(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068114
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】セラミック電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 512
H01G4/30 517
H01G4/30 201D
H01G4/30 201K
H01G4/30 311D
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150306
(22)【出願日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】10-2022-0146266
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0187735
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】田 仁浩
(72)【発明者】
【氏名】尹 碩▲ヒュン▼
(72)【発明者】
【氏名】金 珍友
(72)【発明者】
【氏名】尹 秉吉
(72)【発明者】
【氏名】具 本亨
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲ミン▼禎
(72)【発明者】
【氏名】金 美良
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH01
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC30
5E082BC35
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG28
5E082LL02
5E082PP03
(57)【要約】
【課題】セラミック電子部品の誘電体層の常温誘電率を向上させ、誘電体層の誘電損失を最小化し、温度-容量特性、高温絶縁抵抗、及び平均故障時間を向上させる。
【解決手段】本発明の一実施形態によるセラミック電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、上記内部電極との界面から上記誘電体層の内部方向に50nmまでの領域である第1領域及び上記第1領域を除いた領域である第2領域を含み、上記第1領域の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量は0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量は0.5at%以上1.75at%以下であることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層、及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、前記内部電極との界面から前記誘電体層の内部方向に50nmまでの第1領域及び前記第1領域を除いた領域である第2領域を含み、
前記第1領域は、酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量が0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量が0.5at%以上1.75at%以下である、セラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1領域の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量をI1、前記第2領域の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量をI2、
前記第1領域の酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量をS1、前記第2領域の酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量をS2とするとき、
I1>I2及びS1>S2を満たす、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記内部電極の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量をI3、前記内部電極の酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量をS3とするとき、
I1>I2>I3及びS1>S2>S3を満たす、請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記I2は1.0at%以下であり、前記S2は1.0at%以下である、請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記I3は0.5at%未満であり、前記S3は0.5at%未満である、請求項4に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記第1領域は、酸素を除いた全体元素に対するInの含有量のピーク値が1.2at%以上であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの含有量のピーク値が1.0at%以上である、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記内部電極は、酸素を除いた全体元素に対するNi含有量が90at%以上であり、前記誘電体層の内部電極との界面は酸素を除いた全体元素に対するNi含有量が90at%以下に低くなり始める地点である、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層の平均厚さは、1.8μm以上2.8μm以下である、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記誘電体層は、Ba及びTiを主成分元素として含む、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち一つ以上を含む第1副成分元素を酸素を除いた全体元素に対して0at%超過0.6at%以下含む、請求項9に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層は、第2副成分元素としてMgを含み、酸素を除いた全体元素に対する前記第2副成分元素の含有量は0.3at%以上0.6at%以下である、請求項9に記載のセラミック電子部品。
【請求項12】
前記誘電体層は、第3副成分元素であり、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd及びYbのうち一つ以上を含み、酸素を除いた全体元素に対する前記第3副成分元素の含有量は0.6at%以上1.8at%以下である、請求項9に記載のセラミック電子部品。
【請求項13】
前記誘電体層は、第4副成分元素としてSiを含み、酸素を除いた全体元素に対する前記第4副成分元素の含有量は1.0at%以上2.0at%以下である、請求項9に記載のセラミック電子部品。
【請求項14】
前記セラミック電子部品は、誘電率2500以上、MTTFが200時間以上、高温IR値1.0E+07Ω以上、及び-55℃~125℃の温度範囲でTCC変化率が-22%以上22%以下のうち一つ以上の特性を満たす、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項15】
誘電体粉末を主成分として含み、前記主成分100モルに対してSnを0.9モル以上1.8モル以下含み、Inを0.05モル以上0.1モル以下含む誘電体組成物を準備する段階と、
前記誘電体組成物を用いてセラミックグリーンシートを形成する段階と、
前記セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を形成する段階と、
前記積層体を焼成して誘電体層及び内部電極を含む本体を形成する段階と、
前記本体に外部電極を形成する段階と、を含む、セラミック電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記誘電体組成物に含まれるIn及びSnは、インジウムスズ酸化物(Indium-Tin-Oxide)の形態で含まれ、前記誘電体組成物は、主成分100モルに対して前記インジウムスズ酸化物を0.5モル以上1.0モル以下含む、請求項15に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項17】
前記誘電体粉末はBaTiO3粉末である、請求項15に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項18】
前記誘電体組成物は、原子価可変アクセプタ元素の酸化物あるいは炭酸塩のうち一つ以上を含む第1副成分を主成分100モルに対して0.1モル以上0.3モル以下含み、
前記原子価可変アクセプタ元素は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち一つ以上である、請求項17に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項19】
前記誘電体組成物は、Mgの酸化物または炭酸塩のうち一つ以上を含む第2副成分を主成分100モルに対して0.3モル以上0.9モル以下含む、請求項17に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項20】
前記誘電体組成物は、希土類元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第3副成分を主成分100モルに対して0.3モル以上0.9モル以下含み、
前記希土類元素は、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd及びYbのうち一つ以上である、請求項17に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項21】
前記誘電体組成物は、Siの酸化物、Siの炭酸塩及びSiを含むガラスのうち一つ以上を含む第4副成分を主成分100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下含む、請求項17に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器など、各種電子機器が小型化、高出力化され、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
