(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074031
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの枚葉式片面研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240523BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20240523BHJP
B24B 37/12 20120101ALI20240523BHJP
B24B 37/30 20120101ALI20240523BHJP
B24B 1/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H01L21/304 621B
H01L21/304 622R
B24B37/10
B24B37/12 D
B24B37/30 E
B24B1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185077
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 友晶
【テーマコード(参考)】
3C049
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C049AA07
3C049AC04
3C049BA02
3C049BA04
3C049CB01
3C158AA07
3C158AC04
3C158BA02
3C158BA04
3C158CB01
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED10
3C158ED11
3C158ED12
3C158ED24
5F057AA03
5F057AA11
5F057AA16
5F057BA12
5F057BB03
5F057CA11
5F057DA03
5F057DA08
5F057EA33
5F057GA03
5F057GA27
(57)【要約】
【課題】ウェーハ面内の研磨ムラを低減することができるシリコンウェーハの枚葉式片面研磨方法を提案する。
【解決手段】シリコンウェーハWの片面に対して研磨を行う枚葉式片面研磨方法において、研磨ヘッド11と研磨布12aが貼り付けられた回転定盤12とを備える枚葉式研磨機100において、研磨ヘッド11によりシリコンウェーハWを保持して回転定盤12の研磨布12aにシリコンウェーハWの片面を押圧し、研磨布12aに研磨液を供給しつつ、研磨ヘッド11および回転定盤12の双方を第1方向に回転させてシリコンウェーハWの上記片面を研磨する第1工程と、第1工程の後に、枚葉式研磨機100において、研磨ヘッド11および回転定盤12の双方を第1方向とは逆の第2方向に回転させてシリコンウェーハWの上記片面を研磨する第2工程とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハの片面に対して研磨を行う枚葉式片面研磨方法において、
研磨ヘッドと研磨布が貼り付けられた回転定盤とを備える枚葉式研磨機において、前記研磨ヘッドにより前記シリコンウェーハを保持して前記回転定盤の前記研磨布に前記シリコンウェーハの前記片面を押圧し、前記研磨布に研磨液を供給しつつ、前記研磨ヘッドおよび前記回転定盤の双方を第1方向に回転させて前記シリコンウェーハの前記片面を研磨する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記枚葉式研磨機において、前記研磨ヘッドおよび前記回転定盤の双方を前記第1方向とは逆の第2方向に回転させて前記シリコンウェーハの前記片面を研磨する第2工程と、
を有することを特徴とするシリコンウェーハの枚葉式片面研磨方法。
【請求項2】
前記第1工程から前記第2工程への移行は、前記シリコンウェーハと前記回転定盤との間の相対的な運動を維持した状態で行う、請求項1に記載のシリコンウェーハの枚葉式片面研磨方法。
【請求項3】
