(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087804
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】エフェクト顔料
(51)【国際特許分類】
C09C 1/00 20060101AFI20240624BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20240624BHJP
C09C 3/08 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
C09C1/00
C09C3/06
C09C3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023212934
(22)【出願日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】22214502.1
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン バウアー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ヘイランド
【テーマコード(参考)】
4J037
【Fターム(参考)】
4J037AA01
4J037AA04
4J037AA18
4J037AA21
4J037AA25
4J037AA26
4J037CA09
4J037CA24
4J037DD10
4J037EE03
4J037EE04
4J037EE26
(57)【要約】
【課題】電磁放射線に対して透過性である、金属光沢を有する再現可能な不透明エフェクト顔料を調製すること。
【解決手段】本発明は、フレーク状基材をベースとする、金属光沢を有する不透明なフッ化物ドープエフェクト顔料、及び上記顔料の調製方法、及びその使用、特に自動車塗料及び化粧品配合物における使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エフェクト顔料であって、少なくとも1つのTiO2層を含み、前記層においてTiO2にTiIII+及びフッ化物がドープされていることを特徴とする、フレーク状基材をベースとするエフェクト顔料。
【請求項2】
前記フレーク状基材は、合成又は天然雲母フレーク、フィロシリケート、ガラスフレーク、SiO2フレーク、Al2O3フレーク、TiO2フレーク、黒鉛フレーク及びBiOClフレークの群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のエフェクト顔料。
【請求項3】
前記合成雲母フレーク、ガラスフレーク、TiO2フレーク、SiO2フレーク、Al2O3フレークは、ドープされている又は非ドープであることを特徴とする、請求項1または2に記載のエフェクト顔料。
【請求項4】
前記フレーク状基材におけるドーピングの割合は、前記基材を基準にして0.01~5質量%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のエフェクト顔料。
【請求項5】
前記TiO2層におけるTiIII+及びフッ化物のドーピング度は、式TiFyO2-x-yに従い、
式中、
0.00001<y<0.05及び
0.0001<x<0.1
であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のエフェクト顔料。
【請求項6】
前記顔料は、下記の層構造を有し:
-基材+TiO2
-基材+SnO2+TiO2
-基材+TiO2+SiO2+TiO2
-基材+SnO2+TiO2+SiO2+SnO2+TiO2
-基材+TiO2+MgO+TiO2
-基材+SnO2+TiO2+MgO+SnO2+TiO2
-基材+TiO2+CaO+TiO2
-基材+SnO2+TiO2+CaO+SnO2+TiO2
-基材+TiO2+SrO+TiO2
-基材+SnO2+TiO2+SrO+SnO2+TiO2
-基材+TiO2+BaO+TiO2
-基材+SnO2+TiO2+BaO+SnO2+TiO2
-基材+TiO2+ZnO+TiO2
-基材+SnO2+TiO2+ZnO+SnO2+TiO2、
式中、少なくとも1つのTiO2層は、TiIII+及びフッ化物がドープされていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のエフェクト顔料。
【請求項7】
前記エフェクト顔料の1つ以上のTiO2層は、追加的にニオブ、ジルコニウム、イットリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、インジウム又はアンチモンがドープされていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のエフェクト顔料。
【請求項8】
前記顔料は、表面上に有機又は無機被覆が外層として更に提供されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のエフェクト顔料。
【請求項9】
少なくとも1つのTiO2層を備えるフレーク状基材をベースとするエフェクト顔料を、フッ化物供与体及び固体還元剤と、任意選択で溶融塩との存在下、還元ガス混合物中で、700~900℃の温度で反応させることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のエフェクト顔料を調製する方法。
【請求項10】
前記フッ化物供与体は、無機フッ化物、有機フッ素化合物、天然及び合成フッ素含有鉱物の群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記還元剤は、アルカリ土類金属、B、Al、Si、Zn、Fe、LiH、CaH2、NaBH4、MgSi、MgSi2、Ca2Si、CaSi2の群から選択されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
塗料、パウダーコーティング、インク、プラスチック、フィルムにおける、レーダー透過性仕上剤のための、静電散逸性配合物のための、レーダーセンサーのコーティングのための、印刷インクにおける、セキュリティ印刷における、書類及び身分証明書のセキュリティ機能における、種子着色のための、食品着色のための、又は医薬品コーティングにおける、レーザーマーキングのための、並びに顔料調製物及び乾燥調製物の調製のための、化粧品配合物における、高温用途における、顔料調製物における、請求項1~8のいずれか1項に記載のエフェクト顔料の使用。
【請求項13】
有機又は無機染料及び/又は顔料との混合物における、請求項1~8のいずれか1項に記載のエフェクト顔料の使用。
【請求項14】
アルミニウム顔料との混合物における、請求項13に記載のエフェクト顔料の使用。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか1項に記載のエフェクト顔料を含む配合物。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか1項に記載のエフェクト顔料に加えて、吸収剤、収斂剤、抗菌物質、酸化防止剤、消泡剤、帯電防止剤、結合剤、生物学的添加物、漂白剤、キレート剤、脱臭剤、皮膚軟化剤、乳化剤、乳化安定化剤、染料、湿潤剤、フィルム形成剤、充填剤、芳香物質、フレーバー、防虫剤、保存料、防腐剤、化粧品油、溶剤、酸化剤、植物成分、緩衝物質、還元剤、界面活性剤、噴射ガス、乳白剤、UVフィルター、UV吸収剤、変性剤、粘度調節剤、香料、ビタミン、酵素、微量元素、タンパク質、炭水化物、有機顔料、無機顔料、カーボンブラック、エフェクト顔料、金属顔料、金属-エフェクト顔料の群から選択される少なくとも1種の成分を含むことを特徴とする、請求項15に記載の配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーク状基材をベースとする、金属光沢を有する不透明なフッ化物ドープエフェクト顔料、及び上記顔料の調製方法、及びその使用、特に自動車塗料及び化粧品配合物における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野、プラスチックの着色、化粧品、更には印刷分野でも、エフェクト顔料の使用が増えている。エフェクト顔料は、当該顔料で着色された製品に特定の光沢又は特定の色彩効果を付与することを意図する。概して、エフェクト顔料は、例えば金属、雲母、又はSiO2、ガラス若しくはAl2O3の合成フレークを含む基材が、例えば金属又は金属酸化物を含む1つ以上の層で被覆されたものである。金属酸化物は、特に、析出によって基材に適用でき、化学的にきわめて実質的に不活性であることから、頻繁に使用される層材料である。
新規かつ興味深い色彩効果を有する顔料が、とりわけ、干渉顔料の金属酸化物層の還元によって得られる。使用される還元剤は、好ましくは水素、アンモニア、炭素、一酸化炭素、炭化水素、非金属水素化物(例えば、NaBH4)、又は金属である。
従って、例えば、国際公開第93/19131号は、非酸化雰囲気において固体還元剤を使用した、TiO2被覆フレーク状基材の還元焼成を記載している。この方法では、還元剤が上記酸化チタン構造に統合され得る又は酸化チタン結晶子の粒界に留まる限り、酸化Tiの含有量が基材方向に徐々に多くなり、還元剤の原子が外側方向に徐々に多く用いられる層構造が形成される。
米国特許第4,623,396号明細書は、還元ガス混合物の存在下におけるTiO2/雲母顔料の還元を開示しており、ここで雲母フレークは、一方がもう一方の上にある、チタン化合物からなる2つの層で被覆されており、ここで第1層の上に配置された第2層はTiO2からなり、雲母粒子の上に直接配置された第1層はチタン化合物、例えば、低次チタン酸化物、酸窒化チタン、チタン化合物とTiO2との混合物からなる。外側のTiO2層は、その後の酸化条件下での加熱によって形成され、その結果、TiO2の層がTiO2-xの上に外側から生成する。
還元条件下で調製された、従来技術から公知のエフェクト顔料の本質的欠点は、不均質な焼成結果、ひいては顔料の再現可能性である。更なる欠点は、固体還元剤の使用である。これは当該還元剤で還元された層の汚染(contamination)を招き、実際に所望される色彩効果に望ましくない変化を引き起こす。金属を使用する還元も、追加成分が被覆に導入され、それが同様に顔料の特性に望ましくない変化を招き得ることから、欠点である。
【発明の概要】
【0003】
従って、本発明の目的は、上記の欠点がなく、同時に電磁放射線に対して透過性である、金属光沢を有する再現可能な不透明エフェクト顔料を調製することである。
