(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073364
(43)【公開日】2024-05-29
(54)【発明の名称】時計の年周期を表示する機構
(51)【国際特許分類】
G04B 19/02 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
G04B19/02
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023172117
(22)【出願日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】22207987.3
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】モンフェレル、 ベルナト
(72)【発明者】
【氏名】ボスカロリ、 ギヨーム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】時計ムーブメントの作動トレインによってドラッギングされることにより駆動することができる時計用の年周期の期間を表示する機構を提供する。
【解決手段】時計ムーブメント1の作動トレイン10によってドラッギングされることにより駆動することができる時計200用の年周期の期間を表示する機構100であって、年周期の期間を表示する機構100は、年周期の期間を示すインジケータ110と、時計ムーブメント1の前記作動トレイン10によって駆動されかつ年周期の期間のインジケータ110を回転させることができる年周期トレイン120とを含むことを特徴とし、年周期の期間を表示する機構100は、年周期トレイン120が作動トレイン10と年周期の期間のインジケータ110との間に最大4つの歯車装置を含む歯車トレインを形成することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメント(1)の作動トレイン(10)によってドラッギングされることにより駆動することができる時計(200)用の年周期の期間を表示する機構(100)であって、前記年周期の期間を表示する機構(100)は、
・年周期の期間を示すインジケータ(110)と、
・前記時計ムーブメント(1)の前記作動トレイン(10)によって駆動されかつ前記年周期の期間のインジケータ(110)を回転させることができる年周期トレイン(120)と
を含むことを特徴とし、
前記年周期の期間を表示する機構(100)は、前記年周期トレイン(120)が前記作動トレイン(10)と前記年周期の期間のインジケータ(110)との間に最大4つの歯車装置を含む歯車トレインを形成することを特徴とする、時計(200)用の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項2】
前記年周期トレイン(120)は、前記作動トレイン(10)と前記年周期の期間のインジケータ(110)との間に1:365.234375の比又は1:365.234375の倍数である比を有するように構成された歯車トレインを形成することを特徴とする、請求項1に記載の時計(200)用の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項3】
前記作動トレイン(10)は12時間で1回転する時間ホイール(11)を含み、前記年周期トレイン(120)の歯車トレインは前記作動トレイン(10)の前記時間ホイール(11)と噛み合うことができ、前記年周期トレイン(120)の歯車トレインは、前記作動トレイン(10)の時間ホイール(11)と前記年周期の期間のインジケータ(110)との間に1:2×365.234375の比を有するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載の時計(200)用の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項4】
前記作動トレイン(10)は24時間で1回転する24時間ホイールを含み、前記年周期トレイン(120)の歯車トレインは前記作動トレイン(10)の前記24時間ホイールと噛み合うことができ、前記年周期トレイン(120)の歯車トレインは、前記作動トレイン(10)の24時間ホイールと前記年周期の期間のインジケータ(110)との間に1:365.234375の比を有するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載の時計(200)用の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項5】
前記年周期トレイン(120)の歯車トレインの比は、分子に素数17、11、5、分母に2を有することを特徴とする、請求項1に記載の時計(200)用の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項6】