前記第1工程から前記第2工程への移行期間に、前記研磨ヘッドの回転数がゼロである第1期間および前記回転定盤の回転数がゼロである第2期間を有し、前記第1期間と前記第2期間とが重複していない、請求項2に記載のシリコンウェーハの枚葉式片面研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの枚葉式片面研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの基板として、シリコンウェーハが広く用いられている。シリコンウェーハは、一般的に、シリコン単結晶インゴットの引き上げ工程に始まり、スライス工程、ラッピング工程、エッチング工程および研磨工程、最終洗浄工程などを経て、ポリッシュドウェーハに加工される。
【0003】
シリコンウェーハの研磨工程では、粗研磨工程、仕上げ研磨工程など複数の工程が行われることが一般的である。これらの研磨工程に際して使用される研磨装置としては、上面に研磨布が貼設された回転定盤と、研磨されるシリコンウェーハを下面に固定した研磨ヘッドとを備えた枚葉式の片面研磨装置を用いることができる。なお、回転定盤と研磨ヘッドの上下関係は逆であってもよい。研磨工程は、例えば、まず、粗研磨工程にて比較的研磨取代の大きい研磨を行い、シリコンウェーハの平坦度を高める。次いで、仕上げ研磨工程を行い、シリコンウェーハの表面を滑らかに仕上げる。仕上げ研磨工程では、粗研磨工程により生じ得る加工ダメージを除去し、また、シリコンウェーハの被研磨面の表面粗さを改善する。仕上げ研磨工程ではシリコンウェーハの平坦度が少し悪化するものの、研磨取代が小さいため、平坦度の悪化の程度は微小である。
【0004】
ここで、従来の枚葉式の片面研磨工程について説明する。
図1は、枚葉式片面研磨装置の一例の模式図を示している。
図1に示した片面研磨装置100は、シリコンウェーハWを保持する研磨ヘッド11と、研磨布12aが貼設された回転定盤12と、研磨布12aに研磨液Lを供給する研磨液供給手段13とを有する。なお、図示されていないが、片面研磨装置100は、研磨ヘッド11を回転させる回転機構と、研磨ヘッド11を回転定盤12の内外に移動させる移動機構とをさらに備えている。
【0005】
片面研磨装置100においては、研磨ヘッド11がシリコンウェーハWを保持しつつ回転定盤12の上面に貼設された研磨布12aに対してシリコンウェーハWの被研磨面である片面(すなわち、回転定盤12側の面)を押圧し、研磨ヘッド11および回転定盤12の双方を回転させて研磨ヘッド11と回転定盤12とを相対運動させつつ、研磨液供給手段13から研磨液Lを研磨布12aに供給して、シリコンウェーハWの片面を化学機械研磨する。
【0006】
図2は、枚葉式片面研磨装置100を上方から見た図である。なお、回転定盤12および研磨ヘッド11に付された矢印は、それぞれの回転方向を示している。研磨ヘッド11は、1つであってもいいし、
図2のように複数設けられていてもよい。
【0007】
上述のような枚葉式片面研磨方法について、本願出願人は、特許文献1において、シリコンウェーハWと研磨布12aとの間の相対速度を高速化し、ウェーハ表面粗さを改善する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで近年、シリコンウェーハの大口径化および該シリコンウェーハを用いて形成される半導体デバイスの微細化が益々進行しており、片面研磨工程による仕上げ研磨後のシリコンウェーハについて、表面の平坦性および表面粗さに対する要求が益々厳しくなっている。特許文献1に記載の技術により、シリコンウェーハ表面の粗さを改善することができる。しかし、本発明者による検討の結果、ウェーハ面内に研磨ムラが生じて平坦度が悪化することが判明し、この点について改善の余地がある。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウェーハ面内の研磨ムラを低減することができるシリコンウェーハの枚葉式片面研磨方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
[1]シリコンウェーハの片面に対して研磨を行う枚葉式片面研磨方法において、
