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特開2024-73241逃げ部加工装置、逃げ部加工方法、および軸受用外輪製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073241
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】逃げ部加工装置、逃げ部加工方法、および軸受用外輪製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 19/08 20060101AFI20240522BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20240522BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240522BHJP
   B24B 47/22 20060101ALI20240522BHJP
   B24B 5/04 20060101ALI20240522BHJP
   B23B 31/36 20060101ALI20240522BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20240522BHJP
   B23B 5/18 20060101ALI20240522BHJP
   F16C 33/64 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B24B19/08 A
B24B41/06 J
B24B49/10
B24B47/22
B24B5/04
B23B31/36 Z
B23Q17/22 A
B23B5/18
F16C33/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184343
(22)【出願日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】平野 秀和
【テーマコード(参考)】
3C029
3C032
3C034
3C043
3C045
3C049
3J701
【Fターム(参考)】
3C029AA15
3C032GG13
3C034AA01
3C034BB39
3C034BB72
3C034BB92
3C034CA13
3C034CB01
3C043AA01
3C043AA11
3C043CC03
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD05
3C043DD06
3C045BA31
3C045CA15
3C049AA03
3C049AA12
3C049AA14
3C049AA16
3C049AB01
3C049AB04
3C049AC02
3C049BA07
3C049BB02
3C049BB06
3C049BB08
3C049BC01
3C049BC02
3C049CB01
3C049CB03
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA52
3J701BA54
3J701BA56
3J701DA11
3J701FA35
3J701FA44
(57)【要約】
【課題】加工時間の短縮が見込め、かつ、既存の研削装置を簡単な改造で安定して逃げ面を形成できる逃げ部加工装置、逃げ部加工方法、および軸受用外輪製造方法を提供する。
【解決手段】円筒面の外径面を有するワークの前記外径面の一部に、外径面の曲率と異なる曲率を有する逃げ面を加工する逃げ面加工装置である。ワークの外径面を研削又は切削する加工具と、加工具と主軸との接近・離間方向にワーク軸心を偏心した状態でチャックするチャック機構を備える。ワークを主軸回転中心に対して偏心回転させて、回転軸廻りに回転する加工具で、偏心頂点部である加工具接触点から一定量の切り込みを可能とした。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒面の外径面を有するワークの前記外径面の一部に、外径面の曲率と異なる曲率を有する逃げ面を加工する逃げ面加工装置であって、
前記ワークの外径面を研削又は切削する加工具と、前記加工具と主軸との接近・離間方向にワーク軸心を偏心した状態でチャックするチャック機構と、ワークを主軸回転中心に対して偏心回転させて、回転軸廻りに回転する加工具で、偏心頂点部である加工具接触点から一定量の切り込みを可能としたことを特徴とする逃げ面加工装置。
【請求項2】
前記チャック機構は、ワークの内径面を把持する機構であることを特徴とする請求項1に記載の逃げ面加工装置。
【請求項3】
前記チャック機構は、ワークの軸方向両端面を挟持する機構であることを特徴とする請求項1に記載の逃げ面加工装置。
【請求項4】
