(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086767
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及び加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/03 20060101AFI20240621BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20240621BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20240621BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B23K26/03
B23K26/067
B23K26/08 D
H01L21/78 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059738
(22)【出願日】2024-04-02
(62)【分割の表示】P 2020018880の分割
【原出願日】2020-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(72)【発明者】
【氏名】大窪 政秀
(57)【要約】
【課題】生産性の向上を実現し得るレーザ加工装置及び加工方法を提供する。
【解決手段】被加工物(W)の加工ラインに対してレーザ光を照射するレーザ光照射部(12)、被加工物とレーザ光照射部とを相対移動させる相対移動部(14)、第一方向への相対移動においてレーザ光の集光位置(Lc)の被加工物のエッジ(WB)の通過を検出する検出部、第一加工ラインから第二加工ラインへの相対移動に適用される指令信号を相対移動部へ送信する移動制御部、第二加工ラインの加工の際に、第一方向への相対移動を開始する第二方向におけるレーザ光の集光位置の移動開始位置を算出する移動開始位置算出部を備え、移動開始位置算出部は、レーザ光の集光位置が被加工物の内部からエッジに到達した際に、加工ラインごとに、前記移動開始位置を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に沿う複数の加工ラインが、前記第一方向と直交する第二方向に沿って設定される被加工物の前記加工ラインに対してレーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記第一方向及び前記第二方向について、前記被加工物と前記レーザ光照射部とを相対移動させる相対移動部と、
前記第一方向への前記相対移動において、前記レーザ光の集光位置の前記被加工物のエッジの通過を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき、第一加工ラインから第二加工ラインへの前記相対移動に適用される指令信号を前記相対移動部へ送信する移動制御部と、
前記第二加工ラインの加工の際に、前記第一方向への前記相対移動を開始する前記第二方向における前記レーザ光の集光位置の移動開始位置を算出する移動開始位置算出部と、
を備え、
前記移動開始位置算出部は、レーザ光の集光位置が被加工物の内部からエッジに到達した際に、加工ラインごとに、前記移動開始位置を算出するレーザ加工装置。
【請求項2】
前記移動開始位置算出部は、前記第一方向における前記相対移動の加速度、移動速度及び移動距離に基づき、前記第一方向における前記相対移動を実施して前記レーザ光の集光位置が前記被加工物の第一エッジから前記被加工物の外部へ移動し、前記被加工物の外部から前記被加工物の第二エッジへ移動する期間を算出し、前記第二方向における前記相対移動の加速度、移動速度及び移動距離に基づき、前記第二方向における前記相対移動を実施して前記レーザ光の集光位置が前記第一加工ラインから前記第二加工ラインへ移動する期間を算出し、前記算出の結果を用いて前記移動開始位置を算出する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記第一方向の前記相対移動における相対移動距離を表すエンコーダ信号を出力するエンコーダを備え、
前記相対移動距離に基づき前記レーザ光の集光位置の前記被加工物のエッジの通過を検出する請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記被加工物に対する前記レーザ光の集光位置の位置を検出するセンサを備え、前記センサから出力されるセンサ信号に基づき前記レーザ光の集光位置の前記被加工物のエッジの通過を検出する請求項1から3のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記レーザ光照射部は、複数のレーザ光を前記第一方向について離された複数の位置のそれぞれに照射させ、
前記検出部は、
先行する前記レーザ光の前記被加工物のエッジの通過を検出する際の後続する前記レーザ光の前記第一方向における集光位置を特定し、
前記被加工物のエッジから前記特定された前記後続する前記レーザ光の集光位置までの距離、及び前記被加工物と前記後続する前記レーザ光の照射位置との相対速度に基づき、前記先行する前記レーザ光の前記被加工物のエッジの通過から前記後続する前記レーザ光の前記被加工物のエッジの通過までの期間を算出し、
前記算出された期間に基づき、前記後続する前記レーザ光の前記被加工物のエッジの通過を検出する請求項1から4のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
第一方向に沿う複数の加工ラインが、前記第一方向と直交する第二方向に沿って設定される被加工物と、前記被加工物の前記加工ラインに対してレーザ光を照射するレーザ光照射部とを、前記第一方向及び前記第二方向について相対移動させて、前記被加工物を加工する加工方法であって、
前記第一方向への前記相対移動において、前記レーザ光の集光位置の前記被加工物のエッジの通過を検出する検出工程と、
前記検出工程における検出結果に基づく第一加工ラインから第二加工ラインへの相対移動に適用される指令信号に基づき、前記相対移動を実施する相対移動工程と、
前記第二加工ラインの加工の際に、前記第一方向への前記相対移動を開始する前記第二方向における前記レーザ光の集光位置の移動開始位置を算出する移動開始位置算出工程であり、レーザ光の集光位置が被加工物の内部からエッジに到達した際に、加工ラインごとに、前記移動開始位置を算出する移動開始位置算出工程と、
を含む加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工装置及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物に対してレーザ光を照射して、被加工物の加工を行うレーザ加工装置が知られている。レーザ加工装置は、被加工物を支持するテーブル及び被加工物に対して照射するレーザ光を発生させるレーザ光照射部を備える。レーザ加工装置は、被加工物とレーザ光照射部とをX軸方向及びY軸方向について相対移動をさせ、被加工物の加工ラインに対する加工を実施する。
【0003】
レーザ加工装置は、生産性を向上し得る加工制御が望まれている。生産性向上の実現に際し、加工の際のレーザ光と被加工物との相対移動方向であるX軸方向の移動速度を相対的に上げる対応が考えられるが、移動速度を相対的に上げた場合、加速期間及び減速期間が相対的に長くなり、期待したほど生産性向上が見込まれない。なお、本明細書における速度という用語は、速度の大きさを表す速さの意味を含み得る。
【0004】
また、X軸方向の加速度を相対的に上げる対応が考えられるが、被加工物を支持するステージの姿勢の変化や装置の振動等が発生し、安定的な加工品質が得られないという懸念がある。なお、ここでいう加速度は、負の加速度として表される減速度が含まれ得る。
【0005】
更に、X軸方向と直交するY軸方向に沿って並ぶ複数の加工ラインを順に加工する際に、Y軸方向に沿う次の加工ラインへの移動における移動速度及び加速度を相対的に上げる対応が考えられるが、装置の振動等の発生に起因して、位置決めが完了するまでの期間が相対的に長くなるという懸念がある。
【0006】
そうすると、ステージの姿勢の変化及び装置の振動が発生しない条件において、X軸方向及びY軸方向の移動速度及び加速度を大きくしなければ、生産性の向上は困難である。
