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特開2025-102345送液装置、画像形成装置及び送液装置の診断方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025102345
(43)【公開日】2025-07-08
(54)【発明の名称】送液装置、画像形成装置及び送液装置の診断方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20250701BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
B41J2/175 201
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/175 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219711
(22)【出願日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕文
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EB17
2C056EB19
2C056EB21
2C056EB29
2C056EB48
2C056EB50
2C056EC26
2C056KB08
2C056KB16
2C056KB26
2C056KB37
2C056KC16
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、フィルタ及びポンプの少なくとも一方の劣化度を正確に診断すること。
【解決手段】送液装置は、第1貯留部から第2貯留部へ液体を送液するポンプと、送液される液体から異物を捕集するフィルタと、を有する流路部と、通常使用する駆動力に関する第1設定値とは異なる少なくとも1つの第2設定値でポンプを駆動して、第2貯留部へ送液される送液量に関する数値を取得し、数値に基づいて、ポンプ及びフィルタの少なくとも一方の劣化度を診断する診断部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1貯留部から第2貯留部へ液体を送液するポンプと、送液される前記液体から異物を捕集するフィルタと、を有する流路部と、
通常使用する駆動力に関する第1設定値とは異なる少なくとも1つの第2設定値で前記ポンプを駆動して、前記第2貯留部へ送液される送液量に関する数値を取得し、前記数値に基づいて、前記ポンプ及び前記フィルタの少なくとも一方の劣化度を診断する診断部と、
を備える、送液装置。
【請求項2】
前記フィルタの劣化度を診断する場合、前記第2設定値は前記第1設定値より大きい、
請求項1に記載の送液装置。
【請求項3】
前記ポンプの劣化度を診断する場合、前記第2設定値は前記第1設定値より小さい、
請求項1に記載の送液装置。
【請求項4】
前記診断部は、前記フィルタの劣化度と前記ポンプの劣化度との関係に基づいて、前記フィルタ及び前記ポンプの劣化度を再度診断する、
請求項1に記載の送液装置。
【請求項5】
前記診断部は、前記フィルタの劣化度の推移に基づいて、前記フィルタの交換時期を予測し、ユーザーに交換推奨メッセージを報知する、
請求項1に記載の送液装置。
【請求項6】
前記診断部は、前記ポンプの劣化度の推移に基づいて、前記ポンプの交換時期を予測し、ユーザーに交換推奨メッセージを報知する、
請求項1に記載の送液装置。
【請求項7】
前記診断部は、前記フィルタの劣化度及び前記ポンプの劣化度に基づいて、前記第2貯留部へ送液される送液量が所定の送液量となるよう、前記第1設定値を較正する、
請求項1に記載の送液装置。
【請求項8】
前記送液量に関する数値は、前記第2貯留部における液面高さである、
請求項1に記載の送液装置。
【請求項9】
インクを貯留する第1貯留部及び第2貯留部と、
前記インクを送液する、請求項1から8のいずれか一項に記載の送液装置と、
前記第2貯留部から供給される前記インクを用いて画像を形成する画像形成部と、
を備える、
画像形成装置。
【請求項10】
第1貯留部から第2貯留部へ液体を送液するポンプと、送液される前記液体から異物を捕集するフィルタと、を有する流路部を備える、送液装置の診断方法であって、
通常使用する駆動力に関する第1設定値とは異なる少なくとも1つの第2設定値で前記ポンプを駆動して、前記第2貯留部へ送液される送液量に関する数値を取得し、前記数値に基づいて、前記ポンプ及び前記フィルタの少なくとも一方の劣化度を診断する、
送液装置の診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送液装置、画像形成装置及び送液装置の診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置においては、送液装置を用いて、インクジェットヘッドへインクを供給している。送液装置を構成する部品が故障すると、画像形成装置が停止し、大幅な印字休止時間が発生してしまう。
【0003】
例えば、インクを供給する流路に配置され、異物を捕集するフィルタが目詰まりした場合には、十分なインク供給量が得られず、インク供給エラーが発生して、画像形成装置が停止するおそれがある。
【0004】
