%、更に好ましい下限は30質量%であり、より好ましい上限は60質量%、更に好ましい上限は50質量%、更により好ましい上限は40質量%である。
なお、上記粘着剤層のゲル分率は、以下の方法で測定することができる。
即ち、上記粘着剤層W0(g)を採取し、採取した上記粘着剤層を酢酸エチル50mL中に浸漬し、振とう機で温度23℃、200rpmの条件で24時間振とうする。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ、質量:W1(g))を用いて、酢酸エチルを吸収し膨潤した粘着剤層を濾過する。分離後の粘着剤層を110℃の条件下で1時間乾燥させた後、金属メッシュを含む粘着剤層の質量W2(g)を測定する。そして、得られたW0、W1、及び、W2を用いて、下記式(1)からゲル分率を算出する方法等により、測定することができる。
ゲル分率(質量%)=100×(W2-W1)/W0 (1)
(W0:初期粘着剤層の質量、W1:金属メッシュの初期質量、W2:乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤層の質量)
【0056】
上記粘着剤層の厚みの好ましい下限は10μmである。上記粘着剤層の厚みが10μm以上であることにより、上記粘着テープの粘着力がより向上する。上記粘着剤層の厚みのより好ましい下限は30μm、更に好ましい下限は50μmである。
また、上記粘着剤層の厚みの好ましい上限は特にないが、上記粘着テープの取り扱い性の観点から、500μm程度が上限である。
【0057】
本発明の粘着テープは、上記基材層の片面に上記粘着剤層を有する片面粘着テープでもよく、上記基材層の両面に上記粘着剤層を有する両面粘着テープであってもよい。
【0058】
上記基材層に用いる基材としては、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート、発泡構造を有するシート等が挙げられ、車輌部品等により好適に用いることができる観点からは、発泡構造を有するシートが好ましい。即ち、車輌部品等により好適に用いることができる観点からは、上記基材層は、発泡構造を有することが好ましい。
【0059】
上記基材層の厚みの好ましい下限は10μmであり、好ましい上限は2000μmである。上記基材層の厚みが10μm以上であることにより、上記粘着テープは適度なコシがあって、取り扱い性に優れるものとなる。上記基材層の厚みが2000μm以下であることにより、被着体から粘着テープを剥離する際のジッピングを防ぎやすくなり、粘着力がより向上する。上記基材層の厚みのより好ましい下限は50μmであり、より好ましい上限は1000μmである。
【0060】
上記粘着テープは、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の層を有していてもよい。
【0061】
上記粘着テープを製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、まず、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、上記極性官能基含有モノマー、上記末端に重合性不飽和二重結合を有するオレフィン系重合体、及び、必要に応じてその他のモノマーを常法で共重合させて上記アクリル系共重合体を得る。次いで、粘着付与樹脂T1、粘着付与樹脂T2、及び、必要に応じてその他添加剤を配合した粘着剤組成物を含有する溶液を、離型処理を施したフィルム上に塗工、乾燥させることで粘着剤層を有する積層シートを作製する。そして、上述した方法で製造した積層シートと基材とを貼り合わせることで、基材層と、本発明の粘着剤組成物を含有する粘着剤層を有する粘着テープを製造することができる。
【0062】
上記粘着テープ全体の厚みの好ましい上限は650μmである。上記粘着テープ全体の厚みが650μm以下であることにより、被着体から粘着テープを剥離する際のジッピングを防ぎやすくなり、粘着力がより向上する。上記粘着テープ全体の厚みのより好ましい上限は600μm、更に好ましい上限は550μmである。
また、上記粘着テープ全体の厚みの好ましい下限は40μmである。上記粘着テープ全体の厚みがμm以上であることにより、粘着テープがより十分な剥離力を発揮することができる。上記粘着テープ全体の厚みのより好ましい下限は50μm、更に好ましい下限は100μmである。
【0063】
上記粘着テープは、上記粘着剤組成物における、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位は、エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有し、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位中、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が75質量%以上100質量%以下であり、かつ、エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有さない、又は、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有し、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有する場合、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位中、上記エステル結合の酸素原子に結合しているアルキル基の炭素数が6以上10以下である上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量が25質量%以下であって、上記粘着剤組成物における、上記粘着付与樹脂T2は、上記石油系樹脂及びロジン系樹脂を含み、上記アクリル系共重合体100質量部に対して、上記石油系樹脂の含有量が15質量部以上25質量部以下であり、かつ、上記ロジン系樹脂の含有量が10質量部以上20質量部以下であり、上記粘着剤層のゲル分率は、10質量%以上40質量%以下であり、上記粘着テープ全体の厚みが、650μm以下であることが好ましい。上記粘着テープが上述したような特徴を有するものであることにより、優れた高温接着性とポリオレフィンに対する優れた接着強度とを両立することができるようになる。
