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特開2024-88179研磨ヘッド、研磨装置及び半導体ウェーハの製造方法
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  • 特開-研磨ヘッド、研磨装置及び半導体ウェーハの製造方法 図1
  • 特開-研磨ヘッド、研磨装置及び半導体ウェーハの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088179
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】研磨ヘッド、研磨装置及び半導体ウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/30 20120101AFI20240625BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20240625BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B24B37/30 E
B24B37/10
H01L21/304 622G
H01L21/304 622K
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203230
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】太田 広樹
(72)【発明者】
【氏名】寺川 良也
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AB04
3C158AC04
3C158BA05
3C158BB02
3C158BC01
3C158BC02
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EA13
3C158EA14
3C158EA19
3C158EA23
3C158EA25
3C158EB01
5F057AA02
5F057AA16
5F057AA31
5F057BA01
5F057BA12
5F057BB03
5F057CA02
5F057CA09
5F057CA11
5F057DA03
5F057DA05
5F057DA08
5F057DA11
5F057EC24
5F057EC25
5F057FA14
5F057FA19
5F057FA20
5F057GA02
5F057GA27
(57)【要約】
【課題】ワークの研磨対象表面における研磨量の面内均一性を高めることが可能な2ゾーンメンブレンヘッドを提供すること。
【解決手段】第1の環状部材と第1の環状部材の開口部の上面側開口を閉塞する閉塞部材と第1の環状部材の開口部の下面側開口を閉塞するメンブレンと上記メンブレンの下方に位置し研磨対象のワークを保持する開口部を有する第2の環状部材とを有する研磨ヘッド。 第1の環状部材の開口部の中心に向かう方向を内側、他方の方向を外側として、第1の環状部材の開口部が上記閉塞部材と上記メンブレンとによって閉塞されて形成された空間が、上部環状接続部が上記閉塞部材に接続され且つ下部環状接続部が上記メンブレンに接続された環状の仕切り壁によって内側空間と外側空間とに仕切られ、上記環状の仕切り壁の下部環状接続部の内径は、第2の環状部材の内径より大きく、且つ、上記環状の仕切り壁の上部環状接続部の半径は、研磨対象のワークの設置位置の半径を100%として33%以上90%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の環状部材と、
第1の環状部材の開口部の上面側開口を閉塞する閉塞部材と、
第1の環状部材の開口部の下面側開口を閉塞するメンブレンと、
前記メンブレンの下方に位置し、研磨対象のワークを保持する開口部を有する第2の環状部材と、
を有し、
第1の環状部材の開口部の中心に向かう方向を内側、他方の方向を外側として、
第1の環状部材の開口部が前記閉塞部材と前記メンブレンとによって閉塞されて形成された空間が、上部環状接続部が前記閉塞部材に接続され且つ下部環状接続部が前記メンブレンに接続された環状の仕切り壁によって内側空間と外側空間とに仕切られ、
前記環状の仕切り壁の下部環状接続部の内径は、第2の環状部材の内径より大きく、且つ、
前記環状の仕切り壁の上部環状接続部の半径は、研磨対象のワークの設置位置の半径を100%として33%以上90%以下である、研磨ヘッド。
【請求項2】
前記研磨対象のワークの研磨対象表面の形状は凹形状である、請求項1に記載の研磨ヘッド。
【請求項3】