そのため、フィルタの目詰まり度合いを監視し、フィルタの目詰まりによりインク供給エラーが発生する前に、フィルタ交換推奨情報などをユーザーに報知できれば、エラー発生前にフィルタを交換することにより、画像形成装置の停止を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-201234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フィルタの目詰まり度合いを診断するには、フィルタを有する流路からのインク供給量を測定する方法が考えられる。しかしながら、インクを供給するポンプが劣化した場合、例えば、固着物の付着によりポンプの弁部分に漏れが発生した場合等でも、インク供給量が減少するため、この方法で、フィルタの目詰まり度合いだけを診断することは難しい。
【0007】
フィルタの目詰まり度合いを診断する方法として、特許文献1には、フィルタを介した流路とフィルタを介さない流路との2つの流路で、それぞれのインク供給量を測定する方法が開示されているが、この方法では、装置の大型化やコストアップを招いてしまう。
【0008】
本発明の目的は、簡易な構成で、フィルタ及びポンプの少なくとも一方の劣化度を正確に診断可能な送液装置、画像形成装置及び送液装置の診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る送液装置は、
第1貯留部から第2貯留部へ液体を送液するポンプと、送液される前記液体から異物を捕集するフィルタと、を有する流路部と、
通常使用する駆動力に関する第1設定値とは異なる少なくとも1つの第2設定値で前記ポンプを駆動して、前記第2貯留部へ送液される送液量に関する数値を取得し、前記数値に基づいて、前記ポンプ及び前記フィルタの少なくとも一方の劣化度を診断する診断部と、
を備える。
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、
インクを貯留する第1貯留部及び第2貯留部と、
前記インクを送液する、上記の送液装置と、
前記第2貯留部から供給される前記インクを用いて画像を形成する画像形成部と、
を備える。
【0011】
本発明に係る送液装置の診断方法は、
第1貯留部から第2貯留部へ液体を送液するポンプと、送液される前記液体から異物を捕集するフィルタと、を有する流路部を備える、送液装置の診断方法であって、
通常使用する駆動力に関する第1設定値とは異なる少なくとも1つの第2設定値で前記ポンプを駆動して、前記第2貯留部へ送液される送液量に関する数値を取得し、前記数値に基づいて、前記ポンプ及び前記フィルタの少なくとも一方の劣化度を診断する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で、フィルタ及びポンプの少なくとも一方の劣化度を正確に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る送液装置及び画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、図1に示した画像形成装置の制御系の主要部を示すブロック図である。
図3図3は、送液ポンプのポンプデューティとインクを送液する送液量との関係を示すグラフである。
図4A図4Aは、送液ポンプのポンプデューティ20%の場合において、フィルタ劣化度とインクの送液量との関係を示すグラフである。
図4B図4Bは、送液ポンプのポンプデューティ40%の場合において、フィルタ劣化度とインクの送液量との関係を示すグラフである。
図4C図4Cは、送液ポンプのポンプデューティ70%の場合において、フィルタ劣化度とインクの送液量との関係を示すグラフである。
図4D図4Dは、送液ポンプのポンプデューティ100%の場合において、フィルタ劣化度とインクの送液量との関係を示すグラフである。
図5A図5Aは、送液ポンプのポンプデューティ20%の場合において、ポンプ劣化度とインクの送液量との関係を示すグラフである。
図5B図5Bは、送液ポンプのポンプデューティ40%の場合において、ポンプ劣化度とインクの送液量との関係を示すグラフである。
図5C図5Cは、送液ポンプのポンプデューティ70%の場合において、ポンプ劣化度とインクの送液量との関係を示すグラフである。
図5D図5Dは、送液ポンプのポンプデューティ100%の場合において、ポンプ劣化度とインクの送液量との関係を示すグラフである。
図6図6は、図1に示した送液装置において、フィルタ又は送液ポンプの劣化度を診断する方法を説明するフローチャートである。
図7図7は、図1に示した送液装置において、フィルタ診断とポンプ診断とを組み合わせて、フィルタ及び送液ポンプの劣化度をより正確に診断する方法を説明するフローチャートである。
図8A図8Aは、フィルタ診断とポンプ診断とを組み合わせて、フィルタ劣化度とポンプ劣化度とを算出する方法を説明する図であって、ポンプ診断値からポンプ劣化度を算出する方法を説明する図である。
図8B図8Bは、フィルタ診断とポンプ診断とを組み合わせて、フィルタ劣化度とポンプ劣化度とを算出する方法を説明する図であって、図8Aで算出したポンプ劣化度を基に、フィルタ診断値からフィルタ劣化度を算出する方法を説明する図である。
図8C図8Cは、フィルタ診断とポンプ診断とを組み合わせて、フィルタ劣化度とポンプ劣化度とを算出する方法を説明する図であって、図8Bで算出したフィルタ劣化度を基に、ポンプ診断値からポンプ劣化度を算出する方法を説明する図である。