前記チャック機構は、ワークの内径面を把持、及びワークの軸方向両端面を挟持する機構であることを特徴とする請求項1に記載の逃げ面加工装置。
【請求項5】
前記ワークが、転がり軸受の外方の軌道輪であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の逃げ面加工装置。
【請求項6】
円筒面の外径面を有するワークの前記外径面の一部に、外径面の曲率と異なる曲率を有する逃げ面を加工する逃げ面加工方法であって、
前記ワークの外径面を研削又は切削する加工具と主軸との接近・離間方向にワーク軸心を偏心した状態でワークをチャックし、前記ワークを主軸回転中心に対して偏心回転させて、前記回転軸廻りに回転する加工具で、偏心頂点部である加工具接触点から一定量を切り込むことを特徴とする逃げ面加工方法。
【請求項7】
接触検知手段にて、前記加工具とワークとの接触を検知し、その検知データに基づいて砥石の切り込み量を制御することを特徴とする請求項6に記載の逃げ面加工方法。
【請求項8】
前記接触検知手段にAEセンサを用いることを特徴とする請求項7に記載の逃げ面加工方法。
【請求項9】
円筒面の外径面の一部に、外径面の曲率と異なる曲率を有する逃げ面を形成した軸受用外輪の製造方法であって、
前記軸受用外輪の外径面を研削又は切削する加工具と主軸との接近・離間方向に外輪軸心を偏心した状態で軸受用外輪をチャックし、前記軸受用外輪を主軸回転中心に対して偏心回転させて、前記回転軸廻りに回転する加工具で、偏心頂点部である加工具接触点から一定量を切り込むことで前記逃げ面を形成することを特徴とする軸受用外輪の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逃げ部加工装置、逃げ部加工方法、および軸受用外輪製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸線に垂直な断面が非真円形状であるようなワークの外周面を研削する場合、従来では、NC工作機を用い、ワーク主軸の回転位相に合わせてワークと砥石の相対位置を制御しつつクリープフィード研削するものがあった(特許文献1)。
【0003】
ここで、クリープフィード研削とは、研削加工の一種で、非常に遅い速度でテーブルを送る代わりに、通常研削の数十倍から数百倍の切り込み量を与えて、工作物を1パスで加工する研削方法である。
【0004】
自動車のトランスミッションの軸を転がり軸受を介してハウジングに支持する軸受装置では、ハウジングへの組み付けを容易にするため、転がり軸受の外方の軌道輪がハウジングにすきま嵌めされている。このため、荷重負荷時や高速回転時の軸のアンバランス荷重などにより、外方の軌道輪がクリープすることがある。
【0005】
そのクリープの機序として、軌道輪の表面に進行波が発生し、その進行波が軌道輪自体を移送させることが知られている。すなわち、転動体荷重が軌道輪の軌道面に作用すると、その直下で軌道輪の表面が突出し、波打つ。軸受が回転すると転動体も公転するため、 その表面の波打ちが進行波となる。軌道輪の表面に発生する進行波は、転がり軸受の負荷圏にわたり円周方向および半径方向へのぜん動運動的な挙動をとる。その進行波が相手部材を転動体の公転方向と逆方向に移送しようとするが、相手部材(軸又はハウジング)の抵抗で逆に押し戻される形となり、結果、軌道輪が転動体の公転方向、すなわち軸受回転と同方向に回転するクリープを起こすことになる。
【0006】
そこで、従来では、軌道輪の外周面の一部に逃げ面を形成することによって、クリープを抑制できるように構成したものがある(特許文献2及び特許文献3)。すなわち、このような逃げ面を形成することによって、転がり軸受に負荷されるラジアル荷重の範囲内で最大のラジアル荷重を負荷された場合の荷重負荷圏で軌道輪と相手部材間に径方向隙間を残せるように形成したものである。
【0007】
この場合、逃げ面としては、略円弧面状とされ、その曲率半径を、軌道輪の外周面(嵌め合い面)の曲率半径よりも大きく設定し、その円弧面状の中心線(曲率中心)は、嵌め合い面の中心線から径方向の一方向にずらされて設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5425570号公報
【特許文献2】特開2020-45987号公報
