(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094907
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】水素燃焼ボイラ装置
(51)【国際特許分類】
F23N 5/00 20060101AFI20240703BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F23N5/00 Z
F23N5/24 106D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211824
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 務
(72)【発明者】
【氏名】伊東 航
(72)【発明者】
【氏名】川井 佑恭
(72)【発明者】
【氏名】矢川 憲利
(72)【発明者】
【氏名】山本 博道
(72)【発明者】
【氏名】小原 基
(72)【発明者】
【氏名】庄司 麻子
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003EA07
3K003FB01
3K003FB05
3K003GA03
3K003HA00
(57)【要約】
【課題】水素燃焼ボイラ装置の排ガス中に含まれるNOx濃度を効果的に抑制する水素燃焼ボイラ装置を提供すること。
【解決手段】水素燃焼ボイラ装置1は、先混合または部分予混合のバーナ20と、水素ガスG1及び窒素ガスG2を前記バーナ20に同時に供給し、前記バーナ20に供給された前記水素ガスG1及び前記窒素ガスG2の混合ガスの燃焼を制御する燃焼制御部41と、を備え、前記燃焼制御部41は、前記混合ガスの前記水素ガスG1(A)及び前記窒素ガスG2(B)との混合比率を体積流量比(A:B)で95:5~75:25となるように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先混合または部分予混合のバーナと、
水素ガス及び窒素ガスを前記バーナに同時に供給し、前記バーナに供給された前記水素ガス及び前記窒素ガスの混合ガスの燃焼を制御する燃焼制御部と、を備え、
前記燃焼制御部は、前記混合ガスの前記水素ガス(A)及び前記窒素ガス(B)との混合比率を体積流量比(A:B)で95:5~75:25となるように制御する、水素燃焼ボイラ装置。
【請求項2】
前記バーナに水素ガスを供給する水素供給ラインと、
前記バーナに窒素ガスを供給する窒素供給ラインと、を備え、
前記燃焼制御部は、前記燃焼に基づいて前記窒素ガス供給量を所定量に制御する、請求項1に記載の水素燃焼ボイラ装置。
【請求項3】
前記燃焼制御部は、
燃焼率に基づいて前記窒素ガス供給量を制御し、前記燃焼率の低下によって前記窒素ガスの前記体積流量比が増加する制御を行う請求項2に記載の水素燃焼ボイラ装置。
【請求項4】
前記水素供給ラインは、前記水素ガスの供給を遮断する水素供給遮断弁を備え、
前記窒素供給ラインは、前記水素供給遮断弁と前記バーナの間に接続され、
前記バーナが燃焼を停止した後に、前記水素供給ラインからの前記水素ガスの供給が停止された場合においてのみ、前記窒素供給ラインから前記窒素ガスを供給するように制御するポストパージ制御部と、を更に備える請求項2に記載の水素燃焼ボイラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素燃焼ボイラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素ガスを燃料として用いる水素燃焼ボイラ装置が知られている。水素燃焼ボイラ装置は、燃料を燃焼させた場合に二酸化炭素を発生させない点等で注目されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素ガスは、燃焼時に二酸化炭素が発生する燃料ガス(例えば、LNGやLPG)に比して燃焼温度が高いため、水素ガスを燃料としてボイラ装置を運転させた場合、排ガス中に含まれるNOx濃度が高くなってしまう。
【0005】
