(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071343
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】AI営業システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0601 20230101AFI20240517BHJP
【FI】
G06Q30/0601 312
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119912
(22)【出願日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2022181848
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】310009708
【氏名又は名称】中村 義一
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 義一
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB53
5L049BB53
(57)【要約】
【課題】電子商取引において、優れた価格応談のシステムを提供すること。
【解決手段】AI営業システムでは、価格の応談をする際に、応談の内容について、秘密保持の契約が必要となるように構成されている。また、価格として、表示価格以外に、表示価格より低い容認価格と、容認価格より低い交渉価格とが設定されるとともに、価格の応談は、AIチャットボットを利用して行うように構成されている。さらに、価格の応談の範囲は、AIチャットボットを利用して行う範囲と売主により行う範囲とに区分されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品及び/又はサービスを含む商品の価格の応談が可能な人工知能の機能を有するAI営業システムであって、
前記商品の売主側の第1情報処理装置と買主側の第2情報処理装置との間で、前記価格を含む情報の通信が可能なシステム構成を有し、
前記売主側の第1情報処理装置は、
前記価格として、前記商品の定価である表示価格と、前記表示価格より低い価格であって販売を容認する容認価格と、前記容認価格より低い価格であって前記買主との交渉を許容する最低価格である交渉価格と、の各設定価格を記憶するように構成された価格記憶部と、
前記買主側から前記商品を購入する購入希望価格の提示があった場合には、前記購入希望価格と、前記価格記憶部に記憶された前記各設定価格との大小関係を判定するように構成された価格判定部と、
前記価格判定部によって判定された、前記購入希望価格と前記各設定価格との大小関係に基づいて、前記商品の販売に対する対応を決定するように構成された販売対応部と、
を備えた、AI営業システム。
【請求項2】
請求項1に記載のAI営業システムであって、
前記売主側の第1情報処理装置は、
前記人工知能によって、前記買主側の前記第2情報処理装置から前記購入希望価格の提示があった場合に、前記買主側に対して応答する機能を有しており、
前記買主側から前記購入希望価格の提示があった場合には、前記購入希望価格と前記各設定価格とを比較し、前記購入希望価格と前記各設定価格との比較結果に応じた応答を行うように構成された、
AI営業システム。
【請求項3】
請求項2に記載のAI営業システムであって、
前記売主側の第1情報処理装置は、
前記買主側から提示された前記購入希望価格が、前記容認価格未満で前記交渉価格以上の場合には、前記商品の販売を決定することなく、前記売主が認識できる装置に対して、前記購入希望価格が前記容認価格未満で前記交渉価格以上であるという内容の報知を行うように構成された、
AI営業システム。
【請求項4】
請求項2に記載のAI営業システムであって、
前記売主側の第1情報処理装置は、
前記買主側から提示された前記購入希望価格が、前記容認価格以上の場合には、前記商品の販売を決定するように構成された、
AI営業システム。
【請求項5】
請求項2に記載のAI営業システムであって、
前記売主側の第1情報処理装置は、
前記買主側から提示された前記購入希望価格が、前記交渉価格未満の場合には、再度価格の交渉を行うように構成された、
AI営業システム。
【請求項6】
