(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025100383
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】内視鏡処置具
(51)【国際特許分類】
A61B 1/018 20060101AFI20250626BHJP
A61B 17/29 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
A61B1/018 515
A61B17/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】35
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024204587
(22)【出願日】2024-11-25
(31)【優先権主張番号】63/613,767
(32)【優先日】2023-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 佳弘
【テーマコード(参考)】
4C160
4C161
【Fターム(参考)】
4C160GG29
4C160GG30
4C160MM32
4C160NN03
4C160NN11
4C160NN13
4C161CC06
4C161DD03
4C161GG15
4C161HH57
4C161LL02
(57)【要約】
【課題】複数人で共同して使用することのできる内視鏡処置具を提供する。
【解決手段】内視鏡1の処置具導入口112に導入して用いられる内視鏡処置具20は、処置部210を含む先端部21と、基端に設けられたコネクタ部22と、先端部21とコネクタ部22の間に設けられ、処置部210と機械的に接続された操作ハンドル23と、先端部21と操作ハンドル23とを接続する第1シース24と、操作ハンドル23とコネクタ部22とを接続する第2シース25と、を備え、操作ハンドル23は、内視鏡処置具20の周方向に回動可能に構成され、操作ハンドル23の回動により、処置部210が周方向に回動可能に構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の処置具導入口に導入して用いられる内視鏡処置具であって、
処置部を含む先端部と、
基端に設けられた基端部と、
前記先端部と前記基端部の間に設けられ、前記処置部と機械的に接続された操作部材と、
前記先端部と前記操作部材とを接続する第1接続部材と、
前記操作部材と前記基端部とを接続する、前記第1接続部材とは異なる第2接続部材と、を備え、
前記操作部材は、前記内視鏡処置具の軸線回りの第1方向に回動可能に構成され、
前記操作部材の回動により、前記処置部が前記第1方向に回動可能に構成されている内視鏡処置具。
【請求項2】
請求項1に記載の内視鏡処置具であって、
前記操作部材は、前記第1接続部材及び前記第2接続部材に対し、前記内視鏡処置具の軸線方向の位置が固定されている内視鏡処置具。
【請求項3】
請求項2に記載の内視鏡処置具であって、
少なくとも前記操作部材と前記処置部とを機械的に接続する動力伝達要素を備え、
前記操作部材は、前記第1接続部材に対して前記第1方向に回動可能に構成され、
前記操作部材を回動させた場合の回動力を、前記動力伝達要素を介して前記処置部に伝達可能に構成されている内視鏡処置具。
【請求項4】
請求項3に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1接続部材は、前記動力伝達要素が内部に設けられた管状である内視鏡処置具。
【請求項5】
請求項4に記載の内視鏡処置具であって、
前記動力伝達要素は、更に、前記操作部材から前記基端部まで延びて設けられて前記基端部と前記処置部を機械的に接続しており、
前記第2接続部材は、前記動力伝達要素が内部に設けられた管状である内視鏡処置具。
【請求項6】
請求項5に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1接続部材、前記操作部材、及び前記第2接続部材の内部には、前記動力伝達要素が前記軸線方向に移動可能に設けられている内視鏡処置具。
【請求項7】
請求項6に記載の内視鏡処置具であって、
前記操作部材は、前記第1接続部材及び前記第2接続部材に対して前記第1方向に回動可能に構成されている内視鏡処置具。
【請求項8】
請求項7に記載の内視鏡処置具であって、
前記操作部材は、前記第1接続部材及び前記第2接続部材を回動可能に支持し且つ前記動力伝達要素が配置される内部空間を形成する支持部材と、前記内部空間において前記動力伝達要素に固着され且つ前記支持部材の回動に連動して回動可能に構成された固着部材と、を備える内視鏡処置具。
【請求項9】
請求項7に記載の内視鏡処置具であって、
前記操作部材は、前記第1接続部材及び前記第2接続部材を回動可能に支持し且つ前記動力伝達要素が配置される内部空間を形成する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記支持部材の回動に前記動力伝達要素の回動を連動させる状態と、前記動力伝達要素に対して前記支持部材を回動させる状態とを切り替え可能に構成されている内視鏡処置具。
【請求項10】
請求項7に記載の内視鏡処置具であって、
前記操作部材は、前記第1接続部材及び前記第2接続部材を回動可能に支持し且つ前記動力伝達要素が配置される内部空間を形成する支持部材と、前記動力伝達要素を収容する管状の収容部材と、を備え、
前記収容部材は、前記支持部材の回動に連動して回動可能に構成され、その一部が前記第1接続部材及び前記第2接続部材の少なくとも一方の内部に回動可能且つ前記軸線方向に移動可能に設けられている内視鏡処置具。
【請求項11】
請求項7に記載の内視鏡処置具であって、
前記動力伝達要素と前記基端部は、前記第1方向に相対回動可能に接続されている内視鏡処置具。
【請求項12】
請求項7に記載の内視鏡処置具であって、
前記動力伝達要素は、前記第1接続部材の内部に設けられる第1構成部材と、前記第2接続部材の内部に設けられる第2構成部材とが前記操作部材において接続された構成となっており、
前記第2構成部材は、前記第1方向の力に対する剛性が前記第1構成部材よりも小さい内視鏡処置具。
【請求項13】
請求項4に記載の内視鏡処置具であって、
前記基端部から前記処置部まで延びて設けられた伝達要素を備え、
前記第2接続部材は、内部に前記伝達要素が設けられた中実構造体である内視鏡処置具。
【請求項14】
請求項2に記載の内視鏡処置具であって、
前記操作部材は、前記第2接続部材に対して前記第1方向に回動可能に構成されている内視鏡処置具。
【請求項15】
請求項2に記載の内視鏡処置具であって、
前記操作部材は、前記第1接続部材に固着され、
前記操作部材を回動させた場合の回動力を、前記第1接続部材を介して前記処置部に伝達可能に構成されている内視鏡処置具。
【請求項16】
請求項15に記載の内視鏡処置具であって、
前記基端部から前記処置部まで延びて設けられた伝達要素を備え、
前記第1接続部材及び前記第2接続部材は、前記伝達要素が内部に設けられた柱状である内視鏡処置具。
【請求項17】
請求項16に記載の内視鏡処置具であって、
前記伝達要素は、前記基端部と前記処置部を機械的に接続する動力伝達要素を含み、
前記第1接続部材は、第1管状部材と、前記第1管状部材の外周に設けられた第2管状部材と、を有し、
前記第1管状部材の内部には、前記動力伝達要素が前記軸線方向に移動可能に設けられ、
前記第1管状部材は、前記軸線方向の力に対する剛性が前記第2管状部材よりも大きい内視鏡処置具。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1接続部材と前記第2接続部材は、機械的物性が異なる内視鏡処置具。
【請求項19】
請求項18に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1接続部材と前記第2接続部材は、前記第1方向の力に対する剛性が異なる内視鏡処置具。
【請求項20】
請求項19に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1接続部材は、前記第1方向の力に対する剛性が前記第2接続部材よりも大きい内視鏡処置具。
【請求項21】
請求項18に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1接続部材と前記第2接続部材は、前記内視鏡処置具の軸線方向の力に対する剛性が異なる内視鏡処置具。
【請求項22】
請求項21に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1接続部材は、前記軸線方向の力に対する剛性が前記第2接続部材よりも大きい内視鏡処置具。
【請求項23】
請求項1から17のいずれか1項に記載の内視鏡処置具であって、
前記基端部と前記第2接続部材は、相対回動可能に接続されている内視鏡処置具。
【請求項24】
内視鏡の処置具導入口に導入して用いられる内視鏡処置具であって、
処置部を含む先端部と、
基端に設けられた基端部と、
前記先端部から前記基端部まで前記内視鏡処置具の軸線方向に沿って延びる第1部材と、
前記第1部材の一部が内部に設けられ、前記先端部から前記先端部と前記基端部の間の位置まで延びる管状部材と、を備え、
前記内視鏡処置具の軸線周りの第1方向への前記管状部材の回動により、前記処置部が前記第1方向へ回動可能に構成されている内視鏡処置具。
【請求項25】
請求項24に記載の内視鏡処置具であって、
前記管状部材は、前記第1部材に対して前記第1方向へ回動可能に構成されている内視鏡処置具。