本発明は、水素燃焼ボイラ装置の排ガス中に含まれるNOx濃度を効果的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、先混合または部分予混合のバーナと、水素ガス及び窒素ガスを前記バーナに同時に供給し、前記バーナに供給された前記水素ガス及び前記窒素ガスの混合ガスの燃焼状態を制御する燃焼制御部と、を備え、前記燃焼制御部は、前記混合ガスの前記水素ガス(A)及び前記窒素ガス(B)との混合比率を体積流量比(A:B)で95:5~75:25となるように制御する、水素燃焼ボイラ装置に関する。
【0007】
また、前記バーナに前記水素ガスを供給する水素供給ラインと、前記バーナに前記窒素ガスを供給する窒素供給ラインと、前記燃焼制御部は、前記燃焼状態に基づいて前記窒素供給量を所定量に制御することが好ましい。
【0008】
また、前記燃焼制御部は、燃焼率に基づいて前記窒素ガス供給量を制御し、燃焼率の低下によって前記窒素ガスの前記体積流量比が増加する制御を行うことが好ましい。
【0009】
また、前記水素供給ラインは、前記水素ガスの供給を遮断する水素供給遮断弁を備え、前記窒素供給ラインは、前記水素供給遮断弁と前記バーナの間に接続され、前記バーナが燃焼を停止した後に、前記水素供給ラインからの前記水素ガスの供給が停止された場合においてのみ、前記窒素供給ラインから前記窒素ガスを供給するように制御するポストパージ制御部と、を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水素燃焼ボイラ装置は、水素ガスに窒素ガスを添加し、水素ガスと窒素ガスの混合ガスの燃焼状態を制御することで、排ガス中に含まれるNOx濃度を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る水素燃焼ボイラ装置を示す図である。
【
図2】窒素添加率によるNOx低減率との関係を示す図である。
【
図3】窒素添加率による排ガス中の残留水素濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る水素燃焼ボイラ装置1について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の水素燃焼ボイラ装置1は、水を加熱して蒸気の生成を行う蒸気ボイラ(小型及び小規模の貫流ボイラ)であり、負荷機器(図示省略)に蒸気を供給する。この水素燃焼ボイラ装置1のバーナには、水素ガス、窒素ガス及び燃焼用空気が供給される。窒素供給ラインは、水素供給ラインに接続される。窒素ガスは、水素供給ラインを介して水素ガスに添加され、混合ガスとなる。水素ガス及び窒素ガスの混合ガスは、燃焼用空気と共にバーナで燃焼される。尚、本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の水素燃焼ボイラ装置1は、缶体10と、バーナ20と、送風機30と、水素供給ラインL100と、窒素供給ラインL200と、の空気供給ラインL300と、制御部40と、を備える。
【0014】
缶体10は、複数の水管、下部ヘッダ、上部ヘッダ(いずれも図示せず)、及び燃焼室Bを含んで構成される。この缶体10に供給される水が加熱されることで蒸気を生成する。
【0015】
バーナ20は、本実施形態において、缶体10の上部に配置される、先混合バーナである。バーナ20には、水素供給ラインL100から供給される水素ガスG1と、水素供給ラインL100を介して窒素供給ラインL200から供給される窒素ガスG2の混合ガスが供給されるとともに、空気供給ラインL300から燃焼用空気A1が供給される。バーナ20は、供給された水素ガスG1と窒素ガスG2の混合ガスと燃焼用空気A1を混合させて燃焼している。
【0016】
送風機30は、バーナ20に燃焼用空気A1を供給する。送風機30は、ファンと、このファンを回転させるモータと、を含んで構成され、インバータ(図示せず)によって周波数を制御することでモータの回転数を調整可能になっている。
【0017】
水素供給ラインL100は、水素ガスG1をバーナ20に供給する。より具体的には、水素供給ラインL100は、下流側がバーナ20の上方からバーナ20に接続され、上流側が水素ガスG1を供給する供給源(図示せず)に接続される。また、水素供給ラインL100は、バーナ20内部の水素ガス配管を含むものとする。
【0018】