請求項1に記載のAI営業システムであって、
前記売主側の第1情報処理装置は、
前記人工知能によって、前記買主側から前記購入希望価格の提示があった場合に、前記買主側の第2情報処理装置に対して応答する機能を有しており、
前記買主側から、一度成約した商品について再度価格交渉の提示があった場合には、当該商品の再交渉を禁止するように構成された、
AI営業システム。
【請求項7】
請求項1に記載のAI営業システムであって、
前記売主側の第1情報処理装置は、
前記人工知能によって、前記買主側から前記購入希望価格の提示があった場合に、前記買主側の第2情報処理装置に対して応答する機能を有しており、
前記買主側から前記購入希望価格の提示があった場合には、前記購入希望価格と前記各設定価格とを比較し、前記購入希望価格と前記各設定価格との比較結果に応じた応答を行うとともに、
前記価格の交渉を行う場合には、当該交渉の内容について前記買主側に守秘義務を結ぶ提案を行い、前記守秘義務の提案が認められない場合には、前記価格の交渉を行わないように構成された、
AI営業システム。
【請求項8】
請求項1に記載のAI営業システムであって、
前記売主側の第1情報処理装置は、
前記人工知能によって、前記買主側から前記購入希望価格の提示があった場合に、前記買主側の第2情報処理装置に対して応答する機能を有しており、
前記応答の内容として、前記販売の対象の前記商品の価格以外に、他の条件を提示するように構成されている、
AI営業システム。
【請求項9】
請求項1に記載のAI営業システムであって、
前記販売の対象の前記商品の価格及び当該商品に付属する他の条件を、数値化して記憶するように構成されている、
AI営業システム。
【請求項10】
請求項1に記載のAI営業システムであって、
前記売主側と前記買主側との間の通信は、文字のデータによる通信及び/又は音声のデータによる通信で行われるように構成された、
AI営業システム。
【請求項11】
請求項1に記載のAI営業システムであって、
前記売主側の第1情報処理装置によって、メタバースが構成されており、
前記メタバース内で、前記売主側と前記買主側との交渉が可能なように、売主側のアバターが設定された、
AI営業システム。
【請求項12】
請求項1に記載のAI営業システムであって、
前記売主側の第1情報処理装置は、
NFC又は二次元コードで示されるURLから、前記価格の応談が可能なサイトに移行可能に構成された、
AI営業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子商取引における価格交渉等が可能なシステムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アマゾンや楽天市場等のネット販売、メルカリや楽天ラクマのネットフリーマーケット等は、電子商取引(イーコマース:electronic commerce)と呼ばれている(例えば、特許文献1参照)。これらのものは、売主がプラットフォームを介して商品の価格を提示して、買主がその価格で購入するというシステムである。つまり、ネット通販と呼ばれるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現在のネット通販において、自由な価格交渉を実現するには、下記の問題点がある。
従来のネット通販では、売主が値引きを容認できる金額(最低価格)のみを定めたものがあるが、これは値引き交渉ではなく、販売を判別するシステムに過ぎない。つまり、これは、買主の値引きの要望金額が、売主の容認できる金額より多いか少ないかの判別システムに過ぎない。
【0005】
また、このシステムでは、各種の弊害が発生することがあった。例えば、買主が少しでも安く購入するために何度もアクセスする現象が生まれた。また、売主は、それを回避するために回数制限を設ける事になり、そのやり取りの煩わしさからこのシステムは廃れていった。
【0006】
本開示の一局面は、電子商取引において、優れた価格交渉のシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、物品及び/又はサービスを含む商品の価格の応談が可能な人工知能の機能を有するAI営業システムに関するものであり、商品の売主側の第1情報処理装置と買主側の第2情報処理装置との間で、価格を含む情報の通信が可能なシステム構成を有する。
【0008】