【請求項26】
請求項24に記載の内視鏡処置具であって、
前記管状部材は、少なくとも前記先端部において、前記第1部材に対して前記内視鏡処置具の軸線方向の位置が固定されている内視鏡処置具。
【請求項27】
請求項24から26のいずれか1項に記載の内視鏡処置具であって、
前記管状部材に固着された操作部材を更に備える内視鏡処置具。
【請求項28】
請求項24から26のいずれか1項に記載の内視鏡処置具であって、
前記基端部から前記処置部まで延びて設けられた伝達要素を更に備える内視鏡処置具。
【請求項29】
請求項28に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1部材は、管状であり、
前記第1部材の内部には、前記伝達要素が前記軸線方向に移動可能に設けられている内視鏡処置具。
【請求項30】
請求項28に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1部材は、内部に前記伝達要素が設けられた中実構造体である内視鏡処置具。
【請求項31】
請求項24から26のいずれか1項に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1部材と前記管状部材は、機械的物性が異なる内視鏡処置具。
【請求項32】
請求項31に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1部材と前記管状部材は、前記第1方向の力に対する剛性が異なる内視鏡処置具。
【請求項33】
請求項32に記載の内視鏡処置具であって、
前記管状部材は、前記第1方向の力に対する剛性が前記第1部材よりも大きい内視鏡処置具。
【請求項34】
請求項24から26のいずれか1項に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1部材と前記管状部材は、前記内視鏡処置具の軸線方向の力に対する剛性が異なる内視鏡処置具。
【請求項35】
請求項34に記載の内視鏡処置具であって、
前記第1部材は、前記軸線方向の力に対する剛性が前記管状部材よりも大きい内視鏡処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、内視鏡処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被検体内に挿入される挿入機器の挿入部に取り付けられ、上記挿入部内に処置具を挿通させるための処置具挿通具であって、上記処置具を挿通する本体部と、上記本体部を上記挿入部に取り付けるための取付部と、上記挿入機器の処置具挿入口に接続可能で、上記本体部から延出した上記処置具を、上記処置具挿入口を介して上記挿入部内に案内するための案内部と、上記本体部に設けられ、少なくとも一部が弾性変形することにより上記本体部内に挿通された上記処置具を固定可能で、上記処置具を固定した固定状態において上記処置具の軸方向に沿った進退及び上記軸回りの回動の操作を行うための操作部材と、を有する処置具挿通具が記載されている。
【0003】
特許文献2には、内視鏡のチャンネル内に挿通可能な処置具挿入部と、その処置具挿入部の先端に接続された処置部と、上記処置具挿入部の基端側に配され、上記処置具挿入部を軸回りに回転可能な回転操作部と上記処置具挿入部を軸方向に進退可能な進退操作部とを一体に有し上記内視鏡に着脱可能な処置具操作部とを備える内視鏡用処置具が記載されている。
【0004】
特許文献3には、可動部と固定部とを有して生体に対して処置を行う可動先端部と、1本の素線が螺旋状に巻回された1条コイルシースと、複数本の細線が編組され、かつ、編目に樹脂が含浸されてなり、上記1条コイルシースに外装された編状シースと、細長に延びて形成されて先端が上記可動部に接続された操作軸部材と、その操作軸部材を進退操作する操作部と、を備え、上記編状シースの先端が、上記固定部に接続され、かつ、基端が上記操作部に接続されている内視鏡用処置具が記載されている。
【0005】
特許文献4には、病変組織と正常組織の分離のために食塩水を注入して病変組織を隆起させた後、高周波を用いて抉り取って除去する高周波処置装置において、前方に食塩水注入ポートが設けられた管状の胴体に沿って前後移動し且つ高周波ポートを有する稼動具の前方に、上記胴体の内部に位置するように押し棒を結合させ、上記稼動具の押し棒の前方端には、外周面に係止面を有する補助押し棒を回転可能に結合させ、上記補助押し棒の係止面に係止される係止対応孔を有するハンドルを、胴体の前方側部分に離脱不可に係合し、上記補助押し棒の前方端に連結されるワイヤが、胴体の前方に結合したチューブを介して露出するように作動部を構成し、上記作動部のワイヤの端部に円弧状のナイフを結合させ、上記稼動具の前後進作動によって押し棒、補助押し棒、ワイヤ、ナイフが前後進作動しかつハンドルの回転によってワイヤとナイフが回転するように構成する高周波処置装置が記載されている。
【0006】
特許文献5には、内視鏡の処置具挿通チャンネル内に挿脱自在に通される可撓性のあるチューブ状部材であって、上記処置具挿通チャンネルの先端から外方に突出する部分が円弧状に湾曲形成されていることを特徴とする内視鏡の処置具案内具が記載されている。
【0007】
特許文献6には、内視鏡の処置具導入部から処置具挿通チャンネルを通り、処置具導出口から導出可能な長さを有する可撓性コードの先端に、後端側がこの可撓性コードに連結した操作ハンドル部の操作によって動作可能な処置機能部が設けられ、この処置機能部は回転方向に方向性を有する内視鏡用処置具において、上記可撓性コードは、上記処置機能部を上記処置具導出口から導出させた状態で、上記処置具導入部より基端側の位置となる長さを有するものであり、上記可撓性コードの上記処置具導入部から外部に導出された位置の外周部に回転操作部材を固定して設け、この回転操作部材を回転させて、上記可撓性コードを回転させることにより上記処置機能部の方向調整を可能にする構成とした内視鏡用処置具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2017/86107号
【特許文献2】特開2005-198868号公報
【特許文献3】特開2008-148738号公報
【特許文献4】特開2014-4333号公報
【特許文献5】特開平9-299323号公報
【特許文献6】特開2010-22619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示では、複数人で共同して使用する(同じタイミングで一緒に使用する)ことのできる内視鏡処置具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の技術の一態様の内視鏡処置具は、内視鏡の処置具導入口に導入して用いられる内視鏡処置具であって、処置部を含む先端部と、基端に設けられた基端部と、上記先端部と上記基端部の間に設けられ、上記処置部と機械的に接続された操作部材と、上記先端部と上記操作部材とを接続する第1接続部材と、上記操作部材と上記基端部とを接続する、上記第1接続部材とは異なる第2接続部材と、を備え、上記操作部材は、上記内視鏡処置具の軸線回りの第1方向に回動可能に構成され、上記操作部材の回動により、上記処置部が上記第1方向に回動可能に構成されているものである。
【0011】
本開示の技術の一態様の内視鏡処置具は、内視鏡の処置具導入口に導入して用いられる内視鏡処置具であって、処置部を含む先端部と、基端に設けられた基端部と、上記先端部から上記基端部まで上記内視鏡処置具の軸線方向に沿って延びる第1部材と、上記第1部材の一部が内部に設けられ、上記先端部から上記先端部と上記基端部の間の位置まで延びる管状部材と、を備え、上記内視鏡処置具の軸線周りの第1方向への上記管状部材の回動により、上記処置部が上記第1方向へ回動可能に構成されているものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示の技術によれば、練度が求められる操作は術者が行い、その他の単純な操作は補助者が行うことで、効率よく且つ精度よく処置を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の技術の一態様である内視鏡装置100の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、内視鏡1の処置具導入口112に挿入して用いられる内視鏡処置具の一実施形態である内視鏡処置具20の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す内視鏡処置具20が内視鏡1の処置具導入口112に導入された状態を示す図である。
【
図4】
図4は、内視鏡処置具20におけるコネクタ部22の近傍の拡大斜視図である。
【
図5】
図5は、内視鏡処置具20における先端部21の近傍の拡大斜視図である。
【
図7】
図7は、内視鏡処置具20における操作ハンドル23の近傍の断面模式図である。
【
図8】
図8は、操作ハンドル23の軸線方向に垂直な断面の模式図であり、扁平パイプ234を通る断面の模式図である。
【
図9】
図9は、
図8の状態から支持部材231が回動した状態を示す図である。
【
図10】
図10は、操作ハンドル23の第1変形例である操作ハンドル23Aの構成を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、操作ハンドル23の第2変形例である操作ハンドル23Bの構成を示す断面模式図である。
【
図15】
図15は、内視鏡処置具20の第1変形例である内視鏡処置具20Aの構成を示す模式図である。
