(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071247
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】廃プラスチック成形物の製造装置及び廃プラスチック成形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/87 20190101AFI20240517BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20240517BHJP
B29C 48/285 20190101ALI20240517BHJP
B29C 48/345 20190101ALI20240517BHJP
B29B 7/46 20060101ALI20240517BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20240517BHJP
C08J 11/06 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B29C48/87
B29C48/395
B29C48/285
B29C48/345
B29B7/46
B29B9/06
C08J11/06 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182088
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】関屋 政洋
(72)【発明者】
【氏名】小水流 広行
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
4F401
【Fターム(参考)】
4F201AA50
4F201AK02
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC02
4F201BC25
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK26
4F201BK64
4F201BL10
4F201BL33
4F207AA50
4F207AK02
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK45
4F207KL64
4F401AC20
4F401BA06
4F401CA91
4F401CB13
(57)【要約】
【課題】成形物の品質のムラを抑制しやすい廃プラスチック成形物の製造装置を提供する。
【解決手段】製造装置100は、容器10と、移送部20と、押出成形部30と、を備える。押出成形部30は、成形側壁16から容器10の外部側に向けて突出する複数の成形ノズル31を有する。更に、製造装置100は、複数の成形ノズル31の外周面31Aへ向けて冷却液Wを噴出するノズル冷却部60を備える。ノズル冷却部60は、成形ノズル31が配置される領域(ノズル配置領域R)の内側から冷却液Wを噴出する内側冷却部60Bを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に廃プラスチック原料が投入される容器と、
前記容器の内部に投入された廃プラスチック原料を前記容器の一部を構成する壁である成形側壁へ向けて移送する移送部と、
前記成形側壁を介して前記容器の内部と外部とを連通し、廃プラスチック成形物を成形する押出成形部であって、前記成形側壁から前記容器の外部側に向けて突出する複数の成形ノズルを有する前記押出成形部と、
前記複数の成形ノズルの外周面へ向けて冷却液を噴出するノズル冷却部と、
を備え、
前記複数の成形ノズルは、前記移送部が有するシャフトの延長線上を取り囲むノズル配置領域に配置されており、
前記ノズル冷却部は、前記ノズル配置領域の内側から冷却液を噴出する内側冷却部を有する、
廃プラスチック成形物の製造装置。
【請求項2】
前記内側冷却部は、噴出方向を下方へ向ける下方噴出口を有する、
請求項1に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【請求項3】
前記ノズル冷却部は、前記ノズル配置領域の外側から冷却液を噴出する外側冷却部を有する、
請求項1又は請求項2に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【請求項4】
前記外側冷却部は、前記ノズル配置領域の下方から冷却液を噴出する噴出口を有しない、
請求項3に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【請求項5】
前記内側冷却部は、噴出方向が互いに異なる4つの噴出口を有する、