前記環状の仕切り壁は、傾斜形状及び水平形状からなる群から選ばれる側面形状を断面形状に含み、且つ
前記側面形状の少なくとも一部の鉛直下方に、第2の環状部材の内側周端及び研磨対象のワークの設置位置の外側周端を含む領域が位置する、請求項1に記載の研磨ヘッド。
【請求項4】
前記閉塞部材は、上部円盤状部材と、上部円盤状部材より外径が小さい下部円盤状部材と、を含み、
前記環状の仕切り壁は、上部環状接続部が前記下部円盤状部材の側面に接続している、請求項1に記載の研磨ヘッド。
【請求項5】
前記メンブレンと第2の環状部材との間にバックパッドを更に有する、請求項1に記載の研磨ヘッド。
【請求項6】
前記内側空間に気体を導入する導入路と、
前記外側空間に気体を導入する導入路と、
を更に有する、請求項1に記載の研磨ヘッド。
【請求項7】
前記研磨対象のワークの研磨対象表面の形状は凹形状であり、
前記環状の仕切り壁は、傾斜形状及び水平形状からなる群から選ばれる側面形状を断面形状に含み、
前記側面形状の少なくとも一部の鉛直下方に、第2の環状部材の内側周端及び研磨対象のワークの設置位置の外側周端を含む領域が位置し、
前記閉塞部材は、上部円盤状部材と、上部円盤状部材より外径が小さい下部円盤状部材と、を含み、
前記環状の仕切り壁は、上部環状接続部が前記下部円盤状部材の側面に接続し、
前記メンブレンと第2の環状部材との間にバックパッドを更に有し、
前記内側空間に気体を導入する導入路と、
前記外側空間に気体を導入する導入路と、
を更に有する、請求項1に記載の研磨ヘッド。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の研磨ヘッドと、
研磨パッドと、
前記研磨パッドを支持する定盤と、
を有する研磨装置。
【請求項9】
請求項8に記載の研磨装置によって研磨対象の半導体ウェーハの表面を研磨して研磨面を形成することを含む、半導体ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨ヘッド、研磨装置及び半導体ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等のワークの表面を研磨する装置には、ワークの片面を研磨する片面研磨装置と、ワークの両面を研磨する両面研磨装置とがある。片面研磨装置では、通常、研磨ヘッドに保持されたワークの研磨対象表面を、定盤に貼り付けられた研磨パッドに押し付けながら、研磨ヘッドと定盤とをそれぞれ回転させて、ワークの研磨対象表面と研磨パッドとを摺接させる。こうして摺接する研磨対象表面と研磨パッドとの間に研磨剤を供給することにより、ワークの研磨対象表面を研磨することができる。
【0003】
上記のような片面研磨装置において、研磨ヘッドに保持されたワークを研磨パッドに押し付ける方法としては、ラバーチャック方式が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4833355号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラバーチャック方式の研磨ヘッドでは、メンブレン(特許文献1ではラバー膜と呼ばれている。)の背面の空間に空気等の気体を導入することによりメンブレンを膨らませることによって、ワークを押圧することができる。
【0006】
特許文献1には、上記空間が2つの空間に仕切られた研磨ヘッドが開示されている(特許文献1の図1等参照)。以下において、メンブレンの背面の空間が2つの空間に仕切られた研磨ヘッドを、2ゾーンメンブレンヘッドと呼ぶ。本発明者が、2ゾーンメンブレンヘッドについて検討したところ、ワークの研磨対象表面において研磨量の面内バラつきが生じ易いことが判明した。
【0007】
本発明の一態様は、ワークの研磨対象表面における研磨量の面内均一性を高めることが可能な2ゾーンメンブレンヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、以下の通りである。
[1]第1の環状部材と、
第1の環状部材の開口部の上面側開口を閉塞する閉塞部材と、
第1の環状部材の開口部の下面側開口を閉塞するメンブレンと、
上記メンブレンの下方に位置し、研磨対象のワークを保持する開口部を有する第2の環状部材と、
を有し、
第1の環状部材の開口部の中心に向かう方向を内側、他方の方向を外側として、
第1の環状部材の開口部が上記閉塞部材と上記メンブレンとによって閉塞されて形成された空間が、上部環状接続部が上記閉塞部材に接続され且つ下部環状接続部が上記メンブレンに接続された環状の仕切り壁によって内側空間と外側空間とに仕切られ、
上記環状の仕切り壁の下部環状接続部の内径は、第2の環状部材の内径より大きく、且つ、
