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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083127
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/60 20060101AFI20240613BHJP
   A47C 31/11 20060101ALI20240613BHJP
   B60N 2/894 20180101ALI20240613BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B60N2/60
A47C31/11 Z
B60N2/894
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197472
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和磨
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DD07
3B087DC10
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】防汚シートが巻き取られた状態で座り心地への影響をなくすことが可能になると共に、一枚の防汚シートをシートクッションの前面及び座面並びにシートバックの背凭れ面に良好に沿わせて配置させることが可能な車両用シートを得る。
【解決手段】防汚シート26を巻き取り及び引き出し可能な巻取機構24はシートクッション14の下方側に設けられている。防汚シート26の先端部に設けられた係止部28Aは、防汚シート26がシートクッション14の前面14A及び座面14B並びにシートバック16の背凭れ面16Aを覆った状態で被係止部18Bに係止される。また、シート本体12においてシートクッション14の座面14Bよりもシート後方側かつシート下方側に巻掛部30が設けられており、シートクッション14とシートバック16との間の隙間に着座空間側から挿通された防汚シート26が巻掛部30に巻き掛けられる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション及びシートバックを含んで構成されたシート本体と、
前記シートクッションの前面及び座面並びに前記シートバックの背凭れ面を覆うことが可能とされ、先端部に係止部が設けられた防汚シートと、
前記シートクッションのシート下方側に設けられ、前記防汚シートを巻き取り及び引き出し可能な巻取機構と、
前記シート本体に設けられ、前記防汚シートが前記シートクッションの前面及び座面並びに前記シートバックの背凭れ面を覆った状態で前記係止部が係止される被係止部と、
前記シートクッションの座面よりもシート後方側かつシート下方側に設けられ、前記シートクッションと前記シートバックとの間の隙間に着座空間側から挿通された前記防汚シートが巻き掛けられる巻掛部と、
を備える車両用シート。
【請求項2】
前記防汚シートの先端部に取り付けられて前記係止部を含んで構成され、前記防汚シートの幅方向に沿って延在された軸部材と、
前記シートクッションの座面よりもシート後方側かつシート下方側に設けられ、前記巻掛部の外周側において前記巻掛部の周方向の一部に沿って延在されると共にシート前方側が開放され、前記巻掛部との間に前記軸部材を入れることが可能なガイド部と、
を備える請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記巻掛部を操作部の操作に応じてシート幅方向の軸線回りに回転させる回転機構と、
前記巻掛部の外周面から延出されて前記巻掛部と共に回転可能とされ、先端部と前記ガイド部の内面との間に前記防汚シートを配置することが可能でかつ前記ガイド部の内側に前記軸部材が入れられた場合に前記巻掛部と共に回転することによって当該軸部材を前記巻掛部の周方向に押圧可能な延出部と、
を備える請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シート本体は、更にヘッドレストを含み、前記ヘッドレストは、前記シートバックの上端部に連結されるヘッドレストステーを有し、
前記ヘッドレストステーのうち前記シートバックのシート上方側に露出する部分の一部が前記被係止部を兼ねている、請求項1に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、シート本体の背面側でシートクッションとシートバックとの境界付近にリトラクターが設けられると共にこのリトラクターに保護用シート部材が巻き取り収納される車両用シートが開示されている。この車両用シートでは、保護用シート部材の先端部には把手を備えた固定バーが取り付けられており、保護用シート部材は、シートクッションとシートバックとの合わせ目を通して引き出されてシート本体の表面を覆うことが可能になっている。このため、この車両用シートでは、シートに汚れた荷物等を載せる場合に、保護用シート部材を引き出すことによって、シートが汚れるのを防止することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-104098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術に係る車両用シートでは、保護用シート部材が巻き取られた状態においては固定バーがシートクッションとシートバックとの合わせ目付近で着座乗員側に配置されるので、座り心地を悪化させてしまう。
