(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077404
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ワークの片面研磨装置、ワークの片面研磨方法、シリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240531BHJP
B24B 37/12 20120101ALI20240531BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20240531BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240531BHJP
B24B 53/017 20120101ALI20240531BHJP
B24B 37/005 20120101ALI20240531BHJP
【FI】
H01L21/304 622F
B24B37/12 D
B24B55/06
B24B37/00 K
B24B53/017 Z
B24B37/005 Z
H01L21/304 621B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189485
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕生
(72)【発明者】
【氏名】木原 誉之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 武士
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C047FF08
3C047FF19
3C158AA07
3C158AC02
3C158AC04
3C158BA07
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3C158EA11
3C158EB01
3C158ED00
5F057AA11
5F057AA20
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5F057FA20
5F057FA41
5F057FA45
5F057FA46
5F057GA16
5F057GB02
5F057GB31
(57)【要約】
【課題】本発明は、片面研磨中の研磨パッドの動的な変位量を測定することが可能な、ワークの片面研磨装置及びワークの片面研磨方法、及び、シリコンウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のワークの片面研磨装置は、研磨パッドの上面であって研磨ヘッドに覆われていない部分である露出上面の変位を測定可能な表面変位測定部をさらに備える。本発明のワークの片面研磨方法は、研磨工程において、露出上面の変位を測定可能な表面変位測定部により、前記露出上面の変位の測定を行いながら、前記ワークの片面を研磨する。本発明のシリコンウェーハの製造方法は、上記のワークの片面研磨方法を用いる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの片面研磨装置であって、
前記ワークよりも大きな直径を有する研磨定盤と、
前記研磨定盤に貼布された研磨パッドと、
前記ワークを保持して研磨パッドに押し付け可能な研磨ヘッドと、
前記研磨パッドに研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、を備え、
前記研磨パッドの上面であって前記研磨ヘッドに覆われていない部分である露出上面の変位を測定可能な表面変位測定部をさらに備えることを特徴とする、ワークの片面研磨装置。
【請求項2】
前記露出上面から前記研磨液を除去する研磨液除去部をさらに備える、請求項1に記載のワークの片面研磨装置。
【請求項3】
前記研磨液除去部は、前記露出上面にエアーを吹き付け可能に構成されている、請求項2に記載のワークの片面研磨装置。
【請求項4】
前記表面変位測定部を複数個所に配置した、請求項1又は2に記載のワークの片面研磨装置。
【請求項5】
前記ワークは、ウェーハである、請求項1又は2に記載のワークの片面研磨装置。
【請求項6】
ワークの片面研磨方法であって、
前記ワークよりも大きな直径を有する研磨定盤と、前記研磨定盤に貼布された研磨パッドと、前記ワークを保持して研磨パッドに押し付け可能な研磨ヘッドと、前記研磨パッドに研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、を用いて、
前記研磨液供給ノズルから前記研磨パッドに前記研磨液を供給しつつ、前記研磨定盤及び前記研磨パッドを回転させながら、前記ワークを前記研磨パッドに押し付けることにより、前記ワークの片面を研磨する、研磨工程を含み、
前記研磨工程においては、前記研磨パッドの上面であって前記研磨ヘッドに覆われていない部分である露出上面の変位を測定可能な表面変位測定部により、前記露出上面の変位の測定を行いながら、前記ワークの片面を研磨することを特徴とする、ワークの片面研磨方法。
