(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024080286
(43)【公開日】2024-06-13
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/26 20210101AFI20240606BHJP
A61B 5/304 20210101ALI20240606BHJP
A61B 5/308 20210101ALI20240606BHJP
B62D 1/04 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A61B5/26 200
A61B5/304
A61B5/308
B62D1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193346
(22)【出願日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】前中 省吾
(72)【発明者】
【氏名】岳山 基之
【テーマコード(参考)】
3D030
4C127
【Fターム(参考)】
3D030DB12
4C127AA02
4C127EE01
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】回路構成を簡易にすることができる計測装置を提供する。
【解決手段】計測装置1は、車両3のステアリングホイール10に設けられる一対のセンサ電極20と、一対のセンサ電極20の出力電圧に基づいて、心拍信号を出力する制御回路40とを備える。そして、制御回路40は、一対のセンサ電極20の出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に達したか否かに基づいて、運転者の手によるステアリングホイール10に対する把持を検出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングホイールに設けられる一対のセンサ電極と、
前記一対のセンサ電極の出力電圧に基づいて、心拍信号を出力する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記一対のセンサ電極の出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に達したか否かに基づいて、運転者の手による前記ステアリングホイールに対する把持を検出する
計測装置。
【請求項2】
前記一対のセンサ電極のうちの一方と対応するように、前記ステアリングホイールに設けられるグランド電極をさらに備える
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記制御回路は、第1の所定期間における前記一対のセンサ電極の出力電圧が所定の閾値範囲内の場合、前記ステアリングホイールに対する非把持であると検出する
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記制御回路は、第2の所定期間における、前記一対のセンサ電極の出力電圧が前記検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に複数回達した場合、運転者の手による前記ステアリングホイールに対する把持であると検出する
請求項3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記制御回路は、把持を検出した後、第3の所定期間における前記一対のセンサ電極の出力電圧の移動平均値が所定範囲内の場合、前記一対のセンサ電極の出力電圧に基づく心拍信号を出力する
請求項4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記制御回路は、把持を検出した後、第4の所定期間の出力電圧が所定の第2閾値範囲内であると判定した場合、非把持であると検出する
請求項5に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステアリングホイールに設けられた第一誘導電極及び第二誘導電極と、ステアリングホイールに設けられた第一基準電極及び第二基準電極と、被験者の心電波形を検出する心電検出手段と、第一誘導電極及び第二誘導電極への被験者の接触の状態を検知する接触検知手段とを備えた心電計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の心電計では、第一誘導電極及び第二誘導電極からの信号が、心電検出手段と接触検知手段とに分けて入力されるため、心電検出手段及び接触検知手段を備えることとなり、回路構成が複雑になってしまうという課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、回路構成を簡易にすることができる計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る計測装置は、車両のステアリングホイールに設けられる一対のセンサ電極と、前記一対のセンサ電極の出力電圧に基づいて、心拍信号を出力する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記一対のセンサ電極の出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に達したか否かに基づいて、運転者の手による前記ステアリングホイールに対する把持を検出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