(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084195
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】薬品発注システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240618BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198334
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】菊池 陽介
(72)【発明者】
【氏名】松友 伸司
(72)【発明者】
【氏名】野上 康雄
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC12
5L050CC12
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素排出量の削減を容易にする薬品発注システムを提供すること。
【解決手段】薬品発注システムは、用水に注入する薬品の発注を管理する薬品発注システムであって、薬品監視手段と、薬品監視手段から取得した監視結果に基づいて薬品の発注時期を予測する補充時期予測手段と、発注時期決定手段とを備え、発注時期決定手段は、補充時期予測手段が予測した補充時期と、薬品の輸送手段についての選択肢と、輸送手段が排出する二酸化炭素の量と、輸送手段の輸送速度と、に基づいて、推奨する第1の発注時期と、推奨する第1の輸送手段とを決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用水に注入する薬品の発注を管理する薬品発注システムであって、
薬品監視手段と、前記薬品監視手段から取得した監視結果に基づいて前記薬品の補充時期を予測する補充時期予測手段と、発注時期決定手段とを備え、
前記発注時期決定手段は、前記補充時期予測手段が予測した前記補充時期と、前記薬品の輸送手段についての選択肢と、前記輸送手段が排出する二酸化炭素の量と、前記輸送手段の輸送速度と、に基づいて、推奨する第1の発注時期と、推奨する第1の輸送手段とを決定する、薬品発注システム。
【請求項2】
前記の推奨する第1の発注時期、及び前記の推奨する第1の輸送手段は、排出する二酸化炭素の量を抑制するとの観点から決定される、請求項1に記載の薬品発注システム。
【請求項3】
前記薬品監視手段は、薬品タンク内の薬品残量を取得する薬品残量取得手段、前記用水への薬品の吐出量を取得する吐出量取得手段、及び前記薬品の在庫量も含めて未注入の薬品の量を取得する未注入薬品量取得手段のうちの少なくとも1つを備え、
前記監視結果には、前記取得手段が取得した量の少なくとも一部が含まれる、請求項1又は2に記載の薬品発注システム。
【請求項4】
前記発注時期決定手段は、前記第1の発注時期に前記薬品の発注がなかった場合に、排出する二酸化炭素の量を抑制する観点から推奨する第2の発注時期、及び推奨する第2の輸送手段を決定し、
前記第2の輸送手段は、前記第1の輸送手段とは異なる、請求項1又は2に記載の薬品発注システム。
【請求項5】
前記発注時期決定手段は、前記第1の発注時期及び第1の輸送手段に加えて、次善の発注時期及び次善の輸送手段を決定し、
前記発注時期決定手段は、前記第1の輸送手段で前記薬品を輸送した場合に排出される二酸化炭素の量と、前記次善の輸送手段で前記薬品を輸送した場合に排出される二酸化炭素の量との差を算出する、請求項1又は2に記載の薬品発注システム。
【請求項6】
前記補充時期予測手段は、前記監視結果に基づいて薬品の予測使用量を算出し、
前記補充時期予測手段は、外気温の予測データ、水質の年間変動、製造業の年間負荷計画に基づき、前記予測使用量を補正する、請求項1又は2に記載の薬品発注システム。
【請求項7】
前記補充時期予測手段は、前記監視結果に基づいて薬品の過去の使用量を算出し、
前記補充時期予測手段は、前記の算出された過去の使用量を元に、薬品の予測使用量とする、請求項1又は2に記載の薬品発注システム。
【請求項8】
