IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カワサキモータース株式会社の特許一覧

特開2024-89741車両の制御装置およびそれを備える車両
<>
  • 特開-車両の制御装置およびそれを備える車両 図1
  • 特開-車両の制御装置およびそれを備える車両 図2
  • 特開-車両の制御装置およびそれを備える車両 図3
  • 特開-車両の制御装置およびそれを備える車両 図4
  • 特開-車両の制御装置およびそれを備える車両 図5
  • 特開-車両の制御装置およびそれを備える車両 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089741
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】車両の制御装置およびそれを備える車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20240627BHJP
   F16H 59/42 20060101ALI20240627BHJP
   F16H 61/682 20060101ALI20240627BHJP
   F16H 63/46 20060101ALI20240627BHJP
   F16H 59/14 20060101ALI20240627BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20240627BHJP
   F16D 48/06 20060101ALI20240627BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240627BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20240627BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240627BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20240627BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20240627BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20240627BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20240627BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H59/42 ZHV
F16H61/682
F16H63/46
F16H59/14
F16H63/50
F16D28/00 A
F16D48/06 102
B60K6/48
B60K6/547
B60W10/08 900
B60W10/10 900
B60W10/02 900
B60W20/00 900
B60W10/00 104
B60W10/06
B60W10/10
B60W10/00 124
B60W10/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205121
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】寺井 昭平
【テーマコード(参考)】
3D202
3D241
3J057
3J552
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202CC72
3D202CC75
3D202CC76
3D202CC85
3D202CC86
3D202DD07
3D202DD17
3D202DD31
3D202DD32
3D202DD38
3D202DD41
3D202FF08
3D241AA53
3D241AB01
3D241AD31
3D241AE03
3D241AE14
3D241AE30
3D241BA52
3D241BB11
3D241BB16
3D241BC01
3D241CA12
3D241CC02
3D241CC11
3D241CC13
3D241DA23Z
3J057AA03
3J057BB03
3J057GA47
3J057GB02
3J057GB10
3J057GB13
3J057GB14
3J057GB26
3J057GE07
3J057HH06
3J552MA04
3J552MA13
3J552NA08
3J552NB08
3J552PA02
3J552RA12
3J552SA26
3J552SA30
3J552SB02
3J552UA03
3J552VA32W
3J552VA34W
3J552VA42W
3J552VC01W
3J552VC02W
(57)【要約】
【課題】変速に伴うショックの低減を実現する。
【解決手段】制御装置が備える処理回路は、第1変速段から第2変速段にシフトするためのシフト指令を取得した場合に、動力伝達率が低減するようクラッチアクチュエータを制御する伝達率低減制御を実行し、伝達率低減制御を実行した後に、第1変速段に対応する変速ギヤ対と係合部との係合を解除して、第2変速段に対応する変速ギヤ対と係合部とが係合するようにシフトアクチュエータを制御するシフト制御を実行し、シフト制御を実行した後に、動力伝達率が増加するようクラッチアクチュエータを制御する伝達率増加制御を実行するように構成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を発生させる駆動源と、
駆動輪と、
前記駆動源と前記駆動輪との間で動力が伝達される動力伝達経路に配置されたギヤ変速機であって、入力軸、出力軸、および、前記入力軸に同軸の変速ギヤおよび前記出力軸に同軸の変速ギヤをそれぞれ含む複数組の変速ギヤ対を有するギヤ変速機と、
前記複数組の変速ギヤ対に係合可能な複数の係合部を移動させ、前記複数組の変速ギヤ対の中で前記係合部に係合した1の変速ギヤ対を動力伝達状態にするシフトアクチュエータと、
前記動力伝達経路における前記駆動源と前記入力軸との間に配置され、前記駆動源から前記入力軸への動力伝達率を変更可能なクラッチと、
前記クラッチを動作させるクラッチアクチュエータと、を備える車両の制御装置であって、
前記制御装置は、処理回路を備え、
前記処理回路は、
第1変速段から第2変速段にシフトするためのシフト指令を取得した場合に、前記動力伝達率が低減するよう前記クラッチアクチュエータを制御する伝達率低減制御を実行し、
前記伝達率低減制御を実行した後に、前記第1変速段に対応する前記変速ギヤ対と前記係合部との係合を解除して、前記第2変速段に対応する前記変速ギヤ対と前記係合部とが係合するように前記シフトアクチュエータを制御するシフト制御を実行し、
前記シフト制御を実行した後に、前記動力伝達率が増加するよう前記クラッチアクチュエータを制御する伝達率増加制御を実行するように構成される、車両の制御装置。
【請求項2】
前記処理回路は、前記伝達率低減制御を実行した後、前記クラッチにおける前記入力軸側の回転体の回転数と、前記クラッチにおける前記駆動源側の回転体の回転数との差が低減するように、前記駆動源を制御するように構成される、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記車両は、前記駆動源である第1駆動源とは異なる第2駆動源を更に備え、
前記第2駆動源は、前記第2駆動源が発生した動力が前記クラッチを介さずに前記駆動輪に伝達されるように、前記入力軸、または、前記動力伝達経路における前記入力軸と前記駆動輪との間の要素に対し接続される、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記第1駆動源は、内燃エンジンであり、前記第2駆動源は、電動モータである、請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記処理回路は、前記伝達率低減制御を実行した後、前記クラッチにおける前記入力軸側の回転体の回転数と、前記クラッチにおける前記駆動源側の回転体の回転数との差が低減するように、前記第2駆動源を制御するように構成される、請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記処理回路は、前記伝達率低減制御を開始してから前記伝達率増加制御を開始するまでの間に、前記動力伝達率が0%より大きく100%未満の設定値に維持する半クラッチ期間を含むよう、前記クラッチアクチュエータを制御するように構成される、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記処理回路は、前記伝達率低減制御の実行中、前記ギヤ変速機のギヤ比、前記駆動源の回転数、前記駆動源に要求される要求トルク、前記駆動源の目標回転数、または、前記車両の車速に基づいて、前記クラッチアクチュエータを制御するように構成される、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記車両は、前記駆動源に要求される要求トルクに関連するパラメータであるトルク関連値を検出するトルク関連値センサを備え、
前記処理回路は、前記トルク関連値センサにより検出された前記トルク関連値に基づき、前記伝達率低減制御における前記動力伝達率の低減量を決定する、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記処理回路は、前記伝達率増加制御において、前記動力伝達率が時間経過に伴って徐々に100%に近づくように、前記クラッチアクチュエータを制御するように構成される、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記駆動源と、