前記年周期トレイン(120)は、
・34歯を有する第1中間ホイールセットホイール、及び8歯を有する第1中間ホイールセットピニオンを含む第1中間ホイールセット(121)と、
・44歯を有する第2中間ホイールセットホイール、及び8歯を有する第2中間ホイールセットピニオンを含む第2中間ホイールセット(122)と、
・40歯を有する第3中間ホイールセットホイール、及び8歯を有する第3中間ホイールセットピニオンを含む第3中間ホイールセット(123)と
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の時計(200)用の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項7】
前記年周期の期間のインジケータ(110)を摩擦により設定する機構を含むことを特徴とする、請求項1に記載の時計(200)用の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項8】
前記中間ホイールセット(121、122、123)のホイールのうちの1つがそのピニオンに対して摩擦により取り付けられることを特徴とする、請求項6に記載の時計(200)用の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項9】
前記機構は中国の季節を表示する機構であることを特徴とする、請求項1に記載の時計(200)用の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項10】
作動トレイン(10)と、請求項1に記載の年周期の期間を表示する機構(100)とを含み、前記年周期トレイン(120)は前記作動トレイン(10)と直接的に噛み合う、時計ムーブメント(1)。
【請求項11】
前記作動トレイン(10)は12時間で1回転を行う時間ホイール(11)を含み、前記年周期トレイン(120)は前記時間ホイール(11)と直接的に噛み合うことを特徴とする、請求項10に記載の時計ムーブメント(1)。
【請求項12】
前記時間ホイール(11)は8歯を有し、前記年周期の期間のインジケータ(110)は50歯を有する年周期ホイール(112)によって回転され、前記年周期トレイン(120)の歯車トレインは以下の比
34/8*44/8*40/8*50/8
を有することを特徴とする、請求項11に記載の時計ムーブメント(1)。
【請求項13】
前記作動トレイン(10)は24時間で1回転を行う24時間ホイールを含み、前記年周期トレイン(120)は前記24時間ホイールと直接的に噛み合うことを特徴とする、請求項10に記載の時計ムーブメント(1)。
【請求項14】
前記24時間ホイールは8歯を有し、前記年周期ホイール(112)は25歯を有し、前記年周期トレイン(120)の歯車トレインは以下の比
34/8*44/8*40/8*25/8
を有することを特徴とする、請求項13に記載の時計ムーブメント(1)。
【請求項15】
請求項1に記載の年周期の期間を表示する機構(100)を含むか又は請求項10に記載の時計ムーブメント(200)を含む時計(200)。
【請求項16】
前記時計(200)は腕時計であることを特徴とする、請求項15に記載の時計(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、時計の年周期の期間、例えば季節、を表示する機構に関する。
【0002】
本発明はさらに、このような年周期の期間を表示する機構を含む時計ムーブメントに関する。
【0003】
本発明はさらに、このような年周期の期間を表示する機構を含む時計ムーブメントを含む時計、例えば腕時計に関する。
【背景技術】
【0004】
年周期、特にこの年周期の期間を表示する機構は、太陽年周期中の所与の期間に関する情報を表示することを可能にする。
【0005】
年周期の期間を表示する機構は一般に、文字盤の目盛り又は分割された部分に向いているインジケータがこれらの期間に対応することを可能にするジャンピングドライブを備えた機構である。
【0006】
しかしながら、年周期の期間を表示するこれらのジャンピング式の機構は、ユーザが年周期の表示される期間の初めにあるのか終わりにあるのかをユーザに知らせないため、あまり正確ではない。
【0007】
例えば、年周期の期間を表示するこのような機構により月又は例えば季節を表示することができる場合、針は現在の期間(月又は季節)を表示するが、現在の期間の残存期間に関するより正確な情報を与えない。その結果、ジャンプによってこれらの表示を駆動することにより、現在の期間の実際の状態に関して「表示エラー」が生じる。
【0008】