前記発注時期決定手段は、前記薬品の補充先の安全在庫数に基づいて、前記第1の発注時期、及び補充数を決定する、請求項1又は2に記載の薬品発注システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬品発注システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水、農業用水、商業施設で用いられる水などの産業用水には、水処理用の薬品が注入されている場合がある。産業用水の例としては、ボイラ用水、冷却水、製造用水、排水、灌漑用水、飲料水など、さまざまな用途の水が挙げられる。また、水処理用の薬品としても、防スケール剤、防スライム剤、防錆剤、殺菌剤、pH調整剤、凝集剤、乳化剤など、さまざまな薬品が挙げられる。
【0003】
このような水処理用の薬品に関して、例えば特許文献1には、冷却水に防スケール剤などを注入する場合において、使用する薬品の数や、薬品の発注頻度を低減させるための技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまで、薬品の補充について、二酸化炭素排出量抑制の観点から発注のタイミングを顧客に提示する技術はなかった。
昨今、スコープ1、2はもとより、スコープ3も含めて二酸化炭素排出量の抑制が求められている。すなわち、自社設備から直接排出される二酸化炭素に加えて、自社事業から間接排出される二酸化炭素の削減が求められている。この自社事業から間接排出される二酸化炭素には、例えば薬品を搬送する際に排出される二酸化炭素も含まれる。
そこで、本発明は、二酸化炭素の排出量の削減を容易にする薬品発注システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)用水に注入する薬品の発注を管理する薬品発注システムであって、薬品監視手段と、前記薬品監視手段から取得した監視結果に基づいて前記薬品の補充時期を予測する補充時期予測手段と、発注時期決定手段とを備え、前記発注時期決定手段は、前記補充時期予測手段が予測した前記補充時期と、前記薬品の輸送手段についての選択肢と、前記輸送手段が排出する二酸化炭素の量と、前記輸送手段の輸送速度と、に基づいて、推奨する第1の発注時期と、推奨する第1の輸送手段とを決定する薬品発注システム。
【0007】
(2)前記の推奨する第1の発注時期、及び前記の推奨する第1の輸送手段は、排出する二酸化炭素の量を抑制するとの観点から決定される、(1)に記載の薬品発注システム。
【0008】
(3)前記薬品監視手段は、薬品タンク内の薬品残量を取得する薬品残量取得手段、前記用水への薬品の吐出量を取得する吐出量取得手段、及び前記薬品の在庫量も含めて未注入の薬品の量を取得するする未注入薬品量取得手段のうちの少なくとも1つを備え、前記監視結果には、前記取得手段が取得した量の少なくとも一部が含まれる、(1)又は(2)に記載の薬品発注システム。
【0009】
(4)前記発注時期決定手段は、前記第1の発注時期に前記薬品の発注がなかった場合に、排出する二酸化炭素の量を抑制する観点から推奨する第2の発注時期、及び推奨する第2の輸送手段を決定し、前記第2の輸送手段は、前記第1の輸送手段とは異なる、(1)から(3)の何れかに記載の薬品発注システム。
【0010】
(5)前記発注時期決定手段は、前記第1の発注時期及び第1の輸送手段に加えて、次善の発注時期及び次善の輸送手段を決定し、前記発注時期決定手段は、前記第1の輸送手段で前記薬品を輸送した場合に排出される二酸化炭素の量と、前記次善の輸送手段で前記薬品を輸送した場合に排出される二酸化炭素の量との差を算出する、(1)から(4)の何れかに記載の薬品発注システム。
【0011】
(6)前記補充時期予測手段は、前記監視結果に基づいて薬品の予測使用量を算出し、前記補充時期予測手段は、外気温の予測データ、水質の年間変動、製造業の年間負荷計画に基づき、前記予測使用量を補正する、(1)から(5)の何れかに記載の薬品発注システム。
【0012】
(7)前記補充時期予測手段は、前記監視結果に基づいて薬品の過去の使用量を算出し、前記補充時期予測手段は、前記の算出された過去の使用量を元に、薬品の予測使用量とする、(1)から(6)の何れかに記載の薬品発注システム。
【0013】