このAI営業システムの商品の売主側の第1情報処理装置は、価格記憶部と価格判定部と販売対応部とを有する。
価格記憶部では、価格として、商品の定価である表示価格と、表示価格より低い価格であって販売を容認する容認価格と、容認価格より低い価格であって買主との交渉を許容する最低価格である交渉価格と、の各設定価格を記憶する。
【0009】
価格判定部では、買主側から商品を購入する購入希望価格の提示があった場合には、購入希望価格と価格記憶部に記憶された各設定価格との大小関係を判定する。
販売対応部では、価格判定部によって判定された、購入希望価格と各設定価格との大小関係に基づいて、商品の販売に対する対応を決定する。
【0010】
このような構成により、電子商取引において、優れた価格交渉のシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)はAI営業システムを示す説明図、(b)はサーバの構成を示すブロック図、(c)はサーバの機能を示すブロック図である。
【
図2】AI営業システムの構成を示す説明図である。
【
図3】既存の値引きシステムとの違いを示す説明図である。
【
図5】買主側端末に表示された販売画面を示す説明図である。
【
図6】AI営業システムにおける処理を示すフローチャートである。
【
図7】交渉可と特典有の場合の表示を示す説明図である。
【
図8】特典有の場合の表示例等を示す説明図である。
【
図9】旅行パンプレットの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.AI営業システムの構成]
まず、本実施形態のAI営業システムのシステム構成について説明する。
【0013】
図1(a)に示すように、AI営業システム1は、電子商取引(いわゆるネット通販)が可能なシステムである。このAI営業システム1は、売主側の第1情報処理装置(例えば、サーバ)3と買主側の第2情報処理装置(例えば、パソコンやスマホ等の端末装置)5とが,インターネット等の通信網7を介して、データの送信や受信が可能に接続されたものである。なお、以下では、第1情報処理装置をサーバ3、第2情報処理装置を買主側端末5と称することがある。
【0014】
図1(b)に示すように、サーバ3は、各種の演算や処理を行うサーバ処理部11を備えており、サーバ処理部11は、周知のCPU13や、ROM15、RAM17等のメモリ19等を備えたコンピュータとして機能する。なお、サーバ3には、更に、ハードディスク等の記憶装置(いわゆるストレージ)21を備えていてもよい。
【0015】
また、サーバ3には、売主に対して、各種の情報を報知したり、売主からサーバ3に各種のデータを入力するサーバ側端末23が接続されている。なお、サーバ側端末23としては、ディスプレイやスピーカを備えるとともに、キーボードやタッチパネルによってデータをマニュアルで入力できる装置が挙げられる。
【0016】
サーバ3は、AIと呼ばれる人工知能の機能を有するコンピュータである。このサーバ3により、いわゆるAIチャットボットによる価格の応談が可能である。なお、AIとしては、チャットGPTのように、ディープラーニングにより学習を行ったAIを用いることができる。
【0017】
また、
図1(c)に示すように、サーバ3は、機能的に、価格記憶部31と価格判定部33と販売対応部35とを有する。
価格記憶部31は、商品の定価である表示価格(即ち、最初に設定された希望販売価格:定価)と、表示価格より低い価格であって販売を容認する容認価格と、容認価格より低い価格であって買主との交渉を許容する最低価格である交渉価格と、の各設定価格を記憶装置21等に記憶するように構成されている。
【0018】
価格判定部33は、買主側から商品を購入する購入希望価格の提示があった場合には、購入希望価格と価格記憶部31に記憶された各設定価格との大小関係を判定するように構成されている。
【0019】
販売対応部35は、価格判定部33によって判定された、購入希望価格と各設定価格との大小関係に基づいて、商品の販売に対する対応を決定するように構成されている。
[2.AI営業システムによる動作]
次に、AI営業システム1により実施される動作について説明する。
【0020】
図2に示すように、本実施形態のAI営業システム1では、売主側の第1情報処理装置であるサーバ3が販売の交渉を代行する。詳しくは、サーバ3の人工知能(即ち、AI)によって実現されるAIチャットボットが販売の交渉を代行する。