図9A図9Aは、送液装置のフィルタの交換を推奨する方法の一例を説明する図であって、使用開始200日経過時点におけるフィルタ劣化度の推移と故障時期を予測する近似式とを示すグラフである。
図9B図9Bは、送液装置のフィルタの交換を推奨する方法の一例を説明する図であって、使用開始600日経過時点におけるフィルタ劣化度の推移と故障時期を予測する近似式とを示すグラフである。
図9C図9Cは、送液装置のフィルタの交換を推奨する方法の一例を説明する図であって、使用開始909日経過時点におけるフィルタ劣化度の推移と故障時期を予測する近似式とを示すグラフである。
図10A図10Aは、送液装置のフィルタの交換を推奨する方法の他の一例を説明する図であって、使用開始200日経過時点におけるフィルタ劣化度の推移と交換を推奨するフィルタ劣化度の判定値とを示すグラフである。
図10B図10Bは、送液装置のフィルタの交換を推奨する方法の他の一例を説明する図であって、使用開始600日経過時点におけるフィルタ劣化度の推移と交換を推奨するフィルタ劣化度の判定値とを示すグラフである。
図10C図10Cは、送液装置のフィルタの交換を推奨する方法の他の一例を説明する図であって、使用開始858日経過時点におけるフィルタ劣化度の推移と交換を推奨するフィルタ劣化度の判定値とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[画像形成装置]
図1は、本実施の形態に係るインク供給部40及びインクジェットプリンタ100の一例を示す概略図である。図2は、図1に示したインクジェットプリンタ100の制御系の主要部を示すブロック図である。
【0016】
インクジェットプリンタ100(本発明における画像形成装置)は、図2に示すように、搬送部10、供給部20、排出部30、インク供給部40、ヘッドモジュール50、操作表示部70、入出力インターフェース80、制御部90等を備える。
【0017】
搬送部10は、記録媒体M(図1を参照)を搬送する。搬送部10としては、例えば、搬送ベルトや搬送ドラム等から構成される。供給部20から供給された記録媒体Mは、搬送部10の搬送動作により、ヘッドモジュール50へ搬送される。その後、ヘッドモジュール50で画像が形成された記録媒体Mは、搬送部10の搬送動作により、排出部30へ搬送される。
【0018】
記録媒体Mは、ヘッドモジュール50のインクジェットヘッド(図示省略)から吐出されるインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。記録媒体Mは、例えば、シート状の紙、布(布帛)、樹脂等の媒体である。なお、記録媒体Mとしては、シート状の媒体に限らず、ロール状の紙、布、樹脂等の媒体であってもよい。
【0019】
供給部20は、記録媒体Mを収容し、搬送部10へ記録媒体Mを供給する。供給部20は、例えば、記録媒体Mを収容する収容部を有し、搬送部10へ記録媒体Mを搬送するベルトやローラー等を有する。
【0020】
排出部30は、搬送部10から排出された記録媒体Mを収容する。排出部30は、例えば、搬送部10から記録媒体Mを搬送するベルトやローラー等を有し、画像形成後の記録媒体Mを収容する収容部を有する。
【0021】
インク供給部40(本発明における送液装置)は、ヘッドモジュール50へインクI(本発明における液体)を供給する装置である。インク供給部40は、主インク貯留部400、メイン送液部410、第1インク貯留部420、サブ送液部430、第2インク貯留部440、圧力調整部450、ヘッド供給路461、循環部470等を有する。
【0022】
主インク貯留部400は、第1インク貯留部420へ送液するインクIを貯留する。主インク貯留部400は、インクIを貯留するメインタンク401を有する。
【0023】
メインタンク401は、インクIを貯留し、貯留しているインクIが空に近づくと、ユーザー又はサービスマンによりインクIが補給される。
【0024】
メイン送液部410は、メインタンク401に貯留されたインクIを、第1インク貯留部420(後述する第1サブタンク421)へ送液する。メイン送液部410は、メイン供給路411、供給ポンプ412、供給弁413等を有する。供給ポンプ412及び供給弁413は、送液方向上流側から下流側に向かって、この順に配置される。
【0025】
メイン供給路411は、送液方向上流側の端部がメインタンク401内に配置され、送液方向下流側の端部が第1サブタンク421の側面に接続され、メインタンク401から第1サブタンク421への流路となる。
【0026】
供給ポンプ412は、メインタンク401から第1サブタンク421へインクIを送液するポンプである。供給弁413は、メイン供給路411の開閉を行う。
【0027】
制御部90は、後述する液面センサ422により、第1サブタンク421内のインクIの液面が下限であることを検知すると、供給ポンプ412、供給弁413を制御して、メインタンク401から第1サブタンク421へインクIを送液する。
【0028】
第1インク貯留部420(本発明における第1貯留部)は、第2インク貯留部440へ送液するインクIを貯留する。第1インク貯留部420は、インクIを貯留する第1サブタンク421、液面センサ422等を有する。
【0029】