【
図16】
図16は、内視鏡処置具20の操作ハンドル23の第3変形例である操作ハンドル23Dの構成を示す断面模式図である。
【
図17】
図17は、内視鏡処置具20の第2変形例である内視鏡処置具20Eの構成を示す模式図である。
【
図18】
図18は、
図17に示す内視鏡処置具20Eの操作ハンドル23Eの近傍の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本開示の技術の一態様である内視鏡装置100の概略構成を示す図である。内視鏡装置100は、内視鏡1と、内視鏡1が接続される光源装置4及びプロセッサ装置5からなる本体部2と、内視鏡1により撮像して得られた撮像画像等を表示する表示装置7と、を備える。
【0015】
内視鏡1は、一方向に延びる長尺状の器具であって被検体内に挿入される挿入部10と、挿入部10の基端部に設けられた観察モード切替操作、撮像記憶操作、鉗子操作、送気送水操作、吸引操作、又は電気メス操作等を行うための操作部材が設けられた操作部11と、操作部11に隣接して設けられたアングルノブ12と、内視鏡1を光源装置4の接続部4Aに着脱自在に接続するコネクタ部13Aを含むユニバーサルコード13と、を備える。
【0016】
操作部11には、内視鏡処置具を導入する処置具導入口112が設けられている。内視鏡処置具は、内視鏡1の挿入部10よりも長い長尺状の器具であり、その先端に処置部が設けられている。本開示の技術を好ましく適用できるのは、処置部を内視鏡処置具の軸線周りに回動させることができるものである。内視鏡処置具は、例えば、生検鉗子、把持鉗子、止血クリップ、ハサミ型ナイフ、スネア、注射針、又は高周波ナイフ等である。なお、
図1では省略されているが、操作部11及び挿入部10の内部には、処置具導入口112から導入された内視鏡処置具が挿通される処置具チャンネル、送気送水チャンネル、吸引チャンネル等の各種のチャンネルが設けられる。操作部11には、吸引ボタン11A及び送気送水ボタン11B等が含まれる。
【0017】
挿入部10は、可撓性を有する軟性部10Aと、軟性部10Aの先端に設けられた湾曲部10Bと、湾曲部10Bの先端に設けられた軟性部10Aよりも硬質の先端部10Cとから構成される。先端部10Cには、撮像素子と撮像光学系が内蔵される。
【0018】
湾曲部10Bは、アングルノブ12の回動操作により湾曲自在に構成されている。湾曲部10Bは、内視鏡1が使用される被検体の部位等に応じて、任意の方向及び任意の角度に湾曲でき、先端部10Cを所望の方向に向けることができる。
【0019】
内視鏡1の内部には、挿入部10の先端部10Cからコネクタ部13Aまでにわたって、複数本の光ファイバを束ねて構成されたライトガイドが設けられている。光源装置4により生成された光は、コネクタ部13Aからこのライトガイドに導入されて先端部10Cまで進み、先端部10Cに設けられた照明窓から被検体に照射される。内視鏡1の内部には、挿入部10の先端部10Cから処置具導入口112までにわたって処置具チャンネルが設けられる。処置具導入口112に導入された内視鏡処置具の先端は、先端部10Cの先端面10E(
図3参照)に設けられた処置具開口から突出可能となっている。
【0020】
図2は、内視鏡1の処置具導入口112に挿入して用いられる内視鏡処置具の一実施形態である内視鏡処置具20の概略構成を示す模式図である。内視鏡処置具20は、処置部210を含む先端部21と、基端に設けられたコネクタ部22と、先端部21とコネクタ部22の間に設けられ、処置部210と機械的に接続された操作ハンドル23と、先端部21と操作ハンドル23とを接続する第1シース24と、操作ハンドル23とコネクタ部22とを接続する、第1シース24とは異なる第2シース25と、を備える。コネクタ部22は、基端部を構成する。操作ハンドル23は、操作部材を構成する。第1シース24は、第1接続部材を構成する。第2シース25は、第2接続部材を構成する。
【0021】
コネクタ部22は、内視鏡処置具20の軸線方向(以下、単に軸線方向と記載した場合には、内視鏡処置具20の軸線方向(換言すると、長手方向)のことを意味する)に移動可能なスライダ223を有する。コネクタ部22は、例えばスライダ223の内部に、内視鏡処置具20との電気的な接続を行うためのコネクタが設けられる。処置部210は、一対の鉗子片210Aを有し、この一対の鉗子片210Aを開閉可能な構成となっている。
【0022】
第1シース24と第2シース25は、それぞれ、外形が長尺の柱状となっている。第1シース24と第2シース25は、それぞれ、好ましくは長尺の管状を成しており、可撓性を有している。第1シース24の長さは、挿入部10の先端面10Eから処置具導入口112の入口までの距離よりも長いことが好ましい。
【0023】
操作ハンドル23は、筒状を成しており、その軸線方向の一端側には第1シース24が接続され、その軸線方向の他端側には第2シース25が接続されている。このように、第1シース24及び第2シース25の内部空間は、操作ハンドル23を介して繋がる構成となっている。操作ハンドル23は、内視鏡1を操作する術者が操作する部分であるため、その操作性や耐久性を考慮して、第1シース24及び第2シース25よりも剛性が高く構成されていることが好ましい。また、操作ハンドル23の外径は、操作ハンドル23が処置具導入口112の内部に挿入されないように且つ操作しやすいように、処置具導入口112の内径よりも大きいことが好ましい。より操作しやすくするために、操作ハンドル23の外周面に凹凸等を設け滑りにくくした構成も効果的である。
【0024】
第1シース24、操作ハンドル23、及び第2シース25の内部空間には操作ワイヤ20Wが設けられている。操作ワイヤ20Wは、コネクタ部22から処置部210まで延びて設けられており、コネクタ部22のスライダ223と処置部210とを機械的に接続している。操作ワイヤ20Wは、スライダ223の動きに応じて軸線方向に移動可能に構成されている。内視鏡処置具20では、スライダ223を軸線方向に移動させる操作を行うことによって、操作ワイヤ20Wを介して、処置部210に設けられた一対の鉗子片210Aを開閉できるようになっている。操作ワイヤ20Wは、スライダ223の動きに応じた動力を処置部210へ伝達する伝達要素(以下、動力伝達要素とも記載)を構成している。
【0025】
操作ハンドル23は、第1シース24及び第2シース25に対し、軸線方向の位置が固定されている。つまり、操作ハンドル23を把持して、これを軸線方向に移動させた場合には、操作ハンドル23と共に、第1シース24及び第2シース25が軸線方向に移動する。
【0026】
一方、操作ハンドル23は、第1シース24及び第2シース25に対して、内視鏡処置具20の軸線回りの第1方向に回動可能に構成されている。操作ワイヤ20Wは、操作ハンドル23に対して、軸線方向には移動可能に構成され、第1方向には回動不能に構成されている。つまり、操作ハンドル23を第1シース24及び第2シース25に対して第1方向に回動させると、操作ハンドル23の回動に連動して、操作ワイヤ20Wも第1方向に回動する構成となっている。このように、操作ハンドル23を回動させることで、その回動に連動させて、操作ワイヤ20Wの先端に接続された処置部210を第1方向に回動させることができる。
【0027】
図3は、
図2に示す内視鏡処置具20が内視鏡1の処置具導入口112に導入された状態を示す図である。内視鏡処置具20が処置具導入口112から導入され、図示しない処置具挿通チャンネルを介して先端面10Eから導出される。
図3に示す状態では、軸線方向において、処置部210の先端と先端面10Eの位置が一致しており、第1シース24の基端側の一部が処置具導入口112の外に露出している。
図3に示す状態では、第1シース24の露出している部分の長さ(処置具導入口112と操作ハンドル23との距離)が距離L1となっている。
【0028】
内視鏡処置具20は、内視鏡1を操作する術者が単独で操作することもできるが、術者と、内視鏡処置具20の操作を補助する補助者との2名により、共同して操作することができる。具体的には、術者は、操作部11を左手で把持し、操作ハンドル23を右手の指で摘んで、操作ハンドル23の進退操作(軸線方向への移動)と、操作ハンドル23の回動操作(第1方向への回動)と、を行う。
【0029】
術者が操作ハンドル23の進退操作を行うことで、先端面10Eから最大で距離L1、処置部210を突出させることができる。また、術者が操作ハンドル23の回動操作を行うことで、鉗子片210Aの向きを調整することができる。補助者は、コネクタ部22のスライダ223を移動させて、鉗子片210Aの開閉操作を行う。
【0030】
このように、内視鏡処置具20によれば、練度が求められる作業(処置対象部位に対する鉗子片210Aの方向決めや位置決め)に関しては術者が行い、それほど練度の求められない単純作業(鉗子片210Aを開閉することによる処置対象部位の処置)に関しては補助者が行うことができる。このように、役割分担がなされることで、処置を効率よく且つ精度よく行うことが可能になる。内視鏡処置具20を用いることで、補助者は、術者の指示にしたがってスライダ223を移動させるだけでよい。このため、術者と補助者の組み合わせによらずに、効率の良い処置が可能となる。
【0031】
操作ハンドル23からコネクタ部22までの距離L2は、術者と補助者との距離を適切に確保すべく、例えば50cm以上とするのが好ましい。距離L1は、術者が操作しやすい距離であればよく、その上限値は例えば30cmであることが好ましい。多くの内視鏡処置具は、先端面10Eからの突出長が最大で5cm以上10cm以下の範囲におさまるため、距離L1はこの範囲に設定されるのが好ましい。