前記駆動輪と、
前記ギヤ変速機と、
前記シフトアクチュエータと、
前記クラッチと、
前記クラッチアクチュエータと、
請求項1または2に記載の前記制御装置と、を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の制御装置およびそれを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドッグ式のギヤ変速機を備えた自動二輪車が開示されている。特許文献1のギヤ変速機は、入力軸上に配置される複数の変速ギヤと、出力軸上に配置され、入力軸上の変速ギヤと噛み合っている複数の変速ギヤとを有している。変速時には、変速指示によって新たに設定される変速段に対応する変速ギヤが係合位置まで動かされドッグと係合し、その他の変速ギヤは非係合位置に戻される。こうして、エンジンのトルクを後輪側に伝達するギヤが切り換わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-264519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変速機を備える車両では、ドグの係合の際に車両にショックが生じることがある。状況によっては、変速ショックの低減が望まれる。
【0005】
そこで、本開示は、変速に伴うショックの低減を実現できる車両の制御装置およびそれを備える車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る車両の制御装置は、動力を発生させる駆動源と、駆動輪と、前記駆動源と前記駆動輪との間で動力が伝達される動力伝達経路に配置されたギヤ変速機であって、入力軸、出力軸、および、前記入力軸に同軸の変速ギヤおよび前記出力軸に同軸の変速ギヤをそれぞれ含む複数組の変速ギヤ対を有するギヤ変速機と、前記複数組の変速ギヤ対に係合可能な複数の係合部を移動させ、前記複数組の変速ギヤ対の中で前記係合部に係合した1の変速ギヤ対を動力伝達状態にするシフトアクチュエータと、前記動力伝達経路における前記駆動源と前記入力軸との間に配置され、前記駆動源から前記入力軸への動力伝達率を変更可能なクラッチと、前記クラッチを動作させるクラッチアクチュエータと、を備える車両の制御装置であって、前記制御装置は、処理回路を備え、前記処理回路は、第1変速段から第2変速段にシフトするためのシフト指令を取得した場合に、前記動力伝達率が低減するよう前記クラッチアクチュエータを制御する伝達率低減制御を実行し、前記伝達率低減制御を実行した後に、前記第1変速段に対応する前記変速ギヤ対と前記係合部との係合を解除して、前記第2変速段に対応する前記変速ギヤ対と前記係合部とが係合するように前記シフトアクチュエータを制御するシフト制御を実行し、前記シフト制御を実行した後に、前記動力伝達率が増加するよう前記クラッチアクチュエータを制御する伝達率増加制御を実行するように構成される。
【0007】
本開示の一態様に係る車両は、前記前記駆動源と、前記駆動輪と、前記ギヤ変速機と、前記シフトアクチュエータと、前記クラッチと、前記クラッチアクチュエータと、前記制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、変速に伴うショックの低減を実現できる車両の制御装置およびそれを備える車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る制御装置を備えた自動二輪車の左側面図である。
図2図2は、図1の自動二輪車の動力システムの模式図である。
図3図3は、ドグと変速ギヤとが係合した状態の一例を示す拡大模式図である。
図4図4は、制御装置およびその入出力を示すブロック図である。
図5図5は、HEVモード時の変速処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、HEVモード時にクラッチ変速モードがオンの状態で変速処理を実行する場合のエンジン回転数の変化、インプット回転数の変化、クラッチの動力伝達率の変化、ギヤ位置の変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る制御装置40を備えた自動二輪車1の左側面図である。自動二輪車1は、ライダーが跨って乗る鞍乗車両の一例であり、ハイブリッド車両である。以下の説明における方向は、自動二輪車1の運転手から見た方向を基準とし、前後方向は車長方向と対応し、左右方向は車幅方向と対応する。
【0012】
自動二輪車1は、前輪2と、後輪3と、車体フレーム4と、前輪2を車体フレーム4の前部に接続する前サスペンション5と、後輪3を車体フレーム4の後部に接続する後サスペンション6とを備える。前輪2は従動輪であり、後輪3は駆動輪である。前サスペンション5は、上下方向に間隔をあけて配置されるブラケット7に連結されている。ブラケット7に接続される操舵軸が車体フレーム4の一部であるヘッドパイプ4aに角変位可能に支持されている。当該操舵軸には、運転者が手で握るハンドル8が設けられる。ハンドル8の後側には、燃料タンク9が設けられ、燃料タンク9の後側に運転者が着座するシート10が設けられる。
【0013】
車体フレーム4には、後輪3を支持して前後方向に延びるスイングアーム15が角変位可能に支持されている。また、車体フレーム4には、前輪2と後輪3と間においてパワーユニット11が搭載されている。パワーユニット11は、動力を発生させる2つの走行駆動源(原動機とも称し得る)である第1駆動源および第2駆動源を備える。第1駆動源は、内燃機関であるエンジン12である。第2駆動源は、電動モータである駆動モータ13である。
【0014】
エンジン12は、気筒12aと、気筒内のピストンに連結されたクランク軸12bとを含む。エンジン12のクランク軸12bは、クランクケース14に収容されている。また、エンジン12の後側には、ギヤ変速機20が配置されている。ギヤ変速機20は、クランクケース14に収容されている。ハンドル8の左のグリップには、ギヤ変速機20のシフト位置である変速段を変更するためのシフトスイッチ17が設けられている。シート10の下方には、制御装置40が配置されている。制御装置40は、エンジン12、駆動モータ13、後述のクラッチアクチュエータ19およびシフトアクチュエータ30を制御する。
【0015】
図2は、図1の自動二輪車1の動力システムの模式図である。ギヤ変速機20は、入力軸21と、出力軸22と、複数組の変速ギヤ対23とを有する。入力軸21には、第1駆動源および第2駆動源の少なくとも一方の駆動力が伝達可能である。
【0016】
具体的には、ギヤ変速機20は、第1駆動源であるエンジン12と駆動輪である後輪3との間で動力が伝達されるエンジン用動力伝達経路に配置されている。エンジン用動力伝達経路におけるエンジン12とギヤ変速機20の入力軸21との間には、メインクラッチ18が介設されている。以下の説明において、メインクラッチ18は、単にクラッチ18とも称し得る。エンジン12のクランク軸12bの回転動力は、メインクラッチ18を介して入力軸21に入力される。
【0017】
また、ギヤ変速機20は、第2駆動源である駆動モータ13と駆動輪である後輪3との間で動力が伝達されるモータ用動力伝達経路に配置されている。モータ用動力伝達経路には、メインクラッチ18はない。すなわち、第2駆動源である駆動モータ13は、入力軸21に対しメインクラッチ18を介さずに動力を伝達するように入力軸21に対し接続されている。駆動モータ13の回転軸の回転動力は、入力軸21に入力される。すなわち、本実施形態では、第1駆動源であるエンジン12および第2駆動源である駆動モータ13の双方から入力軸21に同時に動力伝達可能となっている。
【0018】
メインクラッチ18は、クラッチアクチュエータ19によって駆動されて、前記エンジン用動力伝達経路を切断したり接続したりする。本実施例では、メインクラッチ18は、摩擦クラッチで実現される。
【0019】
メインクラッチ18の切断状態は、エンジン12とギヤ変速機20の入力軸21との間で動力が伝達されない状態である。メインクラッチ18の結合状態は、エンジン12と入力軸21との間で動力が完全に伝達される状態である。メインクラッチ18が切断状態から結合状態に遷移する場合、メインクラッチ18は、半クラッチ状態を経由する。メインクラッチ18の半クラッチ状態は、エンジン12と入力軸21との間で動力が部分的に伝達される状態である。
【0020】
クラッチアクチュエータ19は、メインクラッチ18の係合度、すなわち、エンジン12から入力軸21への動力伝達率を変化させるアクチュエータである。メインクラッチ18の動力伝達率は、メインクラッチ18に発生する摩擦力の上昇とともに上昇する値である。メインクラッチ18の切断状態は、メインクラッチ18の動力伝達率が0%である状態である。メインクラッチ18の結合状態は、メインクラッチ18の動力伝達率が100%である状態である。メインクラッチ18の半クラッチ状態は、メインクラッチ18の動力伝達率が0%より大きく100%未満である状態である。
【0021】
さらに別の表現で説明すれば、メインクラッチ18が、互いに当接したり離間したりすることが可能な一対の当接部材を含み、一対の当接部材との間の摩擦力で回転動力を、一方の当接部材から他方の当接部材に伝達する構成である。一対の当接部材の一方は、第1駆動源であるエンジン12側の回転体であり、他方は、入力軸21側の回転体である。一対の当接部材は、それぞれ、クラッチプレートおよびフリクションプレートと称される場合がある。メインクラッチ18の結合状態は、一対の当接部材部材との間で滑りを発生させることなく、回転動力を伝達する状態である。また、メインクラッチ18の半クラッチ状態は、一対の当接部材の間で滑りを発生させながら、回転動力を伝達する状態である。
【0022】