研磨ヘッドと研磨布が貼り付けられた回転定盤とを備える枚葉式研磨機において、前記研磨ヘッドにより前記シリコンウェーハを保持して前記回転定盤の前記研磨布に前記シリコンウェーハの前記片面を押圧し、前記研磨布に研磨液を供給しつつ、前記研磨ヘッドおよび前記回転定盤の双方を第1方向に回転させて前記シリコンウェーハの前記片面を研磨する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記枚葉式研磨機において、前記研磨ヘッドおよび前記回転定盤の双方を前記第1方向とは逆の第2方向に回転させて前記シリコンウェーハの前記片面を研磨する第2工程と、
を有することを特徴とするシリコンウェーハの枚葉式片面研磨方法。
【0012】
[2]前記第1工程から前記第2工程への移行は、前記シリコンウェーハと前記回転定盤との間の相対的な運動を維持した状態で行う、前記[1]に記載のシリコンウェーハの枚葉式片面研磨方法。
【0013】
[3]前記第1工程から前記第2工程への移行期間に、前記研磨ヘッドの回転数がゼロである第1期間および前記回転定盤の回転数がゼロである第2期間を有し、前記第1期間と前記第2期間とが重複していない、前記[2]に記載のシリコンウェーハの枚葉式片面研磨方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、枚葉式の片面研磨方法において、ウェーハ面内の研磨ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明による枚葉式片面研磨方法の特徴を説明する図である。
【
図3】研磨ヘッドおよび回転定盤の回転方向を逆転させる際の研磨ヘッドおよび回転定盤の回転速度変化の一例を示す図である。
【
図4】従来例および発明例について、シリコンウェーハのSFQRを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明によるシリコンウェーハの枚葉式片面研磨方法は、シリコンウェーハの片面に対して研磨を行う枚葉式片面研磨方法である。ここで、研磨ヘッドと研磨布が貼り付けられた回転定盤とを備える枚葉式研磨機において、研磨ヘッドによりシリコンウェーハを保持して回転定盤の研磨布にシリコンウェーハの片面を押圧し、研磨布に研磨液を供給しつつ、研磨ヘッドおよび回転定盤の双方を第1方向に回転させてシリコンウェーハの上記片面を研磨する第1工程と、上記第1工程の後に、上記枚葉式研磨機において、上記研磨ヘッドおよび上記回転定盤の双方を上記第1方向とは逆の第2方向に回転させてシリコンウェーハの上記片面を研磨する第2工程とを有することを特徴とする。
【0017】
上述のように、特許文献1に記載された方法により、シリコンウェーハ表面の粗さを改善することができる。しかしながら、本発明者による検討の結果、ウェーハ面内に研磨ムラが生じ、平坦度が悪化することが判明した。
【0018】
特許文献1に記載されているように、片面研磨工程は、複数の工程で構成するのが一般的であり、例えば、シリコンウェーハWの片面(シリコンウェーハWの一方の表面)の平坦度を高める粗研磨工程と、粗研磨が施されたシリコンウェーハWの上記片面に対して表面を滑らかに仕上げる仕上げ研磨工程とで構成することができる。
【0019】
なお、上記粗研磨工程および仕上げ研磨工程のいずれにおいても、
図2(a)に示すように、研磨ヘッド11(すなわち、シリコンウェーハW)および回転定盤12の双方を同一の方向(
図2(a)においては第1の方向(反時計回り))に回転させつつ、研磨液Lを研磨布12aに供給してシリコンウェーハWの片面の研磨を行うのが一般的である。これは、研磨ヘッド11と回転定盤12とを互いに逆方向に回転させると、シリコンウェーハWの外周部の摺動速度が高くなり、ウェーハ外周部が中心部よりも大きく研磨されてしまうためである。
【0020】
本発明者は、特許文献1に記載された方法において、ウェーハ面内の研磨ムラが生じた原因について鋭意検討を行った。その結果、ウェーハ面内の研磨ムラは、研磨を繰り返し行ったことに伴い、(1)研磨ヘッド11および回転定盤12の回転方向に依存して研磨液Lの研磨布12aへの回り込み(すなわち、研磨液Lの研磨布12aへの拡がり)の偏りが生じ、また(2)研磨ヘッド11および回転定盤12の形状および傾きに偏りが生じ、研磨布12aの目詰まりの癖や表面形状の偏りが生じたことによるものであることが判明した。
【0021】