【0032】
図4は、内視鏡処置具20におけるコネクタ部22の近傍の拡大斜視図である。コネクタ部22は、第2シース25の基端部が内部に固着されることで、その基端部を支持する筒状のシース支持部221と、シース支持部221に先端が固着されたスライダ軸222と、スライダ軸222の外周において軸線方向に摺動可能に支持されたスライダ223と、スライダ軸222の基端に設けられたリング224と、スライダ223に設けられたコード連結部223Bと、を備える。
【0033】
コード連結部223Bには、内視鏡処置具20の制御装置に接続されたコードが連結される。内視鏡処置具20が処置部210において通電可能なものである場合には、このコード連結部223Bを介して、処置部210への電気的接続が行われる。この場合、第1シース24、操作ハンドル23、及び第2シース25の内部には、処置部210と電気的に接続された電線がスライダ軸222の内部にまで延びて設けられ、この電線がコード連結部223Bの内部のコネクタに接続される。この電線は、高周波電流をコネクタ部22から処置部210まで伝達する伝達要素(以下、電流伝達要素とも記載)を構成する。内視鏡処置具20が処置部210に通電不能なものである場合には、この電線及びコード連結部223Bは省略可能である。
【0034】
なお、例えば、スネアに本開示の技術を適用する場合には、内視鏡処置具20において、処置部210が、スライダ223の移動に応じて形状の変化する環状又は袋状のスネアワイヤに置換された構成となる。
【0035】
また、例えば注射針に本開示の技術を適用する場合には、内視鏡処置具20において、処置部210が円筒状の針に置換され、コネクタ部22には、薬液を供給するためのシリンダの連結部が追加され、コネクタ部22、第2シース25、操作ハンドル23、第1シース24、及び先端部21の内部には、薬液を通すための流路が設けられた構成となる。この流路は、薬液の伝達を行う伝達要素(以下、薬液伝達要素とも記載)を構成する。例えば、処置部210が湾曲形状の針となっている場合には、術者が操作ハンドル23を回動することで、針の向きを変えることができる。この場合、補助者は、術者の指示に従って、シリンダの操作を行うことで、薬液の注入作業のみを行えばよい。
【0036】
スライダ軸222の内部には、操作ワイヤ20Wが軸線方向に移動可能なスペースが設けられており、このスペースに、操作ワイヤ20Wの基端を支持するワイヤ支持部材(図示省略)が設けられている。このワイヤ支持部材は、スライダ223と固着されており、スライダ223に連動する。
【0037】
補助者は、例えば、リング224に親指を引っ掛け、スライダ223に設けられた2つのフランジ部223Aの間に人差し指と中指を引っ掛けた状態で、人差し指と中指を親指側に引くことで、スライダ223を軸線方向に移動させる。この移動に連動して、上記のワイヤ支持部材が軸線方向に移動することで、操作ワイヤ20Wが軸線方向に移動する。
【0038】
スライダ軸222に内蔵されている上記のワイヤ支持部材は、操作ワイヤ20Wを第1方向に回動可能に支持していることが好ましい。つまり、操作ワイヤ20Wとコネクタ部22は、第1方向に相対回動可能に接続されていることが好ましい。このようにすることで、操作ハンドル23の回動力が操作ワイヤ20Wを介してコネクタ部22に伝達されるのを防ぐことができる。補助者がコネクタ部22を保持している状態であっても、操作ハンドル23を問題なく回動させることができるため、術者と補助者の作業性を向上できる。
【0039】
なお、上記のワイヤ支持部材が操作ワイヤ20Wを回動不能に支持する構成では、操作ハンドル23を回動させたときに、操作ワイヤ20Wを介して、コネクタ部22に対して回動力が伝達されることになる。しかし、この場合でも、その回動力に逆らうことなく補助者がコネクタ部22の持ち方を変えるもしくは操作ワイヤ20Wが捻れることで、操作ハンドル23を問題なく回動させることは可能である。なお、後述する通り、操作ワイヤ20Wのうち操作ハンドル23とコネクタ部22を接続する範囲の少なくとも一部を、回動方向の剛性が低いものとすることで、コネクタ部22に伝達される回動力を低減することができる。
【0040】
図5は、内視鏡処置具20における先端部21の近傍の拡大斜視図である。
図6は、
図5に示す先端部21の近傍の断面図である。先端部21は、先端支持部材211と、処置部210と、を備える。先端支持部材211は、筒状を成しており、基端側の内部にて第1シース24の先端部を支持している。
【0041】
処置部210は、先端支持部材211の先端側の内部において、軸線方向に移動可能に設けられた、操作ワイヤ20Wの先端を支持するワイヤ支持部材210Bと、ワイヤ支持部材210Bと鉗子片210Aを連結するリンク機構210Cと、リンク機構210Cを支持するリンク機構支持部材210Dと、を備える。ワイヤ支持部材210B及びリンク機構支持部材210Dは、先端支持部材211によって第1方向に回動可能に支持されている。
【0042】
操作ワイヤ20Wが回動してワイヤ支持部材210Bが回動すると、ワイヤ支持部材210Bに連動して、リンク機構210C、鉗子片210A、及びリンク機構支持部材210Dが先端支持部材211に対して回動する。このように、内視鏡処置具20では、操作ハンドル23と処置部210とが操作ワイヤ20Wによって機械的に接続されており、操作ハンドル23を第1方向に回動させた場合の回動力を、操作ワイヤ20Wを介して、処置部210に伝達可能に構成されている。
【0043】
図6に示すように、第1シース24は、好ましくは、第1管状部材241と、第1管状部材241の外周に設けられた第2管状部材242と、を有する2層構造となっている。操作ワイヤ20Wは、第1管状部材241の内部に、軸線方向に移動可能且つ第1方向に回動可能に設けられる。第1管状部材241は、例えば密着コイルバネにより構成される。第2管状部材242は、例えば、網組ブレードチューブ、複層コイル、又は押出成形により形成される樹脂チューブ等により構成される。第1シース24において、第2管状部材242は省略されてもよい。
【0044】
把持鉗子や止血鉗子は、鉗子片を閉じる際に比較的強いワイヤ牽引力が発生する一方で、処置部210の先端は病変に対して正確な位置決めが必要である。このため、第1シース24については、圧縮(軸線方向の力)に対して長さの変化が起こりにくいシースの特性が求められる。また、第1シース24については、挿入部10に挿入される部分であるため、耐久性や挿入性も求められる。第2シース25については、第1シース24とは異なり、操作ワイヤ20Wを少なくとも軸線方向に移動可能に収容できれば十分である。このため、第2シース25は、圧縮に対して長さの変化が大きい特性であっても問題ないし、耐久性や挿入性もあまり求められない。したがって、第2シース25は、例えば、押出成形により形成される樹脂チューブ等の安価な単一の部材のみで構成されていてもよい。このように、第1シース24と第2シース25が分離されていることで、第1シース24と第2シース25とで機械的物性を変えることが容易である。
【0045】
例えば、第1シース24は、軸線方向の力に対する剛性を第2シース25よりも大きくすることが好ましい。このようにすることで、処置部210の位置決め精度を確保しつつ、第2シース25の製造コストを下げることができる。
【0046】
また、第1シース24を2層構造にする場合には、例えば、第1管状部材241の軸線方向の力に対する剛性を、第2管状部材242の軸線方向の力に対する剛性よりも大きくすることで、第1シース24の製造コストを下げつつ、処置部210の先端の正確な位置決めが可能になる。
【0047】
また、第1シース24は、第1方向の力に対する剛性を第2シース25よりも大きくすることが好ましい。このようにすることで、第2シース25の製造コストを下げることができる。
【0048】
このように、第1シース24と第2シース25とで機械的物性を異なるものとすることで、処置部210の位置決め精度の向上や製造コストの最適化を図ることができる。第1シース24と第2シース25は、内視鏡処置具20に絶縁性が求められる場合には、その外周に熱収縮チューブ等の絶縁部材が更に設けられる場合もある。
【0049】
図7は、内視鏡処置具20における操作ハンドル23の近傍の断面模式図である。操作ハンドル23は、第1シース24及び第2シース25を第1方向に回動可能に支持し且つ操作ワイヤ20Wが配置される内部空間SP1を形成する図の例では円筒状の支持部材231と、内部空間SP1において操作ワイヤ20Wに固着され且つ支持部材231の第1方向への回動に連動して第1方向に回動可能に構成された扁平パイプ234と、を備える。扁平パイプ234は、その内部に操作ワイヤ20Wが挿通された状態で加締められることで、あるいはロウ付け等により、操作ワイヤ20Wに固着されている。扁平パイプ234は、固着部材を構成する。
【0050】
第1シース24は、その基端部が、鍔付き円筒状の第1シースホルダ232の内部に固着されている。支持部材231は、内部空間SP1において、第1シースホルダ232を第1方向に回動可能に支持することで、第1シース24を第1方向に回動可能に支持している。
【0051】
第2シース25は、その先端部が、鍔付き円筒状の第2シースホルダ233の内部に固着されている。支持部材231は、内部空間SP1において、第2シースホルダ233を第1方向に回動可能に支持することで、第2シース25を第1方向に回動可能に支持している。
【0052】
コネクタ部22から第2シース25に挿通された操作ワイヤ20Wは、第2シース25の先端から第2シースホルダ233に挿通され、第2シースホルダ233から扁平パイプ234に挿通され、扁平パイプ234から第1シースホルダ232を介して第1シース24へと挿通されて、先端部21まで延びて設けられている。