最近、電気車両(EV、HEV、PHEVなど)の技術力が徐々に向上して普及率が高くなっており、これに伴う半導体及び電子受動素子の需要が共に急増している。IT用電子受動素子とは異なり、電気車両用素子は高温/高圧/多湿な環境でエラーなく作動する必要があり、これに応じた高い保証電圧で超高信頼性を実現することができる材料開発は必須の課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題の一つは、セラミック電子部品の誘電体層の常温誘電率を向上させることである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題の一つは、セラミック電子部品の誘電体層の誘電損失(DF、Dissipation Factor)を最小化することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題の一つは、セラミック電子部品の温度-容量特性(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)を向上させることである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題の一つは、セラミック電子部品の高温絶縁抵抗を向上させることである。
【0009】
本発明が解決しようとする課題の一つは、セラミック電子部品の平均故障時間(MTTF、Mean Time To Failure)を向上させることである。
【0010】
但し、本発明が解決しようとする様々な課題は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、上記内部電極との界面から上記誘電体層の内部方向に50nmまでの領域である第1領域、及び上記第1領域を除いた領域である第2領域を含み、上記第1領域の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量は0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量は0.5at%以上1.75at%以下であることができる。
【0012】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品の製造方法は、誘電体粉末を主成分として含み、上記主成分100モルに対してSnを0.9モル以上1.8モル以下含み、Inを0.05モル以上0.1モル以下含む誘電体組成物を準備する段階と、上記セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を形成する段階と、上記積層体を焼成して誘電体層及び内部電極を含む本体を形成する段階と、上記本体に外部電極を形成する段階と、を含むことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の様々な効果の一つは、セラミック電子部品の誘電体層の常温誘電率を向上させたことである。
【0014】
本発明の様々な効果の一つは、セラミック電子部品の誘電体層の誘電損失(DF、Dissipation Factor)を最小化したことである。
【0015】
本発明の様々な効果の一つは、セラミック電子部品の温度-容量特性(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)を向上させたことである。
【0016】
本発明の様々な効果の一つは、セラミック電子部品の高温絶縁抵抗を向上させたことである。
【0017】
本発明の様々な効果の一つは、セラミック電子部品の平均故障時間(MTTF、Mean Time To Failure)を向上させたことである。
【0018】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態によるセラミック電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図3】
図1のII-II’線に沿った断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による本体を分解して示した分解斜視図である。
【
図5】
図2のA領域を拡大して示した模式図である。
【
図6】比較例によるセラミック電子部品において、
図5のp、q及びr領域に対応する領域に沿ってSTEM-EDSを用いてNi、In及びSn元素の含有量を測定したラインプロファイル(Line Profile)分析結果を示したグラフである。
【
図7】実施例によるセラミック電子部品において、
図5のp及びr領域でSTEM-EDSを用いてNi、In及びSn元素の含有量を測定したラインプロファイル(Line Profile)分析結果を示したグラフである。
【
図8】実施例によるセラミック電子部品において、
図5のq領域でSTEM-EDSを用いてIn及びSn元素の含有量を測定したラインプロファイル(Line Profile)分析結果を示したグラフである。
【
図9】本発明の一実施形態によるセラミック電子部品の製造方法の順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上に同一符号で示される要素は同一要素である。
【0021】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0022】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0023】
セラミック電子部品
図1は、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品を概略的に示した斜視図であり、
図2は、
図1のI-I’線に沿った断面図であり、
図3は、
図1のII-II’線に沿った断面図であり、
図4は、本発明の一実施形態による本体を分解して示した分解斜視図であり、
図5は、
図2のA領域を拡大して示した模式図であり、
図6は、比較例によるセラミック電子部品において、
図5のp、q及びr領域に対応する領域に沿ってSTEM-EDSを用いてNi、In及びSn元素の含有量を測定したラインプロファイル(Line Profile)分析結果を示したグラフであり、
図7は、実施例によるセラミック電子部品において、
図5のp及びr領域でSTEM-EDSを用いてNi、In及びSn元素の含有量を測定したラインプロファイル(Line Profile)分析結果を示したグラフであり、
図8は、実施例によるセラミック電子部品において、
図5のq領域でSTEM-EDSを用いてIn及びSn元素の含有量を測定したラインプロファイル(Line Profile)分析結果を示したグラフである。
【0024】
以下、
図1~
図8を参照して、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品100について詳細に説明する。但し、セラミック電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は誘電体組成物を利用する様々な電子製品、例えばインダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0025】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層111と交互に配置される内部電極121、122を含む本体110、及び上記本体に配置される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層は、上記内部電極との界面IFから上記誘電体層の内部方向に50nmまでの領域である第1領域、及び第1領域R1を除いた領域である第2領域R2を含み、上記第1領域の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量は0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量は0.5at%以上1.75at%以下であることができる。
【0026】
本体110は、誘電体層111と交互に配置される内部電極を含む。
【0027】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように本体110は六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体状ではなく、実質的に六面体状を有することができる。
【0028】
本体110は、第1方向に互いに向かい合う第1面及び第2面1、2、上記第1面及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに向かい合う第3面及び第4面3、4、第1面及び第2面1、2と連結され、第3面及び第4面3、4と連結され、第3方向に互いに向かい合う第5面及び第6面5、6を有することができる。本体110を形成する複数の誘電体層111は、焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0029】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する誘電体組成物の主成分は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、またはチタン酸ストロンチウム系材料などを用いることができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示としてBaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0030】
また、上記誘電体層111を形成する誘電体組成物は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの主成分に本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤、副成分などが添加されることができ、本発明の一実施形態では、誘電体層111がSn及びInを含むことができる。誘電体層111にSn及びInを含ませる方法は特に制限されないが、後述する誘電体組成物にSn及びInを含む物質を含ませることで、誘電体層111がSn及びInを含むようにすることができる。
【0031】
本発明の一実施形態では、単に誘電体層111がSn及びInを含むようにするだけでなく、濃度と分布を調節することでセラミック電子部品100の静電容量特性、温度-容量特性及び高温信頼性のうち一つ以上を向上させることができる。
【0032】
一方、誘電体層111の平均厚さtは特に限定する必要はない。
【0033】
例えば、10μm以下であることができる。また、誘電体層111の平均厚さは、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。例えば、高電圧電装用電子部品の場合、誘電体層111の平均厚さは2.8μm以下であることができ、小型IT用電子部品の場合、小型化及び高容量化を達成するために誘電体層111の平均厚さは0.35μm以下であることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0034】
