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  • 特開-ナノ結晶を含む多結晶層状金属酸化物 図1
  • 特開-ナノ結晶を含む多結晶層状金属酸化物 図2
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  • 特開-ナノ結晶を含む多結晶層状金属酸化物 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088672
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ナノ結晶を含む多結晶層状金属酸化物
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240625BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240625BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240625BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240625BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024050934
(22)【出願日】2024-03-27
(62)【分割の表示】P 2022042546の分割
【原出願日】2017-04-27
(31)【優先権主張番号】62/328,447
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518275567
【氏名又は名称】カムエクス パワー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】CAMX Power LLC
【住所又は居所原語表記】35 Hartwell Avenue, Lexington, MA 02421, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン パレン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン レンペル
(72)【発明者】
【氏名】スレッシュ スリラムル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた容量および改善されたサイクル寿命をもたらす電気化学的に活性な二次粒子、ならびにその製造方法を提供する。
【解決手段】電気化学的に活性な多結晶粒子であって:
複数のナノ結晶を含み、該複数のナノ結晶が、
Li1+xMO2+y
(式中、-0.1≦x≦0.3、-0.3≦y≦0.3、およびMは、10原子パーセント以上のニッケルを含む)
によって定義される第一組成を有し;かつ前記複数のナノ結晶が、X線回折によって測定して85ナノメートル以下の平均結晶子サイズを有する、電気化学的に活性な多結晶粒子が提供される。縮小された結晶子サイズによって、サイクル中のインピーダンス発生が低下し、その結果、容量およびサイクル寿命が改善される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的に活性な多結晶粒子であって:
複数のナノ結晶を含み、該複数のナノ結晶が、Li1+xMO2+y(式中、
-0.1≦x≦0.3、
-0.3≦y≦0.3、および
Mは、10原子パーセント以上のニッケルを含む)によって定義される第一組成を有し;かつ
前記複数のナノ結晶が、X線回折によって測定して85ナノメートル以下の平均結晶子サイズを有する、電気化学的に活性な多結晶粒子。
【請求項2】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、50ナノメートル以上85ナノメートル以下の平均結晶子サイズを有する、請求項1記載の粒子。
【請求項3】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、80ナノメートル以下である、請求項1記載の粒子。
【請求項4】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、70ナノメートル以下である、請求項1記載の粒子。
【請求項5】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、55ナノメートル~70ナノメートルである、請求項1記載の粒子。
【請求項6】
Mが、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、Zn、Ti、Zr、Y、Cr、Mo、Fe、V、Si、GaおよびBからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含む、請求項1記載の粒子。
【請求項7】
前記複数のナノ結晶の隣接するナノ結晶の間にあり、かつα-NaFeO2型層状構造、立方晶構造、またはそれらの組み合わせを任意に有する第二組成を有する粒界をさらに含み、ここで、前記粒界におけるコバルトの濃度は、前記ナノ結晶におけるコバルトの濃度よりも大きい、請求項1記載の粒子。
【請求項8】
Mが、75%以上、任意に80%以上、任意に85%以上の原子パーセントのニッケルを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項9】
Mが、90%以上、任意に95%以上の原子パーセントのニッケルを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項10】
前記粒子の表面上に外部被覆をさらに含み、該外部被覆が:
Al、Zr、Y、Co、Ni、Mg、およびLiから選択される1種以上の元素の酸化物;
Al、Zr、およびLiから選択される1種以上の元素を含むフッ化物;
Al、Co、Ni、Mn、およびLiから選択される1種以上の元素を含む炭酸塩;または
AlおよびLiから選択される1種以上の元素を含むリン酸塩
を含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項11】
Mが、85%以上、任意に95%以上の原子パーセントのニッケルを含み、前記複数のナノ結晶の前記サイズが、50ナノメートル以上85ナノメートル以下の平均サイズを有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項12】
電気化学的に活性な粒子を製造する方法であって:
水酸化リチウムまたはその水和物とニッケルを含む前駆体水酸化物を含む第一混合物を準備する工程;
前記第一混合物を700℃未満の最高温度に焼成して、85ナノメートル以下のサイズを有する複数のナノ結晶を含む第一材料を形成する工程
を含む方法。
【請求項13】
前記最高温度が、680℃以下である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記最高温度が、660℃以下である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記第一混合物を焼成する前記工程が、
温度を約5℃/分で約25℃から約450℃まで上昇させること、
約450℃の前記温度で約2時間均熱処理すること、
前記温度を約450℃から約650℃~約699℃の最高温度まで上昇させること;および
約650℃~約699℃の前記最高温度で約6時間均熱処理すること
を含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記最高温度が、約660℃~約680℃である、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記第一材料と、コバルト、アルミニウム、またはそれらの組み合わせの少なくとも1種を含む第二材料を合して第二混合物を形成する工程;および
前記第二混合物を725℃以下の第二最高温度に加熱処理して、隣接するナノ結晶の間にあり、かつα-NaFeO2型層状構造、立方晶構造、またはそれらの組み合わせを任意に有する第二組成を有する粒界をさらに含む粒子を製造する工程、ここで、前記粒界におけるコバルトの濃度は、前記ナノ結晶におけるコバルトの濃度よりも大きく、かつ前記複数のナノ結晶は、105ナノメートル以下のサイズを有する、
をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記第二最高温度が、700℃以下である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記粒子が、75%以上、任意に80%以上、任意に85%以上の原子パーセントのニッケルを含む、請求項12から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記粒子が、90%以上、任意に95%以上の原子パーセントのニッケルを含む、請求項12から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記複数のナノ結晶の前記平均サイズが、50ナノメートル以上85ナノメートル以下である、請求項12から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、80ナノメートル以下である、請求項12から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、70ナノメートル以下である、請求項12から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、66ナノメートル以下である、請求項12から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、50ナノメートル~80ナノメートル、任意に55ナノメートル~70ナノメートルである、請求項12から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
電気化学的に活性な多結晶二次粒子であって:
Li1+xMO2+y(式中、
-0.0≦x≦0.3、
-0.3≦y≦0.3、および
Mは、80原子パーセント以上のニッケルを含む)によって定義される第一組成を有し;
X線回折によって測定して105ナノメートル以下のサイズを有する複数のナノ結晶と、
該複数のナノ結晶の隣接するナノ結晶の間にあり、かつα-NaFeO2型層状構造、立方晶構造、またはそれらの組み合わせを任意に有する第二組成を有する粒界とを含み、ここで、前記粒界におけるコバルトの濃度は、前記ナノ結晶におけるコバルトの濃度よりも大きい、電気化学的に活性な多結晶二次粒子。
【請求項27】
前記ナノ結晶におけるコバルトの濃度が、約0.25原子パーセント~約17原子パーセントであり、
前記粒界におけるコバルトの濃度が、約0.5原子パーセント~約32原子パーセントであり、それぞれ前記粒子の全原子組成を基準としている、請求項26記載の粒子。
【請求項28】
Mが、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、Bn、Zn、Ti、Zr、Y、Cr、Mo、Fe、V、Si、GaおよびBからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含み、前記1種以上の元素が、前記ナノ結晶のLi層、M層、または両方の層中に存在している、請求項26記載の粒子。
【請求項29】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、100ナノメートル以下である、請求項26から28までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項30】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、70ナノメートル~100ナノメートル、任意に75ナノメートル~90ナノメートルである、請求項26から28までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項31】
Mが、75%以上、任意に80%以上、任意に85%以上の原子パーセントのニッケルを含む、請求項26から28までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項32】
Mが、90%以上、任意に95%以上の原子パーセントのニッケルを含む、請求項26から28までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項33】
請求項1または26記載の粒子を含むカソード活物質を含む電気化学セル。