【特許文献3】特開2020-165498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献2や特許文献3に記載の逃げ面を、円筒面である外径面の一部に、特許文献1に記載のようなクリープフィード研削にて形成しようとした場合、主軸の回転と砥石の回転の切り込むタイミングを調整する必要があり、この調整としては簡単に行えない。また、加工時には負荷が大きい(高い)ことから、真円形状のワークに前記した逃げ面を形成する場合、ワークが薄肉の場合、加工時において、真円度が悪化するおそれがある。このため、特許文献1に記載されているようなクリープフィード研削では、前記した逃げ面の形成は困難である。また、一般的なコレットチャックやシューセンタレス方式の加工方法では、真円形状の加工は可能であるが、真円形状の外周面の一部に、異なる曲率の円弧部(逃げ面)を形成するのは困難である。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、加工時間の短縮が見込め、かつ、既存の研削装置を簡単な改造で安定して逃げ面を形成できる逃げ面加工装置、逃げ面加工方法、および軸受用外輪の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の逃げ面加工装置は、円筒面の外径面を有するワークの前記外径面の一部に、外径面の曲率と異なる曲率を有する逃げ面を加工する逃げ面加工装置であって、前記ワークの外径面を研削又は切削する加工具と、前記加工具と主軸との接近・離間方向にワーク軸心を偏心した状態でチャックするチャック機構と、ワークを主軸回転中心に対して偏心回転させて、回転軸廻りに回転する加工具で、偏心頂点部である加工具接触点から一定量の切り込みを可能とした
ものである。
【0012】
本発明の逃げ面加工装置によれば、ワークを主軸回転中心に対して偏心回転させて、前記回転軸廻りに回転する加工具で、偏心頂点部である加工具接触点から一定量の切り込みを可能としたので、ワークの外径面の一部に、外径面の曲率と異なる曲率を有する逃げ面を加工することができる。この場合、逃げ面は略円弧面状とされ、その曲率半径を、ワークの外径面の曲率半径よりも大きく設定し、その円弧面状の中心線(曲率中心)は、ワークの外径面の中心線から径方向の一方向にずらすように設定できる。
【0013】
しかも、主軸の回転と加工具の回転の切り込むタイミングを調整する必要がなく、加工全体時間の短縮化を図れ、また、加工時にはあまり大きな負荷がかからない。また、チャック機構として、加工具と主軸回転中心との接近・離間方向にワーク軸心を偏心した状態でチャックできればよいので、従来の一般的な既存の研削装置のワーク側の主軸側の改造のみでよい。
【0014】
前記チャック機構は、ワークの内径面を把持する機構であっても、ワークの軸方向両端面を挟持する機構であっても、ワークの内径面を把持、及びワークの軸方向両端面を挟持する機構であってもよい。これらの機構であれば、ワークの外径面に逃げ面を形成する際に、チャック機構が逃げ面を加工(研削)する際の妨げとならず、しかも、ワークを安定して偏心回転させることができる。
【0015】
前記ワークが、転がり軸受の外方の軌道輪であるのが好ましい。すなわち、本逃がし面加工装置によれば、ワークである軌道輪の外径面の一部に、外径面の曲率と異なる曲率を有する逃げ面を加工することができる。この場合、逃げ面としては、略円弧面状とされ、その曲率半径を、軌道輪の外周面(嵌め合い面)の曲率半径よりも大きく設定し、その円弧面状の中心線(曲率中心)は、嵌め合い面の中心線から径方向の一方向にずらして設定することができる。これにより、自動車のトランスミッションの軸を、本逃がし面加工装置にて加工された逃げ面を有する軌道輪(外方の軌道輪)を有する転がり軸受を介してハウジングに支持する軸受装置では、外方の軌道輪のクリープを安定して抑制できる。
【0016】
本発明の逃げ面加工方法は、円筒面の外径面を有するワークの前記外径面の一部に、外径面の曲率と異なる曲率を有する逃げ面を加工する逃げ面加工方法であって、前記ワークの外径面を研削又は切削する加工具と主軸との接近・離間方向にワーク軸心を偏心した状態でワークをチャックし、前記ワークを主軸回転中心に対して偏心回転させて、前記回転軸廻りに回転する加工具で、偏心頂点部である加工具接触点から一定量を切り込むものである。
【0017】
本発明の逃げ面加工方法によれば、ワークを主軸回転中心に対して偏心回転させて、前記回転軸廻りに回転する加工具で、偏心頂点部である加工具接触点から一定量の切り込みを可能としたので、ワークの外径面の一部に、外径面の曲率と異なる曲率を有する逃げ面を加工することができる。
【0018】
接触検知手段にて、前記加工具とワークとの接触を検知し、その検知データに基づいて砥石の切り込み量を制御するものであってもよい。このように加工具の切り込み量を制御するものであれば、所望の曲率を有する逃げ面を形成でき、しかも、この逃げ面の円周方向長さも所望のものに設定できる。
【0019】
前記接触検知手段にAEセンサを用いることができる。AE(アコースティックエミッション)は、固体が変形あるいは破壊する際に、それまで蓄えられていたエネルギーが解放されて、その一部が弾性波(AE波)として放出される現象と定義される。このため、砥石とワークが接触する際には、AE波が発生するので、このAE波(弾性波)をAEセンサにより検出することができ、これにより加工具とワークとの接触状態を検知することができる。このため、砥石のワークに対する切込量を制御することができる。
【0020】