水素供給ラインL100は、フレームアレスタ50と、遮断弁としての第1遮断弁V11及び第2遮断弁V12と、流量調整弁V21と、燃料元弁V13と、第1流量センサ71と、第1大気開放部110と、を備える。
フレームアレスタ50は、水素供給ラインL100に配置され、後述する窒素供給ラインL200との接続位置よりも下流側に配置される。フレームアレスタ50は、バーナ20から水素供給ラインL100に発生した逆火の上流側への進行を防止する。
【0019】
第1遮断弁V11及び第2遮断弁V12は、水素供給ラインL100において、フレームアレスタ50よりも上流側に配置される。第1遮断弁V11及び第2遮断弁V12は、電磁弁により構成され、水素供給ラインL100の流路を開閉する。本実施形態において、第2遮断弁V12は、第1遮断弁V11よりも上流側に配置される。
【0020】
第1流量センサ71は、水素供給ラインL100において、第2遮断弁V12よりも上流側に配置される。第1流量センサ71は、水素供給ラインL100を流れる水素ガスG1の流量を検出する。
【0021】
流量調整弁V21は、水素供給ラインL100において、第1遮断弁V11の上流側に配置される。具体的には、流量調整弁V21は、遮断弁としての第1遮断弁V11の上流側に配置され、第2遮断弁V12の下流側に配置される。流量調整弁V21は、第1流量センサ71の検出結果に基づいて、水素供給ラインL100を流れる水素ガスG1の流量を調整する。
【0022】
燃料元弁V13は、水素供給ラインL100において、第1流量センサ71の上流側に配置される。本実施形態では、燃料元弁V13は、水素燃焼ボイラ装置1(の外部)の上流側近傍に配置され、手動弁により構成され、水素供給ラインL100の流路を開閉する。
【0023】
第1大気開放部110は、水素供給ラインL100において、燃料元弁V13の上流側に配置される。第1大気開放部110は、大気開放ラインL500と、この大気開放ラインL500に配置される第1大気開放弁V51と、を備える。第1大気開放部110は、第1大気開放弁V51を開放して、燃料元弁V13よりも上流側の水素供給ラインL100の窒素ガスパージ及び水素置換を行う。
【0024】
窒素供給ラインL200は、水素供給ラインL100を介してバーナ20に窒素ガスG2を供給する。より具体的には、窒素供給ラインL200は、上流側が窒素ガスG2を供給する供給源60に接続され、下流側は、水素供給ラインL100における第1遮断弁V11とフレームアレスタ50との間に接続される。本実施形態では、窒素供給ラインL200は第1遮断弁V11の近傍に接続される。また、窒素供給ラインL200は、後述するポストパージを行うパージラインを兼ねる。
【0025】
窒素供給ラインL200は、供給弁としての第1供給弁V31及び第2供給弁V32と、流量調整弁V61と、第2流量センサ72と、を備える。
【0026】
第1供給弁V31及び第2供給弁V32は、窒素供給ラインL200において、水素供給ラインL100との接続部よりも上流側に配置される。第1供給弁V31及び第2供給弁V32は、電磁弁により構成され、窒素供給ラインL200の流路を開閉して、窒素ガスG2の供給または停止を行う。
【0027】
第2流量センサ72は、窒素供給ラインL200において、第2供給弁V32よりも上流側に配置される。第2流量センサ72は、窒素供給ラインL200を流れる窒素ガスG2の流量を検出する。
【0028】
流量調整弁V61は、窒素供給ラインL200において、第1供給弁V31の上流側に配置される。具体的には、流量調整弁V61は、供給弁としての第1供給弁V31の上流側に配置され、第2供給弁V32の下流側に配置される。流量調整弁V61は、第2流量センサ72の検出結果に基づいて、窒素供給ラインL200を流れる窒素ガスG2の流量を調整する。
【0029】
空気供給ラインL300は、バーナ20に燃焼用空気A1を供給する。空気供給ラインL300の上流は、送風機30に接続される。また、空気供給ラインL300の下流側は、バーナ20に接続される。
【0030】
制御部40は、第1遮断弁V11,第2遮断弁V12、第1供給弁V31及び第2供給弁V32の開閉を制御する。また、制御部40は、流量調整弁V21及び流量調整弁V61を制御し、送風機30の起動、停止及びインバータの周波数を制御する。また、制御部40は、第1流量センサ71、第2流量センサ72の測定信号を取得する。制御部40は、燃焼制御部41とポストパージ制御部42と、を備える。
