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特開2024-67641積層造形装置及び三次元造形物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067641
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】積層造形装置及び三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/35 20170101AFI20240510BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240510BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240510BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240510BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240510BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240510BHJP
【FI】
B29C64/35
B29C64/153
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
B29C64/393
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177873
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】村中 勝隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 善考
(72)【発明者】
【氏名】石橋 賢治
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AR02
4F213AR09
4F213AR11
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL67
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】チャンバ内の圧力を一定に保持するために、ヒュームコレクタとチャンバとの間の循環風量の低下を抑制し、チャンバから効率的にヒュームを排出することが可能な積層造形装置を提供する。
【解決手段】
本発明によれば、積層造形装置であって、チャンバと、不活性ガス供給装置と、ヒュームコレクタと、圧力検出装置と、制御装置とを備え、チャンバは、所望の三次元造形物が形成される領域である造形領域を覆い、不活性ガス供給装置は、チャンバに不活性ガスを供給し、ヒュームコレクタは、送風機を備え、チャンバからヒュームと共に排出される不活性ガスからヒュームを除去し、送風機は、所定の回転数で稼働することによりチャンバとヒュームコレクタとの間で不活性ガスを循環させ、圧力検出装置は、チャンバ内の圧力を検出し、制御装置は、圧力に基づき送風機の回転数を切り替えるようにヒュームコレクタを制御する、積層造形装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形装置であって、
チャンバと、不活性ガス供給装置と、ヒュームコレクタと、圧力検出装置と、制御装置とを備え、
前記チャンバは、所望の三次元造形物が形成される領域である造形領域を覆い、
前記不活性ガス供給装置は、前記チャンバに不活性ガスを供給し、
前記ヒュームコレクタは、送風機を備え、前記チャンバからヒュームと共に排出される前記不活性ガスから前記ヒュームを除去し、
前記送風機は、所定の回転数で稼働することにより前記チャンバと前記ヒュームコレクタとの間で前記不活性ガスを循環させ、
前記圧力検出装置は、前記チャンバ内の圧力を検出し、
前記制御装置は、前記圧力に基づき前記送風機の回転数を切り替えるように前記ヒュームコレクタを制御する、積層造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の積層造形装置であって、
前記ヒュームコレクタは、フィルタと、逆洗装置とをさらに備え、
前記フィルタは、前記チャンバから前記ヒュームと共に排出され所定の流入方向に前記フィルタを通過する前記不活性ガスから前記ヒュームを捕集可能に構成され、
前記逆洗装置は、前記フィルタに対して前記流入方向とは逆方向に不活性ガスを吹き付ける逆洗を行うように構成される、積層造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の積層造形装置であって、
前記ヒュームコレクタは、運転モードとして、ヒューム除去モードと、逆洗モードとを備え、前記ヒューム除去モードにおいて、前記送風機を稼働して前記フィルタにより前記不活性ガスから前記ヒュームを除去し、前記逆洗モードにおいて、前記送風機を停止して前記逆洗装置により前記逆洗を行うように構成され、
前記制御装置は、モード切替部を備え、
前記モード切替部は、前記運転モードの切替を行い、
前記制御装置は、前記圧力に基づき前記送風機の回転数を切り替えるように、前記ヒューム除去モードの前記ヒュームコレクタを制御する、積層造形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の積層造形装置であって、
材料層形成装置と、照射装置とを備え、
前記材料層形成装置は、前記造形領域に材料粉体を供給することで材料層を形成し、
前記照射装置は、前記材料層にレーザ光又は電子ビームを照射することにより固化層を形成し、
前記モード切替部は、前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの運転が前記材料層の形成時に行われるように、前記運転モードの切替を行う、積層造形装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の積層造形装置であって、
前記制御装置は、モード継続時間設定部を備え、
前記モード継続時間設定部は、前記ヒューム除去モードによる前記ヒュームコレクタの1回の運転あたりの時間である除去継続時間を設定し、
前記モード切替部は、前記除去継続時間に基づき前記ヒューム除去モードから前記逆洗モードへの切替を行う、積層造形装置。
【請求項6】
請求項5に記載の積層造形装置であって、
前記モード継続時間設定部は、前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの1回の運転あたりの時間である逆洗継続時間として、第1逆洗継続時間と、第1逆洗継続時間よりも長い第2逆洗継続時間とを設定し、
前記モード切替部は、前記逆洗継続時間に基づき前記逆洗モードから前記ヒューム除去モードへの切替を行い、
第1逆洗継続時間は、前記制御装置が前記ヒューム除去モードの前記ヒュームコレクタを制御することで前記圧力が所定の許容範囲に収まる場合において、その直後の前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの運転における前記逆洗継続時間であり、
第2逆洗継続時間は、前記制御装置が前記ヒューム除去モードの前記ヒュームコレクタを制御し前記送風機の回転数が所定の上限値に達しても前記圧力が前記許容範囲を下回る場合において、その直後の前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの運転における前記逆洗継続時間である、積層造形装置。
【請求項7】
請求項5に記載の積層造形装置であって、
前記モード継続時間設定部は、前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの1回の運転あたりの時間である逆洗継続時間として、第1逆洗継続時間と、第1逆洗継続時間よりも長い第3逆洗継続時間とを設定し、
前記モード切替部は、前記逆洗継続時間に基づき前記逆洗モードから前記ヒューム除去モードへの切替を行い、
第1逆洗継続時間は、前記三次元造形物の造形中における前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの運転での前記逆洗継続時間であり、
第3逆洗継続時間は、前記三次元造形物の造形が終わり次の造形段取りを始めるまでの間における前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの運転での前記逆洗継続時間である、積層造形装置。