【0021】
このAI営業システム1を用いて商品の販売を行う場合には、下記のような手順で実施される。
サーバ3は、例えば、ネット販売の会社が運営するプラットフォームを介して、買主側端末5のディスプレイに、商品を販売する画面(販売画面)を表示できるようになっている。
【0022】
従って、買主が商品を購入する場合には、通常、買主は、売主側のサーバ3が提供する前記販売画面のURLにアクセスすることにより、買主側端末5のディスプレイに、商品の画像や定価等を含む前記販売画面が表示される(例えば、
図7参照)。なお、URLとは、Uniform Resource Locatorの略である。また、この販売画面には、商品の画像や、商品の定価に加えて、後述するように、価格の交渉が可能なこと等が表示されている。
【0023】
そして、前記販売画面の交渉を開始する「交渉可」のボタンが押されると、価格交渉を行うための販売画面(即ち、交渉画面:
図5参照)に切り替わる。
従って、後述するように、買主は、その交渉画面に表示された購入希望価格の入力欄K2に購入希望価格を入力する等のように、必要事項を入力し、送信ボタンK3を押すことにより、実質的に価格の交渉が開始される。
【0024】
[2-1.3種類の販売価格の設定及び販売の判断]
本実施形態では、
図3に示すように、3種類の販売価格を設定する。
具体的には、ある商品について、その商品の定価である表示価格と、表示価格より低い価格であって販売を容認する容認価格と、容認価格より低い価格であって買主との交渉を許容する最低価格である交渉価格と、の3種類の各設定価格を定め、その3種類の設定価格を記憶装置21等に記憶しておく。
【0025】
従って、販売用に設定する価格は、高いものから順番に、表示価格(定価)、容認価格、交渉価格となる。なお、従来では、定価と最低価格しか設定されていない。
そして、AI営業システム1(詳しくは、サーバ3)が、下記のアルゴリズムにより、価格の交渉を実施する。
【0026】
(1)買主が最初に提示した希望価格(購入希望価格)が、容認価格以上であれば、即成約(即ち、成約時の価格等の条件で販売することを決めること)とする。また、成約した場合には、そのことを売主側(即ち、サーバ側端末23)に報知する。
【0027】
(2)買主が最初に提示した購入希望価格が、容認価格未満の場合には、AIチャットボットによる交渉を開始する。
例えば、サーバ3のAIチャットボットから買主側に、「お知らせ頂きました購入希望価格の再考をお願いできませんでしょうか?」等の通知を行う。
【0028】
(3)前記(2)の交渉の結果、買主側から再度購入希望価格が通知された場合において、その購入希望価格が容認価格以上の場合には、即成約とする。また、成約した場合には、そのことを売主側に報知する。
【0029】
(4)前記(2)の交渉の結果、買主側から再度購入希望価格が通知された場合において、その購入希望価格が容認価格未満で交渉価格以上の場合には、その内容を売主側に通知する。このような場合には、売主(人)はこの通知を受けて、販売するかどうかを判断することができる。
【0030】
(5)前記(2)の交渉の結果、買主側から再度購入希望価格が通知された場合において、その購入希望価格が交渉価格未満の場合には、AIチャットボットによる交渉を再開する。
【0031】
例えば、AIチャットボットから買主側に、「申し訳ありませんが、購入希望価格の再考をお願いできませんでしょうか?」等の連絡を行う。
つまり、本実施形態では、
図4に示すように、購入希望価格が、容認価格以上の場合には、その価格で販売を許可し、容認価格未満交渉価格以上の場合には、売主が判断する値引き交渉範囲とし、交渉価格未満では、その価格での販売をしないように設定されている。
【0032】
[2-2.販売の承認制限]
本実施形態では、商品の販売に関して、承認制限を設ける。
買主の中には、値下げ金額が確定しても、再度交渉を繰り返して制御が効かない状態が考えられる。そこで、本実施形態では、交渉対象の商品について、一度交渉の結果を承認した場合、即ち、売主が買主の購入希望価格での販売を認めた場合(例えば、成約した場合)には、再度の交渉は認めないようにする。即ち、承認制限を設ける。
【0033】
具体的には、買主が提示した価格で販売することが決まった商品(即ち、成約した商品)について、成約フラグを設定しておく。そして、同じ買主が、成約した同じ商品について、再度、購入希望価格を提示した場合には、成約フラグの有無を確認し、成約フラグが設定されている商品については、再交渉を認めないようにする。