【請求項34】
請求項1または26記載の粒子を含むカソード活物質を含むカソード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年4月27日付で出願された米国特許出願第62/328,447の優先権を主張し、その開示内容は、参照により本願に援用される。
【0002】
分野
多結晶金属酸化物粒子、その製造方法、およびそれを含む電気化学セルまたは電池が開示される。
【0003】
背景
層状構造のニッケル酸リチウム(LiNiO2)系材料は、一般的に、従来の主要なLiCoO2カソード材料よりも低コスト、高容量および高レート特性であるため、リチウムイオン電池カソード用に開発されている。しかし、純粋なLiNiO2材料は、電気化学安定性およびサイクル性能が乏しい。これに対処するために、LiNiO2に、構造を安定化させる非ニッケルの元素添加物が配合されることにより、サイクル特性は改善されるものの、一般的に放電容量が犠牲となる。エネルギー密度の要望が高まるにつれて、研究では、これらの非ニッケル添加物を最適化および低減して、高Ni材料の容量を獲得し、それと同時にサイクル性能を維持することに重点が置かれている。
【0004】
したがって、長いサイクル寿命を有する高容量材料の要望に対処するために新規の材料が必要である。本明細書で提供される材料およびこのような材料を形成するための方法は、長いサイクル寿命にわたって高容量を維持することによってこの必要性に対処する。
【0005】
概要
以下の概要は、本開示に特有のいくつかの革新的な特徴の理解を容易にするために提供されており、完全な説明であることを意図しない。明細書、特許請求の範囲、図面、および要約のすべてを全体的に見ることによって、本開示の様々な態様の完全な理解が得られる。
【0006】
本開示の目的は、リチウムイオンセルに組み込まれた時に優れた容量および改善されたサイクル寿命を示す電気化学的に活性な多結晶粒子を提供することである。電気化学的に活性な多結晶粒子は、複数のナノ結晶を含み、この複数のナノ結晶は、Li1+xMO2+yによって定義される第一組成を有する。任意に、xは、-0.1以上0.3以下である。任意に、yは、-0.3以上0.3以下である。任意に、Mは、10原子パーセント以上のニッケルを含む。複数のナノ結晶は、ベース粒子のX線回折(XRD)によって測定して85ナノメートル以下の平均結晶子サイズを有するか、または被覆もしくは粒界濃化された粒子のXRDによって測定して105ナノメートル以下の平均結晶子サイズを有する。いくつかの態様では、Mは、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、Zn、Ti、Zr、Cr、Mo、Fe、V、Si、GaおよびBからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含む。
【0007】
別の目的は、電気化学的に活性な多結晶粒子を製造する方法を提供することであり、ここで、この方法は、第一混合物を準備すること、およびこの第一混合物を焼成することを含む。第一混合物(「グリーン体」)は、水酸化リチウムまたはその水和物とニッケルを含む前駆体水酸化物を任意に含む。第一混合物の焼成には、85ナノメートル以下のサイズを有する複数のナノ結晶を含む第一材料を形成するために700℃未満の最高温度が含まれる。方法は、粒子を被覆すること、およびこの粒子を第二焼成に供してナノ結晶/結晶粒間の粒界を濃化することを任意にさらに含む。被覆された粒子の場合、平均結晶子サイズは、105nm以下である。
【0008】
得られた粒子および前述の方法は、比較的大きい結晶を有する粒子と比べて優れた容量および改善されたサイクル寿命を有する電気化学セルを製造する材料を提供することによって前述の目的を達成する。
【0009】
図面の簡単な説明
図面に記載の態様は、例示であり、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の例示的な態様の詳細な説明は、同一の構造が同一の参照番号で示されている以下の図面と併せて読むと理解できる。
【0010】
詳細な説明
以下の特定の態様の説明は、単なる例示にすぎず、開示、その適用、または使用の範囲を限定することを意図するものでは決してなく、当然、変化しうる。材料および方法は、本明細書に含まれる非限定的な定義および用語に関して説明される。これらの定義および用語は、本開示の範囲または実施を限定するよう意図されるものではなく、例示および説明の目的のためにのみ示される。方法または組成は、個々の工程の順序または特定の材料を用いて説明されるが、工程または材料は、代替可能であるため、本発明の説明には、当業者であれば容易に理解できる数多くの方法で準備された多数の部品または工程が含まれてよいことが理解される。
【0011】
ここで、本発明は、様々な態様が示されている添付の図面を参照して、以下においてより完全に説明される。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、本明細書に記載の態様に限定されると解釈されるべきではない。これらの態様は、本開示が、全体的および完全であり、かつ本発明の範囲を当業者に充分に伝えるように提供されるものである。同一の参照番号は、全体を通して同一の要素を指す。
【0012】
ある要素が他の要素の「上にある」と言及される場合、その要素は、他の要素の上に直接存在することができるか、またはそれらの間に介在要素が存在しうることが理解されるであろう。その一方、ある要素が他の要素の「上に直接」存在すると言及される場合、介在要素は存在しない。
【0013】
「第一」、「第二」、「第三」などの用語が、様々な要素、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために本明細書で使用されるが、これらの要素、成分、領域、層、および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、1つの要素、成分、領域、層、またはセクションを他の要素、成分、領域、層、またはセクションと区別するためにのみ用いられる。したがって、特に記載されない限り、以下に記載される「第一要素」、「成分」、「領域」、「層」、または「セクション」は、本明細書の教示から逸脱することなく、第二(または他)の要素、成分、領域、層、またはセクションと呼ぶことができる。
【0014】
本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明するためだけのものであり、限定するものではない。本明細書で使用される通り、単数形の「1つの(「a」、「an」)」および「この、その、前述の、該(「the)」は、その内容が明らかに他の形で示されない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形を含むことを意図するものである。「または」は、「および/または」を意味する。本明細書で使用される通り、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つまたは複数の任意およびすべての組み合わせを含む。「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」または「含む(indludes)」および/または「含む(including)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、領域、整数、工程、動作、要素および/または成分の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、領域、整数、工程、動作、要素、成分、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことがさらに理解されるであろう。「またはそれらの組み合わせ」という用語は、前述の要素の少なくとも1つを含む組み合わせを意味する。
【0015】
特に記載されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。一般に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術および本開示の関連におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書に明確に定義されない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0016】
LiMO2型のNi系層状材料は、一次結晶の稠密な多結晶凝集体である。これらの材料は、一般的に、様々な前駆体材料から出発して、700℃~900℃の範囲の温度で標準的な固体状態の方法を用いて製造される。前駆体材料は、一般的に、遷移金属水酸化物(M(OH)2)、リチウム前駆体(例えばLiOHまたはLi2CO3)、または他のドーパント(例えば水酸化物、炭酸塩、硝酸塩)のための無機前駆体である。前駆体混合物の加熱の間に、H2O、CO2またはNO2のようなガスの放出に伴って、多結晶LiMO2が形成される。同時に、多結晶材料中の一次結晶は「焼結」してより大きな一次結晶になる。高温合成中の結晶成長速度は、温度の上昇と共に大幅に増加する。この効果は、基礎的な熱力学的に説明がつき、予期されるものであるが、しかし本発明者らは、サイクル性能に悪影響が及ぼされることを見いだした。
【0017】
調査の間に、本発明者らは、より大きい一次結晶が、Liイオン電池の充電/放電動作(サイクル)が繰り返される間のカソードにおけるインピーダンス増加速度を高める傾向があることを見いだした。Liイオン電池の電力供給容量は、カソードのインピーダンスの増加と共に減少するため、通常の電池動作には望ましくない。より大きな結晶によるより高いインピーダンス増加速度については、考えられる説明が複数ある。例えば、充電/放電サイクルが繰り返されると、一次結晶の表面は損傷を受け、結晶粒界から結晶へのリチウムの輸送抵抗の増加(すなわち、インピーダンスの増加)を引き起こすことが知られている。所定の電池動作電流に対して、リチウムフラックスまたは結晶の単位表面あたりの電流(すなわち、面電流密度)は、より小さい結晶よりもより大きな結晶の場合の方が高くなる。結晶の単位表面積あたりの抵抗増加が、より小さい結晶とより大きい結晶の場合に同じであっても、より大きい結晶の面電流密度が高いほど、電圧がより大幅に降下し、これは、インピーダンスの増加として現れる。
【0018】
しかし、高い初期放電容量とサイクル中の低いインピーダンス増加との組み合わせを示す活物質を合成製造することは困難である。これは、特に、Mのニッケル成分が90%以上に達する場合に当てはまる。ニッケルのこのようなレベルでは、高度の結晶秩序を得るために必要な合成温度での結晶成長速度はきわめて高い。100nmを大幅に超える、しばしば数百ナノメートル(nm)以上の大きさのサイズを有する一次結晶が、すでに公知の合成条件では(X線回折から測定して)一般的である。
【0019】
したがって、本開示は、電池の充電/放電サイクル中のインピーダンス増加速度を低下させるために、ナノ結晶を有するLiイオン電池用正極(カソード)活物質を提供することによって前述の課題に対処する。ニッケル含有配合物において、ベース粒子材料については85nm以下、粒界濃化材料については105nm以下の平均結晶子サイズ(両方ともXRDにより測定)を有する高い放電容量のカソード活物質を達成するための様々な方法が提供される。
【0020】
本明細書に記載のナノ結晶構造を有する多結晶層状構造リチオ化金属酸化物は、電気化学的性能および安定性の向上を示す。このナノ結晶組成物は、電気化学的にサイクルされるNi含有多結晶LiMO2系材料の性能低下を防ぐ一方、その他の所望の最終用途物品特性、例えばこのようなナノ結晶層状金属酸化物から製造された再充電可能なリチウムイオンカソードの電気化学的容量を、電気化学的サイクル中のインピーダンス増加速度の低下によって維持する。このようなナノ結晶組成物は、LiOHおよび前駆体水酸化物または炭酸塩を含むグリーン体配合物を700℃未満の最高温度に焼成することによって容易に製造することができる。
【0021】
したがって、高い初期放電容量およびサイクル中の低いインピーダンス増加を達成する手段として、ナノ結晶構造を有する多結晶層状構造リチオ化金属酸化物の組成物、系、および製造方法ならびにリチウムイオン二次セルにおけるその使用が提供され、それによって、高ニッケル配合物において105nm以下の平均サイズを有するとともに、高い放電容量(例えばC/20で>205mAh/g)をも有するナノ結晶を達成するという前述の課題が解決される。
【0022】