【請求項8】
請求項1から請求項4の何れか1つに記載の積層造形装置であって、
前記制御装置は、前記圧力が所定の許容範囲を下回る場合に、前記送風機の回転数を増加させるように前記ヒュームコレクタを制御する、積層造形装置。
【請求項9】
請求項1から請求項4の何れか1つに記載の積層造形装置であって、
前記制御装置は、前記圧力が所定の許容範囲を上回る場合に、前記送風機の回転数を減少させるように前記ヒュームコレクタを制御する、積層造形装置。
【請求項10】
少なくとも所望の三次元造形物が形成される造形領域をチャンバで覆って前記チャンバに不活性ガスを供給するとともに、前記チャンバからヒュームを含む不活性ガスを排出し、前記チャンバから排出される不活性ガスに含まれるヒュームをヒュームコレクタによって除去しながら所望の三次元造形物を形成する三次元造形物の製造方法であって、
前記ヒュームコレクタは、所定の回転数で稼働することにより前記チャンバと前記ヒュームコレクタとの間で前記不活性ガスを循環させる送風機を備え、
前記造形領域に材料粉体を供給して材料層を形成する材料層形成工程と、前記材料層にレーザ光又は電子ビームを照射することにより固化層を形成する固化工程とを繰り返すことにより、前記固化層を積層する固化層形成工程と、
前記チャンバ内の圧力に基づき前記ヒュームコレクタの前記送風機の回転数を切り替えるヒューム除去工程と、
を含んでなる三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形装置及び三次元造形物の製造方法に関するものである。特に1回の固化層の形成で発生するヒューム量が多い三次元造形物の製造において、チャンバから排出した不活性ガスからヒュームを除去する装置及び方法による、造形品質の安定に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物の積層造形においては、種々の方式が知られている。例えば、不活性ガスが充満されたチャンバ内の造形領域に金属の材料粉体を供給して材料層を形成し、材料層の所定位置にレーザ光又は電子ビームを照射することで材料層を焼結又は溶融させて固化層を形成する。材料層及び固化層の形成を繰り返すことによって、複数の固化層を積層して所望の三次元造形物が製造される。
【0003】
チャンバ内は、材料粉体の変質を防止するために、不活性ガスが充満される。また、レーザ光又は電子ビームを照射すると、照射位置からヒュームと呼ばれる煙が発生する。ヒュームは、レーザ光又は電子ビームを減衰させたり、光学部品を汚染したりすることで、造形品質に影響を与える可能性がある。そのため、チャンバに新規の不活性ガスが供給されるとともに、チャンバからヒュームを含む不活性ガスを排出し、ヒュームコレクタによりヒュームを除去した清浄な不活性ガスがチャンバに返送される。
【0004】
造形物を高品質で安定して製造するためには、チャンバ内からヒュームを速やか且つ効率的に排出する必要がある。特許文献1の積層造形装置では、不活性ガスをチャンバに供給するガス供給部が上段、中段及び下段ノズルを備え、チャンバの正面から背面に向かって不活性ガスの気流を形成することでヒュームの滞留を防いでヒュームを効率よく排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7104223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒュームコレクタとして、例えば、濾過式集塵機又は乾式電気集塵機等の公知の集塵機が用いられ、集塵機にはチャンバとの間で不活性ガスを循環するための送風機が設けられる。このようなヒュームコレクタを稼働させて造形を開始すると、ヒュームコレクタとチャンバとの間の循環風量が徐々に低下する場合がある。これは、集塵機に設けられたフィルタ又はフィルタ状の構成部品にヒュームが付着し目詰まりが発生するためである。例えば、濾過式集塵機にはヒュームを捕集するためのフィルタが設けられ、乾式電気集塵機には高電圧の印加により発生するオゾンを回収するためにフィルタ状の触媒ユニットが設けられている。循環風量が低下すると、ヒュームの排出効率が低下して造形品質に影響が生じる可能性がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、チャンバ内の圧力を一定に保持するために、ヒュームコレクタとチャンバとの間の循環風量の低下を抑制し、チャンバから効率的にヒュームを排出することが可能な積層造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]積層造形装置であって、チャンバと、不活性ガス供給装置と、ヒュームコレクタと、圧力検出装置と、制御装置とを備え、前記チャンバは、所望の三次元造形物が形成される領域である造形領域を覆い、前記不活性ガス供給装置は、前記チャンバに不活性ガスを供給し、前記ヒュームコレクタは、送風機を備え、前記チャンバからヒュームと共に排出される前記不活性ガスから前記ヒュームを除去し、前記送風機は、所定の回転数で稼働することにより前記チャンバと前記ヒュームコレクタとの間で前記不活性ガスを循環させ、前記圧力検出装置は、前記チャンバ内の圧力を検出し、前記制御装置は、前記圧力に基づき前記送風機の回転数を切り替えるように前記ヒュームコレクタを制御する、積層造形装置。
[2][1]に記載の積層造形装置であって、前記ヒュームコレクタは、フィルタと、逆洗装置とをさらに備え、前記フィルタは、前記チャンバから前記ヒュームと共に排出され所定の流入方向に前記フィルタを通過する前記不活性ガスから前記ヒュームを捕集可能に構成され、前記逆洗装置は、前記フィルタに対して前記流入方向とは逆方向に不活性ガスを吹き付ける逆洗を行うように構成される、積層造形装置。
[3][2]に記載の積層造形装置であって、前記ヒュームコレクタは、運転モードとして、ヒューム除去モードと、逆洗モードとを備え、前記ヒューム除去モードにおいて、前記送風機を稼働して前記フィルタにより前記不活性ガスから前記ヒュームを除去し、前記逆洗モードにおいて、前記送風機を停止して前記逆洗装置により前記逆洗を行うように構成され、前記制御装置は、モード切替部を備え、前記モード切替部は、前記運転モードの切替を行い、前記制御装置は、前記圧力に基づき前記送風機の回転数を切り替えるように、前記ヒューム除去モードの前記ヒュームコレクタを制御する、積層造形装置。
[4][3]に記載の積層造形装置であって、材料層形成装置と、照射装置とを備え、前記材料層形成装置は、前記造形領域に材料粉体を供給することで材料層を形成し、前記照射装置は、前記材料層にレーザ光又は電子ビームを照射することにより固化層を形成し、前記モード切替部は、前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの運転が前記材料層の形成時に行われるように、前記運転モードの切替を行う、積層造形装置。
[5][3]又は[4]に記載の積層造形装置であって、前記制御装置は、モード継続時間設定部を備え、前記モード継続時間設定部は、前記ヒューム除去モードによる前記ヒュームコレクタの1回の運転あたりの時間である除去継続時間を設定し、前記モード切替部は、前記除去継続時間に基づき前記ヒューム除去モードから前記逆洗モードへの切替を行う、積層造形装置。
[6][5]に記載の積層造形装置であって、前記モード継続時間設定部は、前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの1回の運転あたりの時間である逆洗継続時間として、第1逆洗継続時間と、第1逆洗継続時間よりも長い第2逆洗継続時間とを設定し、前記モード切替部は、前記逆洗継続時間に基づき前記逆洗モードから前記ヒューム除去モードへの切替を行い、第1逆洗継続時間は、前記制御装置が前記ヒューム除去モードの前記ヒュームコレクタを制御することで前記圧力が所定の許容範囲に収まる場合において、その直後の前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの運転における前記逆洗継続時間であり、第2逆洗継続時間は、前記制御装置が前記ヒューム除去モードの前記ヒュームコレクタを制御し前記送風機の回転数が所定の上限値に達しても前記圧力が前記許容範囲を下回る場合において、その直後の前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの運転における前記逆洗継続時間である、積層造形装置。