【請求項7】
前記露出上面から前記研磨液を除去しながら、前記ワークの片面を研磨する、請求項6に記載のワークの片面研磨方法。
【請求項8】
前記研磨工程においては、前記露出上面にエアーを吹き付けて研磨液を除去しながら、前記ワークの片面を研磨する、請求項7に記載のワークの片面研磨方法。
【請求項9】
前記研磨パッドに前記ワークを押し付けない状態で前記露出上面の変位を測定する予備工程をさらに含み、
前記予備工程での測定結果と、前記研磨パッドに前記ワークを押し付けた状態で前記露出上面の変位を測定した結果とを比較することにより、前記ワークの片面研磨中の前記露出上面の変位の動的変化を算出する、請求項6又は7に記載のワークの片面研磨方法。
【請求項10】
前記ワークは、シリコンウェーハである、請求項6又は7に記載のワークの片面研磨方法。
【請求項11】
請求項10に記載のワークの片面研磨方法を用いた、シリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの片面研磨装置、ワークの片面研磨方法、及び、ワークの片面研磨方法を用いたシリコンウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワーク(例えばシリコンウェーハ)の片面研磨においては、ウェーハよりも大きな直径を有する研磨定盤及び研磨パッドを回転させながら、研磨パッドをウェーハに押し付けてウェーハを研磨する。その際、研磨定盤及び研磨パッドは回転しているため、研磨パッドにはウェーハからの押し付け圧力に関し、圧力の負荷と除圧とが繰り返し生じることになる。このような研磨においては、研磨パッドの粘弾性が、特にウェーハ外周部の研磨量分布に影響を与えることが知られており、様々な物性値(粘弾性を含む)の研磨パッドが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-089767号公報
【特許文献2】特開平11-165256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の研磨パッドの物性値を把握する手法だけでは、実際の研磨中の研磨パッドの変位量を表すことが難しかった。これに対し、特許文献2では、ウェーハを押し付けた際の研磨パッドの変形を測定することが提案されているものの、押し付けた後に研磨パッドの変形が回復する挙動までは測定することができなかった。このため、片面研磨中の研磨パッドの動的な変位量を測定することができる方法が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、片面研磨中の研磨パッドの動的な変位量を測定することが可能な、ワークの片面研磨装置、ワークの片面研磨方法、及びシリコンウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)ワークの片面研磨装置であって、
前記ワークよりも大きな直径を有する研磨定盤と、
前記研磨定盤に貼布された研磨パッドと、
前記ワークを保持して研磨パッドに押し付け可能な研磨ヘッドと、
前記研磨パッドに研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、を備え、
前記研磨パッドの上面であって前記研磨ヘッドに覆われていない部分である露出上面の変位を測定可能な表面変位測定部をさらに備えることを特徴とする、ワークの片面研磨装置。
【0007】
(2)前記露出上面から前記研磨液を除去する研磨液除去部をさらに備える、上記(1)に記載のワークの片面研磨装置。
【0008】
(3)前記研磨液除去部は、前記露出上面にエアーを吹き付け可能に構成されている、上記(2)に記載のワークの片面研磨装置。
【0009】
(4)前記表面変位測定部を複数個所に配置した、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載のワークの片面研磨装置。
【0010】
(5)前記ワークは、ウェーハである、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のワークの片面研磨装置。
【0011】
(6)ワークの片面研磨方法であって、
前記ワークよりも大きな直径を有する研磨定盤と、前記研磨定盤に貼布された研磨パッドと、前記ワークを保持して研磨パッドに押し付け可能な研磨ヘッドと、前記研磨パッドに研磨液を供給する研磨液供給ノズルと、を用いて、
前記研磨液供給ノズルから前記研磨パッドに前記研磨液を供給しつつ、前記研磨定盤及び前記研磨パッドを回転させながら、前記ワークを前記研磨パッドに押し付けることにより、前記ワークの片面を研磨する、研磨工程を含み、
前記研磨工程においては、前記研磨パッドの上面であって前記研磨ヘッドに覆われていない部分である露出上面の変位を測定可能な表面変位測定部により、前記露出上面の変位の測定を行いながら、前記ワークの片面を研磨することを特徴とする、ワークの片面研磨方法。
【0012】