本開示全体を通して、多結晶材料内のナノ結晶の結晶子サイズについて言及される。これらのサイズは、XRD法によって、任意には、CuX線管を備えた自動化されたShimadzu XRD-6000回折計を使用して、0.75度/minで2θ=12度~120度での連続走査により収集された粉末X線回折パターンによって求められる。本明細書で使用される場合、「ナノ結晶」という用語は、ベース材料については85nm以下であり、比較的低いCo濃化での粒界濃化材料については105nm以下である結晶子サイズを指す。粒界をコバルトで濃化するための被覆工程の間に、結晶子サイズが、焼成での高温曝露によってわずかに増加しうることが判明した。このような状況では、XRDによって測定された結晶子サイズは増加し、測定された結晶子サイズが105nm以下である材料が得られる。
【0023】
図1は、ナノ結晶構造を有する例示的な多結晶層状構造リチオ化金属酸化物の概略図を示している(正確な縮尺ではない)。この材料は、それぞれ第一組成を有する複数のナノ結晶10を含む粒子を含む。複数のナノ結晶を有する粒子は、二次粒子と呼ぶことができる。本明細書で提供される粒子は、先行技術で適切であると考えられるものよりもはるかに小さいナノ結晶を有するように独自に調整されている。例えば、本明細書で提供される粒子は、ベース材料については85ナノメートル(nm)以下の平均結晶子サイズを有する複数のナノ結晶を含む。サイクル中のインピーダンス増加の低減のために提供された縮小された結晶子サイズは、これらの粒子をカソードの成分として組み込むセルの性能およびサイクル寿命を改善する。図1は、粒子が、第二組成から形成されたか、または第二組成を有する粒界20をさらに含むことができる特定の態様をさらに図示しており、ここで、例えば粒界におけるコバルトの濃度は、例えばナノ結晶におけるコバルトの濃度よりも大きい。本明細書で提供される粒界濃化粒子は、105ナノメートル(nm)の平均結晶子サイズを有する複数のナノ結晶を含む。任意に、図1でも示される通り、層30を二次粒子の外部表面上に配置して、被覆された二次粒子を提供することができる。
【0024】
本明細書で提供される粒子のいくつかの態様では、第一組成は、組成Li1+xMO2+yによって定義される多結晶層状構造リチオ化金属酸化物、および任意に、それから形成されたセルまたは電池を含み、前述の式中、-0.1≦x≦0.3および-0.3≦y≦0.3である。いくつかの態様では、xは、-0.1、任意に0、任意に0.1、任意に0.2、または任意に0.3である。任意に、xは、-0.10以上、-0.09、-0.08、-0.07、-0.06、-0.05、-0.04、-0.03、-0.02、-0.01、0.00、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、または0.30である。いくつかの態様では、yは、-0.3、任意に-0.2、任意に-0.1、任意に0、任意に0.1、任意に0.2、または任意に0.3である。任意に、yは、-0.30以上、-0.29、-0.28、-0.27、-0.26、-0.25、-0.24、-0.23、-0.22、-0.21、-0.20、-0.19、-0.18、-0.17、-0.16、-0.15、-0.14、-0.13、-0.12、-0.11、-0.10、-0.09、-0.08、-0.07、-0.06、-0.05、-0.04、-0.03、-0.02、-0.01、0.00、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、または0.3である。
【0025】
いくつかの態様では、Liは、Liのみである必要はなく、Mg、Na、K、およびCaからなる群から選択される1種以上の元素で部分的に置換されてもよいことが理解される。Liを置換する1種以上の元素は、10原子%以下、任意に5原子%以下、任意に3原子%以下、任意に2原子パーセント以下で任意に存在している。
【0026】
第一組成中で提供されるMは、Niを含む。Niの量は、任意に、Mの10原子パーセント~99原子パーセント(at%)である。任意に、MのNi成分は、75at%以上である。任意に、MのNi成分は、80at%以上である。任意に、MのNi成分は、85at%以上である。任意に、MのNi成分は、90at%以上である。任意に、MのNi成分は、95at%以上である。任意に、MのNi成分は、75at%以上、76at%、77at%、78at%、79at%、80at%、81at%、82at%、83at%、84at%、85at%、86at%、87at%、88at%、89at%、90at%、91at%、92at%、93at%、94at%、95at%、96at%、98at%、または99at%である。
【0027】
いくつかの態様では、Mは、Niおよび1種以上のさらなる元素である。さらなる元素は、任意に金属である。任意に、さらなる元素は、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、Zn、Ti、Zr、Y、Cr、Mo、Fe、V、Si、Ga、またはBを含むか、またはそれらの1種もしくは複数であってよい。特定の態様では、さらなる元素は、Mg、Co、Al、またはそれらの組み合わせを含んでよい。任意に、さらなる元素は、Mg、Al、V、Ti、B、Zr、またはMn、またはそれらの組み合わせであってよい。任意に、さらなる元素は、Mg、Al、V、Ti、B、Zr、またはMnからなる。任意に、さらなる元素は、Mg、Co、およびAlからなる。任意に、さらなる元素は、Mg、Co、Al、およびZrからなる。任意に、さらなる元素は、Ca、Co、およびAlからなる。いくつかの態様では、さらなる元素は、MnまたはMg、またはMnおよびMgの両方である。
【0028】
第一組成のさらなる元素は、第一組成の約1at%~約90at%、具体的には約5at%~約80at%、より具体的には約10at%~約70at%の量で存在していてよい。任意に、さらなる元素は、第一組成の約1at%~約20at%、具体的には約2at%~約18at%、より具体的には約4at%~約16at%の量で存在していてよい。いくつかの例示的な例では、Mは、約75at%~99at%のNi、3at%~15at%のCo、0at%~15at%のMn、および0at%~10at%のさらなる元素である。
【0029】
多結晶材料のうち、それぞれのナノ結晶は、任意の好適な形状を有してよく、この形状は、それぞれの粒子内で同じであるか、または異なってよい。さらに、それぞれのナノ結晶の形状は、異なる粒子において同じか、または異なってよい。その結晶性ゆえ、ナノ結晶は、ファセット化されてよく、ナノ結晶は、複数の平面を有してよく、かつナノ結晶の形状は、幾何学的形状に近似してよい。いくつかの態様では、ナノ結晶は、結晶面が一致しない隣接するナノ結晶と融合していてよい。ナノ結晶は、直線形状を有していてよく、断面で見た場合、ナノ結晶の一部または全体が、直線状であってよい。ナノ結晶は、正方形、六角形、長方形、三角形、またはそれらの組み合わせであってよい。
【0030】
粒界が濃化されていないベース材料に関するいくつかの態様では、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約85nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約80nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約75nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約70nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約65nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約60nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約55nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約50nm以下である。
【0031】
粒界が濃化されていないベース材料に関するいくつかの態様では、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、50nm以上約85nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約50nm以上約80nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約50nm以上約70nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約55nm以上約70nm以下である。
【0032】
粒界が濃化されていないベース材料に関する別の態様では、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約85nm以下、約84nm、約83nm、約82nm、約81nm、約80nm、約79nm、約78nm、約77nm、約76nm、約75nm、約74nm、約73nm、約72nm、約71nm、約70nm、約69nm、約68nm、約67nm、約66nm、約65nm、約64nm、約63nm、約62nm、約61nm、約60nm、約59nm、約58nm、約57nm、約56nm、約55nm、約54nm、約53nm、約52nm、約51nm、または約50nmである。
【0033】
Co濃化粒界のような金属濃化粒界を有する二次粒子を含む被覆された材料についてXRDによって測定したところ、ナノ結晶の平均結晶子サイズは約105nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約100nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約95nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約90nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約85nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約80nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約75nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約70nm以下である。
【0034】
粒界濃化材料に関するいくつかの態様では、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、70nm以上約105nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約70nm以上約100nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約70nm以上約90nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約75nm以上約90nm以下である。
【0035】
粒界濃化材料に関する別の態様では、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約105nm以下、約104nm、約103nm、約102nm、約101nm、約100nm、約99nm、約98nm、約97nm、約96nm、約95nm、約94nm、約93nm、約92nm、約91nm、約90nm、約89nm、約88nm、約87nm、約86nm、約85nm、約84nm、約83nm、約82nm、約81nm、約80nm、約79nm、約78nm、約77nm、約76nm、約75nm、約74nm、約73nm、約72nm、約71nm、または約70nmである。
【0036】
ベース粒子とは対照的に、粒界濃化粒子は、ナノ結晶と比べて粒界におけるCo濃化部を含む。Co濃化部の存在により、XRDを用いて測定された場合のナノ結晶子サイズの測定を人為的に抑制することができ、粒界におけるCoの濃化レベルが増加すると、XRD測定の増加が抑制される。例えば、粒界濃化材料を作るために被覆に(ベース材料の金属含有率に対して)6at%のCoが添加された(6at%のCo濃化)材料の結晶子サイズは、Co濃化が4at%である材料の結晶子サイズよりも小さい。したがって、被覆された粒子については、ナノ結晶サイズの測定値は、任意に、特定のCoの濃化レベルである。いくつかの態様では、4at%のCo濃化部でのナノ結晶サイズは、105nm以下または上記段落に記載のその他のレベルである。任意に、粒界における6at%のCo濃化部では、ナノ結晶サイズは、80nm以下または本明細書に別途記載された80nm未満のその他の値である。