但し、誘電体層111の平均厚さtdが厚すぎる場合、セラミック電子部品100の静電容量を向上させることが困難であることがあり、薄すぎる場合、本発明の一実施形態のように誘電体層111の第1領域R1にSn及びInが特定の濃度で分布するように調節することが容易でないことがある。
【0035】
一実施形態では、誘電体層111の平均厚さtdを1.8μm以上2.8μm以下に調節することで、セラミック電子部品の静電容量特性、温度-容量特性及び高温信頼性向上の効果がさらに顕著になることができる。
【0036】
上記誘電体層111の平均厚さtdは、上記第1内部電極及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の第1方向の平均大きさを意味することができる。一方、本体110が複数の誘電体層111を含む場合、誘電体層111の平均厚さtdは、複数の誘電体層111の少なくとも一つの平均厚さを意味することができる。
【0037】
誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて一つの誘電体層を長さ方向に等間隔の30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30個の地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10個の誘電体層に拡張して平均値を測定すると、誘電体層の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0038】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの第1方向の上部及び下部に形成されたカバー部112、113を含むことができる。
【0039】
また、上記容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を挟んで複数の第1内部電極及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0040】
上記容量形成部Acの第1方向の一面及び他面には、カバー部112、113が配置されることができる。
【0041】
カバー部112、113は、上記容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び上記容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0042】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0043】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。
【0044】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0045】
カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。但し、セラミック電子部品の小型化及び高容量化のために、カバー部112、113の平均厚さは、100μm以下、30μm以下または20μm以下であることができる。ここで、カバー部112、113の平均厚さは、第1カバー部112及び第2カバー部113のそれぞれの平均厚さを意味することができる。
【0046】
カバー部112、113の平均厚さtcは、第1方向の大きさを意味することができ、容量形成部Acの上部または下部で等間隔の5つの地点で測定したカバー部112、113の第1方向の大きさを平均した値であることができる。
【0047】
また、上記容量形成部Acの一面及び他面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0048】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1マージン部114と第6面6に配置された第2マージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両端面(end surfaces)に配置されることができる。
【0049】
マージン部114、115は、
図3に示したように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面(cross-section)で第1内部電極及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0050】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0051】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成されるところを除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することで形成されたものであることができる。
【0052】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極が本体の第5面及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0053】
マージン部114、115の平均幅は特に限定する必要はない。但し、セラミック電子部品の小型化及び高容量化のために、マージン部114、115の平均幅は、100μm以下、20μm以下または15μm以下であることができる。
【0054】
マージン部114、115の平均幅は、内部電極が第5面と離隔した領域の第3方向の平均大きさ及び内部電極が第6面と離隔した領域の第3方向の平均大きさを意味することができ、容量形成部Acの側面で等間隔の5つ地点で測定したマージン部114、115の第3方向の大きさを平均した値であることができる。
【0055】
内部電極121、122は、第1内部電極及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1内部電極及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0056】
第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体の第3面3には第1外部電極131が配置され、第1内部電極121と連結され、本体の第4面4には第2外部電極132が配置され、第2内部電極122と連結されることができる。
【0057】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されずに、第2外部電極132と連結される。したがって、第1内部電極121は第4面4で一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3で一定距離離隔して形成されることができる。また、第1内部電極及び第2内部電極121、122は、本体110の第5面及び第6面と離隔して配置されることができる。
【0058】
このとき、第1内部電極及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0059】
本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0060】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気導電性に優れた材料を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。但し、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品100の製造方法は、誘電体組成物にSn及びInを特定の濃度で含み、誘電体層111の第1領域R1にSn及びInが集中分布されるため、内部電極121、122はSn及びInを実質的に含まないことが好ましい。
【0061】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はないが、例えば3μm以下であることができる。また、内部電極121、122の平均厚さは、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。例えば、高電圧電装用電子部品の場合、内部電極121、122の平均厚さは1μm未満であることができ、小型IT用電子部品の場合、小型化及び高容量化を達成するために、内部電極121、122の平均厚さは0.35μm以下であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】
上記複数の内部電極121、122の少なくとも一つの平均厚さteは、内部電極121、122の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0064】
内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて一つの内部電極を長さ方向に等間隔の30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30個の地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10個の内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0065】
外部電極131、132は本体110上に配置される。具体的には、外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができる。
【0066】
外部電極131、132は、本体110の第3面及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1内部電極及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1外部電極及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0067】
本実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0068】
一方、外部電極131、132は、金属などの電気導電性を有するものであれば、どのような物質を用いても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0069】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層及び電極層上に形成されためっき層を含むことができる。
【0070】
電極層に対するより具体的な例を挙げると、電極層は、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0071】
また、電極層は、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であることができる。また、電極層は、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。