の計測装置によれば、回路構成を簡易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る計測装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る計測装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、出力電圧、心電波形、把持信号及び非把持信号を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る計測装置を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る計測装置を示す別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0012】
(実施の形態)
<機能構成:計測装置1>
まず、本実施の形態の計測装置1について、
図1~
図3を用いて説明する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る計測装置1を示す模式図である。
図2は、実施の形態に係る計測装置1を示すブロック図である。
図3は、出力電圧、心電波形、把持信号及び非把持信号を示す図である。
図3の(a)は一対のセンサ電極20の出力電圧を示し、
図3の(b)は制御回路40からの心電波形を示し、
図3の(c)は把持信号及び非把持信号を示している。
【0014】
図1及び
図2に示すように、計測装置1は、車両3に設けられている。計測装置1は、車両3のステアリングホイール10に設けられた少なくとも一対のセンサ電極20によって、ステアリングホイール10への運転者の手による把持の有無を検出したり、運転者の生体情報である心電波形の心電位を検出することで心拍を測定したりする。ステアリングホイール10への運転者の手による把持によって、一対のセンサ電極20から出力される信号に基づいた把持、非把持及び心拍が検出される。
【0015】
具体的には、計測装置1は、一対のセンサ電極20と、グランド電極23と、制御回路40とを備えている。
【0016】
[一対のセンサ電極20]
一対のセンサ電極20は、運転者の手によるステアリングホイール10への接触を検出するセンサ電極20である。ここで、接触とは、運転者の手がステアリングホイール10に直接的に接触するだけでなく、一対のセンサ電極20が人の手を検出可能であれば、ステアリングホイール10のカバー及び手袋等の物を介した間接的な接触も含む意味である。
【0017】
また、一対のセンサ電極20は、第1センサ電極21と第2センサ電極22とを有している。例えば、第1センサ電極21はステアリングホイール10の左側に配置され、第2センサ電極22はステアリングホイール10の右側に配置されている。第1センサ電極21は、ステアリングホイール10の左側において、ステアリングホイール10の周方向に沿って配置された長尺な帯状をなしている。また、第2センサ電極22は、ステアリングホイール10の右側において、ステアリングホイール10の周方向に沿って配置された長尺な帯状をなしている。
【0018】
第1センサ電極21及び第2センサ電極22のそれぞれは、運転者の手がステアリングホイール10を把持した際に検出した信号をそれぞれ独立してセンサ回路30に出力する。このため、計測装置1では、両手でステアリングホイール10を把持しているかどうかを判断できるようになる。例えば、両手で適切に把持しているかどうかの判断に用いることで、両手でステアリングホイール10を把持するように注意喚起を行う等、車両を運転する運転者の安全性を高めることができる。
【0019】
また、一対のセンサ電極20のそれぞれは、導体又は抵抗体による面状構造のべた電極であり、薄板状金属からなる板状又はシート状の導電性の電極である。一対のセンサ電極20をべた電極とすれば、一対のセンサ電極20と手との対向面積を最大化することができるため、把持の検出、非把持の検出及び心電位の検出のいずれも高感度化することが期待できる。
【0020】
一対のセンサ電極20は、ステアリングホイール10が手によって把持されたとき、第1センサ電極21上及び第2センサ電極22上に直接的又は間接的に運転者の手が位置するように、ステアリングホイール10に設けられている。一対のセンサ電極20は、ステアリングホイール10の内部に設けられていてもよく、ステアリングホイール10の表面に設けられていてもよい。一対のセンサ電極20がステアリングホイール10の内部に設けられている場合、例えば、ステアリングホイール10の表層部が一対のセンサ電極20を覆っている。表層部は、運転者がステアリングホイール10を握る際に、運転者の手と直接接触する部分である。表層部は、革、木材、又は、樹脂等である。
【0021】
一対のセンサ電極20の裏面には、図示しない基材が配置されている。一対のセンサ電極20の裏面は、運転者の手が配置される側の表面とは反対側の面である。基材は、弾性、柔軟性及び延性を有する材質によって長尺のシート状に形成された不織布である。例えば、基材は、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂によって構成されている。また、基材の裏面には、グランド電極23が配置されている。
【0022】
[グランド電極23]