(8)前記発注時期決定手段は、前記薬品の補充先の安全在庫数に基づいて、前記第1の発注時期、及び補充数を決定する、(1)から(7)の何れかに記載の薬品発注システム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、二酸化炭素排出量の削減を容易にする薬品発注システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の薬品発注システムの概要を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態の薬品発注システムにおける処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の薬品発注システム10について説明する。本実施形態の薬品発注システム10は、用水に注入する薬品の発注を管理するシステムである。ここで、用水は、特には限定されず、例えば、工業用水、農業用水及び商業施設で用いられる水など、産業用水を広く含む。産業用水の例としては、ボイラ用水、冷却水、製造用水、排水、灌漑用水、飲料水など、さまざまな用途の水が挙げられる。また、用水に注入する薬品は、特には限定されず、例えば、防スケール剤、防スライム剤、防錆剤、殺菌剤、pH調整剤、凝集剤、乳化剤など、さまざまな薬品を広く含む。
【0017】
(薬品発注システムの概要)
図1に基づいて、薬品発注システム10の機能的な構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態の薬品発注システム10の概要を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、薬品発注システム10は、薬品監視手段20、補充時期予測手段30及び発注時期決定手段40を備える。
【0018】
(薬品発注システムの処理の概要)
薬品発注システム10の処理の大まかな流れは下記の通りである。すなわち、薬品監視手段20は、薬品に関する監視結果を取得する。補充時期予測手段30は、薬品監視手段20から、薬品監視手段20が取得した監視結果を取得する。補充時期予測手段30は、取得した監視結果に基づいて、補充時期を予測する。発注時期決定手段40は、補充時期予測手段30から、補充時期予測手段30が予測した補充時期を取得する。以下、予測した補充時期を、予測補充時期という場合がある。また、必要に応じて、発注時期決定手段40は、補充時期予測手段30を介して監視結果を取得してもよい。発注時期決定手段は、取得した予測補充時期及び輸送手段に関する情報に基づいて、発注時期などを決定する。
【0019】
(薬品監視手段)
以下各手段について順に説明する。薬品監視手段20は、薬品に関する監視結果を取得するために、薬品残量取得手段22、吐出量取得手段24及び注入薬品量取得手段26のうちの少なくとも1つを備えている。
【0020】
(薬品残量取得手段)
薬品残量取得手段22は、薬品タンク内の薬品残量を取得する手段である。薬品残量取得手段22は、例えば、薬品タンクに備えられる薬液残量センサや薬液タンクの重量を測定する重量センサとすることができる。
【0021】
(吐出量取得手段)
吐出量取得手段24は、用水への薬品の吐出量を取得する手段である。吐出量取得手段24は、例えば、薬品タンクの薬品の吐出口に備えられる吐出量チェッカとすることができる。
【0022】
(未注入薬品量取得手段)
未注入薬品量取得手段26は、薬品の在庫量も含めて、未注入の薬品の量を取得する手段である。未注入薬品量取得手段26は、例えば、薬品タンクの近傍、又は薬品の在庫が保管されている場所に設置されているカメラや保管されている場所の薬品の重量を測定する重量センサとすることができる。
【0023】
(監視結果)
薬品監視手段20は、前述の各手段が取得した量を、薬品の監視結果として各手段から取得する。そのため、監視結果には、薬品残量取得手段22、吐出量取得手段24及び注入薬品量取得手段26が取得した量のうちの少なくとも一部が含まれる。すなわち、監視結果には、薬品タンク内の薬品残量、用水への薬品の吐出量及び未注入の薬品量のうちの少なくとも一つが含まれる。
【0024】
(補充時期予測手段)
補充時期予測手段30は、薬品監視手段20から、薬品監視手段20が取得した監視結果を取得する。そして、取得した監視結果に基づいて薬品の補充時期を予測する。
【0025】
補充時期予測手段30は、薬品の補充時期を予測する際、監視結果に基づいて薬品の予測使用量を算出することができる。そして、算出した予測使用量を参照しながら、薬品の補充時期を予測することができる。
【0026】