【0005】
また、上記先行技術に係る車両用シートは、一枚の保護用シート部材をシートクッションの前面及び座面並びにシートバックの背凭れ面に良好に沿わせて配置させるものではなく、この点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、防汚シートが巻き取られた状態で座り心地への影響をなくすことが可能になると共に、一枚の防汚シートをシートクッションの前面及び座面並びにシートバックの背凭れ面に良好に沿わせて配置させることが可能な車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載する本発明の車両用シートは、シートクッション及びシートバックを含んで構成されたシート本体と、前記シートクッションの前面及び座面並びに前記シートバックの背凭れ面を覆うことが可能とされ、先端部に係止部が設けられた防汚シートと、前記シートクッションのシート下方側に設けられ、前記防汚シートを巻き取り及び引き出し可能な巻取機構と、前記シート本体に設けられ、前記防汚シートが前記シートクッションの前面及び座面並びに前記シートバックの背凭れ面を覆った状態で前記係止部が係止される被係止部と、前記シートクッションの座面よりもシート後方側かつシート下方側に設けられ、前記シートクッションと前記シートバックとの間の隙間に着座空間側から挿通された前記防汚シートが巻き掛けられる巻掛部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、シート本体は、シートクッション及びシートバックを含んで構成されている。シートクッションの前面及び座面並びにシートバックの背凭れ面は、防汚シートによって覆うことが可能となっており、防汚シートの先端部には係止部が設けられている。また、防汚シートを巻き取り及び引き出し可能な巻取機構はシートクッションのシート下方側に設けられている。このように巻取機構がシートクッションのシート下方側に設けられることで、防汚シートが巻き取られた場合に、係止部をシートクッションの下方側に配置させることができ、係止部に起因した座り心地への影響をなくすことが可能になる。
【0009】
また、シート本体には被係止部が設けられており、防汚シートの先端部に設けられた係止部は、防汚シートがシートクッションの前面及び座面並びにシートバックの背凭れ面を覆った状態で被係止部に係止される。また、シートクッションの座面よりもシート後方側かつシート下方側には巻掛部が設けられており、シートクッションとシートバックとの間の隙間に着座空間側から挿通された防汚シートが巻掛部に巻き掛けられる。巻取機構及び被係止部に加えて前記のような巻掛部が設けられることによって、一枚の防汚シートをシートクッションの前面及び座面並びにシートバックの背凭れ面に良好に沿わせて配置させることが可能になる。さらに、巻掛部は、シートクッションの座面よりもシート後方側かつシート下方側に設けられていて着座空間側から見てシートクッションとシートバックとの間の隙間の奥に配置されているので、巻掛部に起因した座り心地への影響もない。
【0010】
請求項2に記載する本発明の車両用シートは、請求項1に記載の構成において、前記防汚シートの先端部に取り付けられて前記係止部を含んで構成され、前記防汚シートの幅方向に沿って延在された軸部材と、前記シートクッションの座面よりもシート後方側かつシート下方側に設けられ、前記巻掛部の外周側において前記巻掛部の周方向の一部に沿って延在されると共にシート前方側が開放され、前記巻掛部との間に前記軸部材を入れることが可能なガイド部と、を備える。
【0011】
上記構成によれば、防汚シートの先端部に取り付けられた軸部材が、係止部を含んで構成されて防汚シートの幅方向に沿って延在されている。また、巻掛部の外周側において巻掛部の周方向の一部に沿って延在されたガイド部は、シート前方側が開放され、巻掛部との間に軸部材を入れることが可能になっている。このため、軸部材を巻掛部とガイド部との間に入れ、軸部材をガイド部の内面に沿って移動させることによって、防汚シートを巻掛部に巻き掛けることができる。また、ガイド部は、シートクッションの座面よりもシート後方側かつシート下方側に設けられているので、ガイド部に起因した座り心地への影響もない。
【0012】
請求項3に記載する本発明の車両用シートは、請求項2に記載の構成において、前記巻掛部を操作部の操作に応じてシート幅方向の軸線回りに回転させる回転機構と、前記巻掛部の外周面から延出されて前記巻掛部と共に回転可能とされ、先端部と前記ガイド部の内面との間に前記防汚シートを配置することが可能でかつ前記ガイド部の内側に前記軸部材が入れられた場合に前記巻掛部と共に回転することによって当該軸部材を前記巻掛部の周方向に押圧可能な延出部と、を備える。