第1サブタンク421は、インクIを貯留し、通常は、大気開放状態(0kPa)である。
【0030】
液面センサ422は、第1サブタンク421内に貯留されるインクIの液面高さを計測する。液面センサ422としては、インクIの液面高さを計測できれば、どのようなものでもよく、例えば、磁気式、光学式、電気容量式等のセンサが適用可能である。
【0031】
サブ送液部430(本発明における流路部)は、第1サブタンク421へ貯留されたインクIを、第2インク貯留部440(第2サブタンク441)へ送液する。サブ送液部430は、サブ供給路431、フィルタ432、送液ポンプ433、送液弁434等を有する。フィルタ432、送液ポンプ433及び送液弁434は、送液方向上流側から下流側に向かって、この順に配置される。
【0032】
サブ供給路431は、第1サブタンク421と第2サブタンク441とを接続し、第1サブタンク421から第2サブタンク441への流路となる。フィルタ432は、送液されるインクIを濾過して、異物を捕集する。なお、フィルタ432と共に、インクIの脱気を行う脱気モジュールを設けてもよい。
【0033】
送液ポンプ433は、第1サブタンク421から第2サブタンク441へインクIを送液するポンプである。ここでは、一例として、ポンプデューティの設定可能な最小値が20%の送液ポンプ433を用いるが、インクIの送液動作を保証できれば、当該最小値が異なる送液ポンプを用いてもよい。送液弁434は、サブ供給路431の開閉を行う。例えば、第1サブタンク421から第2サブタンク441へインクIを送液するとき、送液弁434は開き、第2サブタンク441からヘッドモジュール50へインクIを送液するとき、送液弁434は閉じる。
【0034】
制御部90は、後述する液面センサ445により、第2サブタンク441内のインクIの液面が下限であることを検知すると、送液ポンプ433、送液弁434を制御して、第1サブタンク421から第2サブタンク441へインクIを送液する。
【0035】
第2インク貯留部440(本発明における第2貯留部)は、ヘッドモジュール50へ送液するインクIを貯留する。第2インク貯留部440は、インクIを貯留する第2サブタンク441、空気流路442、背圧弁443、背圧ポンプ444、液面センサ445等を有する。
【0036】
第2サブタンク441は、サブ供給路431を介して、第1サブタンク421と接続され、ヘッド供給路461を介して、ヘッドモジュール50と接続される。
【0037】
空気流路442は、一端が第2サブタンク441の上部(内部に貯留されるインクIの上限より上部)に接続され、他端が大気に開放されている。背圧弁443は、その開閉量を調整して、空気流路442を流れる空気の量を調整する。背圧ポンプ444は、空気流路442、背圧弁443を介して、第2サブタンク441内の空気を吸引し、第2サブタンク441内の空気圧(背圧)を減圧させる。
【0038】
第2サブタンク441には、内部の空気圧を検出する圧力検出部(図示省略)が設けられている。制御部90は、圧力検出部で検出された空気圧に基づき、第2サブタンク441内の空気圧が所定圧力となるように、背圧弁443、背圧ポンプ444を制御する。
【0039】
制御部90は、印字の際に、ヘッドモジュール50のインクジェットヘッドの吐出動作によってノズルからインクIが適切に吐出されるように適切なメニスカスを形成するため、第2サブタンク441内の空気圧を制御する。例えば、図1に示すように、空気圧を-3kPaに制御する。
【0040】
液面センサ445は、第2サブタンク441内に貯留されるインクIの液面高さを計測する。液面センサ445としては、インクIの液面高さを計測できれば、どのようなものでもよく、例えば、磁気式、光学式、電気容量式等のセンサが適用可能である。
【0041】
圧力調整部450は、第1サブタンク421の内部の空気圧を調整したり、第1サブタンク421及び第2サブタンク441を大気に開放したりする。圧力調整部450は、第1大気開放路451、第1大気開放弁452、圧力調整路453、空圧ポンプ454、圧力調整弁455、第2大気開放路456、第2大気開放弁457を有する。
【0042】
第1大気開放路451は、一端が第1サブタンク421の上部(内部に貯留されるインクIの上限より上部)に接続され、他端が大気に開放されている。第1大気開放弁452は、第1大気開放路451を開閉する。
【0043】
制御部90は、第1大気開放弁452を制御して、第1大気開放路451を開閉することにより、第1サブタンク421を大気に開放したり、第1サブタンク421を密閉したりする。
【0044】
圧力調整路453は、一端が第1大気開放路451の一端側、つまり、第1サブタンク421の上部(内部に貯留されるインクIの上限より上部)に接続され、他端が大気に開放されている。空圧ポンプ454は、圧力調整路453を介して、第1サブタンク421内や第2サブタンク441内の空気圧(背圧)を調整する。圧力調整弁455は、圧力調整路453を流れる空気流路442を流れる空気の量を調整する。
【0045】
制御部90は、第1大気開放弁452及び第2大気開放弁457を閉じて、空圧ポンプ454、圧力調整弁455を制御して、第1サブタンク421内の空気圧(背圧)を調整する。
【0046】