[7][5]又は[6]に記載の積層造形装置であって、前記モード継続時間設定部は、前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの1回の運転あたりの時間である逆洗継続時間として、第1逆洗継続時間と、第1逆洗継続時間よりも長い第3逆洗継続時間とを設定し、前記モード切替部は、前記逆洗継続時間に基づき前記逆洗モードから前記ヒューム除去モードへの切替を行い、第1逆洗継続時間は、前記三次元造形物の造形中における前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの運転での前記逆洗継続時間であり、第3逆洗継続時間は、前記三次元造形物の造形が終わり次の造形段取りを始めるまでの間における前記逆洗モードによる前記ヒュームコレクタの運転での前記逆洗継続時間である、積層造形装置。
[8][1]から[7]の何れか1つに記載の積層造形装置であって、前記制御装置は、前記圧力が所定の許容範囲を下回る場合に、前記送風機の回転数を増加させるように前記ヒュームコレクタを制御する、積層造形装置。
[9][1]から[8]の何れか1つに記載の積層造形装置であって、前記制御装置は、前記圧力が所定の許容範囲を上回る場合に、前記送風機の回転数を減少させるように前記ヒュームコレクタを制御する、積層造形装置。
[10]少なくとも所望の三次元造形物が形成される造形領域をチャンバで覆って前記チャンバに不活性ガスを供給するとともに、前記チャンバからヒュームを含む不活性ガスを排出し、前記チャンバから排出される不活性ガスに含まれるヒュームをヒュームコレクタによって除去しながら所望の三次元造形物を形成する三次元造形物の製造方法であって、前記ヒュームコレクタは、所定の回転数で稼働することにより前記チャンバと前記ヒュームコレクタとの間で前記不活性ガスを循環させる送風機を備え、前記造形領域に材料粉体を供給して材料層を形成する材料層形成工程と、前記材料層にレーザ光又は電子ビームを照射することにより固化層を形成する固化工程とを繰り返すことにより、前記固化層を積層する固化層形成工程と、前記チャンバ内の圧力に基づき前記ヒュームコレクタの前記送風機の回転数を切り替えるヒューム除去工程と、を含んでなる三次元造形物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る積層造形装置では、チャンバ内の圧力を圧力検出装置により検出し、制御装置が、当該圧力に基づき送風機の回転数を切り替えるようにヒュームコレクタを制御する。循環風量が低下するとチャンバ内の圧力が低下するため、当該圧力が一定又は所定範囲内となるように送風機の回転数を切り替えることで、循環風量の低下を抑制し、チャンバから効率的にヒュームを排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る積層造形装置100の概略構成図である。
図2】材料層形成装置3の斜視図である。
図3】材料層形成装置3のリコータヘッド32の上方からの斜視図である。
図4】材料層形成装置3のリコータヘッド32の下方からの斜視図である。
図5】照射装置5の概略構成図である。
図6】ヒュームコレクタ62の概略構成図である。
図7】制御装置8の構成を示すブロック図である。
図8】積層造形装置100を用いた三次元造形物の製造方法を示すフロー図である。
図9】積層造形装置100を用いた積層造形物の製造方法を示す図であり、造形開始時の状態を示す図である。
図10】積層造形装置100を用いた積層造形物の製造方法を示す図であり、1層目の固化工程を実行している状態を示す図である。
図11図11Aは、第1逆洗継続時間tc1に基づくヒューム除去モードから逆洗モードへの切替のタイミングの一例を示す図である。図11Bは、第2逆洗継続時間tc2に基づくヒューム除去モードから逆洗モードへの切替のタイミングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.積層造形装置100
図1は、本実施形態に係る積層造形装置100の概略構成図である。本実施形態の積層造形装置100は、チャンバ1と、材料層形成装置3と、照射装置5と、不活性ガス給排装置6と、圧力検出装置7と、制御装置8とを備える。積層造形装置100は、材料層形成装置3による材料層91の形成と、照射装置5による固化層92の形成を交互に繰り返すことで、所望の三次元造形物を製造する。
【0013】
なお、以下の説明では、図1において手前に向かう方向を積層造形装置100の前又は正面側、奥に向かう方向を積層造形装置100の後又は背面側と定める。そして、図1における上下方向を積層造形装置100の上下方向(鉛直方向)と、左右方向を積層造形装置100の左右方向と定める。
【0014】
1.1.チャンバ1
チャンバ1は、所望の三次元造形物が形成される領域である造形領域Rを少なくとも覆う。本実施形態では、チャンバ1内に造形テーブル4が配置され、造形テーブル4上に造形領域Rが設けられる。造形テーブル4は、造形テーブル駆動装置41によって駆動され鉛直方向に移動可能である。
【0015】
チャンバ1の正面側には、三次元造形物の取り出し等に用いられる開口(不図示)が形成され、開口には開閉可能な扉(不図示)が設けられる。造形中、換言すれば、所望の三次元造形物の製造の開始から完了までの間において、扉は閉じられてチャンバ1は実質的に密閉されている。
【0016】
チャンバ1の天板には、レーザ光Lの透過窓となるウィンドウ1aが設けられる。ウィンドウ1aは、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。ウィンドウ1aの材料はレーザ光Lの種類に応じて選択され、例えば、レーザ光Lがファイバレーザ又はYAGレーザの場合、ウィンドウ1aは石英ガラスで構成可能である。本実施形態では、2つのウィンドウ1aが左右方向に並んで配置されている。
【0017】
1.2.材料層形成装置3
材料層形成装置3は、チャンバ1内に設けられ、造形領域Rに材料粉体を供給することで材料層91を形成する。図2に示すように、材料層形成装置3は、ベース31と、ベース31上に配置されるリコータヘッド32とを備える。リコータヘッド32は、モータ等の駆動機構を内蔵するリコータヘッド駆動装置33によって水平1軸方向に往復移動可能に構成される。
【0018】
図3及び図4に示すように、リコータヘッド32は、材料収容部32aと、材料供給口32bと、材料排出口32cとを備える。材料供給口32bは、材料収容部32aの上面に設けられ、材料供給ユニット(不図示)から材料収容部32aに供給される材料粉体の受け口となる。材料排出口32cは、材料収容部32aの底面に設けられ、材料収容部32a内の材料粉体を排出する。材料排出口32cは、材料収容部32aの長手方向に延びるスリット形状を有する。リコータヘッド32の両側面には、平板状のブレード32fb,32rbが設けられる。ブレード32fb,32rbは、材料排出口32cから排出される材料粉体を平坦化して、材料層91を形成する。なお、図1に示すように、造形にあたり造形テーブル4にベースプレート90を載置してもよく、その場合、ベースプレート90上に1層目の材料層91が形成される。
【0019】
1.3.照射装置5
照射装置5は、図1及び図5に示すように、材料層91にレーザ光L又は電子ビームを照射して固化層92を形成する。好ましくは、照射装置5は、レーザ光L又は電子ビームを生成する少なくとも1つの光源と、レーザ光L又は電子ビームを走査する複数の走査装置と備え、複数のレーザ光L又は電子ビームを同時に照射可能に構成される。
【0020】
本実施形態の照射装置5は、チャンバ1の上方に設けられ、材料層91の照射領域に4つのレーザ光Lを同時に照射可能に構成される。具体的には、照射装置5は、第1照射装置51と、第2照射装置52と、第3照射装置53と、第4照射装置54とを備える。このような構成では、最大4つのレーザ光Lを同時に照射可能であり、造形を高速で行うことができる。第1及び第2照射装置51,52、第3及び第4照射装置53,54とは、それぞれ同一の筐体内に収容される。
【0021】
図5に示すように、第1照射装置51は、光源51aと、フォーカス制御ユニット51bと、調整レンズ51cと、走査装置51dとを備える。光源51aは、レーザ光Lを生成する。フォーカス制御ユニット51bは、内部に焦点制御レンズと、焦点制御レンズを前後させるモータとを有しており、焦点制御レンズを光軸方向に前後させることでレーザ光Lの焦点位置を調整する。調整レンズ51cは、手動で位置の調整が可能であり、装置の組付時等に生じ得る光学系の誤差を微調整する。走査装置51dは、例えばガルバノスキャナであり、水平1軸方向であるX軸方向にレーザ光Lを走査するX軸ガルバノミラー51d1と、X軸方向に直行する他の水平1軸方向であるY軸方向にレーザ光Lを走査するY軸ガルバノミラー51d2と、X軸ガルバノミラー51d1及びY軸ガルバノミラー51d2をそれぞれ回転させるX軸アクチュエータ及びY軸アクチュエータ(不図示)とを備える。