クラッチアクチュエータ19は、クラッチ18の一対の当接部材を互いに挟持する締結力を発生させる。メインクラッチ18は、締結力に応じた動力伝達トルクを伝達する。この締結力が、0より大きく、予め定め上限値未満となる状態である状態を半クラッチ状態と称してもよい。この場合、締結力に応じて生じる動力伝達トルクを超える動力が、駆動源から一方の当接部材に伝達されると、当該一方の当接部材から他方の当接部材に締結力に応じた動力伝達トルクが伝達されるとともに、残りの動力伝達トルクに応じて一対の当接部材間で滑りが生じる。また半クラッチ状態であっても、締結力に応じて生じる動力伝達トルク未満の伝達トルクが、一方の当接部材に伝達されると、滑りが生じることなく、その伝達トルクを伝達する。
【0023】
なお、駆動源から駆動輪に動力が伝達される場合には、クラッチ18における第1駆動源側の回転体は、「クラッチの上流側の回転体」、クラッチ18における入力軸21側の回転体は、「クラッチの下流側の回転体」と称し得る。
【0024】
本実施形態では、クラッチアクチュエータ19は、油圧アクチュエータである。すなわち、クラッチアクチュエータ19は、油圧室と、油圧室の油圧(以下、クラッチ圧とも称する)によって駆動するピストンと、油圧室の油圧を調整するソレノイドバルブを含む。ソレノイドバルブに与える電流値を変更することで、メインクラッチ18の結合圧、言い換えると、一対の当接部材を挟持する締結力が変化する。つまり、本実施例では、クラッチ圧の上昇とともに、動力伝達率および締結力が増加する。また、クラッチ18の一対の当接部材は、スプリングにより互いに離間する方向に付勢されており、当該スプリングの付勢力よりも、クラッチアクチュエータ19による一対の当接部材を挟持する締結力が小さくなると、クラッチ18の当接部材間の当接が解除され、クラッチ18の切断状態となる。
【0025】
出力軸22は、入力軸21に平行に配置されている。以下、入力軸21および出力軸22に平行な方向を、「軸方向」と称する。複数組の変速ギヤ対23は、軸方向に並んでいる。複数組の変速ギヤ対23は、互いに変速比が異なる。変速比は、出力軸22の回転数に対する入力軸21の回転数の比である。変速比は、入力軸21側のギヤの歯数に対する出力軸22側のギヤの歯数の比でもあり、ギヤ比とも称し得る。各変速ギヤ対23は、入力軸21に同軸に設けられた1つの変速ギヤ23と、出力軸22に同軸に設けられた1つの変速ギヤ23とを含む。
【0026】
各変速ギヤ対23が含む2つの変速ギヤ23のうち、一方の変速ギヤ23は、そのギヤと同軸である入力軸21または出力軸22と一体的に回転するギヤ(以下、「共回転ギヤ」と称する)23aである。例えば、共回転ギヤ23aは、入力軸21または出力軸22にスプライン嵌合により組付けられている。各変速ギヤ対23が含む2つの変速ギヤ23のうち、他方の変速ギヤ23は、そのギヤと同軸である入力軸21または出力軸22に対して相対回転可能であるギヤ(以下、「空転ギヤ」と称する)23bである。
【0027】
各変速ギヤ対23における共回転ギヤ23aと空転ギヤ23bとは常時噛み合っている。本実施形態では、入力軸21に、共回転ギヤ23aと空転ギヤ23bとが軸方向に交互に並んでいる。同様に、出力軸22には、空転ギヤ23bと共回転ギヤ23aとが軸方向に交互に並んでいる。なお、図2において、煩雑になるのを避けるために、一部の共回転ギヤと空転ギヤにのみ符号を付し、それ以外は省略する。
【0028】
ギヤ変速機20は、ドッグ式の変速機である。ギヤ変速機20は、複数の変速段にそれぞれ対応する複数のドグ24と、シフト機構26とを備える。ドグは係合部の一例である。
【0029】
ドグ24は、シフト機構26により、入力軸21および出力軸22に対して軸方向に移動可能となっている。複数のドグ24のいずれかが、シフト機構26により軸方向に移動して、複数組の変速ギヤ対23のいずれかと選択的に係合する。これにより、ドグ24と係合した1つの変速ギヤ対23は、入力軸21から出力軸22に駆動力を伝達可能な状態となる。すなわち、入力軸21に伝達された駆動力は、ドグ24と係合した変速ギヤ対23を介して出力軸22に伝達される。出力軸22の回転動力は、出力伝達部材16を介して、駆動輪である後輪3に伝達される。出力伝達部材16は、例えば、チェーン、ベルト、ドライブシャフト等である。
【0030】
シフト機構26は、シフトフォーク27a,27b,27cと、支軸28と、シフトドラム29とを備える。シフトフォーク27a,27b,27cは、入力軸21および出力軸22に平行に設けられた支軸28に、スライド自在に支持されている。後述するように、本実施形態では、一部の共回転ギヤ23aがドグ24と一体となっている。シフトフォーク27aの一端部が、入力軸21に外装された、ドグ24と一体的に移動する共回転ギヤ23aに対して接続されている。また、シフトフォーク27b,27cの一端部が、出力軸22に外装された、ドグ24と一体的に移動する共回転ギヤ23aに対して接続されている。
【0031】
また、シフトフォーク27a,27b,27cの他端部が、シフトドラム29の案内溝Gに嵌合している。シフトドラム29が回転すると、その案内溝Gにより案内されたシフトフォーク27a,27b,27cが対応するドグ24を軸方向に移動させる。ドグ24が、空転ギヤ23bが有する後述の収容空間Sに入り込むことで、ドグ24が空転ギヤ23bと遊びをもって係合する。また、ドグ24が、空転ギヤ23bが有する後述の収容空間Sから抜け出ることで、ドグ24が空転ギヤ23bから離脱する。
【0032】
図3は、入力軸21に同軸に設けられたいくつかの変速ギヤ23を、軸方向に直交する方向に見た拡大図である。図3は、ある変速段における変速ギヤ23とドグ24との係合状態の一例を示す。なお、本明細書において、便宜上、現在の変速段を、第1変速段と称し、第1変速段に対応する変速ギヤ対23のうち第1変速段に対応するドグ(第1ドグとも称し得る)24が係合可能なギヤ23を、第1ギヤ(あるいは、現ギヤまたはプレ変速ギヤ)23b1と称する。また、シフト指令に基づき現在の変速段からドグ24がシフト動作した後の次の変速段を、第2変速段と称し、第2変速段に対応する変速ギヤ対23のうち第2変速段に対応するドグ(第2ドグとも称し得る)24が係合可能なギヤ23を、第2ギヤ(あるいは、次ギヤまたはポスト変速ギヤ)23b2と称することとする。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、いくつかの共回転ギヤ23aが、ドグ24と一体型となっており、ドグ24とともに入力軸21または出力軸22に対して軸方向に移動可能となっている。具体的には、ドグ24は、共回転ギヤ23aの軸方向端面から軸方向に突出するように設けられている。ドグ24は、共回転ギヤ23aの端面において、共回転ギヤ23aの周方向に所定の間隔をあけて並んだ複数の突起により構成されている。
【0034】
ドグ24および共回転ギヤ23aに軸方向に対向する空転ギヤ23bが、ドグ24が入り込むことが可能な収容空間Sを有する。収容空間Sは、移動するドグ24が入り込めるよう、軸方向におけるドグ24が配置された側に開口している。本実施形態では、収容空間Sは、空転ギヤ23bの軸方向端面において、空転ギヤ23bの周方向に所定の間隔をあけて並んだ複数の突起により構成されている。すなわち、収容空間Sは、空転ギヤ23bの端面において空転ギヤ23bの周方向に隣接する突起の間に形成される空間である。なお、収容空間Sは、空転ギヤ23bの軸方向端面に形成された穴であってもよい。すなわち、収容空間Sは、空転ギヤ23bの径方向に開口していてもよいし、開口していなくてもよい。
【0035】
図3に示すように、収容空間Sを有する変速ギヤ23は、当該変速ギヤ23の周方向に収容空間Sを画定する第1面25aおよび第2面25bを有している。第1面25aは、収容空間Sに入り込んだドグ24が、少なくとも出力軸22に所定の正方向にトルクを伝達する際に当接する面である。第2面25bは、収容空間Sに入り込んだドグ24が、少なくとも出力軸22に正方向と反対の負方向にトルクを伝達する際に当接する面である。
【0036】
なお、図3において、軸方向と正方向とが矢印で示されている。本明細書において、正方向とは、車両(本例では自動二輪車1)が前進する際に出力軸22を加速させる方向の入力軸21および出力軸22のトルクの発生方向を意味する。すなわち、第1面25aは、収容空間Sに入り込んだドグ24が、少なくとも出力軸22の回転を加速させる際に当接する面であり、第2面25bは、収容空間Sに入り込んだドグ24が、少なくとも出力軸22の回転を減速させる際に当接する面である。特に本例では、第1面25aは、収容空間Sに入り込んだドグ24が、車両(本例では自動二輪車1)が前方に加速中に当接している面であり、第2面25bは、収容空間Sに入り込んだドグ24が、車両(本例では自動二輪車1)の減速中に当接している面である。なお、車両の等速移動中に、ドグ24は、第1面25aまたは第2面25bに当接することもあり得る。
【0037】
図3に示すように、第1ドグ24が第1ギヤ23b1の第1面25aに当接することで、駆動源から入力軸21に伝達された駆動力が、第1ドグ24から第1ギヤ23b1に伝達され、第1ギヤ23b1に噛み合う共回転ギヤ23aを介して出力軸22に伝達される。
【0038】
図3に示した状態から、第1ギヤ23b1の回転数に対して第1ドグ24の回転数が低下すると、第1ドグ24は、第1面25aから離れ第2面25bに当接する。第1ドグ24が第1ギヤ23b1の第2面25bに当接することで、負方向のトルクが、第1ドグ24から第1ギヤ23b1に伝達され、第1ギヤ23b1に噛み合う共回転ギヤ23aを介して出力軸22に伝達される。
【0039】
図3に二点鎖線で、第2ドグ24が第2ギヤ23b1の第1面25aに当接した状態を示す。第1変速段から第2変速段にシフトする変速処理を実行することで、第1ドグ24は第1ギヤ23b1から離脱し、第2ドグ24が第2ギヤ23b2と係合した状態となる。
【0040】