【0007】
特許文献1は、ウエハの分割予定ラインに対してレーザ光を照射して加工を行うレーザ加工装置が記載されている。同文献に記載の装置は、加工送りの停止に要する減速の期間を利用して、割り出し送りを実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、一般的な加工制御では、被加工物の内部では等速の移動速度を適用してレーザ光を走査させる必要があり、停止から移動速度へ到達するまでの加速期間及び移動速度から停止までの減速期間において、被加工物の外部におけるレーザ光と被加工物との相対移動が発生する。
【0010】
更に、加工を開始する際に、各加工ラインの加工開始位置へのX軸方向及びY軸方向の移動完了を待って加工が開始されるので、X軸方向及びY軸方向の移動完了までの期間は加工を開始することができない。
【0011】
すなわち、被加工物に対してレーザ光を照射する期間だけでなく、被加工物の外部におけるレーザ光と被加工物との相対移動期間並びにX軸方向及びY軸方向の移動完了待ちの期間が発生し、これらの期間は生産性向上を阻害する要因となっている。
【0012】
特許文献1は、加工送りの停止に要する減速の期間を利用して割り出し送りを動作させる際の、ウエハの検出、加工送り制御及び割り出し送り制御等、加工送りの停止に要する減速の期間を利用する割り出し送りを実施する際の具体的な条件を開示していない。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、生産性の向上を実現し得るレーザ加工装置及び加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0015】
第1態様に係るレーザ加工装置は、第一方向に沿う複数の加工ラインが、第一方向と直交する第二方向に沿って設定される被加工物の加工ラインに対してレーザ光を照射するレーザ光照射部と、第一方向及び第二方向について、被加工物とレーザ光照射部とを相対移動させる相対移動部と、第一方向への相対移動において、レーザ光の集光位置の被加工物のエッジの通過を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づき、第一加工ラインから第二加工ラインへの相対移動に適用される指令信号を相対移動部へ送信する移動制御部と、を備え、移動制御部は、第一加工ラインの加工における第一方向への相対移動において、レーザ光の集光位置が被加工物の内部から被加工物の第一エッジを通過する以後に、第二方向について第一加工ラインから第二加工ラインへの相対移動を開始させる第二方向指令を相対移動部へ送信し、更に第二方向への相対移動が完了するまでに、第二加工ラインの加工においてレーザ光の集光位置が被加工物の外部から被加工物の第二エッジへ移動する第一方向における相対移動を完了させる第一方向指令を相対移動部へ送信するレーザ加工装置である。
【0016】
第1態様によれば、第一加工ラインから第二加工ラインへの相対移動を実施する際に、第一方向への相対移動の完了以前に第二方向への相対移動を開始させ、第二方向への相対移動中に第一方向への相対移動を実施する。これにより、第一方向への相対移動の完了待ち、及び第二方向への相対移動完了待ちが発生せず、生産性の向上を実現し得る。
【0017】
相対移動は、第一方向を第一軸とし、第二方向を第二軸とする二次元直交座標系を適用し得る。二次元直交座標系の一例として、XY直交座標系が挙げられる。
【0018】
相対移動は、固定されるレーザ光照射部に対して被加工物を移動させる態様、固定される被加工物に対してレーザ光照射部を移動させる態様及びレーザ光照射部と被加工物との両者を移動させる態様のいずれも適用可能である。
【0019】
第2態様は、第1態様のレーザ加工装置において、第二加工ラインの加工の際に、第一方向への相対移動を開始する第二方向におけるレーザ光の集光位置の移動開始位置を算出する移動開始位置算出部を備え、移動制御部は、第二方向への相対移動の実施中にレーザ光の集光位置が移動開始位置へ到達した際に、第二加工ラインの加工における第一方向への相対移動を開始させる第二方向指令を相対移動部へ送信する。
【0020】
第2態様によれば、第一加工ラインの加工を完了し、第二加工ラインの加工を実施する際に、第二方向への相対移動中にレーザ光の集光位置が移動開始位置へ達した際に、第一方向への相対移動を開始し得る。
【0021】
第3態様は、第2態様のレーザ加工装置において、移動開始位置算出部は、第一方向における相対移動の加速度、移動速度及び移動距離に基づき、第一方向における相対移動を実施してレーザ光の集光位置が第一エッジから被加工物の外部へ移動し、被加工物の外部から第二エッジへ移動する期間を算出し、第二方向における相対移動の加速度、移動速度及び移動距離に基づき、第二方向における相対移動を実施してレーザ光の集光位置が第一加工ラインから第二加工ラインへ移動する期間を算出し、算出の結果を用いて移動開始位置を算出する。
【0022】
第3態様によれば、第一方向の駆動制御パラメータ及び第二方向の駆動制御パラメータを用いて、移動開始位置を算出し得る。
【0023】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか一態様のレーザ加工装置において、移動制御部は、第一加工ラインの加工における第一方向への相対移動を実施してレーザ光の集光位置が被加工物の内部から被加工物の第一エッジの通過した以後に、被加工物の外部の位置において第一方向への相対移動を停止させる第一方向指令を相対移動部へ送信する。
【0024】
第4態様によれば、第二方向への相対移動中に、第一方向への相対移動を停止させ、更に、第一方向への相対移動の開始を実施し得る。
【0025】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか一態様のレーザ加工装置において、検出部は、第一方向の相対移動における相対移動距離を表すエンコーダ信号を出力するエンコーダを備え、相対移動距離に基づきレーザ光の集光位置の被加工物のエッジの通過を検出する。
【0026】
第5態様によれば、第一加工ラインから第二加工ラインへの相対移動において、各加工ラインへの加工を実施する際の第一方向への相対移動と同様の位置決め精度を適用し得る。
【0027】
第6態様は、第1態様から第4態様のいずれか一態様のレーザ加工装置において、検出部は、被加工物に対するレーザ光の集光位置の位置を検出するセンサを備え、センサから出力されるセンサ信号に基づきレーザ光の集光位置の被加工物のエッジの通過を検出する。
【0028】
第6態様によれば、被加工物に対するレーザ光の集光位置の検出において、相対搬送の影響を抑制し得る。
【0029】
センサは光電変換素子を備えた光学センサ及び撮影素子を備えた撮影装置等を適用し得る。センサ信号は、撮影装置を用いて生成される撮影画像を表す画像信号を含み得る。
【0030】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか一態様のレーザ加工装置において、レーザ光照射部は、複数のレーザ光を第一方向について離された複数の位置のそれぞれに照射させ、検出部は、第一方向において先行するレーザ光の被加工物のエッジの通過を検出し、先行するレーザ光の集光位置の被加工物のエッジの通過から後続するレーザ光の集光位置の被加工物のエッジの通過までの期間を複数のレーザ光の集光位置の間の第一方向における距離を算出し、算出された複数のレーザ光の集光位置の間の第一方向における距離に基づき、後続するレーザ光の被加工物のエッジの通過を検出する。
【0031】
第7態様によれば、複数のレーザ光を照射させる態様において、先行するレーザ光の集光位置と後続するレーザ光の集光位置との距離に基づき、先行するレーザ光の集光位置の検出結果から後続するレーザ光の集光位置を把握し得る。
【0032】
複数のレーザ光を照射させる態様は、複数のレーザ発振器を備え、複数のレーザ発振器のそれぞれに集光光学系を備える態様、一つのレーザ発振器及びレーザ光を分岐させる光学素子を備え、分岐させたレーザ光のそれぞれに集光光学系を備える態様のいずれも含み得る。
【0033】