(7)前記露出上面から前記研磨液を除去しながら、前記ワークの片面を研磨する、上記(6)に記載のワークの片面研磨方法。
【0013】
(8)前記露出上面にエアーを吹き付けて研磨液を除去しながら、前記ワークの片面を研磨する、上記(7)に記載のワークの片面研磨方法。
【0014】
(9)前記研磨パッドに前記ワークを押し付けない状態で前記露出上面の変位を測定する予備工程をさらに含み、
前記予備工程での測定結果と、前記研磨パッドに前記ワークを押し付けた状態で前記露出上面の変位を測定した結果とを比較することにより、前記ワークの片面研磨中の前記露出上面の変位の動的変化を算出する、上記(6)又は(7)に記載のワークの片面研磨方法。
【0015】
(10)前記ワークは、シリコンウェーハである、上記(6)~(9)のいずれか1つに記載のワークの片面研磨方法。
【0016】
(11)上記(10)に記載のワークの片面研磨方法を用いた、シリコンウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、片面研磨中の研磨パッドの動的な変位量を測定することが可能な、ワークの片面研磨装置、ワークの片面研磨方法、及びシリコンウェーハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるワークの片面研磨装置の概略上面図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかるワークの片面研磨装置の概略側面図である。
【
図3】測定時間と露出上面の変位との関係を示す図である。
【
図4】
図3において飛び値を除去したデータを示す図である。
【
図5】
図4のデータの中心化移動平均する時間幅(回転周期の何倍とするか)を変更した時間移動平均のデータを示す図である。
【
図6】
図4のデータをN平均したデータを示す図である。
【
図7】研磨パッドにウェーハを押し付けない状態で露出上面の変位を同様に測定する予備工程を行った際のデータを示す図である。
【
図8】測定時間と露出上面の変位の絶対量との関係を示す図である。
【
図9】エアー吹き付けを行わなかった場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0020】
<ワークの片面研磨装置>
図1は、本発明の一実施形態にかかるワークの片面研磨装置の概略上面図である。
図2は、本発明の一実施形態にかかるワークの片面研磨装置の概略側面図である。
【0021】
図1、
図2に示すように、この片面研磨装置1は、ワーク(例えばシリコンウェーハ)Wよりも大きな直径を有する研磨定盤2と、研磨定盤2の上面に貼布された研磨パッド3と、ワークWを保持して研磨パッド3に押し付け可能な研磨ヘッド4と、研磨パッド3に研磨液(研磨スラリー)5を供給する研磨液供給ノズル6と、を備えている。
【0022】
図示例では、研磨パッド3の上面がワークWの片面(下面)と摺動してワークWの片面が研磨される。
図2では図示を省略しているが、研磨ヘッド4は、ワークWの上面の保持部となるバッキングパッドや側面の保持部となるリテーナリング(その内径がワークWの直径と同等又は直径よりも大きい)を有していても良い。研磨液5は、水溶性高分子を少なくとも含有し、さらに、砥粒およびアルカリ溶液を含有することができ、水溶性高分子はワークWの保護剤として機能することができる。
【0023】
また、図示は省略しているが、研磨ヘッド4は、研磨ヘッド4を昇降及び回転させるシャフト部と、シャフト部の下端に設けられ、下面にバッキングパッドが取り付けられた回転フレーム部と、を具備することができる。また、片面研磨装置1は、研磨定盤2に接続され、かつ研磨定盤2を回転させる回転機構(シャフトやモータ等)を備えている。
【0024】
ここで、
図1、
図2に示すように、研磨パッド3の上面は、研磨ヘッド4に覆われている部分と、研磨ヘッド4に覆われていない部分(以下、露出上面7という)とからなる。この研磨パッドの露出上面7(研磨ヘッド4に覆われていない部分)は、研磨中において研磨液5が存在するが、研磨ヘッド4やその他の機構によって押圧されてはいない。そして、この片面研磨装置1は、露出上面7の変位を測定可能な表面変位測定部8をさらに備えている。表面変位測定部8は、特には限定されないが、レーザ変位計のような非接触の変位計とすることができる。
【0025】
図2に示すように、表面変位測定部8は、防水容器9で囲われており、これにより研磨液5の飛散から保護されている。本例では、防水容器9は、透明なアクリル製である。また、本例では、防水容器9は、液切り斜面10を有しており、付着した研磨液5が防水容器9に付着したままとなるのを防止することができる。
【0026】
さらに、
図2に示すように、この片面研磨装置1は、露出上面7から研磨液5を除去する研磨液除去部11をさらに備えている。研磨液除去部11は、研磨パッド3の変位量測定に影響を与えるほど押圧することなく、表面から研磨液を除去することができる機構であれば良い。本例では、研磨液除去部11は、露出上面7にエアー12を吹き付け可能に構成されている、エアー吹き付け部である。このエアー吹き付け部は、測定点の上方に配置され、上方から研磨パッド3に空気を吹き付けることにより、研磨液5を測定点から除去することができる。