【0037】
いくつかの態様では、粒界は、4at%までのCoで濃化されており、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約105nm以下、約104nm、約103nm、約102nm、約101nm、約100nm、約99nm、約98nm、約97nm、約96nm、約95nm、約94nm、約93nm、約92nm、約91nm、約90nm、約89nm、約88nm、約87nm、約86nm、約85nm、約84nm、約83nm、約82nm、約81nm、約80nm、約79nm、約78nm、約77nm、約76nm、約75nm、約74nm、約73nm、約72nm、約71nm、または約70nmである。
【0038】
いくつかの態様では、粒界は、約6at%のコバルトで濃化されており、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約82nm以下、約81nm、約80nm、約79nm、約78nm、約77nm、約76nm、約75nm、約74nm、約73nm、約72nm、約71nm、約70nm、約69nm、約68nm、約67nm、約66nm、約65nm、約64nm、約63nm、約62nm、約61nm、約60nm、約59nm、約58nm、約57nm、約56nm、約55nm、約54nm、約53nm、約52nm、約51nm、または約50nmである。
【0039】
いくつかの態様では、粒界は、1at%のCo、2at%のCo、3at%のCo、4at%のCo、5at%のCo、6at%のCo、7at%のCo、8at%のCo、9at%のCo、10at%のCoで濃化されている。
【0040】
いくつかの態様による本明細書で提供される粒子の1つのさらなる利点は、材料中のナノ結晶の原子格子配列の増加である。ナノ結晶と改善された構造配列との組み合わせによって、こうした粒子がカソードの成分として組み込まれたセルの、サイクル寿命のさらなる向上と、サイクル中のインピーダンス増加の低減をもたらすことができる。ナノ結晶の配列は、LiNiO2R-3m層状結晶構造中のLiサイトを占有するNi2+イオンの相対量と、酸素原子の相対z位置を測定することによって得ることができる。Ni2+は、Liサイトを占有することができ、X線を散乱させることができ、かつ比較的大きい電子密度を有する、Li+よりも重いと考えられるあらゆる元素(例えばCa、Mg、Ni、Co、Alなど)を表すことを意図することが留意される。これらのパラメータを用いると、3.5at%以下のNiのNi2+値は、結晶子サイズとともに、材料の改善された電気化学的性能をもたらすのに好適な大きさを有していると考えられる。本明細書で提供される粒界濃化粒子を準備することによって、結晶構造のLiサイトにおけるNi2+相対量を3.5at%以下のNiになおも維持しつつ、105nm以下の平均結晶子サイズを形成できることが判明した。濃化粒界を含むか、または含まない粒子のいくつかの態様では、結晶構造のLiサイトにおける相対Ni2+は、3.4at%以下のNiであり、任意に3.3at%のNi、任意に3.2at%のNi、任意に3.1at%のNi、任意に3.0at%のNi、任意に2.9at%のNi、任意に2.8at%のNi、任意に2.7at%のNi、任意に2.6at%のNi、任意に2.5at%のNi、任意に2.4at%のNi、任意に2.3at%のNi、任意に2.2at%のNi、任意に2.1at%のNi、任意に2.0at%のNi、任意に1.9at%のNi、任意に1.8at%のNi、任意に、1.7at%のNi、任意に1.6at%のNi、任意に1.5at%のNi、任意に1.4at%のNiである。いくつかの態様では、本明細書で提供される一次焼成の後に、結晶構造のLiサイトにおけるNi2+相対量は、1.6at%以下のNi、任意に1.4at%のNi~1.6at%のNi、またはそれらの間の任意の値もしくは範囲である。
【0041】
特定の態様では、粒子は、濃化粒界、任意に粒界におけるCoの原子パーセントがナノ結晶におけるCoの原子パーセントよりも高いCo濃化粒界を有する。例示的な図である図1を再び参照すると、粒界41、42は、隣接するナノ結晶/結晶粒40の間にあり、ナノ結晶/結晶粒40の表面上にあり、かつ第二組成を有する。第二組成としては、米国特許第9,391,317号明細書(US9,391,317)および米国特許第9,209,455号明細書(US9,209,455)に記載のものであってよく、実質的にそこに記載の通り形成することができる。第二組成は、任意に、層状α-NaFeO2型構造、立方晶構造、またはそれらの組み合わせを有する。上述の通り、粒界におけるコバルトの濃度は、ナノ結晶におけるコバルトの濃度よりも大きくてよい。粒界が層状α-NaFeO2型構造を有する態様が、具体的に言及される。
【0042】
粒界の第二組成は、任意に、組成Li1+xMO2+y(式中、-0.9≦x≦0.3および-0.3≦y≦0.3)によって定義されるリチオ化金属酸化物を含む。いくつかの態様では、xは、-0.1、任意に0、任意に0.1、任意に0.2、または任意に0.3である。任意に、xは、-0.10以上、-0.09、-0.08、-0.07、-0.06、-0.05、-0.04、-0.03、-0.02、-0.01、0.00、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、または0.30である。いくつかの態様では、yは、-0.3、任意に-0.2、任意に-0.1、任意に0、任意に0.1、任意に0.2、または任意に0.3である。任意に、yは、-0.30以上、-0.29、-0.28、-0.27、-0.26、-0.25、-0.24、-0.23、-0.22、-0.21、-0.20、-0.19、-0.18、-0.17、-0.16、-0.15、-0.14、-0.13、-0.12、-0.11、-0.10、-0.09、-0.08、-0.07、-0.06、-0.05、-0.04、-0.03、-0.02、-0.01、0.00、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、または0.3である。
【0043】
第二組成中で提供されるMは、Niを含む。Niの量は、任意に、Mの10原子パーセント~99原子パーセント(at%)である。任意に、MのNi成分は、75at%以上である。任意に、MのNi成分は、80at%以上である。任意に、MのNi成分は、85at%以上である。任意に、MのNi成分は、90at%以上である。任意に、MのNi成分は、95at%以上である。任意に、MのNi成分は、75at%以上、76at%、77at%、78at%、79at%、80at%、81at%、82at%、83at%、84at%、85at%、86at%、87at%、88at%、89at%、90at%、91at%、92at%、93at%、94at%、95at%、96at%、98at%、または99at%である。
【0044】
いくつかの態様では、第二組成中のMは、1種以上のNi置換元素である。Ni置換元素は、任意に金属である。任意に、置換元素は、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、Zn、Ti、Zr、Y、Cr、Mo、Fe、V、Si、Ga、もしくはBを含むか、またはそれらの1種もしくは複数であってよい。特定の態様では、置換元素は、Mg、Co、Al、またはそれらの組み合わせを含んでよい。
【0045】
第二組成の置換元素は、第一組成の約1at%~約90at%、具体的には約5at%~約80at%、より具体的には約10at%~約70at%の量で存在していてよい。任意に、さらなる元素は、第一組成の約1at%~約20at%、具体的には約2at%~約18at%、より具体的には約4at%~約16at%の量で存在していてよい。
【0046】
粒界の形状は、粒界に隣接する1つ以上の融合ナノ結晶を表すことができる結晶粒の形状によって定められる。粒界の形状は、幾何学的形状に近似してよい。粒界は、直線形状を有してよく、断面で見た場合、粒界は直線状であってよい。粒界は、正方形、六角形、長方形、三角形、またはそれらの組み合わせであってよい。
【0047】
粒界の表面の方向は、隣接するナノ結晶の表面の方向に相応する。また、図1に示される通り、粒界の表面とナノ結晶の表面は、粒子の外部表面に対して任意の様々な配向を有してもよい。したがって、ナノ結晶の表面の方向と粒界の表面の方向は、平行であり、二次粒子の外部に最も近い表面の方向と異なっていてよい。いくつかの態様では、粒子の外部に最も近い表面の接線の方向は、粒界の表面の方向および隣接する粒子の表面の方向と異なる。
【0048】
図1にも示される通り、粒界は、交差して、それらの間に角度を形成してよい。いくつかの態様では、ナノ結晶/結晶粒40の隣接面上に、第一粒界41と第二粒界42が配置される。第一粒界41と第二粒界42は、角度Eで交差している。角度Eは、第一粒界41および第二粒界42が配置されるナノ結晶の形状によって定めることができる。一般に、ナノ結晶の形状は、ナノ結晶の結晶構造の影響を受ける。理論に縛られることは望まないが、第一組成の結晶構造がナノ結晶の形状を左右するため、第一粒界41と第二粒界42の間の角度は、第一組成の結晶構造の影響を受けることが理解される。第一粒界41と第二粒界42は、角度が、層状α-NaFeO2型構造を任意に有する第一組成の結晶構造と一致している限り、任意の角度で、具体的には約10度~約170度、具体的には約20度~約160度、より具体的には約30度~約150度の角度で交差してよい。
【0049】
粒子は、任意に粉末形態の少なくとも2種の成分からグリーン体を合成することによって準備できる。少なくとも2種の成分は、微粉化(または非微粉化)水酸化リチウムまたはその水和物と、ニッケル、および1種以上のその他の元素を含む前駆体水酸化物を含んでよい。最終粒子中の元素の最終全体組成(必ずしも分布状態にあるわけではない)は、グリーン体の形成における前駆体材料の相対量を増加または減少させることによって調整できることが理解される。いくつかの態様では、水酸化リチウムまたはその水和物が微粉化される。グリーン体を形成する2種以上の粉末が合され、ペイントシェーカーで振とうされて、前駆体を完全に混合することができる。次に、グリーン体は、調節された空気雰囲気で最高温度まで焼成され、その結果、水およびCO2が最小限にされる。焼成は、任意に、所望の平均結晶子サイズを提供するために加熱曲線に従って実施される。次に、焼成された生成物は、加工処理されて、流動性の粉末を形成することができる。
【0050】
いくつかの態様では、前駆体水酸化物は、混合金属水酸化物であってよい。いくつかの態様では、この混合金属水酸化物は、Ni、Co、およびMgの金属組成を有する。任意に、混合金属水酸化物は、金属成分として80at%~100at%のNi、0at%~15at%のCo、および0at%~5at%のMgを含む。任意に、混合金属水酸化物の金属は、92at%のNiおよび8at%のCoである。任意に、混合金属水酸化物の金属は、90at%のNi、8at%のCo、および2at%のMgである。任意に、混合金属水酸化物の金属は、89at%のNi、8at%のCo、3at%のMgである。任意に、混合金属水酸化物の金属は、91at%のNi、8at%のCo、および1at%のMgである。任意に、混合金属水酸化物の金属は、100at%のNiである。例えば、前駆体水酸化物は、水酸化ニッケル系材料を準備するための標準的な方法を用いて、Hunan Brunp Recycling Technology Co. Ltd.のような前駆体供給業者よって製造されたものであってよい。
【0051】
第一焼成の最高温度を低下させることによって、比較的小さい結晶(すなわち、ナノ結晶)を有する粒子状材料を製造できることが判明した。したがって、第一焼成では、最高温度は、700℃未満であってよい。任意に、最高温度は、約680℃以下であってよい。任意に、最高温度は、約660℃以下であってよい。任意に、最高温度は、約640℃以下であってよい。さらに別の態様では、最高温度は、約700℃未満、約695℃、約690℃、約685℃、約680℃、約675℃、約670℃、約665℃、約660℃、約655℃、約650℃、約645℃、または約640℃であってよい。最高温度での停留時間は、任意に、10時間未満である。任意に、最高温度での停留時間は、8時間以下;任意に7時間以下;任意に6時間以下;任意に5時間以下;任意に4時間以下;任意に3時間以下;任意に2時間以下である。
【0052】