そこで、本発明者は、上記研磨液Lの研磨布12aへの回り込みの偏り、および研磨ヘッド11および回転定盤12の形状および傾きの偏りを低減する方途について鋭意検討した。その結果、同一の枚葉式片面研磨装置において、研磨工程を二段構成とし、研磨ヘッド11および回転定盤12を第1方向に回転させて研磨を行う第1工程と、第1方向とは逆方向の第2方向に回転させた研磨を行う第2工程とを行うことが極めて有効であることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0022】
このように、本発明によるシリコンウェーハWの枚葉式の片面研磨方法は、同一の枚葉式片面研磨装置において、研磨ヘッド11および回転定盤12の回転方向を変えて複数段階の研磨工程を行うことを特徴とするものであり、その他の構成については、従来公知の構成を適切に利用することができ、限定されない。以下、粗研磨工程を2段階の工程で構成し、仕上げ研磨工程を一段階の工程で構成する場合を例として、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0023】
まず、エッチングが施されたシリコンウェーハWの片面(すなわち、シリコンウェーハWの一方の表面)を粗研磨する(粗研磨工程)。粗研磨工程は、研磨ヘッド11(すなわち、シリコンウェーハW)および回転定盤12を第1の方向(
図2(a)では、反時計回り)に回転させてシリコンウェーハWの片面を研磨する第1工程と、研磨ヘッド11(すなわち、シリコンウェーハW)および回転定盤12を第1の方向とは逆の第2の方向(
図2(b)では、時計回り)に回転させてシリコンウェーハWの上記片面を研磨する第2工程とを有する。
【0024】
粗研磨工程を行う際には、研磨布12aとしては、例えば、ベロアタイプやスエードタイプのものを採用することができる。中でも、研磨レートを高める観点からは、比較的、硬度の高いものを選択することが望ましい。
【0025】
また、研磨液Lとしては、遊離砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いることができる。遊離砥粒としては、コロイダルシリカ、セリア、ダイヤモンド、アルミナなどが挙げられる。また、研磨液Lとしては、pH8~pH13に調整されたアルカリ性水溶液を用いることが望ましい。アルカリ剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、ピペラジンが代表的なものであるが、その他、炭酸アンモニウム水溶液、その他特定アミンが添加されたアルカリ性水溶液などを用いることができる。
【0026】
研磨ヘッド11の構成は、片面研磨装置100に用いられる一般的なものを用いることができる。例えば、シリコンウェーハWの保持方式は、特許文献1に記載された方法のような真空チャック方式や、水等の液体による表面張力による吸着方式とすることができる。
【0027】
粗研磨工程では、研磨ヘッド11および回転定盤12を第1方向(例えば、反時計回り)に回転させて、所定の研磨代(第1研磨代)までシリコンウェーハWの片面を研磨した後、
図2(b)に示すように、研磨ヘッド11および回転定盤12を第1方向とは逆方向の第2方向(
図2(b)では、時計回り)に回転させて、所定の研磨代(第2研磨代)までシリコンウェーハWの上記片面を研磨する。その際、第2工程は、第1工程と同一の枚葉式片面研磨装置100で行う。これにより、研磨ヘッド11および回転定盤12の回転方向に依存した研磨液Lの研磨布12aへの回り込みの偏りを抑制して、研磨布12aの目詰まりの癖や表面形状の偏りを平均化して、ウェーハ外周部の研磨ムラを抑制することができる。また、上記研磨ヘッド11および回転定盤12の回転方向を反転させることにより、研磨布12aのライフを延長させることもできる。さらに研磨ヘッド11の表面に微小な傾きがあった場合にも、研磨代の偏りを抑制することもできる。
【0028】
ところで、第1工程を終了して第2工程に移行する際に、研磨ヘッド11および回転定盤12の双方を減速させて一旦停止し、第1方向とは逆の第2方向に回転させる。その際、シリコンウェーハWが回転定盤12に対して静止して相対的な運動が停止すると、研磨布12aがシリコンウェーハWに対して与える摩擦力が動摩擦力から静止摩擦力に変化する。一般に、静止摩擦力は動摩擦力よりも大きいため、第2工程において研磨ヘッド11および回転定盤12の回転を開始すると、シリコンウェーハWが研磨ヘッド11から放出され、装置100の外部に飛び出して破損する、いわゆるクラッシュが発生するおそれがある。そこで、上記第1工程から第2工程への移行は、シリコンウェーハWと回転定盤12との間の相対的な運動を維持した状態で行うことが好ましい。これにより、研磨布12aかシリコンウェーハWに対して与える摩擦力が静止摩擦力に変化しないため、上記クラッシュの発生を防止することができる。