【0027】
図1に示すように、片面研磨装置1は、表面変位測定部8を複数個所に配置していることが好ましい。
図1の3つの測定点A、B、Cに対応して、3つの表面変位測定部8が配置されているが、表面変位測定部8の個数は、この例に限られない。図示例では、測定点Aは、研磨パッド3がワークWとの間で発生した圧力から解放された直後の位置の測定点であり、測定点B及び測定点Cは、圧力から解放された後、それぞれ所定の時間が経過した点となる。この例では、測定点A~Cは、等間隔に配置されている。一方で、測定点は、研磨パッド3の露出上面7の変位の動的変化を観察するのに適した様々な配置とすることができ、例えば必ずしも等間隔に配置する必要はない。例えば、研磨パッド3がワークWとの間で発生した圧力から解放された直後の位置の測定点と、研磨パッド3の形状がほぼ回復した位置に対応する測定点と、に配置しても良い。
以下、本実施形態のワークの片面研磨装置の作用効果について説明する。
【0028】
本実施形態のワークWの片面研磨装置1は、露出上面7の変位を測定可能な表面変位測定部8を備えている。表面変位測定部8によりワークWの片面研磨中に連続的に露出上面7の変位を測定することにより、ワークWからの押し付け圧力の負荷と除圧とを含む研磨パッドの動的変位挙動を把握することができる。表面変位測定部8の分解能等を適切に選定することにより、例えば数ミクロン程度の研磨パッド3の変位の時間的変化を把握することができる。そのため、ウェーハを押し付けた状態での研磨パッドの変位量(数百ミクロン程度)を測定することではわからなかった研磨パッドの物性のバラツキを評価することができるようになる。
このように、本実施形態のワークWの片面研磨装置1によれば、片面研磨中の研磨パッドの動的な変位量を測定することができる。
【0029】
ここで、片面研磨装置1は、露出上面7から研磨液5を除去する研磨液除去部11をさらに備えることが好ましい。研磨液5の影響を受けないようにして、片面研磨中の研磨パッド3の動的な変位量を精度良く測定することができるからである。研磨液除去部11は、露出上面7にエアー12を吹き付け可能に構成されていることが好ましい。簡易な構成により、研磨液5の影響を受けないようにすることができるからである。
【0030】
また、表面変位測定部8が複数個所に配置されていることが好ましい。ワークWからの押し付け圧力の負荷と除圧とを含む1周期の中での研磨パッド3の変位の時間的変化を把握することができるからである。複数個所が研磨パッド3の周方向に配置されることで、研磨パッド3内の同一箇所の時間的変化を把握することができるため、より正確に研磨パッド3の動的変化を測定することができる。
【0031】
<ワークの片面研磨方法>
本発明の一実施形態にかかるワークの片面研磨方法は、一例としては、上記の実施形態のワークの研磨装置を用いて実行することができる。
本実施形態のワークの片面研磨方法は、ワークWよりも大きな直径を有する研磨定盤2と、研磨定盤2に貼布された研磨パッド3と、ワークWを保持して研磨パッド3に押し付け可能な研磨ヘッド4と、研磨パッド3に研磨液5を供給する研磨液供給ノズル6と、を用いて、研磨液供給ノズル6から研磨パッド3に研磨液5を供給しつつ、研磨定盤2及び研磨パッド3を回転させながら、ワークWを研磨パッド3に押し付けることにより、ワークWの片面を研磨する、研磨工程を含む。
【0032】
研磨工程においては、露出上面7の変位を測定可能な表面変位測定部8により、露出上面7の変位の測定を行いながら、ワークWの片面を研磨する。
【0033】
本実施形態のワークWの研磨方法によれば、研磨工程において、表面変位測定部8により片面研磨中に連続的に露出上面7の変位を測定することにより、ワークWからの押し付け圧力の負荷と除圧とを含む研磨パッド3の動的変位挙動を把握することができる。表面変位測定部8の分解能等を適切に選定することにより、例えば数ミクロンの研磨パッド3の変位の時間的変化を把握することができる。
このように、本実施形態のワークWの片面研磨方法によれば、片面研磨中の研磨パッドの動的な変位量を測定することができる。
【0034】
片面研磨方法において、露出上面7から研磨液5を除去しながら、ワークWの片面を研磨することが好ましい。研磨液5の影響を受けないようにして、片面研磨中の研磨パッド3の動的な変位量を精度良く測定することができるからである。研磨工程においては、露出上面7にエアー12を吹き付けて研磨液を除去しながら、ワークWの片面を研磨することが好ましい。簡易な手法により、研磨液5の影響を受けないようにすることができるからである。
【0035】