【0064】
上記粘着テープは、80℃、剥離速度50mm/minにおけるSUSに対する180°引きはがし粘着力の好ましい下限は10N/inchである。上記80℃、剥離速度50mm/minにおけるSUSに対する180°引きはがし粘着力が10N/inch以上であることにより、上記粘着テープは高温接着性により優れるものとなる。上記80℃、剥離速度50mm/minにおけるSUSに対する180°引きはがし粘着力のより好ましい下限は15N/inchである。
また、上記80℃、剥離速度50mm/minにおけるSUSに対する180°引きはがし粘着力の上限は特にないが、実質的には50N/inch程度が限度である。
なお、上記粘着テープの80℃、剥離速度50mm/minにおけるSUSに対する180°引きはがし粘着力は以下の方法等により測定することができる。
即ち、粘着テープを幅25mm×長さ75mmの平面長方形状に裁断し試験片を作製した後、得られた試験片をSUS板(エタノールで洗浄後乾拭きしたSUS304板)に、2kgのゴムローラーを300mm/minの速度で一往復させることで貼り合わせる。次いで、温度80℃にて30分間加熱した後、引張試験機(エー・アンド・デイ社製、「RTI-1310」等)を用いて、80℃、剥離速度50mm/min、剥離角度180°の条件で引張試験を行い、180°引きはがし粘着力を測定する方法等により、測定することができる。
【0065】
上記粘着テープは、80℃、剥離速度50mm/minにおけるポリプロピレンに対する180°引きはがし粘着力の好ましい下限は10N/inchである。上記80℃、剥離速度50mm/minにおけるポリプロピレンに対する180°引きはがし粘着力が10N/inch以上であることにより、上記粘着テープは高温接着性とポリプロピレンに対する接着強度とがより優れるものとなる。上記80℃、剥離速度50mm/minにおけるポリプロピレンに対する180°引きはがし粘着力のより好ましい下限は15N/inchである。
また、80℃、剥離速度50mm/minにおけるポリプロピレンに対する180°引きはがし粘着力の上限は特にないが、実質的には50N/inch程度が限度である。
なお、上記粘着テープの80℃、剥離速度50mm/minにおけるポリプロピレンに対する180°引きはがし粘着力は、上述した上記粘着テープの80℃、剥離速度50mm/minにおけるSUSに対する180°引きはがし粘着力の測定において、SUS板に代えてポリプロピレン板を用いること等により、測定することができる。
【0066】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、優れた高温接着性とポリオレフィンに対する優れた接着強度とを両立することから、車輌部品等の固定等により好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、優れた高温接着性とポリオレフィンに対する優れた接着強度とを両立する粘着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該粘着剤組成物を含有する粘着剤層を有する粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0070】
(アクリル系共重合体A~Dの合成)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器内に、酢酸エチル300mLと表1に示す構成単位モノマーとを加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01質量部を添加し、還流下で重合を開始させた。その後、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01質量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05質量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から合計8時間重合反応を行い、アクリル系共重合体A~Dを含有する酢酸エチル溶液を得た。なお、表1に示すエチレン-ブチレンマクロモノマーは、HPVM-L1253(クレイトン・ポリマージャパン社製、重量平均分子量7000)である。
また、得られたアクリル系共重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters社製、「2690 Separations Module」)を用いて、以下の条件でポリスチレン換算の分子量分布を測定した。得られた分子量分布曲線からアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び多分散度(Mw/Mn)を求めた。
<GPCの測定条件>
溶媒:テトラヒドロフラン
サンプル流量:1mL/min
検出器:示差屈折系RI
カラム:GPC KF-806L(昭和電工社製)
カラム温度(測定温度):40℃
注入量:20μL
【0071】
【0072】
(実施例1~25、比較例1~8)
(1)粘着剤組成物の調製
得られたアクリル系共重合体A~Dを含有する酢酸エチル溶液に、表2~4に示す組成にて各材料を添加し、撹拌して、粘着剤組成物を得た。
【0073】
(2)粘着テープの作製
一面が離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。このポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に上記「(1)粘着剤組成物の調製」で得られた粘着剤組成物を乾燥した後の厚みが40μmになるように塗布し、110℃で5分間乾燥させて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に厚み40μmの粘着剤層を有する積層シートを2枚作製した。