本発明の軸受用外輪の製造方法は、円筒面の外径面の一部に、外径面の曲率と異なる曲率を有する逃げ面を形成した軸受用外輪の製造方法であって、前記軸受用外輪の外径面を研削又は切削する加工具と主軸との接近・離間方向に外輪軸心を偏心した状態で軸受用外輪をチャックし、前記軸受用外輪を主軸回転中心に対して偏心回転させて、前記回転軸廻りに回転する加工具で、偏心頂点部である加工具接触点から一定量を切り込むことで前記逃げ面を形成するものである。
【0021】
本発明の軸受用外輪の製造方法では、外周面(外径面)の一部に逃げ面を有する外輪(軸受用外輪)を形成することができる。これによって、軌道輪(外輪)のクリープを抑制することができる軸受(転がり軸受)を安定して製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、加工時間の短縮が見込め、かつ、既存の研削装置を簡単な改造で安定して逃げ面を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る逃げ面加工装置を示し、加工具に砥石を用いた装置の要部斜視図である。
図2】本発明に係る逃げ面加工装置を示し、加工具に砥石を用いた装置の要部正面図である。
図3】本発明に係る逃げ面加工装置を示し、加工具に砥石を用いた装置の要部側面図である。
図4】チャック機構の簡略正図である。
図5】ワークと、加工具である砥石との関係を示す簡略図である。
図6】制御部の簡略構成図である。
図7】本発明に係る逃げ面加工装置を示し、加工具に切削工具を用いた装置の要部正面図である。
図8】本発明に係る逃げ面加工装置を示し、加工具に他の切削工具を用いた装置の要部正面図である。
図9】本発明に係る逃げ面加工装置を用いて逃げ面を形成した外方の軌道輪を有する転がり軸受を用いた軸受装置の正面図である。
図10図9のX-X線断面図である。
図11図9に示す軸受装置の外方の軌道輪の拡大正面図である。
図12図11に示す外方の軌道輪の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施の形態を図1図12に基づいて説明する。図9は本発明に係る逃げ面加工装置を用いて逃げ面を形成した外方の軌道輪を有する転がり軸受を用いた軸受装置を示す。この軸受装置は、軸1と、軸1を取り囲むハウジング2と、軸1とハウジング2との間に介在する転がり軸受3とを備える。以下、転がり軸受3の設計上の回転中心線と軸1の回転中心線とが一致する理想的な状態において、その回転中心に沿った方向のことを「軸方向」という。また、その回転中心線回りに一周する円周に沿った方向のことを「円周方向」という。また、その回転中心線に直交する方向のことを「径方向」という。
【0025】
軸1は、ハウジング2に対して相対的に回転する。軸1は、例えば、自動車のトランス
ミッションに備わる伝達軸である。軸1は、円周方向に延びる嵌め合い面1aを有する。この嵌め合い面1aは、軸1の回転中心線と同心の円筒面状に形成されている。ハウジング2は、軸1に対して静止し、転がり軸受3を径方向に支持する。ハウジング2は、例えば、自動車のトランスミッションケースの一部として形成された隔壁である。
【0026】
ハウジング2は、円周方向に延びる嵌め合い面2aを有する。この嵌め合い面2aは、軸1の嵌め合い面1aを外方から取り囲む円筒面状に形成されている。嵌め合い面2aの中心線は、軸1の回転中心と同心に設定されている。
【0027】
転がり軸受3は、ハウジング2に対して軸1を回転自在に支持し、軸1とハウジング2間で作用するラジアル荷重を受ける。この軸受装置では、ラジアル荷重の荷重方向が一方向のものを想定している。この軸受装置の運転中、軸1の嵌め合い面1aとハウジング2の嵌め合い面2a間で転がり軸受3にラジアル荷重が負荷される。
【0028】
転がり軸受3は、軸1に取り付けられた内方の軌道輪4と、ハウジング2に取り付けられた外方の軌道輪5と、これら両軌道輪4、5間に介在する複数の転動体6と、これら転動体6間の円周方向の間隔を保つ保持器7とを備える。転がり軸受3として深溝玉軸受が例示されている。
【0029】
内方の軌道輪4は、外周側で円周方向に延びる軌道面4aを有し、内周側で円周方向に延びる嵌め合い面4bを有する環状の軸受部品である。軌道面4aは、円周方向全周において転動体6と呼び接触角0°で接触可能になっている。その嵌め合い面4bは、軸1の嵌め合い面1aと同心の円筒面状に形成されている。その嵌め合い面4bの幅(軸方向長さ)は、円周方向全周で一定である。
【0030】
内方の軌道輪4の嵌め合い面4bと軸1の嵌め合い面1a間の嵌め合いは、締め代をもったしまり嵌めに設定されている。内方の軌道輪4は、そのしまり嵌めにより、軸1と一体に回転するように固定されている。
【0031】
外方の軌道輪5は、内周側で円周方向に延びる軌道面5aを有し、外周側で円周方向に延びる嵌め合い面5bを有する環状の軸受部品である。軌道面5aは、円周方向全周において転動体6と呼び接触角0°で接触可能になっている。