【0022】
第2~第4照射装置52,53,54は、第1照射装置51と同様の構成要素を備える。具体的には、第2照射装置52は、光源52aと、フォーカス制御ユニット52bと、調整レンズ52cと、走査装置52dとを備え、走査装置52dは、X軸ガルバノミラー52d1と、Y軸ガルバノミラー52d2と、X軸アクチュエータ及びY軸アクチュエータとを備える。また、第3照射装置53は、光源53aと、フォーカス制御ユニット53bと、調整レンズ53cと、走査装置53dとを備え、走査装置53dは、X軸ガルバノミラー53d1と、Y軸ガルバノミラー53d2と、X軸アクチュエータ及びY軸アクチュエータとを備える。第4照射装置54は、光源54aと、フォーカス制御ユニット54bと、調整レンズ54cと、走査装置54dとを備え、走査装置54dは、X軸ガルバノミラー54d1と、Y軸ガルバノミラー54d2と、X軸アクチュエータ及びY軸アクチュエータとを備える。
【0023】
好ましくは、第1照射装置51のX軸ガルバノミラー51d1及びY軸ガルバノミラー51d2と、第2照射装置52のX軸ガルバノミラー52d1及びY軸ガルバノミラー52d2とは、互いに面対称になるように配置され、下流側のガルバノミラー間の距離(本実施形態の例では、X軸ガルバノミラー51d1とX軸ガルバノミラー52d1との間の距離)が、近接するように構成されている。これにより、第1照射装置51により照射されるレーザ光Lと、第2照射装置52により照射されるレーザ光Lとの、照射スポットの形状やエネルギー密度の差を低減することができる。これら2つのレーザ光Lは、図1において左側のウィンドウ1aを通過して、材料層91へと照射される。一例において、第1及び第2照射装置51,52は、図1の造形領域Rの左半分にレーザ光Lを照射する。
【0024】
好ましくは、第3照射装置53のX軸ガルバノミラー53d1及びY軸ガルバノミラー53d2と、第4照射装置54のX軸ガルバノミラー54d1及びY軸ガルバノミラー54d2とは、互いに面対称になるように配置され、下流側のガルバノミラー間の距離(本実施形態の例では、X軸ガルバノミラー53d1とX軸ガルバノミラー54d1との間の距離)が、近接するように構成されている。これにより、第3照射装置53により照射されるレーザ光Lと、第4照射装置54により照射されるレーザ光Lとの、照射スポットの形状やエネルギー密度の差を低減することができる。これら2つのレーザ光Lは、図1において右側のウィンドウ1aを通過して、材料層91へと照射される。一例において、第3及び第4照射装置53,54は、図1の造形領域Rの右半分にレーザ光Lを照射する。
【0025】
なお、照射装置5の構成は、上述の例に限定されるものではない。例えば、本実施形態では第1~第4照射装置51,52,53,54がそれぞれ光源51a,52a,53a,54aを備えるが、1つの光源で生成されたレーザ光をビームスプリッタ等で分光して各走査装置51d,52d,53d,54dにより走査してもよい。また、照射装置5を、電子ビームを照射するように構成してもよい。その場合、照射装置5は、例えば、電子を放出するカソード電極と、電子を収束して加速するアノード電極と、磁場を形成して電子ビームの方向を一方向に収束するソレノイドと、被照射体である材料層91と電気的に接続されカソード電極との間に電圧を印加するコレクタ電極とを備える。この場合、カソード電極及びアノード電極が電子ビームを出力する光源の役割を果たし、ソレノイドが電子ビームを走査する走査装置の役割を果たす。
【0026】
1.4.不活性ガス給排装置6
不活性ガス給排装置6は、図1に示すように、不活性ガス供給装置61と、ヒュームコレクタ62と、ダクトボックス68,69とを備える。不活性ガス給排装置6は、チャンバ1に不活性ガスを供給するとともに、レーザ光Lの照射によって発生したヒュームを含む不活性ガスをチャンバ1外に排出する。なお、本開示における不活性ガスとは、材料層91や固化層92と実質的に反応しないガスであり、材料の種類に応じて選択され、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスを不活性ガスとして使用可能である。
【0027】
チャンバ1には不活性ガスの供給口及び排出口がそれぞれ1つ以上設けられ、チャンバ1は、供給口及び排出口を介して不活性ガス給排装置6と接続されている。本実施形態では、供給口として第1供給口1bと第2供給口1cとが設けられる。第1供給口1bは、チャンバ1の左側の壁面に設けられ、第2供給口1cは、チャンバ1の天板に設けられる。チャンバ1の天板には、ウィンドウ1aを覆うように汚染防止装置17が設けられる。汚染防止装置17は、円筒状の筐体17aと、筐体17a内に配置された円筒状の拡散部材17cとを備える。筐体17aと拡散部材17cの間には、不活性ガス供給空間17dが設けられる。筐体17aの底面には、拡散部材17cの径方向の内側に開口部17bが設けられる。また、拡散部材17cには多数の細孔が設けられている。第2供給口1cは、不活性ガス供給空間17dに不活性ガスを供給可能となるように設けられる。不活性ガス供給空間17dに供給された清浄な不活性ガスは拡散部材17cの細孔を通じて拡散部材17c内に充満され、開口部17bから汚染防止装置17の下方に向かって噴出される。このような構成により、ヒュームのウィンドウ1aへの付着を防止し、レーザ光Lの照射経路からヒュームを排除することができる。なお、本実施形態では、2つのウィンドウ1aそれぞれを覆うように2つの汚染防止装置17が設けられ、各汚染防止装置17に第2供給口1cが設けられる。
【0028】
不活性ガスの排出口1dは、チャンバ1の右側の壁面に設けられる。このような構成では、第1供給口1bから排出口1dに向かって、チャンバ1の左右方向に不活性ガスの気流が生成され、ヒュームが滞留しにくくなる。
【0029】
なお、不活性ガスの供給口1b,1c及び排出口1dの構成は、本実施形態の例に限定されるものではない。例えば、第1供給口1b及び排出口1dをチャンバ1の正面側及び背面側の壁面にそれぞれ設けて、チャンバ1の前後方向に不活性ガスの気流が生成されるような構成としてもよい。
【0030】
不活性ガス供給装置61は、チャンバ1に不活性ガスを供給する。本実施形態の不活性ガス供給装置61は、第1供給口1b及び第2供給口1cに接続されている。造形中のチャンバ1は、不活性ガス供給装置61から第1供給口1b及び第2供給口1cを介して供給される所定濃度の不活性ガスで充満されている。不活性ガス供給装置61は、例えば、空気から不活性ガスを生成する不活性ガス生成装置、又は不活性ガスが貯留されるガスボンベである。
【0031】
ヒュームコレクタ62は、チャンバ1からヒュームと共に排出される不活性ガスからヒュームを除去する。本実施形態のヒュームコレクタ62は、図1及び図6に示すように、入口弁62a1及び出口弁62b1と、ヒューム除去フィルタ63と、送風機64と、逆洗装置65と、排気口66とを備える。
【0032】
ヒュームコレクタ62は、入口62aがダクトボックス68を介してチャンバ1の排出口1dと、出口62bがダクトボックス69を介してチャンバ1の第1供給口1bと、循環路60によりそれぞれ接続されており、不活性ガスは循環路60を経由してチャンバ1とヒュームコレクタ62との間を循環する。入口弁62a1及び出口弁62b1は、ヒュームコレクタ62の入口62a側及び出口62b側にそれぞれ配置される。入口弁62a1及び出口弁62b1を開くことで循環路60が開通し、不活性ガスがチャンバ1とヒュームコレクタ62との間で循環可能となる。また、入口弁62a1及び出口弁62b1を閉じることで循環路60が中断され、不活性ガスの循環が停止される。入口弁62a1及び出口弁62b1は、後述する弁制御部89dにより制御され開閉可能である。
【0033】
ヒューム除去フィルタ63は、チャンバ1からヒュームと共に排出され所定の流入方向Dにヒューム除去フィルタ63を通過する不活性ガスからヒュームを捕集可能に構成される。なお、流入方向Dは、図6に示すように、チャンバ1の排出口1dから排出されヒュームコレクタ62の入口62aから流入した不活性ガスがヒューム除去フィルタ63を通過する際の方向である。また、以下の説明においては、特に言及の無い限り、不活性ガスの流入方向Dにおける上流側及び下流側をそれぞれ「上流側」及び「下流側」と称する。
【0034】