【0072】
電極層に含まれる導電性金属として電気導電性に優れた材料を用いることができ、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びこれらの合金のうち一つ以上であることができる。
【0073】
めっき層は実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層の種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層から形成されることができる。
【0074】
めっき層に対するより具体的な例を挙げると、めっき層は、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層は、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0075】
セラミック電子部品100のサイズは特に制限されない。後述する実施形態では、3.2mm×1.6mmサイズのセラミック電子部品のサンプルを製作したが、これより大きいか、または小さいサイズのセラミック電子部品に対しても本発明の実施形態及び様々な実施形態が同様に適用されることができる。
【0076】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品100の誘電体層111は、内部電極121、122との界面IFから誘電体層111の内部方向に50nmまでの領域である第1領域R1及び第1領域R1を除いた領域である第2領域R2を含み、上記第1領域の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量は0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量は0.5at%以上1.75at%以下である。
【0077】
従来の場合、セラミック電子部品の信頼性及び静電容量特性を向上させるための方法で誘電体層に希土類又は遷移金属などを添加する試みがあり、Ni内部電極に揮発性金属元素を添加する試みもあった。しかしながら、このような方法は、添加剤元素の種類、含有量、焼成雰囲気、焼成後の微細構造などを調節するなど、様々な変数を考慮する必要があるという点で、所望の静電容量特性、高温信頼性及び温度-容量特性を同時に確保することには限界がある。
【0078】
そこで、本発明では誘電体層にIn及びSnを主要添加剤として添加し、内部電極との境界面で特定の分布を有するように調節することでセラミック電子部品の静電容量特性、温度-容量特性(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)及び高温信頼性の少なくとも一つ以上を向上させようとする。
【0079】
一方、本明細書では、誘電体層111の常温誘電率及び誘電損失(DF、Dissipation Factor)値を静電容量に関連する特性として、高温絶縁抵抗及び平均故障時間(MTTF、Mean Time To Failure)値を高温信頼性と関連した特性として判断した。
【0080】
図5を参照すると、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品100において、誘電体層111は、内部電極121、122との界面IFから誘電体層111の内部方向に50nmまでの領域である第1領域R1と上記第1領域を除いた領域である第2領域R2に区分することができる。
【0081】
誘電体層111と内部電極121、122は、後述するセラミックグリーンシートを形成し、セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を形成した後、焼成過程を経て界面を形成することができる。このような誘電体層111の内部電極121、122と界面IFは、誘電体層111及び内部電極121、122に含まれた元素の含有量が急激に変わる地点と定義することができる。具体的には、一実施形態では、酸素を除いた全体元素に対するNiの含有量が90at%以上の領域を内部電極121、122とし、酸素を除いた全体元素に対するNiの含有量が90at%以下に低くなり始める地点を誘電体層111の内部電極121、122との界面IFとして定義することができる。但し、誘電体層111と内部電極121、122との間には、酸素を除いた全体元素に対するNiの含有量が90at%以下に低くなりながら連続的に減少する区間が存在することができる。したがって、本発明の一実施形態で定義する誘電体層111と内部電極121、122の第1領域R1は、上記界面IFから酸素を除いた全体元素に対するNiの含有量が90at%以下に低下しつつ連続的に減少する領域であり、上記界面IFから誘電体層111の内部方向に50nmの領域とみなすことができる。
【0082】
図6は、比較例によるセラミック電子部品において、
図5のp、q及びr領域に対応する領域に沿って走査透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(STEM-EDS:Scanning Transmission Electron Microscopy-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いてNi、In及びSn元素の含有量を測定したラインプロファイル(Line Profile)分析結果を示したグラフである。
【0083】
図6による比較例は、誘電体組成物にインジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)を添加しないセラミック電子部品の場合であり、誘電体層がIn及びSnを実質的に含まない場合に該当する。すなわち、比較例によるセラミック電子部品の誘電体層で検出される酸素を除いた全体元素に対するIn及びSnの含有量はそれぞれ0.5at%未満であり、誘電体層が実質的にIn及びSnを含まない場合と見なすことができる。
【0084】
本発明による一実施形態において、第1領域R1に含まれるSn及びInの平均含有量は、
図7によるラインプロファイル(Line Profile)分析結果を示したグラフにおいて、誘電体層111の内部電極121、122との界面(IF、横軸値=0)から誘電体層の内部方向に50nmまで(横軸値=50nm)におけるIn及びSnの含有量の平均値を計算することで測定されることができる。
【0085】
図7によるラインプロファイル(Line Profile)分析は、
図5に示されたp、q及びr領域で行われることができる。具体的には、p領域及びr領域は内部電極121、122と誘電体層111の界面近傍領域として、q領域は誘電体層の中央部領域として設定されることができる。このとき、p領域及びr領域は横×縦=250nm×250nmの領域として、q領域は横×縦=300nm×300nmの領域として設定されることができる。一方、p、q及びrの領域は、必ずしも第2方向に一直線上に位置する必要はない。
【0086】
また、
図7によるラインプロファイル(Line Profile)分析結果を示したグラフは、STEM-EDSを介して検出された元素のうち、酸素(O)元素を除いた全体元素の含有量に対するNi、In、Snの含有量の割合をそれぞれ計算して示したものである。
【0087】
また、In及びSnの含有量の平均値は、p及びr領域をそれぞれ複数個設定してラインプロファイル(Line Profile)分析を行い、平均値をとることでさらに一般化することができる。具体的には、セラミック電子部品100の第3方向の中心まで研磨して第1方向及び第2方向の断面を露出させた後、容量形成部Acの中央部に位置した誘電体層111及び内部電極121、122の領域で、p及びr領域を複数個設定し、それぞれSTEM-EDSラインプロファイル(Line Profile)分析により算出されたNi、In及びSnの含有量に平均値をとることができる。
【0088】
また、本発明の一実施形態において、酸素を除いた全体元素に対するInの含有量及び酸素を除いた全体元素に対するSnの含有量の平均値は、容量形成部Acの中央部に位置した誘電体層111及び内部電極121、122の領域の以外にも、容量形成部Acを第1方向に3等分して上部、中央部、下部に区分した後、上部及び下部においても同様に各元素の平均含有量を測定することでさらに一般化することができる。
【0089】
一方、誘電体層111を形成する誘電体組成物を構成する成分は、誘電体組成物の状態で酸化物形態であることができるため、焼成後の誘電体層111では、In、Snなどの金属元素の他にも酸素(O)元素が検出されることができる。一方、内部電極121、122も誘電体層111に含まれた酸素が内部電極側に拡散したり、内部電極の焼成前の状態で添加された酸化物形態の成分により、Niなどの金属元素、希土類元素及び添加剤元素の他にも酸素(O)元素が検出されることができる。本発明で説明するIn、Sn及び様々な添加剤元素の含有量(at%)は、酸素を除いた全体元素に対する該当元素の含有量(at%)と設定した。
【0090】
図6を参照すると、比較例の場合も酸素を除いた全体元素に対するNiの含有量が90at%以下に低くなり始める地点を特定することができる。但し、酸素を除いた全体元素に対するNiの含有量が90at%以下に低くなり始める地点から誘電体層側に50nmまでの領域で測定された酸素を除いた全体元素に対するInの含有量及び酸素を除いた全体元素に対するSnの含有量は、0.5at%未満であり、ノイズレベルで測定されることを確認することができる。
【0091】
一方、
図7を参照すると、実施例による誘電体層111の内部電極121、122との界面IFから誘電体層の内部方向に50nmまでの第1領域R1において、酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量は0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量は0.5at%以上1.75at%以下であることを確認することができる。
【0092】
また、誘電体層111の内部電極121、122との界面IFから誘電体層の内部方向に50nm地点である第1領域R1に含まれるIn及びSnの含有量が第2領域R2または内部電極121、122に含まれるIn及びSnの含有量より多いことを確認することができる。すなわち、一実施形態では、In及びSnが第1領域R1に集中分布されていることができる。
【0093】
In及びSn元素が誘電体層111と内部電極121、122との界面付近に集中分布される場合、セラミック電子部品100の信頼性を向上させることができる。しかしながら、In及びSn元素が内部電極側に過度に拡散したり、誘電体層111の内部に過度に拡散する場合、却って静電容量特性が低下したり、温度-容量特性及び高温信頼性が低下するおそれがある。そこで、本発明では、誘電体層111と内部電極121、122の界面付近にIn及びSnが含まれるようにして高温信頼性の向上効果を得ながらも、In及びSnが内部電極121、122または誘電体層111の内部に過度に拡散することを抑制して、優れた静電容量特性、温度-容量特性のうち一つ以上を向上させることができる。