【0053】
内部空間SP1のうち、第1シースホルダ232と第2シースホルダ233の間の部分は、軸線方向に垂直な断面が矩形となっている。
図8は、操作ハンドル23の軸線方向に垂直な断面の模式図であり、扁平パイプ234を通る断面の模式図である。
図8に示すように、扁平パイプ234は、断面矩形状の内部空間SP1に配置されている。扁平パイプ234の断面の外形状は、内部空間SP1と同様になっており、扁平パイプ234と支持部材231との隙間は僅かなものとなっている。このため、
図9に示すように、支持部材231が第1方向に回動した場合には、扁平パイプ234も支持部材231に連動して回動する。
【0054】
扁平パイプ234は、操作ワイヤ20Wに固着されているため、支持部材231が回動することで、操作ワイヤ20Wが回動して、操作ワイヤ20Wの先端に接続された処置部210が回動する。支持部材231は、第1シースホルダ232及び第2シースホルダ233を回動可能に支持している。このため、支持部材231を回動させた場合でも、第1シース24や第2シース25が捻じれることはなく、処置への影響は防がれる。
【0055】
扁平パイプ234は、第1シースホルダ232と第2シースホルダ233の間において、軸線方向に移動可能である。したがって、コネクタ部22のスライダ223が軸線方向に移動した場合には、扁平パイプ234も操作ワイヤ20Wと共に、第1シースホルダ232と第2シースホルダ233の間を移動する。第1シースホルダ232と第2シースホルダ233の間の距離は、一対の鉗子片210Aの開閉に必要な値に設定される。
【0056】
以上のように構成された内視鏡処置具20によれば、第1シース24と第2シース25が分離されて非接触となっているため、これらの間の空間を利用して、シースを介すことなく、操作ワイヤ20Wと操作ハンドル23との機械的な接続が可能になる。これにより、コネクタ部22とは別の場所で操作ワイヤ20Wを回動させることが可能となり、処置部210の向きの調整と処置部210による処置とを別の位置で行うことが可能となる。この結果、術者と補助者の2人で共同して使用することができる。また、術者による操作と補助者による操作とを独立させることができるため、作業の効率や精度を高めることができる。
【0057】
なお、操作ワイヤ20Wは、第1シース24の内部に設けられる第1ワイヤと、第2シース25の内部に設けられる第2ワイヤとに分割されて、操作ハンドル23にて第1ワイヤと第2ワイヤが扁平パイプ234によって接続される構成であってもよい。第1ワイヤは第1構成部材を構成し、第2ワイヤは第2構成部材を構成する。
【0058】
このようにした場合には、第1ワイヤの第1方向の力に対する剛性と第2ワイヤの第1方向の力に対する剛性とを異ならせることが好ましい。具体的には、第2ワイヤの第1方向の力に対する剛性は、第1ワイヤの第1方向の力に対する剛性よりも小さくする。このようにすることで、第2ワイヤとコネクタ部22とが第1方向に相対回動不能に固着される構成であっても、操作ハンドル23の回動力が第2ワイヤからコネクタ部22へ伝わりにくくなり、操作ハンドル23の回動によってコネクタ部22が回動するのを防ぐことができる。また、第1ワイヤの第1方向の力に対する剛性を大きくすることで、操作ハンドル23の回動力を効率よく処置部210に伝達でき、操作ハンドル23の回動操作に対する処置部210の回動の追従性を高めることができる。
【0059】
図10は、操作ハンドル23の第1変形例である操作ハンドル23Aの構成を示す斜視図である。
図11は、
図10に示す操作ハンドル23Aの断面模式図である。
【0060】
操作ハンドル23Aは、同一形状且つ扁平形状の一対の部材を接合して構成された支持部材231Aを有する。支持部材231Aを構成する一対の部材の間には、第1シースホルダ232と、第2シースホルダ233と、第1シースホルダ232及び第2シースホルダ233から露出する操作ワイヤ20Wと、を収容可能な内部空間SP2が形成されている。支持部材231Aは、第1シースホルダ232を第1方向に回動可能に支持し、第2シースホルダ233を第1方向に回動可能に支持している。支持部材231Aには、弾性変位可能な一対の押圧部231Bが対向して設けられている。
【0061】
操作ワイヤ20Wは、第1シースホルダ232と第2シースホルダ233の間にて露出しており、操作ワイヤ20Wの露出している部分は、一対の押圧部231Bの間に配置されている。一対の押圧部231Bの間には、押圧部231Bが定常状態にある場合に、操作ワイヤ20Wが軸線方向に移動可能な程度の隙間が設けられている。各押圧部231Bが操作ワイヤ20Wに近づく方向に押圧された押圧状態では、この隙間は消失し、操作ワイヤ20Wが一対の押圧部231Bによって挟持されて、操作ワイヤ20Wは軸線方向に移動不能となる。
【0062】
上記の押圧状態を維持したまま支持部材231Aを第1方向に回動させることで、操作ワイヤ20Wを第1方向に回動させて処置部210を回動させることができる。上記の定常状態においては、スライダ223の移動に応じて、操作ワイヤ20Wが支持部材231A内で移動するため、鉗子片210Aの開閉操作が可能となる。また、この定常状態においては、支持部材231Aは操作ワイヤ20Wに対して第1方向に回動可能となっている。支持部材231Aは第1シースホルダ232、第2シースホルダ233と軸線方向の位置が固定されているため、上記の定常状態か押圧状態かにかかわらず、支持部材231Aを軸線方向に移動させることで、操作ワイヤ20W、第1シースホルダ232、第1シース24、第2シースホルダ233、及び第2シース25を一体的に軸線方向に移動させて、処置部210を軸線方向に移動させることができる。このように、支持部材231Aは、支持部材231Aの回動に操作ワイヤ20Wの回動を連動させる状態と、操作ワイヤ20Wに対して支持部材231Aを回動させる状態とを切り替え可能に構成されている。
【0063】
図10及び
図11に示す操作ハンドル23Aによれば、固着部材(扁平パイプ)が不要のため、スライダ223の操作に応じた操作ワイヤ20Wの軸線方向への移動距離の制限をなくすことができる。操作ハンドル23Aでは、第1シースホルダ232と第2シースホルダ233の間の距離は、押圧部231Bの一部が配置できる程度の必要最小限に留めることができる。このため、処置部210がスネアワイヤで構成される場合等のように、スライダ223を操作した場合の操作ワイヤ20Wの軸線方向の移動距離が大きくなる内視鏡処置具であっても、操作ハンドル23Aの軸線方向のサイズが大きくなるのを防ぐことができる。これにより、内視鏡処置具20の製造コストの低減や、操作ハンドル23Aの操作性の向上等を図ることができる。
【0064】
図12は、操作ハンドル23の第2変形例である操作ハンドル23Bの構成を示す断面模式図である。
図13は、
図12のA-A線の断面模式図である。
【0065】
操作ハンドル23Bは、同一形状且つ扁平形状の一対の部材を接合して構成された支持部材231Cを有する。支持部材231Cを構成する一対の部材の間には、第1シースホルダ232と、第2シースホルダ233と、第1シースホルダ232及び第2シースホルダ233の間に位置する操作ワイヤ20Wと、異形チューブ235と、を収容する内部空間SP3が形成されている。
【0066】
支持部材231Cは、第1シースホルダ232を第1方向に回動可能に支持し、第2シースホルダ233を第1方向に回動可能に支持している。異形チューブ235は、その内部に操作ワイヤ20Wが挿通されており、操作ワイヤ20Wと固着されている。異形チューブ235は、操作ワイヤ20Wを収容する管状の収容部材を構成する。
【0067】
異形チューブ235は、第1シース24の内部から第2シース25の内部まで延びて設けられている。異形チューブ235は、第1シース24と第2シース25内において第1方向に回動可能な程度のサイズに構成されている。
【0068】
異形チューブ235のうち、第1シースホルダ232と第2シースホルダ233の間の部分は、支持部材231Cを構成する一対の部材の間に配置されている。この一対の部材の間の距離は、異形チューブ235が軸線方向に移動可能な程度の大きさとなっているが、異形チューブ235が第1方向には回動不能な大きさとなっている。
【0069】
このような構成により、
図14に示すように、支持部材231Cが第1方向に回動すると、その回動に連動して、異形チューブ235及び操作ワイヤ20Wが第1方向に回動する。異形チューブ235は、第1シース24及び第2シース25内では回動可能になっているため、支持部材231Cの回動が妨げられることはない。また、スライダ223を軸線方向に移動させた場合には、操作ワイヤ20W及びこれを収容する異形チューブ235が一体となって軸線方向に移動することで、鉗子片210Aの開閉が行われる。
【0070】
異形チューブ235は、スライダ223が軸線方向のどの位置にあっても、支持部材231Cを構成する一対の部材の間に配置されるように、軸線方向の長さを十分に確保しておけばよい。操作ハンドル23Bでは、第1シース24と第2シース25との間の距離を短くした場合でも、異形チューブ235の長さに制限はなく、その長さを十分に大きくできる。そのため、支持部材231Cの回動に操作ワイヤ20Wを連動させることを可能としつつ、操作ハンドル23Aと同様に、スライダ223の操作に応じた操作ワイヤ20Wの軸線方向への移動距離の制限をなくすことができる。
【0071】
なお、