請求項1又は請求項2に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【請求項6】
前記内側冷却部は、
噴出方向が上方向である上方噴出口と、
噴出方向が下方向である下方噴出口と、
噴出方向が水平方向である一対の側方噴出口と、を有する、
請求項1又は請求項2に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【請求項7】
前記移送部が有する前記シャフトは、一対設けられ、
前記一対のシャフトの延長線上を取り囲む2つの円環領域を合体させた領域が前記ノズル配置領域となっており、
前記内側冷却部は、一対設けられ、
前記一対の内側冷却部は、前記2つの円環領域のそれぞれの内側から冷却液を噴出する、
請求項1又は請求項2に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【請求項8】
廃プラスチック成形物の製造方法であって、
請求項1又は請求項2に記載の廃プラスチック成形物の製造装置を用いて行う、
廃プラスチック成形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃プラスチック成形物の製造装置及び廃プラスチック成形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭ごみ等に含まれる廃プラスチックをリサイクルするために、コークス炉を使用して廃プラスチックを化学原料化する技術がある。コークス炉内に廃プラスチックを投入するためには、当該廃プラスチックを所定形状の成形物に成形する必要がある。特許文献1には、廃プラスチック成形物の製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の廃プラスチック成形物の製造装置では、廃プラスチック成形物を成形する押出成形部が、容器の外部側に向けて突出する複数の成形ノズルを有する。そして、これら複数の成形ノズルの外周面へ向けて冷却液を噴出するノズル冷却部が設けられている。
【0005】
発明者らは、上記製造装置について、複数の成形ノズルのうち冷却されにくい成形ノズルや成形ノズルのうち冷却されにくい部分があると、廃プラスチック成形物の品質にムラが生じることに着目した。
【0006】
本開示の一つの目的は、成形物の品質のムラを抑制しやすい廃プラスチック成形物の製造装置を提供することである。
また、本開示の他の目的は、品質のムラが抑制された廃プラスチック成形物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は、以下のとおりである。
【0008】
<1>
内部に廃プラスチック原料が投入される容器と、
前記容器の内部に投入された廃プラスチック原料を前記容器の一部を構成する壁である成形側壁へ向けて移送する移送部と、
前記成形側壁を介して前記容器の内部と外部とを連通し、廃プラスチック成形物を成形する押出成形部であって、前記成形側壁から前記容器の外部側に向けて突出する複数の成形ノズルを有する前記押出成形部と、
前記複数の成形ノズルの外周面へ向けて冷却液を噴出するノズル冷却部と、
を備え、
前記複数の成形ノズルは、前記移送部が有するシャフトの延長線上を取り囲むノズル配置領域に配置されており、
前記ノズル冷却部は、前記ノズル配置領域の内側から冷却液を噴出する内側冷却部を有する、
廃プラスチック成形物の製造装置。
(作用効果)
この態様の廃プラスチック成形物の製造装置(以下、単に製造装置ということがある。)は、容器と、移送部と、押出成形部と、を備える。容器の内部には、廃プラスチック原料が投入される。移送部は、容器の内部に投入された廃プラスチック原料を容器の一部を構成する壁である成形側壁へ向けて移送する。押出成形部は、成形側壁を介して容器の内部と外部とを連通し、廃プラスチック成形物を成形する。さらに、押出成形部は、成形側壁から容器の外部側に向けて突出する複数の成形ノズルを有する。
ここで、製造装置は、複数の成形ノズルの外周面へ向けて冷却液を噴出するノズル冷却部を備える。このため、ノズル冷却部により成形ノズルを冷却し、成形ノズル内における原料の固化を促進することができる。
さらに、ノズル冷却部は、成形ノズルが配置される領域の内側から冷却液を噴出する内側冷却部を有する。このため、複数の成形ノズルのうち、ノズル配置領域の外側から冷却液を噴出したのでは冷却しにくい成形ノズル又は冷却しにくい部分を適切に冷却することができる。
したがって、この態様によれば、ノズル冷却部が内側冷却部を有しない態様と比較して、成形物の品質のムラを抑制しやすい。
【0009】
<2>
前記内側冷却部は、噴出方向を下方へ向ける下方噴出口を有する、
<1>に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