図4は、制御装置40およびその入出力を示すブロック図である。制御装置40は、エンジン12、駆動モータ13、クラッチアクチュエータ19、シフトアクチュエータ30を制御する。図5に示すように、制御装置40には、アクセル操作量センサ32、シフトスイッチ17、ギヤポジションセンサ31、エンジン回転数センサ33、モータ回転数センサ34、出力軸回転数センサ35、電流センサ36などからの検出信号が入力される。制御装置40は、スロットル装置12c、点火装置12d、燃料供給装置12e、駆動モータ13、クラッチアクチュエータ19およびシフトアクチュエータ30に対し、制御信号を出力する。
【0041】
アクセル操作量センサ32は、運転者のアクセル操作量(加速要求量)を検出する。
【0042】
シフトスイッチ17は、運転者の手動操作に応じ、ギヤ変速機20の変速段を変えるためのシフト指令を制御装置40に送る。例えばシフト指令は、シフトアップ指令またはシフトダウン指令である。シフトアップ指令は、ギヤ変速機20の変速段を増加させる指令である。より詳しくは、シフトアップ指令は、変速比を大きくする指令である。シフトダウン指令は、ギヤ変速機20の変速段を減少させる指令である。より詳しくは、シフトダウン指令は、変速比を小さくする指令である。
【0043】
ギヤポジションセンサ31は、シフトドラム29の回転角を検出する。シフトドラム29の回転角により、ギヤ変速機20の複数の変速ギヤ対23のうちのいずれが選択された状態にあるか、つまりどの変速段にあるかを検出可能である。
【0044】
エンジン回転数センサ33は、エンジン12の出力軸の回転数(以下、「エンジン回転数」ともいう)を検出する。モータ回転数センサ34は、駆動モータ13の出力軸の回転数(以下、「モータ回転数」ともいう)を検出する。
【0045】
出力軸回転数センサ35は、出力軸22の回転数を検出する。出力軸回転数センサ35は、出力軸22に設けられて、出力軸22の回転数を直接的に検出するものであってもよい。あるいは、出力軸回転数センサ35は、別のパラメータを検出することにより、出力軸22の回転数を間接的に検出するものであってもよい。例えば出力軸回転数センサ35は、駆動輪である後輪3の回転数を検出する車輪回転数センサでもよい(図2参照)。
【0046】
電流センサ36は、クラッチアクチュエータ19のクラッチ圧を制御するためのソレノイドバルブのソレノイドに流れる電流値を検出する。
【0047】
スロットル装置12cは、エンジン12の吸気量を調節する。例えば、スロットル装置12cは、スロットル弁をモータにより開閉動作させる電子制御スロットル装置である。点火装置12dは、エンジン12の燃焼室内の混合気に点火する。点火装置12dは、例えば点火プラグである。燃料供給装置12eは、エンジン12に燃料を供給する。
【0048】
シフトアクチュエータ30は、ドグ24を移動させる動力を発生させる。具体的には、シフトアクチュエータ30は、制御装置40により制御されて、シフト機構26のシフトドラム29を回転駆動させる。すなわち、シフトアクチュエータ30は、制御装置40により制御されて、複数組の変速ギヤ対23に係合可能な複数のドグ24を移動させ、複数組の変速ギヤ対23の中でドグ24に係合した1の変速ギヤ対23を動力伝達状態にする。制御装置40は、シフトスイッチ17に対する運転者の操作に応じて、シフトアクチュエータ30を制御する。シフトアクチュエータ30は、例えば電動モータである。
【0049】
制御装置40は、ハードウェア面において、1以上のプロセッサ41を含む。プロセッサ41は、演算装置、揮発性メモリ、不揮発性メモリを含む。プロセッサ41は、処理回路の一例である。プロセッサ41は、演算装置が不揮発性メモリに保存されたプログラムに従って、揮発性メモリを用いて演算処理し、制御装置40に入力された検出信号に応じた制御信号を出力する。制御装置40は、ソフトウェア面において、モード切替部41a、エンジン制御部41b、モータ制御部41c、クラッチ制御部41d、シフト制御部41e、状況判定部41f、位置推定部41g,目標決定部41h、タイミング決定部41iを含む。なお、図5では、1以上のプロセッサ41を1つのブロックで示し、その中に機能ブロック41a,41b,41c,41d,41e,41f,41g,41h,41iをまとめて示す。また、制御装置40は、メモリ42を含む。メモリ42は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリを含む。
【0050】
モード切替部41aは、EGVモード、EVモード、およびHEVモードを含む複数の走行モードから1つのモードを選択する。
【0051】
EGVモードは、駆動モータ13を駆動させずにエンジン12を駆動し、エンジン12のみの回転動力で駆動輪である後輪3を駆動するモードである。EGVモードでは、エンジン12の回転動力がギヤ変速機20を介して駆動輪である後輪3に伝達されるように、クラッチアクチュエータ19によってメインクラッチ18が接続状態とされる。
【0052】
EVモードは、エンジン12を停止し、駆動モータ13が発生する動力で駆動輪である後輪3を駆動するモードである。EVモードでは、駆動モータ13の駆動時にエンジン12が抵抗にならないように、クラッチアクチュエータ19によってメインクラッチ18が切断状態とされる。
【0053】
HEVモードは、駆動モータ13およびエンジン12が発生する動力で駆動輪である後輪3を駆動するモードである。HEVモードでは、エンジン12の回転動力がギヤ変速機20を介して後輪3に伝達されるように、クラッチアクチュエータ19によってメインクラッチ18が接続状態とされる。
【0054】
なお、EGVモードはなくてもよく、HEVモードは、エンジン12のみの回転動力で駆動輪である後輪3を駆動する状態を含んでもよい。すなわち、HEVモードは、少なくともエンジン12が発生させる動力で駆動輪3を駆動する1つの走行モードであってもよい。また、HEVモードは、エンジン12の出力トルクで、駆動モータ13で発電させながら車両1を走行させる発電走行状態も含む。すなわち、発電走行状態では、駆動モータ13に負のトルクを発生させて、エンジン12に、走行に必要なトルクに加えて駆動モータ13による負のトルクを相殺するトルクも要求してもよい。
【0055】
エンジン制御部41bは、スロットル装置12c、点火装置(点火プラグ)12d、燃料供給装置12eを制御して、エンジン12の出力を調節する。例えば、エンジン制御部41bは、エンジン12の出力トルクが、運転者のアクセル操作量に応じた値になるようトルク制御を行う。モータ制御部41cは、駆動モータ13を制御して、駆動モータ13の出力を調節する。例えば、モータ制御部41cは、駆動モータ13の出力トルクが、運転者のアクセル操作量に応じた値になるようトルク制御を行う。エンジン制御部41bおよびモータ制御部41cは、モード切替部41aにより選択された走行モードに応じた制御を行う。
【0056】
クラッチ制御部41dは、クラッチ18の動力伝達率を変化させるためのクラッチ圧力指令値(ソレノイドバルブに与える電流値の指令値)をクラッチアクチュエータ19に出力する。
【0057】
本実施形態では、クラッチアクチュエータ19は、油圧アクチュエータである。すなわち、クラッチアクチュエータ19は、クラッチアクチュエータ19のクラッチ圧を変化させることによって駆動して、エンジン12から入力軸21への動力伝達率を変化させる。クラッチ圧と、クラッチ18の動力伝達率には所定の相関がある。すなわち、クラッチ圧は、クラッチ18の動力伝達率を示すパラメータである。クラッチ圧力が予め設定された開放相当圧力のとき、クラッチ18の動力伝達率が0%であり、クラッチ18は切断状態である。そして、クラッチ圧が当該開放相当圧力から上昇するにしたがって動力伝達率も上昇する。クラッチ圧が予め設定された締結相当圧力であるとき、または、当該締結相当圧力以上であるとき、クラッチ18の動力伝達率が100%であり、クラッチ18は結合状態である。
【0058】
また、クラッチ圧は、当該クラッチ圧を制御するソレノイドに流れる電流値と相関がある。このため、本実施形態では、クラッチ制御部41dは、電流センサ36により検出されたソレノイドに流れる電流値から、当該電流値に対応するクラッチ圧を推定し、推定したクラッチ圧から、当該クラッチ圧に対応する動力伝達率を推定する。電流センサ36により検出された電流値も、クラッチ18の動力伝達率を示すパラメータである。クラッチ制御部41dは、電流センサ36から取得した電流値に基づき、クラッチ圧力指令値を決定する。
【0059】
ただし、電流センサ36の代わりに、クラッチ圧を検出する油圧センサを車体に搭載されていてもよく、この場合、クラッチ制御部41dは、油圧センサから取得した値に基づき、クラッチ圧力指令値を決定してもよい。
【0060】
例えば、クラッチ制御部41dは、モード切替部41aによりEVモードが選択されたときは、メインクラッチ18を切断状態にし、モード切替部41aによりEGVモードまたはHEVモードが選択されたときは、メインクラッチ18を接続状態にする。
【0061】
シフト制御部41e、状況判定部41f、位置推定部41g、目標決定部41hおよびタイミング決定部41iは、シフト指令を取得した場合、すなわちシフトスイッチ17からシフト指令を受信した場合に実行される変速処理に関連する。なお、制御装置40がシフト指令などの情報を取得することは、情報を外部から受信することのほか、情報を生成することを含む。
【0062】
シフト制御部41eは、取得したシフト指令に応じて、シフトアクチュエータ30を制御する。状況判定部41fは、第1変速段から第2変速段にシフトするためのシフト指令があるか否かを判定する。また、状況判定部41fは、クラッチ19に対する現在の制御モードが、クラッチ変速モードであるか否かを判定する。クラッチ変速モードについては、後述する。位置推定部41gは、収容空間Sに対するドグ24の角度位置を推定する。例えば位置推定部41gは、原動機に対するトルク指令値と、原動機のイナーシャとに基づき、ドグ24の角度位置を推定し得る。目標決定部41hは、ドグ24をシフト動作させる際の目標エンジン回転数、目標モータ回転数、および目標ドラム角度などを決定する。タイミング決定部41iは、後述の同期制御を開始させるタイミングや、ドグ24を移動させるための制御を開始するタイミングを決定する。