ヒューム除去フィルタ63は少なくとも1つ設けられ、複数のヒューム除去フィルタ63を流入方向Dにおいて並列に設けて、各ヒューム除去フィルタ63により同時にヒュームを捕集可能に構成してもよい。本実施形態では、4つのヒューム除去フィルタ63が設けられる。複数のヒューム除去フィルタ63を並列に設けることで、単位時間あたりのヒュームの捕集能力を増強可能であり、積層造形装置100の大型化や造形の高速化に伴いヒュームの発生量が増加した場合でも効率的にヒュームを除去できる。
【0035】
送風機64は、所定の回転数で稼働することにより、チャンバ1とヒュームコレクタ62との間で不活性ガスを循環させる。送風機64として、例えば、ファンモータを用いることができる。なお、送風機64は、ヒューム除去フィルタ63の下流側に配置することが好ましい。これにより、ヒューム除去フィルタ63を通過後の不活性ガスが送風機64と接触することとなり、送風機64へのヒュームの付着を抑制できる。
【0036】
送風機64は、インバータ装置64aを用いて周波数が変換された交流により、駆動される。インバータ装置64aは、交流電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ回路と、変換された直流を平滑化するコンデンサと、平滑化された直流を所定の周波数の交流に変換するインバータ回路とを備え、後述するインバータ制御部89cにより制御される。
【0037】
逆洗装置65は、ヒューム除去フィルタ63に対して流入方向Dとは逆方向に不活性ガスを吹き付ける逆洗を行うように構成される。逆洗を行うことで、ヒューム除去フィルタ63に付着したヒュームを除去し目詰まりを解消できる。
【0038】
本実施形態の逆洗装置65は、ヒュームコレクタ62内に配置された蓄圧タンク65aと、ガス供給路65bとを備える。蓄圧タンク65aは、加圧された不活性ガスを貯留する。なお、蓄圧タンク65aには、チャンバ1に供給される不活性ガスと同種の不活性ガスが貯留することが好ましい。ガス供給路65bは、例えば、パイプ又はホースであり、一端が蓄圧タンク65aに接続され、他端がヒューム除去フィルタ63の下流側においてフィルタに対向するように配置されている。ガス供給路65bの中途には、ガス供給弁65cが設けられる。逆洗装置65は、後述する逆洗制御部89eにより制御され開閉可能である。
【0039】
ガス供給弁65cを開くことで、蓄圧タンク65aから供給された不活性ガスがガス供給路65bの他端からヒューム除去フィルタ63に向かって噴出して逆洗が行われ、ガス供給弁65cを閉じることで不活性ガスの噴出が停止する。なお、複数のヒューム除去フィルタ63を設ける場合は、複数のガス供給路65bをヒューム除去フィルタ63に対向するように配置してもよい。本実施形態では、図6に示すように、2本のガス供給路65bが配置され、各ガス供給路65bにガス供給弁65cが設けられている。逆洗時には、2本のガス供給路65bのガス供給弁65cが交互に開閉され、4つのヒューム除去フィルタ63の2つずつ(図6において上側に位置する2つのヒューム除去フィルタ63と、下側に位置する2つのヒューム除去フィルタ63)に対して交互に不活性ガスが噴出される。これにより、複数のヒューム除去フィルタ63に対して逆洗を行う場合に、十分な圧力で不活性ガスを噴出させることができる。ヒューム除去フィルタ63の下方には回収容器65dが配置されている。逆洗によりヒューム除去フィルタ63から除去されたヒュームは、上流側の直下に落下して回収容器65d内に収容される。
【0040】
なお、逆洗は、送風機64を停止し、入口弁62a1及び出口弁62b1を閉じた状態、換言すれば、チャンバ1とヒュームコレクタ62との間の不活性ガスの循環が停止された状態で行うことが好ましい。また、不活性ガスの循環が中断されると、チャンバ1からのヒュームの排出が一時的に滞る。従って、逆洗は、ヒュームが発生するレーザ光L又は電子ビームの照射中以外のタイミングで行うことが好ましい。逆洗を行う好ましいタイミングとしては、例えば、材料層形成装置3による材料層91の形成時や、三次元造形物の造形が終わり次の造形段取りを始めるまでの間が挙げられる。
【0041】
排気口66は、入口弁62a1及び出口弁62b1を閉じた状態で逆洗を行った際に、不活性ガスを外部に排出するために設けられる。本実施形態では、ヒューム除去フィルタ63の上流側且つ入口弁62a1の下流側において分岐する排気路67が設けられ、排気路67の先端が排気口66として開放されている。排気路67には排気弁67aが設けられ、逆洗を行う際に排気弁67aを開くことで不活性ガスが排気口66から外部に排出され、排気弁67aを閉じることで不活性ガスの排出が停止される。排気弁67aは、後述する弁制御部89dにより制御され開閉可能である。なお、排気口66から外部への微量のヒュームの漏出を抑制するために、排気路67の中途であって排気弁67aと排気口66との間の位置に、ヒュームを捕集可能な排気フィルタ67bを設けることが好ましい。
【0042】
本実施形態のヒュームコレクタ62は、運転モードとしてヒューム除去モードと逆洗モードとを備え、後述する制御装置8のモード切替部89fにより、運転モードの切替が行われる。ヒュームコレクタ62は、ヒューム除去モードにおいて、送風機64を稼働してヒューム除去フィルタ63により不活性ガスからヒュームを除去し、逆洗モードにおいて、送風機64を停止して逆洗装置65により逆洗を行うように構成される。照射装置5によるレーザ光L又は電子ビームの照射中において、ヒュームコレクタ62は、ヒューム除去モードで運転されることが好ましい。また、逆洗モードによるヒュームコレクタ62の運転は、上述の逆洗を行う好ましいタイミングにおいて行われることが好ましい。
【0043】
1.5.圧力検出装置7
圧力検出装置7は、チャンバ1内の圧力Pを検出する。圧力検出装置7は、例えば、圧力センサである。検出結果は、制御装置8へと出力される。図1に示すように、本実施形態の圧力検出装置7は、チャンバ1内に配置され、チャンバ1内の圧力Pを常時監視可能に構成される。なお、常時監視とは、圧力検出装置7から検出圧力を示す絶え間ない連続信号を取得可能な構成の他、圧力検出装置7から検出圧力を示す信号を所定の短い周期で取得可能な構成も含まれる。
【0044】
チャンバ1内における圧力Pの検出位置は、特に限定されない。なお、圧力検出装置7として圧力センサを用いる場合、ヒュームによる圧力センサの劣化を抑制する観点からは、ヒュームの滞留がより少ない第1供給口1b付近に圧力センサを配置することが好ましい。
【0045】
2.制御装置8
次に、積層造形装置100を制御するための制御装置8について、本発明に関連する構成に限定して説明する。図7は、制御装置8の構成を示すブロック図である。本実施形態の制御装置8は、数値制御部83、及び積層造形装置100の各構成要素の制御部86,87,89を備える。また、制御装置8の外部には、CAD装置81及びCAM装置82が設けられる。
【0046】
制御装置8の各構成要素、CAD装置81、及びCAM装置82は、ソフトウェアによって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、CPUがコンピュータプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。プログラムは、内蔵の記憶部に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。また、外部の記憶部に格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。ハードウェアによって実現する場合、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はDRP(Dynamically Reconfigurable Processor)等の種々の回路によって実現することができる。本実施形態においては、様々な情報やこれを包含する概念を取り扱うが、これらは、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表すことができ、上述のソフトウェア又はハードウェアの態様によって通信や演算が実行され得るものである。
【0047】
CAD装置81は、三次元造形物の形状及び寸法を示す三次元形状データ(CADデータ)を作成するためのものである。CAM装置82は、CADデータに基づき、積層造形装置100の構成要素の動作手順データ(CAMデータ)を作成するためのものである。CAMデータには、例えば、各材料層91におけるレーザ光Lの照射位置や照射条件のデータが含まれる。CAMデータは、数値制御部83に出力される。CAMデータは、フラッシュメモリ等の非一時的な記録媒体に出力し、当該記録媒体を介して数値制御部83に取り込まれてもよい。或いは、CAM用コンピュータと数値制御部83とをネットワークを介し接続して、CAMデータを数値制御部83に出力する構成としてもよい。