上記環状の仕切り壁の上部環状接続部の半径は、研磨対象のワークの設置位置の半径を100%として33%以上90%以下である、研磨ヘッド。
[2]上記研磨対象のワークの研磨対象表面の形状は凹形状である、[1]に記載の研磨ヘッド。
[3]上記環状の仕切り壁は、傾斜形状及び水平形状からなる群から選ばれる側面形状を断面形状に含み、且つ
上記側面形状の少なくとも一部の鉛直下方に、第2の環状部材の内側周端及び研磨対象のワークの設置位置の外側周端を含む領域が位置する、[1]又は[2]に記載の研磨ヘッド。
[4]上記閉塞部材は、上部円盤状部材と、上部円盤状部材より外径が小さい下部円盤状部材と、を含み、
上記環状の仕切り壁は、上部環状接続部が上記下部円盤状部材の側面に接続している、[1]~[3]のいずれかに記載の研磨ヘッド。
[5]上記メンブレンと第2の環状部材との間にバックパッドを更に有する、[1]~[4]のいずれかに記載の研磨ヘッド。
[6]上記内側空間に気体を導入する導入路と、
上記外側空間に気体を導入する導入路と、
を更に有する、[1]~[5]のいずれかに記載の研磨ヘッド。
[7]上記研磨対象のワークの研磨対象表面の形状は凹形状であり、
上記環状の仕切り壁は、傾斜形状及び水平形状からなる群から選ばれる側面形状を断面形状に含み、
上記側面形状の少なくとも一部の鉛直下方に、第2の環状部材の内側周端及び研磨対象のワークの設置位置の外側周端を含む領域が位置し、
上記閉塞部材は、上部円盤状部材と、上部円盤状部材より外径が小さい下部円盤状部材と、を含み、
上記環状の仕切り壁は、上部環状接続部が上記下部円盤状部材の側面に接続し、
上記メンブレンと第2の環状部材との間にバックパッドを更に有し、
上記内側空間に気体を導入する導入路と、
上記外側空間に気体を導入する導入路と、
を更に有する、[1]に記載の研磨ヘッド。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の研磨ヘッドと、
研磨パッドと、
上記研磨パッドを支持する定盤と、
を有する研磨装置。
[9][8]に記載の研磨装置によって研磨対象の半導体ウェーハの表面を研磨して研磨面を形成することを含む、半導体ウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様にかかる研磨ヘッド(2ゾーンメンブレンヘッド)によれば、ワークの研磨対象表面における研磨量の面内均一性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一態様にかかる研磨ヘッドの一例を示す概略断面図である。
図2図1に示されている研磨ヘッド1Aにおける環状の仕切り壁15Aの接続部の説明図である。
図3図1に示されている研磨ヘッド1Aにおける環状の仕切り壁15Aの接続部の説明図である。
図4】環状の仕切り壁の内壁面及びメンブレンの上面の説明図である。
図5】本発明の一態様にかかる研磨ヘッドの一例を示す概略断面図である。
図6】本発明の一態様にかかる研磨ヘッドの一例を示す概略断面図である。
図7】本発明の一態様にかかる研磨ヘッドの一例を示す概略断面図である。
図8】本発明の一態様にかかる研磨装置の一例を示す概略断面図である。
図9】実施例および比較例の各研磨ヘッドを使用して研磨処理1が施されたシリコンウェーハについて、研磨処理前後のGBIR値をプロットしたグラフである。
図10】実施例および比較例の各研磨ヘッドを使用して研磨処理2が施されたシリコンウェーハについて、研磨処理前後のGBIR値をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[研磨ヘッド]
本発明の一態様にかかる研磨ヘッドは、第1の環状部材と、第1の環状部材の開口部の上面側開口を閉塞する閉塞部材と、第1の環状部材の開口部の下面側開口を閉塞するメンブレンと、上記メンブレンの下方に位置し、研磨対象のワークを保持する開口部を有する第2の環状部材と、を有する。上記研磨ヘッドにおいて、第1の環状部材の開口部の中心に向かう方向を内側、他方の方向を外側として、第1の環状部材の開口部が上記閉塞部材と上記メンブレンとによって閉塞されて形成された空間が、上部環状接続部が上記閉塞部材に接続され且つ下部環状接続部が上記メンブレンに接続された環状の仕切り壁によって内側空間と外側空間とに仕切られ、上記環状の仕切り壁の下部環状接続部の内径は、第2の環状部材の内径より大きく、且つ、上記環状の仕切り壁の上部環状接続部の半径は、研磨対象のワークの設置位置の半径を100%として33%以上90%以下である。