さらに、これらのジャンピング表示機構は動力を消費し、ジャンプ中に動力消費のピークが生じるため、作動トレインの通常動作が一時的に中断される可能性がある。
【0009】
この欠点を克服するために、ドラッギング式の機構が年周期の期間を表示するために提案されており、この機構は時計ムーブメントの作動トレインによって連続的に駆動される。
【0010】
しかしながら、これらのドラッギング機構は、作動トレインと年周期の期間のインジケータとの間に多数の歯車を必要とするため、製造がより複雑であり、より嵩張る。
【0011】
年周期の期間を表示するための最も知られているドラッギング式の機構は、回帰年の理論値に可能な限り近づくことによって、特に回帰年の理論値に可能な限り近づくために多数の機構と特定の歯車比を使用することによって、正確な年周期の表示を生成することを目的としている。
【0012】
特許文献1を一例として引用することができ、特許文献1には空のマップを示す第1ディスクを含む空のマップを表示する機構が記載されており、第1ディスクは時間ホイールによって作動される6つの歯車装置を備えた歯車トレインによって回転し、歯車トレインは以下の比を有する。
i = 36/28 * 42/12 * 50/12 * 51/12 * 55/12 * 50/25 = 2*365.234375
【0013】
特許文献2も引用することができ、特許文献2には、各セグメントに月の名前及び/又は黄道十二宮の星座が付いている12のセグメントに分割されたリングによって形成される黄道十二宮インジケータが記載されている。リングは365.244008日の1年に1回転し、1時間に1回転する動力取出装置によって回転される。
【0014】
正確ではあるが、年周期を表示するこれらの機構はいくつかの欠点を抱えている。
【0015】
第一に、上述したように、これらの機構は製造するのが複雑で嵩張るため、これらの機構を時計ムーブメントに組み込むのが困難である。
【0016】
第二に、多数の部品で構成されるこれらの表示機構は、必要とされるトルクを供給するために、特に作動トレインの作動の中断を防ぐために、1つ以上の動力源を必要とする。
【0017】
その結果、年周期の期間を表示するための複雑さは多くの場合、高価で複雑で嵩張る時計に限定される。
このため、上記の問題の少なくとも1つに対処するために、年周期の期間を表示するこのタイプのドラッギング機構を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】ロシア国特許第2767151号明細書
【特許文献2】スイス国特許第679197号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
この文脈において、本発明は、年周期の期間を表示する十分に正確な機構であって、簡略化された設計を有し、サイズが小さく、時計ムーブメントに組み込むのが容易であり、動作にほとんど動力を必要としない機構を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的のために、本発明は、時計ムーブメントの作動トレインによってドラッギングされることにより駆動することができる時計用の年周期を表示する機構であって、年周期を表示する機構は、
・年周期の期間を示すインジケータと、
・時計ムーブメントの前記作動トレインによって駆動されかつ年周期の期間のインジケータを回転させることができる年周期トレインと
を含むことを特徴とし、
年周期の期間を表示する機構は、年周期トレインが作動トレインと年周期の期間のインジケータとの間に最大4つの歯車装置を含む歯車トレインを形成することを特徴とする、年周期の期間を表示する機構に関する。
【0021】
好ましくは、歯車トレインは1:365.234375の比、又は1:365.234375の倍数である比を有するように構成され、作動トレインと年周期を示すインジケータとの間に4つの歯車装置のみを有する。
【0022】
したがって、年周期歯車の歯車トレインは、1:365.234375の比R、又は比R1:365.234375の倍数である比R’を有するように構成され、したがってR’=n×R(nは整数)である。
【0023】
本発明によれば、年周期の期間を表示する機構は、月、週、星座、黄道十二宮の星座、均時差、作動均時差、キリスト教の祭礼、春分及び秋分、夏至及び冬至、気候季節、太陽に対する地球の傾き、中国の季節又は太陽周期を表示する機構であり得る。
【0024】
好ましくは、年周期の期間を表示する機構は太陽周期を表示する機構である。
【0025】
好ましくは、年周期の期間を表示する機構は中国の季節を表示する機構である。
【0026】
好ましくは、年周期の期間を表示する機構は天球表示機構である。
【0027】
年周期トレイン用の歯車トレインの特定の選択のおかげで、出願人は、特に歯車トレインが最大4つの歯車装置に限定され、作動トレインと年周期の期間のインジケータを運ぶ年周期ホイールとの間の最大3つの中間ホイールセットから構成され、128年ごとに1日の補正が可能なほど十分に正確な、年周期の期間を表示する簡素化された機構を提案する。