(作用効果)
この態様によれば、ノズル配置領域の下部に位置する成形ノズルを効果的に冷却することができる。
なお、噴出方向を下方へ向ける下方噴出口とは、噴出方向が下方向である噴出口だけでなく、噴出方向が斜め下方向である噴出口をも包含する。
【0010】
<3>
前記ノズル冷却部は、前記ノズル配置領域の外側から冷却液を噴出する外側冷却部を有する、
<1>又は<2>に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
(作用効果)
この態様では、ノズル冷却部が内側冷却部及び外側冷却部を有するので、効果的に複数の成形ノズルを冷却できる。
【0011】
<4>
前記外側冷却部は、前記ノズル配置領域の下方から冷却液を噴出する噴出口を有しない、
<3>に記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
(作用効果)
この態様によれば、装置構成を単純にすることができる。外側冷却部がノズル配置領域の下方から冷却液を噴出する噴出口を有しなくても、内側冷却部が設けられているので、成形物の品質のムラを抑制しやすい。
【0012】
<5>
前記内側冷却部は、噴出方向が互いに異なる4つの噴出口を有する、
<1>~<4>の何れかに記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
(作用効果)
この態様によれば、4方向に向けて冷却液を噴出できるので、効果的に冷却することができる。
【0013】
<6>
前記内側冷却部は、
噴出方向が上方向である上方噴出口と、
噴出方向が下方向である下方噴出口と、
噴出方向が水平方向である一対の側方噴出口と、を有する、
<1>~<5>の何れかに記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【0014】
<7>
前記移送部が有する前記シャフトは、一対設けられ、
前記一対のシャフトの延長線上を取り囲む2つの円環領域を合体させた領域が前記ノズル配置領域となっており、
前記内側冷却部は、一対設けられ、
前記一対の内側冷却部は、前記2つの円環領域のそれぞれの内側から冷却液を噴出する、
<1>~<6>の何れかに記載の廃プラスチック成形物の製造装置。
【0015】
<8>
廃プラスチック成形物の製造方法であって、
<1>~<7>の何れかに記載の廃プラスチック成形物の製造装置を用いて行う、
廃プラスチック成形物の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る廃プラスチック成形物の製造装置の構成を示す模式図である。
【
図2】実施形態に係る押出成形部及びノズル冷却部を示す図である。
【
図3】変形例に係る押出成形部及びノズル冷却部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<廃プラスチック成形物の製造装置>
まず、本発明の実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造装置100(以下、単に製造装置100という。)について説明する。
【0019】
図1は、製造装置100の全体構成を示す模式図である。
【0020】
製造装置100は、廃プラスチック原料M(以下、単に原料Mという。)に対して、破砕、混練及び加熱等の処理を行った後、押出成形することで、所定の形状を有する廃プラスチック成形物P(以下、単に成形物Pという。)を成形するための装置である。成形物Pは、例えば、石炭とともにコークス炉内へ挿入され、化学原料としてリサイクルされる。
【0021】
原料Mには、使用済みプラスチック容器をはじめとするプラスチックごみが含まれる。具体的には、原料Mには、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン等の樹脂材料を主成分とするプラスチックごみが含まれる。
【0022】
原料Mは、成形物Pの製造装置100に投入される前の段階で、ある程度破砕された状態であってもよい。また、原料Mは、成形物Pの製造装置100に投入される前の段階で、ある程度、混練され、加熱された状態であってもよい。この場合、容器10内での原料Mに対する混練、加熱を省略又は簡易的に行うようにしてもよい。
【0023】
製造装置100は、容器10と、移送部20と、押出成形部30と、切断部70と、を有する。
まず、ホッパ13を介して容器10内に原料Mが投入される。投入された原料Mは、混練、加熱されながら移送部20によって容器10の一端部11から他端部15へ移送される。そして、押出成形部30を介して原料Mが所定の形状に押出成形されるとともに、押出成形部30での冷却によって原料Mの表面が十分に固化される。その後、切断部70によって原料Mが切断される結果、最終的に成形物Pが形成される。