以下、上記研磨ヘッドについて、更に詳細に説明する。本発明及び本明細書において、「下面」、「下方」、「上面」、「上部」、「下部」等の表記は、研磨ヘッドが研磨処理を行う状態に置かれたときの「下面」、「下方」、「上面」、「上部」、「下部」等を意味する。本発明及び本明細書において、「傾斜」及び「水平」は、研磨ヘッドが研磨処理を行う状態に置かれたときの水平方向に対して傾斜している場合を「傾斜」と呼び、かかる水平方向に対して平行な場合を「水平」と呼ぶ。また、第1の環状部材の開口部の中心に向かう方向を内側、他方の方向を外側と呼ぶ。「環状」とは、開口を有する形状をいい、開口の平面視形状は円形であることができる。以下では、図面に基づき本発明を説明するが、図面に示す実施形態は例示であって、かかる実施形態に本発明は限定されない。また、図中、同一の部分には同一の符号を付している。
【0012】
図1及び図5図7は、それぞれ本発明の一態様にかかる研磨ヘッドの一例を示す概略断面図である。図1中の研磨ヘッド1A、図5中の研磨ヘッド1B、図6中の研磨ヘッド1C及び図7中の研磨ヘッド1Dを、総称して研磨ヘッド1と呼ぶことがある。また、図1中の環状の仕切り壁15A、図5中の環状の仕切り壁15B、図6中の環状の仕切り壁15C及び図7中の環状の仕切り壁15Dを、総称して環状の仕切り壁15と呼ぶことがある。図1及び図5図7の各図において、ヘッド本体の図示は省略している。図1及び図5図7の各図に示されている部分の上方にはヘッド本体が位置し、各図に示されている部分はボルト止め等の公知の方法によってヘッド本体に取り付けられる。
【0013】
図1及び図5図7の各図において、研磨ヘッド1は、第1の環状部材11を有する。第1の環状部材11は、円環状上面と円環状下面とを有し、上面の内径は下面の内径と同じ値であり、上面の外径は下面の外径と同じ値である。即ち、第1の環状部材11は、外形が円筒状であって、開口部の形状も円筒状である。この点は、後述する第2の環状部材12についても同様である。なお、本発明及び本明細書において、「同じ値」とは、完全に一致する場合と製造上不可避的に生じ得る誤差を含む場合とを包含する意味で用いられる。この点は、円筒等の形状に関する用語についても同様である。第1の環状部材11としては、片面研磨装置の研磨ヘッドに通常使用されるステンレス鋼材(SUS)等の剛性材料製の環状リングを使用することができる。
【0014】
第1の環状部材11の下面は、メンブレン13で覆われている。メンブレン13は、第1の環状部材11の少なくとも下面側開口を閉塞すればよいが、メンブレン13が膨らんだ際に位置ずれを起こすことを抑制する観点及び第1の環状部材11の開口部に研磨剤が混入することを抑制する観点からは、第1の環状部材11の円環状下面全面もメンブレン13によって覆うことが好ましい。メンブレン13は、接着剤の使用等の公知の方法によって第1の環状部材11の円環状下面と貼り合わせることができる。また、図1及び図5図7の各図に示されているように、メンブレン13を第1の環状部材11の側面の一部又は全部にわたるように貼り合わせることも好ましい。メンブレン13としては、ゴム等の弾性を有する材料製の膜を使用することができる。ゴムとしては、例えばフッ素ゴムを挙げることができる。メンブレン13の厚さは、特に限定されず、例えば0.5~2mm程度であることができる。
【0015】
図1及び図5図7の各図において、メンブレン13の下面にはバックパッド14が貼り合わされている。バックパッド14は、接着剤の使用等の公知の方法によってメンブレン13の下面と貼り合わせることができる。メンブレン13の下面の外周領域と第2の環状部材12の円環状上面とが直接接することも可能であるが、メンブレン13の剥離やうねりの発生を抑制する観点からは、バックパッド14がメンブレン13の下面の外周領域と第2の環状部材12の円環状上面との間に介在していることが好ましい。バックパッド14としては、例えば、水を含むと水の表面張力により吸着性を示す材料(例えば発泡ポリウレタン等)製の円盤状の板を用いることができる。これにより、研磨時に水を含んだバックパッド14にワークを保持させることができる。
【0016】