図12において、異形チューブ235は、第1シース24の内部には挿通されない構成でもよい。または、異形チューブ235は、第2シース25の内部には挿通されない構成でもよい。
【0072】
操作ハンドル23を含む内視鏡処置具20、操作ハンドル23Aを含む内視鏡処置具20、及び操作ハンドル23Bを含む内視鏡処置具20のそれぞれにおいて、第2シース25と操作ハンドル23、23A、23Bとが固着され、第2シース25とコネクタ部22のシース支持部221とが第1方向に相対回動可能に接続された構成としてもよい。
【0073】
このようにした場合には、操作ハンドル23、23A、23Bを回動させた場合に、第2シース25がこれに追従して回動することになるが、第2シース25とシース支持部221とが相対回動可能に接続されていることで、操作ハンドル23、23A、23Bの回動力がコネクタ部22に伝達されるのを防ぐことができる。
【0074】
図15は、内視鏡処置具20の第1変形例である内視鏡処置具20Aの構成を示す模式図である。内視鏡処置具20Aは、
図2に示す内視鏡処置具20において、操作ハンドル23が操作ハンドル23Cに変更され、コネクタ部22がコネクタ部22Aに変更され、処置部210がブレード形状の高周波ナイフ210Kで構成されたものに変更され、操作ワイヤ20Wが削除された構成となっている。内視鏡処置具20Aの先端部21は、例えば、
図6において、先端支持部材211に高周波ナイフ210Kが第1方向に回動可能に支持された構成となっている。
【0075】
操作ハンドル23Cは、
図7に示す操作ハンドル23と同様の構成であるが、扁平パイプ234の代わりにワイヤ支持部23Tが設けられている。操作ハンドル23Cは、第1シース24の基端部を第1方向に回動可能に支持し、第2シース25の先端部を第1方向に回動可能に支持している。操作ハンドル23Cは、軸線方向においては、第1シース24及び第2シース25に対して位置が固定されている。
【0076】
内視鏡処置具20Aにおいて、第1シース24の内部には、高周波ナイフ210Kに先端が固着され、基端が操作ハンドル23Cの内部のワイヤ支持部23Tに固着された回転操作ワイヤT1が設けられている。回転操作ワイヤT1は、操作ハンドル23Cと高周波ナイフ210Kとを機械的に接続する動力伝達要素である。回転操作ワイヤT1は、第1シース24の内部において第1方向に回動可能に設けられている。
【0077】
操作ハンドル23Cを第1方向に回動させると、操作ハンドル23Cと一体的に構成されたワイヤ支持部23Tが第1方向に回動し、これに連動して、回転操作ワイヤT1が回動する。その結果、回転操作ワイヤT1に固着された高周波ナイフ210Kが第1方向に回動する。
【0078】
このように、内視鏡処置具20Aにおいては、操作ハンドル23Cを回動させた場合の回動力を、第1シース24及び第2シース25のうちの第1シース24の内部にのみ設けられた回転操作ワイヤT1を介して、処置部210を構成する高周波ナイフ210Kに伝達可能に構成されている。
【0079】
コネクタ部22Aは、例えば、
図4に示したコネクタ部22の構成からスライダ223及びリング224を削除し、代わりに、高周波ナイフ210Kへの高周波電流の供給のオンオフ等を行うための操作ボタン225が設けられた構成となっている。内視鏡処置具20Aにおいて、第1シース24、操作ハンドル23C、及び第2シース25の内部には、コネクタ部22Aから高周波ナイフ210Kまで延びて、コネクタ部22Aと高周波ナイフ210Kとを電気的に接続する電線T2が設けられている。電線T2は、コネクタ部22Aから高周波ナイフ210Kまで延びて設けられた電流伝達要素である。電線T2は、コード連結部223Bに連結されたコードと電気的に接続される。操作ボタン225の操作に応じて、電線T2を通じて、高周波ナイフ210Kへの高周波電流の供給がなされる。
【0080】
このように、内視鏡処置具20Aによれば、先端部21に可動部(鉗子片やスネアワイヤ等)を必要とせずに回動のみが行われる処置部210が設けられる構成であっても、処置部210(高周波ナイフ210K)の回動操作と進退操作を、操作ハンドル23Cを用いて術者が行うことができる。高周波ナイフ210Kへの高周波電流の供給については、補助者がコネクタ部22Aを操作して行うことができる。コネクタ部22Aとは別の場所で高周波ナイフ210Kを回動させることが可能となり、高周波ナイフ210Kの向きの調整と高周波ナイフ210Kによる処置とを別の位置で行うことが可能となる。この結果、術者と補助者の2人で共同して使用することができる。また、術者による操作と補助者による操作とを独立させることができるため、作業の効率や精度を高めることができる。
【0081】
内視鏡処置具20Aにおいて、操作ハンドル23Cは、第2シース25を第1方向に回動可能に支持するものとしているが、これに限らない。例えば、操作ハンドル23Cと第2シース25は固着されていてもよい。ただし、操作ハンドル23Cと第2シース25が相対回動可能に接続される構成によれば、操作ハンドル23Cの回動操作による第2シース25の捻じれを防ぐことができる。
【0082】
内視鏡処置具20Aにおいて、第2シース25とコネクタ部22Aは第1方向に相対回動可能に接続されていることが好ましい。このようにすると、例えば、操作ハンドル23Cと第2シース25が固着されている場合でも、第2シース25がコネクタ部22Aに対して回動できることで、操作ハンドル23Cの回動操作がコネクタ部22Aに伝わるのを防ぐことができる。
【0083】
内視鏡処置具20Aにおいて、第1シース24は、回転操作ワイヤT1を回動可能に収容する必要があるため、回転操作ワイヤT1が回動できるだけの中空部が設けられる管状であることが好ましい。しかし、第2シース25は、軸線方向及び第1方向に動かす必要のない電線T2を収容するだけでよいため、管状である必要は無い。第2シース25は、例えば電線T2を絶縁材で被覆して一体的に形成した中実構造体で構成されていてもよい。これによりコストを低減できる。
【0084】
内視鏡処置具20Aにおいても、内視鏡処置具20と同様に、第1シース24と第2シース25とで機械的物性(第1方向や軸線方向の力に対する剛性)を異なるものとすることで、製造コストの最適化や操作性の向上等を図ることができる。
【0085】
例えば、第1シース24の第1方向の力に対する剛性を、第2シース25の第1方向の力に対する剛性よりも大きくすることで、操作ハンドル23Cと第2シース25が固着される場合に、第2シース25のねじれによる反力を抑制できる。また、操作ハンドル23Cと第2シース25が固着され、且つ、第2シース25とコネクタ部22Aとが固着される場合に、操作ハンドル23Cの回動力がコネクタ部22Aに伝達されるのを防ぐことができる。また、第2シース25のコストを低減できる。
【0086】
また、第1シース24の軸線方向の力に対する剛性を、第2シース25の軸線方向の力に対する剛性よりも小さくすることで、高周波ナイフ210Kの位置決めを高精度に行うことを可能にしつつ、第2シース25のコストを下げることができる。
【0087】
内視鏡処置具20Aにおいて、高周波ナイフ210Kが例えば注射針に置き換えられてもよい。この場合には、電線T2の代わりに、薬液伝達要素が設けられ、薬液注入のためのシリンダがコネクタ部22Aに設けられればよい。また、処置具によっては、薬液伝達要素と電流伝達要素(電線T2)の両方がコネクタ部22Aから処置部210まで延びて設けられることもある。この場合、例えば
図15のコネクタ部22Aから操作ボタン225を廃し、コード連結部223Bと薬液注入口のみ設け、補助者は薬液注入作業のみ行い、通電操作は術者が図示しないフットスイッチ等で行ってもよい。このように複数の操作自由度を有する処置具において、どの操作手段をコネクタ部に配置するかは、様々な組み合わせが可能である。上記の例は、これらの組み合わせを限定するものではない。また、
図15において、電線T2が、薬液伝達要素と電流伝達要素の少なくとも一方で構成される場合には、第2シース25は中空部を持つ管状である必要は無く、中実構造体とすることでコストを下げることができる。
【0088】
図16は、内視鏡処置具20の操作ハンドル23の第3変形例である操作ハンドル23Dの構成を示す断面模式図である。操作ハンドル23Dは、
図7に示す操作ハンドル23の構成に対し、扁平パイプ234及び第1シースホルダ232が削除された点と、支持部材231と第1シース24とが接着等によって固着されて第1シース24と支持部材231とが相対回動不能になっている点と、が相違している。また、操作ハンドル23が操作ハンドル23Dに置換された内視鏡処置具20(以下、内視鏡処置具20Dと記載)では、
図6に示すリンク機構支持部材210Dと先端支持部材211が一体化された構成となっている。
【0089】
内視鏡処置具20Dにおいて、第1シース24の内層を構成する第1管状部材241は、第2管状部材242の基端縁から突出しており、この突出した部分が支持部材231の内周面に例えば接着されている。また、第1シース24の外層を構成する第2管状部材242は、その基端部が支持部材231の内周面に例えば接着されている。
【0090】
このように、内視鏡処置具20Dでは、支持部材231と第1シース24が固着されているため、支持部材231を第1方向に回動させると、その回動に連動して、第1シース24が回動し、その結果、第1シース24の先端部を支持している先端支持部材211とこれに支持された処置部210が回動する。このように、操作ハンドル23Dを含む内視鏡処置具20Dでは、支持部材231と処置部210とが第1シース24によって機械的に接続されており、支持部材231を回動させた場合の回動力を、第1シース24を介して処置部210に伝達可能に構成されている。