【0028】
年周期の期間を表示するこのような機構は、時計ムーブメントへの設置が容易であり、可動部品の数を減らすことで信頼性が向上し、歯車トレインを構成するホイールセットの様々な歯車比により動力をほとんど消費しない。
【0029】
その結果、年周期の期間を表示するこのような機構は、電源及び電子振動子、例えば水晶振動子、を有する時計ムーブメントを備える時計に容易に設置できる。
【0030】
前の段落で述べた特徴に加えて、本発明に係る年周期の期間を表示する機構は、個別に又は技術的に可能な任意の組み合わせに従って考慮される、以下の中から1つ以上の相補的な特徴を有することができる。
・作動トレインは12時間で1回転する時間ホイールを含み、年周期トレインの歯車トレインは作動トレインの前記時間ホイールと噛み合うことができ、年周期トレインの歯車トレインは、作動トレインの時間ホイールと年周期の期間のインジケータとの間に1:2*365.234375の比を有するように構成される。
・作動トレインは24時間で1回転する24時間ホイールを含み、年周期トレインの歯車トレインは作動トレインの前記24時間ホイールと噛み合うことができ、年周期トレインの歯車トレインは、作動トレインの24時間ホイールと年周期の期間のインジケータとの間に1:365.234375の比を有するように構成される。
・年周期トレインは最大3つのホイールセットを含む。
・年周期トレインは、
・34歯を有する第1中間ホイールセットホイール及び8歯を有する第1中間ホイールセットピニオンを含む第1中間ホイールセットと、
・44歯を有する第2中間ホイールセットホイール及び8歯を有する第2中間ホイールセットピニオンを含む第2中間ホイールセットと、
・40歯をゆする第3中間ホイールセットホイール及び8歯を有する第3中間ホイールセットピニオンを含む第3中間ホイールセットと
を含む。
・表示機構はさらに、年周期の期間のインジケータを摩擦により設定する機構を含む。
・中間ホイールセットのホイールのうちの1つがそのピニオンに対して摩擦により取り付けられる。
【0031】
本発明はさらに、作動トレインと、本発明に係る年周期の期間を表示する機構とを含み、年周期トレインが作動トレインと直接的に噛み合う時計ムーブメントに関する。
【0032】
好ましくは、作動トレインが12時間で1回転する時間ホイールを含み、年周期トレインが時間ホイールと直接的に噛み合うか、又は作動トレインが24時間で1回転する24時間ホイールを含み、年周期トレインが24時間ホイールと直接的に噛み合う。
【0033】
好ましくは、時計ムーブメントは時間ホイール又は24時間ホイールを含む作動トレインを含み、年周期の期間を表示する機構の年周期トレインの歯車トレインが前記時間ホイールと噛み合い、1:2×365.234375の比を有するか、又は、年周期の期間を表示する機構の歯車トレインが前記24時間ホイールと噛み合い、1:365.234375の比を有する。
【0034】
好ましくは、時間ホイールは8歯を有し、年周期の期間のインジケータは50歯を有する年周期ホイールによって回転され、年周期トレインの歯車トレインは以下の比、すなわち34/8*44/8*40/8*50/8を有する。
【0035】
好ましくは、24時間ホイールは8歯を有し、年周期の期間のインジケータは25歯を有する年周期ホイールによって回転され、年周期トレインの歯車トレインは以下の比、すなわち34/8×44/8×40/8×25/8を有する。
【0036】
本発明はさらに、本発明に係る年周期の期間を表示する機構含むか又は本発明に係る時計ムーブメントを含む時計に関する。
【0037】
有利には、時計は腕時計である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の目的、利点及び特徴は、以下の図面を参照して以下に与えられる詳細な説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【
図1】本発明に係る年周期の期間を表示する機構の例示的な実施形態の上面図を図式的に示す。
【
図2】
図1に示す年周期の期間を表示する機構の年周期トレインをより詳細に説明する動作図を示す。
【
図3】本発明に係る年周期の期間を表示する機構を含む時計の実施例を図式的に示す。
【0039】
すべての図において、別段の指示がない限り、共通の要素には同じ符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、あらゆるタイプの機械的、電気機械的又は電子的な時計ムーブメントにより容易に設置できるように年周期の期間を表示する機構を簡素化することから成る概念から得られた。
【0041】