【0013】
上記構成によれば、回転機構は、操作部の操作に応じて巻掛部をシート幅方向の軸線回りに回転させる。また、巻掛部の外周面からは延出部が延出され、延出部は、巻掛部と共に回転可能になっている。この延出部の先端部とガイド部の内面との間には防汚シートを配置することが可能になっており、ガイド部の内側に軸部材が入れられた場合に延出部が巻掛部と共に回転することによって延出部が軸部材を巻掛部の周方向に押圧することが可能になっている。このため、ガイド部の内側に軸部材を入れ、操作部を操作して巻掛部を回転させれば、延出部によって軸部材を巻掛部回りに移動させることができ、防汚シートを一層容易に巻掛部に巻き掛けることができる。
【0014】
請求項4に記載する本発明の車両用シートは、請求項1に記載の構成において、前記シート本体は、更にヘッドレストを含み、前記ヘッドレストは、前記シートバックの上端部に連結されるヘッドレストステーを有し、前記ヘッドレストステーのうち前記シートバックのシート上方側に露出する部分の一部が前記被係止部を兼ねている。
【0015】
上記構成によれば、被係止部を構成する部材を別途設ける必要がないので、部品点数が抑えられるうえ、防汚シートでシートバックを覆う部分のうち背凭れ面以外の面に配置される部分の長さを抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の車両用シートによれば、防汚シートが巻き取られた状態で座り心地への影響をなくすことが可能になると共に、一枚の防汚シートをシートクッションの前面及び座面並びにシートバックの背凭れ面に良好に沿わせて配置させることが可能になるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートを側方側から見た状態で模式的に示す側面図である。
図2図1の巻掛部の周辺構造を模式的に示す斜視図である。
図3】巻掛部に防汚シートを巻き掛ける場合の手順を示す側面視の断面図である。図3(A)は展開バーをガイド部に入れた状態を示す。図3(B)は巻掛部を回転させて延出部で展開バーを移動させている途中状態を示す。図3(C)は図3(B)の状態からさらに巻掛部を回転させて展開バーをガイド部の出口側に移動させた状態を示す。
図4図4(A)は図1の状態から防汚シートを巻掛部の手前付近まで引き出した状態を模式的に示す側面図である。図4(B)は図4(A)の状態から防汚シートを巻掛部に巻き掛けた状態を模式的に示す側面図である。図4(C)は図4(B)の状態から防汚シートを更に引き出して防汚シートの先端部に設けられた係止部をヘッドレストステーに係止させた状態を模式的に示す側面図である。
図5】防汚シートの先端部側の部分及び展開バーを示す図である。
図6図5の展開バーの係止部をヘッドレストステーに係止させた状態を簡略化して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る車両用シートについて図1図6を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両用シートの前方側を示しており、矢印UPは車両用シートの上方側を示しており、矢印Wは車両用シートの幅方向を示している。また、図面の寸法比率は、説明の便宜上、誇張されており、実際の寸法比率とは異なる場合がある。さらに、各図においては、図面を見易くする関係から、一部の符号を省略している場合がある。
【0019】
(構成)
図1には、本実施形態に係る車両用シート10を側方側から見た状態の模式的な側面図が示されている。図1に示されるように、車両用シート10は、シート本体12を備えている。シート本体12は、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション14と、着座乗員の背部を支持するシートバック16と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト18と、を含んで構成されている。
【0020】
シートクッション14は、シートクッションフレームにシートクッションパッドが支持されると共にシートクッションパッドの表面がシートクッション表皮によって覆われた構成とされている。シートバック16は、シートバックフレームにシートバックパッドが支持されると共にシートバックパッドの表面がシートバック表皮によって覆われた構成とされている。なお、図1では図示を省略するが、シートクッション14とシートバック16とは、図示しない連結手段によって連結されている。
【0021】
また、ヘッドレスト18は、ヘッドレストステー18Aを有し、このヘッドレストステー18Aにヘッドレストパッドが支持されると共に、ヘッドレストパッドの表面がヘッドレスト表皮によって覆われた構成とされている。ヘッドレストステー18Aは、左右一対の脚部18L(図6参照)を有し、シートバック16の上端部に挿し込まれて連結されている。
【0022】