【0029】
なお、本明細書において、「シリコンウェーハWと回転定盤12との間の相対的な運動を維持した状態」とは、シリコンウェーハWの研磨を施す片面上の任意の点と、回転定盤12(すなわち、研磨布12a)上の任意の点とが、相対的に静止しないことを意味している。
【0030】
図3は、第1工程から第2工程への移行の際に、研磨ヘッド11および回転定盤12の回転方向を逆転させる際の研磨ヘッド11および回転定盤12の回転速度変化の一例を示している。
図3に示した例においては、まず、減速開始時点から、研磨ヘッド11および回転定盤12の回転速度を同一とした状態で3.0~6.0rpm/sで減速する。次いで、回転定盤12の回転速度を8~12rpmで維持した状態で、研磨ヘッド11の回転のみを1.0rpm/sで減速する。すると、減速開始時点からある時点で回転速度はゼロとなる。研磨ヘッド11の回転速度がゼロとなった状態を5秒維持した後、1.0rpm/sで研磨ヘッド11を第1方向とは逆向きの第2方向へ回転させる。
【0031】
一方、回転定盤12の回転速度を8~12rpmで数秒間維持した後、1.0rpm/sで減速を再開する。すると、減速開始時点からある時点で、回転定盤12の回転速度がゼロとなる。回転定盤12の回転速度がゼロとなった状態を数秒維持した後、1.0rpm/sで回転定盤12を第1方向とは逆向きの第2方向へ回転させる。
【0032】
そして、研磨ヘッド11の第2方向への回転速度が8~12rpmに達するが、研磨ヘッド11の回転速度を8~12rpmに維持する。一方、回転定盤12は、回転速度が研磨ヘッド11の回転速度と同じ8~12rpmに達する。その後、研磨ヘッド11および回転定盤12の双方を3.0~6.0rpm/sで所定の回転速度になるまで加速させる。こうして、シリコンウェーハWと回転定盤12との間の相対的な運動を維持した状態で、第1工程から第2工程に移行することができる。
【0033】
なお、
図3に示した例においては、研磨ヘッド11の回転を逆転した後に、回転定盤12の回転を逆転させているが、回転定盤12の回転を逆転させた後に、研磨ヘッド11の回転を逆転させてもよい。また、研磨ヘッド11および回転定盤12の減速、加速の際の回転速度のプロファイルは、
図3に示した例に限定されず、適切に設定することができる。
【0034】
また、
図3に示したように、第1工程から第2工程への移行期間に、研磨ヘッド11の回転速度がゼロである第1期間および回転定盤12の回転速度がゼロである第2期間を有し、第1期間と第2期間とが重複していないことが好ましい。これにより、研磨ヘッド11および回転定盤12の駆動系に過剰な負荷が印加されるのを抑制することができる。
【0035】
なお、本発明において、「第1工程から第2工程への移行期間」とは、研磨ヘッド11および回転定盤12のいずれか一方の回転速度がゼロになった時点から、双方の回転速度がゼロを超えるまでの時点までの期間(
図3では、24秒~35秒までの期間)を意味している。
【0036】
また、研磨液Lとしては、遊離砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いることができる。遊離砥粒としては、コロイダルシリカ、ダイヤモンド、アルミナなどの砥粒が混入されたものを採用することができる。遊離砥粒の平均粒径は、マイクロスクラッチなどの加工起因の欠陥を発生させないように、砥粒が凝集しない粒径範囲で選定すればよく、平均粒径が10~50nmのものを使用することが好ましい。また、研磨液Lとしては、pH8~pH13に調整されたアルカリ性水溶液を用いることが望ましい。アルカリ剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、ピペラジンが代表的なものであるが、その他、炭酸アンモニウム水溶液、その他特定アミンが添加されたアルカリ性水溶液などを用いることができる。