図1は、時計ムーブメント1のプレート2に取り付けられた、本発明に係る年周期の期間を表示する機構100の例示的な実施形態を図式的に示す。
【0042】
本発明に係る年周期の期間を表示する機構100は、時計200に、例えば
図3に図式的に示す腕時計のケース210に、収容されるよう意図されている。
【0043】
本発明に係る年周期の期間を表示する機構100は、
図1から
図2に部分的に示される時計ムーブメント1によって駆動される。
【0044】
従来、時計ムーブメント1は、時間ホイール11を駆動するモーションワーク(図示せず)を特に有する作動トレイン10を含み、作動トレイン10のアセンブリは、時間ホイール11が12時間で完全に1回転するように構成される。
【0045】
時間ホイール11は従来、時間インジケータ15、例えば時針、を担持する。
【0046】
年周期の期間を表示する機構100は、年周期の期間を示すインジケータ110を含む。
【0047】
年周期の期間のインジケータ110は、年周期ホイール112によって回転される。好ましくは、年周期の期間のインジケータ110は、年周期ホイール112に剛接合される。
【0048】
年周期の期間のインジケータ110は、例えば、年周期ホイール112のシャフトに剛接合された針である。
【0049】
別代替的な実施形態によれば、年周期の期間のインジケータ110は、年周期ホイール112に剛接合されたディスクであってもよい。
【0050】
所望の表示のタイプに応じて、ディスクは、ユーザに対してその全体が見えることも、時計200の文字盤に作られた適当な形状の開口を通して部分的に見えることもできる。
【0051】
年周期の期間のインジケータ110は、年周期トレイン120を介して作動トレイン10に運動学的に接続される。
【0052】
より具体的には、年周期トレイン120は、一方で時針15を担持する時間ホイール11と、他方で年周期の期間のインジケータ110を担持する年周期ホイール112と直接的に噛み合う。
【0053】
このようにして、年周期の期間のインジケータ110は、作動トレイン10によってドラッギング式に作動される。
【0054】
年周期トレイン120は、作動トレイン10と年周期の期間のインジケータ110との間に1:365.234375の比R又は1:365.234375の比Rの倍数である比R’を有する歯車トレインを形成する。
【0055】
より詳細には、年周期トレイン120は、(12時間で1回転する)時間ホイール11と年周期ホイール112との間に1:2*365.234375の比を有する歯車トレインを形成する。
【0056】
年周期トレイン120は、時間ホイール11と年周期ホイール112との間に位置する最大3つの中間ホイールセット121、122、123によって形成され、これにより時間ホイール11から年周期ホイール112までの4つの歯車装置を構成する。本発明に係る年周期トレイン120は低減された数のホイールセットを有し、これにより年周期の期間を表示するこのような機構の全体的な寸法を低減することができる。
【0057】
好ましくは、年周期トレイン120は、分子に素数17、11、5、分母に2を有する歯車トレインを形成する。
【0058】
年周期トレイン120は、時間ホイール11と直接的に噛み合う第1中間ホイールセット121と、第1中間ホイールセット121と第3中間ホイールセット123との間に配置されて年周期ホイール112と直接的に噛み合う第2中間ホイールセット121とを含む。
【0059】
図1及び
図2に示す例示的な実施形態では、
・時間ホイール11は8歯を有し、
・第1中間ホイールセット121は、34歯を有する第1中間ホイールセットホイール、及び8歯を有する第1中間ホイールセットピニオンを含み、
・第2中間ホイールセット122は、44歯を有する第2中間ホイールセットホイール、及び8歯を有する第2中間ホイールセットピニオンを含み、
・第3中間ホイールセット123は、40歯を有する第3中間ホイールセットホイール、及び8歯を有する第3中間ホイールセットピニオンを含み、
・年周期ホイール112は50歯を有する。
【0060】
その結果、時間ホイール11と年周期ホイール112との間に、年周期トレイン120は以下の比を有する歯車トレインを形成する。
【数1】
【0061】
歯車トレインが作動トレイン10と年周期の期間のインジケータ110との間に1:365.234375の比R又は比R1:365.234375の倍数である比R’を有し、したがってR’=n×R(nは整数)であり、歯車トレインが時間ホイール11と年周期ホイール112との間の4つの歯車装置に限定されるならば、等価性により他の歯車装置の組み合わせが可能である。
【0062】
年周期の期間を表示する機構100は、作動トレイン10を設定する機構から独立した又は作動トレイン10を設定する機構に共通する設定機構を含む。
【0063】