【0031】
燃焼制御部41は、水素ガスG1及び窒素ガスG2をバーナ20に同時に供給し、バーナ20に供給される水素ガスG1と窒素ガスG2との混合比率を制御することで、バーナ20に供給された水素ガスG1及び窒素ガスG2の混合ガスの燃焼状態を制御する。なお、水素ガスG1及び窒素ガスG2をバーナ20に同時に供給することは、水素ガスG1及び窒素ガスG2の混合ガスを燃焼用空気A1と混合する状態をいう。
具体的には、燃焼制御部41は、バーナ20に水素ガスG1及び窒素ガスG2の混合ガスと燃焼用空気A1を供給し、混合ガスに含まれる窒素ガスG2は所定の添加率に調整されるように制御する。また、燃焼制御部41は、送風機30のインバータを制御することで、送風機30のモータの回転数を調整する。これにより、水素ガスG1の供給量に基づいて、所定の空気比となるように燃焼状態を制御する。より具体的には、燃焼制御部41は、水素ガスG1の流量を第1流量センサ71が取得し、取得した測定流量に基づき、流量調整弁V21の開度を調整するように制御することで、バーナ20への水素ガスG1の供給量を調整する。また、燃焼制御部41は、窒素ガスG2の流量を第2流量センサ72が取得し、取得した測定流量に基づき、流量調整弁V61の開度を調整するように制御することで、バーナ20への窒素ガスG2の供給量を調整する。また、燃焼制御部41は、所定の空気比となるように送風機30のインバータを制御することで、バーナ20への燃焼用空気A1の供給量を調整する。
【0032】
ポストパージ制御部42は、バーナ20の燃焼を停止した後に、水素供給ラインL100と、バーナ20と、をポストパージする制御を行う。
【0033】
ポストパージ制御部42は、水素供給ラインL100から水素ガスG1の供給が停止された状態においてのみ、前記窒素供給ラインL200から窒素ガスG2を供給するように制御する。
【0034】
本実施形態の水素燃焼ボイラ装置1の動作について説明する。
水素燃焼ボイラ装置1は、燃焼を燃焼制御部41で制御し、バーナ20の燃焼を停止した後はポストパージ制御部42で制御する。
【0035】
最初に、水素燃焼ボイラ装置1の燃焼制御の動作について説明する。
燃焼制御部41は、送風機30を起動して、空気供給ラインL300から燃焼用空気A1をバーナ20に供給を開始する。次に、第1遮断弁V11及び第2遮断弁V12を開放し、さらに、流量調整弁V21の開度を調整する。第1遮断弁V11及び第2遮断弁V12が開放され、流量調整弁V21の開度が調整されることで、水素供給ラインL100が開放され、バーナ20への水素ガスG1の供給が開始される。バーナ20への水素ガスG1の供給が開始されてすぐに、バーナ20は着火動作を開始し、バーナ20が燃焼を開始する。バーナ20の燃焼が開始された後に、着火動作を終了する。
また、着火工程後に、燃焼制御部41は、第1供給弁V31及び第2供給弁V32を開放し、さらに、流量調整弁V61の開度を調整する。第1供給弁V31及び第2供給弁V32を開放し、さらに、流量調整弁V61の開度が調整されることで、窒素供給ラインL200が開放され、バーナ20への窒素ガスG2の供給が開始される。バーナ20の所定の燃焼状態に応じて、流量調整弁V21により水素ガスG1の流量を制御し、流量調整弁V61により窒素ガスG2の流量を制御する。また、送風機30のモータの回転数を制御して燃焼用空気A1の流量を調整する。具体的には、燃焼制御部41は、燃焼率に基づいて窒素ガスG2の添加率を設定する。設定された窒素ガスG2の添加率となるように、水素ガスG1及び窒素ガスG2の混合ガスにおける所定の体積流量比となるように流量調整弁V21及び流量調整弁V61を制御する。また、送風機30のモータの回転数を制御する。
【0036】
このように、本実施形態のこの水素燃焼ボイラ装置1においては、バーナ20に水素ガスG1、窒素ガスG2及び燃焼用空気A1が供給される。窒素供給ラインL200は、水素供給ラインL100に接続され、窒素ガスG2は、水素供給ラインL100を介して水素ガスG1に添加され、混合ガスとなる。水素ガスG1及び窒素ガスG2の混合ガスは、燃焼用空気A1と共にバーナ20で燃焼され、バーナ20で燃焼されることによって発生した熱により、給水が加熱され蒸気が生成される。