シートクッション14の側面には、樹脂により製作されたサイドフィニッシャ20(図中では外形線のみを二点鎖線で示す)が取り付けられている。サイドフィニッシャ20は、略ケース状に形成され、シート幅方向内側へ開口部を向けて配置されている。サイドフィニッシャ20の後部には、回転操作可能な操作部としての操作ダイヤル(「回転ダイヤル」として把握することも可能な要素)22が設置されている。すなわち、操作ダイヤル22は、シート本体12の側面側に設けられている。この操作ダイヤル22については後述する。
【0023】
シートクッション14のシート下方側には、巻取機構24が設けられている。巻取機構24は、シートクッション14の前部下面側に取り付けられ、防汚シート26を巻き取り及び引き出し可能に構成されている。巻取機構24は、防汚シート26が巻き取られる巻取軸を備えると共に、一例として、前記巻取軸を巻取方向へ付勢するぜんまいばね(広義には「付勢手段」として把握される要素である。)を備えている。
【0024】
防汚シート26は、シートクッション14及びシートバック16の汚れを防ぐためのシートであり、シートクッション14の前面14A及び座面14B並びにシートバック16の背凭れ面16Aを覆うことが可能とされている。なお、防汚シート26には、一例として、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等から製作されたシートを適用することができる。
【0025】
図1及び図5に示されるように、防汚シート26の先端部には、軸部材としての展開バー28が取り付けられている。図5に示されるように、展開バー28は、防汚シート26の幅方向(シート幅方向と同じ方向)に沿って延在されている。また、防汚シート26の先端部側には、ヘッドレスト18(図1参照)を挿通させることが可能な通し部26Aが貫通形成されている。通し部26Aは、展開バー28と共に一例として矩形状の貫通孔27を形成している。
【0026】
また、展開バー28には、平面視で通し部26A側を向く左右一対の係止部28Aが形成されている。左右一対の係止部28Aは、窪み形状に形成された部位とされ、図6に示されるヘッドレストステー18Aの一対の脚部18Lの所定部分に係止可能な位置及び形状に形成されている。ここで、ヘッドレストステー18Aの一対の脚部18Lにおいて係止部28A(図5参照)が係止される部分である被係止部18B(図4(C)参照)を兼ねている部分は、一対の脚部18Lのうちシートバック16(図6では図示省略、図4(C)参照)のシート上方側に露出する部分の一部とされている。補足説明すると、図4(C)に示されるように、防汚シート26がシートクッション14の前面14A及び座面14B並びにシートバック16の背凭れ面16Aを覆った状態で展開バー28に形成された係止部28Aがヘッドレストステー18Aの一部の被係止部18Bに係止される構成となっている。
【0027】
なお、図1に示されるように、防汚シート26が巻き取られた状態では、展開バー28は、シートクッション14の前端部下面側に保持されるように、シートクッション14の前端部下面側に設けられた図示しない位置保持手段によって、位置が保持される。
【0028】
また、車両用シート10には、シートクッション14の座面14Bよりもシート後方側かつシート下方側に巻掛部30が設けられている。図4(B)の部分拡大図に示されるように、巻掛部30には、シートクッション14とシートバック16との間の隙間に着座空間側から挿通された防汚シート26が巻き掛けられる。図2には、巻掛部30及びその周辺構造が模式的な斜視図で示されている。図2に示されるように、巻掛部30は、シート幅方向に沿って延在されている。また、巻掛部30のシート幅方向外側の延長部分31は、シートバックフレーム(図示省略)の左右下端部に固定されたブラケット(図示省略)に回転可能に支持されている。すなわち、巻掛部30及びそのシート幅方向外側の延長部分31は、回転軸29を構成している。
【0029】
巻掛部30の外周側には、シート幅方向に沿って延在されたガイド部32が設けられている。ガイド部32は、シートクッション14の座面14Bよりもシート後方側かつシート下方側に設けられ、巻掛部30の周方向の一部に沿って延在されると共にシート前方側が開放されている。
【0030】
図3(A)~図3(C)に示されるように、巻掛部30とガイド部32との間はガイド通路34となっており、ガイド部32は、巻掛部30との間に展開バー28を配置することが可能になっている。ガイド通路34において、図3(B)に示される巻掛部30とガイド部32の開放端下縁との間はガイド入口34Aとされ、巻掛部30とガイド部32の開放端下縁との間はガイド出口34Bとされる。
【0031】
図2及び図3に示されるように、巻掛部30の外周面からは延出部36が延出されており、この延出部36は、巻掛部30と一体化されて巻掛部30と共に回転可能とされている。延出部36は、一例として、矩形板状とされてシート幅方向に沿って延在されている。なお、一個の延出部36に代えて、シート幅方向に並ぶ複数の棒状の延出部が設けられてもよい。
【0032】