グランド電極23は、一対のセンサ電極20のうちの一方と対応するように、ステアリングホイール10に設けてもよい。グランド電極23は、一対のセンサ電極20のうちの一方のセンサ電極20と基材とに挟まれた状態で配置されている。本実施の形態では、グランド電極23は、第1センサ電極21と基材とに挟まれた状態で配置されている。また、グランド電極23は、例えば、銅線等の金属線(導電線)、又は、面状構造のべた電極等である。
【0023】
また、一対のセンサ電極20は、配線91、92を介してセンサ回路30と電気的に接続されている。このため、一対のセンサ電極20のそれぞれから信号がセンサ回路30に入力される。具体的には、第1センサ電極21から配線91を介して信号がセンサ回路30に入力される。また、第2センサ電極22から配線92を介して信号がセンサ回路30に入力される。
【0024】
[センサ回路30]
センサ回路30は、一対のセンサ電極20のそれぞれから信号を取得する。具体的には、センサ回路30は、第1センサ電極21から出力された信号を取得し、かつ、第2センサ電極22から出力された信号を取得する。
【0025】
センサ回路30は、一対のセンサ電極20における第1センサ電極21から出力された信号と第2センサ電極22から出力された信号との電位差である差分信号を導出する。センサ回路30は、
図3の(a)に示すような出力電圧の差分信号を制御回路40に出力する。
【0026】
[制御回路40]
制御回路40は、センサ回路30から差分信号を取得する。制御回路40は、取得した差分信号に示される出力電圧、つまり一対のセンサ電極20の出力電圧に基づいて、運転者の把持信号の出力、非把持信号の出力、及び、心拍信号の出力をする。例えば、制御回路40は、増幅回路と、A/D変換器と、LPF(Low Pass Filter)又はBPF(Band Pass Filter)とを有していてもよい。増幅回路は、一対のセンサ電極20の出力電圧を増幅する差動アンプであってもよい。増幅回路は、出力電圧を差動利得で増幅した差動増幅信号を生成してもよい。増幅回路は、生成した差動増幅信号をA/D変換器へ出力してもよい。A/D変換器は、入力された差動増幅信号をアナログデジタル変換し、LPF又はBPFを介して、デジタル化した差動増幅信号を把持信号、非把持信号、及び、心拍信号として情報処理装置50へ出力してもよい。
【0027】
以下、制御回路40の機能について具体的に説明する。
【0028】
制御回路40は、一対のセンサ電極20の出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に達したか否かに基づいて、運転者の手によるステアリングホイール10に対する把持を検出する。
【0029】
具体的には、制御回路40は、一対のセンサ電極20のそれぞれから出力された2つの信号に基づいて、運転者の手によるステアリングホイール10の表面への接触を検出できる。より具体的には、制御回路40は、センサ回路30から取得した差分信号に基づいて、運転者の手がステアリングホイール10に接触しているか否かの検出をすることができる。
【0030】
例えば、制御回路40は、配線91、92を介して一対のセンサ電極20に交流の電流を流す。この際に、運転者の手がステアリングホイール10の表面に接触すると、センサ回路30から出力される差分信号が変化する。制御回路40は、取得した差分信号に示される出力電圧、つまり一対のセンサ電極20の出力電圧に基づいて、運転者の把持信号の出力、非把持信号の出力、及び、心拍信号の出力をすることができる。
【0031】
また、制御回路40は、運転者の手がステアリングホイール10に接触していることを示す把持を検知した信号(把持信号)を、情報処理装置50等へ出力する。また、制御回路40は、運転者の手がステアリングホイール10に接触していないことを示す非把持を検知した信号(非把持信号)を、情報処理装置50等へ出力する。
【0032】
具体的には、制御回路40は、
図3の(a)~(c)に示すように、第1の所定期間における一対のセンサ電極20の出力電圧が所定の第1閾値範囲内の場合、ステアリングホイール10に対する非把持であると検出する。例えば、制御回路40が駆動を開始してから運転者の手がステアリングホイール10に対して接触していない期間であり、ステアリングホイール10への把持を開始する前の期間において、制御回路40は、ステアリングホイール10に対する非把持であると検出する。つまり、制御回路40は、出力電圧が所定の第1閾値範囲内の場合に、ステアリングホイール10に対する非把持であると検出する。そして、制御回路40は、運転者の手がステアリングホイール10に接触していないことを示す非把持信号を、情報処理装置50等へ出力する。
【0033】
ここで、所定の第1閾値範囲は、第1の所定期間における、出力電圧が中心値に対して±所定ノイズ幅の範囲である。所定の第1閾値範囲は、所定の閾値範囲の一例である。なお、出力電圧の中心値とは、例えば、運転者の手がステアリングホイール10に接触していないときの出力電圧値であってもよく、出力電圧の最大値と出力電圧の最小値との間の中心となる値であってもよい。
【0034】
また、制御回路40は、第2の所定期間における一対のセンサ電極20の出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に複数回達した場合、運転者の手によるステアリングホイール10に対する把持であると検出する。つまり、運転者の手によってステアリングホイール10が把持されていない場合から運転者の手がステアリングホイール10を把持した場合、運転者の手の動きによって一対のセンサ電極20の出力電圧が変動するため、第2の所定期間において出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に複数回達した場合、運転者の手によるステアリングホイール10に対する把持であると検出する。そして、制御回路40は、運転者の手がステアリングホイール10に接触していることを示す把持信号を、情報処理装置50等へ出力する。