【0037】
次に、水素燃焼ボイラ装置1の燃焼停止制御の動作について説明する。
燃焼制御部41は、バーナ20の燃焼を停止させるために、第1遮断弁V11及び第2遮断弁V12を閉止する。また、第1供給弁31及び第2供給弁V32を閉止する。第1遮断弁V11又は第2遮断弁V12が閉止されることで、水素供給ラインL100が閉止され、バーナ20への水素ガスG1の供給が停止される。バーナ20は、水素ガスG1の供給が停止されることにより、燃焼が停止される。
【0038】
最後に、水素燃焼ボイラ装置1のポストパージ制御の動作について説明する。
ポストパージ制御部42は、バーナ20における水素ガスG1の燃焼を停止した後にポストパージを実施する。
【0039】
ポストパージ制御部42は、第1遮断弁V11及び第2遮断弁V12が閉止された後に第1供給弁V31及び第2供給弁V32の開放状態を所定時間維持し、ポストパージを実施する。本実施形態では、ポストパージ制御部42は、第1遮断弁V11及び第2遮断弁V12が閉止された状態においてのみ第1供給弁V31及び第2供給弁V32の開放を許容する。これにより、ポストパージを行う場合に水素ガスG1が誤ってバーナ20に供給されることを防げる。
【0040】
このように、第1供給弁V31及び第2供給弁V32が開放されることで、窒素ガスG2の供給源60から窒素供給ラインL200を通じて、水素供給ラインL100に窒素ガスG2が供給される。水素供給ラインL100に供給された窒素ガスG2は、フレームアレスタ50を通り、バーナ20から噴出する。バーナ20から噴出した水素ガスG1は、空気供給ラインL300からバーナ20に供給される燃焼用空気A1と共に、缶体10からパージされる。
【0041】
この後、ポストパージ制御部42は、第1供給弁V31及び第2供給弁V32を閉止する。次いで、ポストパージ制御部42は、送風機30を停止する。
【0042】
図2は、燃焼用ガスとしての水素ガスに窒素ガス添加率を変化させたときのNOx低減率のグラフである。バーナAは一般的な先混合バーナ、バーナBは自己再循環先混合バーナの試験結果を示す。先混合バーナ及び自己再循環先混合バーナを備えたボイラ装置においてはそれぞれ、水素ガスに対する窒素ガスの添加率が増加するに伴ってNOx低減率(窒素添加0%時のNOx濃度に対する百分率)は増加した。
【0043】
本発明者は、
図2に示されるように、窒素添加率に対するNOx低減率の関係は正の逓減的な傾きを持つ曲線を示し、窒素添加率の増分に対するNOx低減率の増分は、窒素添加率が低いほど大きくなることを見出した。
図2に示されるデータに基づくと、バーナAのNOx低減率の増分は、窒素添加率が5%から10%では約18.5%、窒素添加率が15%から20%では約10.5%、窒素添加率が25%から30%では約5.5%であった。窒素添加率を25%以下では、窒素添加による排ガス中NOx濃度の低減効果が顕著であり、排ガス中のNOx濃度を効率的に抑制できる。これより、窒素添加率が25%以下の範囲では、窒素添加率の増加量が小さい場合であっても、排ガス中のNOx濃度の低減効果は顕著に発揮される。バーナBにおいても、同様の効果が得られる。
【0044】
そして、
図2を参照すると、水素ガスと窒素ガスの混合ガスは、水素ガス(A)と窒素ガス(B)との混合比率が体積流量比(A:B)で95:5のとき、または窒素ガスの比率がそれ以上であれば、排ガス中に含まれるNOx低減率が20%以上となり、明らかな窒素低減効果を確保できる。即ち、前記窒素ガスの添加率が、前記水素ガスと前記窒素ガスの前記混合ガスの体積流量の5%以上であれば、排ガス中に含まれるNOx低減率が20%以上となり、好ましいことがわかる。
【0045】
図3は、バーナAにおいて、燃焼用ガスとしての水素ガスに窒素ガス添加率を変化させたときの排ガス中に含まれる水素濃度のグラフである。