図1及び図5図7の各図において、メンブレン13は、第1の環状部材11の下面側開口を閉塞している。第1の環状部材11の上面側開口は、上部円盤状部材10aと下部円盤状部材10bとによって構成される閉塞部材によって閉塞されている。下部円盤状部材10bは、上部円盤状部材10aより外径が小さい円盤状部材である。上部円盤状部材10aと下部円盤状部材10bは、上面外径と下面外径が同じ値の円盤形状の平板であることができ、例えば同心円状に配置することができる。なお、図1及び図5図7の各図において、上部円盤状部材10aと下部円盤状部材10bは別部材であって、任意の手段(例えば一方に凹部を設け他方に凸部を設けて凹部に凸部をはめ込む方法、ボルト止め、接着剤による貼り合わせ等)によって固定されている。ただし、本発明の一態様にかかる研磨ヘッドは、かかる構成に限定されず、閉塞部材は、上部円盤状部と上部円盤状部より外径が小さい下部円盤状部とが一体成型された部材であることもできる。閉塞部材を構成する材料は特に限定されない。図1及び図5図7の各図において、Wはワーク設置位置を示す。ワークを研磨する際、第1の環状部材11、メンブレン13及び閉塞部材によって取り囲まれた空間に気体が導入されると、メンブレン14が膨らみ、これによりバックパッド14を介してワーク設置位置Wに設置されたワークが押圧されて研磨が行われる。
【0017】
図1及び図5図7の各図において、第1の環状部材11、メンブレン13及び閉塞部材によって取り囲まれた空間は、環状の仕切り壁15により内側空間16aと外側空間16bとに仕切られている。環状の仕切り壁15は、例えば、ゴム等の弾性を有する材料を所望の形状に成形して作製することができる。ゴムとしては、例えばフッ素ゴムを挙げることができる。環状の仕切り壁15の厚さは、例えば0.5~1.5mm程度とすることができる。内側空間16aには、閉塞部材の中央部において上部円盤状部材10aと下部円盤状部材10bを貫通する気体導入路17aから、外側空間16bには閉塞部材の外周領域において上部円盤状部材10aを貫通する気体導入路17bから、それぞれ独立に気体導入量を制御して気体を導入することができる。ワークを研磨する際、例えば、気体導入路17aから内側空間16aに導入する気体の量と気体導入路17bから外側空間16bに導入する気体の量を変えることにより、外側空間16bの下方のワークの研磨対象表面の外周領域に加わる研磨面圧力を、内側空間16aの下方のワークの研磨対象表面の中央部に加わる研磨面圧力とは独立に制御することとができる。なお、図1及び図5図7の各図において、気体導入路17a及び気体導入路17bは各1つであるが、かかる実施形態に限定されず、気体導入路17aを2つ以上設けることもでき、気体導入路17bを2つ以上設けることもできる。
【0018】
図1及び図5図7の各図において、メンブレン13の下方には、バックパッド14を介して第2の環状部材12が配置されている。第2の環状部材12は、研磨対象のワークを保持する開口部を有する環状部材である。かかる環状部材は、一般に、リテーナー、リテーナーリング、テンプレート等とも呼ばれる。第2の環状部材12は、研磨ヘッドのリテーナー等と呼ばれる環状部材に通常使用される材料製(例えばガラスエポキシ製)の環状部材であることができる。
【0019】
図2は、図1に示されている研磨ヘッド1Aにおける環状の仕切り壁15Aの接続部(特に下部環状接続部)の説明図である。環状の仕切り壁15Aは、上部環状接続部Cupperが閉塞部材に接続され、下部環状接続部Clowerがメンブレン13に接続されている。詳しくは、上部環状接続部Cupperは閉塞部材の下部円盤状部材10bの側面に接続され、下部環状接続部Clowerはメンブレン13の上面に接続されている。それぞれの接続の接続手段としては、接着剤の使用、一体成型、凹部への凸部のはめ込み等の公知の方法を挙げることができる。環状の仕切り壁の下部環状接続部の内径をd1、第2の環状部材の内径をd2と呼ぶと、本発明の一態様にかかる研磨ヘッドでは、環状の仕切り壁の下部環状接続部の内径d1は、第2の環状部材の内径d2より大きい。即ち、「d1>d2」の関係を満たす。したがって、ワークを研磨する際、環状の仕切り壁の下部環状接続部の鉛直下方には、第2の環状部材が位置し、ワークの研磨対象表面の外周領域は位置しない。仕切りの接続部の鉛直下方にワークの研磨対象表面の外周領域が位置する研磨ヘッドを使用して研磨されたワークでは、局所的な研磨量変動(具体的には接続部の鉛直下方における研磨量の局所的な低下)が生じ易い理由と考えられる。これに対し、本発明の一態様にかかる研磨ヘッドによれば、「d1>d2」の関係を満たすことにより、接続部の鉛直下方における研磨量の局所的な低下を抑制してワークの研磨対象表面の研磨を行うことができると本発明者は考えている。d2を100%とすると、d1は100%超であり、102%超であることが好ましく、103%以上であることがより好ましい。d1は、d2を100%として、例えば120%以下若しくは110%以下であることができ、又はここに例示した値を上回ることもできる。
【0020】