【0048】
数値制御部83は、積層造形装置100の構成要素に対する動作指令を作成する。数値制御部83は、記憶部84及び演算部85を備える。演算部85は、記憶部84に記憶されているCAMデータに基づいて生成される数値制御プログラムを用いた処理を行い、積層造形装置100の構成要素の制御部に対して動作指令を信号又は動作指令値のデータの形式で出力する。記憶部84は、CAMデータ、数値制御プログラム等を記憶する。
【0049】
材料層形成制御部86は、リコータヘッド駆動装置33を制御して、リコータヘッド32を水平1軸方向に往復移動させる。これにより、造形領域Rに材料層91が形成される。
【0050】
照射制御部87は、動作指令に基づいて照射装置5を構成する第1~第4照射装置51,52,53,54の動作を制御する。具体的には、照射制御部87は、光源51a,52a,53a,54a、フォーカス制御ユニット51b,52b,53b,54b、及び走査装置51d,52d,53d,54dを制御し、これにより、レーザ光Lが、材料層91の所定の位置に、所定の条件で照射される。
【0051】
ヒュームコレクタ制御部89は、動作指令に基づいてヒュームコレクタ62を制御する。本実施形態のヒュームコレクタ制御部89は、入力部89aと、指令部89bと、インバータ制御部89cと、弁制御部89dと、逆洗制御部89eと、を備える。
【0052】
入力部89aは、ヒュームコレクタ62の運転条件の決定に必要な情報を作業者が入力するためのものであり、例えば、タッチパネル、キーボード、又はマウスにより構成される。入力情報は、指令部89bへ送られる。
【0053】
指令部89bは、数値制御部83から送られる動作指令、及び入力部89aから送られる入力情報に基づき、ヒュームコレクタ62の具体的な運転条件を決定する。本実施形態の指令部89bは、モード切替部89fと、モード継続時間設定部89gとを備える。
【0054】
モード切替部89fは、ヒュームコレクタ62の運転モードの切替を行う。具体的には、モード切替部89fは、インバータ制御部89c、弁制御部89d、及び逆洗制御部89eに対して運転モードの情報を出力する。本実施形態のモード切替部89fは、後述する除去継続時間trに基づきヒューム除去モードから逆洗モードへの切替を行い、後述する逆洗継続時間tcに基づき逆洗モードからヒューム除去モードへの切替を行う。
【0055】
モード継続時間設定部89gは、ヒューム除去モードによるヒュームコレクタ62の1回の運転あたりの時間である除去継続時間trを設定する。また、モード継続時間設定部89gは、逆洗モードによるヒュームコレクタ62の1回の運転あたりの時間である逆洗継続時間tcを設定する。
【0056】
インバータ制御部89cは、指令部89bから送られる運転条件に基づき、インバータ装置64aが出力する交流の周波数を切替えるとともに、例えば、V/f制御により、周波数に応じて電圧を増減させる。具体的には、インバータ制御部89cは、ヒューム除去モードによる運転では運転条件に従った所定の回転数で送風機64を稼働させ、逆洗モードによる運転では送風機64を停止する。また、本実施形態のインバータ制御部89cは、圧力検出装置7により検出されたチャンバ1内の圧力Pに基づき、送風機64の回転数を切り替えるように構成される。
【0057】
弁制御部89dは、指令部89bから送られる運転条件に基づき、入口弁62a1、出口弁62b1、及び排気弁67aの開閉を切り替える。本実施形態の弁制御部89dは、ヒューム除去モードによる運転では入口弁62a1及び出口弁62b1を開き、排気弁67aを閉じ、逆洗モードによる運転では入口弁62a1及び出口弁62b1を閉じ、排気弁67aを開く。
【0058】
逆洗制御部89eは、指令部89bから送られる運転条件に基づき、逆洗装置65を制御する。具体的には、逆洗制御部89eは、ヒューム除去モードによる運転ではガス供給弁65cを閉じ、逆洗モードによる運転ではガス供給弁65cを所定時間開き、その後一旦ガス供給弁65cを閉じ、蓄圧タンク65aに蓄圧後に再度ガス供給弁65cを所定時間開く制御を繰り返し行う。
【0059】
3.積層造形物の製造方法
次に、本実施形態に係る積層造形装置100を用いた積層造形物の製造方法について説明するとともに、ヒュームコレクタ62の制御についてより詳細に説明する。本実施形態の製造方法は、固化層形成工程と、ヒューム除去工程と、逆洗工程とを備える。図8は、本実施形態の積層造形方法のフロー図である。
【0060】
造形準備として、作業者は、制御装置8の入力部89aに対してヒュームコレクタ62の運転条件に係る情報を入力し、入力部89aが入力情報を取り込む(ステップS1)。また、不活性ガス供給装置61によりチャンバ1に不活性ガスを供給してチャンバ1内に充満させる。ヒュームコレクタ制御部89は、ヒューム除去モードでヒュームコレクタ62の運転を開始する。具体的には、弁制御部89dにより入口弁62a1及び出口弁62b1を開き、排気弁67aを閉じ、インバータ制御部89cにより所定の回転数で送風機64を稼働させる。
【0061】
造形準備が整った後、固化層形成工程が実行される。固化層形成工程では、造形領域Rに材料粉体を供給して材料層91を形成する材料層形成工程と、材料層91にレーザ光又は電子ビームを照射することにより固化層92を形成する固化工程とを繰り返すことにより、固化層92を積層する。まず、1回目の材料層形成工程が実行される。具体的には、図9に示すように、ベースプレート90が載置された造形テーブル4が下降して適切な位置に調整される(ステップS2)。材料層形成制御部86は、リコータヘッド駆動装置33を制御して、例えば、図9において造形領域Rの左側で待機しているリコータヘッド32を水平1軸方向に造形領域Rの左側から右側に移動させる。これにより、造形テーブル4上に材料粉体を供給して1層目の材料層91が形成される(ステップS3)。なお、材料層91の形成時におけるリコータヘッド32の移動態様は上述の例に限定されるものではく、例えば、リコータヘッド32は、造形領域Rを左右方向に往復する動作により1層の材料層91を形成してもよい。
【0062】
次に、1回目の固化工程が実行される。具体的には、照射制御部87は、照射装置5を制御してレーザ光Lを照射する。これにより、図10に示すように、1層目の材料層91の所定の照射領域にレーザ光Lが照射されて材料層91が固化され、1層目の固化層92が形成される(ステップS4)。
【0063】
次に、2回目の材料層形成工程が行われる。造形テーブル4の高さを材料層91の1層分下げた後、図10において造形領域Rの右側から左側にリコータヘッド32を移動させることにより、1層目の固化層92を覆うように2層目の材料層91を形成する。続いて、2回目の固化工程が行われる。2層目の材料層91の所定の照射領域にレーザ光Lを照射することによって2層目の材料層91を固化させ、2層目の固化層92を形成する。所定数の固化層92の造形が完了するまで、材料層形成工程及び固化工程が繰り返し実行される。隣接する固化層92は、互いに強く固着される。
【0064】
固化層形成工程と並行して、ヒューム除去工程及び逆洗工程が実行される。ヒューム除去工程では、ヒュームコレクタ62により、チャンバ1からヒュームと共に排出される不活性ガスからヒュームを除去する。本実施形態では、ヒュームコレクタ62をヒューム除去モードで運転することで、ヒューム除去工程が実行される(ステップS5)。
【0065】
本実施形態では、ヒューム除去工程において、チャンバ1内の圧力Pに基づき送風機64の回転数を切り替えるように、ヒュームコレクタ62が制御装置8により制御される。具体的には、チャンバ1内の圧力Pが略一定又は所定の許容範囲内に保持されるように、制御装置8のインバータ制御部89cがインバータ装置64aから出力される交流の周波数を切り替えて、送風機64の回転数を増減させる。
【0066】
一例において、インバータ制御部89cは、チャンバ1内の圧力Pが所定の許容範囲を下回る場合に、送風機64の回転数を増加させる。また、インバータ制御部89cは、チャンバ1内の圧力Pが所定の許容範囲を上回る場合に、送風機64の回転数を減少させる。具体的には、圧力Pの許容範囲として上限値Pmax及び下限値Pminを設定した場合、チャンバ1内の圧力Pについて、P<Pminとなった時点で、インバータ制御部89cは、インバータ装置64aから出力される交流の周波数を増加させ、送風機64の回転数を増加させる。また、Pmax<Pとなった時点で、インバータ制御部89cは、インバータ装置64aから出力される交流の周波数を減少させ、送風機64の回転数を減少させる。