【0091】
内視鏡処置具20Dにおいては、支持部材231の回動力を処置部210に伝達するのは、第1シース24である。したがって、第1シース24については、第1方向の力に対する剛性が大きいことが好ましい。例えば、第1シース24は、第2シース25よりも第1方向の力に対する剛性が大きいことが好ましい。これにより、第2シース25を安価にしつつ、操作ハンドル23Dの回動操作による処置部210の回動の追従性を向上させることができる。また、第1シース24は、軸線方向の力に対する剛性が第2シース25よりも大きくなっていることが好ましい。これにより、第2シース25を安価にしつつ、処置部210の位置決め精度や鉗子片210Aの把持力を十分に確保できる。
【0092】
内視鏡処置具20Dにおいても、第2シース25とコネクタ部22とが第1方向に相対回動可能に接続されているとよい。支持部材231は、第2シース25に対して回動可能ではあるが、第2シース25がコネクタ部22に対しても回動可能になっていることで、コネクタ部22の操作が操作ハンドル23Dの操作に影響を与えるのをより強く防ぐことができる。
【0093】
内視鏡処置具20Dにおいて、操作ワイヤ20Wに加えて、コネクタ部22から処置部210まで延びる電流伝達要素及び薬液伝達要素の一方又は両方が、第1シース24、操作ハンドル23D、及び第2シース25の内部に設けられていてもよい。
【0094】
内視鏡処置具20Dにおいて、処置部210が、可動部を持たないものであり、且つ、処置部210に通電が必要なものである場合(例えば、
図15に示す高周波ナイフ210Kである場合)には、操作ワイヤ20Wの代わりに、例えば電流伝達要素が設けられればよい。また、内視鏡処置具20Dにおいて、処置部210が注射針である場合には、操作ワイヤ20Wの代わりに、例えば薬液伝達要素が設けられればよい。内視鏡処置具20Dにおいて、操作ワイヤ20Wが電流伝達要素及び薬液伝達要素の一方又は両方に置換された場合には、第1シース24と第2シース25の少なくとも一方は、内部が中空の管状である必要はなく、電流伝達要素や薬液伝達要素が内部に一体的に設けられた中実構造体であってもよい。
【0095】
図17は、内視鏡処置具20の第二変形例である内視鏡処置具20Eの構成を示す模式図である。内視鏡処置具20Eは、
図2に示す内視鏡処置具20において、操作ハンドル23が操作ハンドル23Eに変更され、第2シース25が削除され、削除された第2シース25の代わりに、第1シース24の内層を構成する第1管状部材241がコネクタ部22の位置まで延長された構成となっている。
【0096】
図18は、
図17に示す内視鏡処置具20Eの操作ハンドル23Eの近傍の断面を示す模式図である。
図18における左側が内視鏡処置具20Eの基端側であり、右側が内視鏡処置具20Eの先端側である。なお、内視鏡処置具20Eでは、
図6に示すリンク機構支持部材210Dと先端支持部材211が一体化された構成となっている。
【0097】
操作ハンドル23Eは、円筒状の支持部材231Cを備える。支持部材231Cの内周面には、第2管状部材242が接着等によって固着されている。第1シース24において、第1管状部材241と第2管状部材242は、第1方向に相対回動可能に構成されている。第1管状部材241と第2管状部材242は、少なくとも先端部21においては軸線方向には相対移動不能に構成されている。つまり、第2管状部材242は、第1管状部材241に対して軸線方向の位置が固定されている。
図6に示したように、第1シース24の第2管状部材242の先端部は、先端支持部材211に固着されている。
【0098】
第1シース24は、支持部材231Cの内部を境にして、2層構造から1層構造に変化している。具体的には、第2管状部材242は、先端部21から支持部材231Cの内部まで延びており、第2管状部材242の基端縁から第1管状部材241が突出している。第1管状部材241は、
図4に示すコネクタ部22のシース支持部221の内部まで延びており、シース支持部221によって支持されている。内視鏡処置具20Eが、絶縁性の求められるものである場合には、操作ハンドル23Eよりも基端側において露出する第2管状部材242が熱収縮チューブ等の絶縁性部材で被覆される。
【0099】
内視鏡処置具20Eでは、支持部材231Cと第2管状部材242が固着されているため、支持部材231Cを第1方向に回動させると、第2管状部材242が回動し、その結果、第2管状部材242の先端部を支持している先端支持部材211とこれに支持された処置部210が回動する。このように、内視鏡処置具20Eでは、支持部材231Cと処置部210とが第1シース24によって機械的に接続されており、支持部材231Cを回動させた場合の回動力を、第1シース24を介して処置部210に伝達可能に構成されている。支持部材231を軸線方向に移動させた場合には、第1シース24及び操作ハンドル23Eが一体となって軸線方向に移動することで、処置部210の軸線方向の位置を変えることができる。内視鏡処置具20Eにおいて、第1管状部材241は、第1部材を構成する。第2管状部材242は、管状部材を構成する。
【0100】
このように、内視鏡処置具20Eによれば、処置部210の回動操作と進退操作を、操作ハンドル23Eを用いて術者が行うことができる。このため、内視鏡処置具20と同様の効果が得られる。操作ハンドル23Eによれば、第2シース25が不要となるため、製造コストを下げることができる。
【0101】
内視鏡処置具20Eにおいて、第1管状部材241と第2管状部材242は、機械的物性が異なるものであることが好ましい。例えば、第2管状部材242は、第1方向の力に対する剛性が第1管状部材241よりも大きいことが好ましい。このようにすることで、第1シース24の製造コストを下げつつ、操作ハンドル23Eの回動操作に対する処置部210の回動の追従性を高めることができる。また、第1管状部材241は、軸線方向の力に対する剛性が第2管状部材242よりも大きいことが好ましい。このようにすることで、処置部210の位置決め精度や鉗子片210Aの把持力を十分に確保できる。
【0102】
なお、内視鏡処置具20Eにおいて、操作ハンドル23Eは必須ではなく省略可能である。操作ハンドル23Eを省略した場合には、術者が、第2管状部材242の基端部を指でつまんで第1方向に回動させたり、軸線方向に移動させたりすることで、処置部210の回動と進退が可能である。
【0103】
内視鏡処置具20Eにおいて、第1管状部材241が支持部材231Cの内周面に固着されて、第2管状部材242と第1管状部材241が第1方向に相対回動不能となっていてもよい。この場合には、操作ハンドル23Eを回動させると、第1シース24全体が操作ワイヤ20Wに対して回動することで、処置部210を回動させることができる。この場合、操作ハンドル23Eが回動したときの回動力は、第1管状部材241を介してコネクタ部22にも伝達され得る。しかし、第1管状部材241の第1方向の力に対する剛性を、第2管状部材242の第1方向の力に対する剛性よりも小さくすることで、支持部材231Cの回動力がコネクタ部22に伝達されにくくできる。この結果、露出している第1管状部材241の捻じれによる反力が抑制されて、術者による操作ハンドル23Eの回動操作が補助者によるコネクタ部22の操作に影響を与えるのを防ぐことができる。
【0104】
また、第2管状部材242と第1管状部材241が支持部材231Cにおいて相対回動不能な構成において、例えば、第1管状部材241と第2管状部材242の機械的物性が同じであっても、操作ハンドル23Eを境にして、第1シース24が2層構造から1層構造に変化していることで、操作ハンドル23Eの回動力の伝達性能が、2層構造の部分と1層構造の部分とで変化する。このため、術者による操作ハンドル23Eの回動操作が補助者によるコネクタ部22の操作に影響を与えるのを防ぐことは可能である。また、第1管状部材241とシース支持部221とを第1方向に相対回動可能に接続しておくことでも、このような影響をなくすことができる。
【0105】
内視鏡処置具20Eでは、第1管状部材241を単一の部材で構成するのではなく、軸線方向において2つの部材に分割し、支持部材231Cにおいてこの2つの部材を連結する構成としてもよい。例えば、支持部材231Cの基端側の内部において、第1管状部材241を構成する2つの部材の連結部を設け、この連結部よりも基端側の部材は、樹脂チューブ等とすることで、コストを低減できる。
【0106】
内視鏡処置具20Eでは、操作ワイヤ20Wに加えて、電流伝達要素と薬液伝達要素の少なくとも一方が更に設けられる場合もある。また、操作ワイヤ20Wの代わりに、電流伝達要素と薬液伝達要素の少なくとも一方が設けられる場合もある。操作ワイヤ20Wの代わりに、電流伝達要素と薬液伝達要素の少なくとも一方が設けられる場合には、第1管状部材241は、中空部を持つ管状である必要はなく、伝達要素と薬液伝達要素の少なくとも一方が内部に一体的に設けられた中実構造体とされてもよい。
【0107】
以上説明してきたように、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。
【0108】
(1)
内視鏡の処置具導入口に導入して用いられる内視鏡処置具であって、
処置部を含む先端部と、
基端に設けられた基端部と、
上記先端部と上記基端部の間に設けられ、上記処置部と機械的に接続された操作部材と、
上記先端部と上記操作部材とを接続する第1接続部材と、
上記操作部材と上記基端部とを接続する、上記第1接続部材とは異なる第2接続部材と、を備え、
上記操作部材は、上記内視鏡処置具の軸線回りの第1方向に回動可能に構成され、