図3は、図1に示されている研磨ヘッド1Aにおける環状の仕切り壁15Aの接続部(特に上部環状接続部)の説明図である。環状の仕切り壁15Aは、上部環状接続部Cupperが閉塞部材の下部円盤状部材10bの側面に接続されている。図3中、2本の点線は、上部環状接続部Cupperの鉛直下方に向けて引いた直線である。これら2本の点線によって示されるように、上部環状接続部Cupperの鉛直下方に、研磨対象のワークの設置位置Wの外周領域が位置している。ここで「外周領域」とは、外側周端から半径方向内側に向かう一部領域をいうものとする。なお、図1及び図5図7の各図において、環状の仕切り壁15の上部環状接続部Cupperは、いずれも閉塞部材の下部円盤状部材10bの側面に接続されているため、上部環状接続部Cupperの鉛直下方は、下部円盤状部材10bの側面の鉛直下方でもある。他の一形態では、環状の仕切り壁15の上部環状接続部Cupperを、下部円盤状部材10bの下面又は上部円盤状部材10aの下面に接続することができる。この場合、上部環状接続部Cupperの鉛直下方とは、上部環状接続部Cupperの内側周端の鉛直下方をいうものとする。上部環状接続部Cupperの開口内径をd3とし、研磨対象のワークの設置位置Wの外径をd4とすると、上部環状接続部Cupperの半径RCupperは、「RCupper=d3÷2」であり、研磨対象のワークの設置位置の半径Rは、「R=d4÷2」である。研磨対象のワークの設置位置(円形領域)Wの外径は、研磨対象のワーク(平面視形状は円形)の直径と同じ値である。したがって、研磨対象のワークの設置位置の半径Rは、研磨対象のワークの半径Rwと同じ値である。上記研磨ヘッドでは、上部環状接続部Cupperの半径RCupperは、研磨対象のワークの設置位置の半径Rを100%として、33%以上90%以下である。このことがワークの研磨対象表面において研磨量の面内バラつきを抑制して研磨量の面内均一性を高めることに寄与することが、本発明者の鋭意検討の結果、新たに判明した。研磨対象のワークの直径は、例えば、50mm~450mmであることができる。例えば、研磨対象のワークの直径が300mmである場合、上部環状接続部Cupperの半径RCupperは、50mm以上135mm以下であることが好ましい。
研磨対象のワークの研磨対象表面の形状が凹形状であって、研磨対象表面の断面形状プロファイルを一階微分することによって求められる変曲位置が研磨対象表面の中心から外側に向かって距離Xの位置である場合、上部環状接続部Cupperの半径RCupperは、研磨対象のワークの設置位置の半径Rに対して、以下の範囲であることが好ましい。なお、研磨対象表面の断面形状プロファイルは、公知の断面形状測定装置によって求めることができる。
(1)研磨対象のワークの半径Rwに対して、Xが66%超の場合には、上部環状接続部Cupperの半径RCupperは、研磨対象のワークの設置位置の半径Rを100%として、40%以上90%以下であることが好ましく、60%以上90%以下であることがより好ましく、70%以上90%以下であることが更に好ましく、80%以上90%以下であることが一層好ましい。
(2)研磨対象のワークの半径Rwに対して、Xが66%以下の場合には、上部環状接続部Cupperの半径RCupperは、研磨対象のワークの設置位置の半径Rを100%として、33%以上80%以下であることが好ましく、33%以上70%以下であることがより好ましく、33%以上60%以下であることが更に好ましく、33%以上50%以下であることが一層好ましく、33%以上40%以下であることがより一層好ましい。
【0021】
環状の仕切り壁に関して、環状の仕切り壁の断面形状は、傾斜形状及び水平形状からなる群から選ばれる側面形状を少なくとも一部に含むことが好ましく、かかる側面形状の少なくとも一部の鉛直下方に、第2の環状部材の内側周端及び研磨対象のワークの設置位置の外側周端を含む領域が位置することがより好ましい。かかる構成を有することは、研磨時に外側空間に気体を導入すると環状の仕切り壁の内壁面の少なくとも一部がメンブレンの上面と接触することにつながり得る。このことは、研磨対象のワークの面内(中でも外周領域)の研磨量を、外側空間へ導入する気体の量を変化させることによって制御することを容易にすることに寄与し得る。研磨時には、通常、外側空間と内側空間の両方に気体が導入される。研磨時に外側空間に気体を導入すると環状の仕切り壁の内壁面の少なくとも一部がメンブレンの上面と接触する構成を有する研磨ヘッドであることは、例えば、内側空間に気体を導入せず外側空間のみに気体を導入するとメンブレンの上面と仕切り壁の内壁面の少なくとも一部が接触することによって確認できる。図4は、環状の仕切り壁の内壁面及びメンブレンの上面の説明図である。図4中、15Ainnerは環状の仕切り壁15Aの内壁面を示し、13upperはメンブレン13の上面を示す。
【0022】