驚くべきことに、還元条件下で焼成された少なくとも1つのフッ化物ドープ二酸化チタン層を備えるエフェクト顔料は、金属光沢を有し、アルミニウム顔料とは対照的に、電磁放射線に対して透過性であることが見出された。本発明による顔料は、容易かつ再現可能に調製でき、出発顔料と比較して大幅に向上した隠蔽力を有する。
【0004】
本発明は、少なくとも1つのTiO2層を含み、当該層においてTiO2にTiIII+及びフッ化物がドープされていることを特徴とする、フレーク状基材をベースとするエフェクト顔料に関する。
本発明によるエフェクト顔料は、出発顔料よりも暗いマストーンを示し、通常は青みを帯びた金属光沢を有し、電磁放射線に対して透過性である。
本発明は、インク、パウダーコーティング、塗料、特に自動車塗料及びレーダー透過性仕上剤、並びに静電散逸性配合物における、印刷インク、セキュリティ印刷インク、プラスチックにおける、レーザーマーキング及びレーザー溶接用の吸収剤としての、化粧品配合物における、特に高温用途のための、例えば、釉薬及びセラミックの色素沈着のための、本発明による顔料の使用にも関する。本発明による顔料は、顔料調製物の調製、及び乾燥調製物の調製、例えば、セラミックカラー、顆粒、チップ、ぺレット、ブリケット等の調製にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】多角度分光光度計における角度の定義である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明によるエフェクト顔料に好適なベース基材は、半透明及び透明なフレーク状基材である。好ましい基材は、フィロシリケートフレーク、SiCフレーク、TiCフレーク、WCフレーク、B4Cフレーク、BNフレーク、黒鉛フレーク、TiO2フレーク及びFe2O3フレーク、ドープ又は非ドープAl2O3フレーク、ドープ又は非ドープガラスフレーク、ドープ又は非ドープSiO2フレーク、TiO2フレーク、BiOCl、並びにこれらの混合物である。フィロシリケートの群から、特に好ましいのは、天然及び合成雲母フレーク、白雲母、タルク、及びカオリンである。基材として使用される合成雲母は、好ましくはフッ素金雲母又はZn金雲母である。本発明による顔料は、好ましくは、合成又は天然雲母フレーク、フィロシリケート、ガラスフレーク、ボロシリケートフレーク、SiO2フレーク、Al2O3フレーク、TiO2フレーク、黒鉛フレーク、及び/又はBiOClフレークの群から選択される基材をベースとする。
ガラスフレークは、使用される焼成範囲において温度安定性である限り、当業者に公知の全ての種類のガラスからなることができる。好適なガラスは、例えば、石英、Aガラス、Eガラス、Cガラス、ECRガラス、使用済ガラス、アルカリホウ酸塩ガラス、アルカリケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、Duran(登録商標)ガラス、実験器具ガラス、又は光学ガラスである。
ガラスフレークの屈折率は、好ましくは1.45~1.80、特に1.50~1.70である。ガラス基材は、特に好ましくは、Cガラス、ECRガラス又はホウケイ酸ガラスからなる。
合成基材フレーク、例えば、ガラスフレーク、SiO2フレーク、Al2O3フレーク等は、ドープされていても非ドープでもよい。ドープされている場合、ドーピングは、好ましくはAl、N、B、Ti、Zr、Si、In、Sn若しくはZn、又はこれらの混合物である。更に、遷移金属の群(V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Nb、Mo、Hf、Ta、W)からの更なるイオン及びランタニドの群からのイオンが、ドーパントとして機能し得る。
Al2O3の場合、基材は好ましくは非ドープ、又はTiO2、ZrO2又はZnOがドープされている。Al2O3フレークは、好ましくはコランダムである。好適なAl2O3フレークは、好ましくはドープ又は非ドープα-Al2O3フレーク、特にTiO2又はZrO2がドープされたα-Al2O3フレークである。
【0007】
基材がドープされている場合、ドーピングの割合は、基材を基準にして、好ましくは0.01~5質量%、特に0.1~3質量%である。
ベース基材のサイズは、それ自体重要ではなく、特定の用途に合わせることができる。一般に、フレーク状基材は、0.05~5μm、特に0.1~4.5μmの厚さを有する。
異なる粒径の基材を用いることもできる。特に好ましいのは、雲母N(10~60μm)、雲母F(5~20μm)及び/又は雲母M(<15μm)の雲母画分の混合物である。更に好ましいのは、N及びS画分(10~130μm)と、F及びS画分(5~130μm)である。
粒径分布(Malvern Mastersizer 3000用いて測定)の典型的な例:
D10:1~50μm、特に2~45μm、非常に特に好ましくは5~40μm
D50:7~275μm、特に10~200μm、非常に特に好ましくは15~150μm
D90:15~500μm、特に25~400μm、非常に特に好ましくは50~200μm。
【0008】
本特許出願では、「高屈折率」は≧1.8の屈折率を意味し、「低屈折率」は<1.8の屈折率を意味する。
フレーク状基材は、好ましくは、1つ以上の層で完全に覆われている。
好ましい実施形態では、エフェクト顔料の支持材を、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属窒化物、金属酸窒化物又はこれらの材料の混合物を含む透明、半透明及び/又は不透明な1つ以上の層で被覆できる。金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属窒化物、金属酸窒化物層又はこれらの混合物は、低屈折率(屈折率<1.8)でも高屈折率(屈折率≧1.8)でもよい。好適な金属酸化物及び金属酸化物水和物は、当業者に公知の全ての金属酸化物又は金属酸化物水和物、例えば、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、酸化ケイ素、酸化ケイ素水和物、酸化鉄、酸化スズ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化チタン等であり、特に二酸化チタン、酸化チタン水和物、及びこれらの混合物、例えば、Fe/Ti混合酸化物等である。使用できる金属亜酸化物は、例えば、亜酸化チタンである。好適な金属フッ化物は、例えば、フッ化マグネシウムである。使用できる金属窒化物又は金属酸窒化物は、例えば、金属チタン、ケイ素、ジルコニウム及び/又はタンタルの窒化物又は酸窒化物である。好ましくは、金属酸化物、金属、金属フッ化物、及び/又は金属酸化物水和物層、非常に特に好ましくは金属酸化物及び/又は金属酸化物水和物層が、支持体に適用される。更に、高屈折率及び低屈折率の金属酸化物、金属酸化物水和物、金属又は金属フッ化物層を備え、高屈折率層及び低屈折率層を好ましくは交互に有する、多層構造も存在してよい。特に好ましいのは、高屈折率層と低屈折率層とを備える層パッケージであって、これらの層パッケージの1つ以上が支持体に適用されてもよい。高屈折率と低屈折率層との順序は、支持体を多層構造に組み込むため、支持体と合致させることができる。更なる実施例では、金属酸化物、金属ケイ酸塩、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属窒化物、金属酸窒化物の層を、当該層が還元プロセスで安定である限り、混合すること、又は当該層に着色剤をドープすることができる。
n≧1.8、好ましくはn≧2.0の屈折率を有する低屈折率層は、好ましくは、TiO2、ZrO2、ZnO、SnO2、Cr2O3、Ce2O3、BiOCl、Fe2O3、Fe3O4、FeO(OH)、Ti亜酸化物(<4~2の酸化状態を有する部分的に還元されたTiO2及び低次酸化物、例えばTi3O5、Ti2O3~TiO)、酸窒化チタン及び窒化チタン、アルカリ土類金属チタン酸塩MTiO3(M=Ca、Sr、Ba)、CoO、Co2O3、Co3O4、VO2、V2O3、NiO、WO3、MnO、Mn2O3又は上記酸化物の混合物の群から選択される金属酸化物を含む。
n<1.8、好ましくはn<1.7の屈折率を有する低屈折率層は、好ましくは、SiO2、MgO・SiO2、CaO・SiO2、Al2O3・SiO2、B2O3・SiO2、又は上記化合物の混合物の群から選択される金属酸化物を含む。更に、シリケート層は、アルカリ土類金属又はアルカリ金属イオンがドープされていてもよい。
【0009】
好適な着色剤又はその他の元素は、還元温度において安定である限り、例えば、着色金属酸化物(例えば磁鉄鉱、酸化クロム(III))等の無機着色顔料、例えばテナールブルー(Co-Alスピネル)等の着色顔料、又は例えばイットリウム又はアンチモン等の元素、及びペロブスカイト、パイロクロア、ルチル及びスピネルの構造分類の顔料全般である。上記の層を備える真珠光沢顔料は、そのマストーンに関して高い色彩多様性を示し、多くの場合、干渉による角度依存性の色彩変化(カラーフロップ)を示し得る。
【0010】
金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属窒化物、金属酸窒化物層又はこれらの混合物の支持基材上の厚さは、通常は3~1000nmであり、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属酸窒化物又はこれらの混合物の場合、好ましくは20~200nmである。
1つ以上の層、好ましくは金属酸化物層を含むフレーク状基材をベースとする、当業者に公知の全てのエフェクト顔料は、少なくとも1つの二酸化チタン層を有し、好ましくは20~500nm、特に30~200nm、非常に特に好ましくは40~60nmの層厚を有する限り、好適である。TiO2層は、好ましくはベース基材の外層である。しかし、本発明によるエフェクト顔料には、当該顔料が少なくとも1つのTiO2層、特に、TiO2外層を有する限り、全ての市販のエフェクト顔料も使用できる。
TiO2層は、ルチル変態又はアナターゼ変態であってもよい。TiO2層は、好ましくはルチル変態である。更なる実施形態では、TiO2層は、追加的に、例えばニオブ、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモンがドープされていてもよい。
【0011】
穏和な還元条件下でのTiO2層のフッ化物ドーピングに特に好ましいベース顔料は、以下の構造を有する:
-基材+TiO2
-基材+SnO2+TiO2
-基材+TiO2+SiO2+TiO2
-基材+SnO2+TiO2+SiO2+SnO2+TiO2
-基材+TiO2+MgO+TiO2
-基材+SnO2+TiO2+MgO+SnO2+TiO2
-基材+TiO2+CaO+TiO2
-基材+SnO2+TiO2+CaO+SnO2+TiO2
-基材+TiO2+SrO+TiO2
-基材+SnO2+TiO2+SrO+SnO2+TiO2