第2大気開放路456は、一端が第2サブタンク441の上部(内部に貯留されるインクIの上限より上部)に接続され、他端が圧力調整路453に接続されている。第2大気開放弁457は、第2大気開放路456を開閉する。
【0047】
制御部90は、圧力調整弁455及び第2大気開放弁457を制御して、圧力調整路453及び第2大気開放路456を開けることにより、第2サブタンク441を大気に開放する。また、制御部90は、第2大気開放弁457を制御して、第2大気開放路456を閉じることにより、第2サブタンク441を密閉する。
【0048】
また、制御部90は、圧力調整弁455を閉じ、第1大気開放弁452及び第2大気開放弁457を開けて、空圧ポンプ454を制御して、第2サブタンク441内の空気圧(背圧)を調整する。
【0049】
ヘッド供給路461は、一端が第2サブタンク441の底部に接続され、他端がヘッドモジュール50に接続され、第2サブタンク441内のインクをヘッドモジュール50に供給する供給路である。
【0050】
循環部470は、ヘッドモジュール50内のインクIを循環させて、第1サブタンク421へ環流する。循環部470は、循環路471、循環弁472を有する。
【0051】
循環路471は、一端がヘッドモジュール50に接続され、他端が第1サブタンク421に接続されている。循環弁472は、循環路471を開閉する。
【0052】
制御部90は、循環弁472を制御して、循環路471を開閉することにより、ヘッドモジュール50内のインクIを循環させて、第1サブタンク421へ環流したり、当該環流を停止したりする。
【0053】
例えば、循環部470は、ヘッドモジュール50のインクジェットヘッド内に気泡が入った場合に行うインク循環動作に用いられる。インクジェットヘッド内に気泡が入った場合、制御部90は、印字動作を停止し、送液弁434、循環弁472を開け、背圧弁443、第2大気開放路456を閉じ、送液ポンプ433を駆動して、第2サブタンク441内の空気圧を上昇させる。上昇させた空気圧で、インクジェットヘッド内の気泡を含むインクIを第1サブタンク421へ環流させて、インクジェットヘッド内の気泡を押し出す。
【0054】
なお、ここでは、一例として、背圧弁443、第1大気開放弁452及び圧力調整弁455は、通常時は開であり、制御部90からの制御(所定の駆動電圧の供給)により閉となるノーマリーオープンのバルブである。また、他の供給弁413、送液弁434、第2大気開放弁457及び循環弁472は、通常時は閉であり、制御部90からの制御(所定の駆動電圧の供給)により開となるノーマリークローズのバルブである。
【0055】
ヘッドモジュール50(本発明における画像形成部)は、インクジェットヘッド等の画像形成に必要な機器や部材を有する。ヘッドモジュール50は、インク供給部40(第2インク貯留部440)から供給されたインクIをインクジェットヘッドのノズルから吐出して、記録媒体Mに画像を形成する。
【0056】
もし、インクジェットヘッドのノズルが詰まった場合には、制御部90は、背圧弁443、圧力調整弁455を閉じ、第2大気開放弁457を開け、空圧ポンプ454を駆動して、第2サブタンク441内の空気圧を上昇させる。上昇させた空気圧で、ノズル内のインクIを強制的に吐出して、ノズルの詰まりを押し出す。
【0057】
なお、図1では、図を簡潔にするため、1色分のインク供給部40及びヘッドモジュール50を図示しているが、インク供給部40及びヘッドモジュール50は、使用する色数に応じて配置される。例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色を使用する場合には、4色分のインク供給部40及びヘッドモジュール50が配置される。
【0058】
操作表示部70は、例えば、タッチパネル付きの液晶や有機EL(Electro Luminescence)等のフラットパネルディスプレイである。操作表示部70は、ユーザーに対する操作メニュー、画像データに関する情報、インクジェットプリンタ100の各種状態等を表示する。また、操作表示部70は、複数のキーを備え、ユーザーの種々の入力操作を受け付ける。
【0059】
入出力インターフェース80は、外部装置200と制御部90との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース80は、例えば、各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか、又は、これらの組み合わせで構成される。
【0060】
外部装置200は、例えば、パーソナルコンピューターやファクシミリ装置等であり、入出力インターフェース80を介して、プリントジョブや画像データなどを制御部90に供給する。
【0061】
制御部90は、CPU(Central Processing Unit)91、RAM(Random Access Memory)92、ROM(Read Only Memory)93、記憶部94などを有する。
【0062】
CPU91は、ROM93に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM92に記憶させ、当該プログラムを実行して各種の演算処理を行う。例えば、制御部90は、入出力インターフェース80から受信した画像データに基づいて、形成する画像の駆動信号を生成して、ヘッドモジュール50に出力する。
【0063】