【0035】
ここで、出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に達するとは、出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に達した場合だけでなく、出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方近傍に達した場合も含む。具体的には、出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に達する場合には、出力電圧が(上限値-誤差)及び(下限値+誤差)のうちの少なくとも一方に達した場合も含む。つまり、出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に達する場合には、出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に完全に達する場合と、出力電圧が(上限値-誤差)及び(下限値+誤差)のうちの少なくとも一方に達する場合とが含まれていてもよい。
【0036】
また、制御回路40は、把持を検出した後、第3の所定期間における一対のセンサ電極20の出力電圧の移動平均値が所定範囲内の場合、一対のセンサ電極20の出力電圧に基づく心拍信号を出力する。出力電圧の移動平均値が所定範囲内になる場合、運転者の手によるステアリングホイール10に対する把持が安定して行われていることを意味する。このため、制御回路40は、把持を検出した後に第3の所定期間を経時的にずらしながら出力電圧の移動平均値を算出する。算出した出力電圧の移動平均値が所定範囲内になれば、運転者の手によるステアリングホイール10に対する把持が安定している。これにより、制御回路40は、算出した出力電圧の移動平均値が所定範囲内になった時点から、
図3の(a)の出力電圧に例えばLPF又はBPF等を介することで、
図3の(b)に示される心電波形を生成し、生成した心電波形から心拍信号を生成する。制御回路40は、生成した心拍信号を情報処理装置50等へ出力する。
【0037】
なお、出力電圧の移動平均値を算出する期間である第3の所定期間は、例えば1.5秒等の数秒程度である。
【0038】
また、制御回路40は、把持を検出した後、第4の所定期間における出力電圧が所定の第2閾値範囲内の場合、非把持であると検出する。つまり、運転者の手がステアリングホイール10を把持した状態から手が離れる場合では、第4の所定期間における出力電圧が所定の第2閾値範囲内となり、運転者の手は、ステアリングホイール10から離れ、一対のセンサ電極20の出力電圧が安定していることを意味する。そして、制御回路40は、運転者の手がステアリングホイール10に接触していないことを示す非把持信号を、情報処理装置50等へ出力する。
【0039】
ここで、所定の第2閾値範囲は、第4の所定期間における出力電圧が中心値に対して±所定ノイズ幅の範囲である。なお、所定の第2閾値範囲は、出力電圧における移動平均値の所定範囲と同様であってもよい。
【0040】
[情報処理装置50]
情報処理装置50は、車両3の各部を統括制御するECU(Electronic Control Unit)等の車両制御ユニットである。情報処理装置50は、制御回路40から取得した把持信号及び非把持信号に基づいて、運転者によって車両が運転されているにもかかわらず、ステアリングホイール10への手の接触を検出していない場合、運転者への注意喚起を注意喚起装置に実行させる。ステアリングホイール10への手の接触を検出していない場合は、例えば、両手でステアリングホイール10を同時に握っていない場合である。例えば、注意喚起装置は、警告音又は音声によって、運転者に注意を喚起したり、運転者にステアリングホイール10を両手でしっかり握るように促す注意喚起のメッセージを表示したりする。
【0041】
また、情報処理装置50は、制御回路40の心拍信号に基づいて、心電位に異常がある場合、運転者への注意喚起を注意喚起装置に実行させる。例えば、注意喚起装置は、警告音又は音声によって、運転者に注意を喚起したり、運転者に休憩を促す等の車両運転を中止するように促す注意喚起のメッセージを表示したりする。
【0042】
<動作処理>
本実施の形態に係る計測装置1の動作処理について、
図4及び
図5を用いて説明する。
【0043】
図4は、実施の形態に係る計測装置1を示すフローチャートである。
図5は、実施の形態に係る計測装置1を示す別のフローチャートである。なお、
図4では、
図3の(a)~(c)に沿って、運転者の手によってステアリングホイール10が把持されていない場合から心拍信号を情報処理装置50に出力する場合までの一例を例示している。また、
図5も同様に
図3の(a)~(c)に沿って、心拍信号を情報処理装置50に出力している場合から運転者がステアリングホイール10から手を離す(非把持となる)場合までの一例を例示している。
【0044】
まず、一対のセンサ電極20のそれぞれから信号がセンサ回路30に入力される。このため、センサ回路30は、一対のセンサ電極20のそれぞれから信号を取得することができる。センサ回路30は、一対のセンサ電極20における第1センサ電極21から出力された信号と第2センサ電極22から出力された信号との電位差である差分信号を導出する。センサ回路30は、