-基材+TiO2+BaO+TiO2
-基材+SnO2+TiO2+BaO+SnO2+TiO2
-基材+TiO2+ZnO+TiO2
-基材+SnO2+TiO2+ZnO+SnO2+TiO2
【0012】
非常に特に好ましいエフェクト顔料は、以下の層構造を有する:
-天然雲母フレーク+TiO2
-天然雲母フレーク+SnO2+TiO2
-天然雲母フレーク+TiO2+SiO2+TiO2
-天然雲母フレーク+SnO2+TiO2+SiO2+SnO2+TiO2
-天然雲母フレーク+TiO2+MgO+TiO2
-天然雲母フレーク+SnO2+TiO2+MgO+SnO2+TiO2
-天然雲母フレーク+TiO2+CaO+TiO2
-天然雲母フレーク+SnO2+TiO2+CaO+SnO2+TiO2
-天然雲母フレーク+TiO2+SrO+TiO2
-天然雲母フレーク+SnO2+TiO2+SrO+SnO2+TiO2
-天然雲母フレーク+TiO2+BaO+TiO2
-天然雲母フレーク+SnO2+TiO2+BaO+SnO2+TiO2
-天然雲母フレーク+TiO2+ZnO+TiO2
-天然雲母フレーク+SnO2+TiO2+ZnO+SnO2+TiO2
-合成雲母フレーク+TiO2
-合成雲母フレーク+SnO2+TiO2
-合成雲母フレーク+TiO2+SiO2+TiO2
-合成雲母フレーク+SnO2+TiO2+SiO2+SnO2+TiO2
-合成雲母フレーク+TiO2+MgO+TiO2
-合成雲母フレーク+SnO2+TiO2+MgO+SnO2+TiO2
-合成雲母フレーク+TiO2+CaO+TiO2
-合成雲母フレーク+SnO2+TiO2+CaO+SnO2+TiO2
-合成雲母フレーク+TiO2+SrO+TiO2
-合成雲母フレーク+SnO2+TiO2+SrO+SnO2+TiO2
-合成雲母フレーク+TiO2+BaO+TiO2
-合成雲母フレーク+SnO2+TiO2+BaO+SnO2+TiO2
-合成雲母フレーク+TiO2+ZnO+TiO2
-合成雲母フレーク+SnO2+TiO2+ZnO+SnO2+TiO2
-SiO2フレーク+TiO2
-SiO2フレーク+SnO2+TiO2
-SiO2フレーク+TiO2+SiO2+TiO2
-SiO2フレーク+SnO2+TiO2+SiO2+SnO2+TiO2
-SiO2フレーク+TiO2+MgO+TiO2
-SiO2フレーク+SnO2+TiO2+MgO+SnO2+TiO2
-SiO2フレーク+TiO2+CaO+TiO2
-SiO2フレーク+SnO2+TiO2+CaO+SnO2+TiO2
-SiO2フレーク+TiO2+SrO+TiO2
-SiO2フレーク+SnO2+TiO2+SrO+SnO2+TiO2
-SiO2フレーク+TiO2+BaO+TiO2
-SiO2フレーク+SnO2+TiO2+BaO+SnO2+TiO2
-SiO2フレーク+TiO2+ZnO+TiO2
-SiO2フレーク+SnO2+TiO2+ZnO+SnO2+TiO2
-Al2O3フレーク+TiO2
-Al2O3フレーク+SnO2+TiO2
-Al2O3フレーク+TiO2+SiO2+TiO2
-Al2O3フレーク+SnO2+TiO2+SiO2+SnO2+TiO2
-Al2O3フレーク+TiO2+MgO+TiO2
-Al2O3フレーク+SnO2+TiO2+MgO+SnO2+TiO2
-Al2O3フレーク+TiO2+CaO+TiO2
-Al2O3フレーク+SnO2+TiO2+CaO+SnO2+TiO2
-Al2O3フレーク+TiO2+SrO+TiO2
-Al2O3フレーク+SnO2+TiO2+SrO+SnO2+TiO2
-Al2O3フレーク+TiO2+BaO+TiO2
-Al2O3フレーク+SnO2+TiO2+BaO+SnO2+TiO2
-Al2O3フレーク+TiO2+ZnO+TiO2
-Al2O3フレーク+SnO2+TiO2+ZnO+SnO2+TiO2
-ガラスフレーク+TiO2
-ガラスフレーク+SnO2+TiO2
-ガラスフレーク+TiO2+SiO2+TiO2
-ガラスフレーク+SnO2+TiO2+SiO2+SnO2+TiO2
-ガラスフレーク+TiO2+MgO+TiO2
-ガラスフレーク+SnO2+TiO2+MgO+SnO2+TiO2
-ガラスフレーク+TiO2+CaO+TiO2
-ガラスフレーク+SnO2+TiO2+CaO+SnO2+TiO2
-ガラスフレーク+TiO2+SrO+TiO2
-ガラスフレーク+SnO2+TiO2+SrO+SnO2+TiO2
-ガラスフレーク+TiO2+BaO+TiO2
-ガラスフレーク+SnO2+TiO2+BaO+SnO2+TiO2
-ガラスフレーク+TiO2+ZnO+TiO2
-ガラスフレーク+SnO2+TiO2+ZnO+SnO2+TiO2
「TiO2」は、ドープ又は非ドープTiO2層を意味する。TiO2層は、好ましくは非ドープである。非ドープのルチル層が特に好ましい。
【0013】
金属酸化物層(複数可)は、好ましくは湿式化学法によって基材フレークに塗布され、ここで真珠光沢顔料の製造のために開発された湿式化学被覆法を使用することができ、この種の方法は、例えば、米国特許第3087828号明細書、米国特許第3087829号明細書、米国特許第3553001号明細書、独国特許出願公開第1467468号明細書、独国特許出願公開第1959988号明細書、独国特許出願公開第2009566号明細書、独国特許出願公開第2214545号明細書、独国特許出願公開第2215191号明細書、独国特許出願公開第2244298号明細書、西独国特許出願公開第2313331号明細書、独国特許出願公開第2522572号明細書、独国特許出願公開第3137808号明細書、独国特許出願公開第3137809号明細書、独国特許出願公開第3151343号明細書、独国特許出願公開第3151354号明細書、独国特許出願公開第3151355号明細書、独国特許出願公開第3211602号明細書、独国特許出願公開第3235017号明細書、独国特許出願公開第19618568号明細書、欧州特許出願公開第0659843号明細書に記載されており、又は当業者に公知の更なる特許文献及び他の出版物にも記載されている。
湿式被覆の場合、基材フレークを水中に懸濁させ、金属酸化物又は金属酸化物水和物が二次析出を生じることなくフレーク上に直接析出するように選択された、加水分解に適したpHにおいて、1種以上の加水分解性金属塩を添加する。pHは、通常、塩基及び/又は酸を同時に計量添加することにより一定に保たれる。その後、エフェクト顔料を分離、洗浄、及び乾燥し、必要に応じて焼成する。その焼成温度は、各々の場合に存在する被覆に関して最適化することができる。一般に焼成温度は250~1000℃、好ましくは350~900℃である。所望であれば、顔料を、個々の被覆の塗布後に分離し、乾燥し、必要に応じて焼成し、次いで、更なる層を析出するために再懸濁することができる。
SiO2層の塗布には、独国特許出願公開第19618569号明細書に記載されている方法を使用できる。SiO2層の作製には、ナトリウム水ガラス溶液又はカリウム水ガラス溶液が好ましくは使用される。
更に、被覆は流動床反応器内での気相被覆によって実施することもでき、この場合、例えば、真珠光沢顔料の調製に関する欧州特許出願公開第0045851号明細書及び欧州特許出願公開第0106235号明細書で提案された方法を同様に使用できる。
【0014】
二酸化チタンの適用には、米国特許第3,553,001号明細書に記載の方法が好ましくは用いられる。この方法では、無機チタン塩の水溶液を、約50~100℃、特に70~80℃に加熱した、任意選択で既に予備被覆された基材の懸濁液にゆっくりと加え、pHを、塩基の同時計測添加によって、0.5~5、特に約1.5~2.5で実質的に一定に保つ。TiO2酸化物水和物の所望の層厚に到達し次第、チタン塩溶液及び塩基の添加を停止する。この方法は、滴定法としても知られ、余分なチタン塩が存在しないという特殊な特徴を有するが、その代わり、水和TiO2の均一被覆に必要な時間単位当たりの量しか常に提供されず、更には被覆しようとする基材の表面に付着する可能性もある。従って、被覆しようとする表面に堆積しない溶液には、水和二酸化チタン粒子が存在しない。
顔料の色相は、被覆量又は当該被覆から得られる層厚を種々選択することによって、非常に広い範囲で変化させることができる。特定の色相のための微調整は、量の選択だけでなく、視覚的又は方法論的制御の下で所望の色に近づけることによって達成され得る。
【0015】
ベース顔料上のTiO2層のフッ化物ドーピングは、還元剤及びフッ化物供与体の存在下で出発顔料のTiO2層を同時に還元することによって実施される。ベース顔料が複数のTiO2層を含む場合、TiO2結晶格子へのフッ化物の組み込みは、還元条件下で外側TiO2層のみで起こる。TiO2のアニオン位置でフッ化物のドーピングが起こると、TiO2格子構造に正電荷中心が誘導され、これは次にTi4+からTi3+への還元を単純化する。すなわち、必要な還元温度が、フッ化物供与体が存在しないTi4+からTi3+への還元の場合よりも低くなる。より穏和な還元条件は、TiIII+ドープ及びフッ化物ドープTiO2層内の均一性を高め、同時に、再現性を高める。
好適な還元剤は、当業者に公知の固体還元剤、例えば、アルカリ土類金属、B、Al、Si、Zn、Fe、LiH、CaH2、NaBH4、MgSi、MgSi2、Ca2Si、CaSi2等である。使用される還元剤は、好ましくはSiである。還元剤の割合は、ベース顔料を基準として、好ましくは0.5~5質量%、特に0.8~2質量%、非常に好ましくは0.9~1.2質量%である。
好適なフッ化物供与体は、例えば、無機フッ化物(例えばCaF2、MgF2、NaF、NH4F等)、有機フッ素化合物(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)、天然及び合成フッ素含有鉱物(例えば、合成フルオロフロゴパイト(=合成雲母)等)である。
フッ化物供与体の割合は、ベース顔料を基準として、好ましくは0.01~3質量%、特に0.01~1質量%、非常に特に好ましくは0.03~0.3質量%である。
還元反応及びドーピングは、例えば、N2、Ar、He、CO2、CO、フォーミングガス(例えば95:5(v/v)N2:H2)、CxHy、H2等の不活化又は還元雰囲気において実施され、N2又はArが好ましい。
還元は、700~1000℃、好ましくは700~950℃、特に750~850℃の温度で、10分超、好ましくは15~60分超の時間をかけて実施することが好ましい。
還元温度は、例えば、アルカリ金属/アルカリ土類金属ハロゲン化物(例えば、CaCl2又はMgCl2等)のような溶融塩の存在によって更に低くできる。溶融塩の比率は、ベース顔料を基準にして、好ましくは0.01~5質量%、特に0.01~3質量%、非常に特に好ましくは0.03~1.5質量%である。しかし、添加したハロゲン化物の融点によって温度が制限されることから、温度を任意に下げることはできない。つまり、例えばCaCl2は772℃、MgCl2は714℃で溶融し、還元温度は溶融塩の融点以上でなければならない。