【0094】
本発明の一実施形態のように、第1領域R1の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量が0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量が0.5at%以上1.75at%以下に調節する場合、誘電体層111と内部電極121、122の界面で、誘電体層111に向かってIn及びSnが集中するようにすることで、In及びSnが内部電極に拡散して静電容量が低下する現象を抑制することができる。また、誘電体層111の内部電極121、122との界面IFから誘電体層の内部方向に50nmまでの領域である第1領域R1にIn及びSnを集中されるようにすることで誘電体層111の第2領域R2などの誘電体層111の内部にIn及びSnが過度に拡散する現象も抑制されることができる。
【0095】
すなわち、本発明の一実施形態のように、第1領域R1の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量が0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量が0.5at%以上1.75at%以下の場合、セラミック電子部品100の平均故障時間(MTTF、Mean Time To Failure)及び高温絶縁抵抗(IR、Insulation Resistance)などの高温信頼性を向上させることができ、常温での静電容量及び静電容量温度変化特性(TCC、Temperature Coefficient of Capacitance)などの温度-容量特性の少なくとも一つ以上を向上させることができる。
【0096】
より具体的には、本発明の一実施形態では、セラミック電子部品100において、第1領域R1の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量は、0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量は0.5at%以上1.75at%以下に調節されることで、誘電率2500以上、MTTFが200時間以上、高温IR値1.0E+07Ω以上及び-55℃~125℃の温度範囲でTCC変化率が-22%以上22%以下のうち一つ以上の特性を満たすことができ、より好ましくは誘電率2500以上、MTTFが200時間以上、高温IR値1.0E+07Ω以上、及び-55℃~125℃の温度範囲でTCC変化率が-22%以上22%以下のうち一つ以上の特性を全て満たすことができる。
【0097】
第1領域R1の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量が0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量が0.5at%以上1.75at%以下となるように製造する方法は、特に制限されないが、後述する本発明の一実施形態によるセラミック電子部品の製造方法及びそれに対する様々な実施例のように誘電体層に添加されるIn及びSnの含有量、In及びSnの添加形態、焼成温度、焼成雰囲気及び誘電体組成物の副成分元素の種類及び含有量のうち一つ以上を調節することで、第1領域におけるIn及びSnの組成と含有量及び分布が決定されることができる。
【0098】
一実施形態において、第1領域R1の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量をI1、第2領域R2の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量をI2、第1領域R1の酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量をS1、第2領域R2の酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量をS2とするとき、I1>I2及びS1>S2を満たすことができる。これにより、誘電体層111の第2領域R2よりも誘電体層111の第1領域R1に含まれるSn及びIn含有量を高く調節することで、優れた静電容量特性、高温信頼性及び温度-容量特性を確保することができる。
【0099】
一実施形態において、内部電極の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量をI3、内部電極の酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量をS3とするとき、I1>I2>I3及びS1>S2>S3を満たすことが好ましい。これにより、誘電体層111の第1領域R1にIn及びSnがさらに集中配置されるようにして優れた高温信頼性及び温度-容量特性を確保することができるだけでなく、In及びSnが内部電極121、122または第2領域R2に拡散して静電容量が低下したり、絶縁抵抗値が低下する現象を抑制することができる。
【0100】
このとき、I1~I3、S1~S3の絶対的な数値はセラミック電子部品100のサイズと誘電体層111を形成する誘電体組成物に添加されたSn及びInの含有量、In及びSnの添加形態、焼成温度、焼成雰囲気及び誘電体組成物の副成分元素の種類及び含有量のうち一つ以上を調節することで調節されることができる。
【0101】
図8を参照すると、
図5のq領域をSTEM-EDSを介してラインプロファイル(Line Profile)を分析すると、酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量及び酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量のそれぞれは1.0at%以下であることを確認することができる。ラインプロファイル(Line Profile)分析を任意のq領域で繰り返し進行して各元素含有量の平均値をとる場合、I2は1.0at%以下であり、上記S2は1.0at%以下であることができる。
【0102】
一方、
図7を参照すると、内部電極のIn及びSnの平均含有量は第1領域や第2領域より少なく、内部電極の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量及び酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量はそれぞれ0.5at%未満であることができる。すなわち、一実施形態において、I3は0.5at%未満であり、S3は0.5at%未満であることができる。ここで「0.5at%未満」という数値は、STEM-EDSで測定した結果でノイズレベルに該当する値を意味することができるため、内部電極にはSn及びInが実質的に含まれないと見なすことができる。
【0103】
内部電極の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量I3及び酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量S3は、誘電体層111の内部電極121、122との界面IFを超えない内部電極内の任意の領域をSTEM-EDSを用いてラインプロファイル(Line profile)を分析することで測定することができる。このような測定を複数個の内部電極で複数個の領域で行った後に平均値をとることで、酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量I3及び酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量S3はさらに一般化することができる。具体的には、セラミック電子部品100の第3方向の中心まで研磨して第1方向及び第2方向の断面を露出させた後、容量形成部Acを第1方向に3等分して上部、中央部、下部に区分した後に、上部、中央部、下部に配置された内部電極の酸素を除いた全体元素に対するInの含有量及び酸素を除いた全体元素に対するSnの含有量にそれぞれ平均値をとることで測定されることができる。
【0104】
一方、内部電極121、122、誘電体層111と内部電極121、122の界面、誘電体層111の第1領域及び誘電体層111の第2領域のうち、誘電体層111の第1領域に酸素を除いた全体元素に対するInの含有量及び酸素を除いた全体元素に対するSnの含有量が最大値を有するピーク値が存在することができる。第1領域に酸素を除いた全体元素に対するIn及びSnの含有量が最大値を有するピーク値が存在する場合、第1領域にIn及びSnが集中配置されたものと見なすことができる。優れた高温信頼性及び温度-容量特性を確保と静電容量が低下防止の観点から、第1領域の酸素を除いた全体元素に対するInの含有量のピーク値が1.2at%以上であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの含有量のピーク値が1.0at%以上であることが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0105】
誘電体層111は、上述したように、チタン酸バリウム(BaTiO3)などを主成分として含む誘電体組成物で形成されることができる。これによって、焼成された状態での誘電体層111は、Ba及びTiを主成分元素として含むことができ、本発明の一実施形態によってSn及びInが添加されることができる。但し、誘電体層111の焼成は後述するように還元雰囲気で行われるため、適切な耐還元性が備えられる必要があり、セラミック電子部品100の耐電圧特性及び高温信頼性などの様々な特性を向上させる必要性があるため、誘電体層111には、主成分元素の他にも、様々な副成分元素が含まれることができる。
【0106】
一実施形態において、誘電体層は、第1副成分元素としてMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち一つ以上を含み、酸素を除いた全体元素に対する上記第1副成分元素の含有量は0at%超過0.6at%以下であることができる。
【0107】
上記第1副成分元素は、原子価可変アクセプタ元素(Valance-variable acceptor)として誘電体層111の焼成温度の低下及び高温信頼性を向上させる役割を果たすことができる。このとき、酸素を除いた全体元素に対する第1副成分元素の含有量が0at%の場合、誘電率を向上させる効果が達成できず、酸素を除いた全体元素に対する0.6at%を超過する場合、セラミック電子部品100の高温信頼性及び温度-容量特性が低下する可能性がある。したがって、誘電体層111に含まれる酸素を除いた全体元素に対する第1副成分元素の含有量を0at%超過0.6at%以下に調節することで誘電率を向上させ、セラミック電子部品100の静電容量を向上させることができるだけでなく、優れた高温信頼性及び温度-容量特性を確保することができる。
【0108】
一実施形態において、誘電体層は第2副成分元素としてMgを含み、酸素を除いた全体元素に対する上記第2副成分元素の含有量は0.3at%以上0.6at%以下であることができる。