【0032】
外方の軌道輪5は、軸1とハウジング2のうちのいずれか一方である相手部材としてのハウジング2とすきま嵌めされている。
【0033】
図11及び図12に、外方の軌道輪5に荷重が負荷されていない自然状態における軌道輪5の形状を示す。外方の軌道輪5の嵌め合い面5bは、円弧面状に形成されている。その嵌め合い面5bは、外方の軌道輪5の外径を規定する。その嵌め合い面5bの径寸は、嵌め合い面5bに外接する仮想円Cの直径に相当する。その嵌め合い面5bにおける円弧面状は、図9及び図10に示す内方の軌道輪4の嵌め合い面4bと同心に設定されている。その嵌め合い面5bの幅(軸方向長さ)は、円周方向全周で一定である。
【0034】
外方の軌道輪5の嵌め合い面5bの径寸は、ハウジング2の嵌め合い面2aの直径よりも小径である。外方の軌道輪5の嵌め合い面5bと、ハウジング2の嵌め合い面2aとは、軸1から転がり軸受3に負荷されるラジアル荷重によって接触させられる。
【0035】
外方の軌道輪5とハウジング2のうち、外方の軌道輪5のみが、当該軌道輪5の嵌め合い面5bを全幅に亘って分断する逃げ面5cを有する。その逃げ面5cは、その嵌め合い面5bの全幅に亘るので、嵌め合い面5bを円周方向に完全に二分している。
【0036】
図11に示すように、逃げ面5cは、分断する嵌め合い面5bの径寸に対して逃げ面5cの円周方向長さの中央部で最大の径方向深さδをもち、かつ当該中央部から円周方向に遠い位置である程に当該径方向深さを小さくした形状である。最大の径方向深さδは、仮想円Cと逃げ面5c間の径方向距離に相当する。
【0037】
図示例において、逃げ面5cは、軸方向に沿った略円弧面状を成すように、分断する嵌め合い面5bの円周方向両端e,e間に連続している。その略円弧面状の曲率半径は、嵌め合い面5bよりも大きく、その円弧面状の中心線(曲率中心)は、嵌め合い面5bの中心線から径方向の一方向にずれた位置(図11において下方向)に設定されている。
【0038】
逃げ面5cの円周方向長さは、軸1の回転中心線回りの角度αで規定することができる。ここで、図9に示す転動体6間のピッチ角度をθとしたとき、図11に示す逃げ面5cの円周方向長さに対応の角度αは、例えば、0<α≦2θに設定することができる。ラジアル荷重による外方の軌道輪5のたわみ、応力を抑えた形状にするため、0.5θ≦α≦θに設定することが好ましい。
【0039】
図12に示すように、外方の軌道輪5の軌道面5aと嵌め合い面5b間で径方向に最小の肉厚を外輪肉厚Hとしたとき、図11に示す逃げ面5cの最大の径方向深さδは、例えば、0.005H≦δ≦0.1Hに設定することができる。ラジアル荷重による外方の軌道輪5のたわみ、応力を抑えた形状にするため、逃げ面5cの最大の径方向深さδは、0.01H≦δ≦0.05Hに設定することが好ましい。
【0040】
逃げ面5cは、図9及び図10に示すように、外方の軌道輪5の外周とハウジング2の嵌め合い面2aとの間に径方向隙間gを生じさせる。その径方向隙間gは、外方の軌道輪5の外径を規定する嵌め合い面5bの全幅を分断する逃げ面5cによって形成されるので、外方の軌道輪5の外周とハウジング2の内周の嵌め合いの全幅(嵌め合い面5bの全幅に相当)に及び、外方の軌道輪5の外周とハウジング2の嵌め合い面2a間を軸方向に貫通する空間となる。
【0041】
逃げ面5cは、転がり軸受3に最大のラジアル荷重Fを負荷された場合の荷重負荷圏で、外方の軌道輪5の外周とハウジング2の嵌め合い面2aとの間に径方向隙間gを残せるように形成されている。ここで、最大のラジアル荷重Fは、この軸受装置の運転中に転がり軸受3に負荷されるラジアル荷重の変動範囲内で最も大きなラジアル荷重である。
【0042】
転がり軸受3のうち、ラジアル荷重を受ける荷重負荷圏は、転がり軸受3の略半周に及ぶ。その荷重負荷圏の円周方向中央部は、そのラジアル荷重の荷重方向に対応の位置となる(図9においてラジアル荷重Fの矢線方向延長上の位置に相当)。外方の軌道輪5は、その荷重負荷圏において転動体6を介してラジアル荷重を軌道面5aで受けるため、弾性変形を生じる。このとき、転がり軸受3の荷重負荷圏においては、外方の軌道輪5の嵌め合い面5bや逃げ面5c(特に軌道面5aの直下の部位)が波状に変形することになる。その波状の径方向高さは、その荷重負荷圏の円周方向中央部で最大となり、その円周方向中央部から遠くなる程に小さくなる。
【0043】
図11に示す逃げ面5cの最大の径方向深さδは、最大のラジアル荷重Fを負荷された場合の転がり軸受3の荷重負荷圏において、前述の波状の最大の径方向高さよりも大きく設定されている。また、逃げ面5cの径方向深さは、前述の円周方向位置に応じた波状の径方向高さ減少分を超えないように、逃げ面5cの円周方向長さの中央部から嵌め合い面5bの端eに向かって次第に小さくなっている。
【0044】