図3(B)及び図3(C)に示されるように、延出部36は、その先端部とガイド部32の内面との間に防汚シート26を配置することが可能な延出量に設定されている。また、延出部36は、ガイド部32の内側に展開バー28が入れられた場合に巻掛部30と共に回転することによって展開バー28を巻掛部30の周方向に押圧可能になっている。
【0033】
一方、図2に示されるように、サイドフィニッシャ20(図1参照)の内側領域20A(図中では簡略化してその領域の一部を二点鎖線で囲む)には、回転機構としての操作力伝達機構40が設けられている。操作力伝達機構40は、シート幅方向の軸線回りに回転可能な複数のギヤ41、42、43、44を備えている。
【0034】
ギヤ41は、操作ダイヤル22に対して同軸的かつ一体的に取り付けられている。ギヤ41に噛み合うギヤ42は、シート幅方向に延在された回転軸45のシート幅方向外側の部分に取り付けられている。ギヤ43は、回転軸45のシート幅方向内側の部分に取り付けられてギヤ44に噛み合っている。ギヤ44は、巻掛部30のシート幅方向外側の延長部分31に取り付けられている。なお、ギヤ41、42、43、44の各歯数は適宜設定することができる。以上の構成により、操作力伝達機構40は、操作ダイヤル22の回転操作に応じて巻掛部30をシート幅方向の軸線回りに回転させるようになっている。
【0035】
(防汚シートの展開手順)
次に、図1等に示される防汚シート26の展開手順について説明する。
【0036】
防汚シート26の展開する場合、まず使用者が図1に示される位置にある展開バー28を引き出して図4(A)に示されるようにシートクッション14の座面14Bの後端側まで引き込む。そして、使用者はシートクッション14とシートバック16との間の隙間に展開バー28を挿通し、図3(A)に示されるように手100等で展開バー28をガイド入口34Aに押し込む。次に、使用者は、操作ダイヤル22(図2参照)を回転操作する。この回転操作によって、巻掛部30及び延出部36は、図3(B)に示す位置を経て、図3(C)に示す位置まで、巻掛部30の周方向に回転する(図3(B)の矢印A、図3(C)の矢印B参照)。その際に、延出部36は、展開バー28を巻掛部30の周方向に押圧して展開バー28をガイド出口34Bへ移動させる。次に、使用者は、図3(C)に示される展開バー28をガイド出口34Bから引き出し、図4(B)に示されるようにシートバック16の背凭れ面16Aの下端部手前側に展開バー28を出す。
【0037】
次に、使用者は、展開バー28をシートバック16の背凭れ面16Aに沿ってシート上方側へ引っ張ってヘッドレスト18よりも上方側まで移動させたうえで図5に示される通し部26Aに図6に示されるヘッドレスト18を潜らせる。最後に、使用者は、図5に示される展開バー28の係止部28Aを図4(C)の部分拡大図に示されるヘッドレストステー18Aの被係止部18Bに係止させる。以上により、図4(C)に示されるように、防汚シート26を所望の位置に展開させることができる。
【0038】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0039】
本実施形態では、図4(C)に示されるように、シートクッション14の前面14A及び座面14B並びにシートバック16の背凭れ面16Aは、防汚シート26によって覆うことが可能となっており、防汚シート26の先端部には係止部28Aが設けられている。また、防汚シート26を巻き取り及び引き出し可能な巻取機構24はシートクッション14の下方側に設けられている。このように巻取機構24がシートクッション14の下方側に設けられることで、図1に示されるように、防汚シート26が巻き取られた場合に、係止部28Aをシートクッション14の下方側に配置させることができ、係止部28Aに起因した座り心地への影響(異物が当たっている感覚)をなくすことができる。また、巻取機構24がシートクッション14のシート下方側に設けられることで、防汚シート26が巻き取られた状態で係止部28Aがサイドフィニッシャ20やリクライニング機構(図示省略)等と干渉することを防ぐこともできる。
【0040】
また、図4(C)に示されるように、防汚シート26の先端部に設けられた係止部28Aは、防汚シート26がシートクッション14の前面14A及び座面14B並びにシートバック16の背凭れ面16Aを覆った状態でシート本体12の被係止部18Bに係止される。また、シートクッション14の座面14Bよりもシート後方側かつシート下方側には巻掛部30が設けられており、シートクッション14とシートバック16との間の隙間に着座空間側から挿通された防汚シート26が巻掛部30に巻き掛けられる。
【0041】
巻取機構24及び被係止部18Bに加えて巻掛部30が設けられることによって、一枚の防汚シート26をシートクッション14の前面14A及び座面14B並びにシートバック16の背凭れ面16Aに良好に沿わせて配置(展開)させることが可能になる。また、一枚の防汚シート26を用いる構成であるので、例えば防汚シートを複数用いる構成に比べて、係止部28Aを設けるための部品点数を抑えることもできる。さらに、巻掛部30は、シートクッション14の座面14Bよりもシート後方側かつシート下方側に設けられていて着座空間側から見てシートクッション14とシートバック16との間の隙間の奥に配置されているので、巻掛部30に起因した座り心地への影響もない。