【0024】
(容器)
容器10は、原料Mを収容することが可能な筐体部分である。容器10は、
図1におけるY方向の一端部11側に、Z方向に向かって開口されたホッパ13を有する。ホッパ13を介して、容器10内に原料Mが投入される。原料Mは、容器10の内部において、混練されるとともに、加熱される。このとき、原料Mは、一例として容器10内で140℃程度以上に加熱されてもよい。
【0025】
容器10内での加熱温度が140℃程度未満であると、原料Mの溶融が十分でなく、成形物Pの成形過程において表面側の固化が十分に行われない。つまり、容器10内の温度を140℃程度以上とすることで、成形物Pの成形過程における固化が十分に行われるようにすることができる。
【0026】
容器10内で原料Mが140℃程度以上に加熱されるとは、容器10内の全ての領域において、140℃以上に加熱されていることを意味するものではなく、容器10内の押出成形部30の近傍の原料Mが、140℃以上に加熱されていれば足りる。
【0027】
容器10内には移送部20の一部が設けられ、移送部20によって、容器10のY方向の他端部15へ向かって原料Mが移送される。容器10の他端部15には、面板17が設けられている。面板17は、容器10の他端部15に設けられた板状部材であり、面板17には、押出成形部30が設けられている。面板17の板厚、形状等は、押出成形における押圧力等を考慮して、適宜設定され得る。面板17は、容器10の他端部15に位置する成形側壁16を構成する。
【0028】
また、容器10には、容器冷却部40が設けられている。具体的には、
図1に示すように、容器10の構成する外周壁19の内部に流路41が形成されている。流路41内を冷媒Cが流通することで、容器10内の原料Mが抜熱されて、冷却される。
【0029】
(移送部)
移送部20は、容器10内の原料Mを容器10の他端部15へ向かって移送する。具体的には、移送部20は、いわゆる2軸押出し機構を有する。移送部20は、軸方向がY方向に沿って設けられた一対のシャフト21と、シャフト21の軸方向端部と連結された減速機構23と、減速機構23を介してシャフト21に回転力を付与する駆動源25と、を有する。なお、一対のシャフト21は、X方向に並んで配置されているので、
図1では一方のシャフト21のみが示されている。一対のシャフト21の回転方向は、同じ方向であってもよいし、逆方向であってもよく、容器10内の原料Mの混練、加熱状態等に応じて適宜設定される。
【0030】
一対のシャフト21の外周面には、らせん状に設けられた刃状部分を有するスクリュー部27が設けられている。かかるスクリュー部27によって、シャフト21の回転に伴い、原料Mが容器10の一端部11側から他端部15側へ移送される。また、一対のシャフト21に設けられたスクリュー部27同士の回転によって、原料Mが混練されるとともに、摩擦によって加熱される。
【0031】
さらに、一対のシャフト21には、図示しないニーディングディスク部が設けられてもよい。ニーディングディスク部は、シャフト21の軸方向中間に設けられている。一対のシャフト21に設けられたニーディングディスク部同士の回転によって、原料Mがより混練されるとともに、摩擦によって加熱される。
【0032】
(押出成形部)
押出成形部30は、成形側壁16を介して容器10の内部と外部とを連通する部分であり、成形物Pを成形する部分である。
【0033】
具体的には、押出成形部30は、複数の成形ノズル31を備える。成形ノズル31は、筒状(具体的には円筒状)である。面板17には当該面板17を貫通する貫通孔(ノズル配置用孔17D、
図2参照)が複数形成されており、これら複数のノズル配置用孔17Dに複数の成形ノズル31が挿入された状態で配置されている。
【0034】
より具体的には、成形ノズル31は、基端側の部分が面板17の貫通孔の内部に配置されており、先端側の部分が面板17の外部側の面17Aから突出している。成形ノズル31の先端側の部分が面板17の外部側の面17Aから突出していることにより、原料Mが押出成形部30の内周面31Bと接触する時間が長くなる。これにより、原料Mの溶融表面が充分に固化される。
【0035】
図2は、面板17に対向する方向(+Y方向)から押出成形部30を見た図である。
図2に示すように、押出成形部30を構成する複数(
図2では18個)の成形ノズル31は、シャフト21の延長線上を取り囲む領域R(以下、ノズル配置領域Rという。)に配置されている。具体的には、シャフト21は一対設けられているため、一方のシャフト21の延長線上を取り囲む円環領域rと、他方のシャフト21の延長線上を取り囲む円環領域rと、が存在する。そして、2つの円環領域rは、一部が重なる状態となっている。これにより、ノズル配置領域Rは、8の字状となっている。