【0067】
なお、送風機64の回転数の増加又は減少によりチャンバ1内の圧力Pが許容範囲内に回復した(Pmin≦P≦Pmaxとなった)後は、例えば、圧力Pが許容範囲内に回復した時点で送風機64の回転数の増加又は減少を停止し、その時点での回転数を圧力Pが許容範囲を再び外れるまで維持してもよい。或いは、圧力Pが許容範囲内に回復後も送風機64の回転数の増加又は減少を継続し、圧力PがPmin≦Pref≦Pmaxを満たす所定の基準圧力Prefに達した時点で送風機64の回転数の増加又は減少を停止し、その時点の回転数を圧力Pが許容範囲を再び外れるまで維持してもよい。基準圧力Prefは、例えば、Pref=(Pmin+Pmax)/2となるように設定可能である。
【0068】
ヒューム除去フィルタ63にヒュームが付着して目詰まりが発生すると、チャンバ1とヒュームコレクタ62との間の不活性ガスの循環風量が低下し、ヒュームの排出効率が低下する。この際、循環風量の低下に伴い、チャンバ1内の圧力Pが低下する。従って、チャンバ1内の圧力Pが許容範囲を下回る場合に、送風機64の回転数を増加させることで、チャンバ1とヒュームコレクタ62との間の循環風量を増加させて、ヒュームの滞留を防止することができる。
【0069】
この際、レーザ光L又は電子ビームの照射を中断する必要がないため、造形時間を増加させることなくヒューム除去フィルタ63の目詰まりに伴う造形品質の低下を抑制できる。特に、本実施形態のように複数のレーザ光L又は電子ビームを同時に照射する場合、単位時間あたりのヒュームの発生量が増加する。その結果、ヒューム除去フィルタ63の目詰まりを解消するために逆洗を頻回又は長時間行う必要が生じて造形時間が増加したり、1層の材料層91に対する照射中に目詰まりが発生し循環風量が低下する可能性がある。送風機64の回転数の制御により循環風量が維持可能となることで、逆洗の実施回数及び時間を低減可能である他、循環風量の低下により照射が中断される事態を回避することができる。
【0070】
一方、チャンバ1とヒュームコレクタ62との間の不活性ガスの循環風量が大きすぎると、材料層91を形成する材料粉体が吹き飛ばされるおそれがある。従って、チャンバ1内の圧力Pが許容範囲を上回る場合に、送風機64の回転数を減少させることで、チャンバ1とヒュームコレクタ62との間の循環風量を減少させて、そのような事態を回避することができる。
【0071】
ここで、ヒュームの排出効率の低下を回避するうえでは、チャンバ1内又は循環路60内で風速を検出し、検出結果に基づき送風機64の回転数を制御する構成も考えられる。しかし、風速はチャンバ1内又は循環路60内の検出位置によって差が出やすいため、検出位置の調整が煩雑となったり、複数箇所で風速を測定するために検出装置が複雑化する可能性がある。
【0072】
これに対し、本実施形態では、チャンバ1内の圧力に基づき送風機64の回転数を制御する。チャンバ1内の圧力は不活性ガスの循環風量との相関があり、またチャンバ1の内部における圧力分布は略均一である。従って、ヒュームの排出効率の低下を回避するための送風機64の回転数の制御を、圧力の検出位置によらず、比較的単純な圧力検出装置7を用いて高精度で行うことが可能となる。
【0073】
本実施形態では、モード継続時間設定部89gにより除去継続時間trが設定される。モード切替部89fは、ヒューム除去モードによるヒュームコレクタ62の運転開始(換言すれば、ヒューム除去工程の開始)から除去継続時間trが経過するまでヒューム除去モードを継続し(ステップS6)、除去継続時間trが経過した時点で、逆洗モードへの切替を行う。これにより、1回目のヒューム除去工程が終了する。
【0074】
逆洗工程では、逆洗装置65により逆洗を行う。本実施形態では、ヒュームコレクタ62を逆洗モードで運転することで逆洗工程が実行される(ステップS7)。具体的には、インバータ制御部89cにより送風機64を停止させ、弁制御部89dにより入口弁62a1及び出口弁62b1を閉じ、排気弁67aを開き、逆洗制御部89eによりガス供給弁65cを開く。
【0075】
造形中において、モード切替部89fは、逆洗モードによるヒュームコレクタ62の運転が材料層91の形成時に行われるように運転モードの切替を行うことが好ましい。換言すれば、逆洗工程は、材料層形成工程中に行われることが好ましい。また、逆洗は、1層の固化層92が形成される毎に、換言すれば、毎回の材料層形成工程において行ってもよく、固化層形成工程が複数回行われて複数層の固化層92が形成される毎に、その直後の材料層形成工程で行ってもよい。逆洗を毎回の材料層形成工程において行うことで、大面積の造形時等において1層の固化層92の形成時のヒュームの発生量が比較的大きい場合でも、ヒューム除去フィルタ63の目詰まりに伴う循環風量の低下を効果的に抑制できる。一方、ヒュームは、ヒューム除去フィルタ63への付着直後よりもある程度時間が経過して凝固した状態の方が除去しやすいため、複数回の固化層形成工程後の材料層形成工程で逆洗を行うことで、ヒュームを効率よく除去可能となる。
【0076】
本実施形態では、モード継続時間設定部89gにより逆洗継続時間tcが設定される。モード切替部89fは、逆洗モードによるヒュームコレクタ62の運転開始(換言すれば、逆洗工程の開始)から逆洗継続時間tcが経過するまで逆洗モードを継続し(ステップS8)、逆洗継続時間tcが経過した時点で運転モードの切替を行って再びヒューム除去モードによる運転を開始する(ステップS5)。これにより、1回目の逆洗工程が終了する。
【0077】
このような構成では、ヒューム除去工程において送風機64の回転数を制御して不活性ガスの循環風量を維持するとともに、逆洗工程においてヒューム除去フィルタ63の目詰まりを解消することで、循環風量の低下をさらに抑制し、チャンバ1からより効率的にヒュームを排除することが可能となる。
【0078】
本実施形態では、三次元造形物の造形中において逆洗モードによりヒュームコレクタ62を運転する際の逆洗継続時間tcとして、第1逆洗継続時間tc1、及び第2逆洗継続時間tc2が設定される。第1逆洗継続時間tc1は、制御装置8がヒューム除去モードのヒュームコレクタ62を制御することでチャンバ1内の圧力Pが所定の許容範囲に収まる場合において、その直後の逆洗モードによるヒュームコレクタ62の運転における逆洗継続時間tcである。本実施形態では、ヒューム除去モードにおいてインバータ制御部89cにより送風機64の回転数の制御を行うことでPmin≦P≦Pmaxとなっている場合、その直後に逆洗モードへ切り替えてから第1逆洗継続時間tc1が経過するまでの間、逆洗工程が行われる。
【0079】
好ましくは、第1逆洗継続時間tc1は、1回の材料層形成工程の工程時間tm(換言すれば、1層の材料層91の形成に要する時間)よりも小さく設定される。これにより、逆洗を1回の材料層形成工程中に完了させることができ、造形を中断する必要がない。
【0080】
図11Aは、第1逆洗継続時間tc1に基づくヒューム除去モードから逆洗モードへの切替のタイミングの一例を示す図である。図中のtiは、1回の固化工程の工程時間(換言すれば、1層の材料層91に対するレーザ光Lの照射に要する時間)を示す。k層目の材料層形成工程中に逆洗モードへの切替を行う場合、(k-1)層目の固化工程が終了し、k層目の材料層形成工程が開始した後、所定時間tw1の経過後に切替を行うことが好ましい。(k-1)層目の固化工程の終了後も所定時間tw1が経過するまでヒューム除去モードによる運転を継続することで、レーザ光Lの照射終了間際に発生したヒュームがチャンバ1内に滞留することを防止できる。また、その後の逆洗モードからヒューム除去モードへの切替は、k層目の材料層形成工程が終了しk層目の固化工程が開始する時点よりも所定時間tw2前に行うことが好ましい。k層目の固化工程の開始前にヒューム除去モードによるヒュームコレクタ62の運転を開始することで、チャンバ1内が好適な圧力Pに保たれた状態でレーザ光Lの照射を開始することができる。
【0081】