【0042】
また、本実施形態では、図5に示されるように、防汚シート26の先端部に取り付けられた展開バー28が係止部28Aを含んで構成されて防汚シート26の幅方向に沿って延在されている。また、図3に示されるように、巻掛部30の外周側において巻掛部30の周方向の一部に沿って延在されたガイド部32は、シート前方側が開放され、巻掛部30との間に展開バー28を入れることが可能になっている。このため、展開バー28を巻掛部30とガイド部32との間に入れ、展開バー28をガイド部32の内面に沿って移動させることによって、防汚シート26を巻掛部30に巻き掛けることができる。また、ガイド部32は、図2等に示されるシートクッション14の座面14Bよりもシート後方側かつシート下方側に設けられているので、ガイド部32に起因した座り心地への影響もない。
【0043】
また、本実施形態では、図2に示される操作力伝達機構40は、操作ダイヤル22の操作に応じて巻掛部30をシート幅方向の軸線回りに回転させる。また、巻掛部30の外周面からは延出部36が延出され、延出部36は、巻掛部30と共に回転可能になっている。図3に示されるように、延出部36の先端部とガイド部32の内面との間には防汚シート26を配置することが可能になっており、ガイド部32の内側に展開バー28が入れられた場合に延出部36が巻掛部30と共に回転することによって延出部36が展開バー28を巻掛部30の周方向に押圧することが可能になっている。このため、ガイド部32の内側に展開バー28を入れ、操作ダイヤル22(図2参照)を操作して巻掛部30を回転させれば、延出部36によって展開バー28を巻掛部30回りに移動させることができ、防汚シート26を一層容易に巻掛部30に巻き掛けることができる。
【0044】
また、本実施形態では、図4(C)に示されるように、ヘッドレストステー18Aのうちシートバック16のシート上方側に露出する部分の一部が被係止部18Bを兼ねている。このような構成によれば、被係止部18Bを構成する部材を別途設ける必要がないので、部品点数が抑えられるうえ、防汚シート26でシートバック16を覆う部分のうち背凭れ面16A以外の面に配置される部分の長さを抑えることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の車両用シート10によれば、防汚シート26が巻き取られた状態で座り心地への影響をなくすことが可能になると共に、一枚の防汚シート26をシートクッション14の前面14A及び座面14B並びにシートバック16の背凭れ面16Aに良好に沿わせて配置させることが可能になる。
【0046】
(実施形態の補足説明)
なお、図1図6に示される上記実施形態では、ガイド部32、延出部36、操作部としての操作ダイヤル22及び回転機構としての操作力伝達機構40が設けられているが、これらのうちガイド部32のみが設けられる構成も採り得るし、これらのいずれもが設けられない構成も採り得る。
【0047】
また、上記実施形態では、回転機構としての操作力伝達機構40は、巻掛部30を操作部としての操作ダイヤル22の手動の操作力でシート幅方向の軸線回りに回転させているが、上記実施形態の変形例として、回転機構は、操作部の操作に応じて巻掛部(30)を電動でシート幅方向の軸線回りに回転させるようなものでもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、シート本体12が、ヘッドレストステー18Aを有するヘッドレスト18を含んでいるが、シート本体は、シートバックとは別体のヘッドレストを含まない構成(例えばシートバックの上部で着座乗員の頭部を支持するような構成)でもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、被係止部18Bは、ヘッドレストステー18Aの一部で構成されているが、被係止部は、例えばシートバックの上端部の後端側に別途設ける等のようにシート本体に別途設けられてもよい。
【0050】
また、上記実施形態の変形例として、防汚シートは、シートクッションの前面及び座面、シートバックの背凭れ面、並びにヘッドレストの頭部支持面を覆うことが可能なように構成されてもよい。
【0051】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0052】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
10 車両用シート
12 シート本体
14 シートクッション
14A 前面
14B 座面
16 シートバック
16A 背凭れ面
18 ヘッドレスト
18A ヘッドレストステー
18B 被係止部
22 操作ダイヤル(操作部)
24 巻取機構
26 防汚シート
28 展開バー(軸部材)
28A 係止部
30 巻掛部
32 ガイド部
36 延出部
40 操作力伝達機構(回転機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6