第8態様に係る加工方法は、第一方向に沿う複数の加工ラインが、第一方向と直交する第二方向に沿って設定される被加工物と、被加工物の加工ラインに対してレーザ光を照射するレーザ光照射部とを、第一方向及び第二方向について相対移動させて、被加工物を加工する加工方法であって、第一方向への相対移動において、レーザ光の集光位置の被加工物のエッジの通過を検出する検出工程と、第一加工ラインの加工における第一方向への相対移動において、レーザ光の集光位置が被加工物の内部から被加工物の第一エッジを通過する以後に、第二方向について第一加工ラインから第二加工ラインへの相対移動を開始させる第二方向指令に基づき第二方向への相対移動を実施し、更に第二方向への相対移動が完了するまでに、第二加工ラインの加工においてレーザ光の集光位置が被加工物の外部から被加工物の第二エッジへ移動する第一方向における相対移動を完了させる第一方向指令に基づき第一方向への相対移動を実施する相対移動工程と、を含む加工方法である。
【0034】
第8態様によれば、第1態様と同様の効果を得ることができる。
【0035】
第8態様において、第2態様から第7態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、レーザ加工装置において特定される処理や機能を担う構成要素は、これに対応する処理や機能を担う加工方法の構成要素として把握することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、第一加工ラインから第二加工ラインへの相対移動を実施する際に、第一方向への相対移動の完了以前に第二方向への相対移動を開始させ、第二方向への相対移動中に第一方向への相対移動を実施する。これにより、第一方向への相対移動の完了待ち、及び第二方向への相対移動完了待ちが発生せず、生産性の向上を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は第一実施形態に係るレーザ加工装置の全体構成図である。
【
図2】
図2は
図1に示すレーザ加工装置の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は第一実施形態に係る加工方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は第二実施形態に係るレーザ加工装置の全体構成図である。
【
図6】
図6は
図5に示すレーザ加工装置の機能ブロック図である。
【
図7】
図7は第一変形例に係るレーザ加工装置の全体構成図である。
【
図8】
図8は第二変形例に係るレーザ加工装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0039】
[第一実施形態]
〔レーザ加工装置の全体構成〕
図1は実施形態に係るレーザ加工装置の全体構成図である。同図に示すレーザ加工装置10は、ウエハWの内部WAに設定される加工ラインに沿ってレーザ光を照射し、加工ラインに沿ってウエハWの内部WAに切断の起点となるレーザ加工領域を形成するレーザダイシング装置である。
【0040】
レーザ加工装置10は、レーザ照射装置12及びXYテーブル14を備える。レーザ照射装置12は、レーザ発振器20及び集光光学系22を備える。レーザ照射装置12はレーザエンジンと呼ばれる場合があり得る。
【0041】
レーザ照射装置12は、Z軸駆動部を用いてZ軸方向について移動可能に支持される。Z軸駆動部は、Z軸駆動機構及びZ軸モータを備える。Z軸モータはエンコーダを備える。Z軸駆動部は、Z軸方向についてレーザ照射装置12を移動させて、レーザ照射装置12とウエハWとのZ軸方向における距離を調整する。
【0042】
なお、
図1ではZ軸駆動部の図示を省略する。Z軸駆動部は、符号36を用いて
図2に図示する。また、Z軸モータのエンコーダは、符号38を用いて
図2に図示する。
【0043】
レーザ発振器20は、レーザ光Laを出力する。レーザ光Laの例として、パルス幅が500ナノ秒、集光位置Lcにおけるピークパワー密度が1.8×108ワット毎平方センチメートル、波長が1080ナノメートルのパルスレーザ光が挙げられる。集光位置Lcにおけるピークパワー密度は、平均出力が5.0ワット、繰り返し周波数が200キロヘルツ、集光位置Lcにおけるレーザ光Laの直径が6.0マイクロメートルの場合の例である。なお、レーザ光Laは連続波レーザ光を適用してもよい。
【0044】
レーザ発振器20から出力されたレーザ光Laは、集光光学系22へ入射する。集光光学系22は、集光レンズを備える。集光レンズは、集光位置Lcにレーザ光Laを集光させる。集光光学系22は、光学フィルタ、コリメートレンズ及びミラー等の光学部材を適宜備え得る。なお、
図1に示す矢印線はレーザ光Laの進行方向を示す。実施形態に記載のレーザ照射装置12はレーザ光照射部の一例に相当する。
【0045】
XYテーブル14は、レーザ加工装置10のベースに取り付けられる。XYテーブル14は、X軸駆動部30及びY軸駆動部32を備える。なお、レーザ加工装置10のベースの図示は省略する。
【0046】
X軸駆動部30は、吸着テーブル31の支持面34にウエハWを吸着支持し、ウエハWをX軸方向へ移動させる。X軸駆動部30は、吸着テーブル31、X軸駆動機構及びX軸モータを備える。X軸モータはエンコーダを備える。
【0047】
なお、X軸駆動機構及びX軸モータの図示を省略する。また、
図1ではX軸モータのエンコーダの図示を省略する。X軸モータのエンコーダは、符号38を用いて
図2に図示する。
【0048】
吸着テーブル31は、支持面34にウエハWを吸着支持する。吸着テーブル31はX軸駆動機構と連結される。X軸駆動機構はX軸モータが連結される。X軸モータを動作させると、吸着テーブル31の支持面34に吸着支持されるウエハWはX軸方向へ移動する。
【0049】
Y軸駆動部32は、吸着テーブル31の支持面34に吸着支持されたウエハWをY軸方向へ移動させる。Y軸駆動部32は、Y軸駆動機構及びY軸モータを備える。Y軸モータはエンコーダが取り付けられる。
【0050】
なお、Y軸駆動機構及びY軸モータの図示を省略する。また、
図1ではY軸モータのエンコーダの図示を省略する。Y軸モータのエンコーダは、符号38を用いて
図2に図示する。
図1ではY軸方向の図示を省略する。Y軸方向は
図1の紙面を貫く方向である。
【0051】
本実施形態では、Z軸駆動部を用いてレーザ照射装置12を支持し、Z軸方向についてレーザ照射装置12を移動させる態様を例示したが、レーザ照射装置12を固定支持し、XYテーブル14がZ軸駆動部を具備するXYZテーブルとして構成され、XYZテーブルを用いてウエハWをZ軸について移動させてもよい。
【0052】
また、Y軸駆動及びZ軸駆動部を用いてレーザ照射装置12を支持し、レーザ照射装置12をY軸方向及びZ軸方向について移動させ、かつ、XYテーブル14がX軸駆動部を具備するXテーブルとして構成され、ウエハWをX軸方向について移動させてもよい。
【0053】
すなわち、X軸駆動部30、Y軸駆動部32及びZ軸駆動部は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれについて、レーザ照射装置12とウエハWとの相対移動を可能に構成される。更に、XYテーブル14は、吸着テーブル31の支持面34と平行な面において、ウエハWを回転させるθ軸駆動部を具備してもよい。
【0054】
なお、実施形態に記載のX軸方向は第一方向の一例に相当する。実施形態に記載のY軸方向は第一方向と直交する第二方向の一例に相当する。実施形態に記載のXYテーブル14は相対移動部の一例に相当する。
【0055】
〔レーザ加工装置の機能ブロック〕
図2は
図1に示すレーザ加工装置の機能ブロック図である。レーザ加工装置10は制御部40を備える。制御部40はコンピュータが適用される。制御部40は、以下に説明するハードウェアを用いて、規定のプログラムを実行してレーザ加工装置10の機能を実現する。
【0056】
制御部40を構成する各部のハードウェアは、各種のプロセッサ及び各種のメモリを適用し得る。プロセッサの例として、CPU(Central Processing Unit)が挙げられる。CPUはプログラムを実行して各種処理部として機能する。メモリの例として、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)が挙げられる。
【0057】