第2逆洗継続時間tc2は、制御装置8がヒューム除去モードのヒュームコレクタ62を制御し送風機64の回転数が所定の上限値rに達しても圧力Pが許容範囲を下回る場合において、その直後の逆洗モードによるヒュームコレクタ62の運転における逆洗継続時間tcであり、第1逆洗継続時間tc1よりも長く設定される。本実施形態では、ヒューム除去モードによる運転中にP<Pminとなり、インバータ装置64aから出力される交流の周波数を増加させて送風機64の回転数が所定の上限値rに達しても圧力Pが許容範囲(Pmin≦P≦Pmax)に回復しない場合に、その直後に逆洗モードへ切り替えてから第2逆洗継続時間tc2が経過するまでの間、逆洗工程が行われる。これにより、送風機64の回転数が上限値rに達しても圧力Pが回復しないほどの目詰まりが発生しているヒューム除去フィルタ63に対して、より長時間逆洗を行って、その後の造形における不活性ガスの循環風量の低下を抑制することができる。
【0082】
第2逆洗継続時間tc2は、造形時間への影響を最小化するために1回の材料層形成工程の工程時間tmより小さく設定されてもよい。或いは、ヒューム除去フィルタ63の目詰まりの解消を優先させて、第2逆洗継続時間tc2を、材料層形成工程の終了後も所定時間逆洗が継続されるように(例えば、tm<tc2となるように)設定してもよい。なお、第2逆洗継続時間tc2に基づく逆洗モードでの運転においても、第1逆洗継続時間tc1と同様に、所定時間tw1,tw2を確保してモード切替を行うことが好ましい。
【0083】
図11Bは、第2逆洗継続時間tc2に基づくヒューム除去モードから逆洗モードへの切替のタイミングの一例を示す図である。本例では、(k-1)層目の固化工程が終了し、k層目の材料層形成工程が開始した後、所定時間tw1の経過後に逆洗モードへの切替が行われる。そして、k層目の材料層形成工程の終了後も所定時間tw3逆洗が継続された後、ヒューム除去モードへの切替が行われる。従って、tw1+tc2=tm+tw3の関係にある。ヒューム除去モードへの切替後、さらに所定時間tw2が経過した後に、k層目の固化工程が開示される。このような構成では、逆洗工程を1回実施するごとに、造形時間が時間(tw2+tw3)だけ延長されることとなる。
【0084】
また、値の異なる第2逆洗継続時間tc2を複数設定し、適宜選択可能としてもよい。例えば、P<Pminとなり、送風機64の回転数を上限値rまで増加させても圧力Pが許容範囲に回復しない場合において、圧力Pの値が比較的大きい場合には複数の第2逆洗継続時間tc2から比較的小さい値を選択し、圧力Pの値が比較的小さい場合には複数の第2逆洗継続時間tc2から比較的大きい値を選択してもよい。第2逆洗継続時間tc2を複数設定することで、逆洗に伴う造形時間への影響を抑制することができる。
【0085】
なお、除去継続時間tr、第1逆洗継続時間tc1、及び第2逆洗継続時間tc2は、作業者が制御装置8の入力部89aに対してヒュームコレクタ62の運転条件に係る情報として入力したものを用いてもよい。或いは、造形条件に応じた最適な除去継続時間tr、第1逆洗継続時間tc1、及び第2逆洗継続時間tc2を記録したデータベース、又は造形条件から除去継続時間tr、第1逆洗継続時間tc1、及び第2逆洗継続時間tc2を求めるための関数等を予め作成し、モード継続時間設定部89gがこれらを用いて除去継続時間tr、第1逆洗継続時間tc1、及び第2逆洗継続時間tc2を自動で設定する構成としてもよい。
【0086】
造形が完了するまで、上述の工程が繰り返し実行される。なお、造形中又は造形後に、固化層92に対して必要に応じて機械加工装置(不図示)による切削加工等を行ってもよい。機械加工装置は、例えば、チャンバ1内に設けられ、切削等の機械加工を行うための工具(例えば、エンドミル)を加工ヘッドに取り付けて構成され、加工ヘッドを水平方向及び鉛直方向に適宜移動させて機械加工を行う。造形完了後は、未固化の材料粉体及び切削屑を排出することによって造形物を得ることができる。また、機械加工中はヒュームコレクタ62の送風機64を停止してもよく、機械加工中に逆洗モードによるヒュームコレクタ62の運転を行ってもよい。
【0087】
本実施形態では、三次元造物の造形が終わり次の造形段取りを始めるまでの間において、逆洗モードによるヒュームコレクタ62の運転を行う。この際の逆洗継続時間tcとして、モード継続時間設定部89gは、第1逆洗継続時間tc1よりも長い第3逆洗継続時間tc3を設定する。次の造形段取りを始めるまでのレーザ光Lの照射が長時間行われないタイミングを利用して比較的長時間逆洗を行うことで、ヒューム除去フィルタ63の目詰まりを解消し、次の造形における不活性ガスの循環風量の低下を抑制することができる。
【0088】
第3逆洗継続時間tc3は、上述した除去継続時間trの設定態様と同様に、作業者が入力部89aに対してヒュームコレクタ62の運転条件に係る情報として入力したものを用いてもよく、データベースや関数等を用いてモード継続時間設定部89gが自動で設定する構成としてもよい。なお、ヒューム除去フィルタ63の目詰まりの程度や次の造形段取りを始めるまでの照射停止時間は造形の状況によって変化するため、モード継続時間設定部89gによる自動設定では第3逆洗継続時間tc3が過大又は過小となりやすい。従って、ヒューム除去フィルタ63の目詰まりを解消するうえで必要十分な第3逆洗継続時間tc3を設定するために、第3逆洗継続時間tc3は、三次元造物の造形が終わる毎に作業者が入力部89aに対して入力して設定されることが好ましい。
【0089】
4.他の実施形態
本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0090】
上述の実施形態のヒュームコレクタ62は、ヒューム除去フィルタ63によりヒュームを捕集する濾過式集塵機であったが、ヒュームコレクタ62は電気集塵機でもよい。電気集塵機は、コロナ放電により不活性ガス中のヒュームを帯電させ、クーロン力によってヒュームを捕集する。また、高電圧の印加により発生するオゾンを触媒により分解するためにフィルタ状の触媒ユニットが設けられている。造形に伴い触媒ユニットにヒュームが付着し目詰まりが発生すると、不活性ガスの循環風量が低下し得る。このような構成においても、チャンバ1内の圧力に基づき送風機64の回転数を切り替えるようにヒュームコレクタ62を制御することで、循環風量の低下を抑制できる。
【0091】
以上、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 :チャンバ
1a :ウィンドウ
1b :第1供給口
1c :第2供給口
1d :排出口
3 :材料層形成装置
4 :造形テーブル
5 :照射装置
6 :不活性ガス給排装置
7 :圧力検出装置
8 :制御装置
17 :汚染防止装置
17a :筐体
17b :開口部
17c :拡散部材
17d :不活性ガス供給空間
31 :ベース
32 :リコータヘッド
32a :材料収容部
32b :材料供給口
32c :材料排出口
32fb :ブレード
32rb :ブレード
33 :リコータヘッド駆動装置
41 :造形テーブル駆動装置
51 :第1照射装置
51a :光源
51b :フォーカス制御ユニット
51c :調整レンズ
51d :走査装置
51d1 :X軸ガルバノミラー
51d2 :Y軸ガルバノミラー
52 :第2照射装置
52a :光源
52b :フォーカス制御ユニット
52c :調整レンズ
52d :走査装置
52d1 :X軸ガルバノミラー
52d2 :Y軸ガルバノミラー
53 :第3照射装置
53a :光源
53b :フォーカス制御ユニット
53c :調整レンズ
53d :走査装置
53d1 :X軸ガルバノミラー
53d2 :Y軸ガルバノミラー
54 :第4照射装置
54a :光源
54b :フォーカス制御ユニット
54c :調整レンズ
54d :走査装置
54d1 :X軸ガルバノミラー
54d2 :Y軸ガルバノミラー
60 :循環路
61 :不活性ガス供給装置
62 :ヒュームコレクタ
62a :入口
62a1 :入口弁
62b :出口
62b1 :出口弁
63 :ヒューム除去フィルタ
64 :送風機
64a :インバータ装置
65 :逆洗装置
65a :蓄圧タンク
65b :ガス供給路
65c :ガス供給弁
65d :回収容器
66 :排気口
67 :排気路
67a :排気弁
67b :排気フィルタ
68 :ダクトボックス
69 :ダクトボックス
81 :CAD装置
82 :CAM装置
83 :数値制御部
84 :記憶部
85 :演算部
86 :材料層形成制御部
87 :照射制御部
89 :ヒュームコレクタ制御部
89a :入力部
89b :指令部
89c :インバータ制御部
89d :弁制御部
89e :逆洗制御部
89f :モード切替部
89g :モード継続時間設定部
90 :ベースプレート
91 :材料層
92 :固化層
100 :積層造形装置
D :流入方向
L :レーザ光
R :造形領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11