また、補充時期予測手段30は、算出した予測使用量を、外気温の予測データ、水質の年間変動、製造業の年間負荷計画などに基づいて補正することができる。用水の使用量又は薬品の使用量は、外気温によって変動する場合がある。予測使用量を、外気温の予測データに基づいて補正することで、より確度の高い予測使用量を算出することができる。
【0027】
また、補充時期予測手段30は、薬品の過去の使用量を、監視結果に基づいて算出することができる。そして、補充時期予測手段30は、算出された薬品の過去の使用量を、薬品の予測使用量とすることができる。薬品の過去の使用量を薬品の予測使用量とすることで、より実態に即した予測使用量を算出することができる。
【0028】
(発注時期決定手段)
発注時期決定手段40は、補充時期予測手段30から、予測補充時期を取得する。場合によっては、発注時期決定手段40は、補充時期予測手段30から、薬品監視手段20が取得した監視結果を取得してもよい。発注時期決定手段40は、予測補充時期などに基づいて、発注時期などを決定する。以下、具体的に説明する。
【0029】
(輸送手段)
発注時期決定手段40は、排出する二酸化炭素の量を抑制するとの観点から、発注時期などを決定することができる。このような決定をするために、発注時期決定手段40は、情報記憶装置50から、発注時期を決定する際の因子となる各種の情報を取得することが可能である。情報記憶装置50には、薬品の輸送手段についての選択肢、各輸送手段が排出する二酸化炭素の量、及び各輸送手段の輸送速度などが記憶されている。ここで輸送手段とは、例えば、航空機、鉄道、船舶、トラックなど、薬品を輸送しうる種々の手段を含む。
【0030】
発注時期決定手段40は、発注時期などを決定する際に、発送元及び補充先の位置に基づいて、輸送手段の種類や距離を考慮して推奨する発注時期及び輸送手段を決定する。また、発送元及び補充先の位置を考慮する際、例えば下記の因子を考慮することもできる。すなわち、輸送手段の決定及び各輸送手段が排出する二酸化炭素の量の算出においては、輸送拠点間の輸送に加えて、発送元から輸送拠点への輸送、及び輸送拠点から補充先への輸送を考慮することもできる。輸送拠点とは、航空機での輸送で使用する空港、鉄道での輸送で使用する駅、及び船舶での輸送で使用する港などを意味する。これらの輸送拠点と、薬品の発送元又は薬品の補充先との位置関係により、輸送拠点と、発送元又は補充先との間の輸送に要する時間、及び輸送により排出される二酸化炭素の量が変化するためである。
【0031】
さらに、発送元について、種々の選択肢を考慮することができる。例えば、発送元として、薬品の工場、薬品の倉庫、薬品を保管する営業拠点など複数の選択肢が存在する場合がある。このような場合、補充先とこれらの選択肢との位置関係などから、最適な発送元を選択することで、排出する二酸化炭素の量がより少ない輸送手段を決定することができる。
【0032】
(発注時期などの推奨)
発注時期決定手段40は、予測補充時期、薬品の輸送手段についての選択肢、各輸送手段が排出する二酸化炭素の量、及び各輸送手段の輸送速度などに基づいて、薬剤の推奨する発注時期、及び薬剤の推奨する輸送手段を決定する。そして、これらを決定する際、薬品の補充先で薬品が途絶えないことを前提として、薬品の輸送により排出される二酸化炭素の量が最も抑制される発注時期及び輸送手段を決定する。
【0033】
(多段階での提案)
一般的に、航空機での輸送は、鉄道又は船舶での輸送と比較して、輸送速度は速いが、排出される二酸化炭素の量は多い。逆に、鉄道又は船舶での輸送は、航空機での輸送と比較して、輸送速度は遅いが、排出される二酸化炭素の量は少ない。
【0034】
早い時期に発注すると、薬品が到着すべき日までに日数があるため、輸送速度が遅い輸送手段を選択することができる。そして、遅い輸送手段を選択することで、二酸化炭素の排出量を少なくすることができる。これに対して、発注時期が遅くなると、薬品が到着すべき日までの日数が少ないため、輸送速度が速い輸送手段を選択する必要が生じる。そのため、速い輸送手段を選択することで、二酸化炭素の排出量が多くなる。
【0035】
このように、発注時期により、選びうる輸送手段が変化し、それに伴い、二酸化炭素の排出量も変化する。そのため、発注時期決定手段40による、推奨する発注時期及び推奨する輸送手段の決定、並びに決定した内容の薬品の補充先などへの提示は、多段階で行うことが好ましい。
【0036】