【0034】
このような場合には、買主に対して、既に成約しているので再交渉は認めない内容の連絡を行う。なお、同じ買主が、同じ商品を、成約した価格以上で再度購入を希望する場合には、再交渉に該当しないとする。
【0035】
[2-3.守秘義務の設定]
AI営業システム1では、お客様である買主と、条件や価格を交渉して販売を成立させる。この交渉して成立する条件や価格は千差万別である。従って、買主がSNS等で価格や条件を公開すると、売主側に各種の不利益が発生することがある。例えば、同じ商品を販売する際に支障になる。なお、SNSは、Social Networking Serviceの略である。
【0036】
そこで、本実施形態では、交渉案件については、交渉に際して(例えば、事前に)買主側に守秘義務がある秘密保持契約を結ぶようにする。例えば、交渉の途中や成約の際に売主側から提示された価格や条件等について、インターネット等に公開しないような秘密保持契約を結ぶようにする。
【0037】
例えば、
図5に示すように、売主のサーバ3によって設定される販売画面(即ち、買主側端末5のディスプレイに表示させる交渉画面)に、秘密保持契約を認めるかどうかのチェックボックスK1、購入希望価格の入力欄K2、入力したデータを売主側に送信するための送信ボタンK3等を設ける。そして、買主がチェックボックスK1にチェックを入れて、送信ボタンK3を押して送信した場合に、秘密保持契約が成立したとする。
【0038】
なお、チェックボックスK1にチェックがない場合には、売主に対して、チェックボックスK1のチェックを促す通知を行う。なお、チェックボックスK1にチェックがない場合には、それ以上の交渉を中止することができる。例えば、購入希望価格の売主側への送信をできないようにしてもよい。
【0039】
[2-4.処理内容]
次に、上述したサーバ3にて実施される各処理について、
図6のフローチャートに基づいて処理手順を説明する。
【0040】
本処理は、買主側端末5に表示された交渉画面(
図5参照)において、送信ボタンK3が押された場合に実施される。
図6に示すように、まず、ステップ(以下、S)100にて、守秘義務のチェックボックスK1にチェックがなされているか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS110に進み、一方否定判断されるとS170に進む。
【0041】
S170では、守秘義務のチェックボックスK1にチェックがなされていないので、買主側に対して、守秘義務の契約を促す通知を行って、一旦本処理を終了する。
一方、S110では、守秘義務のチェックボックスK1にチェックがなされているので、交渉後の再交渉か否かを判定する。ここで肯定判断されるとS120に進み、一方否定判断されるとS180に進む。
【0042】
送信ボタンK3が押されると、購入希望価格だけではなく、買主側の情報(例えば、買主を特定するID等)が売主側に送信される。一方、売主側では、買主側の情報として、買主が成約した商品の情報(例えば、商品を特定するID)、成約の情報(成約の時期、価格、成約フラグ)等が記憶装置21に記憶されている。従って、今回購買希望価格が送信されたある商品について、成約後の再交渉か否かを判断することができる。
【0043】
従って、S180では、成約後の再交渉であるので、再度の交渉はできない旨の通知を行って、一旦本処理を終了する。
なお、前記S100及びS170の処理、S110及びS180の処理のうち、少なくとも一方は省略することも可能である。
【0044】
そして、S120では、守秘義務の契約があり、且つ、成約後の再交渉ではないので、買主側からの購買希望価格を受信したか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS130に進み、一方否定判断されると待機する。
【0045】
S130では、購入希望価格と各設定価格(即ち、表示価格、容認価格、交渉価格)との大小を比較し、比較結果に応じて、S140~S160のいずれかに進む。
具体的には、購入希望価格が表示価格以上である場合には、S120に進む。また、購入希望価格が容認価格未満で交渉価格以上である場合には、S130に進む。購入希望価格が交渉価格未満である場合には、S140に進む。