制御部40は、X軸制御部42、Y軸制御部44及びZ軸制御部46を備える。X軸制御部42は、X軸制御パラメータを適用してX軸駆動部30の動作を制御する。また、X軸制御部42はX軸駆動部30から送信されるX軸移動完了信号を受信する。X軸移動完了信号は、X軸駆動部30の規定位置への移動完了を表す。
【0058】
Y軸制御部44は、Y軸制御パラメータを適用してY軸駆動部32の動作を制御する。また、Y軸制御部44はY軸駆動部32から送信されるY軸移動完了信号を受信する。Y軸移動完了信号は、Y軸駆動部32の規定位置への移動完了を表す。
【0059】
Z軸制御部46は、Z軸制御パラメータを適用してZ軸駆動部36の動作を制御する。また、Z軸制御部46はZ軸駆動部36から送信されるZ軸移動完了信号を受信する。Z軸移動完了信号は、Z軸駆動部36の移動完了を表す。
【0060】
なお、実施形態に記載のX軸制御部42及びY軸制御部44は移動制御部の構成要素の一例に相当する。
【0061】
制御部40は、ウエハ情報取得部50、加工条件設定部52、座標設定部54及び駆動制御パラメータ設定部56を備える。
【0062】
ウエハ情報取得部50は、ウエハWに形成される加工ラインの位置情報を含むウエハ情報を取得する。ウエハ情報はウエハWのサイズ等の情報を含み得る。ウエハ情報取得部50は、通信インターフェース等の入力インターフェース58を介して、加工対象のウエハWにおけるウエハ情報を取得し得る。
【0063】
加工条件設定部52は、ウエハ情報取得部50を用いて取得したウエハ情報に基づき、加工対象のウエハWにおける加工条件を設定する。加工条件はレーザ光Laのパルス幅等のレーザ光Laの条件が含まれ得る。
【0064】
座標設定部54は、加工対象のウエハWに対して、吸着テーブル31の支持面34に規定されるXY座標系を設定する。座標設定部54は、加工対象のウエハWについて、三点以上のエッジの座標値を取得し、ウエハWの中心位置の座標値及びウエハWエッジの座標値等を規定する。加工対象のウエハWにおける加工ラインは、吸着テーブル31の支持面34に規定されるXY座標系の座標値を用いて表される。
【0065】
レーザ照射装置12とウエハWとを相対移動させる際に、レーザ照射装置12から照射されるレーザ光Laの集光位置Lcは、ウエハWに設定されるXY座標系の座標値が適用され、X軸座標値及びY軸座標値を用いて表される。
【0066】
駆動制御パラメータ設定部56は、加工対象のウエハWのウエハ情報及び加工条件に基づき、X軸制御パラメータ、Y軸制御パラメータ及びZ軸制御パラメータを設定する。各軸の制御パラメータは、各軸の加減速度、移動速度、移動期間、移動距離、加速期間、減速期間、加速距離、等速距離及び減速距離等が含まれ得る。ウエハ情報の例として、ウエハWの直径が挙げられる。加工条件の例として、インデックスサイズが挙げられる。
【0067】
例えば、加減速度及び移動速度を固定値として、ウエハ情報及び加工条件等を参照して、他のパラメータ値を算出する態様を採用し得る。
【0068】
駆動制御パラメータ設定部56は各軸の制御パラメータが記憶される制御パラメータ記憶部から、各軸の制御パラメータを読み出してもよい。
【0069】
駆動制御パラメータ設定部56は、X軸制御パラメータをX軸制御部42へ送信する。同様に、駆動制御パラメータ設定部56は、Y軸制御パラメータをY軸制御部44へ送信する。駆動制御パラメータ設定部56は、Z軸制御パラメータをZ軸制御部46へ送信する。
【0070】
制御部40は、レーザ照射制御部60を備える。レーザ照射制御部60は、加工条件設定部52を用いて設定された加工条件からレーザ光Laの条件を取得し、レーザ照射装置12の制御パラメータを設定する。レーザ照射制御部60は制御パラメータに基づきレーザ照射装置12を制御する。
【0071】
レーザ照射制御部60は、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの内部WAに位置する期間はレーザ光Laの照射をオンとし、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの外部に位置する期間はレーザ光Laの照射をオフとする。
【0072】
レーザ照射制御部60は、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの外部からエッジWBへ到達する直前にレーザ光Laの照射をオンとし、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの内部WAからエッジWBへ到達した直後にレーザ光Laの照射をオフとしてもよい。
【0073】
制御部40は、エンコーダ信号処理部70及び移動パラメータ算出部72を備える。エンコーダ信号処理部70はエンコーダ38から出力されるエンコーダ信号を取得し、エンコーダ信号に基づきレーザ光Laの集光位置LcのX軸座標値及びY軸座標値を算出する。
図2に示すエンコーダ38は、X軸モータのエンコーダ、Y軸モータのエンコーダ及びZ軸モータのエンコーダが含まれる。
【0074】
なお、実施形態に記載のエンコーダ38及びエンコーダ信号処理部70は検出部の構成要素の一例に相当する。実施形態に記載のエンコーダ38は第一方向の相対移動距離を表すエンコーダ信号を出力するエンコーダの一例に相当する。実施形態に記載のレーザ光Laの集光位置LcのX軸座標値及びY軸座標値は検出結果の一例に相当する。
【0075】
移動パラメータ算出部72は、加工が完了した加工ラインから次の加工対象の加工ラインへウエハWを移動させる際の、X軸駆動部30及びY軸駆動部32に適用される移動パラメータを算出する。移動パラメータの詳細は後述する。
【0076】
なお、実施形態に記載の移動パラメータ算出部72は、第一方向への相対移動を開始する際のレーザ光の集光位置の、第二方向における移動開始位置を算出する移動開始位置算出部の一例に相当する。
【0077】
制御部40は、表示制御部80を備える。表示制御部80は、液晶ディスプレイ装置等の表示装置82を用いて表示する情報を表す表示信号を表示装置82へ送信する。表示装置82は、ウエハ情報、加工条件及び駆動制御パラメータ等を表示し得る。
【0078】
制御部40は、入力部84を備える。入力部84は入力装置86から送信される入力情報を取得する。入力装置86は、キーボード、マウス及びジョイスティック等の入力操作部材を適用し得る。
【0079】
制御部40は、プログラム記憶部88を備える。プログラム記憶部88は、レーザ加工装置10の各部に適用されるプログラムが記憶される。レーザ加工装置10の各部は、プログラム記憶部88からプログラムを読み出し、各部の機能を実現する。
【0080】
〔加工動作の詳細な説明〕
図3は加工動作の模式図である。同図はウエハWの加工対象面を、
図1に示すレーザ照射装置12の側から見た図である。なお、符号OはウエハWの内部WAに設定される二次元直交座標系の原点を表す。ウエハWはX軸方向と平行方向に延びる複数の加工ライン100が設定される。複数の加工ライン100は、Y軸方向について規定の距離を離して設定される。
【0081】
図2に示すY軸駆動部32は、Y軸方向についてウエハWを移動させて、レーザ光Laの集光位置LcのY軸座標値を、各加工ラインのY軸座標値と一致させる。X軸駆動部30は、Y軸方向におけるレーザ光Laの集光位置Lcと加工ラインの位置との位置合わせがされた状態において、X軸方向についてウエハWを移動させる。一点鎖線の矢印は、X軸方向及びY軸方向のウエハWの移動方向を示す。
【0082】
レーザ照射装置12は、ウエハWの内部WAに対してレーザ光Laを照射させる。X軸駆動部30は、X軸方向についてウエハWを移動させる。このようにして、ウエハWの内部WAにおいてレーザ光Laの集光位置Lcを移動させ、一つの加工ライン100に対する加工を実施する。
【0083】
X軸方向におけるウエハWの移動は、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの内部WAに位置する期間は等速度とされる。また、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの外部においてウエハWの内部WAへ向かう期間は加速が実施され、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの外部においてウエハWから離れる期間は減速が実施される。