【0063】
<変速処理>
変速処理の一例として、HEVモード時に第1変速段から第2変速段にシフトする変速処理を、図5および6を参照して説明する。図5は、HEVモード時の変速処理の流れを示すフローチャートである。図6は、HEVモード時にクラッチ変速モードがオンの状態で変速処理を実行する場合のエンジン回転数の変化、入力軸21の回転数の変化、クラッチ18の動力伝達率の変化、ギヤポジションの変化の一例を示すグラフである。入力軸21の回転数は、インプット回転数とも称し得る。図6の横軸は時間である。なお、図6は、変速処理の一例として、運転者が1速から2速へ変速段を変更する操作を行った場合の変速処理における各値の変化を示す。
【0064】
自動二輪車1の走行中、基本的に、エンジン制御部41bおよびモータ制御部41cの少なくとも一方は、上記したトルク制御を行っている(ステップS1)。
【0065】
例えばプロセッサ41は、運転者のアクセル操作量などに応じてエンジントルク指令値およびモータトルク指令値を決定し、エンジン制御部41bは、エンジントルク指令値に基づいて、スロットル装置12cなどを制御し、モータ制御部41cは、モータトルク指令値に基づいて、駆動モータ13を制御する。
【0066】
トルク制御中、状況判定部41fは、第1変速段から第2変速段にシフトするためのシフト指令(すなわち、シフトアップ指令またはシフトダウン指令)があるか否かを判定する(ステップS2)。シフト指令がないと判定された場合(ステップS2:No)、少なくともエンジン制御部41bによるトルク制御が継続される。
【0067】
(クラッチ変速モードの判定)
シフト指令があると判定された場合(ステップS2:Yes)、つまり、シフトスイッチ17に対する運転者の操作により生じたシフト指令を取得した場合(図6のt0参照)、状況判定部41fは、クラッチ変速モードがオンになった状態か否かを判定する。クラッチ変速モードは、シフト制御時に入力軸21および当該入力軸21に接続された回転体の慣性モーメントを低減することによって、シフト制御時に生じるショックである変速ショックを低減するモードである。具体的には、後述するように、クラッチ変速モードでは、伝達率低減制御および伝達率増加制御が実行される。
【0068】
なお、クラッチ変速モードにするか否かの選択は、所定の入力インターフェースを介して運転者によって手動で行われてもよい。例えば、運転者は、変速ショックを低減することよりも変速に関する一連の制御にかかる時間を短くすることを優先したい場合、クラッチ変速モードをオフにすることを選択できる。
【0069】
あるいは、クラッチ変速モードにするか否かの選択は、メモリ42に記憶された所定のプログラムを実行することによって自動的に行われてもよい。例えば状況判定部41fは、車体に搭載された各種センサの検出値に基づき、変速ショックを低減することが望ましい所定の状況か否かを判定し、当該所定の状況であると判定した場合に、クラッチ変速モードを選択してもよい。
【0070】
状況判定部41fは、クラッチ変速モードがオフになっていると判定した場合(ステップS3:No)、ステップS5へ移行する。状況判定部41fは、クラッチ変速モードがオンになっていると判定した場合(ステップS3:Yes)、伝達率低減制御に移行する(ステップS4)。
【0071】
(伝達率低減制御)
伝達率低減制御では、クラッチ制御部41dが、動力伝達率が低減するようクラッチアクチュエータ19を制御する。具体的には、クラッチ制御部41dが、動力伝達率が100%から設定値Psに低減するよう、クラッチアクチュエータ19を制御する(図6のt1参照)。
【0072】
伝達率低減制御における動力伝達率の低減量は、状況に応じて変わり得る。設定値Psは、状況に応じて変わり得る。本実施形態では、運転者のアクセル操作量に応じて設定値Psが変わる。メモリ42には、アクセル操作量またはアクセル操作量から算出される要求トルクと、設定値Psとの対応関係が記憶されている。例えばクラッチ制御部41dは、アクセル操作量センサ32からアクセル操作量を取得し、動力伝達率が100%からアクセル操作量に対応した設定値Psに低減するよう、クラッチアクチュエータ19を制御する。つまり、クラッチ制御部41dは、電流センサ36の検出値が、当該設定値Psに対応する電流値となるように、クラッチアクチュエータ19を制御する。
【0073】
運転者が加速操作をしている状況は、運転者にとって車体に生じる多少のショックを許容し得る状況と考えられる。このため、アクセル操作量が比較的大きい場合には、動力伝達率の低減量を小さくする。例えば、アクセル操作量が設定値以下である場合、クラッチ制御部41dは、設定値Psを、0%に設定する。つまり、クラッチ18を切断状態にするように設定する。また、アクセル操作量が設定値より大きい場合、クラッチ制御部41dは、設定値Psを、例えば0%より大きく100%より小さい値に設定する。つまり、クラッチ18を半クラッチ状態にするように設定する。
【0074】
クラッチ制御部41dが、動力伝達率が設定値Psに到達したと判定した場合、具体的には、電流センサ36の検出値が当該設定値Psに対応する電流値となったと判定した場合、伝達率低減制御を終了し、ステップS5へ移行する。なお、伝達率低減制御を開始してから後述の伝達率増加制御を開始するまでの間、動力伝達率は設定値に維持される。ただし、動力伝達率は設定値に維持される期間は、伝達率低減制御を開始してから後述の伝達率増加制御を開始するまでの間の一部の期間でもよい。また、伝達率低減制御を開始してから後述の伝達率増加制御を開始するまでの間に、動力伝達率を各種センサの検出値に応じて変化させてもよい。
【0075】
(目標値の決定)
ステップS3でクラッチ変速モードがオフであると判定された後、または、ステップS4の伝達率低減制御が実行された後に、目標決定部41hは、各種目標値を決定する(ステップS5)。
【0076】
具体的には、目標決定部41hは、目標エンジン回転数、目標モータ回転数、および目標ドラム角度を決定する。目標エンジン回転数および目標モータ回転数は、第2変速段に対応した回転数である。より詳しくは、目標エンジン回転数は、第2変速段におけるドグ24の回転数と第2変速段における変速ギヤの回転数との一方を他方に近づける同期制御のためのエンジン回転数である。または、目標エンジン回転数は、クラッチ18の入力軸側の回転体の回転数とクラッチ18のエンジン側の回転体の回転数とを互いに近づける同期制御のためのエンジン回転数である。また、目標モータ回転数は、第2変速段におけるドグ24の回転数と第2変速段における変速ギヤの回転数との一方を他方に近づける同期制御のためのモータ回転数である。または、目標モータ回転数は、クラッチ18の入力軸側の回転体の回転数とクラッチ18のエンジン側の回転体の回転数とを互いに近づける同期制御のためのモータ回転数である。
【0077】
ここで、「第2変速段におけるドグ24の回転数と第2変速段における変速ギヤの回転数の一方を他方に近づける同期制御」とは、ドグ24および第2ギヤ23b2のうちの入力側を出力側に合わせにいく制御である。例えば、入力軸21と一体回転するドグ24を、入力軸21に外装された第2ギヤ23b2に係合する場合には、上記同期制御は、当該第2ギヤ23b2の回転数にドグ24の回転数を近づける制御を意味する。また、例えば、出力軸22と一体回転するドグ24を、出力軸22に外装された第2ギヤ23b2に係合する場合には、上記同期制御は、ドグ24の回転数に第2ギヤ23b2の回転数を近づける制御を意味する。第2ギヤ23b2の収容空間Sにドグ24を入れる前に、同期制御を行うことで、ドグ24が第2ギヤ23b2に円滑に係合される。
【0078】
なお、クラッチ18が切断状態にある場合、エンジン12の回転数の変更は、入力軸21の回転数の変更に寄与しない。つまり、伝達率低減制御によってクラッチ18を切断状態にした場合には、同期制御は、駆動モータ13によって行う。ただし、クラッチ18が切断状態にある場合であっても、駆動モータ13によって同期制御を行う際に、エンジン12も、第2変速段に対応した回転数となるように制御される。言い換えれば、クラッチ18が切断状態にある場合にも、クラッチ18の上流側の回転体の回転数とクラッチ18の下流側の回転体の回転数との一方を他方に近づける同期制御を実行する。このように制御することで、クラッチ18の上流側の回転体と下流側の回転体との回転数差が低減でき、その結果、後述の動力伝達率増加制御を実行する際のショックを低減できるためである。
【0079】
以下の説明において、便宜上、第2変速段におけるドグ24の回転数と第2変速段における変速ギヤの回転数との一方を他方に近づける同期制御を「ギヤ同期制御」と称し、クラッチ18の上流側の回転体の回転数と下流側の回転体の回転数との一方を他方に近づける同期制御を、「クラッチ同期制御」と称する。また、ギヤ同期制御とクラッチ同期制御とを、区別せずに同期制御と称し得る。
【0080】
本実施形態では、ステップS5において、まずシフト制御部41eは、ギヤポジションセンサ31の検出角度信号から、ギヤ変速機20の現在の変速段である第1変速段を判定する。また、シフト制御部41eは、シフト指令がシフトアップ指令であるかシフトダウン指令であるかに応じて、次の変速段である第2変速段を決定する。目標決定部41hは、第2変速段の変速比および出力軸22の現在の回転数から、第2変速段におけるドグ24の回転数および第2ギヤ23b2の回転数の一方を他方に合わせるように、目標エンジン回転数および目標モータ回転数を算出する。なお、HEVモードの場合、目標エンジン回転数に対応する入力軸21の回転数と、目標モータ回転数に対応する入力軸21の回転数とは、同じ値である。