【0037】
こうして、ウェーハ面内の研磨ムラを抑制しつつ、シリコンウェーハの片面を研磨することができる。
【0038】
なお、上記説明においては、粗研磨工程を2段階の工程で構成したが、3段階以上の工程で構成することもできる。その際には、各工程間で、研磨ヘッド11および回転定盤12の回転方向を逆転させることが好ましい。
【実施例0039】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0040】
(従来例)
図1に示した枚葉式片面研磨装置100を用いて、エッチングが施されたシリコンウェーハW(直径200mm)に対して片面研磨を行った。具体的には、粗研磨工程を1段階で実施した。
【0041】
まず、粗研磨工程において、研磨ヘッド11にシリコンウェーハWを保持した。次いで、研磨ヘッド11に保持したシリコンウェーハWを回転定盤12の研磨布12aに押圧した後、研磨ヘッド11および回転定盤12を所定の回転速度まで加速するとともに、研磨布12aに水酸化カリウムなどからなるアルカリ性の研磨液Lを供給し、所定の回転速度となった時点で約600秒間維持した。その後、研磨ヘッド11および回転定盤12を減速させて停止させた。
【0042】
上記片面研磨を75枚のシリコンウェーハWに対して行った。
【0043】
(発明例)
従来例と同様に、エッチングが施されたシリコンウェーハWに対して片面研磨を行った。ただし、粗研磨工程を2段階の工程で構成した。具体的には、粗研磨工程を第1工程および第2工程で構成し、以下のように粗研磨工程を行った。まず、第1工程では、研磨ヘッド11にシリコンウェーハWを保持した。次いで、研磨ヘッド11に保持したシリコンウェーハWを回転定盤12の研磨布12aに押圧した後、研磨ヘッド11および回転定盤12を10~20rpm/sで加速させるとともに、研磨布12aに水酸化カリウムなどからなるアルカリ性の研磨液Lを供給し、回転速度が60~70rpmとなった時点で600秒間維持した。その後、シリコンウェーハWと回転定盤12との相対的な運動を維持した状態で、第1工程から第2工程への移行を行った。
【0044】
具体的には、まず、研磨ヘッド11および回転定盤12の回転速度を同一とした状態で4.0~5.0rpm/sで減速した。次いで、回転定盤12の回転速度を10~12rpmで維持した状態で、研磨ヘッド11の回転のみを1.0rpm/sで減速した。すると、減速開始時点からある時点で回転速度はゼロとなった。研磨ヘッド11の回転速度がゼロとなった状態を数秒維持した後、1.0rpm/sで研磨ヘッド11を第1方向とは逆向きの第2方向へ回転させた。一方、回転定盤12の回転速度を10~12rpmで数秒間維持した後、1.0rpm/sで減速を再開した。すると、減速開始時点からある時点で、回転定盤12の回転速度がゼロとなった。回転定盤12の回転速度がゼロとなった状態を5秒維持した後、1.0rpm/sで回転定盤12を第1方向とは逆向きの第2方向へ回転させた。そして、研磨ヘッド11の第2方向への回転速度が10~12rpmに達した段階で、研磨ヘッド11の回転速度を10~12rpmに維持した。一方、回転定盤12は、回転速度が研磨ヘッド11の回転速度と同じ10~12rpmに達した。その後、研磨ヘッド11および回転定盤12の双方を4.0~5.0rpm/sで所定の回転速度になるまで加速させた。そして、研磨ヘッド11および回転定盤12を60~70rpmの回転速度で600秒間維持し、第2工程を行った。その後、研磨ヘッド11および回転定盤12を10~20rpm/sで減速させて停止させた。こうして、シリコンウェーハWに対して片面研磨を行った。その他の条件は、従来例と全て同じである。
【0045】
図4は、従来例および発明例のそれぞれについて、片面研磨を施した75枚のシリコンウェーハWのSFQR(Site Front least sQuare Range)を示している。なお、SFQRは、KLA-Tencor社製の厚み測定機ADEを用いて測定し、測定セルサイズは20mm×20mmとした。表1は、従来例および発明例のそれぞれについて、SFQRの具体的なデータを示している。
図4および表1から明らかなように、本発明の片面研磨方法により、SFQRのばらつきおよび平均値の双方ともに低減されることが分かる。
【0046】