【0084】
なお、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの外部からエッジWBへ到達する直前にウエハWの移動速度を等速度とし、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの内部WAからエッジWBへ到達した直後にウエハWの減速を開始してもよい。直前及び直後の期間はX軸駆動部30の搬送精度、ウエハWの加工精度及びレーザ発振器20のオンオフ特性に基づき規定し得る。
【0085】
図3に示す符号110は本実施形態に示す加工制御における、レーザ光Laの集光位置Lcの軌跡であり、符号112は従来技術に係る加工制御における、レーザ光Laの集光位置Lcの軌跡である。
【0086】
なお、軌跡110が表すレーザ光Laの集光位置Lcは、ウエハWの外部であって実際にレーザ光Laが照射されていないが、レーザ光Laが照射されたと仮定した場合の仮定のレーザ光Laの集光位置Lcである。軌跡112も同様である。
【0087】
従来技術に係る加工制御では、任意の加工ライン100Aについて、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWのエッジWBへ到達したタイミングにおいてウエハWの減速を開始させ、X軸方向へのウエハWの移動を停止させる。軌跡112AはX軸方向へのウエハWの移動における減速期間のレーザ光Laの集光位置Lcの軌跡を表す。
【0088】
次に、X軸方向へのウエハWの移動完了を待って、次の加工ライン100BへのX軸方向及びY軸方向のウエハWの移動を開始する。軌跡112D及び軌跡112Bはそれぞれ、X軸方向及びY軸方向へのレーザ光Laの集光位置Lcの軌跡を表す。更に、Y軸方向へのウエハWの移動完了を待って、次の加工ライン100Bの加工を開始する。
【0089】
Y軸方向へのウエハWの移動完了の後に、X軸方向の戻り方向へのウエハWの移動が開始され、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWのエッジWBへ到達するまでに、規定速度への加速が実施される。軌跡112Cは、X軸方向の戻り方向へのウエハWの移動における加速期間のレーザ光Laの集光位置Lcの軌跡を表す。
【0090】
これに対して、本実施形態に係る加工制御では、X軸方向の送り方向への移動について、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWのエッジWBへ到達したタイミングにおいて、X軸方向の減速を開始させ、かつ、Y軸方向へのウエハWの移動を開始させる。
【0091】
Y軸方向へのウエハWの移動中は、X軸方向へのウエハWの移動が完了し、その後、X軸方向の戻り方向へのウエハWの移動を開始する位置へ、ウエハWをX軸方向へ移動させる。
【0092】
その際に、X軸方向の戻り方向へのウエハWの移動開始タイミングを調整し、次の加工ライン100Bに対するX軸方向の戻り方向へのウエハWの移動開始タイミングから、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの外部からエッジWBへ到達するタイミングまでの期間に、Y軸方向へのウエハWの位置決めを完了する。
【0093】
具体的には、Y軸方向へのウエハの移動中にX軸方向への移動を開始する際のレーザ光Laの集光位置LcのY軸座標値を予め算出しておき、実際のレーザ光Laの集光位置LcのY軸方向座標値が、算出されたY軸方向座標値へ到達した際に、X軸方向へのウエハWの移動が開始される。なお、実施形態に記載のY軸方向へのウエハの移動中は第二方向への相対移動の実施中の一例に相当する。
【0094】
X軸方向の戻り方向へのウエハWの移動を開始する際のレーザ光Laの集光位置LcのY軸方向座標値は、X軸方向の駆動制御パラメータ及びY軸方向の駆動制御パラメータに基づき算出し得る。X軸方向の戻り方向へのウエハWの移動を開始する際のレーザ光Laの集光位置LcのY軸方向座標値とは、軌跡110の折り返し位置110AにおけるY軸方向座標値である。
【0095】
図3に示す、X軸方向の送り方向のウエハの移動から、X軸方向の戻り方向へのウエハの移動へ転換する際の制御例は、X軸方向の戻り方向のウエハの移動から、X軸方向の送り方向へのウエハの移動へ転換する際の制御への適用が可能である。
【0096】
なお、実施形態に記載の加工ライン100Aは第一加工ラインの一例に相当する。実施形態に記載の加工ライン100Bは第二加工ラインの一例に相当する。実施形態に記載の加工ライン100AのエッジWBは第一エッジの一例に相当する。実施形態に記載の加工ライン100BのエッジWBは第二エッジの一例に相当する。
【0097】
実施形態に記載のレーザ光Laの集光位置LcがウエハWのエッジWBへ到達したタイミングにおいてX軸方向の減速を開始させる処理は、レーザ光の集光位置が被加工物の内部から被加工物の第一エッジを通過する以後に第二方向について第一加工ラインから第二加工ラインへの相対移動を開始させる処理の一例に相当する。
【0098】
〔加工方法の手順〕
図4は第一実施形態に係る加工方法の手順を示すフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、
図3に示す加工ライン100A及び加工ライン100Bの加工を実施する際の手順を示す。なお、
図4では、
図2に示すレーザ照射制御部60を用いたレーザ照射装置12の制御の図示を省略する。
【0099】
X軸加工動作指令工程S10では、X軸制御部42はX軸駆動部30に対してX軸加工動作指令を送信する。X軸加工動作指令工程S10では、X軸制御部42はX軸駆動部30に適用される加速度、移動速度及び移動距離等を含むX軸制御パラメータをX軸駆動部30に対して設定する。
【0100】
X軸移動工程S11では、X軸駆動部30はX軸制御部42から送信されたX軸加工動作指令を受信する。X軸駆動部30はX軸制御パラメータに基づきX軸方向についてウエハWを移動させる。X軸移動工程S11では、
図2に示すエンコーダ38はX軸エンコーダ信号を出力する。X軸エンコーダ信号は、X軸モータのエンコーダから出力されるエンコーダ信号である。制御部40はX軸エンコーダ信号を取得する。
【0101】
X軸座標値監視工程S12では、制御部40はX軸エンコーダ信号に基づきレーザ光Laの集光位置LcがウエハWの外部から内部WAになるX軸方向座標値を監視する。Y軸移動完了確認工程S13では、制御部40はY軸駆動部32が加工ラインへの位置決めを完了しているかを判定する。
【0102】
レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの外部から内部WAに移動し、かつ、Y軸駆動部32が加工ラインへの位置決めを完了している場合に、加工ライン100Aへの加工が実施される。
【0103】
X軸座標値監視工程S14では、加工ライン100Aへの加工中に、X軸エンコーダ信号に基づきレーザ光Laの集光位置LcがウエハWの内部WAから外部になるX軸方向座標値を監視する。すなわち、制御部40はレーザ光Laの集光位置LcのX軸座標値を監視し、レーザ光Laの集光位置LcのX軸座標値がウエハWのエッジWBのX軸座標値へ到達するか否かを判定する。
【0104】
制御部40は、レーザ光Laの集光位置LcのX軸座標値が、ウエハWのエッジWBのX軸座標値へ到達せず、ウエハWの内部WAのX軸座標値であると判定する場合は、監視を継続する。
【0105】
一方、レーザ光Laの集光位置LcのX軸座標値が、ウエハWのエッジWBのX軸座標値へ到達したと判定される場合は、加工開始Y軸座標値算出工程S16へ進む。
【0106】
加工開始Y軸座標値算出工程S16では、制御部40はX軸方向の加速度、移動速度及び移動期間を用いて、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWのエッジWBへ到達したタイミングから、ウエハWの移動を停止させるタイミングまでの期間であるX軸減速期間を算出する。
【0107】
また、制御部40はX軸方向の戻り方向へのウエハWの移動開始タイミングから、次の加工ライン100Bを加工する際にレーザ光Laの集光位置LcがウエハWのエッジWBへ到達するタイミングまでの期間であるX軸加速期間を算出する。