ここで、最初に決定された推奨する発注時期を、推奨する第1の発注時期とする。また、最初に決定された推奨する輸送手段を、推奨する第1の輸送手段とする。この推奨する第1の輸送手段は、通常、二酸化炭素の排出量が最も少ない輸送手段となる。
【0037】
発注時期決定手段40は、第1の発注時期に薬品の発注がなかった場合に、推奨する第2の発注時期、及び推奨する第2の輸送手段を決定することができる。この第2の発注時期などは、第1の発注時期に次ぐ次善の案として、排出する二酸化炭素の量を抑制するとの観点から提案される。通常、第2の輸送手段は、第1の輸送手段とは異なる輸送手段となる。
【0038】
具体的には、例えば、船舶での輸送で間に合う時期を第1の発注時期とし、船舶での輸送を第1の輸送手段として決定し、薬品の補充先などへ提示する。そして、第1の発注時期に薬品の発注がなかった場合には、例えば、トラックの輸送で間に合う時期を第2の発注時期とし、トラックでの輸送を第2の輸送手段として決定し、薬品の補充先などへ提示する。第2の輸送手段は、第1の輸送手段に比べて輸送速度が速く、輸送に要する日数が少なくなる。ただし、第2の輸送手段での輸送は、第1の輸送手段での輸送よりも、排出する二酸化炭素の量が多くなる。
【0039】
(補充先への事前説明)
また、多段階で補充先への提示を行うことについて、あらかじめ、補充先にその趣旨を説明しておくことも有効である。すなわち、早く発注することは薬品が早く配達されることを意味するのではない。早く発注する場合と、遅く発注する場合とで、薬品が配達される日は同じである。ただし、早く発注することで、二酸化酸素の排出量を抑制することができる旨を補充先に説明しておく。
【0040】
(安全在庫数の考慮)
発注時期決定手段40は、薬品の補充先の安全在庫数に基づいて、第1の発注時期などの発注時期及びその発注の際の好ましい補充数を決定することができる。ここで、安全在庫数とは、現在の在庫数に補充数を加え、そこから翌週の予測使用数を減じた数を意味する。すなわち、「安全在庫数=現在の在庫数+補充数-翌週の予測使用数」である。
【0041】
発注時期決定手段40は、薬品監視手段20が取得した監視結果を取得することができる。この監視結果の中には在庫数の情報も含まれている。そこで、発注時期決定手段40は、薬品の補充先の安全在庫数を加味して、推奨する発注時期及び推奨する輸送手段を決定することができる。特には、発注時期決定手段40は、安全在庫数を加味して、推奨する第1の発注時期及び推奨する第1の輸送手段を決定することができる。これにより、二酸化炭素の排出量を抑制しながら、薬品の補充先の在庫数をより適切に保つことができる。
【0042】
(二酸化炭素の排出量の算出)
発注時期決定手段40は、決定した輸送手段で薬品を輸送した場合に排出される二酸化炭素の量を算出することができる。また、算出した二酸化炭素の量を薬品の補充先に提示することができる。二酸化炭素の量を補充先に提示することで、補充先は、自らの発注行為に起因して排出される二酸化酸素の量を容易に把握することができる。
【0043】
(二酸化炭素の排出量の比較)
発注時期決定手段40は、第1の発注時期及び第1の輸送手段などに加えて、次善の発注時期及び次善の輸送手段を決定することができる。そして、決定した次善の発注時期及び次善の輸送手段を、第1の発注時期及び第1の輸送手段などと共に、薬品の補充先などに提示することができる。
【0044】
また、次善の発注時期などを補充先に提示する際、第1の輸送手段などによって薬品を輸送した場合に排出される二酸化炭素の量と、次善の輸送手段によって薬品を輸送した場合に排出される二酸化炭素の量との差を算出し、その差を補充先などに提示してもよい。
【0045】
補充先などへの提示は、例えば下記のような内容が考えられる。すなわち、第1の発注時期に発注すると第1の輸送手段は船舶であり、船舶で薬品を輸送した場合に排出される二酸化炭素の量はAである。これに対して、第1の発注時期よりも遅い次善の発注時期に発注すると、次善の輸送手段はトラックになる。トラックで薬品を輸送した場合に排出される二酸化炭素の量は、Aよりも多いBになる。Bは、AよりもCだけ多い。
【0046】
前述のような内容を、補充先などへ視覚的に提示してもよい。このように、推奨する発注時期などを、次善の発注時期などの比較対象と共に提示し、それらの差異を示すことで、より説得的な提案をすることができる。
【0047】
(実施の例)