特に好ましい実施形態では、出発顔料の還元は、Si、CaF2及びCaCl2を用いて実施される。
しかし、先行技術から公知の還元方法は、本発明に従う還元方法とは手順が著しく異なる。ドーピングの程度は、最終顔料が、少なくとも1種のフッ化物でドープされて還元焼成された、式TiFyO2-x-yの二酸化チタンを含むように選択され、式中、x及びyは次のように定義される:
0.00001<y<0.05、好ましくは0.0001<y<0.01、特に好ましくは0.001<y<0.005、及び
0.00001<x<0.1、特に好ましくは0.0001<x<0.03。
TiO2結晶構造は、フッ化物及びTi3+のドーピングによって変化しない、すなわち、チタン亜酸化物は存在しない。
【0016】
本発明は、本発明によるエフェクト顔料の調製方法であって、少なくとも1つのTiO2層を有するフレーク状基材をベースとするエフェクト顔料を、フッ化物供与体及び任意選択で少なくとも1種の溶融塩の存在下、非酸化ガス雰囲気中、700~900℃の温度で、15~60分間、少なくとも1種の固体還元剤と反応させるという点で区別される方法にも関する。
還元による暗色化の程度は、還元剤の割合と、反応混合物中のフッ化物供与体の割合との両方によって制御できる。ただし、フッ化物供与体の割合を任意に増やすことはできない。
【0017】
光、水、及び天候への安定性を高めるために、本発明によるエフェクト顔料に、適用分野に応じて、無機又は有機の後被覆(post-coating)又は後処理を施すことがしばしば推奨される。検討される後被覆又は後処理は、例えば、独国特許出願公開第2215191号明細書、西独国特許出願公開第3151354号明細書、西独国特許出願公開第3235017号明細書、又は西独国特許出願公開第3334598号明細書に記載されている方法である。この後被覆は、化学及び光化学安定性を更に高め、又はエフェクト顔料の取扱い、特に様々な媒体への配合を簡単にする。湿潤性、分散性及び/又はユーザー媒体との適合性を向上させるために、SnO2、Al2O3若しくはZrO2又はこれらの混合物を含む機能性コーティングを、顔料表面に塗布することができる。更に、欧州特許出願公開第0090259号明細書、欧州特許出願公開第0634459号明細書、国際公開第99/57204号、国際公開第96/32446号、国際公開第99/57204号、米国特許第5,759,255号明細書、米国特許第5,571,851号明細書、国際公開第01/92425号、又はJ.J.Ponjee、Philips Technical Review、Vol.44、No.3、81 ff.及びP.H.Harding J.C.Berg、J.Adhesion Sci.Technol.Vol.11 No.4、pp.471-493に記載のような、例えばシランを用いた、有機後被覆が可能である。有機後被覆の更なる例は、例えば、欧州特許第0632109号明細書、米国特許第5,759,255号明細書、独国特許出願公開第4317019号明細書、独国特許出願公開第3929423号明細書、独国特許出願公開第3235017号明細書、欧州特許第0492223号明細書、欧州特許第0342533号明細書、欧州特許第0268918号明細書、欧州特許第0141174号明細書、欧州特許第0764191号明細書、国際公開第98/13426号、又は欧州特許第0465805号明細書に見ることができ、これらの開示内容は参照により本明細書に援用される。有機被覆を含む顔料、例えばオルガノシラン、又はオルガノチタネート若しくはオルガノジルコネートを含む顔料は、更に、既に述べた光学特性に加えて、天候影響、例えば湿気及び光に対する安定性の向上を示し、これは、特に産業用コーティング及び自動車分野において、特に興味深い。安定化は追加被覆の無機成分によって改善できる。この場合に適用される物質は、効果色素全体の0.1~5質量%、好ましくは0.5~3質量%しか含まれない。
全体で、本発明によるエフェクト顔料の光学特性がわずかしか又はまったく影響を受けないように、追加安定化被覆に対するそれぞれの割合を選択する必要がある。
【0018】
本発明による顔料は、多種多様な用途を有する。従って、本発明は、化粧品、塗料、パウダーコーティング、インク、プラスチック、フィルムにおける、セキュリティ印刷における、書類及び身分証明書のセキュリティ機能における、レーザーマーキングのための、静電散逸性顔料としての、種子着色のための、食品着色のための、医薬品コーティングにおける、及び顔料調製及び乾燥調製のための、本発明によるエフェクト顔料の使用にも関する。
化粧品の場合、本発明によるエフェクト顔料は、例えば、マニキュア、カラーリングパウダー、口紅、又はアイシャドウ、石鹸、練り歯磨き等のような、メイク用化粧品の製品及び配合物に特に好適である。本発明によるエフェクト顔料は、当然、化粧品原料及び任意の種類の助剤と共に配合物に組み合わせることができる。上記原料及び助剤には、特に、油、油脂、ワックス、フィルム形成剤、保存料、並びに通常は適用特性を決定する助剤、例えば増粘剤、及びレオロジー添加剤、例えば、ベントナイト、ヘクトライト、二酸化ケイ素、Caケイ酸塩、ゼラチン、高分子量炭水化物及び/又は界面活性助剤等が含まれる。発明によるエフェクト顔料を含む配合物は、親油性、親水性又は疎水性タイプに属し得る。別個の水相と非水相とを有する不均一な配合物の場合には、本発明による粒子は、それぞれの場合で、2相のうちの1相のみに存在してもよく、又は両方の相に分配されてもよい。
水性配合物のpH値は、1~14、好ましくは2~11、特に好ましくは5~6であり得る。本発明によるエフェクト顔料の配合物中の濃度は制限されない。濃度は、用途に応じて、0.001(リンスオフ製品、例えばシャワージェル)~99%(例えば、特定用途向けの光沢効果物品)であり得る。本発明によるエフェクト顔料は、化粧品活性化合物と更に組み合わせることもできる。好適な活性化合物は、例えば、防虫剤;UV A/BC保護フィルター(例えば、OMC、B3、MBC)、老化防止活性化合物、ビタミン及びその誘導体(例えば、ビタミンA、C、E等)、日焼け剤(例えば、特に、DHA、エリトルロース)及び更なる化粧品活性化合物、例えば、ビサボロール、LPO、エクトイン、エンブリカ、アラントイン、バイオフラボノイド及びこれらの誘導体である。
【0019】
塗料及びインクにおけるエフェクト顔料の使用に関しては、当業者に公知の全ての分野の用途、例えば、パウダーコーティング、自動車塗料、グラビア印刷、オフセット印刷又はフレキソ印刷インク用のインク、及び屋外用途の塗料用インク等が可能である。ここでの塗料及びインクは、放射線硬化性、物理的乾燥性、又は化学的硬化性であり得る。印刷インク又は液体塗料の調製には、多数の結合剤、例えば、アクリレート、メタクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ニトロセルロース、エチルセルロース、ポリアミド、ポリビニルブチレート、フェノール樹脂、マレイン樹脂、デンプン又はポリビニルアルコール、アミノ樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、又はこれらの混合物をベースとするもの、特に、水溶性型が好適である。塗料は、パウダーコーティング、又は水性塗料若しくは溶剤型塗料であってもよく、ここで塗料成分の選択は、当業者の一般的な知識である。パウダーコーティングの一般的なポリマー結合剤は、例えば、ポリエステル、エポキシド、ポリウレタン、アクリレート又はこれらの混合物である。
【0020】
更に、本発明によるエフェクト顔料は、フィルム及びプラスチック、例えば農業シート、赤外線反射フィルム、赤外反射フィルム及びパネル(pane)、ギフトフィルム、当業者に公知の全ての用途向けのプラスチック容器及び成形品に使用できる。好適なプラスチックは、本発明によるエフェクト顔料の組み込みに一般的な全てのプラスチック、例えば 熱硬化性プラスチック、エラストマー、又は熱可塑性プラスチックである。推定される用途及びプラスチック、加工方法及び使用できる添加剤の記載は、例えば、RD 472005又は R.Glausch、M.Kieser、R.Maisch、G. Pfaff、J. Weitzel、Perlglanzpigmente [Pearlescent Pigments]、Curt R. Vincentz Verlag(1996)、83 ffに見ることができ、この開示内容も本明細書に援用される。
更に、本発明によるエフェクト顔料は、例えば、偽造防止カード及び身分証明証、例えば、入場券、本人確認書類、銀行券、小切手及びチェックカード等のため、及びその他の偽造防止書類のための、セキュリティ印刷及びセキュリティ関連機能における使用にも好適である。農業の分野では、エフェクト顔料を、食品分野における食品着色用に加えて、種子着色又はその他の出発材料として使用できる。本発明によるエフェクト顔料は、例えば、錠剤又は糖衣錠等の薬剤において、コーティングの色素沈着のために用いることもできる。
金属光沢を有する、通常はシルバーグレーの本発明によるエフェクト顔料は、アルミニウム顔料と対照的に、電磁放射線(20MHz~100GHz)に対して透過性であることから、特に、レーダーセンサー又はレーダーセンサーのカバーの塗装にも好適である。
好ましい仕上剤、特に産業及び自動車分野並びに農業機械用の仕上剤は、1~40質量%、特に10~25質量%の本発明によるエフェクト顔料を含む。
自動車分野では、本発明によるエフェクト顔料は、金属仕上げとプラスチック仕上げの両方、例えば、バンパー、レーダーセンサー、ラジエーターグリル、外部ミラーに好適であり、これは、特に自動車が塗装時に均一な外観を有するために重要である。更に、同様に自動車分野で使用できる塗膜用に、本発明による顔料を有する塗料配合物を調製することも可能である。
【0021】
本発明によるエフェクト顔料は、更なる色彩効果を達成するために、例えば、アルミニウム顔料と、任意の比率で混合することもできる。混合比によっては、顔料混合物はなおも電磁放射線に対して透過性である。レーダー透過性自動車仕上剤の場合、本発明によるエフェクト顔料とアルミニウム顔料とからなる顔料混合物は、0.1~5質量%以下、好ましくは1~3質量%以下のアルミニウム顔料を含む。
本発明によるエフェクト顔料を使用したレーザーマーキングには、例えばUllmann,Vol.15,pp.457 ff.,Verlag VCHに記載されているような、全ての公知の熱可塑性プラスチックを使用できる。好適なプラスチックは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステル-エステル、ポリエーテル-エステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、アクリロニトリル-スチレン-アクリレートコポリマー、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、並びにこれらのコポリマー及び/又は混合物である。従って、本発明によるエフェクト顔料は、更に、シリコーンゴム又はシリコーン樹脂への組み込みにも好適である。