【0036】
なお、
図2では、円環領域rに成形ノズル31が1重の円環状に配置されている。しかし、成形ノズル31は、2重や3重の円環状に配置されてもよい。
また、
図2の例では、面板17に形成された全ての貫通孔に対応して成形ノズル31が配置されている。しかし、必要な成形ノズル31の個数に応じ、貫通孔のうち一部は、成形ノズル31の代わりに閉塞用の部材を挿入することで閉塞してもよい。
【0037】
(切断部)
切断部70は、押出成形部30において押し出し成形された原料Mを切断する。
押出成形部30において押し出された原料Mの外周面は固化しており、原料Mの外形が維持された状態となるので、切断が容易となる。切断部70により切断することで、原料Mが自重により折れる場合と比較して、切断箇所を制御できる。
【0038】
切断部70は、一例として、回転刃71と、駆動源73と、切断部シャフト75と有する。回転刃71は、放射状に延びたアームの先端に刃がついた部位である。回転刃71のアームの放射方向の中心には、切断部シャフト75の一端が設けられる。切断部シャフト75の他端には、駆動源73が取り付けられる。駆動源73は、切断部シャフト75を介して、回転刃71に対して回転力を付与する。回転刃71の当接によって、押出成形部30から押し出された原料Mが切断され、成形物Pとされる。
【0039】
(容器冷却部)
また、製造装置100は、容器冷却部40を有する。
容器冷却部40は、容器10に設けられた流路41内に冷媒Cを流通することにより、容器10内の原料Mを抜熱する。この結果、容器10内の原料Mが冷却される。
【0040】
具体的には、
図1に示すように、容器10の外周壁19内に流路41が形成されている。かかる流路41は、一例として、断面円形状の管状とされている。また、流路41は、容器10において、らせん状に形成されている。すなわち、原料Mが移送される方向(Y方向)に沿って所定の間隔のピッチを有しながら、容器10の外周壁19の面内方向に沿って周回状に形成されている。
【0041】
流路41の一端部41A及び他端部41Bを介して、冷媒Cが流路41内に導入され、又は排出される。
【0042】
図1に示すように、容器冷却部40は、循環機構43を有してもよい。循環機構43は、冷媒Cを循環させて、容器10内の流路41に冷媒Cを繰り返し導入、排出させる。具体的には、循環機構43は、
図1に示すように、チラー43Aと、ポンプ43Bとを有する。チラー43Aは、流路41から排出された冷媒Cが所定の温度となるように冷却する。具体的には、チラー43Aは、冷媒Cが5℃以上80℃程度以下となるように冷却する。チラー43Aにおける冷却技術には、公知の循環用冷媒に対する冷却手法が適宜採用され得る。ポンプ43Bは、冷媒Cを所定の圧力で循環させる。ポンプ43Bには、冷媒Cの種類、求められる圧力に応じて、公知の圧送手法が適宜採用され得る。
【0043】
(加熱部)
また、製造装置100は、面板17の温度を調節可能な加熱部50を有する。
加熱部50は、一例として、面板17内に設けられた抵抗加熱式のヒータ51である。ヒータ51は、加熱用電源53と接続され、面板17内部での発熱によって、面板17及び、その近傍を加熱する。容器10の他端部15の面板17に設けられた加熱部50による加熱によって、原料Mの温度低下が抑制される。つまり、押出成形部30内における原料Mの溶融状態が維持される。
【0044】
(ノズル冷却部)
また、製造装置100は、ノズル冷却部60を有する。
ノズル冷却部60は、成形ノズル31の外周面31Aへ向けて冷却液W(冷却水)を噴出することで、成形ノズル31を冷却する。成形ノズル31が冷却されることにより、原料Mの溶融表面の固化を促進される。これにより、成形後の成形物Pの膨張が抑制され、成形物Pの高密度化が実現される。また、成形物Pが所定の剛性を有することにより、後述する切断部70による切断が容易になる。
【0045】
ノズル冷却部60による冷却では、一例として、成形ノズル31を約100℃以下に冷却する。ノズル冷却部60による冷却によっても成形ノズル31の温度が約100℃より高い温度であると、溶融した原料Mの表面が、十分に固化されない。この結果、成形物Pの高密度化が実現されない。
【0046】
図1に示すように、ノズル冷却部60は、冷却液Wが噴出する噴出口61と、噴出口61へ冷却液Wを供給するポンプ63と、を有する。
【0047】
図2に示すように、ノズル冷却部60は、複数の噴出口61A,61B,61C,61D,61Eを有する。