断面形状の具体例として、図1に示す例では、環状の仕切り壁15Aの断面形状は、上部と下部に水平形状を含み、下部水平形状に傾斜形状が続いている。図5に示す例では、環状の仕切り壁15Bの断面形状は傾斜形状である。図6に示す例では、環状の仕切り壁15Cの断面形状は水平形状を含む。図7に示す例では、環状の仕切り壁15Dの断面形状は、水平形状に傾斜形状が続いている。例えば、図1に示す例では、研磨時に外側空間16bに気体を導入することにより、断面形状が下部水平形状の部分の内壁面の一部又は全部をメンブレン13の上面と接触させることができる。図5に示す例では、研磨時に外側空間16bに気体を導入することにより、断面形状が傾斜形状である環状の仕切り壁15Bの内壁面の一部又は全部をメンブレン13の上面と接触させることができる。図6に示す例では、研磨時に外側空間16bに気体を導入することにより、断面形状が水平形状である部分の内壁面の一部又は全部をメンブレン13の上面と接触させることができる。図7に示す例では、研磨時に外側空間16bに気体を導入することにより、断面形状が水平形状の部分の内壁面の一部又は全部をメンブレン13の上面と接触させることができる。
【0023】
[研磨装置、半導体ウェーハの製造方法]
本発明の一態様は、上記研磨ヘッドと、研磨パッドと、この研磨パッドを指示する定盤と、を有する研磨装置に関する。
【0024】
また、本発明の一態様は、上記研磨装置によって研磨対象の半導体ウェーハの表面を研磨して研磨面を形成することを含む、半導体ウェーハの製造方法に関する。
【0025】
図8は、本発明の一態様にかかる研磨装置の一例を示す概略断面図である。図8に示されている研磨装置50は、図1に示されている研磨ヘッド1Aを備えている。図1等と同様に研磨ヘッドのヘッド本体の図示は省略している。研磨装置50は、ラバーチャック方式の片面研磨装置であって、研磨ヘッド1A及び定盤42を、それぞれ回転機構(図示は省略)により回転させながら、研磨ヘッド1Aの設置位置Wに設置された研磨対象のワークWaの研磨対象表面と定盤42上に貼り合わされた研磨パッド41とを摺接させる。研磨剤供給機構60から排出される研磨剤61が、ワークWaの研磨対象表面であるワークWaの下面と研磨パッド41との間に供給され、ワークWaの研磨対象表面が研磨される。研磨剤としては、CMP(Chemical Mechanical Polishing)に通常使用される研磨スラリーを用いることができる。上記研磨装置は、本発明の一態様にかかる研磨ヘッドを備える点以外は通常の片面研磨装置と同様の構成を有することができる。また、上記半導体ウェーハの製造方法については、本発明の一態様にかかる研磨装置を用いて研磨対象の半導体ウェーハの表面を研磨して研磨面を形成することを含む点以外は、研磨面を有する半導体ウェーハの製造方法に関する公知技術を適用することができる。研磨対象のウェーハは、例えばシリコンウェーハ(好ましくは単結晶シリコンウェーハ)であることができる。例えば、シリコンウェーハは、以下の方法により作製できる。単結晶シリコンインゴットをカットしてブロックを得る。単結晶シリコンインゴットは、CZ法(チョクラルスキー法)、FZ法(浮遊帯域溶融(Floating Zone)法)等の公知の方法で育成できる。得られたブロックをスライスしてウェーハとする。このウェーハに各種加工を施すことにより、シリコンウェーハを作製することができる。上記加工としては、面取り加工、平坦化加工(ラップ、研削、研磨)等を挙げることができる。上記研磨装置は、例えば、これらのウェーハ加工の最終工程である仕上げ研磨工程に好適に使用することができる。
【実施例0026】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。ただし本発明は実施例に示す実施形態に限定されるものではない。以下に記載の研磨圧力Peは、気体導入路17bから外側空間16bに気体が導入されてメンブレン13の外周領域が膨らむことによってメンブレン13の外周領域から下方に加わる圧力であり、研磨圧力Pcは、気体導入路17aから内側空間16aに気体が導入されてメンブレン13の中央部が膨らむことによってメンブレン13の中央部から下方に加わる圧力である。研磨圧力Pe及びPcは、実験値である。以下のシリコンウェーハの研磨対象表面の形状は凹形状である。
【0027】
[研磨ヘッド]
実施例1の研磨ヘッド(ラバーチャック方式の2ゾーンメンブレンヘッド)は、図1に示す構成の研磨ヘッドであって、環状の仕切り壁の下部環状接続部の内径d1が320mm、第2の環状部材の内径d2が301mm、環状の仕切り壁の上部環状接続部の開口内径d3が100mm(したがって上部環状接続部Cupperの半径RCupperが50mm)である。