【0108】
更に、制御部40はY軸方向の加速度、移動速度及び移動期間を用いて、Y軸方向における加工ライン間の移動期間であるY軸移動期間を算出する。更にまた、制御部40はX軸駆動部30がX軸方向の戻り方向への移動を開始するY軸座標値である移動開始Y軸座標値を算出する。
【0109】
Y軸移動指令工程S18では、X軸座標値監視工程S14において、レーザ光Laの集光位置LcのX軸座標値がウエハWのエッジWBのX軸座標値と一致した場合に、制御部40はY軸駆動部32に対して次の加工ラインへのY軸移動指令を送信する。また、制御部40はY軸駆動部32に対してY軸制御パラメータを送信する。なお、実施形態に記載のY軸移動指令工程S18において送信されるY軸移動指令は、指令信号及び第二方向指令の一例に相当する。
【0110】
Y軸移動工程S20では、Y軸駆動部32はY軸制御パラメータに基づきY軸方向へウエハWを移動させる。エンコーダ38は、ウエハWをY軸方向へ移動させる際にY軸エンコーダ信号を出力する。エンコーダ信号処理部70はY軸エンコーダ信号を取得する。Y軸エンコーダ信号は、Y軸モータのエンコーダから出力されるエンコーダ信号である。
【0111】
X軸加工開始位置移動指令工程S22では、制御部40はX軸駆動部30から送信されるX軸加工動作完了信号を取得した場合に、X軸駆動部30に対して、次の加工ラインの加工開始位置への移動指令を表すX軸加工開始位置移動指令を送信する。なお、実施形態に記載のX軸加工開始位置移動指令工程S22において送信されるX軸加工開始位置移動指令は、指令信号第一方向指令の一例に相当する。
【0112】
X軸加工開始位置移動工程S24では、X軸駆動部30はX軸制御パラメータに基づき、ウエハWのX軸方向への移動速度を減速させ、ウエハWのX軸方向への移動を停止させる。ウエハWのX軸方向への移動停止タイミングにおいて、X軸駆動部30は、X軸方向へのウエハの移動停止を表す加工開始位置移動完了信号を出力する。なお、制御部40は、X軸エンコーダ信号に基づいて、X軸方向へのウエハの移動停止を判定してもよい。
【0113】
Y軸座標値監視工程S26では、制御部40はレーザ光Laの集光位置LcのY軸座標値を監視し、レーザ光Laの集光位置LcのY軸座標値が移動開始Y軸座標値へ到達するか否かを判定する。
【0114】
Y軸座標値監視工程S26において、レーザ光Laの集光位置LcのY軸方向座標値が移動開始Y軸座標値へ到達していない場合、制御部40はレーザ光Laの集光位置LcのY軸座標値の監視を継続する。一方、レーザ光Laの集光位置LcのY軸方向座標値が、移動開始Y軸座標値へ到達した場合、X軸加工動作指令工程S28へ進む。
【0115】
X軸加工動作指令工程S28では、制御部40は加工開始位置移動完了信号の取得を確認し、かつ、レーザ光Laの集光位置Lcの移動開始Y軸座標値への移動を確認し、
図3に示す加工ライン100Bに対するX軸加工動作指令を送信する。また、制御部40は加工ライン100Bに適用されるX軸パラメータをX軸駆動部30へ送信する。
【0116】
X軸移動工程S30では、制御部40はX軸パラメータに基づきX軸駆動部30を動作させて、X軸方向の戻り方向へウエハWを移動させる。また、X軸駆動部30は、X軸エンコーダ信号を出力する。
【0117】
このようにして、ウエハWの加工ライン100Aへの加工が終了し、次の加工ライン100Bの位置へウエハを移動させる際に、X軸方向の送り方向へのウエハWの移動完了を待たずにY軸方向へのウエハWの移動を開始させ、かつ、Y軸方向へのウエハWの移動への移動完了を待たずに、次の加工ライン100Bにおいて、X軸方向の送り方向へのウエハWの移動を開始させる。
【0118】
加工ライン100Bの加工では、X軸移動工程S30においてX軸方向へウエハWの移動を開始した後に、X軸座標値監視工程S32において、レーザ光Laの集光位置LcのX軸座標値を監視する。X軸座標値監視工程S32では、制御部40はX軸エンコーダ信号に基づき、レーザ光Laの集光位置LcのX軸方向座標値がウエハWのエッジWBのX軸座標値へ到達したか否かを監視する。
【0119】
X軸座標値監視工程S32において、レーザ光Laの集光位置LcのX軸方向座標値がウエハWのエッジWBのX軸座標値へ到達していない場合、制御部40はX軸座標値監視工程S32を継続する。
【0120】
一方、X軸座標値監視工程S32において、レーザ光Laの集光位置LcのX軸方向座標値がウエハWのエッジWBのX軸座標値へ到達した場合、制御部40はY軸移動完了確認工程S34において、制御部40はY軸方向へのウエハWの移動が完了しているか否かを確認し、ウエハWの内部WAへレーザ光Laを照射し、加工ライン100Bの加工を実施する。加工ライン100Bの加工では、X軸座標値監視工程S14からY軸移動完了確認工程S34までの各工程が実施される。このようにして、複数の加工ライン100について順に加工が実施され、全ての加工ライン100に対する加工が実施された後に、ウエハWの加工は終了される。
【0121】
本実施形態では、エンコーダ38から出力されるエンコーダ信号に基づき、レーザ光Laの集光位置Lcの座標値を把握し、レーザ光Laの集光位置Lcの座標値に基づきX軸駆動部30及びY軸駆動部32の動作制御を実施する態様を例示した。
【0122】
一方、X軸駆動部30等の停止はX軸駆動部30等に具備される位置センサから出力されるセンサ信号を用いて把握してもよい。センサ信号の例として、X軸駆動部30等に具備されるサーボモータのインポジション信号が挙げられる。また、X軸駆動部30等に具備されるサーボモータから出力されるエンコーダ信号のカウント値に基づくカウンター値検出機能を用いて、X軸駆動部30等の動作を開始してもよい。
【0123】
なお、X軸移動工程S11、Y軸移動工程S20、X軸加工開始位置移動工程S24及びX軸移動工程S30は相対移動工程の一例に相当する。X軸座標値監視工程S12及びX軸座標値監視工程S14は検出工程の一例に相当する。
【0124】
[X軸制御パラメータ及びY軸制御パラメータの具体例]
図3に示す任意の加工ライン100A及び次の加工ライン100Bにおける、X軸制御パラメータの具体例を表1に示す。表1に示すX軸制御パラメータを算出する際に適用されるX軸方向加減速度a
xを9800ミリメートル毎平方秒とし、X軸方向移動速度v
xを300ミリメートル毎秒とする。
【0125】
また、ウエハWの直径を300ミリメートルとし、任意の加工ライン100AのY軸座標値を-100ミリメートルとし、インデックスサイズを5.0ミリメートルとする。なお、X軸座標及びY軸座標の原点はウエハWの中心である。
【0126】
【0127】
各加工ライン100の移動距離Sxは、加速距離sr、ウエハ内部移動距離sw及び減速距離sfを用いて、Sx=sr+sw+sfと表される。ウエハ内部移動距離swは、ウエハWの半径r及び各加工ライン100のY軸座標値の絶対値yを用いて、sw=(r2-y2)1/2×2と表される。
【0128】
移動期間ttは、加速期間tr、等速期間tc及び減速期間tfを用いて、tt=tr+tc+tfと表される。加速距離srは、sr=(ax×tr
2)/2と表される。減速距離sfは、sf=(ax×tf
2)/2と表される。
【0129】
加速期間trは、tr=vx/axと表される。X軸方向の減速度としてX軸方向の加速度axが適用される場合、X軸方向の減速期間tfは、tf=vx/axと表される。等速期間tcは、tc=(s-sr-sf)×vxと表される。
【0130】
[X軸方向の戻り方向のウエハの移動を開始するY軸方向座標値算出の具体例]
X軸方向の戻り方向のウエハの移動を開始するY軸方向座標値を算出する際の移動パラメータの具体例を表2に示す。表2に示す移動パラメータの算出は、上記に示すX軸方向加減速度ax、X軸方向移動速度vxが適用される。また、Y軸方向加減速度ayは1960ミリメートル毎平方秒であり、Y軸方向移動速度vyは100ミリメートル毎秒である。
【0131】
【0132】
X軸方向総移動期間txtとY軸方向移動期間tytとの大小関係により、X軸方向の戻り方向へのウエハWの移動開始タイミングが異なり、同方向へのウエハWの移動を開始するY軸方向座標値が異なる。
【0133】