いくつかの態様では、最低温度よりも低い温度に下げることによって、観察された電気化学的改善が減少することが判明した。したがって、第一焼成の場合、いくつかの態様での最高温度は、少なくとも約640℃、任意に約645℃、任意に約650℃である。いくつかの態様では、最高温度に達する必要があり、このような最高温度は、任意に約640℃~約695℃、任意に約645℃~約695℃、任意に約650℃~約695℃、任意に約655℃~約695℃、任意に約645℃~約680℃、任意に約650℃~約680℃、任意に約655℃~約680℃、任意に約660℃~約680℃である。
【0053】
いくつかの態様では、第一焼成プロセスの加熱曲線は、2回の傾斜/停留プロセスに従い、それに続いて自然冷却されて約130℃にされ、次いで、焼成された材料が加工される。例示的な態様としては、第一の傾斜/停留は、1分あたり5℃の速度で周囲温度(例えば約25℃)から450℃までで、450℃にて2時間保って行われてよい。その後、第二の傾斜/停留は、1分あたり2℃の速度で450℃から最高温度までで、最高温度にて6時間保って行われてよい。
【0054】
焼成の後、その後の処理は、焼成された材料を乳鉢および乳棒で砕いて、得られた粉末が所望のふるい、任意に#35ふるいを通過するようにすることを含んでよい。この粉末は、任意に、1ガロンのジャー内で、2cmドラムYSZ媒体を用いて任意に5分間、またはその材料が任意に#270ふるいを通過できるような適切な時間にわたってボールミル粉砕される。
【0055】
いくつかの態様では、粉砕された生成物は、任意に、第二焼成後に濃化粒界が得られるような方法で被覆されてよい。一次粒子内の粒界を濃化するための被覆方法は、米国特許第9,391,317号明細書(US9,391,317)および米国特許第9,209,455号明細書(US9,209,455)に例示される方法または組成を使用して行うことができる。被覆は、任意に、粉砕された生成物を、濃化元素、任意にコバルト、および硝酸リチウムを含む水性スラリーに任意に60℃の温度で懸濁させて施与できるものである。この場合、このスラリーを噴霧乾燥して流動性のある粉末を形成することができ、次いで、この粉末を任意に2回の傾斜/停留プロセスに従う加熱曲線を用いる第二焼成に供する。第一の2回の傾斜/停留温度プロフィールは、1分あたり5℃の速度で周囲温度(約25℃)から450℃までで、450℃にて1時間保って行われてよい。その後、第二の傾斜/停留は、1分あたり2℃の速度で450℃から最高温度までで、この最高温度にて2時間保って行われてよい。いくつかの態様では、最高温度は、約700℃である。別の態様では、最高温度は、約725℃である。
【0056】
前述の最高温度を用いる第一焼成と、同じく前述の第二焼成による被覆を組み合わせることによって、105nm(XRD測定)以下の平均結晶子サイズを維持しながら、同時に、3.5at%以下のNiのNi2+を含む材料の同じ連続配向を維持することができることが判明した。このような組み合わせが、サイクル寿命以外に、材料の電気化学的性能を著しく改善するインピーダンス増加の低減をもたらすことが判明した。したがって、いくつかの態様では、粒子は、組成Li1+xMO2+y(式中、-0.1≦x≦0.3および-0.3≦y≦0.3)によって定義される多結晶層状構造リチオ化金属酸化物を含む第一組成を有する複数のナノ結晶を含むことが理解される。いくつかの態様では、xは、-0.1、任意に0、任意に0.1、任意に0.2、または任意に0.3である。任意に、xは、-0.10以上、-0.09、-0.08、-0.07、-0.06、-0.05、-0.04、-0.03、-0.02、-0.01、0.00、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、または0.30である。いくつかの態様では、yは、-0.3、任意に-0.2、任意に-0.1、任意に0、任意に0.1、任意に0.2、または任意に0.3である。任意に、yは、-0.30以上、-0.29、-0.28、-0.27、-0.26、-0.25、-0.24、-0.23、-0.22、-0.21、-0.20、-0.19、-0.18、-0.17、-0.16、-0.15、-0.14、-0.13、-0.12、-0.11、-0.10、-0.09、-0.08、-0.07、-0.06、-0.05、-0.04、-0.03、-0.02、-0.01、0.00、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、または0.3である。ナノ結晶は、粒子の10原子パーセント~99原子パーセント(at%)のM要素中のNiの量を有する。任意に、MのNi成分は、75at%以上である。任意に、MのNi成分は、80at%以上である。任意に、MのNi成分は、85at%以上である。任意に、MのNi成分は、90at%以上である。任意に、MのNi成分は、95at%以上である。任意に、MのNi成分は、75at%以上、76at%、77at%、78at%、79at%、80at%、81at%、82at%、83at%、84at%、85at%、86at%、87at%、88at%、89at%、90at%、91at%、92at%、93at%、94at%、95at%、96at%、98at%、または99at%である。M成分は、1種以上のさらなる元素を含んでよい。さらなる元素は、任意に金属である。任意に、さらなる元素は、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、Zn、Ti、Zr、Y、Cr、Mo、Fe、V、Si、Ga、またはBを含むか、またはそれらの1種または複数であってよい。特定の態様では、さらなる元素は、Mg、Co、Al、またはそれらの組み合わせを含んでよい。任意に、さらなる元素は、Mg、Al、V、Ti、B、Zr、またはMn、またはそれらの組み合わせであってよい。任意に、さらなる元素は、Mg、Al、V、Ti、B、Zr、またはMnからなる。いくつかの態様では、さらなる元素は、MnまたはMg、またはMnおよびMgの両方である。第一組成のさらなる元素は、第一組成の約1at%~約90at%、具体的には約5at%~約80at%、より具体的には約10at%~約70at%の量で存在していてよい。任意に、さらなる元素は、第一組成の約1at%~約20at%、具体的には約2at%~約18at%、より具体的には約4at%~約16at%の量で存在していてよい。いくつかの例示的な例では、Mは、約75at%~99at%のNi、3at%~15at%のCo、0at%~15at%のMn、および0at%~10at%のさらなる元素である。また、ナノ結晶の平均結晶子サイズ(前述のX線回折法により測定)は、約105nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約100nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約95nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約90nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約85nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約80nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約75nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約70nm以下である。いくつかの態様では、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、70nm以上約105nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約70nm以上約100nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約70nm以上約105nm以下である。任意に、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約75nm以上約100nm以下である。別の態様では、ナノ結晶の平均結晶子サイズは、約105nm以下、約104nm、約103nm、約102nm、約101nm、約100nm、約99nm、約98nm、約97nm、約96nm、約95nm、約94nm、約93nm、約92nm、約91nm、約90nm、約89nm、約88nm、約87nm、約86nm、約85nm、約84nm、約83nm、約82nm、約81nm、約80nm、約79nm、約78nm、約77nm、約76nm、約75nm、約74nm、約73nm、約72nm、約71nm、または約70nmである。
【0057】
任意に、粒子は、LiNiO2R-3m層状結晶構造中のLiサイトを占有するNi2+イオンの相対量によって示される原子格子配列したナノ結晶をさらに有し、ここで、Ni2+値は、3.5%以下、任意に3.2at%未満のNi、任意に2.5%以下である。M要素中のNiの原子%は、任意に75at%~99at%、任意に80at%~95at%である。
【0058】
任意に、図1の30で図示された外部層、例えば不動態化層または保護層は、粒子の外部表面上に配置されてよい。この外部層は、二次粒子を完全または部分的に覆ってよい。この層は、非晶質または結晶質であってよい。この層は、Zr、Al、Ti、Al、B、Li、もしくはSiのような元素、もしくはそれらの組み合わせの酸化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、フルオロリン酸塩、炭酸塩、フッ化物、オキシフッ化物、またはそれらの組み合わせを含んでよい。いくつかの態様では、外部層は、ホウ酸塩、アルミン酸塩、ケイ酸塩、フルオロアルミン酸塩、またはそれらの組み合わせを含む。任意に、外部層は、炭酸塩を含む。任意に、外部層は、ZrO2、Al23、TiO2、AlPO4、AlF3、B23、SiO2、Li2O、Li2CO3、またはそれらの組み合わせを含む。任意に、外部層は、AlPO4もしくはLi2CO3を含むか、またはAlPO4もしくはLi2CO3である。この層は、粒子の所望の特性に悪影響を及ぼさない任意の方法または技術によって配置することができる。代表的な方法は、例えばスプレーコーティングおよび浸漬コーティングを含む。
【0059】
唯一の電気化学的活物質の成分として、または唯一の電気化学的活物質として、本明細書に記載の粒子を含む電極も提供される。本明細書で提供される粒子は、任意に、カソードの活性成分として含まれる。任意に、カソードは、活物質として上に開示された粒子を含み、導電剤および/または結合剤をさらに含む。この導電剤は、好適な特性をもたらす任意の導電剤を含み、非晶質、結晶質、またはそれらの組み合わせであってよい。この導電剤は、カーボンブラック、例えばアセチレンブラックまたはランプブラック、メソカーボン、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、例えば単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブ、またはそれらの組み合わせを含んでよい。結合剤は、好適な特性をもたらす任意の結合剤であってよく、この結合剤は、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリ(酢酸ビニル)、ビニルブチラール・ビニルアルコール・酢酸ビニル共重合体、メタクリル酸メチル・アクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、1-ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリビニルエーテル、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、スルホン化スチレン/エチレン-ブチレン/スチレンのトリブロックポリマー、ポリエチレンオキシド、またはそれらの組み合わせを含んでよい。
【0060】
カソードは、本明細書に記載の粒子と導電剤と結合剤とを好適な比で、例えば粒子と導電剤と結合剤とを合した全質量を基準として約80質量%~約98質量%の粒子と、約2質量%~約20質量%の導電剤と、約2質量%~約10質量%の結合剤とを合することによって製造することができる。粒子と導電剤と結合剤は、好適な溶媒、例えばN-メチルピロリジノン中に懸濁していてよく、好適な基材、例えばアルミニウム箔上に配置されて、空気中で乾燥することができる。基材および溶媒は、例示的な目的のためだけに示されることが留意される。別の好適な基材および溶媒を使用または合して、カソードを形成することもできる。
【0061】