図3の(a)に示すように、導出した差分信号を制御回路40に出力する。これにより、制御回路40は、センサ回路30から、差分信号に示される出力電圧を取得する(S11)。
【0045】
次に、制御回路40は、第1の所定期間における出力電圧が所定の第1閾値範囲内であるか否かを判定する(S12)。
【0046】
制御回路40は、第1の所定期間における一対のセンサ電極20の出力電圧が所定の第1閾値範囲内であると判定すると(S12でYES)、非把持信号を情報処理装置50に出力する(S13)。つまり、制御回路40は、第1の所定期間における一対のセンサ電極20の出力電圧が所定の第1閾値範囲内の場合、ステアリングホイール10に対する非把持であると検出し、
図3の(c)で示すように非把持信号を情報処理装置50に出力する。そして、制御回路40は、ステップS11の動作処理に戻る。
【0047】
一方、制御回路40は、第1の所定期間の出力電圧が所定の第1閾値範囲内ではないと判定すると(S12でNO)、第2の所定期間における出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に複数回達したか否かを判定する(S14)。なお、本動作処理では、第2の所定期間における出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に複数回達した場合を例示しているが、制御回路40は、第2の所定期間における出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に1回だけ達した場合でもステップS14の処理を実行してもよい。
【0048】
制御回路40は、第2の所定期間における出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に複数回達していると判定すると(S14でYES)、把持信号を情報処理装置50に出力する(S15)。つまり、制御回路40は、第2の所定期間における一対のセンサ電極20の出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に複数回達した場合、運転者の手によるステアリングホイール10に対する把持であると検出し、
図3の(c)で示すように把持信号を情報処理装置50に出力する。そして、制御回路40は、Bを経由して、ステップS11の動作処理に戻す。
【0049】
一方、制御回路40は、第2の所定期間における出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に複数回達していないと判定すると(S14でNO)、第3の所定期間における出力電圧の移動平均値が所定範囲内か否かを判定する(S16)。
【0050】
制御回路40は、第3の所定期間における出力電圧の移動平均値が所定範囲内でないと判定した場合(S16でNO)、Bを経由して、ステップS11の動作処理に戻す。
【0051】
一方、制御回路40は、第3の所定期間における出力電圧の移動平均値が所定範囲内であると判定した場合(S16でYES)、心拍信号を情報処理装置50に出力する(S17)。
【0052】
ここで、ステップS16では、運転者がステアリングホイール10を把持することで、ステップS15を経由した場合であって、一対のセンサ電極20の出力電圧の移動平均値が所定範囲内の場合、一対のセンサ電極20の出力電圧に基づく心拍信号を出力する。
【0053】
次に、Aを経由して、
図5に示すように、制御回路40は、センサ回路30から、一対のセンサ電極20から出力されたそれぞれの信号に基づく差分信号に示される出力電圧を取得する(S21)。
【0054】
次に、制御回路40は、第4の所定期間における出力電圧が所定の第2閾値範囲内であるか否かを判定する(S22)。
【0055】
制御回路40は、第4の所定期間における出力電圧が所定の第2閾値範囲内であると判定すると(S22でYES)、非把持信号を情報処理装置50に出力する(S23)。つまり、制御回路40は、把持を検出した後、第4の所定期間における一対のセンサ電極20の出力電圧が所定の第2閾値範囲内であると判定すると、非把持であると検出し、
図3の(c)で示すように非把持信号を情報処理装置50に出力する。そして、制御回路40は、
図4のステップS11の動作処理に戻る。
【0056】
一方、制御回路40は、第4の所定期間の出力電圧が所定の第2閾値範囲内でないと判定すると(S22でNO)、心拍信号を情報処理装置50に出力する(S24)。つまり、運転者の手がステアリングホイール10から離れておらず、運転者の手がステアリングホイール10を把持している状態が続いているため、制御回路40は、心拍信号を情報処理装置50に出力し続ける。そして、制御回路40は、
図5のステップS21の動作処理に戻す。
【0057】
なお、
図3の(a)~(c)は、
図4及び
図5のフローチャートにおける処理動作の一例を例示しているものであり、
図4及び
図5のフローチャートにおける処理動作が
図3の(a)~(c)に限定されるものではない。
【0058】
<作用効果>
次に、本実施の形態に係る計測装置1の作用効果について説明する。
【0059】
上述したように、本実施の形態に係る計測装置1は、車両3のステアリングホイール10に設けられる一対のセンサ電極20と、一対のセンサ電極20の出力電圧に基づいて、心拍信号を出力する制御回路40とを備える。そして、制御回路40は、一対のセンサ電極20の出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に達したか否かに基づいて、運転者の手によるステアリングホイール10に対する把持を検出する。