【0109】
上記第2副成分元素は、還元雰囲気の焼成過程で誘電体層111に含まれる誘電体の粒成長を抑制し、耐還元性を付与する役割を果たすことができる。したがって、誘電体層111に第2副成分元素が含まれることで、セラミック電子部品の高温信頼性及び温度-容量特性を向上させることができる。
【0110】
但し、酸素を除いた全体元素に対する第2副成分元素の含有量が0.3at%未満の場合、誘電体層111の過度の粒成長により高温信頼性及び温度-容量特性を十分に向上させることができず、酸素を除いた全体元素に対する第2副成分元素の含有量が0.6at%を超過する場合、誘電体層111の過度の粒成長抑制により誘電率が低下されることがある。したがって、酸素を除いた全体元素に対する第2副成分元素の含有量を0.3at%以上0.6at%以下に調節することで、セラミック電子部品100の静電容量を向上させることができるだけでなく、優れた高温信頼性及び温度-容量特性を確保することができる。
【0111】
一実施形態において、誘電体層は、第3副成分元素としてY、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd、及びYbのうち一つ以上を含み、酸素を除いた全体元素に対する第3副成分元素の含有量は、0.6at%以上1.8at%以下であることができる。これにより、セラミック電子部品100の静電容量を向上させることができるだけでなく、優れた高温信頼性及び温度-容量特性を確保することができる。
【0112】
上記第3副成分元素は、希土類元素(RE、Rare earth Element)であり、HALT信頼性及び誘電率を向上させる役割を果たすことができる。但し、誘電体層111が第3副成分元素のいずれか一つのみを含む場合よりも2以上の元素を含むことが本発明による効果がより顕著になることがあり、特に、誘電体層111がDy及びTbを同時に含むことがより好ましい。
【0113】
一実施形態において、誘電体層は第4副成分元素としてSiを含み、酸素を除いた全体元素に対する上記第4副成分元素の含有量は1.0at%以上2.0at%以下であることができる。
【0114】
第4副成分元素は、第1~第3副成分元素の拡散の程度を制御する役割を果たすことができる。酸素を除いた全体元素に対する第4副成分元素の含有量が1.0at%未満である場合、信頼性に大きな影響を及ぼす第3副成分が十分に拡散しないため、本発明による効果を得ることが難しい場合がある。一方、酸素を除いた全体元素に対する第4副成分元素の含有量が2.0at%を超過する場合、十分な誘電率及びMTTFを確保することが難しい場合がある。
【0115】
したがって、酸素を除いた全体元素に対する第4副成分元素の含有量を1.0at%以上2.0at%以下に調節することで、セラミック電子部品100の静電容量を向上させることができるだけでなく、優れた高温信頼性及び温度-容量特性を確保することができる。
【0116】
また、誘電体層111に含まれた第1~第4副成分に含まれた各元素の定量的含有量は、破壊工法を用いて測定することができる。具体的には、破壊工法を用いた測定方法は、セラミック電子部品を粉砕して内部電極を除去した後、誘電体部分を選別した後、選別された誘電体を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES:Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectroscopy)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS:Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)などの装置を用いて誘電体の成分を定量的に分析することができる。
【0117】
誘電体層111の第1~第4副成分に含まれた元素の定量的含有量を分析する場合、酸素(O)元素は感度が低く、上記誘導結合プラズマ分析が困難であることがある。そこで、本発明では、誘電体層111に含まれた第1~第4副成分に含まれた元素の含有量(at%)は、酸素を除いた全体元素に対する該当元素の含有量(at%)に設定した。
【0118】
セラミック電子部品の製造方法
図9は、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品の製造方法の順を示したフローチャートである。
【0119】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品の製造方法は、
図9のように、誘電体粉末を主成分として含み、上記主成分100モルに対してSnを0.9モル以上1.8モル以下含み、Inを0.05モル以上0.1モル以下含む誘電体組成物を準備する段階(P1)と、上記誘電体組成物を用いてセラミックグリーンシートを形成する段階(P2)と、上記セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を形成する段階(P3)と、上記積層体を焼成して誘電体層及び内部電極を含む本体を形成する段階(P4)と、上記本体に外部電極を形成する段階(P5)と、を含む。
【0120】
(P1:誘電体組成物を準備する段階)
誘電体組成物を準備する段階(P1)では、誘電体粉末を主成分として含み、主成分100モルに対してSnを0.9モル以上1.8モル以下含み、Inを0.05モル以上0.1モル以下含む誘電体組成物が設けられる。
【0121】
誘電体組成物は、主成分として誘電体粉末を含む。
【0122】
誘電体粉末は、BaTiO3系セラミック粉末またはBaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0123】
誘電体組成物は、上記主成分の他にも、主成分100モルに対してSnを0.9モル以上1.8モル以下含み、Inを0.05モル以上0.1モル以下含むことが好ましい。
【0124】
誘電体組成物に含まれるSn及びInの含有量は、セラミック電子部品100の誘電体層111におけるSn及びInの分布を調節する一つの変数になることがある。Sn及びInの含有量が上記範囲を超える場合、セラミック電子部品100のMTTF値が低下したり、X7S特性を満足しないことがあり、本発明の誘電体層111の第1領域R1に含まれるInの平均含有量は0.5at%以上2.0at%以下であり、Snの平均含有量は0.5at%以上1.75at%以下になるように調節することが困難であることがある。
【0125】
誘電体組成物に含まれるSn及びInを添加する形態は、特に制限されない。例えば、Sn酸化物及びIn酸化物を一定割合で混合して誘電体組成物に添加されることができる。但し、誘電体組成物にSn及びInをインジウムスズ酸化物(ITO、Indium Tin Oxide)形態で添加する場合、本発明によるセラミック電子部品100の信頼性向上の効果がさらに向上することができる。
【0126】
インジウムスズ酸化物(ITO)は、酸化インジウム(In2O3)と酸化スズ(SnO2)が一定割合で混合されている物質である。一実施形態では、In:74wt%、O:18wt%及びSn:8wt%から構成されたインジウムスズ酸化物を誘電体組成物に添加したが、これに制限されず、他の組成を有するインジウムスズ酸化物を添加してもその量を調節して誘電体組成物におけるSn及びInの濃度を調節することができる。
【0127】
一方、一実施形態により、In:74wt%、O:18wt%及びSn:8wt%から構成されたインジウムスズ酸化物を誘電体組成物に添加する場合、誘電体組成物に含まれるインジウムスズ化合物の含有量は主成分100モルに対して0.5モル以上1.0モル以下であることがセラミック電子部品100の信頼性向上の側面で好ましい。
【0128】
一実施形態において、誘電体組成物は、原子価可変アクセプタ元素の酸化物または炭酸塩のうち一つ以上を含む第1副成分を含むことができる。
【0129】
第1副成分に含まれる元素は、誘電体層111の焼成温度低下及び高温信頼性を向上させる役割を果たすことができる。このとき、原子価可変アクセプタ元素は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち一つ以上を意味することができる。
【0130】
第1副成分の含有量が主成分100モルに対して0.1モル未満である場合、誘電体層111の誘電率を向上させ難く、第1副成分の含有量が主成分100モルに対して0.3モルを超過する場合、セラミック電子部品100の高温信頼性及び温度-容量特性が低下する可能性がある。
【0131】
したがって、上記誘電体組成物を第1副成分を主成分100モルに対して0.1モル以上0.3モル以下含む場合、セラミック電子部品100の静電容量を向上させることができるだけでなく、優れた高温信頼性及び温度-容量特性を確保することができる。
【0132】
一方、焼成後のセラミック電子部品100において、誘電体層111に含まれる酸素を除いた全体元素に対する第1副成分元素の含有量は、0at%超過0.6at%以下であることができる。
【0133】
一実施形態において、誘電体組成物は、Mgの酸化物または炭酸塩のうち一つ以上を含む第2副成分を含むことができる。
【0134】
第2副成分に含まれる元素は、還元雰囲気の焼成過程において誘電体層111に含まれる誘電体の粒成長を抑制し、耐還元性を付与する役割を果たすことができる。
【0135】
第2副成分の含有量が主成分100モルに対して0.3モル未満の場合、誘電体層111の過度の粒成長により高温信頼性及び温度-容量特性を十分に向上させることができず、第2副成分の含有量が主成分100モルに対して0.9モルを超過する場合、誘電体層111の過度の粒成長抑制により誘電率が低下する可能性がある。
【0136】
したがって、上記誘電体組成物は、第2副成分を主成分100モルに対して0.3モル以上0.9モル以下含む場合、セラミック電子部品100の静電容量を向上させることができるだけでなく、優れた高温信頼性及び温度-容量特性を確保することができる。
【0137】
一方、焼成後のセラミック電子部品100において、誘電体層111に含まれる酸素を除いた全体元素に対する第2副成分元素の含有量は、0.3at%以上0.6at%以下であることができる。
【0138】
一実施形態において、誘電体組成物は、希土類元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第3副成分を含むことができる。
【0139】
第3副成分は、高温信頼性及び誘電体層の誘電率を向上させる役割を果たすことができる。このとき、希土類元素は、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd及びYbのうち一つ以上であることができる。
【0140】
一実施形態において、誘電体組成物は、第3副成分を主成分100モルに対して0.3モル以上0.9モル以下含むことで、セラミック電子部品100の静電容量を向上させることができるだけでなく、優れた高温信頼性及び温度-容量特性を確保することができる。
【0141】