RAM92は、CPU91に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。なお、RAM92は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
【0064】
ROM93は、CPU91により実行される各種制御用のプログラムや設定データなどを格納する。なお、ROM93に代えて、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリーなどの書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
【0065】
記憶部94には、入出力インターフェース80を介して、外部装置200から入力されたプリントジョブやプリントジョブに係る画像データが記憶される。記憶部94としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
【0066】
制御部90には、搬送部10、供給部20、排出部30、インク供給部40、ヘッドモジュール50、操作表示部70、入出力インターフェース80等が、それぞれ接続される。制御部90は、インクジェットプリンタ100の全体動作を統括制御している。搬送部10、供給部20、排出部30、インク供給部40、ヘッドモジュール50、操作表示部70、入出力インターフェース80等は、制御部90に制御されて、所定の処理を実行する。
【0067】
インクジェットプリンタ100は、以上の構成により、記録媒体Mを供給部20から搬送部10に供給し、搬送部10に搬送される記録媒体Mにヘッドモジュール50で画像形成を行い、画像形成された記録媒体Mを排出部30に搬送する。
【0068】
ところで、上述した構成を有するインクジェットプリンタ100において、フィルタ432の目詰まり度合いを診断するには、フィルタ432を有するサブ供給路431からのインクIの供給量を測定する方法が考えられる。しかしながら、インクIを供給する送液ポンプ433が劣化した場合でも、インクIの供給量が減少するため、この方法で、フィルタ432の目詰まり度合いだけを診断することは難しい。
【0069】
そこで、本実施の形態において、インク供給部40は、以下に説明する診断部を備える。診断部は、通常使用する駆動力に関する第1設定値とは異なる少なくとも1つの第2設定値で送液ポンプ433を駆動して、第2インク貯留部440へ送液される送液量に関する数値を取得する。そして、診断部は、取得された数値に基づいて、送液ポンプ433及びフィルタ432の少なくとも一方の劣化度(劣化の度合い)を診断する。
【0070】
以降では、送液ポンプ433を駆動する駆動力に関する第1及び第2設定値として、ポンプデューティを用いるが、駆動力に関する設定値であれば、他の設定値、例えば、回転数等でもよい。また、以降では、送液量に関する数値として、送液量又は後述する液面上昇幅を用いるが、送液量に比例するものであれば、例えば、送液速度等を用いてもよい。
【0071】
また、ここでは、制御部90がインク供給部40における診断部を兼ねる構成とするが、制御部90とは別に、診断部として機能する他の制御部等をインク供給部40に設けてよい。
【0072】
上述した診断部に関連して、まず、図3を参照して、送液ポンプ433のポンプデューティとインクIを送液する送液量との関係について説明を行う。図3は、送液ポンプ433のポンプデューティとインクIを送液する送液量との関係を示すグラフである。
【0073】
図3に示すように、送液ポンプ433がインクIを送液する送液量は、送液ポンプ433のポンプデューティ(%)が大きくなるほど多くなる。なお、図3においては、印字時に使用するポンプデューティ40%のときのインクIの送液量を100として、ポンプデューティに対する送液量をグラフ化している。そして、本実施の形態では、印字時に使用するポンプデューティを基準(本発明における第1設定値)として、ポンプ診断時のポンプデューティ(本発明における第2設定値)とフィルタ診断時のポンプデューティ(本発明における第2設定値)とを設定している。
【0074】
ここでは、一例として、ポンプ診断時のポンプデューティを20%、フィルタ診断時のポンプデューティを100%としているが、基準のポンプデューティに対して、ポンプ診断時のポンプデューティは低く、フィルタ診断時のポンプデューティは高ければよい。
【0075】
[ポンプデューティの設定]
ポンプデューティの設定について、図4A図5Dを参照して説明を行う。まず、図4A図4Dを参照して、基準のポンプデューティに対して、フィルタ診断時のポンプデューティを高くする理由を説明する。
【0076】
図4A図4Dは、フィルタ劣化度とインクIの送液量との関係を示すグラフである。図4Aは、送液ポンプ433のポンプデューティが20%の場合のグラフである。図4Bは、送液ポンプ433のポンプデューティが40%の場合のグラフである。図4Cは、送液ポンプ433のポンプデューティが70%の場合のグラフである。図4Dは、送液ポンプ433のポンプデューティが100%の場合のグラフである。
【0077】
図4A図4Dにおいては、フィルタ432及び送液ポンプ433が新品のときのインクIの送液量を100として、フィルタ劣化度に対するインクIの送液量をグラフ化している。また、図4A図4Dにおいては、フィルタ432の新品時をフィルタ劣化度0(0割)とし、フィルタ432の交換が必要な状態(例えば、基準の送液量が得られない状態)をフィルタ劣化度10(10割)としている。また、図4A図4Dにおいては、送液ポンプ433が新品のとき、4割劣化のとき及び交換必要なときを、それぞれ、実線、破線及び一点鎖線で示している。