図3に示されるように、水素ガスと窒素ガスの混合ガスは、水素ガス(A)と窒素ガス(B)との混合比率が体積流量比(A:B)で60:40のときに、排ガス中に含まれる残留水素濃度が0.2%を超える結果となった。一方、排ガス中に含まれる残留水素濃度は、水素ガス(A)と窒素ガス(B)との混合比率が体積流量比(A:B)で75:25のとき、水素ガス(A)と窒素ガス(B)との混合比率が体積流量比(A:B)で60:40のときの半分以下になった。即ち、前記窒素ガスの添加率が、前記水素ガスと前記窒素ガスの前記混合ガスの体積流量の25%以下であれば、排ガス中に含まれることが許容される残留水素濃度0.2%未満を確保できる。残留水素濃度0.2%は燃料として供給された水素ガスの約0.5%(空気比1.3の場合)に相当する。残留水素濃度を0.2%未満にすることで供給された水素ガスの99%以上を燃焼することができる。
つまり、排ガス中に含まれるNOx低減率と、排ガス中に含まれる残留水素濃度を考慮すると、燃焼制御部41は、窒素ガスG2の添加率が、水素ガスG1と窒素ガスG2の混合ガスの体積流量の5%以上25%以下となるように窒素ガスG2を制御することが好ましい。
【0046】
また、
図3に示されるように、水素ガスと窒素ガスの混合ガスは、水素ガス(A)と窒素ガス(B)との混合比率が体積流量比(A:B)で90:10のときに、排ガス中に含まれる残留水素がほとんど発生しない見込みであるため、窒素ガスの使用コスト及び排ガス中に含まれる残留水素濃度を考慮すると、水素ガスと窒素ガスの混合ガスは、水素ガス(A)と窒素ガス(B)との混合比率が体積流量比(A:B)で95:5~90:10であることがより好ましい。
つまり、燃焼制御部41は、窒素ガスG2の添加率が、水素ガスG1と窒素ガスG2の混合ガスの体積流量の5%以上10%以下となるように窒素ガスG2を制御することがより好ましい。
【0047】
図4は、燃焼状態指令信号に基づく燃焼率と、NOx濃度との関係を示すグラフである(水素ガスへの窒素ガス添加率0%)。なお、NOx濃度は、サンプリングされた気体試料のO2濃度により異なるため、O2(0%)換算値のNOx相対値を示している。燃焼率100%のときの排ガス中のNOx濃度の相対値を1とした。
【0048】
図4に示されるように、水素燃焼ボイラ装置においては、低燃焼状態から高燃焼状態の範囲において、燃焼率が高くなるほどNOx濃度が低くなるという現象が発生することが確認されている。換言すると、燃焼率が低くなるほどNOx濃度が高いということを、本発明者は見出している。
【0049】
燃焼制御部41は、燃焼率に基づいて窒素ガス供給量を制御し、燃焼率の低下によって窒素ガスG2の体積流量比が増加する制御を行うことが好ましい。なお、燃焼率の低下によって窒素ガスG2の体積流量比が増加する制御を行うことは、燃焼率が低いときほど窒素ガスG2の体積流量比が高くなるように制御を行うことを含む。これにより、必要以上の窒素ガスG2を供給することなく、排ガス中のNOx濃度を効率的に抑制することができる。例えば、燃焼率が30%以下の場合に限り、窒素ガスG2の供給をする制御をすることで、より効率的に排ガス中のNOx濃度を抑制することができる。
なお、本実施形態における制御は、(1)所定の燃焼率の値に達したときに、窒素ガスG2の供給を開始する制御を行うこと、(2)燃焼率が低くなるにつれて連続的に窒素ガス供給量を高くなるように制御を行うこと、(3)燃焼率が低くなるにつれて段階的に窒素ガス供給量を高くなるように制御を行うこと等が含まれる。
【0050】
以上、本発明の水素燃焼ボイラ装置の好ましい実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態において、バーナ20は部分予混合バーナを採用することができる。これにより、水素ガスG1中に窒素ガスG2を添加することで、排ガス中に含まれるNOx濃度を効果的に低減することができる。
なお、部分予混合バーナとは、一次空気及び燃料ガスを予混合した後にバーナのノズルから一次空気及び燃焼ガスの混合ガスを噴出させ、必要な理論空気量を二次空気として供給するものである。部分予混合バーナが予混合で必要な空気の量は全燃焼空気の30~80%程度である。
【0052】
また、上記実施形態において、着火工程後に、第1供給弁V31及び第2供給弁V32を開放し、さらに、流量調整弁V61の開度が調整されることで、バーナ20への窒素ガスG2の供給が開始される制御としたが、これに限らない。例えば、着火工程において、第1供給弁V31及び第2供給弁V32を開放し、流量調整弁V61の開度が調整されることで、窒素供給ラインL200が開放されてもよい。
【0053】