X軸方向総移動期間txtは、先の加工ライン100において、ウエハWの内部WAからウエハWの外部へレーザ光Laの集光位置Lcが移動してから、次の加工ライン100において、ウエハWの外部からウエハWの内部WAへレーザ光Laの集光位置Lcが移動するまでのレーザ光Laの集光位置LcのX軸方向への総移動期間を表す。
【0134】
X軸方向総移動期間txtは、先の加工ライン100における減速期間txf、次の加工ライン100の加工開始位置へレーザ光Laの集光位置LcがX軸方向へ移動する期間txc及び次の加工ライン100におけるX軸方向加速期間txrの総和である。すなわち、X軸方向総移動期間txtはtxt=txf+txc+txrと表される。
【0135】
Y軸方向移動期間tytは、先の加工ライン100から次の加工ライン100まで、レーザ光Laの集光位置LcがY軸方向へ移動する期間を表す。Y軸方向移動期間tytは、Y軸方向加速期間tyr及びY軸方向減速期間tyfが含まれる。Y軸方向移動期間tytは、Y軸方向一定速移動期間tycが含まれ得る。すなわち、Y軸方向移動期間tytはtyt=tyr+tyf又はtyt=tyr+tyc+tyfと表される。
【0136】
〔X軸方向総移動期間よりもY軸方向移動期間が短い場合〕
X軸方向総移動期間txtよりもY軸方向移動期間tytが短い場合は、レーザ光Laの集光位置Lcが次の加工ライン100の加工開始位置へのX軸方向の移動が完了した後に、X軸方向の戻り方向について移動が指令される。
【0137】
〔X軸方向総移動期間よりもY軸方向移動期間が長い場合〕
X軸方向総移動期間txtよりもY軸方向移動期間tytが長い場合は、Y軸方向移動期間tytからX軸方向の加速期間txrを減算した期間である移動開始指令期間tIにおけるY軸方向の移動距離dsyを算出し、先の加工ラインのY軸座標値に算出されたY軸方向の移動距離dsyを加算して、X軸方向の戻り方向のウエハの移動を開始するY軸方向座標値が算出される。
【0138】
かかる場合は、Y軸方向への加速中にX軸方向への移動が指令される場合、Y軸方向への一定速移動中にX軸方向への移動が指令される場合及びY軸方向への減速中にX軸方向への移動が指令される場合に区別される。
【0139】
Y軸方向への加速中にX軸方向への移動が指令される場合は、tI=tyt-txrと表される移動開始指令期間tIがY軸方向加速期間tyr未満となる。かかる場合は、dSy2=(ay×tI
2)/2と表されるY軸方向の移動距離dSy2を、先の加工ライン100のY軸座標値に加算して算出される。ayはY軸方向の加速度であり、Y軸方向の加速度ayは予め設定される固定値である。
【0140】
Y軸方向への一定速移動中にX軸方向への移動が指令される場合は、移動開始指令期間tIが、Y軸方向加速期間tyr以上であり、Y軸方向の移動開始から減速開始までの期間tyfs未満である。
【0141】
かかる場合は、dSy3=(ay×tyr
2)/2+vy×(tI-tyr)と表されるY軸方向の移動距離dSy3を、先の加工ライン100のY軸座標値に加算して算出される。vyはY軸方向の速度であり、Y軸方向の速度vyは予め設定される固定値である。
【0142】
Y軸方向への減速中にX軸方向への移動が指令される場合は、移動開始指令期間tIがY軸方向の移動開始から減速開始までの期間tyfsを超える。かかる場合は、dSy4=(ay×tyr
2)/2+vy×(tyfs-tyr)+ay×(tI-tyfs)2/2と表されるY軸方向の移動距離dSy4を、先の加工ライン100のY軸座標値に加算して算出される。なお、Y軸方向の減速度はY軸方向の加速度ayとした。
【0143】
[第一実施形態の作用効果]
第一実施形態に係るレーザ加工装置10及び加工方法は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0144】
〔1〕
レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの内部からウエハWのエッジへ到達した際に、X軸方向へのウエハWの移動完了を待たずにY軸方向へウエハWを移動させ、かつ、Y軸方向へのウエハWの移動完了を待たずにX軸方向へウエハWを移動させる。これにより、X軸方向の移動完了の後にY軸方向の移動を開始させ、Y軸方向の移動完了の後にX軸方向の移動を開始させる場合と比較して、加工完了から次の加工開始までの期間を短縮し得る。
【0145】
表2に示す具体例において、加工完了から次の加工開始までの期間は0.103秒である。一方、X軸方向の移動完了を待って、Y軸方向への移動を開始し、Y軸方向への移動完了を待って、次の加工ラインの移動を開始する場合、加工完了から次の加工開始までの期間は0.162秒であり、例示した加工ラインでは、0.059秒の短縮が可能である。
【0146】
〔2〕
レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの内部WAからウエハWのエッジへ到達した際に、X軸方向の減速期間及び加速期間を算出し、Y軸方向の移動期間を算出し、X軸方向の加工を開始させる際のレーザ光Laの集光位置LcのY軸座標値を算出する。これにより、X軸方向へのウエハWの移動完了を待たずにY軸方向へウエハWを移動させ、かつ、Y軸方向へのウエハWの移動完了を待たずにX軸方向へウエハWを移動させる、X軸方向及びY軸方向への移動制御を実施し得る。
【0147】
〔3〕
レーザ光Laの集光位置Lcの座標値は、エンコーダ38から出力されるエンコーダ信号に基づき把握される。これにより、加工ライン間の移動について、加工中の移動と同等の位置精度を実現し得る。
【0148】
[第二実施形態]
〔レーザ加工装置の全体構成〕
図5は第二実施形態に係るレーザ加工装置の全体構成図である。
図5に示すレーザ加工装置10Aは、
図1に示すレーザ加工装置10に対してセンサ16が追加される。また、レーザ加工装置10Aは、レーザ照射装置12Aにハーフミラー24を備える。
【0149】
センサ16は、フォトダイオード等の光電変換素子17を備える光学センサが適用される。センサ16はレーザ光Laと光軸と同軸上に配置され、ウエハWに照射されたレーザ光Laの反射光を入射し、反射光に応じたセンサ信号を出力する。センサ16から出力されるセンサ信号は制御部へ送信される。制御部はセンサ16から出力されるセンサ信号に基づきウエハWのエッジWBを検出する。なお、実施形態に記載のセンサ16は検出部の構成要素の一例に相当する。
【0150】
ハーフミラー24は、集光光学系22を通過したレーザ光Laの光路上に配置される。ハーフミラー24は、集光光学系22を通過したレーザ光Laを透過させ、ウエハWに照射されたレーザ光Laの反射光Lbをセンサ16へ向けて反射させる。なお、
図5に示す矢印線は、レーザ光La及び反射光Lbの向きを表す。
【0151】
〔レーザ加工装置の機能ブロック〕
図6は
図5に示すレーザ加工装置の機能ブロック図である。
図6に示す制御部40Aは
図2に示す制御部40に対してセンサ信号処理部71が追加されている。センサ信号処理部71は、センサ16から出力されるセンサ信号に基づき、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWの内部WAから外部へ移動したか否かを判定する。
【0152】
また、センサ信号処理部71は、センサ信号に基づきレーザ光Laの集光位置LcがウエハWの外部から内部WAへ移動したか否かを判定する。すなわち、センサ信号処理部71は、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWのエッジWBへ到達するタイミングを把握する。なお、実施形態に記載のセンサ信号処理部71は検出部の構成要素の一例に相当する。
【0153】
移動パラメータ算出部72は、センサ信号処理部71の処理結果に基づき、加工対象の加工ラインから次の加工対象の加工ラインへウエハWを移動させる際の、X軸駆動部30及びY軸駆動部32に適用される移動パラメータを算出する。
【0154】
〔加工方法の手順〕
第二実施形態に係る加工方法は、
図4に示すX軸座標値監視工程S14及びX軸座標値監視工程S32において、レーザ光Laの集光位置Lcの座標値の監視に代わり、センサ16から出力されるセンサ信号の監視が実施される。
【0155】