【0078】
図4Aに示す、送液ポンプ433のポンプデューティが20%の場合、フィルタ劣化度に対するインクIの送液量の変化量(傾き)は、図4B図4Dと比較して、送液ポンプ433が新品のとき、4割劣化のとき及び交換必要なときのいずれでも小さい。
【0079】
図4B図4Dも参照すると、ポンプデューティが大きくなるに従って、フィルタ劣化度に対するインクIの送液量の変化量は、送液ポンプ433が新品のとき、4割劣化のとき及び交換必要なときのいずれでも大きくなっている。
【0080】
例えば、図4A図4Dにおいて、送液ポンプ433が新品のときのフィルタ劣化度に対するインクIの送液量の変化量について、フィルタ劣化度0からフィルタ劣化度10までの変化量を、それぞれ、Cf1~Cf4とする。この場合、Cf1<Cf2<Cf3<Cf4であり、送液ポンプ433のポンプデューティが100%の場合、フィルタ劣化度に対するインクIの送液量の変化量が最も大きい。
【0081】
このように、フィルタ劣化度を診断する場合、フィルタ劣化度に対するインクIの送液量の変化量が大きくなる、比較的大きなポンプデューティが望ましく、ポンプデューティの最大値である100%が最も望ましい。
【0082】
また、図4Aに示す、送液ポンプ433のポンプデューティが20%の場合、送液ポンプ433が新品のときのインクIの送液量のグラフと、4割劣化のとき及び交換必要なときのインクIの送液量のグラフとの間は、図4B図4Dと比較して、離間している。これは、インクIの送液量に送液ポンプ433の劣化度の状態が大きく影響することを意味している。
【0083】
図4B図4Dも参照すると、ポンプデューティが大きくなるに従って、グラフ同士の間が近接していく。これは、インクIの送液量に対して、送液ポンプ433の劣化度の状態が与える影響が小さくなってきていることを意味している。
【0084】
例えば、図4A図4Dにおいて、送液ポンプ433が新品のときにおけるフィルタ劣化度10でのインクIの送液量と、交換必要なときにおけるフィルタ劣化度10でのインクIの送液量との差を、それぞれ、Df1~Df4とする。この場合、Df1>Df2>Df3>Df4であり、送液ポンプ433のポンプデューティが100%の場合、送液ポンプ433の劣化度の状態が与える影響が最も小さい。
【0085】
このように、フィルタ劣化度を診断する場合、送液ポンプ433の劣化度の状態が与える影響が小さくなる、比較的大きなポンプデューティが望ましく、ポンプデューティの最大値100%が最も望ましい。
【0086】
インクIがフィルタ432を通過する際の圧力損失はインクIの流速が速いほど大きくなる。つまり、ポンプデューティを大きくした方が、フィルタ432の劣化による送液量測定への影響が大きくなる。従って、ポンプデューティを大きくすると、送液量測定については、フィルタ432の劣化による影響が大きくなるので、フィルタ432の劣化をより正確に診断することができる。
【0087】
以上のことから、フィルタ劣化度を診断する場合、本実施形態では、フィルタ劣化度に対するインクIの送液量の変化量が大きく、かつ、送液ポンプ433の劣化度の状態が与える影響が小さくなるポンプデューティ100%を用いるようにしている。
【0088】
次に、図5A図5Dを参照して、基準のポンプデューティに対して、ポンプ診断時のポンプデューティを低くする理由を説明する。
【0089】
図5A図5Dは、ポンプ劣化度とインクIの送液量との関係を示すグラフである。図5Aは、送液ポンプ433のポンプデューティが20%の場合のグラフである。図5Bは、送液ポンプ433のポンプデューティが40%の場合のグラフである。図5Cは、送液ポンプ433のポンプデューティが70%の場合のグラフである。図5Dは、送液ポンプ433のポンプデューティが100%の場合のグラフである。
【0090】
図5A図5Dにおいては、フィルタ432及び送液ポンプ433が新品のときのインクIの送液量を100として、ポンプ劣化度に対するインクIの送液量をグラフ化している。また、図5A図5Dにおいては、送液ポンプ433の新品時をポンプ劣化度0(0割)とし、送液ポンプ433の交換が必要な状態(例えば、基準の送液量が得られない状態)をポンプ劣化度10(10割)としている。また、図5A図5Dにおいては、フィルタ432が新品のとき、3割劣化のとき及び交換必要なときを、それぞれ、実線、破線及び一点鎖線で示している。
【0091】
図5Aに示す、送液ポンプ433のポンプデューティが20%の場合、ポンプ劣化度に対するインクIの送液量の変化量(傾き)は、図5B図5Dと比較して、フィルタ432が新品のとき、3割劣化のとき及び交換必要なときのいずれでも大きい。
【0092】
図5B図5Dも参照すると、ポンプデューティが大きくなるに従って、ポンプ劣化度に対するインクIの送液量の変化量は、送液ポンプ433が新品のとき、3割劣化のとき及び交換必要なときのいずれでも小さくなっている。
【0093】