また、上記実施形態において、水素ガスG1及び窒素ガスG2を別々のラインから供給し、バーナ20の上流側でそれぞれのラインを合流させて水素ガスG1及び窒素ガスG2の混合ガスをバーナ20に供給していたが、これに制限されない。
例えば、窒素供給ラインL200を水素供給ラインL100における第1遮断弁V11とフレームアレスタ50との間に接続し、水素供給ラインL100を介して窒素ガスG2をバーナ20に供給したが、これに制限されず、窒素供給ラインL200はバーナ20に直接接続されてもよい。
【0054】
また、上記実施形態において、フレームアレスタ50を水素供給ラインL100に配置したが、これに制限されない。即ち、フレームアレスタ50を含まない構成とすることもできる。この場合、窒素供給ラインL200は、第1遮断弁V11の下流側であれば、いずれの位置に接続されてもよい。
【0055】
また、上記実施形態において、燃料元弁V13を手動弁により構成したが、これに限らない。例えば、燃料元弁をエア駆動弁により構成してもよい。
【0056】
以上説明した本実施形態の水素燃焼ボイラ装置1によれば、以下のような効果を奏する。
(1)本実施形態の水素燃焼ボイラ装置1は、バーナ20は先混合バーナであり、水素ガスG1及び窒素ガスG2をバーナ20に同時に供給し、バーナ20に供給された水素ガスG1及び窒素ガスG2の混合ガスの燃焼を制御する燃焼制御部41と、を備え、燃焼制御部41は、前記混合ガスの前記水素ガスG1(A)及び前記窒素ガスG2(B)との混合比率を体積流量比(A:B)で95:5~75:25となるように制御する。つまり、燃焼制御部41は、窒素ガスG2の添加率が、水素ガスG1と窒素ガスG2の混合ガスの体積流量の5%以上25%以下となるように制御する。これにより、排ガス中のNOx濃度を効果的に抑制することができる。
これは、燃料ガスとしての水素ガスG1に窒素ガスG2が添加されることにより、水素ガスG1がバーナ20で燃焼する際に、窒素ガスG2の存在により局所的な高温域の形成が抑制されることでサーマルNOxの発生が抑制されるものと推察される。さらに、水素ガスG1(A)と窒素ガスG2(B)の体積流量比(A:B)が95:5~75:25のときに、窒素ガスG2は、サーマルNOxの発生を抑制する効率を高める。
【0057】
(2)上記(1)の水素燃焼ボイラ装置1は、バーナ20に水素ガスG1を供給する水素供給ラインと、バーナ20に窒素ガスG2を供給する窒素供給ラインと、を備え、燃焼制御部41は、燃焼状態に基づいて窒素ガスG2の供給量を所定量に制御する。これにより、容易に排ガス中に含まれるNOx濃度を効果的に抑制できる。
【0058】
(3)上記(1)又は(2)の水素燃焼ボイラ装置1において、燃焼制御部41は、燃焼率に基づいて窒素ガスG2の供給量を制御し、燃焼率の低下によって、水素ガスG1及び窒素ガスG2の混合ガスの窒素ガスG2の供給量が増加する制御を行う。これにより、必要以上の窒素ガスG2を供給することなく、燃焼状態に応じて排ガス中のNOx濃度を効率的に抑制することができる。
【0059】
(4)上記(1)から(3)の水素燃焼ボイラ装置1において、水素供給ラインL100は、水素ガスG1の供給を遮断する水素供給遮断弁である第1遮断弁V11及び第2遮断弁V12を備え、窒素供給ラインL200は、水素供給遮断弁である第1遮断弁V11とフレームアレスタ50の間に接続され、バーナ20が燃焼を停止した後に、水素供給ラインL100から水素ガスG1が停止された場合においてのみ、窒素供給ラインL200から窒素ガスG2を供給するように制御するポストパージ制御部を更に備える。
これにより、燃焼時のバーナ20には、窒素供給ラインL200を通じて、水素ガスG1の供給と同時に窒素ガスG2を供給することができ、非燃焼時のバーナ20には、窒素ガスG2を供給してバーナ20のパージをすることができる。さらに、燃焼時のバーナ20に窒素ガスG2の供給をすることができる装置構成において、ハードウエアを変更することなく非燃焼時のバーナ20のパージをすることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 水素燃焼ボイラ
20 バーナ
41 燃焼制御部
42 ポストパージ制御部
L100 水素供給ライン
L200 窒素供給ライン
G1 水素ガス
G2 窒素ガス