【0046】
S120では、購入希望価格が表示価格以上であるので、交渉が成立したとして(即ち、成約として)、成約フラグを設定し、一旦本処理を終了する。なお、成約フラグが設定された商品が、購入希望価格にて販売されることになる。
【0047】
S130では、購入希望価格が容認価格未満で交渉価格以上であるので、その情報を売主に報知し、一旦本処理に終了する。なお、売主のサーバ側端末23のディスプレイには、交渉中の商品の情報、購入希望価格、購入希望価格が容認価格未満で交渉価格以上等の情報が表示される。なお、スピーカ等から、購入希望価格が容認価格未満で交渉価格以上の商品があることを売主に報知するようにしてもよい。
【0048】
このように、売主側に、購入希望価格が容認価格未満で交渉価格以上の商品があることが報知された場合には、売主側にて、どのように対応するかを決定することができる。例えば、この購入希望価格にて販売を認めるようしてもよい。また、買主側に、再度購入希望価格(即ち、より高い購入希望価格)を入力するように連絡してもよい。
【0049】
S140では、購入希望価格が交渉価格未満の低価格であるので、より高い購入希望価格を入力してもらうために、価格交渉を実施し、前記S120に戻る。例えば、上述のように、買主側(即ち、買主側端末5)に、「購入希望価格の再考をお願いできませんでしょうか?」等の再考を促す通信を行う。
【0050】
その後、再度、買主側から購入希望価格の提示があった場合には、前記S120~S160にて同様な処理を繰り返す。
[2-5.値引き金額以外の付加価値の付与]
本実施形態では、AI営業システム1は、金額だけでなく、商品に付随する物品の付属品やサービスの提供などの条件も加味した交渉によって販売を成立させることができる。
【0051】
例えば、買主から、購入希望価格の提示があった場合に、AI(即ち、AIチャットボット)により、付属品やサービスを提供することを提案してもよい。また、AIは、商品説明や交渉を通じて、買主の要望(ニーズ)を把握し、それに応じた買主のニーズに沿った条件を提案できる。
【0052】
付属品やサービスの価値は、金額(例えば、定価や原価)として数値化し、記憶装置21に記憶してAIに認識させる。また、定価及び原価、定価と原価との差額も記憶装置21に記憶する。
【0053】
AIは、定価と原価の差額を認識し、その差額を活用した交渉を進めることができる。これにより、買主のニーズに合わせた交渉を進める事ができ、売主は収益を確保することができる。
【0054】
例えば、付属品を提供する場合に、付属品の定価が3万円、原価が2万円のときには、定価で3万円の値引きであるが、原価計算では2万円の値引きになる。この場合、買い主には3万円の値引きをアピールでき、商品に対して2万5千円値引きする場合よりも5千円収益が上がることになる。
【0055】
本実施形態では、AI営業システム1では、定価や原価が確定していない付属品やサービスも販売に活用するために、数値化(金額化)してAIに認識させる。
つまり、上記交渉において、サービス等の金額が明確でないものも全て数値化(金額)して、AIに理解させて記憶装置21に記憶する。
【0056】
そして、AI営業システム1は、販売する商品に加えて、付属品やサービス等を金額として全て記憶し、金額による値引き交渉に加えて、付属品やサービス等を加味した総合的な交渉を行う。
【0057】
このように、すべての付属品やサービスを原価と定価の数値化を設定し、その差額を考慮した交渉を行うことで、買主には金額以上の付加価値のある取引を実現させる。
なお、定価と原価が明確でない例としては、ホテルのスイートルーム等が挙げられる。これらは、時期により変動し、必ずしも定価や原価が確定していないと考えられる。また、提案するサービスの例としては、ホテル客室のグレードアップや作業の繁忙期を考慮した時期の変更の提案などがある。
【0058】
[2-6.交渉可と特典有の選択]
本実施形態では、買主をAI営業システム1に導く方法として、
図7に示すように、売主の販売画面(即ち、買主側端末5の販売画面)において、表示価格の横に「交渉可」のロゴマークを設置することができる。
【0059】
買主が、この「交渉可」のロゴマークをクリックすることにより、AI営業システム1への導きが始まる。つまり、買主が、「交渉可」のロゴマークをクリックすると、買主と売主との交渉が開始され、前記