【0022】
本発明によるエフェクト顔料は、プラスチック顆粒とエフェクト顔料とを混合し、その後当該混合物を熱の作用下で成形することによって、熱可塑性プラスチックに組み込まれる。作業条件下で温度安定性である公知の接着剤、有機ポリマー相溶性溶剤、安定剤及び/又は界面活性剤は、全て当業者に公知であり、エフェクト顔料の組み込み時にプラスチック顆粒に添加することができる。着色プラスチック顆粒は、一般に、最初にプラスチック顆粒を適切なミキサーに導入し、当該顆粒を任意の添加剤で湿潤し、次にエフェクト顔料を添加混合することによって調製される。こうして得られた混合物を、次に、押出機又は射出成形機により直接加工することができる。その後、マーキングを好適な放射線を用いて実施する。
特に、シリコーンゴムは、比較的低温(室温~<200℃、2成分)で加硫されたシリコーンゴム(RTV2シリコーンとして知られる)、比較的高温(約110℃、2成分、又は約160℃、1成分)で加硫されたシリコーンゴム(HTVシリコーンとして知られる)、又は液体状態(約110℃、2成分)で加硫されたシリコーンゴム(LSRシリコーンとして知られる)である。本発明によるエフェクト顔料は、上記の1成分又は2成分のシリコーンゴム成分に添加され、その中に均質に分配される。次に、必要に応じて、混合物が射出金型のキャビティに導入され、好適な条件下で加硫される。この目的に必要な、温度、圧力、及び反応時間等の条件は、当業者に公知であり、出発材料及び所望の最終エラストマーに応じて選択される。1成分系の場合、加硫剤を別途添加する必要がない。加硫プロセスは、化学線の供給によって、例えばUV又はγ線によって、加速できる。こうして得られた混合物を、射出成形機から取り出す。その後、マーキングを好適な放射線を用いて実施する。
マーキングは、好ましくは高エネルギー放射を使用して、一般的に157~10600nmの波長範囲、特に300~10600nmの範囲で実施する。例として、CO2レーザー(10600nm)、Nd:YAGレーザー(1064又は532nm)又はパルスUVレーザー(エキシマレーザー)が挙げられる。エキシマレーザーは以下の波長を有する:F2エキシマレーザー(157nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、KrClエキシマレーザー(222nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、XeClエキシマレーザー(308nm)、XeFエキシマレーザー(351nm)、355nm(周波数三倍)又は265nm(周波数四倍)の波長を有する周波数逓倍Nd:YAGレーザー。特に好ましいのは、Nd:YAGレーザー(1064又は532nm)及びCO2レーザーの使用である。用いられるレーザーのエネルギー密度は、一般に0.3mJ/cm2~50J/cm2、好ましくは0.3mJ/cm2~10J/cm2の範囲である。
【0023】
レーザー刻印は、パルスレーザー、好ましくはCO2又はNd:YAGレーザーの光線経路に試料を導入することによって実施される。更に、例えばマスク技術を介してエキシマレーザーを使用する刻印が可能である。しかし、所望の結果は、使用するレーザー光吸収物質の高吸収領域に波長を有する他の従来型のレーザーを使用して達成することもできる。得られるマーキングは、レーザーの照射時間(又はパルスレーザーの場合はパルスの数)及びレーザーの照射出力と、使用されるプラスチック系又は塗料系とによって決定される。使用されるレーザーの出力は、具体的な用途によって異なり、それぞれ個別の場合に当業者が容易に決定できる。
パルスレーザーが使用されるとき、パルス周波数は、一般に1~30kHzの範囲である。本発明による方法に用いることができる対応するレーザーは、市販されている。
本発明によるエフェクト顔料のレーザーマーキングへの使用は、上記のプラスチック全てにおいて実施できる。こうして着色されたプラスチックは、電気、エレクトロニクス、及び自動車産業において成形品として使用できる。レーザー銘刻の用途の更なる重要分野は、IDカード及び動物の個体標識のためのプラスチックタグである。上記用途におけるレーザーマーキングの場合、プラスチック中のエフェクト顔料の割合は、0.01~10質量%、好ましくは0.05~5質量%、特に0.1~3質量%である。加熱、排気及び冷却部門におけるハウジング、ケーブル、キーキャップ、トリム若しくは機能性部品、又は本発明による顔料で着色されたプラスチックで構成されるスイッチ、プラグ、レバー及びハンドルのラベル付け及び刻印は、アクセスしにくい領域でさえも、レーザー光線の助けを借りてマーキングすることができる。マーキングは、拭き取り抵抗性及び引掻き抵抗性があり、後続の滅菌工程の間安定であり、マーキング工程において衛生的に清浄な方法で適用できるという事実によって区別される。
【0024】
言うまでもなく、種々の用途に対して、本発明によるエフェクト顔料は、有利には、例えば下記顔料との混合物として用いることもできる:
-金属エフェクト顔料、例えば鉄フレーク又はアルミニウムフレークをベースとするもの;
-金属酸化物被覆合成雲母フレーク、天然雲母フレーク、ガラスフレーク、Al2O3フレーク、Fe2O3フレーク又はSiO2フレークをベースとする真珠光沢顔料;
-吸収顔料;
-ゴニオクロマティック顔料;
-金属酸化物被覆合成雲母フレーク、天然雲母フレーク、ガラスフレーク、Al2O3フレーク、Fe2O3フレーク又はSiO2フレークをベースとする多層顔料(好ましくは、2、3、4、5又は7層);
-有機染料;
-有機顔料;
-例えば、透明及び不透明白色、着色及び黒色顔料等の無機顔料;特に、温度安定性セラミック顔料;
-フレーク状酸化鉄;
-カーボンブラック;
-セラミックカラーボディ;
-機能性顔料、例えば、IR反射性又は導電性顔料。
【0025】
本発明によるエフェクト顔料は、標準的な市販顔料及び/又は更に標準的な市販充填剤と任意の比率で混合できる。
充填剤として挙げられるのは、例えば、天然及び合成雲母、ナイロン粉末、純粋又は充填剤入りメラミン樹脂、タルク、ガラス、カオリン、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛の酸化物又は水酸化物、BiOCl、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭素、及びこれらの物質の物理的又は化学的な組合せである。充填剤の粒子形状に関して制約はない。形状は、例えば、要求に応じてフレーク状、球状又は針状であってよい。
本発明によるエフェクト顔料を含む配合物は、更に、吸収剤、収斂剤、抗菌物質、酸化防止剤、消泡剤、帯電防止剤、結合剤、生物学的添加物、漂白剤、キレート剤、脱臭剤、皮膚軟化剤、乳化剤、乳化安定化剤、染料、湿潤剤、フィルム形成剤、充填剤、芳香物質、フレーバー、防虫剤、保存料、防腐剤、化粧品油、溶剤、酸化剤、植物成分、緩衝物質、還元剤、界面活性剤、噴射ガス、乳白剤、UVフィルター、UV吸収剤、変性剤、粘度調節剤、香料、ビタミン、酵素、微量元素、タンパク質、炭水化物、有機顔料、例えばTiO2等の無機顔料、カーボンブラック、更なるエフェクト顔料、金属顔料、例えばアルミニウム顔料等、エフェクト顔料、金属-エフェクト顔料の群から選択される少なくとも1種の成分を含み得る。
本発明によるエフェクト顔料は、更に、1種以上の本発明による粒子と、結合剤と、任意選択で1種以上の添加剤とを含む流動性顔料調製物及び乾燥調製物の調製に好適である。乾燥調製物はまた、0~8質量%、好ましくは2~8質量%、特に3~6質量%の水、及び/又は溶剤若しくは溶剤混合物を含む調製物を意味するとみなされる。乾燥調製物は、好ましくは、ペレット、顆粒、チップ、ソーセージ又はブリケットの形態であり、0.2~80mmの粒径を有する。乾燥調製物は、特に、印刷インク及び化粧品配合物の調製に使用される。
【0026】
上記の全ての特許出願、特許及び出版物の全開示内容は、参照により本願に援用される。
以下の実施例は、本発明を詳細に説明することを意図するが、本発明を制限するものではない。
【実施例0027】
実施例1:比較例(Fドーピングなし):
実施例1a
30gのIriodin(登録商標)119(5~25μmの粒径分布を有するTiO
2被覆雲母フレーク、Merck KGaA)と、0.34gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.23gのCaCl
2微粉末(<20μm、Merck KGaA)及び0.45gのタルク(<15μm、Mondo)とを、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に混合する。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、加熱帯(850℃の温度に調節された)の中心にボートがくるように管状オーブンに入れ、そこに45分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、40μmの篩にかける。
金属光沢を示さないシルバーホワイトエフェクト顔料が得られる。
焼成前後のX線ディフラクトグラムは、雲母フレーク上のTiO
2層の結晶学的構造が還元的焼成によって変化しないことを示す。TiO
2層の結晶構造は変化しない。すなわち、チタン亜酸化チタンは存在しない。
実施例1b
実施例1aと同様であるが、温度を850℃から900℃に上げた。
実施例1c
実施例1aと同様であるが、温度を850℃から950℃に上げた。
【表1】
実施例1a、1b及び1cのエフェクト顔料は全て、隠蔽力を全く又はわずかしか示さず、金属光沢は950℃以上でしか明白ではない。しかし、高温では、同時に、望ましくない凝集体の形成が観察される。
【0028】
実施例2:種々の前駆体からのフッ化物のドーピング
実施例2a:CaF2によるドーピング
30gのIriodin(登録商標)119(5~25μmの粒径分布を有するTiO2被覆雲母フレーク、Merck KGaA)、0.34gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.23gのCaCl2粉末(<20μm;Merck KGaA)と、0.45gのタルク(<15μm、Mondo)及び0.1gのCaF2粉末(<20μm、Merck KGaA)とを、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に混合する。CaF2の代わりに、MgF2粉末(Merck KGaA)、NaF粉末粉末(Aldrich)及びPTFE粉末(35μm、Aldrich)を用いた実験も実施できる。