一方、焼成後のセラミック電子部品100において、誘電体層111に含まれる酸素を除いた全体元素に対する第3副成分元素の含有量は、0.6at%以上1.8at%以下であることができる。
【0142】
一方、誘電体層111が第3副成分元素の一つのみを含む場合よりも、上記希土類元素中の2以上の元素を含む酸化物または炭酸塩を含むことがセラミック電子部品100の信頼性向上にさらに効果的である。
【0143】
例えば、第3副成分としてTb4O7のみを添加するか、またはDy2O3のみを添加する場合よりもTb4O7及びDy2O3を同時に添加することが誘電率向上によるセラミック電子部品100の静電容量の向上、高温信頼性、及び温度-容量特性の向上にさらに有利である。
【0144】
より具体的には、誘電体組成物に第3副成分としてTb4O7のみを主成分100モルに対して0.6モル以上添加する場合、高温絶縁抵抗及びMTTF値が低下されることがある。また、第3副成分としてDy2O3のみを0.6モル以上添加する場合、温度-容量特性、高温信頼性などの特性は向上するが、誘電率が低下する可能性がある。
【0145】
したがって、誘電体組成物が第3副成分としてTb4O7及びDy2O3を同時に含む場合、Tb4O7の含有量は主成分100モルに対して0.1モル以上0.4モル以下であり、Dy2O3の含有量は主成分100モルに対して0.2モル以上0.5モル以下であることが好ましい。
【0146】
一実施形態において、誘電体組成物は、Siの酸化物、Siの炭酸塩、及びSiを含むガラスのうち一つ以上を含む第4副成分を含むことができる。
【0147】
第4副成分に含まれる元素は、誘電体層111において第1~第3副成分元素の拡散の程度を制御する役割を果たすことができる。
【0148】
第4副成分の含有量が主成分100モルに対して1.0モル未満である場合、信頼性に大きな影響を及ぼす第3副成分が十分に拡散しないため、本発明による効果が得られ難くなり、第4副成分の含有量が主成分100モルに対して2.0モルを超過する場合、十分な誘電率及びMTTFを確保することが困難であることがある。
【0149】
したがって、上記誘電体組成物は、第4副成分を主成分100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下含むことで、セラミック電子部品100の静電容量を向上させることができるだけでなく、優れた高温信頼性及び温度-容量特性を確保することができる。
【0150】
(P2:セラミックグリーンシートを形成する段階)
上記誘電体組成物を用いてセラミックグリーンシートを形成することができる。
【0151】
上記誘電体組成物は、セラミックグリーンシートで形成される前に、バインダーと混合及びミリングしてスラリーで製造されることができる。このように製造されたスラリーは、シート製造用成形機を用いてセラミックグリーンシートで製造されることができる。
【0152】
一方、セラミックグリーンシートは、容量形成部Ac用セラミックグリーンシートとカバー部112、113用セラミックグリーンシートで別々に製造されることができる。容量形成部Ac用セラミックグリーンシートとカバー部112、113用セラミックグリーンシートの組成は実質的に同じであることもできるが、カバー部112、113と容量形成部Acの各機能を達成するために異なる組成で製造されることができる。
【0153】
(P3:積層体を形成する段階)
この後、上記セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを印刷する。
【0154】
上記内部電極用導電性ペーストは、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及びこれらの合金のうち一つ以上を含むペーストであることができる。
【0155】
上記内部電極用導電性ペーストは、セラミックグリーンシート上に一定の間隔を空けて離隔して形成されることができる。すなわち、内部電極用導電性ペーストはストライプ状であることができる。
【0156】
この後、上記内部電極用導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを複数個積層して、積層体を形成することができる。
【0157】
積層体を形成する過程で、上記内部電極用導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを複数個圧着及び積層して圧着バー(bar)が製作されることができ、上記圧着バーを切断機を用いて適切な大きさで切断することで、積層体が形成されることができる。
【0158】
(P4:本体を形成する段階)
この後、製作が完了された積層体を焼成して誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110を形成する。
【0159】
一実施形態において、上記焼成前には積層体にか焼工程が行われることができ、か焼を行った後、0.1%H2/99.9%N2~0.5%H2/99.5%N2の還元雰囲気で1150~1200℃の温度で2時間維持して焼成が行われることができる。
【0160】
一実施形態において、上記焼成過程の後には、1040℃でN2雰囲気で3時間再酸化する工程をさらに含むことができる。
【0161】
本体110を焼成する過程で誘電体層111も焼成されることができる。このとき、焼成雰囲気によって誘電体層111に含まれたSn及びInの濃度分布が変わることができる。すなわち、本体110の焼成雰囲気は、誘電体層111におけるSn及びInの分布を調節するもう一つの変数になることができる。
【0162】
水素濃度が低くなる焼成雰囲気では、誘電体組成物に含まれるIn及びSnの分散が行われ、誘電体層111の誘電率及びDFレベルは向上することができるが、不均一な粒成長により温度-容量特性及び高温信頼性を向上させることが困難であることがある。
【0163】
したがって、一実施形態においては、上記焼成をEMF730mV以上760mV以下の雰囲気で行うことで、セラミック電子部品100の静電容量特性、温度-容量特性及び高温信頼性を向上させることができる。このとき、上記範囲のEMFを水素濃度に換算する場合、上記焼成は水素濃度0.2vol%以上0.4vol%以下の雰囲気で行われることが好ましい。一方、起電力(EMF:electromotive force)値は、水素濃度及び測定センサの温度によって変わることがあり、本発明におけるEMF値はセンサ温度850℃で測定した値に該当することができる。
【0164】
(P5:外部電極を形成する段階)
この後、積層体を焼成して形成された本体110に外部電極131、132を形成する。
【0165】
外部電極131、132は、焼成された本体110に対して外部電極用導電性ペーストでターミネーション工程及び焼成過程を経て形成されることができる。但し、外部電極は、外部電極用導電性ペーストを用いる方法の他にも、電解めっき、無電解めっき法などの湿式塗布法またはスパッタリングなどの乾式めっき法でも形成されることができる。
【0166】
以下では、様々な実施形態によって本発明の一実施形態によるセラミック電子部品及びセラミック電子部品の製造方法の効果について説明する。
【0167】
各実施例で使用されたセラミック電子部品のサンプルは以下のように製造し、表1~表6に作成されたITO、第1~第4副成分の含有量は主成分100モルに対する該当成分のモル数を作成した。なお、各実施例で添加されたITOは、In:74wt%、O:18wt%、Sn:8wt%からなるインジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide)を用いた。
【0168】
(セラミック電子部品のサンプル)
誘電体の主成分母材としては、平均粒径が100nmのBaTiO3粉末を用いた。ジルコニアビーズ(beads)を混合/分散媒体(media)として用い、下記表1~表6に明示された組成に該当するインジウムスズ酸化物(ITO:Indium-Tin-Oxide、In:74wt%、O:18wt%、Sn:8wt%)及び副成分が含まれた原料粉末と主成分BaTiO3パウダーをエタノール/トルエン溶媒、そして分散剤と共に混合して10時間ミリング(milling)し、バインダーを混合した後に10時間さらにミリング(milling)した。このように製造されたスラリーは、シート製造用成形機を用いて5.0μmの厚さでカバー及び容量形成部用セラミックグリーンシートを製造した。容量形成部用セラミックグリーンシートにはNi内部電極を印刷した。上下カバーは、カバー用セラミックグリーンシートを25層で積層して製作し、20層の印刷された容量形成部用セラミックグリーンシートを加圧して積層してバー(bar)を製作した。上記バーは、切断機を用いて3.2mm×1.6mmの大きさの積層体に切断した。製作が完了された積層体は、か焼を行った後、還元雰囲気0.1%H2/99.9%N2~0.5%H2/99.5%N2(H2O/H2/N2雰囲気)で1150~1200℃の温度で維持時間2時間の条件で焼成した後、1040℃でN2雰囲気で3時間再酸化して本体110を製作した。ここで、0.1%水素濃度は酸素分圧測定器で起電力680mV、そして0.5%水素濃度は起電力760mVの条件に該当する。焼成された本体110に対してCuペーストでターミネーション工程及び電極焼成を経て外部電極131、132を完成した。これにより、焼成後の誘電体厚さが約2.2μm以下であり、誘電体層数が20層の3.2mm×1.6mmの大きさのセラミック電子部品のサンプルを製作した。
【0169】
なお、各実施形態において、焼成雰囲気は水素濃度に応じて変わることができ、各焼成雰囲気でのEMF値は熱電式(thermoelectric type)水素センサを用いてセンサ温度850℃で測定した値である。
【0170】
ITO検出有無は、セラミック電子部品の誘電体層111のうち、内部電極121、122と隣接する領域(第1領域及び第2領域)を第2方向に沿ってSTEM-EDSでラインプロファイル(Line Profile)分析した結果、誘電体層111の全体領域で酸素を除いた全体元素に対するInの含有量と酸素を除いた全体元素に対するSnの含有量の合計が0.5at%を超過する場合を○、0.5at%以下である場合を×で示した。
【0171】
常温誘電率はLCRメータ(meter)を用いて1kHz、AC0.5V/μm条件下でサンプルの静電容量を測定した後、誘電体層の厚さ、内部電極の面積、積層数から誘電体層の比誘電率(relative permittivity)を測定した結果を作成し、2500以上の値を目標特性とした。
【0172】
誘電損失(DF、Dissipation Factor)値もLCRメータ(meter)を用いて1kHz、AC0.5V/μm条件下で測定し、10%以下の値を目標特性とした。
【0173】
温度による静電容量の変化(TCC)は-55℃から125℃の温度範囲で0.1Vrmsを印加して測定し、-55℃から125℃の温度範囲で静電容量の変化が-22%以上22%以下である(以下、「X7S特性」という)ことを目標特性とした。
【0174】
高温IR値はサンプル10個に対して150℃温度でDC10V/μm電圧を印加し、60秒Charging後の絶縁抵抗(IR、Insulation Resistance)値を測定して平均値をとり、1.0E+07Ω以上の値を目標特性とした。