図5のような交渉画面が表示され、購入希望価格の入力が可能となる。
【0060】
しかし、いきなりの交渉をためらう買主も多いかもしれないので、交渉のステップを踏むまでに興味を持ってもらうために、「特典有」のロゴマークを追加して用意する。
売主は、自身の判断により、商品毎に「交渉可」に加え、「特典有」を選択して追加することが可能である。
【0061】
[2-7.特典有の展開]
本実施形態では、
図8に示すように、買主側端末5の販売画面において、「特典有」のロゴマークをクリックすると、特典の内容の他に、商品説明(商品の提案)と「交渉可」の二種類のロゴマークが出現する。
【0062】
特典の内容を確認した買主は、商品説明(商品の提案)か「交渉可」のどちらかを選択することができる。
買主が商品説明を選んだ場合は、AIチャットボットは商品説明しながら買主との会話(チャット)も同時に行う。これにより、買主の嗜好にあわせた商品の説明をして値引き金額以外のニーズを見つけ出すことができる。例えば、旅行の話がでれば、買主の嗜好が旅行であるとして、旅行に関するサービスを提案することができる。
【0063】
商品説明の全てが完了した場合には、AIチャットボットは、買主を通常の商品販売の画面に案内する。つまり、AIチャットボットは、「特典有」→「商品説明」→「販売交渉」に移行するように対応することができる。
【0064】
なお、AIチャットボットは、「特典有」の場合は、嗜好の違う複数種類(例えば、三種類)の付属品やサービスを提示することができ、買主がその中から選択することにより、買主の嗜好を把握することができる。
【0065】
そして、AI営業システム1において、上述した内容の動作を行う場合には、下記のような処理を採用できる。
例えば、ある商品について、複数の特典を設定して記憶装置21に記憶しておく。例えば、付属品やサービス等について、複数の特典を記憶しておく。
【0066】
そして、買主が「特典有」のボタンを押した場合には、販売対象の商品について、記憶装置21に記憶された例えば3種の特典を表示する(
図8参照)。
また、買主が3種の特典のうち、いずれかを選択して(例えば、各特典のチェックボックスにチェックを入れて)、その説明を求めるボタン(即ち、商品説明のボタン)を押した場合には、AIチャットボットは、買主がその選択された特典について興味を持っていることを学習することができる。
【0067】
従って、AIチャットボットは、その後の交渉において、買主が興味を持って特典と同様な特典を提案することができる。例えば、旅行に興味を持っている場合には、旅行先等を変更した他の旅行のプランを提案することができる。
【0068】
[2-8.効果]
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態では、サーバ3の記憶装置21に、商品の定価である表示価格と、表示価格より低い価格であって販売を容認する容認価格と、容認価格より低い価格であって買主との交渉を許容する最低価格である交渉価格と、の各設定価格を記憶している。
【0069】
そして、サーバ3は、買主側から商品を購入する購入希望価格の提示があった場合には、その購入希望価格と各設定価格との大小関係を判定し、その大小関係に基づいて、商品の販売に対する対応を決定することができる。
【0070】
つまり、本実施形態では、人工知能(即ち、AI)により、買主側から購入希望価格の提示があった場合には、購入希望価格と各設定価格とを比較し、購入希望価格と各設定価格との比較結果に応じた応答を行うことができる。
【0071】
このような構成により、電子商取引において、優れた価格交渉のシステムを実現することができる。
(2)本実施形態では、サーバ3は、買主側から提示された購入希望価格が、容認価格未満で交渉価格以上の場合には、商品の販売を決定することなく、サーバ側端末23に対して、購入希望価格が容認価格未満で交渉価格以上であるという内容の報知を行うことができる。
【0072】
これにより、売主(人)は、自身の判断によって買主との交渉を行うことができる。例えば、購入希望価格で販売したり、または、再度の価格の提示を求めることもできる。
(3)本実施形態では、サーバ3は、買主側から提示された購入希望価格が、容認価格以上の場合には、商品の販売を決定することができる。
【0073】
(4)本実施形態では、サーバ3は、買主側から提示された購入希望価格が、交渉価格未満の場合には、再度価格の交渉を行うことができる。