以下、前述の実施形態に基づいたより具体的な一実施例を説明する。例えば、クラウドなどに管理装置を設置する。また、薬品の補充先の工場には、薬注システムが備えられている。薬注システムは、薬品の残量計測手段(薬品残量取得手段22)及び薬品の使用量計測手段(吐出量取得手段24)を備えている。薬品残量(L)と、薬品使用量(L/日)から、あらかじめ管理装置に設定した残量下限値(L)を下回り、残量不足となるまでの予測日数が演算される(補充時期予測手段30)。
【0048】
管理装置内に記憶させた輸送手段毎のリードタイムと残量不足までの予測日数とを比較し、残量不足を回避できる範囲で、最も二酸化炭素排出原単位が低い輸送手段と個数を決定する(発注時期決定手段40)。薬品の発注は、補充先にゆだねる。ただし、薬品の補充は、自動補充されるようにすることもできる。
【0049】
薬品の残量及び薬品使用量測定方法として、アナログ式残量センサ(薬品残量取得手段22)、吐出量チェッカ(薬品残量は計算値とすることもできる。吐出量取得手段24)、及び外部カメラ(未注入薬品量取得手段26)などの手段が備えられていてもよい。
【0050】
管理装置には、輸送手段として、トラック、船舶、鉄道、航空機のうちの少なくとも2つが登録されている。発注時期決定手段40は、登録されている輸送手段の中から選択することで推奨する輸送手段を決定する。
【0051】
薬品使用量は、例えば過去7日間などの所定期間における薬品残量の変化から算出することができる。算出される薬品残量の精度を高めるために、例えば気象庁などが提供する外気温予測データから今後の負荷変動を予想し、薬品の使用量を補正して計算しても良い。また、同一のユーザの同一の薬品タンクの過去の使用量の履歴を、薬品使用量の予測値として用いても良い。
【0052】
以上のような薬品発注システム10を採用すると、工場在庫を最小限にしながら、二酸化炭素の排出量の低い輸送手段で薬品を輸送することができる。言い換えると、薬注タンクの薬品を切らさない前提で、かつ在庫を最小限として、工場での低炭素負荷を優先した輸送手段の選択が可能になる薬品発注方法が提供される。これにより、例えば、工場負荷の高い時期にはトラックを薬品の輸送手段として採用し、工場負荷の低い時期には船や鉄道を薬品の輸送手段として採用することが容易になる。それにより、薬品補充に支障をきたさない範囲で、可能な限り低炭素負荷の薬品の輸送が可能となる。すなわち、薬品発注システム10は、低炭素社会の実現に貢献する薬品発注を提案することができる。
【0053】
(処理のフロー)
図2に基づいて、薬品発注システムにおいて薬品が輸送されるまでの処理のフローについて、その一例を説明する。
図2及び以下の説明において、S1はステップ1を示し、S2はステップ2を示す。他のステップについても同様である。
【0054】
(S1)
S1で処理のフローが開始する。
(S2)
S2で、薬品監視手段20が薬品についての監視結果を取得する。
(S3)
S3で、補充時期予測手段30が、薬品監視手段20から監視結果を取得する。補充時期予測手段30は、取得した監視結果に基づいて、補充時期を予測する。
【0055】
(S4)
S4で、発注時期決定手段40が、補充時期予測手段30から、予測補充時期を取得する。発注時期決定手段40は、取得した予測補充時期などに基づいて、推奨する第1の発注時期及び推奨する第1の輸送手段を決定する。決定された発注時期及び輸送手段は、補充先に示される。第1の輸送手段は、例えば、二酸化炭素の排出量が少ない船舶とされる。
【0056】
(S5)
S5において、第1の発注時期の期間内に補充先が薬品を発注した場合には、S11に進む。
(S11)
S11において、S4で決定された第1の輸送手段で薬品が輸送される。S11の後、フローはS13に進み、処理のフローは終了する。この場合、薬品が第1の輸送手段で輸送されるため、輸送によって排出される二酸化炭素の量を最小限に抑制することができる。
【0057】
(S6)
S5において、第1の発注時期の期間内に補充先が薬品を発注しない場合には、S6に進む。S6では、S2と同様に、薬品監視手段20が薬品についての監視結果を取得する。
(S7)
S7では、S3と同様に、補充時期予測手段30が補充時期を予測する。S7では、第1の発注時期が経過した後の薬品の使用状況などを加味して、新たに補充時期が予測される。
【0058】
(S8)