【0081】
(タイミングの決定)
ステップS5の後、タイミング決定部41iは、上記の同期制御を開始させるタイミングや、ドグ24を移動させるための制御を開始するタイミングを決定する(ステップS6)。
【0082】
本実施形態では、エンジン12に対する同期制御と、駆動モータ13に対する同期制御とが同じ時点t2から開始する。ただし、エンジン12に対する同期制御と、駆動モータ13に対する同期制御とが、互いに異なるタイミングで開始されてもよい。例えば、エンジン12に対する同期制御を、駆動モータ13に対する同期制御に先行して開始してもよい。位置推定部41gにより推定されたドグ24の角度位置に応じて、同期制御の開始タイミングは決定されてもよい。
【0083】
また、タイミング決定部41iは、シフト制御を開始するタイミングを決定する。シフト制御は、第1ギヤ23b1から第1変速段のドグ24を離脱させ且つ第2ギヤ23b2に向けて第2変速段のドグ24を移動させるための制御である。
【0084】
シフト制御の開始タイミングや完了タイミング、例えば変速ショックが低減されるように決定される。例えば第2ドグ24と第2ギヤ23b2との回転数差Δωが所定値以下となるタイミングで第2ドグ24と第2ギヤ23b2とが係合するように、シフト制御のタイミングは決定される。例えばシフト制御を開始するタイミングは、推定されたドグ24の角度位置に基づき決定されてもよい。あるいは、ドグ24のシフト制御を開始するタイミングは、決定した同期制御の開始タイミングに基づき、決定されてもよい。すなわち、先に同期制御の開始タイミングが決定された後で、ドグ24のシフト制御の開始タイミングが決定されてもよい。
【0085】
ステップS6で同期制御の開始タイミングおよびドグ24のシフト制御の開始タイミングが決定されると、決定された各タイミングに従って、上記の同期制御(ステップS7;図6のt2参照)とシフト制御(ステップS8;図6のt3参照)が行われる。
【0086】
具体的には、エンジン制御部41bは、ステップS6で決定したタイミングで上記同期制御を開始し、同期制御を開始すると、エンジン12の回転数が現在の回転数Ra1からステップS5で決定された目標エンジン回転数Ra2に近づくように、エンジン12、つまりスロットル装置12c、点火装置12d、燃料供給装置12eなどをフィードバック制御する。また、モータ制御部41cは、ステップS6で決定したタイミングで上記同期制御を開始し、同期制御を開始すると、駆動モータ13の回転数が現在の回転数Rb1からステップS5で決定された目標モータ回転数Rb2に近づくように、駆動モータ13をフィードバック制御する。
【0087】
なお、図6では、時間t2から時間t4にかけて、ギヤ同期制御によりインプット回転数を低減させている。このように、1速から2速へ変速段を変更するようなシフトアップ指令が取得した場合には、ギヤ同期制御として、入力軸21の回転数を低減する回転数減少制御が実行される。ただし、シフトダウン指令を取得した場合は、ギヤ同期制御として、入力軸21の回転数を増大させる回転数増大制御が実行される。
【0088】
また、シフト制御部41eは、ステップS6で決定したタイミングでシフト制御を開始するようシフトアクチュエータ30を制御する。すなわち、シフト制御部41eは、第1変速段に対応する第1変速ギヤ23b1と第1ドグ24との係合を解除して、第2変速段に対応する第2変速ギヤ23b2および第2ドグ24が互いに係合するようにシフトアクチュエータ30を制御する。
【0089】
シフト制御部41eは、シフト指令に対応するシフト動作が完了したか否かを判定する(ステップS9)。具体的には、シフト制御部41eは、ギヤポジションセンサ31により検出されたドラム角が、ステップS5で決定された目標ドラム角度であるか否かを判定する。
【0090】
シフト制御部41eによりシフト指令に対応するシフト動作が完了したと判定されない間は(ステップS9:No)、上記の同期制御およびシフト制御を継続する。例えばシフト制御が実行された後、すなわち図6の時点t4以降も、エンジン12に対するクラッチ同期制御、つまり、クラッチ18の上流側の回転体とクラッチ18の下流側の回転体の回転数を低減する同期制御が継続される。
【0091】
シフト制御部41eによりシフト指令に対応するシフト動作が完了したと判定された場合(ステップS9:Yes)、状況判定部41fは、クラッチ変速モードがオンになった状態か否かを判定する(ステップS10)。状況判定部41fは、クラッチ変速モードがオフになっていると判定した場合(ステップS10:No)、ステップS1へ戻る。状況判定部41fは、クラッチ変速モードがオンになっていると判定した場合(ステップS10:Yes)、伝達率増加制御に移行する(ステップS10;図6のt5-t6参照)。
【0092】
(伝達率増加制御)
伝達率増加制御では、クラッチ制御部41dが、ステップS4の伝達率低減制御で低減した動力伝達率を元に戻すように、クラッチアクチュエータ19を制御する。具体的には、クラッチ制御部41dが、動力伝達率が設定値Psから100%に増加するよう、クラッチアクチュエータ19を制御する(図6のt5-t6参照)。本実施形態では、伝達率増加制御において、動力伝達率が時間経過に伴って徐々に100%に近づくように、クラッチアクチュエータを制御するテーリング制御が行われる。
【0093】
ステップS11の伝達率増加制御が完了した後に、ステップS1のトルク制御に戻る。伝達率増加制御が完了したか否かは、電流センサ36の検出値が、動力伝達率100%に対応する値に到達したか否かにより判定し得る。
【0094】
なお、上記の変速処理では、ステップS2、S10では、クラッチ変速モードか否かを判定したが、HEVモード時の変速処理において常にクラッチ変速モードオンの制御が行われてもよい。すなわち、シフト指令を取得した場合に常にステップS4の伝達率低減制御およびステップS11の伝達率増加制御が実行されてもよい。この場合、ステップS2、S10は省略され得る。
【0095】
(作用効果)
以上に説明したように、本実施形態によれば、シフト制御を実行する前に、クラッチ18の動力伝達率を低減することにより、シフト制御における第2変速段に対応する変速ギヤ対23とドグ24とが係合する際に車体に生じ得るショックを低減できる。
【0096】
変速ショックの低減効果について、より詳しく説明する。ステップS8のシフト制御により、第2変速段における第2ドグ24が第2ギヤ23b2の収容空間Sに入り込むことによって、図6の時点t4において、第2ドグ24と第2ギヤ23b2とが係合する。このとき、第2ドグ24と第2ギヤ23b2(の収容空間Sを画定する面)との衝突によって生じる変速ショックの大きさは、入力軸21とともに回転する駆動部品の慣性モーメントIと、第2ドグ24と第2ギヤ23b2との回転数差Δωとを乗算した値I×Δωに依存する。I×Δωが大きいほど、変速ショックは大きくなる。
【0097】
本実施形態では、ステップS7で第2ドグ24の回転数と第2ギヤ23bの回転数とを近づけるギヤ同期制御によって、回転数差Δωを低減する。
【0098】
さらに、クラッチ変速モードがオンの場合には、ステップS4の伝達率低減制御を実行することによって、入力軸21とともに回転する駆動部品の見かけ上のイナーシャIを低減している。言い換えれば、伝達率低減制御によって、入力軸21の回転させにくさを低減している。このため、第2ドグ24と第2ギヤ23b2との回転数差Δωが同じであると仮定すると、伝達率低減制御を行った場合のI×Δωは、伝達率低減制御を行った場合のI×Δωと比べて小さくなる。
【0099】
従って、本実施形態では、イナーシャIの低減と回転数差Δωの低減の双方を実施して、第2ドグ24と第2ギヤ23b2とが係合するときの変速ショックを低減することが可能となる。
【0100】
また、本実施形態では、伝達率低減制御を実行した後、クラッチ18の一対の当接部材の回転数差、つまり、クラッチ18における入力軸21側の回転体とエンジン12側の回転体との回転数差が低減するようエンジン12が制御されるため、伝達率増加制御を実行する際に車体に生じ得るショックを低減できる。
【0101】
また、本実施形態では、第1駆動源であるエンジン12とは別に第2駆動源である駆動モータ13を備える。このため、伝達率低減制御によりクラッチ18が切断状態となったとしても、第2駆動源により駆動輪に動力を伝達できる。
【0102】
また、本実施形態では、伝達率低減制御を実行した後、ギヤ同期制御を実行するように、駆動モータ13が制御される。このため、クラッチ18が切断状態であっても、回転数差Δωを低減でき、変速ショックを低減できる。
【0103】
また、本実施形態では、伝達率低減制御を開始してから伝達率増加制御を開始するまでの間に半クラッチ期間があることにより、クラッチ18における一対の当接部材間での動力伝達状態が維持される。これにより、一対の当接部材間の回転数差を抑えることができ、伝達率増加制御に起因して車体に生じ得るショックを低減しやすい。また動力伝達状態を維持することにより、回転方向に変速ギヤ23とドグ24とが離れたり接触したりすることに起因して、例えばドグ24が遊ぶことに起因して車体に生じ得るショックを低減できる。
【0104】
また、本実施形態では、伝達率低減制御における動力伝達率の低減量は、状況に応じて変える。例えば変速ギヤ23とドグ24とが離れたり接触したりすること、例えばドグ24が遊ぶことは、車両の加速度が大きい場合に起こりやすい。また、車両の加速度が大きい場合、運転者が車体に生じる多少のショックを許容できる状況と考えられる。本実施形態では、変速ギヤとドグ24とが離れたり接触したりすることの起こりやすさや運転者のショックに対する許容度などに応じて、変速ショックの大きさを調整できる。