片面研磨方法において、研磨パッド3にワークWを押し付けない状態で露出上面7の変位を測定する予備工程をさらに含み、予備工程での測定結果と、研磨パッド3にワークWを押し付けた状態で露出上面7の変位を測定した結果とを比較することにより、ワークWの片面研磨中の露出上面7の変位の動的変化を算出することが好ましい。ワークWの片面研磨中の露出上面7の変位の動的変化を絶対値(絶対量)で算出することができるからである。この予備工程では、研磨ヘッド4は研磨パッド3には接触しておらず、研磨パッド3の上方に待機し、そのため研磨ヘッド4からの圧力は研磨パッド3に伝わらない状態である。ただし、研磨液5は供給され、変位の測定点では研磨液除去部11により、研磨液5を除去しながら測定を行う。
【0036】
<シリコンウェーハの製造方法>
本発明の一実施形態にかかる研磨ワークの製造方法は、上記の実施形態のワークWの片面研磨方法を用いて、ワークWの片面を研磨することにより研磨ワークを製造する。ここでのワークWは、シリコンウェーハである。
本実施形態の研磨ワークの製造方法によれば、片面研磨中の研磨パッドの動的な変位量を測定することができる。
【0037】
特には限定されないが、ワークの片面研磨装置、ワークの片面研磨方法においては、ワークとしては、シリコンウェーハを好適に適用することができる。
シリコンウェーハの製造方法に適用する場合には、片面研磨以外は通常の製造工程を含むことができる。例えば、チョクラルスキー法による単結晶の引上げ後、スライスによりウェーハとし、ラップ、エッチング、両面研磨等の加工工程を経たウェーハに対して、本開示の片面研磨を適用することができる。
【0038】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例0039】
本発明の効果を確かめるため、
図1、
図2に示したような片面研磨装置を用いて、直径300mmのp型のシリコンウェーハ5枚に対してそれぞれ片面研磨を行い、研磨工程中に、露出上面へのエアーの吹き付けを行いながらレーザ変位計を用いて露出上面の変位の動的変化を測定した。レーザ変位計は、キーエンス社製IL-100を用いた(測定範囲:―2mm~2mm、分解能:2μm、サンプリング時間:10ms)。研磨ヘッドによるウェーハ加圧を20kPaとし、研磨パッドの回転速度を40rpmとした。
【0040】
図3は、測定時間と露出上面の変位との関係を示す図である。
図3における変位計1~3は、それぞれ測定点A~Cに対応している。
図3に示すように、データには飛びが生じる場合がある。そこで、全5回(サンプル数N=5)の各回の測定データx(t,n)に対して、時間平均値<x(t,n)>
Tp-Aveから、時間的に不連続、かつ他の値と大きく異なる値(極端に飛んだ値)(|x(t,n)-<x(t,n)>
Tp-Ave|>200μmとなった場合を極端に飛んだ値とした)を除去した。飛び値除去後のデータを
図4に示している。
図4では、変位計3のデータのみを示している。
【0041】
図4のデータを研磨ヘッド及び回転定盤の回転周期Trの数倍で中心化移動平均(<x(t,n)>
Tr-Ave)した。振動と飛び値を除去できれば、どのような倍率でも良いが、大きな倍率を用いると、中心化移動平均で研磨開始側及び研磨終了側の時間のデータが大きく欠落する。このような観点から、以下では、回転周期Trの4倍の移動平均データを用いた。
図5は、
図4のデータの中心化移動平均する時間幅(回転周期の何倍とするか)を変更した時間移動平均のデータを示す図である。また、
図6は、
図4のデータにおいて測定N回分で時間t毎にN平均(<x(t,n)>
Tr,N-Ave)した図である。
【0042】
図7は、研磨パッドにウェーハを押し付けない状態で露出上面の変位を同様に測定する予備工程を行った際のデータを示す図である。なお、この状態でも大きく振動(凸凹)しているのは、研磨パッド表面に厚さ(製造時、貼り付け時、ドレス時に生じた)ばらつきがあるからである。ここで、
図6の<x(t,n)>
N,Tr-Aveから
図7のxbgのデータの平均値を引く(差を取る)。
【0043】
図8に、このように差を取って求めた、測定時間と露出上面の変位の絶対量との関係を示している。レーザ変位計の傾きを30°としたため、<x(t,n)>
N,Tr-Ave-xbgにcos30°を乗じて研磨パッドの変位の絶対量とした。
図8に示すように、本実施例で用いた研磨パッドでは、定盤回転による研磨ヘッド間(変位計1~3)において変位量が瞬時に完全に回復することはなく、変位量が残存していることが明らかとなり、片面研磨中の研磨パッドの動的な変位量を測定することができた。
図8に示されるように、変位量がマイナスの値を示しながら研磨時間経過とともにその絶対値が大きくなっていることがわかる。このことから、変位量は、ウェーハによる負荷が除かれた後も瞬時に完全に回復することはなく残存しており、また、繰り返しの負荷により変位量が蓄積していることが明らかになった。
このように、片面研磨中の研磨パッドの動的な変位量を測定することができた。
【0044】
図9は、エアー吹き付けを行わなかった(それ以外は同様のことを行った)場合の図である。エアー吹き付けなしでは、研磨序盤での研磨ヘッド着盤、スラリー流入、研磨中のスラリー液膜等の影響で研磨パッドの変位量を捉えられず(この例では、データが正の値(研磨パッドに対する引張状態)を示しているため、研磨パッドの粘弾性特性を評価することができなかったことが分かる。