次いで、基材として表2~4に示した種類及び厚みのシートを用意した。この基材の両側の表面に、得られた積層シート2枚を1枚ずつそれぞれ粘着剤層の面側から積層して粘着剤層を基材に転写及び積層一体化させることにより、基材層と、基材層の両面に粘着剤層とを有する粘着テープを得た。
【0074】
(3)粘着剤層のゲル分率
得られた粘着テープから上記粘着剤層W0(g)を採取し、採取した上記粘着剤層を酢酸エチル50mL中に浸漬し、振とう機で温度23℃、200rpmの条件で24時間振とうする。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ、質量:W1(g))を用いて、酢酸エチルを吸収し膨潤した粘着剤層を濾過する。分離後の粘着剤層を110℃の条件下で1時間乾燥させた後、金属メッシュを含む粘着剤層の質量W2(g)を測定した。そして、得られたW0、W1、及び、W2を用いて、下記式(1)からゲル分率を算出した。
ゲル分率(質量%)=100×(W2-W1)/W0 (1)
(W0:初期粘着剤層の質量、W1:金属メッシュの初期質量、W2:乾燥後の金属メッシュを含む粘着剤層の質量)
【0075】
<評価>
実施例、比較例で得られた粘着テープについて以下の評価を行った。結果を表2~4に示した。
【0076】
(常温接着性)
得られた粘着テープの一方の面(測定しない側)のポリエチレンテレフタレートフィルムをはがし、露出させた粘着剤層の表面を厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ化学社製、「FE2002」)で裏打ちした後に、幅25mm×長さ75mmに裁断し、試験片を作製した。得られた試験片をSUS板(エタノールで洗浄後乾拭きしたSUS304板)に、2kgのゴムローラーを300mm/minの速度で一往復させることで貼り合わせ、測定サンプルを作製した。次いで、作製した測定サンプルを温度23℃、相対湿度50%の環境下にて20分間静置した後、JIS Z0237に準拠して、引張試験機(エー・アンド・デイ社製、「RTI-1310」)を用い、23℃、剥離速度50mm/min、剥離角度180°の条件で引張試験を行い、180°引きはがし粘着力を測定した。
得られた180°引きはがし粘着力が20N/inch以上であった場合を「◎」、15N/inch以上20N/inch未満であった場合を「○」、10N/inch以上15N/inch未満であった場合を「△」、10N/inch未満であった場合を「×」として、粘着テープのSUSに対する常温接着性を評価した。
また、SUS板(エタノールで洗浄後乾拭きしたSUS304板)に代えてポリプロピレン板を用い、同様にして、ポリプロピレンに対する180°引きはがし粘着力を測定し粘着テープのポリプロピレンに対する常温接着強度を評価した。
【0077】
(高温接着性)
得られた粘着テープの一方の面(測定しない側)のポリエチレンテレフタレートフィルムをはがし、露出させた粘着剤層の表面を厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ化学社製、「FE2002」)で裏打ちした後に、幅25mm×長さ75mmに裁断し、試験片を作製した。得られた試験片をSUS板(エタノールで洗浄後乾拭きしたSUS304板)に、2kgのゴムローラーを300mm/minの速度で一往復させることで貼り合わせ、測定サンプルを作製した。次いで、温度80℃にて30分間加熱した後、引張試験機(エー・アンド・デイ社製、「RTI-1310」)を用いて、80℃、剥離速度50mm/min、剥離角度180°の条件で引張試験を行い、180°引きはがし粘着力を測定した。
得られた180°引きはがし粘着力が15N/inch以上であった場合を「◎」、10N/inch以上15N/inch未満であった場合を「○」、8N/inch以上10N/inch未満であった場合を「△」、8N/inch未満であった場合を「×」として、粘着テープのSUSに対する高温接着性を評価した。
また、SUS板(エタノールで洗浄後乾拭きしたSUS304板)に代えてポリプロピレン板を用い、同様にして、ポリプロピレンに対する180°引きはがし粘着力を測定し粘着テープのポリプロピレンに対する高温接着強度を評価した。
【0078】
(保持力)
まず、JIS Z-1528に準じ、得られた粘着テープを幅25mm、長さ60mmに裁断して、試験片1を作製した。試験片1を23℃で厚み2.0mm、幅50mm、長さ75mmのSUS板2(エタノールで洗浄後乾拭きしたSUS304板)に接着面積が25mm×25mmとなるように、2kgのゴムローラーを300mm/minの速度で往復させて、粘着テープの一方の面の粘着剤層を貼り合わせ、測定サンプルを作製した。測定サンプルを23℃、相対湿度50%にて20分間静置した後、85℃の環境下、測定サンプルに対してせん断方向に負荷がかかるように1kgの錘3を取り付けた。錘3により負荷をかけてから24時間後の試験片1の落下の有無を測定した。
試験片1が落下しなかった場合を「○」、落下した場合を「×」として、粘着テープの保持力を評価した。
なお、当該評価が「×」である場合においても、本発明の粘着剤組成物は、優れた高温接着性とポリオレフィンに対する優れた接着強度とを両立することができるため、使用する用途によっては問題なく使用することができる。
【0079】
なお、表2~4の基材層として用いた基材は下記の通りである。
・PETシート(ポリエチレンテレフタレートシート):東洋クロス社製、厚み23μm
・PEフォーム(ポリエチレンフォーム)(F1):ボラーラH#07005(積水化学工業社製、厚み500μm)
・PEフォーム(F2):ボラーラIF#08008(積水化学工業社製、厚み800μm)
【0080】
【0081】
【0082】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、優れた高温接着性とポリオレフィンに対する優れた接着強度とを両立する粘着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該粘着剤組成物を含有する粘着剤層を有する粘着テープを提供することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 試験片
2 SUS板
3 1kgの錘