【0105】
また、本実施形態では、伝達率増加制御において、動力伝達率が時間経過に伴って徐々に100%に近づくように、クラッチアクチュエータ19が制御される。このため、伝達率増加制御に起因して車体に生じ得るショックを低減しやすい。
【0106】
<その他の実施形態>
本開示は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。
【0107】
例えば、上記実施形態では、ドグ24が共回転ギヤ23aと一体型であったが、ドグ24が共回転ギヤ23aとは別体であってもよい。例えば、共回転ギヤ23aを、入力軸21または出力軸22に対しスライド自在にする代わりに、ドグ24を有するドッグリングを、入力軸21または出力軸22に対しスライド自在に設けてもよい。また、ドグが、入力軸21および出力軸22の双方の周りに配置されなくてもよく、全ての変速段のドグが、入力軸21および出力軸22のいずれか一方の軸のみに支持された回転体(ギヤやドッグリングなど)に配置されてもよい。
【0108】
図3では、現在の変速段である第1変速段のドグ(第1ドグ)24と、次の変速段である第2変速段のドグ(第2ドグ)24の双方が設けられた変速ギヤ23が示されたが、ギヤ変速機が、このような変速ギヤを備えなくてもよい。すなわち、第1変速段のドグ24と、次の変速段である第2変速段のドグ24とは、別々の変速ギヤ23に設けられてもよいし、あるいは別々のドッグリングに設けられてもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、シフトアクチュエータによりドグを移動させる構成が説明されたが、シフトアクチュエータにより移動する係合部はこれに限定されない。例えば、変速ギヤにドグが固定されており、当該ドグが係合する係合孔(または収容空間)を有する部材をシフトアクチュエータにより移動させてもよい。すなわち、変速ギヤ対を動力伝達状態にするために、当該変速ギヤ対に係合する係合部は、ドグでもよいし、ドグが係合する要素(例えば係合孔)でもよい。また、当該係合部の形状、つまりドグの形状やドグが係合する係合孔の形状も特に制限されない
【0110】
シフト指令は、シフトスイッチの代わりに別の装置から指令を送信できてもよい。また、制御装置が、自動的にシフト指令を生成してもよい。例えば制御装置は、車速、エンジン回転数およびスロットル開度と変速タイミングとの関係を規定する変速マップを記憶していてもよく、変速マップに基づいて自動的にシフト指令を生成してもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、第1駆動源が内燃機関であり、第2駆動源が電動モータである例が説明されたが、入力軸に駆動力を伝達する原動機の種類はこれに限定されない。例えば、駆動源は、内燃機関、外燃機関、電動モータ、流体機械などであり得る。エンジンの種類も特に限定されず、例えばエンジンは、レシプロエンジンでもよいし、ロータリーエンジンでもよい。例えばエンジンは、ガソリンエンジンでもよいし、ディーゼルエンジンでもよい。例えばエンジンは、2ストロークエンジンでもよいし、4ストロークエンジンでもよい。第1駆動源と第2駆動源とが、双方とも同じ種類の原動機でもよい。
【0112】
また、第1駆動源と第2駆動源とで、同期制御の開始タイミングが異なってもよい。また、上記実施形態では、制御装置40を備えた車両が、第1駆動源と第2駆動源とを備えるハイブリッド車両であったが、車両はハイブリッド車両でなくてもよい。例えば車両は、駆動源として、エンジンおよび電動モータの一方のみを備えるものであってもよい。
【0113】
例えば車両が、走行駆動源として内燃エンジンのみを備えるエンジン車両である場合にも、上記制御装置における制御は適用可能である。エンジン車両では、伝達率低減制御における設定値Psは、0%より大きく100%未満の値とすることが望ましい。言い換えれば、エンジン車両では、伝達率低減制御において、クラッチ18を切断状態にせずに半クラッチ状態とすることが望ましい。エンジン車両でクラッチ18を切断状態にすると、変速機の入力軸の回転数を変更できなくなる、つまり、ギヤ同期制御ができなくなるためである。エンジン車両でも、伝達率低減制御において、クラッチ18を半クラッチ状態にすることで、内燃エンジンの動力を、変速機の入力軸に部分的に伝達できるため、ギヤ同期制御が可能となる。このため、エンジン車両でも、第2変速段に対応する変速ギヤ対および係合部が係合する前にそれらの回転数差を低減することができ、その結果、第2変速段に対応する変速ギヤ対と係合部とが係合する際に生じ得るショックを低減できる。上記実施形態で説明された構成における走行モードとしてEGVモードが選択されている場合の制御においても、同様である。
【0114】
車両は、自動二輪車に限定されない。例えば、車両は、例えば、自動三輪車や自動四輪車であってもよい。上記実施形態では、自動二輪車1の動力システムのための制御装置40が説明されたが、制御装置は、自動三輪車や自動四輪車など、別の種類の車両の動力システムにも適用可能である。
【0115】
上記実施形態では、クラッチアクチュエータとして、油圧アクチュエータが説明されたが、クラッチアクチュエータが電動モータであってもよい。この場合、クラッチの動力伝達率に対応するパラメータを検出するセンサは、油圧センサまたは電流センサ36を用いる代わりに、駆動側部材と被駆動側部材の一方に対する他方の変位を検出する変位センサであってもよい。
【0116】
上記実施形態では、伝達率低減制御における動力伝達率の低減量に対応する設定値Psは、アクセル操作量に応じて決定されたが、伝達率低減制御における動力伝達率の低減量の決定方法はこれに限定されない。例えば、処理回路は、伝達率低減制御の実行中、ギヤ変速機のギヤ比、駆動源の回転数、駆動源に要求される要求トルク、駆動源の目標回転数、または、車両の車速に基づいて、クラッチアクチュエータを制御するように構成されてもよい。駆動源の目標回転数は、第2変速段における第2ドグの回転数と第2ギヤの回転数の一方を他方に合わせるギヤ同期制御を実施するための目標回転数である。
【0117】
例えば、車両は、駆動源に要求される要求トルクに関連するトルク関連値を検出するトルク関連値センサを備え、制御装置のプロセッサは、トルク関連値センサにより検出されたトルク関連値に基づき、伝達率低減制御における動力伝達率の低減量を決定してもよい。この場合、トルク関連値は、ギヤ変速機のギヤ比、駆動源の回転数、ギヤ変速機の入力軸の回転数、ギヤ変速機の出力軸の回転数、アクセル操作量、または、車両の車速などであり得る。トルク関連値センサは、ギヤポジションセンサ、エンジン回転数センサ、入力軸回転数センサ、出力軸回転数センサ、アクセル操作量センサ、または、車速センサなどであり得る。駆動源に要求される要求トルクに関連するトルク関連値に基づき動力伝達率の低減量を決定するため、運転者などに許容されるレベルの変速ショックに調節しやすい。
【0118】
例えばトルク関連値センサにより検出されたトルク関連値が、比較的大きい要求トルクを示すものである場合には、運転者が車体に生じる多少のショックを許容できる状況であると考えられる。また、例えばトルク関連値センサにより検出されたトルク関連値が、比較的小さい要求トルクを示すものである場合には、要求トルクが大きい場合と比べて、運転者が車体に生じるショックを許容できない状況にある可能性が高い。つまり、運転者が車体に生じる多少のショックを許容し得る状況にあるか否かを、トルク関連値により判定して、ショックを許容できる状況にあると判定した場合には、多少変速ショックが大きくなってもよいため、動力伝達率の低減量を小さくしてもよい。例えば、プロセッサが、トルク関連値センサにより検出されたトルク関連値が、所定の値より大きい要求トルクを示すと判定した場合には、プロセッサは、伝達率低減制御における動力伝達率の低減量を、トルク関連値が所定の値より小さい要求トルクを示すと判定した場合の低減量と比べて、小さい値となるように設定してもよい。
【0119】
設定値Psは、状況に応じて変わる値でなくてもよく、固定値でもよい。この場合、例えば、設定値Psは、0%より大きく100%より小さい値でもよいし、0%でもよい。
【0120】
上記実施形態では、伝達率増加制御として、動力伝達率が時間経過に伴って徐々に100%に近づくように、クラッチアクチュエータを制御するテーリング制御が説明されたが、伝達率増加制御は、動力伝達率を100%にステップ状に急増加させる制御でもよい。また、テーリング制御の動力伝達率の増加速度が、クラッチ18の一対の当接部材の回転数差に応じて変えてもよい。
【0121】
上記実施形態では、例えば第2ドグ24と第2ギヤ23b2との回転数差Δωが所定値以下となるタイミングで第2ドグ24と第2ギヤ23b2とが係合するように、シフト制御のタイミングは決定されたが、回転数差Δωが0となるタイミングで第2ドグ24と第2ギヤ23b2とが係合するように、シフト制御のタイミングが決定されてもよい。
【0122】
上記実施形態では、第2変速段における第2ドグと第2変速ギヤとの回転数差を低減するために、エンジン12に対するギヤ同期制御と駆動モータ13に対するギヤ同期制御の双方が実行されたが、ギヤ同期制御は、1つの駆動源で実行されてもよい。例えば、駆動モータに対するギヤ同期制御は、実行されなくてもよい。ギヤ同期制御を1つの駆動源で実行する場合、回転数差Δωが比較的大きい状態で第2ドグ24と第2ギヤ23b2とが係合する可能性があるが、この場合でも、伝達率低減制御によってイナーシャIを低減して、変速ショックを低減することができる。
【0123】