なお、図9の径方向隙間g、図11の最大の径方向深さδは、その大きさを誇張して描いている。実際に生じる軌道輪5の波状変形では、嵌め合い面5bに対する波状の比高が最大でも数μmのオーダーである。
【0045】
外方の軌道輪5は、嵌め合い面5bのうち、図9に示す転がり軸受3の荷重負荷圏内に位置する部分と、ハウジング2の嵌め合い面2aとの接触部において径方向に支持されることになる。その接触部においては、嵌め合い面5bの僅かな波状変形部が嵌め合い面2aに接する。最大のラジアル荷重Fを転がり軸受3に負荷された場合でも、その荷重負荷圏に位置する前述の接触部において、僅かな波状変形を受ける嵌め合い面2aからの反力は軌道輪5をクリープさせる程の力にならない。
【0046】
このような逃げ面5cによって図9及び図10に示す径方向隙間gが形成されているため、最大のラジアル荷重Fを負荷された場合の転がり軸受3の荷重負荷圏において、外方の軌道輪5の外周(嵌め合い面5bや逃げ面5c)が波状に変形しても径方向隙間gが残り、その径方向隙間gが残る円周方向領域では、外方の軌道輪5の波状変形部とハウジング2の嵌め合い面2aとが接触できない。すなわち、この軸受装置の運転中、径方向隙間gが残る円周方向領域では、外方の軌道輪5の外周に生じる波状変形部と、ハウジング2の嵌め合い面2aとの接触が発生しない。このため、転がり軸受3の荷重負荷圏において外方の軌道輪5の外周に生じる波状変形が軌道輪5をクリープさせる進行波として作用することがない。したがって、軌道輪の最大の弾性変形部(波状変形部)がクリープ抑制用周溝の溝底や溝縁に接触し得る場合に比して、この軸受装置は、軌道輪5のクリープをより抑制することができる。
【0047】
図1図3は、本発明に係る逃げ面加工装置を示し、この加工装置(例えば、研削装置)は、円筒面の外径面Waを有するワーク(例えば、前記した転がり軸受の外方の軌道輪であって、軸受用外輪)Wの外径面Waの一部に、外径面Waの曲率と異なる曲率を有する逃げ面5cを加工することができる。
【0048】
加工装置は、図1及び図5に示すように、回転軸11に軸心線O1が、研削装置本体Sの主軸12(研削装置本体の軸心線O)と平行に配設される加工具50としての砥石13と、前記砥石13の回転軸11と主軸12の回転中心との接近・離間方向にワーク軸心WOを偏心した状態でチャックするチャック機構15とを備える。なお、図1等では、加工具50を砥石13にて構成し、ワークWの外径面Waを研削するものであるが、後述する図7図8に示す加工装置では、加工具50を切削工具14にて構成し、ワークWの外径面Waを切削するものである。
【0049】
砥石13は、例えば、円筒体からなり、回転軸11に外嵌固定されている。砥石13としては、溶融アルミナ系砥粒、炭化珪素系砥粒、セラミックス砥粒などの一般砥粒や、CBN砥粒、ダイヤモンド砥粒などの超砥粒などが、無機質、有機質、或いは金属等の結合材によって結合されたビトリファイド砥石、レジノイド砥石、メタルボンド砥石、電着砥石等のよく知られた研削砥石である。また、回転軸11は、砥石用駆動源(駆動用モータ)M1(図6参照)にて回転駆動し、主軸12は、主軸用駆動源(駆動用モータ)M2(図6参照)にて回転駆動が可能となっている。なお、回転軸11の回転方向と、主軸12の回転方向は逆方向とする。
【0050】
また、チャック機構15は、図4に示すように、円筒形状のワークWの内径面Wbを把持する機構、つまり内径把持チャック機構である。この場合、基板16と、この基板16に付設される複数個(例えば、図例のように3個)の爪部材17とを備える。この各爪部材17は、図示省略の往復動機構にて、径方向に沿って往復動する。すなわち、各爪部材17をワークWの内径面Wbよりも内径側に位置させて、爪部材17にワークWを外嵌状に配置し、この状態で、各爪部材17を径方向外方へスライドさせることにより、各爪部材17をワークWの内径面に圧接させれば、ワークWをチャックすることができる。
【0051】
ところで、基板16は、図1に示すように、主軸12の先端側の先端軸部(砥石側の回転軸11と、同一水平面内で平行に配設される軸部)に設けられた支持板20に付設されるものであり、この支持板20に対して、水平方向(主軸12と回転軸11とが、一水平面内で接近・離間する方向)にスライド可能に取り付けられる。この場合、支持板20及び基板16が、先端軸部が挿通される挿通孔を有し、支持板20は主軸12と一体に回転駆動する。
【0052】
基板16には、図4に示すように、水平方向に延びる複数個の長孔21が設けられ、支持板20には、この長孔21に対向するねじ孔(図示省略)が設けられている。そして、長孔21を介してボルト部材22(図1参照)がねじ孔に螺着される。このため、基板16の支持板20に対する水平方向の位置調整を行うことができ、基板16の軸心を支持板20の軸心、つまり、主軸12の軸心Oに対して水平に位置ズレさせることができる。
【0053】