S8では、第1の発注時期が過ぎた後、一定期間経過後に、推奨する第2の発注時期及び推奨する第2の輸送手段が決定される。S8での決定は、S7で予測された補充時期に基づいて行われる。
【0059】
第2の輸送手段は、第1の輸送手段よりも、輸送速度が速いのが通常である。また、第2の輸送手段は、第1の輸送手段よりも、輸送手段から排出される二酸化炭素の量が多いのが通常である。第2の輸送手段は、例えばトラックとされる。
【0060】
また、一定期間経過後とは、第2の輸送手段で薬品を輸送した場合に、補充先の薬品が枯渇しないような発注時期を設定することができるとき、との意味である。別の表現をすると、二酸化炭素排出が少ない新たな輸送手段が選べるときが来た時にともいえる。前述のように、第2の輸送手段は第1の輸送手段よりも輸送速度が速い。そのため、発注時期をより遅い時期に設定することができる。したがって、発注時期の決定も、より遅いときにすることができる。
【0061】
(S9)
S9において、第2の発注時期の期間内に補充先が薬品を発注した場合には、S12に進む。
(S12)
S12において、S8で決定された第2の輸送手段で薬品が輸送される。S12の後、S13に進み、処理のフローは終了する。この場合、薬品が第2の輸送手段で輸送されるため、第1の輸送手段で輸送された場合に比べて、輸送手段から排出される二酸化炭素の量は増加する。しかし、S10で後に説明する第3の輸送手段で輸送される場合に比べると、輸送によって排出される二酸化炭素の量は抑制されることが一般である。S12の後、フローはS13に進み、処理のフローは終了する。
【0062】
(S10)
S9において、第2の発注時期の期間内に補充先が薬品を発注しない場合には、S10進む。S10では、一定期間経過後に、第3の輸送手段で薬品が輸送される。第3の輸送手段は、第2の輸送手段よりも、輸送速度が速いのが通常である。また、第3の輸送手段は、第2の輸送手段よりも、輸送手段が排出する二酸化炭素の量が多いのが通常である。第3の輸送手段は、例えば航空機とされる。
【0063】
また、一定期間経過後とは、第3の輸送手段で薬品を輸送した場合に、補充先の薬品が枯渇しないような発注時期を設定することができるとき、との意味である。前述のように、第3の輸送手段は第2の輸送手段よりも輸送速度が速い。そのため、発注時期をより遅い時期に設定することができる。したがって、発注時期の決定も、より遅いときにすることができる。
【0064】
S12の後、フローはS13に進み、処理のフローは終了する。
【0065】
なお、
図2に示すフローでは、S10において、補充先の発注なしに第3の輸送手段で薬品を輸送している。これは、補充先での薬品の枯渇を防止するためである。薬品発注システムにおいては、S10のように補充先の発注なしに薬品を輸送することはせず、補充先の発注をまって薬品を輸送するようにすることもできる。
【0066】
また、発注時期を多段階で提案する場合、例えばこの発注時期に発注しないと薬品の枯渇が生じるときには、その旨の警告を補充先に伝えるようにすることもできる。
【0067】
なお、以上の説明は、薬品発注システムの一例であり、薬品発注システムには、種々の変更が可能である。
【0068】
例えば、推奨する発注時期の決定及び補充先への提示は、二酸化炭素排出が少ない輸送手段が選べるときが来た時とすることができる。ただし、薬品の消費量が急増したときなど、通常とは異なる状況が把握された場合には、別途、新たな発注時期の決定及び補充先への提示をすることもできる。
【0069】
また、
図2に基づく処理のフローでは、第1の発注時期に発注するか否かの判断を補充先にゆだねていた(S5)。第1の発注時期に発注するか否かの判断を補充先にはゆだねず、自動的に輸送されるようにすることもできる。すなわち、薬品発注システムを、自動薬品発注システムにすることもできる。この場合、二酸化炭素の排出量が最も抑制された薬品の輸送が可能になる。
【0070】
また、補充先に発注時期などを提示する際に、二酸化炭素の排出量などに加えて、輸送に要する運賃などを併せて提示することもできる。
【符号の説明】
【0071】
10 薬品発注システム
20 薬品監視手段
22 薬品残量取得手段(薬液残量センサ)
24 吐出量取得手段(吐出量チェッカ)
26 未注入薬品量取得手段(カメラ)
30 補充時期予測手段
40 発注時期決定手段
50 情報記憶装置