フッ化物含有雲母(フッ素金雲母、Merck KGaA)を使用する場合、タルクの添加を省略できる。それぞれの量を表2に記載している。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(850℃又は875℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに45分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、40μmの篩にかける。
実施例2b:MgF2によるドーピング
実施例2aと同様であるが、0.1gのMgF2(Merck KGaA)を0.1gのCaF2の代わりに用いる。
実施例2c:NaFによるドーピング
実施例2aと同様であるが、0.1gのNaF(Aldrich)を0.1gのCaF2の代わりに用いる。
実施例2d:PTFE粉末によるドーピング
実施例2aと同様であるが、0.1gのポリテトラフルオロエチレン粉末(35μm,Aldrich)を0.1gのCaF2の代わりに用いる。
実施例2e:フッ素金雲母によるドーピング
30gのIriodin(登録商標)119(5~25μmの粒径分布を有するTiO2被覆雲母フレーク、Merck KGaA)、0.34gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.23gのCaCl2微粉末(<20μm;Merck KGaA)及び0.45gのフッ素金雲母(粒径<15μm、Merck KGaA)を、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に混合する。それぞれの量を表2に記載している。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(850℃又は875℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに45分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、40μmの篩にかける。
【0029】
実施例2a~eの顔料はシルバーグレーの金属光沢を示し、実施例2cを除いて、同じ温度で調製された比較例1a~cよりもかなり高い隠蔽力を示す。この顔料では、850℃でも、比較例が950℃で到達していない隠蔽力が得られたが、かなりの凝集体の形成が既に観察されている。実施例2dの顔料は、実施例2a~c及び22の顔料よりも外観がかなり暗い。このように、比較例1a~cで選択したアプローチで達成できなかった範囲で、品質の低下(凝集体形成)なく、顔料の明度を制御することも可能である。
【表2】
【0030】
実施例3:フッ素金雲母を用いた温度変動
30gのIriodin(登録商標)119(5~25μmの粒径分布を有するTiO
2被覆雲母フレーク、Merck KGaA)と、0.79gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.69gのCaCl
2粉末(<20μm;Merck KGaA)及び1.35gの粉砕フッ素金雲母(<15μm、Merck KGaA)とを、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に混合する。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(850℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに45分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、40μmの篩にかける。
実施例3b
実施例3aを繰り返すが、875℃の温度で実施する。
実施例3c
実施例3aを繰り返すが、900℃の温度で実施する。
実施例3d
実施例3aを繰り返すが、925℃の温度で実施する。
【表3】
実施例3は、光学特性、特に金属光沢に対する温度の影響を示している。≧900℃の温度では、金属光沢が失われ、つや消しのシルバーグレーエフェクト顔料が得られる。
【0031】
実施例4
表4にまとめたように、実施例2e及び3aと同様に、種々の割合のケイ素、塩化カルシウム、フッ素金雲母を用いて、その他は同一の反応条件及び同じワークアップで変形を実施する。
【表4】
実施例4a~4fはそれぞれ、金属光沢と高い隠蔽力とを有するシルバーグレーエフェクト顔料を与える。顔料は、明度は非常に近いが、青みが異なる。対照的に、比較例1a~cに従って調製された顔料は、黄色み~鳥の子色の色相を示す。メタリックエフェクト顔料にはクールな強い青色の色相が期待される。
【0032】
実施例5:種々のTiO
2層厚を有するエフェクト顔料
実施例5a
30gのIriodin(登録商標)211 Fine Red(白色のマストーン及び赤色の反射と、5~25μmの粒径分布とを有するTiO
2被覆雲母フレーク、Merck KGaA)と、0.26gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.46gのCaCl
2粉末(<20μm;Merck KGaA)及び0.45gの粉砕フッ素金雲母(<15μm、Merck KGaA)とを、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に粉砕する。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(925℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに15分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、40μmの篩にかける。
ペールグリーンの干渉顔料は、グレー吸収と高い隠蔽力とを有する青緑色のエフェクト顔料を与える。
実施例5b
30gのIriodin(登録商標)231 Fine Green(白色のマストーン及び緑色の反射と、5~25μmの粒径分布とを有するTiO
2被覆雲母フレーク、Merck KGaA)と、0.26gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.46gのCaCl
2粉末(<20μm;Merck KGaA)及び0.45gの粉砕フッ素金雲母(<15μm、Merck KGaA)とを、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に粉砕する。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(925℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに15分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、40μmの篩にかける。
グレー吸収と高い隠蔽力とを有する銅色のエフェクト顔料が得られる。
【表5】
【0033】
実施例6
実施例6a
30gのColorstream(登録商標)T10-02 Arctic Fire(5~60μmの粒径分布を有するTiO
2被覆SiO
2フレーク、Merck KGaA)と、0.26gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.46gのCaCl
2粉末(<20μm;Merck KGaA)及び0.45gの粉砕フッ素金雲母(<15μm,Merck KGaA)とを激しく混合する。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(925℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに30分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、63μmの篩にかける。
このようにして得られたエフェクト顔料は、ライラックからペールグリーンの強いカラーフロップと金属光沢を示す。
実施例6b
更に、次の表に示すように、より大量の反応物を使用して、より暗い変異体が調製される。
反応物の割合が高くなると、エフェクト顔料の外観が著しく暗くなる。カラーフロップはそれほど顕著ではない。
【表6】
【0034】
実施例7:基材としてガラスフレークを用いた実施例
実施例7a
30gのMiraval(登録商標)5311 Scenic White(白色のマストーンと、10~100μmの粒径分布とを有するTiO
2被覆ガラスフレーク、Merck KGaA)と、0.79gのSi粉末(粒径<100μm;Merck KGaA)、0.69gのCaCl
2粉末(<20μm;Merck KGaA)及び1.35gの粉砕フッ素金雲母(<15μm、Merck KGaA)とを、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に混合する。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(700℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに45分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、100μmの篩にかける。
実施例7b
30gのMiraval(登録商標)5402 Pacific Twinkle(白色のマストーンと、10~100μmの粒径分布とを有するTiO
2被覆ガラスフレーク、Merck KGaAと、0.79gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.69gのCaCl
2粉末(<20μm;Merck KGaA)及び1.35gの粉砕フッ素金雲母(<15μm、Merck KGaA)とを、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に混合する。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(700℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに45分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、100μmの篩にかける。