ところで、基板16には、ワークWを内径面把持するための爪部材17を有するもので、ワークWを、その軸心WOが基板16の軸心に一致させた状態で把持している。このため、ワークWの軸心を主軸12の軸心に対して、水平方向に沿って所定寸だけ偏心させた状態とすることができる。また、ワークWと基板16との間に、スペーサ24が介在され、主軸12の先端軸部にワーク押え25が取り付けられる。すなわち、スペーサ24とワーク押え25とで、ワークWを挟持した状態となっている。なお、ワーク押え25は、先端軸部の先端面に螺着されるボルト部材26にて、先端軸部の先端面に固定される。
【0054】
図6は、本逃げ面加工装置の制御部を示し、この装置は、各駆動源M1、M2がコンピュータ30にて制御される。ここで、コンピュータ30は、基本的には、入力機能を備えた入力手段と、出力機能を備えた出力手段と、記憶機能を備えた記憶手段と、演算機能を備えた演算手段と、制御機能を備えた制御手段にて構成される。入力機能は、外部からの情報を、コンピュータに読み取るためのものであって、読み込まれたデータやプログラムは、コンピュータシステムに適した形式の信号に変換される。出力機能は、演算結果や保存されているデータなどを外部に表示するものである。記憶手段は、プログラムやデータ、処理結果などを記憶して保存するものである。演算機能は、データをプログラムの命令に随って、計算や比較して処理するものである。制御機能は、プログラムの命令を解読し、各手段に指示を出すものであり、この制御機能はコンピュータの全手段の統括をする。入力手段には、キーボード、マウス、タブレット、マイク、ジョイスティック、スキャナ、キャプチャーボード等がある。また、出力手段には、モニタ、スピーカー、プリンタ等がある。記憶手段には、メモリ、ハードディスク、CD・CD-R,PD・MO等がある。演算手段には、CPU等があり、制御手段には、CPUやマザーボード等がある。
【0055】
また、この装置には、図6に示すように、砥石13とワークWの接触を検知する接触検知手段31が設けられている。この接触検知手段31としては、AEセンサを使用することができる。AE(アコースティックエミッション)は、固体が変形あるいは破壊する際に、それまで蓄えられていたエネルギーが解放されて、その一部が弾性波(AE波)として放出される現象と定義される。このため、砥石13とワークWが接触する際には、AE波が発生するので、このAE波(弾性波)をAEセンサにより検出することができ、これにより砥石とワークとの接触状態を検知することができる。このため、砥石13のワークWに対する切込量を制御することができる。
【0056】
このため、本装置は、図6に示すように、砥石切込量調整機構32を備える。砥石切込量調整機構32は、砥石側を位置調整するもので、回転軸及び駆動源を載置しているテーブルを移動させることができる。
【0057】
次に、上述のように構成された逃げ面加工装置を用いて、ワークの外径面の一部に逃げ面を加工する方法を説明する。まず、ワークWを主軸12の回転中心Oに対して所定寸だけ偏心させた状態で、ワークWを主軸12の先端軸部12aに装着する。
【0058】
この状態で、主軸12及び砥石13の回転軸11を回転駆動させる。この場合、図5に示すように、主軸12を矢印A方向に回転させた場合、回転軸11を矢印A方向と逆方向の矢印B方向に回転させる。そして、主軸12とワークWの回転を複数回行うことになり、この回転によって、ワークWを主軸12の回転中心Oに対して偏心回転させて、回転軸11廻りに回転する砥石13で、偏心頂点部P1である砥石接触点T1から一定量の切り込みhを可能をとして主軸12の回転中心に対して偏心回転させているので、図11等に示す円弧形状の逃げ面を形成することができる。すなわち、最初に1回転目の加工によって偏心頂点部P1に対応する部位が、最深部となり、この偏心頂点部P1よりも時計廻り方向および反時計廻り方向に向かって、順次浅くなる形状となる。すなわち、砥石13がワークWに接触した部位から次第に切込量が深く(大きく)なって、偏心頂点部において、最深部となり、この部位から次第に切込量が浅く(小さく)なって、砥石13がワークWから離間する。2回転目以降の加工では同じ切込深さの取り代で繰り返し加工を行い、複数回転させることによって、図11に示すような逃げ面5cを加工することになる。
【0059】
ところで、逃げ面加工装置では、接触検知手段31にて、砥石13とワークWとの接触を検知し、その検知データに基づいて砥石の切り込み量を制御するものであるので、所望の曲率を有する逃げ面5cを形成でき、しかも、この逃げ面5cの円周方向長さも所望のものに設定できる。
【0060】
接触検知手段31にAEセンサを用いることができるので、砥石13とワークWとの接触状態を安定して確実に検知することができ、砥石13のワークWに対する切込量を精度よく制御することができる。
【0061】
前記実施形態では、チャック機構15は、ワークWの内径面Waを把持する機構であるので、ワークWの外径面に逃げ面を形成する際に、チャック機構15が逃げ面5cを加工(研削)する際の妨げとならず、しかも、ワークWを安定して偏心回転させることができる。