好ましくは、年周期の期間のインジケータ110は、時計ムーブメント1に含まれる作動トレイン10の針15を設定するために使用される制御ステム3によって設定される。
【0064】
機械的な時計ムーブメントの場合、制御ステム3は、主ぜんまいを巻き取り、作動トレインの針を設定する巻真と組み合わされる。
【0065】
制御ステム3は、ケース210に対して様々な軸方向位置を取ることができ、様々な制御及び/又は設定機能を果たすことができる。
【0066】
制御ステム3の位置の1つは、年周期の期間のインジケータ110が、制御ステム3のスライドピニオンと協働して、制御ステム3の回転によって駆動される設定トレイン7を介して摩擦によって設定されることを可能にする。
【0067】
好ましくは、年周期トレイン120の中間ホイールセット121、122、123のホイールのうちの1つ、又は年周期ホイール112は、作動トレイン10から年周期ホイール112を外し、それにより作動トレイン10の針15の角度位置を変更することなく年周期の期間のインジケータ110の角度位置を変更することができるように、そのシャフトに摩擦により取り付けられる。摩擦の原理はよく知られているので、これ以上説明する必要はない。
【0068】
好ましくは、設定トレイン7は、設定動作中の精度を向上させるために年周期トレイン120の中間ホイールセット121、122、123のいずれかに作用する。
【0069】
好ましくは、設定トレイン7は、第3中間ホイールセット123、すなわち、年周期ホイール112と直接的に噛み合う年周期トレイン120の中間ホイールセット、に作用する。
【0070】
好ましくは、第2中間ホイールセット122のホイールは、そのピニオンに対して摩擦により取り付けられる。
【0071】
設定トレイン7はこれにより、制御ステム3のスライドピニオン(図示せず)と第3中間ホイールセット123のピニオンとの間に位置する。
【0072】
本発明を特に、12時間で完全に1回転する時間ホイールに直接的に噛み合う年周期トレイン120を用いて説明してきたが、その完全な回転が時間ホイールの回転の倍数である作動トレインの他のホイール、例えば24時間ホイールなどと年周期トレイン120が噛み合う場合にも本発明が適用可能であることは言うまでもない。上述のような年周期の期間を表示する機構はこのため、2の比を考慮して適合されなければならない。
【0073】
一例として、上述の比と同じ比を維持しながら、年周期トレイン120が24時間ホイールと噛み合う場合、年周期ホイール112は50歯ではなく25歯を有することができる。これにより、24時間ホイールと年周期の期間のインジケータ110との間に1:365.234375の比が得られる。
【0074】
別の例示的な実施形態よれば、年周期ホイール112は、上述のように20歯ではなく10歯を有する24時間ホイールと噛み合う50歯を有するホイールである。比はこれにより維持される。
【0075】
年周期の期間を表示するこのような機構は、日付表示の有無にかかわらず機械的な時計ムーブメントに、及び電子的又は電気機械的な時計ムーブメントに完全に適している。年周期の期間を表示する機構がドラッギング式であり、作動トレイン10に動力消費のピークを生じないからである。
【0076】
本発明はさらに、本発明に係る年周期の期間を表示する機構100を含む時計ムーブメント1に関する。
【0077】
本発明に係る年周期の期間を表示する機構はさらに、年周期の期間を表示するレトログラード表示を生成するアドホック手段を含むことができる。このような手段は従来、年周期の期間のインジケータを(例えば文字盤の目盛りに面する)円弧で移動させ、インジケータが年周期全体を移動したときにインジケータを開始位置に戻すために使用される。
【0078】
本発明はさらに、時計ケース210内に収納された本発明に係る時計ムーブメント1を含む腕時計などの時計200に関する。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメント(1)の作動トレイン(10)によってドラッギングされることにより駆動することができる時計(200)用の年周期の期間を表示する機構(100)であって、前記年周期の期間を表示する機構(100)は、
・年周期の期間を示すインジケータ(110)と、
・前記時計ムーブメント(1)の前記作動トレイン(10)によって駆動されかつ前記年周期の期間を示すインジケータ(110)を回転させることができる年周期トレイン(120)と
を含むことを特徴とし、
前記年周期の期間を表示する機構(100)は、前記年周期トレイン(120)が前記作動トレイン(10)と前記年周期の期間を示すインジケータ(110)との間に最大4つの歯車装置を含む歯車トレインを形成することを特徴とする、年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項2】