実施例7a及び7bのエフェクト顔料は、ベース顔料と比較して外観が暗い;実施例7aのシルバー顔料は、認識可能なメタリック特性を有し、実施例7bのターコイズ干渉顔料は強力な青色エフェクト顔料となるが、いずれの実施例でも、温度の影響を受けやすいガラスフレークの破壊を避けるために焼成は700℃でしか実施しない。
【表7】
【0035】
実施例8:基材として合成雲母を用いた実施例
実施例8a
30gのIriodin(登録商標)6123(5~25μmの粒径分布を有するTiO
2被覆合成雲母フレーク(=フッ素金雲母)、Merck KGaA)と0.34gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.23gのCaCl
2粉末(<20μm、Merck KGaA)及び0.45gのタルク(<15μm、Mondo)とを、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に混合する。フッ素含有基材(合成雲母)により、フッ化物前駆体の更なる添加は省略される。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(850℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに45分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、40μmの篩にかける。
実施例8b
実施例8aは、表8に示すように、反応物の使用を減らして繰り返す。
合成雲母(=フッ素金雲母)を含む基材はそれ自体が十分な量のフッ化物イオンを含有することから、追加のフッ化物前駆体の添加は不要である。実施例8aの顔料は、還元される顔料の内部にフッ化物供給源があることから、例えば、純粋なフッ素金雲母との物理的混合物よりもかなり暗い。従って、反応物の使用を大幅に削減した実施例8bは、明度及び隠蔽力が実施例4の顔料に近い顔料を与える。
【表8】
【0036】
実施例9:基材としてAl2O3フレークを用いた実施例
実施例9a
30gのXirallic(登録商標)Crystal Silver T50-10(白色のマストーン及びシルバーホワイトの反射と、15~22μmの粒径分布とを有するTiO2被覆酸化アルミニウムフレーク、Merck KGaA)、0.34gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.23gのCaCl2粉末(<20μm;Merck KGaA)と、0.45gのタルク(Talk)(<15μm、Mondo)及び0.1gのCaF2粉末(<20μm、Merck KGaA)とを、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に混合する。MgF2(<20μm、Merck KGaA)及びフッ素金雲母(<15μm、合成雲母、Merck KGaA)をCaF2の代わりに用いて実験を実施する。フッ素金雲母を使用した場合、フィロシリケートはタルクのように混合物の流動性を改善することから、タルクの添加が省略される。それぞれの量を以下の表(9a~c)に記載している。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(850℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに45分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、40μmの篩にかける。
実施例9a~cのエフェクト顔料は、暗いメタリックグレーの色相を有し、酸化アルミニウムを基材として使用すると典型的なスパークル効果を示す。実施例9a及び9bでは、青色の色相が明白である。
【0037】
変形では、10gのXirallic(登録商標)Crystal Silver T50-10(白色のマストーン及びシルバーホワイトの反射と、15~22μmの粒径分布とを有するTiO
2被覆酸化アルミニウムフレーク、Merck KGaA)、0.11gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.08gのCaCl
2粉末(<20μm;Merck KGaA)を、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に混合し、石英ボートの中央に均一に積み重ねて分布させる。0.2gのCaF
2粉末(<20μm,Merck KGaA)を、混合物に沿って、石英ボートの左右両側に約2cm離して積み重ねる。それぞれの量を以下の表(実施例9e)に記載している。対照実験(実施例9d)では、混合物に沿ってCaF
2が配置されていない。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(850℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに30分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。
実施例9d及び9eからの未処理顔料の混合物、対照実験(CaF
2なし)、反応混合物近傍にCaF
2がある実験の試料を採取し、蒸留水で洗浄し、110℃で乾燥する。こうして調製した試料を、X線光電子分光法(XPS)で処理し、TiO
2結晶格子中のTi
3+及びF
-の状態を明らかにする。
【表9】
燃焼イオンクロマトグラフィーによる定量的フッ化物測定は、試料1g当たり540~935μgのフッ化物の値を与える(0.003~0.005at%のフッ化物に相当する)。
【0038】
実施例10:雲母フレーク上のNbドープ酸化チタン
700℃の空気中で白色のマストーン及び青みの反射を有し、10~60μmの粒径分布を有するTiO
2被覆雲母フレーク(酸化チタンは、対応するTiCl
4とNbCl
5のHClと脱イオン水との混合溶液中での共析による合成の間に8モル%のニオブが既にドープされている)を30gと、0.26gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.34gのCaCl
2粉末(<20μm;Merck KGaA)及び0.45gのフッ素金雲母(<15μm、合成雲母、Merck KGaA)とを、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に混合する。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ライン(グランドジョイント-オリーブアダプタ)が設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れる。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(850℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに45分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、40μmの篩にかける。
比較として、析出後110℃で18時間乾燥させたNbドープTiO
2顔料の試料を、空気中、850℃で45分間焼成する。この焼成粉末を、同様に、40μmの篩にかける。
【表10】
【0039】
実施例11:水酸化ナトリウム溶液による後処理
実施例2aに対応する250gのエフェクト顔料を、約2000mLの脱イオン水(10~15質量%)に懸濁し、900回/分で撹拌しながら70℃まで温める。32%水酸化ナトリウム溶液を用いて、60分にわたってpHを11.0にする。pHは一定に保たれないが、次の8時間にわたり、32%水酸化ナトリウム溶液の計量添加によって継続的に再調節する。懸濁液を、まだ温かい間に濾過し、濾液の導電率が200μS/cmを下回るまで、フィルターに脱イオン水をかけてすすぐ。
この時点で、材料を90℃で16時間乾燥させてもよく、又は後被覆用の水性懸濁液として直接使用することもできる(実施例13参照)。
生成物は、色の変化はないが、かなり微細になり、篩にかけやすくなり得る。ペイントカードでは顔料のより均一な分布が明らかである。
顔料塗料用途の粒状性は、BYK Instrumentsの mac i多角度色効果測定装置(byk-instruments.com)を用いて評価できる。このために、上記の装置内で、CCDチップを用いて拡散照明下で画像を生成し、対応する明/暗分布を評価する。粒状性の値が小さいことは、より均一な表面であることを表す。≦2.5の粒状性の値は、上記用途で有利であることが頻繁に証明されている。粒状性因子は、概して、光学観察及び顕微鏡観察と非常によく相関する。
【表11】
【0040】
実施例12:物理的特性/レーダー透過性
30gのIriodin(登録商標)119(5~25μmの粒径分布を有するTiO2被覆雲母フレーク、Merck KGaA)又は同量の30gのXirallic(登録商標)Crystal Silver T50-10(白色のマストーン及びシルバーホワイトの反射と、15~22μmの粒径分布とを有するTiO2被覆酸化アルミニウムフレーク、Merck KGaA)、0.34gのSi粉末(<100μm;Merck KGaA)、0.23gのCaCl2粉末(<20μm;Merck KGaA)と、0.45gのタルク(<15μm、Mondo)及び0.1gのCaF2粉末(<20μm、Merck KGaA)とを、Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内のPP容器内で慎重に混合する。それぞれの量を表11に記載している。この混合物を、石英ボート内に均一に分布させる。ボートを、その両側にガス供給ラインが設けられた石英管(内径5cm、長さ100cm)に入れた。(グランドジョイント-オリーブアダプタ)。窒素を一方の入口から55L/時(1.75bar)で反応スペースに吹き込み、液体が上昇してオーブンに戻り得ないように接続した一対の洗浄瓶を通して、もう一方の端の排気口へと供給する。15分後、石英管を、ボートが加熱帯(850℃又は875℃の温度に調節された)の中心にくるように管状オーブンに入れ、そこに45分間放置する。次いで、石英管をオーブンから取り出し、窒素流下で30分間冷却する。焼成した粉末を、40μmの篩にかける。
【0041】
塗料層のレーダー透過性を評価できるように、MIPAのWBC 000(結合剤)533.42gと、顔料(18%PMC)16.17gとを用いて塗料を調製し、Mitsubishi Polyester Film GmbHの350μm厚のHostaphan RN 350 PETフィルム(A4サイズ)への空圧式塗布によって3コートで塗布する。このようにして作製されたフィルムの層厚を表12に示す。
参照として、非コートPETフィルム(実施例12h)及びアルミニウム顔料(Stapa(登録商標)IL Hydrolan 2156とStapa(登録商標)IL Hydrolan 8154(Eckar)との1:1混合物)で被覆されたフィルムの両方を、上記と同じ調製物(18%PMC)で調製し、測定する。