いくつかの態様では、濃化粒界の有無に応じて約85nm以下または105nm以下のナノ結晶の平均結晶子サイズを有する多結晶材料を含むカソードは、電極がL金属に対して4.3Vまで充電され、3.0Vまで放電される場合、C/20レートで205mAh/g超の電気化学的放電容量を示すことができる。さらに別の態様では、カソードは、電極がL金属に対して4.3Vまで充電され、3.0Vまで放電される場合、C/20レートで200mAh/g超の電気化学的放電容量を示すことができる。さらに別の態様では、カソードは、電極がL金属に対して4.3Vまで充電され、3.0Vまで放電される場合、C/20レートで190mAh/g超の電気化学的放電容量を示すことができる。さらに別の態様では、カソードは、電極がL金属に対して4.3Vまで充電され、3.0Vまで放電される場合、C/20レートで180mAh/g超の電気化学的放電容量を示すことができる。さらに別の態様では、カソードは、電極がL金属に対して4.3Vまで充電され、3.0Vまで放電される場合、C/20レートで175mAh/g超の電気化学的放電容量を示すことができる。さらに別の態様では、カソードは、電極がL金属に対して4.3Vまで充電され、3.0Vまで放電される場合、C/20レートで170mAh/g超の電気化学的放電容量を示すことができる。
【0062】
上で説明したカソードは、リチウム箔アノード、ポリオレフィンセパレータおよび1質量%のVCを含む1/1/1(体積)のEC/DMC/EMC中の1MのLiPF6の電解質を用いて2025コインセル内でサイクルされる場合、任意に、インピーダンス増加の大幅な低下を示す。インピーダンス増加の1つの尺度は、このセルを1Cレートで4.2V(CCCV)まで充電し、このセルを2.7Vまで放電することによって示される。この特性化工程の間に一定電圧で費やされた時間を、インピーダンスの測定値として使用することができる。サイクル数に対してプロットされたインピーダンス測定によって、所定の勾配を有する曲線がもたらされる。活性粒子材料が、より大きい結晶子サイズ(例えば85nm超)を有する粒子と比べて、本明細書に記載の結晶子サイズまたは大きさを有する場合、インピーダンス勾配はより低い。いくつかの態様では、インピーダンス勾配は、0.025以下、任意に0.024以下、任意に0.023以下、任意に0.022以下、任意に0.021以下、任意に0.020以下、任意に0.019以下、任意に0.018以下、任意に0.017以下、任意に0.016以下、任意に0.015以下である。
【0063】
カソードを含む電池も開示される。この電池は、例えばリチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、またはリチウム電池であってよい。この電池は、カソード、アノード、およびカソードとアノードの間に置かれたセパレータを含んでよい。このセパレータは、微多孔膜であってよく、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはそれらの組み合わせを含む多孔質被膜を含んでもよいし、織布材料または不織布材料、例えばガラス繊維マットであってもよい。アノードは、集電体上に被覆を含んでよい。この被覆は、例えば好適な炭素、例えばグラファイト、コークス、硬質炭素、またはメソカーボン、例えばメソカーボンマイクロビーズを含んでよい。集電体は、例えば銅箔であってよい。
【0064】
電池は、正極(カソード)、負極(アノード)、およびセパレータに接触しうる電解質も含む。この電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含んでよい。この有機溶媒は、鎖状または環状カーボネートであってよい。代表的な有機溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸トリフルオロプロピレン、γ-ブチロラクトン、スルホラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、3-メチル-1,3-ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、プロパンスルトン、またはそれらの組み合わせを含む。別の態様では、電解質は、ポリマー電解質である。
【0065】
電解質に有用な代表的なリチウム塩は、これらに限定されないが、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiN(SO2252、LiSbF6、LiC(CF3SO23、LiC49SO3、およびLiAlCl4を含む。リチウム塩は、有機溶媒に溶解することができる。前述のリチウム塩のうちの少なくとも1つを含む組み合わせを使用することができる。リチウム塩の濃度は、電解質中で0.1M~2.0Mであってよい。
【0066】
電池は、好適な構成または形状を有してよく、円形またはプリズム状であってよい。
【0067】
本開示の様々な態様は、以下の非限定的な実施例によって説明される。これらの実施例は、説明のためのものであり、本発明の実施を限定するものではない。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく修正および変更できることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】本明細書に記載の1つ以上の態様による電気化学的に活性な多結晶粒子の概略断面斜視図。
図2】本明細書に記載の1つ以上の態様による二重セルの100~200サイクルでの大きい結晶子サイズ(109nm)および小さい結晶子サイズ(78nm)を有するカソード材料の放電性能を示すグラフ。
図3】本明細書に記載の1つ以上の態様による図3に示す放電性能データに相応する大きい結晶と小さい結晶を有するカソード材料を含む二重セルのインピーダンス値を示すグラフ。
図4】本明細書に記載の1つ以上の態様による700℃以下の温度での焼成により形成された結晶子サイズの範囲を有するカソード材料を含む二重セルの100~200サイクルでのインピーダンス値を示すグラフ。
【0069】
実施例
ナノ結晶の平均結晶子サイズは、CuX線管を備えた自動化されたShimadzu XRD-6000回折計を用いて、0.75度/minで2θ=12度~120度での連続走査により収集された粉末X線回折パターンを使用して求めることができる。原子構造分析および結晶子サイズ分析は、MDI Jade 7プログラムまたはその他の同等のプログラムで実行されるリートベルト法技術を用いて行うことができる。原子構造精密化の手順は、当業者に明らかである。このような精密化を用いて、LiNiO2R-3m層状結晶構造のa格子およびc格子パラメータと、Liサイトを占有するNi2+イオンの相対量と、酸素原子の相対z位置を得ることができる。三次多項式のバックグラウンド曲線とPseudo-Voigtプロファイル形状関数をピークフィッティングに使用することができる。ピーク広がりは、結晶子サイズおよび歪みの両方の場合、または結晶子サイズの場合にのみMDI Jadeでフィットすることができる。結晶子サイズフィッティングのみ(歪みなし)が、異なる反応条件下で合成された材料の平均一次結晶子サイズを測定するために使用される。装置を使用したFWHM校正曲線は、NIST SRM 640 SiまたはSRM 660 LiB6粉末などの校正標準のプロファイルフィッティング回折パターンによって得ることができる。
【0070】
例1:結晶子サイズが異なる多結晶2D α-NaFeO2型層状構造粒子の2つの試料
カソード材料で高ニッケルの結晶子サイズが異なる2つの電気化学的に活性な多結晶2D α-NaFeO2型層状構造粒子を準備した。準備した多結晶2D α-NaFeO2型層状構造の2つの試料は、全体組成Li(0.98)Mg(0.02)Ni(0.881)Co(0.115)Al(0.004)(2.0)を有していた。1つの試料は、グリーン体を700℃で焼成し、第二焼成を680℃で行って製造した。2つの材料は、80.21gの微粉化LiOHおよび288.2gの前駆体水酸化物を含む同じグリーン体配合物から製造した。この前駆体水酸化物は、90.2at%のNi、7.8at%のCo、および2.0at%のMgの原子レベルで混合された組み合わせを含んでいた。
【0071】
次いで、グリーン体ブレンドの2分量に対して、CO2不含の乾燥空気を流しながら加熱曲線の異なる焼成を行った。「大きい結晶子」を製造するために用いられた「高温」は、均熱処理時間2時間で5℃/minにて25℃から450℃まで傾斜し、その後2℃/minにて700℃の最高温度までの第二の傾斜および均熱処理時間6時間が続いた。「小さな結晶子サイズ」(ナノ結晶を意味する)を製造するために用いられた「低温」は、均熱処理時間2時間で5℃/minにて25℃から450℃まで傾斜し、その後2℃/minにて680℃の最高温度までの第二の傾斜および均熱処理時間6時間が続いた。
【0072】
次いで、それぞれの材料を自然冷却して100℃にした。まず、焼成された材料をそれぞれ乳鉢および乳棒で磨砕して、次いで、ボールミルで粉砕した。「大きい結晶子」の生成物は、10分間粉砕した一方、「小さい結晶子サイズ」の材料は、5分間粉砕した。
【0073】
2つの材料の特性を第1表にまとめる。これらの2つの材料を、平均酸化状態、残留水酸化リチウム、および層状結晶中のイオン混合を特定する一連の試験に供した。合成された材料は、カソード粉末(酸化状態、残留水酸化リチウム、およびカチオン混合)を特性化するために一般に使用される典型的な測定基準と実質的に同一であった。唯一の有意差は、平均結晶子であった。
【0074】
【表1】
【0075】
電極を形成する前に、合成された粉末を、同じ方法を用いて、前述の配合物を製造するのに充分な程度にコバルトとアルミニウムの混合物で被覆して粒界を濃化した。両方の材料を被覆した後、これらの材料をCO2不含の乾燥空気を流しながら別の加熱処理に供した。この処理に用いた加熱曲線は、均熱処理時間1時間で5℃/minにて25℃から450℃まで傾斜し、その後2℃/minにて700℃までの第二の傾斜および均熱処理時間2時間が続いた。次いで、これらの材料を自然冷却して100℃にして、ボールミルで5分間粉砕した。粒界濃化材料の得られたパラメータを第2表に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
これらの材料を、それぞれ、NMPのスラリー溶媒中のPVDF結合剤および導電性の炭素とブレンドして、アルミニウム箔集電体上に被覆した。次いで、電気化学的サイクル寿命試験のために、カソード電極をこの箔から打ち抜き、MCMBグラファイトアノードと多孔性ポリプロピレンセパレータと炭酸塩系電解質と組み合わせて「フル」コインセル型にした。カソード電極をまた、電気化学的放電容量試験のために、リチウム金属アノードと多孔性ポリプロピレンセパレータと炭酸塩系電解質と組み合わせて「ハーフ」コインセル型にした。
【0078】
ハーフセル試験の結果を以下の第3表に示す。両方の試料については、C/20で205mAh/g超の高い放電容量が達成されている。
【0079】
【表3】
【0080】
これらのフルセルにおいて、一連の充放電サイクルを最初は室温で、次に45℃で繰り返した。100~200サイクルでの45℃での試験の結果を、以下の図2および3に示す。図2は、大きい結晶またはナノ結晶を有するカソード材料を含む二重セルについての、45℃での100~200サイクルでの放電容量劣化のグラフである。図3は、図2に示されたサイクルデータに相応する大きい結晶子サイズまたは小さい結晶子サイズ(例えばナノ結晶)を有するカソード材料を含む二重セルについての無次元インピーダンス値の増加を示している。このインピーダンス値は、充電/放電の20サイクルごとに測定したものであった。ここで留意すべきは、小さいナノ結晶を有する材料の場合、初期の高い放電容量と初期の低いインピーダンスの改善である。より具体的には、85%以上の残留容量が、200サイクルで達成される。さらに、小さいナノ結晶を有する材料の場合、サイクル中の容量保持はより優れており、インピーダンス増加速度は、より低い。
【0081】
例2:結晶子サイズの異なる、Li(0.98)Mg(0.02)Ni(0.863)Co(0.131)Al(0.006)(2)の配合を有する4つのカソード粉末
4つの電気化学的に活性な、高ニッケルの、結晶子サイズの異なる多結晶2D α-NaFeO2型層状構造粒子を準備した。準備した多結晶2D α-NaFeO2型層状構造の4つの試料はそれぞれ、全体組成Li(0.98)Mg(0.02)Ni(0.863)Co(0.131)Al(0.006)(2.0)を有していた。
【0082】
例1と実質的に同じ2種の粉末成分からグリーン体ブレンドを合成した。これらの粉末を1/2ガロンのHDPE瓶で合し、ペイントシェーカーで10分間振とうさせて、完全に混合した。次いで、このグリーン体ブレンドを調節された空気雰囲気で焼成し、その結果、水およびCO2を最小限にした。焼成によって焼結セラミック生成物を形成し、次いで、この生成物を加工処理して流動性のある粉末を形成した。