【0060】
これによれば、運転者の手によるステアリングホイール10への把持の有無の検知と、運転者の心拍の検知とを別々の回路を用いなくても、1つの制御回路40で運転者の手によるステアリングホイール10への把持の検知と、運転者の心拍の検知とを並列的に行うことができる。
【0061】
したがって、本実施の形態の計測装置1によれば、回路構成を簡易にすることができる。
【0062】
特に、本実施の形態の計測装置1によれば、運転者の手によるステアリングホイール10への把持の有無の検知及び運転者の心拍の検知と、回路構成の簡素との両立を実現することができる。
【0063】
また、本実施の形態に係る計測装置1は、一対のセンサ電極20のうちの一方と対応するように、ステアリングホイール10に設けられるグランド電極23をさらに備える。
【0064】
これによれば、一対のセンサ電極20のうちの一方のセンサ電極を基準電極とすることができるため、一対のセンサ電極20の出力電圧(電位差)を精度よく測定することができる。このため、制御回路は、運転者の把持、非把持及び心拍を精度よく検出することができる。
【0065】
また、本実施の形態に係る計測装置1において、制御回路40は、第1の所定期間における一対のセンサ電極20の出力電圧が所定の閾値範囲(所定の第1閾値範囲)内の場合、ステアリングホイール10に対する非把持であると検出する。
【0066】
これによれば、ステアリングホイール10への把持を開始する際に、所定の第1閾値範囲の出力電圧を検出することができるため、ステアリングホイール10に対する非把持を検出することができる。
【0067】
また、本実施の形態に係る計測装置1において、制御回路40は、第2の所定期間における一対のセンサ電極20の出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に複数回達した場合、運転者の手によるステアリングホイール10に対する把持であると検出する。
【0068】
これによれば、ステアリングホイール10への把持を開始し始める際に、出力電圧が検出範囲の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方に複数回達した場合、運転者の手によるステアリングホイール10に対する把持として検出することができる。このため、ステアリングホイール10に対する運転者の手による把持を精度よく検出することができる。
【0069】
また、本実施の形態に係る計測装置1において、制御回路40は、把持を検出した後、第3の所定期間における一対のセンサ電極20の出力電圧の移動平均値が所定範囲内の場合、一対のセンサ電極20の出力電圧に基づく心拍信号を出力する。
【0070】
これによれば、運転者の手によるステアリングホイール10への把持を開始してから、運転者の手によるステアリングホイール10への把持が安定した際に、移動平均値が所定範囲内となる出力電圧を検出することができる。このため、運転者の手によるステアリングホイール10への把持が安定したときにおける、運転者の心拍信号を出力することができるため、精度よい運転者の心拍信号を出力することができる。
【0071】
また、本実施の形態に係る計測装置1において、制御回路40は、把持を検出した後、第4の所定期間の出力電圧が所定の第2閾値範囲内であると判定した場合、非把持であると検出する。
【0072】
これによれば、把持を検出した後、第4の所定期間の出力電圧が所定の第2閾値範囲内であると判定した場合、ステアリングホイール10に対する非把持を検出することができる。
【0073】
(その他の変形例)
以上、本開示に係る計測装置について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思い付く各種変形を実施の形態に施したものも、本開示の範囲に含まれてもよい。
【0074】
例えば、上記実施の形態に係る計測装置において、ステアリングホイールに一対のセンサ電極が設けられているが、ステアリングホイールに3つ以上のセンサ電極が設けられていてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態に係る計測装置に含まれる制御回路等は典型的に集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0076】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0077】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0078】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の実施の形態は例示された数字に制限されない。
【0079】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0080】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0081】
なお、上記の実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本開示は、例えば計測装置を搭載した車両、車両以外のその他の装置及びシステムに利用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 計測装置
3 車両
10 ステアリングホイール
20 センサ電極
21 第1センサ電極
22 第2センサ電極
23 グランド電極
40 制御回路