上記操作部材の回動により、上記処置部が上記第1方向に回動可能に構成されている内視鏡処置具。
【0109】
(2)
(1)に記載の内視鏡処置具であって、
上記操作部材は、上記第1接続部材及び上記第2接続部材に対し、上記内視鏡処置具の軸線方向の位置が固定されている内視鏡処置具。
【0110】
(3)
(2)に記載の内視鏡処置具であって、
少なくとも上記操作部材と上記処置部とを機械的に接続する動力伝達要素を備え、
上記操作部材は、上記第1接続部材に対して上記第1方向に回動可能に構成され、
上記操作部材を回動させた場合の回動力を、上記動力伝達要素を介して上記処置部に伝達可能に構成されている内視鏡処置具。
【0111】
(4)
(3)に記載の内視鏡処置具であって、
上記第1接続部材は、上記動力伝達要素が内部に設けられた管状である内視鏡処置具。
【0112】
(5)
(4)に記載の内視鏡処置具であって、
上記動力伝達要素は、更に、上記操作部材から上記基端部まで延びて設けられて上記基端部と上記処置部を機械的に接続しており、
上記第2接続部材は、上記動力伝達要素が内部に設けられた管状である内視鏡処置具。
【0113】
(6)
(5)に記載の内視鏡処置具であって、
上記第1接続部材、上記操作部材、及び上記第2接続部材の内部には、上記動力伝達要素が上記軸線方向に移動可能に設けられている内視鏡処置具。
【0114】
(7)
(6)に記載の内視鏡処置具であって、
上記操作部材は、上記第1接続部材及び上記第2接続部材に対して上記第1方向に回動可能に構成されている内視鏡処置具。
【0115】
(8)
(7)に記載の内視鏡処置具であって、
上記操作部材は、上記第1接続部材及び上記第2接続部材を回動可能に支持し且つ上記動力伝達要素が配置される内部空間を形成する支持部材と、上記内部空間において上記動力伝達要素に固着され且つ上記支持部材の回動に連動して回動可能に構成された固着部材と、を備える内視鏡処置具。
【0116】
(9)
(7)に記載の内視鏡処置具であって、
上記操作部材は、上記第1接続部材及び上記第2接続部材を回動可能に支持し且つ上記動力伝達要素が配置される内部空間を形成する支持部材を備え、
上記支持部材は、上記支持部材の回動に上記動力伝達要素の回動を連動させる状態と、上記動力伝達要素に対して上記支持部材を回動させる状態とを切り替え可能に構成されている内視鏡処置具。
【0117】
(10)
(7)に記載の内視鏡処置具であって、
上記操作部材は、上記第1接続部材及び上記第2接続部材を回動可能に支持し且つ上記動力伝達要素が配置される内部空間を形成する支持部材と、上記動力伝達要素を収容する管状の収容部材と、を備え、
上記収容部材は、上記支持部材の回動に連動して回動可能に構成され、その一部が上記第1接続部材及び上記第2接続部材の少なくとも一方の内部に回動可能且つ上記軸線方向に移動可能に設けられている内視鏡処置具。
【0118】
(11)
(7)に記載の内視鏡処置具であって、
上記動力伝達要素と上記基端部は、上記第1方向に相対回動可能に接続されている内視鏡処置具。
【0119】
(12)
(7)に記載の内視鏡処置具であって、
上記動力伝達要素は、上記第1接続部材の内部に設けられる第1構成部材と、上記第2接続部材の内部に設けられる第2構成部材とが上記操作部材において接続された構成となっており、
上記第2構成部材は、上記第1方向の力に対する剛性が上記第1構成部材よりも小さい内視鏡処置具。
【0120】
(13)
(4)に記載の内視鏡処置具であって、
上記基端部から上記処置部まで延びて設けられた伝達要素を備え、
上記第2接続部材は、内部に上記伝達要素が設けられた中実構造体である内視鏡処置具。
【0121】
(14)
(2)に記載の内視鏡処置具であって、
上記操作部材は、上記第2接続部材に対して上記第1方向に回動可能に構成されている内視鏡処置具。
【0122】
(15)
(2)に記載の内視鏡処置具であって、
上記操作部材は、上記第1接続部材に固着され、
上記操作部材を回動させた場合の回動力を、上記第1接続部材を介して上記処置部に伝達可能に構成されている内視鏡処置具。
【0123】
(16)
(15)に記載の内視鏡処置具であって、
上記基端部から上記処置部まで延びて設けられた伝達要素を備え、
上記第1接続部材及び上記第2接続部材は、上記伝達要素が内部に設けられた柱状である内視鏡処置具。
【0124】
(17)
(16)に記載の内視鏡処置具であって、
上記伝達要素は、上記基端部と上記処置部を機械的に接続する動力伝達要素を含み、
上記第1接続部材は、第1管状部材と、上記第1管状部材の外周に設けられた第2管状部材と、を有し、
上記第1管状部材の内部には、上記動力伝達要素が上記軸線方向に移動可能に設けられ、
上記第1管状部材は、上記軸線方向の力に対する剛性が上記第2管状部材よりも大きい内視鏡処置具。
【0125】
(18)
(1)から(17)のいずれか1つに記載の内視鏡処置具であって、
上記第1接続部材と上記第2接続部材は、機械的物性が異なる内視鏡処置具。
【0126】
(19)
(18)に記載の内視鏡処置具であって、
上記第1接続部材と上記第2接続部材は、上記第1方向の力に対する剛性が異なる内視鏡処置具。
【0127】
(20)
(19)に記載の内視鏡処置具であって、
上記第1接続部材は、上記第1方向の力に対する剛性が上記第2接続部材よりも大きい内視鏡処置具。
【0128】
(21)
(18)に記載の内視鏡処置具であって、
上記第1接続部材と上記第2接続部材は、上記内視鏡処置具の軸線方向の力に対する剛性が異なる内視鏡処置具。
【0129】
(22)
(21)に記載の内視鏡処置具であって、
上記第1接続部材は、上記軸線方向の力に対する剛性が上記第2接続部材よりも大きい内視鏡処置具。
【0130】
(23)
(1)から(17)のいずれか1つに記載の内視鏡処置具であって、
上記基端部と上記第2接続部材は、相対回動可能に接続されている内視鏡処置具。
【0131】
(24)
内視鏡の処置具導入口に導入して用いられる内視鏡処置具であって、
処置部を含む先端部と、
基端に設けられた基端部と、
上記先端部から上記基端部まで上記内視鏡処置具の軸線方向に沿って延びる第1部材と、
上記第1部材の一部が内部に設けられ、上記先端部から上記先端部と上記基端部の間の位置まで延びる管状部材と、を備え、
上記内視鏡処置具の軸線周りの第1方向への上記管状部材の回動により、上記処置部が上記第1方向へ回動可能に構成されている内視鏡処置具。
【0132】
(25)
(24)に記載の内視鏡処置具であって、
上記管状部材は、上記第1部材に対して上記第1方向へ回動可能に構成されている内視鏡処置具。
【0133】
(26)
(24)に記載の内視鏡処置具であって、
上記管状部材は、少なくとも上記先端部において、上記第1部材に対して上記内視鏡処置具の軸線方向の位置が固定されている内視鏡処置具。
【0134】
(27)
(24)から(26)のいずれか1つに記載の内視鏡処置具であって、
上記管状部材に固着された操作部材を更に備える内視鏡処置具。
【0135】
(28)
(24)から(26)のいずれか1つに記載の内視鏡処置具であって、
上記基端部から上記処置部まで延びて設けられた伝達要素を更に備える内視鏡処置具。
【0136】
(29)
(28)に記載の内視鏡処置具であって、
上記第1部材は、管状であり、
上記第1部材の内部には、上記伝達要素が上記軸線方向に移動可能に設けられている内視鏡処置具。
【0137】
(30)
(28)に記載の内視鏡処置具であって、
上記第1部材は、内部に上記伝達要素が設けられた中実構造体である内視鏡処置具。
【0138】
(31)
(24)から(26)のいずれか1つに記載の内視鏡処置具であって、
上記第1部材と上記管状部材は、機械的物性が異なる内視鏡処置具。
【0139】
(32)
(31)に記載の内視鏡処置具であって、
上記第1部材と上記管状部材は、上記第1方向の力に対する剛性が異なる内視鏡処置具。
【0140】
(33)
(32)に記載の内視鏡処置具であって、
上記管状部材は、上記第1方向の力に対する剛性が上記第1部材よりも大きい内視鏡処置具。
【0141】
(34)
(24)から(26)のいずれか1つに記載の内視鏡処置具であって、
上記第1部材と上記管状部材は、上記内視鏡処置具の軸線方向の力に対する剛性が異なる内視鏡処置具。
【0142】
(35)
(34)に記載の内視鏡処置具であって、
上記第1部材は、上記軸線方向の力に対する剛性が上記管状部材よりも大きい内視鏡処置具。
【符号の説明】
【0143】
1 内視鏡
2 本体部
2 電線T
4 光源装置
4A 接続部
5 プロセッサ装置
7 表示装置
10 挿入部
10A 軟性部
10B 湾曲部
10C,21 先端部
10E 先端面
11 操作部
11A 吸引ボタン
12 アングルノブ
13 ユニバーサルコード
13A,22,22A コネクタ部
20,20A,20D,20E 内視鏡処置具
20W 操作ワイヤ
23,23A,23B,23C,23D,23E 操作ハンドル
23T ワイヤ支持部
24 第1シース
25 第2シース
100 内視鏡装置
112 処置具導入口
210 処置部
210A 鉗子片
210B ワイヤ支持部材
210C リンク機構
210D リンク機構支持部材
210K 高周波ナイフ
211 先端支持部材
221 シース支持部
222 スライダ軸
223 スライダ
223A フランジ部
223B コード連結部
224 リング
225 操作ボタン
231,231A,231C 支持部材
231B 押圧部
232 第1シースホルダ
233 第2シースホルダ
234 扁平パイプ
235 異形チューブ
241 第1管状部材
242 第2管状部材
SP1,SP2,SP3 内部空間
L1,L2 距離
T1 回転操作ワイヤ