上記実施形態では、クラッチ18の上流側の回転体とクラッチ18の下流側の回転体の回転数を低減するクラッチ同期制御が実行されるように、エンジン12が制御されたが、クラッチ同期制御を行うよう駆動モータが実行されてもよい。クラッチ同期制御は、クラッチの第2駆動源側の回転体の回転数に、クラッチの第1駆動源側の回転体の回転数を近づける制御に限られず、クラッチの第1駆動源側の回転体の回転数に、クラッチの第2駆動源側の回転体の回転数を近づける制御でもよい。つまり、処理回路は、伝達率低減制御を実行した後、クラッチにおける入力軸側の回転体の回転数と、クラッチにおける第1駆動源側の回転体の回転数との差が低減するように、第2駆動源を制御してもよい。この場合、第2駆動源を制御することにより実行されるクラッチ同期制御は、ギヤ同期制御が完了した後(例えば図6の時点t4以降)に開始されるのが望ましい。
【0124】
シフト制御によって第2ドグ24と第2ギヤ23b2とが係合する前に、駆動モータへのトルク指令を停止して、駆動モータをフリーラン状態としてもよい。これによって、電動モータに起因する慣性モーメントを低減して、入力軸21とともに回転する駆動部品の見かけ上のイナーシャIを更に低減できる。
【0125】
第2駆動源である駆動モータ13は、入力軸21に対し接続されていたが、第1駆動源用の動力伝達経路に対する第2駆動源の接続方法はこれに限定されない。第2駆動源は、第1駆動源用の動力伝達経路における入力軸と前記駆動輪との間の要素に対し接続されていてもよい。例えば第2駆動源である駆動モータが、インホイールモータとして駆動輪に接続されていてもよい。
【0126】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの任意の組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0127】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0128】
[項目1]
動力を発生させる駆動源と、
駆動輪と、
前記駆動源と前記駆動輪との間で動力が伝達される動力伝達経路に配置されたギヤ変速機であって、入力軸、出力軸、および、前記入力軸に同軸の変速ギヤおよび前記出力軸に同軸の変速ギヤをそれぞれ含む複数組の変速ギヤ対を有するギヤ変速機と、
前記複数組の変速ギヤ対に係合可能な複数の係合部を移動させ、前記複数組の変速ギヤ対の中で前記係合部に係合した1の変速ギヤ対を動力伝達状態にするシフトアクチュエータと、
前記動力伝達経路における前記駆動源と前記入力軸との間に配置され、前記駆動源から前記入力軸への動力伝達率を変更可能なクラッチと、
前記クラッチを動作させるクラッチアクチュエータと、を備える車両の制御装置であって、
前記制御装置は、処理回路を備え、
前記処理回路は、
第1変速段から第2変速段にシフトするためのシフト指令を取得した場合に、前記動力伝達率が低減するよう前記クラッチアクチュエータを制御する伝達率低減制御を実行し、
前記伝達率低減制御を実行した後に、前記第1変速段に対応する前記変速ギヤ対と前記係合部との係合を解除して、前記第2変速段に対応する前記変速ギヤ対と前記係合部とが係合するように前記シフトアクチュエータを制御するシフト制御を実行し、
前記シフト制御を実行した後に、前記動力伝達率が増加するよう前記クラッチアクチュエータを制御する伝達率増加制御を実行するように構成される、車両の制御装置。
【0129】
前記構成によれば、シフト制御を実行する前に、クラッチの動力伝達率を低減する。これによって入力軸につながる回転体の慣性モーメントを低減することができる。これにより、シフト制御における第2変速段に対応する変速ギヤ対と係合部とが係合する際に、変速機の入力軸と出力軸との間に回転数差があったとしても、慣性モーメントの低減効果に伴って車体に生じ得るショック、具体的には係合部と変速ギヤ対との衝撃を低減できる。
【0130】
[項目2]
前記処理回路は、前記伝達率低減制御を実行した後、前記クラッチにおける前記入力軸側の回転体の回転数と、前記クラッチにおける前記駆動源側の回転体の回転数との差が低減するように、前記駆動源を制御するように構成される、項目1に記載の車両の制御装置。
【0131】
前記構成によれば、クラッチにおける入力軸側の回転体と駆動源側の回転体との回転数差、つまり、クラッチにおける互いに当接する部材間の回転数差を低減するように駆動源を制御する。これによって、当該回転数差を低減した状態で、伝達率増加制御を実行できる。このようにして伝達率増加制御に起因して車体に生じ得るショックを低減できる。
【0132】
[項目3]
前記車両は、前記駆動源である第1駆動源とは異なる第2駆動源を更に備え、
前記第2駆動源は、前記第2駆動源が発生した動力が前記クラッチを介さずに前記駆動輪に伝達されるように、前記入力軸、または、前記動力伝達経路における前記入力軸と前記駆動輪との間の要素に対し接続される、項目1または2に記載の車両の制御装置。
【0133】
前記構成によれば、第1駆動源とは別に第2駆動源を備えることで、伝達率低減制御によりクラッチが切断状態となったとしても、第2駆動源により駆動輪に動力を伝達できる。この場合、クラッチは、第1駆動源の駆動輪への動力伝達を切り替える動力切換え装置としても利用することができる。すなわち1つのクラッチ装置によって、動力切換え機能と、変速時のショック低減機能との両方を実現することができる。
【0134】
[項目4]
前記第1駆動源は、内燃エンジンであり、前記第2駆動源は、電動モータである、項目3に記載の車両の制御装置。
【0135】
前記構成によれば、ハイブリッド車両に適用することができる。また駆動方法が異なる2つの駆動源が用いられることで、駆動輪に動力を伝達する駆動源を状況に応じて異ならせことができる。これによって、状況に応じた適切な駆動源を採用しやすくすることができる。
【0136】
[項目5]
前記処理回路は、前記伝達率低減制御を実行した後、前記クラッチにおける前記入力軸側の回転体の回転数と、前記クラッチにおける前記駆動源側の回転体の回転数との差が低減するように、前記第2駆動源を制御するように構成される、項目3または4に記載の車両の制御装置。
【0137】
前記構成によれば、クラッチによって伝達率を低減した状態でも、クラッチの入力軸側の回転部材の回転数を制御することができる。伝達率増加制御の前に、クラッチの各当接部材の間の回転数差をさらに低減することができる。このようにして伝達率増加制御に起因して車体に生じ得るショックを低減できる。
【0138】
[項目6]
前記処理回路は、前記伝達率低減制御を開始してから前記伝達率増加制御を開始するまでの間に、前記動力伝達率が0%より大きく100%未満の設定値に維持する半クラッチ期間を含むよう、前記クラッチアクチュエータを制御するように構成される、項目1乃至5のいずれかに記載の車両の制御装置。
【0139】
前記構成によれば、伝達率低減制御を開始してから伝達率増加制御を開始するまでの間に半クラッチ期間があることにより、クラッチにおける入力軸側の回転体と駆動源側の回転体との間での動力伝達状態が維持される。これにより、クラッチの各当接部材間の回転数差を抑えることができ、伝達率増加制御に起因して車体に生じ得るショックを低減することができる。また動力伝達状態を維持することにより、回転方向に変速ギヤと係合部とが離れたり接触したりすること、例えばドグが遊ぶことで車体に生じ得るショックを低減できる。
【0140】
[項目7]
前記処理回路は、前記伝達率低減制御の実行中、前記ギヤ変速機のギヤ比、前記駆動源の回転数、前記駆動源に要求される要求トルク、前記駆動源の目標回転数、または、前記車両の車速に基づいて、前記クラッチアクチュエータを制御するように構成される、項目1乃至6のいずれかに記載の車両の制御装置。
【0141】
前記構成によれば、状況に応じて変速ショックを変更できる。たとえば車体ショックを許容する状況であれば、変速期間の短縮を優先して変速制御を実行するようにしてもよい。また車体ショックの発生が望ましくない状況であれば、車体ショックの低減を優先して、変速に費やす時間を延長するように変速制御を実行するようにしてもよい。
【0142】
[項目8]
前記車両は、前記駆動源に要求される要求トルクに関連するパラメータであるトルク関連値を検出するトルク関連値センサを備え、
前記処理回路は、前記トルク関連値センサにより検出された前記トルク関連値に基づき、前記伝達率低減制御における前記動力伝達率の低減量を決定する、項目1乃至7のいずれかに記載の車両の制御装置。
【0143】
前記構成によれば、駆動源に要求される要求トルクに関連するトルク関連値に基づき動力伝達率の低減量を決定するため、運転者などに許容されるレベルの変速ショックに調節しやすい。
【0144】
[項目9]
前記処理回路は、前記伝達率増加制御において、前記動力伝達率が時間経過に伴って徐々に100%に近づくように、前記クラッチアクチュエータを制御するように構成される、項目1乃至8のいずれかに記載の車両の制御装置。
【0145】
前記構成によれば、単位時間当たりの伝達率の急変化を防ぐことができ、伝達率増加制御に起因して車体に生じ得るショックを低減しやすい。
【0146】
[項目10]
前記駆動源と、
前記駆動輪と、
前記ギヤ変速機と、
前記シフトアクチュエータと、
前記クラッチと、
前記クラッチアクチュエータと、
項目1乃至9のいずれかに記載の前記制御装置と、を備える、車両。
【符号の説明】
【0147】
1 :車両
2 :エンジン
3 :駆動輪
3 :後輪
4 :車体フレーム
4a :ヘッドパイプ
12 :エンジン
13 :駆動モータ
17 :シフトスイッチ
18 :メインクラッチ
19 :クラッチアクチュエータ
20 :ギヤ変速機
21 :入力軸
22 :出力軸
23 :変速ギヤ対
24 :ドグ
30 :シフトアクチュエータ
31 :ギヤポジションセンサ
32 :アクセル操作量センサ
33 :エンジン回転数センサ
34 :モータ回転数センサ
35 :出力軸回転数センサ
40 :制御装置
41 :プロセッサ
42 :メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6