例えば、センサ信号が急激に変化するタイミングを、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWのエッジWBへ到達したタイミングとして把握し得る。また、センサ16の相対的な受光光量が大きい状態から小さい状態への変化は、ウエハWの内部WAから外部へのレーザ光Laの集光位置Lcの移動と把握し得る。更に、センサ16の相対的な受光光量が小さい状態から大きい状態への変化は、ウエハWの外部から内部WAへのレーザ光Laの集光位置Lcの移動と把握し得る。
【0156】
第二実施形態において、エンコーダ38から出力されるエンコーダ信号及びX軸駆動部30等に具備される位置センサ等のセンサ信号を併用して、レーザ光Laの集光位置Lcを把握してもよい。
【0157】
図5に示すセンサ16は、CCD(Charge Coupled Device)を具備するカメラを適用してもよい。制御部40Aは、カメラから出力される撮影信号に基づき、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWのエッジWBへ到達したタイミングを把握し得る。
【0158】
本実施形態では、センサ16として光学センサを適用する態様を例示したが、センサ16として変位センサを適用し、変位センサ用いて、ウエハWと吸着テーブル31との段差を検出する態様を実施し得る。
【0159】
[第二実施形態の作用効果]
第二実施形態に係るレーザ加工装置10及び加工方法は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0160】
〔1〕
レーザ光Laの光軸と同軸上にセンサ16を備える。センサ16から出力されるセンサ信号に基づき、レーザ光Laの集光位置LcがウエハWのエッジWBへ到達したか否かを判定する。これにより、ウエハWの搬送の影響を受けずに、センサ信号に基づき第一実施形態に示す加工ライン間のウエハWの移動制御を実施し得る。
【0161】
〔2〕
光電変換素子17を含むセンサ16又はカメラ17Aを含むセンサ16Aを用いて、レーザ光Laの集光位置Lcを監視する。これにより、光電変換素子17又はカメラ17Aの出力信号に基づきレーザ光Laの集光位置Lcを把握し得る。
【0162】
[第一変形例]
図7は第一変形例に係るレーザ加工装置の全体構成図である。
図7に示すレーザ加工装置10Bは、センサ16AとしてCCDを具備するカメラ17Aを備える。また、レーザ加工装置10Bは、カメラ17Aの撮影領域に対して照明光Llを照射する照明装置18を備える。ハーフミラー19は、ハーフミラー24へ向けて照明光Llを反射させる。ハーフミラー24は、照明光LlをウエハWへ向けて反射させる。
【0163】
ハーフミラー19及びハーフミラー24の少なくともいずれか一方は、ダイクロイックミラーを適用してもよい。なお、
図7に示す照明装置18を省略し、レーザ光Laの反射光Lbをカメラ17Aへ入射させてもよい。
【0164】
照明光Llは、レーザ光Laの光軸と同軸上に入射しなくてもよく、レーザ光Laの光軸に先行する位置に入射してもよい。照明光Llの例として、ハロゲン照明及びLED照明を適用し得る。なお、LEDはLight Emitting Diodeの省略語である。
【0165】
図7には、カメラ17Aの光軸がレーザ光Laの光軸と同軸上となるカメラ17Aの配置を例示したが、カメラ17Aは、光軸がレーザ光の光軸と同軸上ではなく別の位置に配置されてもよい。カメラ17Aは、撮影視野にウエハWの全体が含まれる広角カメラを適用し、ウエハWの全体が視野に含まれるカメラ17Aの配置を適用してもよい。かかる態様では、移動中及び停止中のウエハWを連続的に撮影し、ウエハ情報から撮影画像におけるウエハWのサイズ及びウエハWの中心位置等を読み出し、ウエハWの内部WA及び外部を計算してもよい。
【0166】
第一変形例によれば、カメラ17A等から得られるウエハWの撮影画像に基づき、レーザ光Laの集光位置Lcを把握し得る。
【0167】
[第二変形例]
図8は第二変形例に係るレーザ加工装置の全体構成図である。
図8に示すレーザ加工装置10Cは、第一レーザ照射装置12B及び第二レーザ照射装置12Cを備える。第一レーザ照射装置12Bは
図5に示すレーザ照射装置12Aと同様の構成を適用し得る。第二レーザ照射装置12Cは、
図1等に示すレーザ照射装置12と同様の構成を適用し得る。
【0168】
第一レーザ照射装置12Bは、ウエハWに対して第一レーザ光La1を照射する。第二レーザ照射装置12Cは、ウエハWに対して第二レーザ光La2を照射する。
【0169】
センサ16は、第一レーザ照射装置12Bに具備されるハーフミラー24を用いて反射した反射光Lbが入射される。
図6に示す制御部40Aは、センサ16から出力されるセンサ信号に基づき、第一レーザ光La1の集光位置Lc1がウエハWのエッジWBへ到達したタイミング及び第二レーザ光La2の集光位置Lc2がウエハWのエッジWBへ到達したタイミングを把握する。
【0170】
すなわち、第一レーザ光La1の集光位置Lc1と後続の第二レーザ光La2の集光位置Lc2との距離分だけウエハWのエッジWBをオフセットさせた位置を、ウエハWの仮のエッジWDとみなす。
図8に二点鎖線を用いて図示したウエハWは、ウエハWの仮のエッジWDを模式的に図示する。
【0171】
ウエハWのエッジWBからウエハWの仮のエッジWDまでの距離とウエハWの搬送速度を用いて、第一レーザ光La1の集光位置Lc1がウエハWのエッジWBへ到達したタイミングから、第二レーザ光La2の集光位置Lc2がウエハWのエッジWBへ到達するタイミングまでの期間を算出する。
【0172】
このようにして、第一レーザ光La1の集光位置Lc1がウエハWのエッジWBへ到達したタイミングに基づき、第二レーザ光La2の集光位置Lc2がウエハWのエッジWBへ到達したタイミングを把握し得る。
【0173】
図8に示すセンサ16は、
図7に示すセンサ16Aを適用してもよいし、撮影視野にウエハWの全体が含まれる広角カメラを備えるセンサを適用してもよい。
【0174】
ウエハWを戻り方向へ移動させる場合は、ウエハWを送り方向へ移動させる場合に対して、第一レーザ照射装置12Bと第二レーザ照射装置12Cとの位置の入れ替えを実施してもよいし、ウエハWを戻り方向へ移動させる場合は加工を非実施としてもよい。
【0175】
第一レーザ光La1の反射光を検出するセンサ16及び第二レーザ光La2の反射光を検出するセンサを備え、第一レーザ光La1の集光位置Lc1がウエハWのエッジWBへ到達したタイミング及び第二レーザ光La2の集光位置Lc2がウエハWのエッジWBへ到達したタイミングを個別に検出してもよい。
【0176】
第二変形例に係る加工方法は、一つのレーザ照射装置から複数のレーザ光を出力させる構成にも適用可能である。一つのレーザ照射装置から複数のレーザ光を出力させる構成として、一つのレーザ発振器から出力されるレーザ光を複数の集光光学系へ入射させ、複数の集光光学系のそれぞれからレーザ光を照射させる例が挙げられる。
【0177】
第二変形例によれば、複数の集光光学系を備え、複数の集光光学系のそれぞれからレーザ光Laを出力させる態様においても、第一実施形態に示す加工ライン間のウエハW移動制御を実施し得る。
【0178】
なお、実施形態に記載の第一レーザ照射装置12B及び第二レーザ照射装置12Cは、複数のレーザ光を第一方向について離れた複数の位置のそれぞれに照射させるレーザ光照射部の一例に相当する。
【0179】
第一実施形態及び第二実施形態では、レーザ加工装置10として、ウエハWを加工するダイシング装置を例示したが、金属及びセラミック等を加工するレーザ加工装置へ適用が可能である。また、第一実施形態及び第二実施形態に示すレーザ加工は、アブレーション等の被加工物の表面加工及び被加工物の内部のレーザ加工領域の形成のいずれにも適用可能である。
【0180】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0181】
10,10A,10B,10C…レーザ加工装置、12,12A…レーザ照射装置、12B…第一レーザ照射装置、12C…第二レーザ照射装置、14…XYテーブル、16…センサ、30…X軸駆動部、31…吸着テーブル、32…Y軸駆動部、38…エンコーダ、40…制御部、42…X軸制御部、44…Y軸制御部、70…エンコーダ信号処理部、71…センサ信号処理部、72…移動パラメータ算出部、100、100A、100B…加工ライン、La…レーザ光、Lc…集光位置、W…ウエハ、WB…エッジ