【0083】
グリーン体に合された2種の粉末は、微粉化水酸化リチウムと混合金属水酸化物であった。この水酸化リチウムは、その250gを1200gのイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)媒体(球状、直径1/4インチ)と共に1/2ガロンのHDPE瓶内で45分間振とうすることによって微粉化したものである。この混合金属水酸化物は、90at%のNi、8at%のCoおよび2at%のMgである金属組成を有していた。これは、水酸化ニッケル系材料を準備するための標準的な方法を用いて、前駆体供給業者Hunan Brunp Recycling Technology Co. Ltd.によって製造されたものであった。
【0084】
第一焼成の加熱曲線は、2回の傾斜/停留に従い、この処理の後、自然冷却されて130℃にされた。第一の傾斜/停留は、5℃/minで周囲温度から450℃までで2時間保たれた一方、第二の傾斜/停留は、2℃/minで450℃から最高温度までで6時間保たれた。記載された4つの材料を、640℃、660℃、680℃および700℃の異なる最高温度で焼成した。
【0085】
最も低い方から数えて3つの温度(すなわち、640℃、660℃、および680℃)で製造された材料については、252gの水酸化リチウムと961gの混合金属水酸化物粉末から単一のグリーン体ブレンドを製造した。次いで、これを3つに分割し、3分割されたそれぞれを、焼成するために3つのるつぼの1つに配置した。焼成の後、後続処理は、最初に乳鉢および乳棒を用いて焼結ケーキを砕いて、得られた粉末が#35ふるいを通過するようにすることを含んでいた。次に、この粉末を、1ガロンのジャーで2cmドラムYSZ媒体で5分間ボールミル粉砕し、#270ふるいを通過させた。
【0086】
700℃で焼成された材料は、252gの水酸化リチウムと941gの混合金属水酸化物から製造されたグリーン体ブレンドを含んでいた。このブレンドを、同一にプログラムされた3つの炉内に均等に並べられた9つのるつぼ内で焼成させた。焼成の後、後続処理は、最初に乳鉢および乳棒を用いて焼結ケーキを砕いて、得られた粉末が#35ふるいを通過するようにすることを含むものであった。次に、この粉末を、1ガロンのジャーで2cmドラムYSZ媒体で10分間ボールミル粉砕し、#270ふるいを通過させた。
【0087】
電極を形成する前に、合成された粉末を、同じ方法を用いて、前述の配合物を製造するのに充分な程度にコバルトとアルミニウムの混合物で被覆した。両方の材料を被覆した後、これらの材料をCO2不含の乾燥空気を流しながら別の加熱処理に供した。この処理に用いた加熱曲線は、均熱処理時間1時間で5℃/minにて25℃から450℃までの傾斜の後に、2℃/minにて700℃までの第二の傾斜および均熱処理時間2時間が続いた。次いで、これらの材料を自然冷却して100℃にして、ボールミルで5分間粉砕した。
【0088】
4つのカソード粉末のそれぞれについて、このカソード粉末をN-メチルピロリジノン中のPVdF(Kureha KF-1120)および炭素(Denka black)と合してスラリーを形成し、次いでそれぞれのスラリーをアルミニウム箔集電体上に被覆することによって電極被覆を製造した。次いで、被覆されたアルミニウム箔からカソードを打ち抜いた。
【0089】
このカソードをリチウム箔、ポリオレフィンセパレータ(Celgard 2500)および1質量%のVCを含む1/1/1(体積)のEC/DMC/EMC中の1MのLiPF6の電解質(Kishida Chemical)と組み合わせて2025コインセルにしてハーフセルを組み立てた。それぞれのセルの容量は、200mAh/gの容量のカソード材料を仮定して、電極質量から計算して測定した。次いで、これらのセルをC/20で4.3Vまで充電して、C/20~5Cのレートで放電した。充電率または放電率に関して、Cは、Cレートを指し、これは、セルが1時間で充放電されるレートである。ハーフセル分析の結果を第4表に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
カソードを黒鉛アノード、ポリオレフィンセパレータ(Celgard 2500)および1質量%のVCを含む1/1/1(体積)のEC/DMC/EMC中の1MのLiPF6の電解質(Kishida Chemical)と組み合わせて2025コインセルにしてフルセルを組み立て、そのカソードの半分は、アルミニウムで被覆したものであった。それぞれのセルの容量は、200mAh/gの容量のカソード材料を仮定して、電極質量から計算して測定した。アノード容量がカソードを1.27倍~1.30倍の範囲で超過するように、アノードをカソード質量に適合させた。
【0092】
MCMB 1028活物質を用いた黒鉛アノード被覆は、N-メチルピロリジノン中のPVdF(Kureha KF-1120)および炭素(Denka black)とこの活物質をブレンドしてスラリーを形成し、次いで、それぞれのスラリーを銅箔集電体上に被覆することによって製造した。次いで、被覆された銅箔からアノードを打ち抜いた。
【0093】
次いで、フルコインセルを、C/5にて25℃で形成し、1.5Cの充電電流で4.25Vまで、および1Cにて2.7Vで終了する放電電流を45℃で繰り返した。20サイクルごとに、セルを1Cレートで4.2V(CCCV)まで充電し、このセルを2.7Vまで放電して、容量およびインピーダンスを特性化した。この特性化工程中の一定電圧(すなわち、CV工程)で費やされた時間を、インピーダンスの尺度として用いた。
【0094】
【表5】
【0095】
結晶子サイズは、CuX線管を備えた自動化されたShimadzu XRD-6000回折計を使用して、0.75度/minで2θ=12度~120度での連続走査により収集された粉末X線回折パターンを用いて求めた。原子構造分析および結晶子サイズ分析は、MDI Jade 7プログラムで実行されるリートベルト法技術を用いて行った。原子構造精密化の手順は、当業者に明らかである。このような精密化を用いて、LiNiO2R-3m層状結晶構造のa格子およびc格子パラメータと、Liサイトを占有するNi2+イオンの相対量と、酸素原子の相対z位置が得られた。三次多項式のバックグラウンド曲線とPseudo-Voigtプロファイル形状関数をピークフィッティングに使用した。ピーク広がりは、結晶子サイズの場合(歪みなし)にのみフィットした。装置を使用したFWHM校正曲線を、NIST 640c Si校正標準のプロファイルフィッティング回折パターンによって得た。歪みなしの結晶子サイズフィッティングを、異なる反応条件下で合成された材料の平均一次結晶子サイズを測定するために使用する。結果を第6表に示す。
【0096】
【表6】
【0097】
被覆を施与して、材料を短期間再焼成した後、大部分の材料について、いくらかの結晶成長がXRDによって観察される。700℃の焼成では、粒界濃化によって引き起こされたわずかな格子パラメータ歪みの結果として、結晶子サイズの明らかにわずかな減少が観察される。しかし、最初の焼成で作られたサイズの同じ連続配向は維持されている。また、配列の乱れ(disorder)も、Ni2+値が3.5at%未満のNiに留まり低レベルに維持されている。
【0098】
【表7】
【0099】
ここで、図4を参照すると、これは、4つのカソード粉末のそれぞれ2つの試料についての100~200サイクルでのインピーダンス値を示すグラフであり、ここで、第一焼成は、700℃以下の温度で行われたことが示されている。示されている通り、結晶子サイズは、最高焼成温度が低下するにつれて減少している。さらに、第5表で定量化されたインピーダンス勾配も、640℃での焼成でインピーダンス勾配が増加するものの、焼成温度とともに減少している。第4表に示される通り、焼成最高温度を700℃未満および640℃超とすることで、電池の充電/放電サイクル中の低いインピーダンス増加速度と高い放電容量とが達成される。
【0100】
ここで、本明細書に記載の態様は、電池の充電/放電サイクル中のインピーダンス増加速度を低下させるために小さいナノ結晶を有するLiイオン電池用正極(カソード)活物質の組成物およびその製造方法を対象にできることを理解されたい。記載される組成物および製造方法は、高ニッケル配合物中で85nm以下(または粒界濃化粒子の場合は105nm以下)の平均結晶子サイズを有する材料を達成し、またC/20で205mAh/g以上の高い放電容量も有する正極を形成する活性多結晶粒子を含む。この正極(カソード)活物質の提供される組成物および製造方法は、電気化学的性能および安定性の大幅な向上を示し、それによって、リチウムは、脱インターカレーションされ、結晶格子内に再インターカレーションされる。
【0101】
例示的な態様の一覧
1.電気化学的に活性な多結晶粒子であって:
複数のナノ結晶を含み、この複数のナノ結晶が、Li1+xMO2+y(式中、
-0.1≦x≦0.3、
-0.3≦y≦0.3、および
Mは、10原子パーセント以上のニッケルを含む)によって定義される第一組成を有し;かつ
前述の複数のナノ結晶が、X線回折によって測定して85ナノメートル以下の平均結晶子サイズを有する、電気化学的に活性な多結晶粒子。
2.前述の複数のナノ結晶の前述のサイズが、50ナノメートル以上85ナノメートル以下の平均結晶子サイズを有する、態様1記載の粒子。
3.前述の複数のナノ結晶の前述の結晶子サイズが、80ナノメートル以下である、態様1記載の粒子。
4.前述の複数のナノ結晶の前述のサイズが、70ナノメートル以下である、態様1記載の粒子。
5.前述の複数のナノ結晶の前述のサイズが、55ナノメートル~70ナノメートルである、態様1記載の粒子。
6.Mが、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、Zn、Ti、Zr、Y、Cr、Mo、Fe、V、Si、GaおよびBからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含む、態様1から5までのいずれか1つの態様に記載の粒子。
7.前述の複数のナノ結晶の隣接する結晶粒の間にあり、かつα-NaFeO2型層状構造、立方晶構造、またはそれらの組み合わせを任意に有する第二組成を有する粒界をさらに含み、ここで、前述の粒界におけるコバルトの濃度は、前述のナノ結晶におけるコバルトの濃度よりも大きい、態様1から6までのいずれか1つの態様に記載の粒子。
8.Mが、75%以上、任意に80%以上、任意に85%以上の原子パーセントのニッケルを含む、態様1から7までのいずれか1つの態様に記載の粒子。
9.Mが、90%以上、任意に95%以上の原子パーセントのニッケルを含む、態様1から7までのいずれか1つの態様に記載の粒子。
10.前述の粒子の表面上に外部被覆をさらに含み、この外部被覆が:
Al、Zr、Y、Co、Ni、およびLiから選択される1種以上の元素の酸化物;
Al、Zr、およびLiから選択される1種以上の元素を含むフッ化物;
Al、Co、およびLiから選択される1種以上の元素を含む炭酸塩;または
AlおよびLiから選択される1種以上の元素を含むリン酸塩
を含む、態様1から9までのいずれか1つの態様に記載の粒子。
11.Mが、85%以上、任意に95%以上の原子パーセントのニッケルを含み、前述の複数のナノ結晶の前述のサイズが、50ナノメートル以上85ナノメートル以下の平均サイズを有する、態様1から10までのいずれか1つの態様に記載の粒子。
12.前述のナノ結晶の平均サイズが、105ナノメートル以下である、態様7から11までのいずれか1つの態様に記載の粒子。
13.前述のナノ結晶の平均サイズが、105ナノメートル以下である、態様7または10記載の粒子。
14.前述のナノ結晶の平均サイズが、105ナノメートル以下である、態様7、10、8または9のいずれか1つの態様に記載の粒子。
15.電気化学的に活性な粒子、任意に態様1から14までのいずれか1つの態様に記載の電気化学的に活性な粒子を製造する方法であって:
水酸化リチウムまたはその水和物とニッケルを含む前駆体水酸化物または炭酸塩を含む第一混合物を準備する工程;
前述の第一混合物を700℃未満の最高温度に焼成して、85ナノメートル以下のサイズを有する複数のナノ結晶を含む第一材料を形成する工程
を含む方法。
16.前述の最高温度が、680℃以下である、態様15記載の方法。
17.前述の最高温度が、660℃以下である、態様15記載の方法。
18.前述の第一混合物を焼成する前述の工程が、
温度を約5℃/分で約25℃から約450℃まで上昇させること、
約450℃の前述の温度で約2時間均熱処理すること、
前述の温度を約450℃から約650℃~約699℃の最高温度まで上昇させること;および