被覆の誘電率及び基材上の被覆の一方向伝送減衰の測定は、Perisens GmbHのモデルRMS-D-77/79G装置を標準モードで用いて実施した。
表12に、PETフィルムと塗布された塗料層とからなる層構造による、誘電率(誘電率)及びレーダー信号の一方向伝送減衰(dB)を示す。ここではレーダービームの1回の通過のみが考慮される。
粉末抵抗は、円筒形の電気絶縁プラスチック測定セルに、2つの電気的に接続したラム(ram)の間で10kgのおもりを用いて試料を圧縮して測定した。圧縮後に、測定セルに約1cmの試料高さが得られるようにセルを充填する。cm単位の高さhは、ラムの目盛りから決定される。試料底部面積は、直径d=2cmのラムの寸法によって与えられる。抵抗Rは、Flukeの287True RMS Multimeter測定器を使用して1Vの電圧で測定される。これを用いて、比粉末抵抗ρ
Sを計算する。
ρ
S=R×π×(d/2)
2/時
【表12】
【表13】
実施例は全て、雲母又は酸化アルミニウムベースの顔料の(実施例12a~gの)使用時のレーダー信号減衰が、アルミニウム顔料(比較例12i)と比べて明らかに減少することを示す。レベル、出力、又はフィールドにおける減衰の程度を通常のデシベル(dB)単位で引用すると、アルミニウム色素沈着(実施例12i)では3.73dBの値となり、これは、1回の通過でレーダービームの当初出力の57%超が損失することを表す。本発明による顔料(実施例12a~g)は、対照的に、減衰は1.20~1.30であり、これは、1回の通過で当初出力の26%未満が損失することを表す。しかし、PET支持フィルムは、既に21.5%の割合を有し、その一方向減衰は1.05である。従って、本発明による顔料を用いた色素沈着は、レーダー対応塗料配合物の実現に大いに寄与する。
【0042】
実施例13:被覆後
実施例2aのエフェクト顔料150gを、室温、700回/分で撹拌しながら、1350mLの脱イオン水に懸濁する(=10%顔料懸濁液)。バッチの温度を75℃に調節する(45分)。
顔料の懸濁液後、硫酸(5%)を用いて6.8のpHを確立し、この混合物を更に15分間撹拌する。必要に応じて、NaOH又はH2SO4を使用してpHを修正する。
6.8gのAlCl3・6H2O(Merck KGaA)を60gの脱イオン水中に含む塩化アルミニウム溶液を、120分の間、75℃で、Ismatecホースポンプを用いて均一速度で計量する。この添加中、水酸化ナトリウム溶液(5%)を使用して、pHを6.8で一定に保つ。その後の10分の撹拌時間、pHを6.80に保つ。
pHを、少量のH2SO4(5%)を使用して、ゆっくりと(5分)pH6.3に調節する。その後の5分の撹拌時間、pHを6.3に保つ。
8.4gの27%ナトリウム水ガラス溶液(Merck KGaA)から希釈したナトリウム水ガラス溶液と、60gの脱イオン水とを、120分にわたり、Ismatecホースポンプを使用して、均一速度で計量する。この添加中、硫酸(5%)を使用して、pHを6.3で一定に保つ。その後の20分の撹拌時間、pHを6.30に保つ。
pHを、少量のNaOH(5%)を使用して、ゆっくりとpH8.0に調節する。その後の5分の撹拌時間、pHを8.0に保つ。
3.0gの2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ABCR;AB111130)と3.0gの3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(ABCR;111201)との混合物を、60分にわたり、75℃で、撹拌(700回/分)しながら、滴下漏斗を用いて一定速度で添加する。5%水酸化ナトリウム溶液を計量添加して、pH8.0を一定に保つ。その後の45分の撹拌時間はpH調節しない。加熱及び撹拌機のスイッチを切る。試料を沈降させる。
懸濁液を、吸込フィルターに直接排出し、濾過し、導電率が30μS/cmの値を下回るまで、6×1Lの冷脱イオン水で少しずつ洗浄する。
最後に、生成物を吸引乾燥する。
その後、顔料を、150℃に予熱したファン付き乾燥機に入れた磁製皿中で、少しの層厚(3~4cm)で16時間乾燥させる。
乾燥生成物を、少しずつ、メッシュ幅40μmのレッチェふるいにかける。収率は、154gの後被覆された生成物である。
生成物は、色の変化はないが、流動性である。ペイントカードでは顔料のより均一な分布が明らかである。
その後、塗料製造業者のPPG及びAxaltaの塗料系における耐候試験(SAEJ 2527)において、実施例2で得た材料は、2000時間後及び4000時間後に、クロマ及び隠蔽力のシフトがわずかしかない良好な安定性が明らかである。
【0043】
ペイントカード作製/色測定
本発明に従って記載された顔料の比色評価を可能にするため、0.9gの各顔料試料を53.6gのニトロセルロース/アクリル樹脂塗料に組み込み、Speedmixer(Hauschild、2分、2800rpm)を用いて均質化し、気泡をなくす。顔料/塗料混合物を、塗装具を使用して、黒/白カードに、湿潤膜厚500μmで塗布する。
カードを、多角度分光光度計(Byk-GardnerのByk Mac-i)を用いて測定する。ここで、以下の値を表に示す:
・塗料調製物の明度、赤-緑及び青-黄の色相に関するL×15°b、a×15°b、b×15°bの値(EN ISO11664-4に従うCIELAB色空間);反射角から15°で測定した黒色カード上の値(b)をここに示している。
ペイントカード上の黒色背景と白色背景との間の差が明白でないほど、顔料は不透明である。ΔE(75°)=((L×75°b-L×75°w)^2+(a×75°b-a×75°w)^2+(b×75°b-b×75°w)^2)^0.5;黒/白カード(b=黒、w=白)上で、反射角から75°戻って塗料調製物の対応部分で測定された隠蔽力の指標としての色分離。
色分離ΔE(75°)
【数1】
を用いて、多角度分光光度計(
図1)において、黒色背景又は白色背景上での顔料調製物の外観の違いを示すことができる。顔料調製物が完全に不透明の場合、差は測定できずΔE(75°)=0である。ΔE(75°)の値が小さいほど、調製物は不透明である。更に、同じ条件:同じ顔料濃度、同じ膜厚、同じ光条件(好ましくは同じ測定装置)を、常に設定しなければならない。異なる構造(サイズ、モルホロジー)を有する顔料は限られた範囲でしか比較できない。
【表14】
【表15】
【0044】
Fの定量的測定:
サンプル調製/測定:それぞれの場合に、約2mg(6倍定量)の試料を犠牲バイアル(sacrificial vial)付き石英ボートに秤り入れ、CIC(燃焼イオンクロマトグラフィー)を用いて、酸素流中、1050℃のオーブン温度で燃焼させる。吸収溶液に(H
2O
2溶液)にガスを収集し、酸化し、アニオンを、ICを用いて測定する。
燃焼イオンクロマトグラフィーによるフッ化物の定量的測定は、試料1g当たり550~950μgのフッ化物の値を与える(0.003~0.005at%のフッ化物に相当する)。
【表16】
【0045】
使用例(UE)
実施例UE1:自動車塗料
実施例12の顔料をMIPA WBC 000ベースペイント(MIPA SE)に混ぜ込む。標的シェードに応じて、一定量の顔料を使用する。フルトーンを生成するために、実施例12の上記顔料の2質量%を配合に利用する。蒸留水で希釈することにより、1000s-1で70~75mPa・sのスプレー粘度に塗料を調節する必要があることが明らかになる場合がある。着色されたベース塗料を、Lenetaの黒/白T21G 金属パネルにスプレーコーティングによって塗布する。この目的で、DeVilbiss AGMD2616スプレーガン(1.4mmノズル、767c cap)を有する自動Oerter APL 4.6スプレー塗布器が使用される。スプレー圧は4200mbar、材料流量は約110mL/分、スプレーガンと基材の間隔は約30cmである。スプレーガンは0.45m/秒で移動し、30秒の間隔で3層が塗布される。得られる乾燥膜厚は、10~20μm、好ましくは11~15μmである。着色層を室温で空気循環して予備乾燥させた後、この基材の上にクリアコートを塗布し、完全な被覆を焼成する。
パネルはペールシルバーグレーの外観で、優れた隠蔽力と、傾斜に対する強い明暗効果を示す。
実施例UE2:ボール紙への溶剤系グラビア印刷
実施例12の顔料90gを、200gのSiegwerk NC TOB OPV 00結合剤と共に、Engelsmann RRM Mini-IIタンブルミキサーで5分間混合する。その後、粘度を調節するために、混合物を、エタノールと酢酸エチル2:1(V/V)を含む溶剤混合物の少なくとも125gと共にVisco-Jetスターラーを使用して1200rpmで均質化する。DIN4フローカップに同じ溶剤混合物を200gまで入れ、流下時間が17秒(23℃)となるように粘度を調節する。このようにして調製された印刷インクは、70ライン/cm、インターセルチャンネル、及び横方向セルで電気化学的に刻印されたグラビアシリンダーを備えた標準的な商業印刷機で使用される。好適な基材は、フィルム、コート紙、被覆ボール紙の両方である。その結果、黒色ボール紙上でも、メタリックの外観を有するペールシルバーグレーの、エッジが鋭く均一に不透明な印刷画像が得られる。
実施例UE3:射出成形用プラスチック顆粒
Lyondell Basell のPurell GA 776ポリエチレン(PE-HD)顆粒494gを、ColorMatrix のProcess Aid-24(接着促進剤)1gと共に、Engelsmann RRM Mini-IIタンブラーミキサー内で5分間混合し、次いで、実施例12の顔料5gを添加し、混合を更に5分間継続する。こうして調製された乾燥混合物を、9×6×0.1cmの寸法のプラスチック試料タイルの射出成形に使用する。試料は、実施例の顔料の均一なメタリックシルバーの光沢を示す。
【0046】
実施例UE4:口紅
【表17】
相Bの成分を75℃に加熱し、溶融する。実施例4bの顔料(相A)を添加し、撹拌により全てをよく混合する。次に、口紅材料を鋳造装置内で相Cの香料と共に撹拌し、65℃の温度で15分間保持する。均質な溶融物を55℃に予熱した鋳型に注ぐ。その後金型を冷却し、冷えたら鋳造物を取り出す。
使用例は、塗ったときに金属光沢を有する非常に不透明な銀色の口紅を与える。
【0047】
実施例UE5:マニキュア
【表18】
実施例7bで得た顔料0.5gを、International Lacquers nailpolish&careのREF BASE 12898マニキュアベース24.5gと共に秤り取り、スパチュラを用いて手でよく混合し、その後Hauschild DAC 150 FVZ Speedmixer内で、1200rpmで4分間均質化する。