【0062】
ところで、チャック機構Wとして、逃げ面5cを加工(研削)する際の妨げとならないものであればよいので、スペーサ24と、ワーク押えでワークWの軸方向両端面を挟持する機構のみの場合であっても、ワークWの内径面Wcを把持する機構のものであってもよい。
【0063】
このため、この逃げ面加工装置によれば、ワークWを主軸12の回転中心に対して偏心回転させて、回転軸11廻りに回転する砥石で、偏心頂点部T1である砥石接触点P1から一定量の切り込みを可能としたので、ワークWの外径面Waの一部に、外径面Waの曲率と異なる曲率を有する逃げ面5cを加工することができる。すなわち、主軸12の回転と砥石13の回転の切り込むタイミングを調整する必要がなく、加工全体時間の短縮化を図れ、また、加工時にはあまり大きな負荷がかからない。また、チャック機構15として、砥石13の回転軸11と主軸12の回転中心との接近・離間方向にワーク軸心Woを偏心した状態でチャックできればよいので、従来の一般的な既存の研削装置のワーク側の主軸側の改造のみでよい。
【0064】
従って、加工時間の短縮が見込め、かつ、既存の研削装置を簡単な改造で安定して逃げ面を形成できる。
【0065】
ところで、図1等に示す加工装置では、加工具50を砥石13にて構成していたが、図7に示すように、加工具50を切削工具14にて構成し、ワークWの外径面Waを研削するものであってもよい。
【0066】
図7に示すものは、その回転軸L1が主軸12と平行とされて、その外径面14aでワークWの外径面Waを切削するものである。図7に示す加工装置の他の構成は、図1等に示す加工装置と同様の構成であるので、同一部材は、図1及び図2に示す符号と同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0067】
このため、図7に示す加工装置においても、図1等に示す加工装置の動作を行うことによって、切削工具14がワークWに接触した部位から次第に切込量が深く(大きく)なって、偏心頂点部において、最深部となり、この部位から次第に切込量が浅く(小さく)なって、切削工具14がワークWから離間する。
【0068】
これによって、円筒面の外径面Waを有するワークWの外径面Waの一部に、外径面Waの曲率と異なる曲率を有する逃げ面5cを加工することができる。
【0069】
図8に示すものは、その回転軸L2が主軸12と直交するように配設され、その端面14bでワークWの外径面Waを切削するものである。このため、この場合のチャック機構15は、切削工具14の端面14bと主軸12の回転中心との接近・離間方向にワーク軸心を偏心した状態でチャックすることになる。図8に示す加工装置の他の構成は、図1等に示す加工装置と同様の構成であるので、同一部材は、図1及び図2に示す符号と同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0070】
このため、図8に示す加工装置においても、図1等に示す加工装置の動作を行うことによって、切削工具14がワークWに接触した部位から次第に切込量が深く(大きく)なって、偏心頂点部において、最深部となり、この部位から次第に切込量が浅く(小さく)なって、切削工具14がワークWから離間する。
【0071】
これによって、円筒面の外径面Waを有するワークWの外径面Waの一部に、外径面Waの曲率と異なる曲率を有する逃げ面5cを加工することができる。
【0072】
本発明に係る逃げ面加工装置を用いた逃げ面加工方法によって、本発明に係る軸受用外輪の製造方法を構成できる。すなわち、軸受用外輪5の外径面を研削又は切削する加工具50と主軸12との接近・離間方向に外輪軸心を偏心した状態で軸受用外輪5をチャックし、軸受用外輪5を主軸回転中心Oに対して偏心回転させて、回転軸O1廻りに回転する加工具50で、偏心頂点部P1である加工具接触点T1から一定量を切り込むことで逃げ面5cを形成することができる。このため、軌道輪(外輪)のクリープを抑制することができる軸受(転がり軸受)を安定して製造することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、実施形態では、チャック機構15として、いわゆる内径把持三つ爪チャックであるが、この場合、爪部材17の数の増加は自由である。また、チャック機構として、内径把持用コレットチャックであってもよい。ワークWとして、転がり軸受の軌道輪に限るものではない。
【符号の説明】
【0074】
5 軌道輪
5c 逃げ面
11 回転軸
12 主軸
13 砥石
15 チャック機構
31 接触検知手段
O 回転中心(主軸)
O1 軸心(回転軸)
W ワーク
Wa 外径面
Wb 内径面
Wc、Wd 端面
Wo ワーク軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12