約650℃~約699℃の前述の最高温度で約6時間均熱処理すること
を含む、態様15記載の方法。
19.前述の最高温度が、約660℃~約680℃である、態様15記載の方法。
18.前述の第一材料と、コバルト、アルミニウム、またはそれらの組み合わせの少なくとも1種を含む第二材料を合して、第二混合物を形成する工程;および
前述の第二混合物を725℃以下の第二最高温度に加熱処理して、隣接するナノ結晶の間にあり、かつα-NaFeO2型層状構造、立方晶構造、またはそれらの組み合わせを任意に有する第二組成を有する粒界をさらに含む粒子を製造する工程、ここで、前述の粒界におけるコバルトの濃度は、前述のナノ結晶におけるコバルトの濃度よりも大きく;かつここで、前述の複数のナノ結晶は、105ナノメートル以下のサイズを有する、
をさらに含む、態様15から19までのいずれか1つの態様に記載の方法。
20.前述の第二最高温度が、700℃以下である、態様19記載の方法。
21.前述の粒子が、75%以上、任意に80%以上、任意に85%以上の原子パーセントのニッケルを含む、態様15から20までのいずれか1つの態様に記載の方法。
22.前述の粒子が、90%以上、任意に95%以上の原子パーセントのニッケルを含む、態様15から20までのいずれか1つの態様に記載の方法。
23.前述の複数のナノ結晶の前述の平均サイズが、50ナノメートル以上85ナノメートル以下である、態様15から22までのいずれか1つの態様に記載の方法。
24.前述の複数のナノ結晶の前述のサイズが、80ナノメートル以下である、態様15から22までのいずれか1つの態様に記載の方法。
25.前述の複数のナノ結晶の前述のサイズが、70ナノメートル以下である、態様15から22までのいずれか1つの態様に記載の方法。
26.前述の複数のナノ結晶の前述のサイズが、66ナノメートル以下である、態様15から22までのいずれか1つの態様に記載の方法。
27.前述の複数のナノ結晶の前述のサイズが、50ナノメートル~80ナノメートル、任意に55ナノメートル~70ナノメートルである、態様15から22までのいずれか1つの態様に記載の方法。
28.前述の複数のナノ結晶が、100ナノメートル以下、任意に95ナノメートル、任意に90ナノメートル、任意に85ナノメートル、任意に80ナノメートル、任意に75ナノメートル、任意に70ナノメートルのサイズを有する、態様18記載の方法。
29.前述の第二最高温度が、700℃以下である、態様28記載の方法。
30.前述の粒子が、75%以上、任意に80%以上、任意に85%以上の原子パーセントのニッケルを含む、態様28または29記載の方法。
31.前述の粒子が、90%以上、任意に95%以上の原子パーセントのニッケルを含む、態様28または29記載の方法。
32.電気化学的に活性な多結晶二次粒子であって:
Li1+xMO2+y(式中、
-0.0≦x≦0.3、
-0.3≦y≦0.3、および
Mは、80原子パーセント以上のニッケルを含む)によって定義される第一組成を有し;
X線回折によって測定して105ナノメートル以下のサイズを有する複数のナノ結晶と、
前述の複数のナノ結晶の隣接するナノ結晶の間にあり、かつα-NaFeO2型層状構造、立方晶構造、またはそれらの組み合わせを任意に有する第二組成を有する粒界とを含み、ここで、前述の粒界におけるコバルトの濃度は、前述のナノ結晶におけるコバルトの濃度よりも大きい、電気化学的に活性な多結晶二次粒子。
33.前述のナノ結晶におけるコバルトの濃度が、約0.25原子パーセント~約17原子パーセントであり、
前述の粒界におけるコバルトの濃度が、約0.5原子パーセント~約32原子パーセントであり、それぞれ前述の粒子の全原子組成を基準としている、態様32記載の粒子。
34.Mが、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、B、Zn、Ti、Zr、Y、Cr、Mo、Fe、V、Si、GaおよびBからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含み、前述の1種以上の元素が、前述のナノ結晶のLi層、M層、または両方の層中に存在している、態様32記載の粒子。
35.前述の複数のナノ結晶の前述のサイズが、100ナノメートル以下である、態様32から34までのいずれか1つの態様に記載の粒子。
36.前述の複数のナノ結晶の前述のサイズが、70ナノメートル~100ナノメートル、任意に75ナノメートル~90ナノメートルである、態様32から34までのいずれか1つの態様に記載の粒子。
37.Mが、75%以上、任意に80%以上、任意に85%以上の原子パーセントのニッケルを含む、態様32から36までのいずれか1つの態様に記載の粒子。
38.Mが、90%以上、任意に95%以上の原子パーセントのニッケルを含む、態様32から36までのいずれか1つの態様に記載の粒子。
39.態様1から14までまたは態様32から37までのいずれか1つの態様に記載の粒子を含むカソード活物質を含む電気化学セル。
40.態様1または26記載の粒子を含むカソード活物質を含むカソード。
【0102】
本明細書に示され、かつ記載されたもの以外の様々な変更形態は、上述の説明の当該分野の当業者に明らかであろう。このような変更形態も本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0103】
すべての試薬は、特に記載がない限り、当該分野で公知の供給源によって得られることが理解される。
【0104】
本明細書で言及された特許、公報、および出願は、本開示が関連する当業者の水準を示すものである。これらの特許、公報、および出願は、それぞれの個々の特許、公報、または出願が参照により本明細書に具体的かつ個々に援用されるのと同程度に、参照によって本明細書に援用される。
【0105】
前述の説明は、本発明の特定の態様を説明するものであるが、その実施を限定することを意図するものではない。以下の特許請求の範囲は、そのすべての等価物を含めて、本発明の範囲を画定することを意図するものである。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
任意に、図1の30で図示された外部層、例えば不動態化層または保護層は、粒子の外部表面上に配置されてよい。この外部層は、二次粒子を完全または部分的に覆ってよい。この層は、非晶質または結晶質であってよい。この層は、Zr、Al、Y、Co、Ni、Mg、Mn、Ti、Al、B、Li、もしくはSiのような元素、もしくはそれらの組み合わせの酸化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、フルオロリン酸塩、炭酸塩、フッ化物、オキシフッ化物、またはそれらの組み合わせを含んでよい。いくつかの態様では、外部層は、ホウ酸塩、アルミン酸塩、ケイ酸塩、フルオロアルミン酸塩、またはそれらの組み合わせを含む。任意に、外部層は、炭酸塩を含む。任意に、外部層は、ZrO2、Al23、TiO2、AlPO4、AlF3、B23、SiO2、Li2O、Li2CO3、またはそれらの組み合わせを含む。任意に、外部層は、AlPO4もしくはLi2CO3を含むか、またはAlPO4もしくはLi2CO3である。この層は、粒子の所望の特性に悪影響を及ぼさない任意の方法または技術によって配置することができる。代表的な方法は、例えばスプレーコーティングおよび浸漬コーティングを含む。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的に活性な多結晶粒子であって:
複数のナノ結晶を含み、該複数のナノ結晶が、Li1+xMO2+y(式中、
-0.1≦x≦0.3、
-0.3≦y≦0.3、および
Mは、80原子パーセント以上のニッケルを含む)によって定義される第一組成を有し;かつ
前記複数のナノ結晶が、X線回折によって測定して50ナノメートル以上105ナノメートル以下の平均結晶子サイズを有する、電気化学的に活性な多結晶粒子であって、
前記複数のナノ結晶の隣接するナノ結晶の間にあり、かつα-NaFeO 2 型層状構造、立方晶構造、またはそれらの組み合わせを有する第二組成を有する粒界をさらに含み、ここで、前記粒界におけるコバルトの濃度は、前記ナノ結晶におけるコバルトの濃度よりも大きい、電気化学的に活性な多結晶粒子
【請求項2】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、50ナノメートル以上100ナノメートル以下の平均結晶子サイズを有する、請求項1記載の粒子。
【請求項3】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、80ナノメートル以下である、請求項1記載の粒子。
【請求項4】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、70ナノメートル以下である、請求項1記載の粒子。
【請求項5】
前記複数のナノ結晶の前記サイズが、70ナノメートル~100ナノメートルである、請求項1記載の粒子。
【請求項6】
Mが、Al、Mg、Co、Mn、Ca、Sr、Zn、Ti、Zr、Y、Cr、Mo、Fe、V、Si、GaおよびBからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含み、前記1種以上の元素が、前記ナノ結晶のLi層、M層、または両方の層中に存在している、請求項1記載の粒子。
【請求項7】
Mが、95%以上の原子パーセントのニッケルを含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の粒子。
【請求項8】
Mが、96%以上の原子パーセントのニッケルを含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の粒子。
【請求項9】
前記粒子の表面上に外部被覆をさらに含み、該外部被覆が:
Al、Zr、Y、Co、Ni、Mg、およびLiから選択される1種以上の元素の酸化物;
Al、Zr、およびLiから選択される1種以上の元素を含むフッ化物;
Al、Co、Ni、Mn、およびLiから選択される1種以上の元素を含む炭酸塩;または
AlおよびLiから選択される1種以上の元素を含むリン酸塩
を含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の粒子。
【請求項10】
Mが、85%以上の原子パーセントのニッケルを含み、前記複数のナノ結晶が、50ナノメートル以上100ナノメートル以下の平均サイズを有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の粒子。
【請求項11】
請求項1から6までのいずれか1項記載の電気化学的に活性な粒子を製造する方法であって:
水酸化リチウムまたはその水和物とニッケルを含む前駆体水酸化物を含む第一混合物を準備する工程;
前記第一混合物を700℃未満の最高温度に焼成して、85ナノメートル以下のサイズを有する複数のナノ結晶を含む第一材料を形成する工程
前記第一材料と、コバルト、アルミニウム、またはそれらの組み合わせの少なくとも1種を含む第二材料を合して第二混合物を形成する工程;および
前記第二混合物を725℃以下の第二最高温度に加熱処理して、隣接するナノ結晶の間にあり、かつ第二組成を有する粒界をさらに含む粒子を製造する工程、ここで、前記粒界におけるコバルトの濃度は、前記ナノ結晶におけるコバルトの濃度よりも大きく、かつ前記複数のナノ結晶は、105ナノメートル以下のサイズを有する、
を含む方法。
【請求項12】
前記最高温度が、680℃以下である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記最高温度が、660℃以下である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記第一混合物を焼成する前記工程が、
温度を℃/分で25℃から450℃まで上昇させること、
450℃の前記温度で時間均熱処理すること、
前記温度を450℃から650℃~699℃の最高温度まで上昇させること;および
650℃~699℃の前記最高温度で時間均熱処理すること
を含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記最高温度が、660℃~680℃である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記第二最高温度が、700℃以下である、請求項11記載の方法。
【請求項17】
請求項1から6までのいずれか1項記載の粒子を含むカソード活物質を含む電気化学セル。
【請求項18】
請求項1から6までのいずれか1項記載の粒子を含むカソード活物質を含むカソード。
【外国語明細書】