前記年周期トレイン(120)は、前記作動トレイン(10)と前記年周期の期間を示すインジケータ(110)との間に1:365.234375の比又は1:365.234375の倍数である比を有するように構成された歯車トレインを形成することを特徴とする、請求項1に記載の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項3】
前記作動トレイン(10)は12時間で1回転する時間ホイール(11)を含み、前記年周期トレイン(120)の歯車トレインは前記作動トレイン(10)の前記時間ホイール(11)と噛み合うことができ、前記年周期トレイン(120)の歯車トレインは、前記作動トレイン(10)の時間ホイール(11)と前記年周期の期間を示すインジケータ(110)との間に1:2×365.234375の比を有するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項4】
前記作動トレイン(10)は24時間で1回転する24時間ホイールを含み、前記年周期トレイン(120)の歯車トレインは前記作動トレイン(10)の前記24時間ホイールと噛み合うことができ、前記年周期トレイン(120)の歯車トレインは、前記作動トレイン(10)の24時間ホイールと前記年周期の期間を示すインジケータ(110)との間に1:365.234375の比を有するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項5】
前記年周期トレイン(120)の歯車トレインの比は、分子に素数17、11、5、分母に2を有することを特徴とする、請求項1に記載の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項6】
前記年周期トレイン(120)は、
・34歯を有する第1中間ホイールセットホイール、及び8歯を有する第1中間ホイールセットピニオンを含む第1中間ホイールセット(121)と、
・44歯を有する第2中間ホイールセットホイール、及び8歯を有する第2中間ホイールセットピニオンを含む第2中間ホイールセット(122)と、
・40歯を有する第3中間ホイールセットホイール、及び8歯を有する第3中間ホイールセットピニオンを含む第3中間ホイールセット(123)と
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項7】
前記年周期の期間を示すインジケータ(110)を摩擦により設定する機構を含むことを特徴とする、請求項1に記載の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項8】
前記第1、第2及び第3中間ホイールセット(121、122、123)のホイールのうちの1つがそのピニオンに対して摩擦により取り付けられることを特徴とする、請求項6に記載の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項9】
前記年周期の期間を表示する機構(100)は中国の季節を表示する機構であることを特徴とする、請求項1に記載の年周期の期間を表示する機構(100)。
【請求項10】
作動トレイン(10)と、請求項1に記載の年周期の期間を表示する機構(100)とを含み、前記年周期トレイン(120)は前記作動トレイン(10)と直接的に噛み合う、時計ムーブメント(1)。
【請求項11】
前記作動トレイン(10)は12時間で1回転を行う時間ホイール(11)を含み、前記年周期トレイン(120)は前記時間ホイール(11)と直接的に噛み合うことを特徴とする、請求項10に記載の時計ムーブメント(1)。
【請求項12】
前記時間ホイール(11)は8歯を有し、前記年周期の期間を示すインジケータ(110)は50歯を有する年周期ホイール(112)によって回転され、前記年周期トレイン(120)の歯車トレインは以下の比
34/8*44/8*40/8*50/8
を有することを特徴とする、請求項11に記載の時計ムーブメント(1)。
【請求項13】
前記作動トレイン(10)は24時間で1回転を行う24時間ホイールを含み、前記年周期トレイン(120)は前記24時間ホイールと直接的に噛み合うことを特徴とする、請求項10に記載の時計ムーブメント(1)。
【請求項14】
前記24時間ホイールは8歯を有し、前記年周期の期間を示すインジケータ(110)は25歯を有する年周期ホイール(112)によって回転され、前記年周期トレイン(120)の歯車トレインは以下の比
34/8*44/8*40/8*25/8
を有することを特徴とする、請求項13に記載の時計ムーブメント(1)。
【請求項15】
請求項1に記載の年周期の期間を表示する機構(100)を含むか又は請求項10に記載の時計ムーブメント(1)を含む時計(200)。
【請求項16】
前記時計(200)は腕時計であることを特徴とする、請求項15に記載の時計(200)。
【外国語明細書】