ノズル冷却部60は、ノズル配置領域Rの外側から冷却液Wを噴出する外側冷却部60Aと、ノズル配置領域Rの内側から冷却液Wを噴出する内側冷却部60Bと、を有する。複数の噴出口61A,61B,61C,61D,61Eは、ノズル配置領域Rの外側に位置して外側冷却部60Aとして機能する噴出口61A,61Bと、ノズル配置領域Rの内側に位置して内側冷却部60Bとして機能する噴出口61C,61D,61Eと、に分けることができる。
外側冷却部60Aに加えて内側冷却部60Bが設けられることにより、外側冷却部60Aでは冷却しにくい成形ノズル31や外側冷却部60Aでは冷却しにくい成形ノズル31の部分(例えば円環領域rの上部に位置する成形ノズルの下面側)を効果的に冷却することができる。
各噴出口の噴射角度は、複数の成形ノズル31を適切に冷却できるように適宜設定される。噴射角度は、例えば約90度である。噴射角度とは、噴出口から噴射される冷却液Wの広がり角度を意味する。
【0048】
外側冷却部60Aは、複数の下方噴出口61Aと、複数の側方噴出口61Bと、を有する。下方噴出口61Aは、噴出方向を下方向に向けた噴出口であり、側方噴出口61Bは、噴出方向を側方(水平方向、±X方向)に向けた噴出口である。側方噴出口61Bには、噴出方向を+X方向に向けた側方噴出口61Bと、噴出方向を-X方向に向けた側方噴出口61Bと、がある。下方噴出口61Aの数と側方噴出口61Bの数とは同数であり、
図2に示す例では4つずつである。下方噴出口61Aは、ノズル配置領域Rの上側に位置し、側方噴出口61Bは、ノズル配置領域Rの側方に位置する。
【0049】
内側冷却部60Bは、2つの円環領域rのそれぞれに対応して2つ設けられる。2つの内側冷却部60Bの各々は、2つの円環領域rの各々の内側に位置する。2つの内側冷却部60Bの各々は、上方噴出口61Cと、下方噴出口61Dと、一対の側方噴出口61Eと、を有する。上方噴出口61Cは噴出方向を上方向に向けた噴出口であり、下方噴出口61Dは噴出方向を下方向に向けた噴出口であり、側方噴出口61Eは噴出方向を側方(水平方向)に向けた噴出口である。
【0050】
(温度センサ)
また、製造装置100は、成形ノズル31の温度を測定するための温度センサ31Cを有する。温度センサ31Cは、押出成形部30の肉厚の径方向の中間部分の温度を測定可能な位置に設けられてもよい。温度センサ31Cは、例えば熱電対である。
また、製造装置100は、面板17の温度を検出可能な温度センサ17Cを有する。
温度センサ17Cは、一例として、面板17内に挿入された状態で使用される熱電対である。温度センサ17Cは、面板17内に設けられたヒータ51の加熱温度を検出可能な範囲内に設けられる。
【0051】
(制御部)
製造装置100は、制御部90を有する。制御部90は、製造装置100における成形物Pの成形工程を制御する。
【0052】
具体的には、制御部90は、温度センサ17Cからの出力に基づいて、加熱部50による面板17周辺の加熱を制御する。制御部90は、温度センサ31Cからの出力に基づいて、ノズル冷却部60による押出成形部30の冷却を制御する。すなわち、本実施形態では、加熱制御用の温度センサが、温度センサ17Cであると共に、冷却制御用の温度センサが、温度センサ31Cである。さらに、制御部90は、切断部70の駆動源73、移送部20の駆動源25の回転数等を制御する。
【0053】
また、制御部90は、容器冷却部40による冷却において、温度センサ17C及び/又は温度センサ31Cからの出力に基づいて、流路41に導入される冷媒Cの流量及び温度の少なくとも一方を制御する。具体的には、制御部90は、温度センサ31Cが検出する温度が所定の温度以下(例えば、100℃以下)になるように、チラー43A及び/又はポンプ43Bの動作を制御する。
【0054】
制御部90としての機能は、一例として、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、及びストレージ等の協働によって実現される。すなわち、CPUは、ストレージに記憶された製造装置100の制御プログラムをメモリ上で実行することで、制御部90として機能する。
【0055】
<廃プラスチック成形物の製造方法>
次に、本実施形態に係る廃プラスチック成形物Pの製造方法について説明する。
【0056】
まず、廃プラスチック原料Mが容器10へ投入される。続いて、容器10内で廃プラスチック原料Mが混練され、加熱される。
【0057】
さらに、容器10の端部に設けられて容器10内と外部とを連通する押出成形部30へ向かって、150℃以上に加熱された廃プラスチック原料Mが移送される。廃プラスチック原料Mが容器10の端部へ移送され、廃プラスチック原料Mは、押出成形部30内を押し出される。このとき、少なくとも廃プラスチック原料Mが押出成形部30内を押出される間、押出成形部30は100℃以下に冷却される。最終的に、廃プラスチック原料Mは押出成形部30から押出され、切断部70により切断されて、廃プラスチック成形物Pが成形される。