【0175】
MTTF(Mean Time To Failure)値はサンプル40個に対して150℃で電界40V/μmに該当する電圧を印加して故障が発生する時間を測定して平均時間を作成し、200時間以上の値を目標特性とした。
【0176】
(実施例1)
表1の試験番号1-1~1-4、2-1~2-4、3-1~3-4は、焼成雰囲気と誘電体組成物に添加されるITOの含有量を異ならせた様々な実験条件を作成したものである。
【0177】
表1の各試験番号によって製作されたセラミック電子部品のサンプルの特性は表2に作成した。
【0178】
【0179】
【0180】
表1及び2を参照すると、試験番号1-4、2-4、3-1~3-3は誘電率2500以上及び10%以下のDF値を有するが、不均一な粒成長によりX7S特性を満たしていないことが確認できる。
【0181】
試験番号2-1~2-4、3-1~3-2は、MTTF値が200時間より低いレベルであることを確認することができる。
【0182】
試験番号1-2及び1-3の場合、MTTF値が200時間以上、誘電率が2500以上、高温IR値が1.0E+0.7Ω以上、X7R特性を全て満たすことが確認できる。試験番号1-2及び2-3は、焼成雰囲気EMF730~760mV(水素濃度~0.4%)区間でITO添加量が主成分100モルに対して0.5、1.0モルの場合であり、サンプル製作後、誘電体層111と内部電極121、122の界面から誘電体層111の内部方向に50nmまでの第1領域R1の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量は0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量は0.5at%以上1.75at%以下である場合である。
【0183】
試験番号1-4を参照すると、ITO含有量が主成分100モルに対して1.5モルと高くなる場合、サンプル製作後の上記第1領域R1における酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量及び酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量は2at%を超過して検出されることができるが、MTTF値が200時間未満に低下し、X7S特性を満たしていないことが確認できる。
【0184】
試験番号2-2、2-3、2-4、3-2、3-3、3-4の場合、誘電体層111の全体領域において酸素を除いた全体元素に対するInの含有量と酸素を除いた全体元素に対するSnの含有量の合計が0.5at%を超過する値で検出され、誘電率2500以上、10%以下のDFレベルを満たすが、試験番号2-4、3-2、3-3はX7S特性を満たさず、試験番号2-2、2-3、2-4、3-2、3-3、3-4は、200時間以上のMTTFを有していないことが確認できる。
【0185】
試験番号2-4、3-2、3-3でサンプルの誘電体層を分析した結果、X7S特性を満たしていない原因は誘電体層の不均一な粒成長によるものと予想され、試験番号2-2、2-3、2-4、3-2、3-3、3-4でサンプルの誘電体層を分析した結果、誘電体層の第1領域にIn及びSnが集中的に分布されず、誘電体層の全体領域に分散しており、第1領域R1の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量が0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量は0.5at%以上1.75at%以下の条件を満たしていなかった。
【0186】
一方、目標特性が全て満たされる試験番号1-2、1-3の場合、誘電体層111と内部電極121、122の界面から誘電体層111の内部方向に50nmまでの第1領域R1の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量は0.5at%以上2.0at%以下、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量は0.5at%以上1.75at%以下であるものと確認された。すなわち、MTTF値が200時間以上、誘電率が2500以上、高温IR値が1.0E+0.7Ω以上、X7R特性を全て満たすため、誘電体層111と内部電極121、122の界面から誘電体層111の内部方向に50nmまでの第1領域R1の酸素を除いた全体元素に対するInの平均含有量は0.5at%以上2.0at%以下であり、酸素を除いた全体元素に対するSnの平均含有量は0.5at%以上1.75at%以下であることが好ましい。
【0187】
一方、焼成雰囲気はEMF(センサ温度850℃)730~760mV(水素濃度0.2~0.4vol%)区間で進行することが好ましく、誘電体組成物に添加されるITOの含有量は主成分100モルに対して0.5モル以上1.0モル以下であることが好ましい。
【0188】
(実施例2)
表3の試験番号4-1~4-3、5-1~5-3、6-1~6-4、7-1~7-4は、誘電体組成物に含まれる第1副成分または第2副成分の含有量を異ならせた様々な実験条件を作成したものである。
【0189】
表3の各試験番号によって製作されたセラミック電子部品のサンプルの特性は表4に作成した。
【0190】
【0191】
【0192】
表3及び表4を参照すると、試験番号4-1、5-1は、第1副成分であるMnO2の含有量が主成分100モルに対して0モルであり、V2O5の含有量が主成分100モルに対して0.3モルである場合であり、常温誘電率が2500未満であることを確認することができる。
【0193】
試験番号4-3、5-3は、MnO2の含有量が主成分100モルに対して0.3モルであり、V2O5の含有量が主成分100モルに対して0モルである場合であり、X7S特性を満たさず、MTTFが200時間未満であることを確認することができる。
【0194】
したがって、誘電体組成物に含まれる第1副成分の含有量は、主成分100モルに対して0.1モル以上0.3モル以下であることが好ましく、セラミック電子部品100の誘電体層111において第1副成分元素は0at%超過0.6at%以下含まれることが好ましい。
【0195】
試験番号6-1~6-4、7-1~7-4を参照すると、誘電体組成物に第2副成分としてMgCO3が含まれる場合、TCC特性改善及び高温IR増加の効果があることが確認できる。但し、MgCO3の含有量が主成分100モルに対して1.2モルである試験番号6-4、7-4は、過度の粒成長抑制により常温誘電率が2500未満に低下し、X7S特性を満たしていないことが確認できる。
【0196】
したがって、誘電体組成物に含まれる第2副成分の含有量は、主成分100モルに対して0.3モル以上0.9モル以下であることが好ましく、セラミック電子部品100の誘電体層111において酸素を除いた全体元素に対する第2副成分元素の含有量は0.3at%以上0.6at%以下であることが好ましい。
【0197】
(実施例3)
表5の試験番号8-1~8-4、9-1~9-4、10-1~10-3、11-1~11-3は、誘電体組成物に含まれる第3副成分または第4副成分の含有量を異ならせた様々な実験条件を作成したものである。
【0198】
表5の各試験番号によって製作されたセラミック電子部品のサンプルの特性は表6に作成した。
【0199】
【0200】
【0201】
表5及び表6において、試験番号8-1~8-4、9-1~9-4を参照すると、誘電体組成物に希土類酸化物である第3副成分が添加される場合、MTTF値が増加し、常温誘電率が上昇する効果があることが確認できる。しかしながら、Tb4O7のみを主成分100モルに対して0.6モル添加する試験番号8-1及び9-1の場合、高温IR及びMTTF値が減少する可能性がある。また、Dy2O3のみを主成分100モルに対して0.6モル添加する試験番号8-4及び9-4の場合、常温誘電率が低下することがある。
【0202】
したがって、誘電体組成物に含まれる第3副成分の含有量は、主成分100モルに対して0.3モル以上0.9モル以下であることが好ましい。特に、Tb4O7及びDy2O3のうち一つのみを第3副成分として含むよりは、Tb4O7及びDy2O3を適量混合して含むことが好ましく、Tb4O7の含有量は主成分100モルに対して0.1モル以上0.4モル以下であり、Dy2O3の含有量は主成分100モルに対して0.2モル以上0.5モル以下であることがさらに好ましい。このとき、セラミック電子部品100の誘電体層111において酸素を除いた全体元素に対する第3副成分元素の含有量は、0.6at%以上1.8at%以下であることが好ましい。
【0203】
試験番号10-1~10-3、11-1~11-3は、SiO2が誘電体組成物の第4副成分として含まれる場合である。試験番号10-1、11-1を参照すると、SiO2の含有量が主成分100モルに対して0.65molの場合であり、過度に速い粒成長を誘発してITO及び第3副成分の拡散を抑制する結果、X7S特性を満たさず、MTTFが200時間未満であることを確認することができる。
【0204】
試験番号10-3、11-3を参照すると、SiO2の含有量が主成分100モルに対して2.15モルである場合であり、常温誘電率が2500未満であるか、MTTFが200時間未満であることを確認することができる。
【0205】
したがって、誘電体組成物に含まれる第4副成分の含有量は、主成分100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下であることが好ましく、セラミック電子部品100の誘電体層111において酸素を除いた全体元素に対する第4副成分元素の含有量は、1.0at%以上2.0at%以下であることが好ましい。
【0206】
以上で、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付された図面によって限定されるものではなく、添付された特許請求の範囲によって限定しようとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で当技術分野の通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これもまた本発明の範囲に属するといえる。
【0207】
なお、本開示において用いられた「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態に記載されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0208】
本明細書で用いられた用語は、単に一実施形態を説明するために用いられたものであり、本開示を限定する意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0209】
100 セラミック電子部品
110 本体
111 誘電体層
121、122 内部電極
131、132 外部電極
R1 第1領域
R2 第2領域
IF 誘電体層の内部電極との界面