(5)本実施形態では、サーバ3は、買主側から、一度成約した商品について再度価格交渉の提示があった場合には、当該商品の再交渉を禁止するように構成されている。従って、再交渉が繰り返されることによる負担を低減することができる。
【0074】
(6)本実施形態では、サーバ3は、価格の交渉を行う場合には、当該交渉の内容について買主側に守秘義務を結ぶ提案を行うとともに、守秘義務の提案が認められない場合には、価格の交渉を行わないように構成されている。
【0075】
買主がSNS等で価格や条件を公開すると、売主側に各種の不利益が発生することがあるが、本実施形態では、そのような不利益を抑制することができる。
(7)本実施形態では、サーバ3は、購入希望価格と各設定価格との比較結果に応じた応答を行う場合には、応答の内容として、販売の対象の商品の価格以外に、他の条件(付属物やサービス)を提示することができる。これにより、多彩な交渉が可能となり、販売向上に寄与する。
【0076】
(8)本実施形態では、サーバ3は、販売する商品の価格(例えば、商品の定価や原価)及び他の条件(例えば、付属品やサービスの定価や原価)を、統一して数値化(金額化)して記憶することができる。これにより、商品を販売する際に、どのような付属品やサービスを提供すると、どの程度の利益が得られるかを予測することができる。
【0077】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0078】
(1)例えば、本開示では、販売画面(例えば、交渉画面)等に表示した文章により、買主との交渉が可能であるが、買主側端末にて、交渉に関する音声を出力することにより、音声での対応を行ってもよい。
【0079】
(2)また、買主側端末の販売画面(例えば、交渉画面)に、アバター店員を表示し、そのアバター店員と買主とが対話して交渉するようにしてもよい。例えば、サーバによってメタバースが構成されており、メタバース内で、売主側と買主側との交渉が可能なように、売主側のアバターが設定されていてもよい。
【0080】
(3)また、
図9に示すように、新聞や雑誌等の紙(ペーパー)媒体等の広告に、二次元コード(例えば、QRコード:登録商標)を表示することにより、買主をAI営業システムに導くことができる。つまり、買主が紙媒体等に印刷された二次元コードをスマホ等で読み取ることにより、AI営業システムに案内することができる。
【0081】
なお、テレビ画面やインターネット等の各種の表示画面に、二次元コードを表示することにより、買主をAI営業システムに導くことができる。
(4)また、二次元コードに代えて、周知のNFCタグを利用してもよい。NFCとは「Near Field Communication」の略で、近距離無線通信技術の国際標準規格のことである。
【0082】
NFCタグを利用する場合には、NFC機能を有するスマホを、紙等に貼り付けられたNFCタグにかざし、NFCタグからAI営業システムのURLを読み取る。これにより、買主をAI営業システムに導くことができる。
【0083】
つまり、上述のように、NFC又は二次元コードで示されるURLから、価格の応談が可能なサイト、即ち、AI営業システムの販売画面等が表示されて価格の応談が可能なwebサイト等に移行可能に構成されていてもよい。
【0084】
(5)また、AI営業システムは、ネット通販以外、ネットフリーマーケット、ネットオークション等幅広く活用できる。
(6)本開示に記載のAI営業システムは、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供されたコンピュータにより、実現されてもよい。
【0085】
(7)上述したAI営業システムの他、当該AI営業システムを構成要素とするシステム、当該AI営業システムのコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の記録媒体、AI営業システムに関する方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0086】
(8)上記各実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…AI営業システム、3…第1情報処理装置(サーバ)、5…第2情報処理装置(買主側端末)、7…通信網、21…記憶装置