【0058】
(作用効果)
次に、本実施形態における作用効果について説明する。
【0059】
本実施形態では、製造装置100は、容器10と、移送部20と、押出成形部30と、を備える。容器10の内部には、廃プラスチック原料Mが投入される。移送部20は、容器10の内部に投入された廃プラスチック原料Mを容器10の一部を構成する壁である成形側壁16へ向けて移送する。押出成形部30は、成形側壁16を介して容器10の内部と外部とを連通し、廃プラスチック成形物Pを成形する。押出成形部30は、成形側壁16から容器10の外部側に向けて突出する複数の成形ノズル31を有する。
ここで、製造装置100は、複数の成形ノズル31の外周面31Aへ向けて冷却液Wを噴出するノズル冷却部60を備える。このため、ノズル冷却部60により成形ノズル31を冷却し、成形ノズル31内における原料Mの固化を促進することができる。
さらに、ノズル冷却部60は、成形ノズル31が配置される領域(ノズル配置領域R)の内側から冷却液Wを噴出する内側冷却部60Bを有する。このため、複数の成形ノズル31のうち、ノズル配置領域Rの外側から冷却液Wを噴出したのでは冷却しにくい成形ノズル31又は冷却しにくい部分を適切に冷却することができる。
したがって、本実施形態によれば、ノズル冷却部60が内側冷却部60Bを有しない態様と比較して、成形物Pの品質のムラを抑制しやすい。
【0060】
また、本実施形態では、内側冷却部60Bは、噴出方向を下方へ向ける下方噴出口61Aを有する。このため、ノズル配置領域Rの下部に位置する成形ノズル31を効果的に冷却することができる。
【0061】
また、本実施形態では、ノズル冷却部60は、ノズル配置領域Rの外側から冷却液Wを噴出する外側冷却部60Aを有する。このため、ノズル冷却部60が内側冷却部60B及び外側冷却部60Aを有するので、効果的に複数の成形ノズル31を冷却できる。
【0062】
また、本実施形態では、外側冷却部60Aは、ノズル配置領域Rの下方から冷却液Wを噴出する噴出口を有しない。このため、製造装置100の装置構成を単純にすることができる。本実施形態では、内側冷却部60Bが設けられているので、外側冷却部60Aがノズル配置領域Rの下方から冷却液Wを噴出する噴出口を有しなくても成形物の品質のムラを抑制しやすい。
【0063】
また、本実施形態では、内側冷却部60Bは、噴出方向が互いに異なる4つの噴出口61を有する。このため、4方向に向けて冷却液Wを噴出できるので、効果的に冷却することができる。
【0064】
<補足説明>
以上、発明の実施形態について説明したが、本開示はこれに限定されない。以下で念のため補足する。
【0065】
上記実施形態では、内側冷却部60Bが上方噴出口61Cと下方噴出口61Dと一対の側方噴出口61Eとを有する例(
図2参照)を説明した。しかし、内側冷却部の構成は、
図3に示す構成にしてもよい。
図3に示す内側冷却部160Bは、噴出方向がそれぞれ約45度ずつ変更された4つの噴出口161C,161Dを有する。4つの噴出口161C,161Dは、噴出方向が斜め上方向である2つの噴出口161Cと、噴出方向が斜め下方向である2つの噴出口161Dと、を有する。
【0066】
上記実施形態では、内側冷却部60Bが複数(4つ)の噴出口61を有する例を説明したが、本開示の内側冷却部60Bはこれに限定されない。内側冷却部60Bが有する噴出口61の数は1つであってもよいし、4つ以外の複数であってもよい。
また、内側冷却部60Bの噴出口61は、噴出方向を変化できるように回転可能に構成されてもよい。この場合、自動で回転するように構成することが好ましい。噴出口61を回転可能に構成する場合でも、噴出口の数は特に限定されない。
【0067】
上記実施形態では、外側冷却部60Aが、ノズル配置領域Rの下方から冷却液Wを噴出する噴出口を有しない例を説明したが、本開示の外側冷却部はこれに限定されない。外側冷却部は、ノズル配置領域の下方から冷却液Wを噴出する噴出口を有していてもよい。
【0068】
上記実施形態では、移送部20が一対のシャフト21を有する例を説明したが、本開示の移送部はこれに限定されない。移送部が有するシャフトの数は一つでもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 容器
16 成形側壁
20 移送部
21 シャフト
30 押出成形部
31 成形ノズル
31A 外周面
60 ノズル冷却部
60A 外側冷却部
61A 下方噴出口
61B 側方噴出口
60B 内側冷却部
61C 上方噴出口
61D 下方噴出口
61E 側方噴出口
160B 内側冷却部
100 製造装置
M 廃プラスチック原料
P 廃プラスチック成形物
R ノズル配置領域
r 円環領域
W 冷却液