実施例2の研磨ヘッドは、環状の仕切り壁の上部環状接続部Cupperの半径RCupperが100mmである点以外、実施例1の研磨ヘッドと同じ構成を有する。
実施例3の研磨ヘッドは、環状の仕切り壁の上部環状接続部Cupperの半径RCupperが135mmである点以外、実施例1の研磨ヘッドと同じ構成を有する。
比較例1の研磨ヘッドは、環状の仕切り壁の上部環状接続部Cupperの半径RCupperが30mmである点以外、実施例1の研磨ヘッドと同じ構成を有する。
比較例2の研磨ヘッドは、環状の仕切り壁の上部環状接続部Cupperの半径RCupperが145mmである点以外、実施例1の研磨ヘッドと同じ構成を有する。
【0028】
[シリコンウェーハの研磨処理1]
研磨処理1では、単結晶シリコンインゴットから切り出されて各種種加工処理が施された複数のシリコンウェーハ(直径300mm)に対して、それぞれ最終工程の仕上げ研磨工程として実施例及び比較例の各研磨ヘッドを使用して片面研磨処理を施した。複数のシリコンウェーハの研磨対象表面の断面形状プロファイルを一階微分することによって求められた変曲位置は、シリコンウェーハの研磨対象表面の中心から外側に向かって100mmより外側の位置であった。研磨対象のシリコンウェーハについては、研磨処理前にGBIRを測定した。GBIR(Global Backside Ideal Range)は、ウェーハを吸着固定した際の厚さ(裏面基準平面からの距離)の最大値と最小値との差であり、研磨処理後のGBIRの値が小さいほど、ワークの研磨対象表面において研磨量の面内バラつきが少なく研磨量の面内均一性が高いということができる。
【0029】
研磨処理1の研磨装置としては、実施例および比較例の各研磨ヘッドを含む図8に示す構成の研磨装置を準備し、この研磨装置において、以下の研磨条件でシリコンウェーハの片面研磨処理を施した。研磨処理後の各シリコンウェーハのGBIRを測定した。
Pc=10kPa
Pe=12kPa
【0030】
[シリコンウェーハの研磨処理2]
研磨処理2では、単結晶シリコンインゴットから切り出されて各種加工処理が施された複数のシリコンウェーハ(直径300mm)に対して、それぞれ最終工程の仕上げ研磨工程として実施例及び比較例の各研磨ヘッドを使用して片面研磨処理を施した。複数のシリコンウェーハの研磨対象表面の断面形状プロファイルを一階微分することによって求められた変曲位置は、シリコンウェーハの研磨対象表面の中心から外側に向かって100mmより内側の位置であった。研磨対象のシリコンウェーハについては、研磨処理前にGBIRを測定した。
【0031】
研磨処理2の研磨装置としては、実施例および比較例の各研磨ヘッドを含む図8に示す構成の研磨装置を準備し、この研磨装置において、以下の研磨条件でシリコンウェーハの片面研磨処理を施した。研磨処理後の各シリコンウェーのGBIRを測定した。
Pc=10kPa
Pe=12kPa
【0032】
実施例および比較例の各研磨ヘッドを使用して研磨処理1が施されたシリコンウェーハについて、研磨処理前後のGBIR値をプロットしたグラフが図9に示すグラフである。
実施例および比較例の各研磨ヘッドを使用して研磨処理2が施されたシリコンウェーハについて、研磨処理前後のGBIR値をプロットしたグラフが図10に示すグラフである。
実施例1~3、比較例1及び比較例2の各研磨ヘッドにおいて、上部環状接続部Cupperの半径RCupperは、研磨対象のワークの設置位置の半径R(研磨対象のシリコンウェーハの半径Rw)を100%として、実施例1:33%、実施例2:67%、実施例3:90%、比較例1:20%、比較例2:97%である。図9に示すグラフ及び図10に示すグラフから、実施例1~3の研磨ヘッドを使用して研磨処理を行った場合、比較例1又は比較例2の研磨ヘッドを使用して研磨処理を行った場合と比べて、GBIRの値が小さいこと、即ち研磨量の面内均一性が高いことが確認できる。また、図9に示すグラフからは、研磨処理1では、実施例1~3の中で上部環状接続部Cupperの半径RCupperがより大きいほど研磨量の面内均一性がより高いことが確認できる。一方、図10に示すグラフからは、研磨処理2では、実施例1~3の中で上部環状接続部Cupperの半径RCupperがより小さいほど研磨量の面内均一性がより高いことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の一態様は、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハの技術分野において有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10