例えば、図5A図5Dにおいて、送液ポンプ433が新品のときのポンプ劣化度に対するインクIの送液量の変化量について、フィルタ劣化度0からフィルタ劣化度10までの変化量を、それぞれ、Cp1~Cp4とする。この場合、Cp1>Cp2>Cp3>Cp4であり、送液ポンプ433のポンプデューティが20%の場合、ポンプ劣化度に対するインクIの送液量の変化量が最も大きい。
【0094】
このように、ポンプ劣化度を診断する場合、ポンプ劣化度に対するインクIの送液量の変化量が大きくなる、比較的小さなポンプデューティが望ましく、ポンプデューティ20%が最も望ましい。
【0095】
また、図5Aに示す、送液ポンプ433のポンプデューティが20%の場合、フィルタ432が新品のときのインクIの送液量のグラフに対し、3割劣化のとき及び交換必要なときのインクIの送液量のグラフは、図5B図5Dと比較して、近接している。これは、インクIの送液量に対して、フィルタ432の劣化度の状態が与える影響が小さいことを意味している。
【0096】
図5B図5Dも参照すると、ポンプデューティが大きくなるに従って、グラフ同士の間が離間していく。これは、インクIの送液量に対して、フィルタ432の劣化度の状態が与える影響が大きくなってきていることを意味している。
【0097】
例えば、図5A図5Dにおいて、フィルタ432が新品のときにおけるポンプ劣化度10でのインクIの送液量と、交換必要なときにおけるポンプ劣化度10でのインクIの送液量との差を、それぞれ、Dp1~Dp4とする。この場合、Dp1<Dp2<Dp3<Dp4であり、送液ポンプ433のポンプデューティが20%の場合、フィルタ432の劣化度の状態が与える影響が最も小さい。
【0098】
このように、ポンプ劣化度を診断する場合、フィルタ432の劣化度の状態が与える影響が小さくなる、比較的小さなポンプデューティが望ましい。ここでは、一例として、ポンプデューティの設定可能な最小値が20%の送液ポンプ433を用いているので、ポンプ劣化度を診断する場合のポンプデューティとしては、20%が最も望ましい。インクIの送液動作を保証できれば、当該最小値が異なる送液ポンプを用いてもよく、その場合、ポンプ劣化度を診断する場合のポンプデューティとしては、当該送液ポンプのポンプデューティの最小値が最も望ましい。
【0099】
インクIがフィルタ432を通過する際の圧力損失はインクIの流速が遅いほど小さくなる。つまり、ポンプデューティを小さくした方が、フィルタ432の劣化による送液量測定への影響が小さくなる。従って、ポンプデューティを小さくすると、送液量測定については、フィルタ432の劣化による影響が小さくなり、送液ポンプ433の劣化の影響が強く出るので、送液ポンプ433の劣化をより正確に診断することができる。
【0100】
以上のことから、ポンプ劣化度を診断する場合、本実施形態では、ポンプ劣化度に対するインクIの送液量の変化量が大きく、かつ、フィルタ432の劣化度の状態が与える影響が小さくなるポンプデューティ20%を用いるようにしている。
【0101】
以上の知見に基づき、フィルタ劣化度を診断するのに適切なポンプデューティやポンプ劣化度を診断するのに適切なポンプデューティを用いることにより、フィルタ432及び送液ポンプ433の少なくとも一方の劣化度を正確に診断することができる。
【0102】
本実施の形態において、送液ポンプ433が送液するインクIの送液量の計測は、以下の図6で説明するように、第2インク貯留部440が有する液面センサ445を用いて行う。
【0103】
つまり、本実施の形態では、インクジェットプリンタ100の構成を変更したり、新たな構成を追加したりすることなく、送液ポンプ433が送液するインクIの送液量を計測することができる。そのため、本実施の形態では、送液ポンプ433のポンプデューティを変更するだけで、装置の構成を変更したり、構成を追加したりすることなく、フィルタ432や送液ポンプ433の劣化度を正確に診断することができる。
【0104】
[劣化度の診断方法]
図1及び図2と共に、図6を参照して、フィルタ432又は送液ポンプ433の劣化度の診断方法を説明する。図6は、インク供給部40において、フィルタ432又は送液ポンプ433の劣化度を診断する方法を説明するフローチャートである。
【0105】
(ステップS11)
診断部は、インク供給部40を制御して、第2サブタンク441内のインクIの液面を所定高さ、例えば、第2サブタンク441の下限に合わせる。
【0106】
具体的には、第2サブタンク441内のインクIの液面が下限より高い場合、診断部は、インクIの液面が下限となることを液面センサ445が検知するまで、インクジェットヘッドのノズルからインクIを吐出する。このとき、上述したノズル詰まりを解消する動作と同様の制御を行って、インクジェットヘッドのノズルからインクIを吐出する。
【0107】
一方、第2サブタンク441内のインクIの液面が下限より低い場合、診断部は、インクIの液面が下限となることを液面センサ445が検知するまで、サブ送液部430により、第1サブタンク421から第2サブタンク441へインクIを送液する。このとき、ゆっくり送液した方が、精度よく液面を下限に合わせられるので、送液ポンプ433のポンプデューティは、設定可能な最小値である20%であることが望ましい。
【0108】
(ステップS12)
診断部は、送液ポンプ433のポンプデューティを設定する。本実施の形態では、診断部は、上述したように、フィルタ劣化度を診断する場合には、ポンプデューティを100%に設定し、ポンプ劣化度を診断する場合には、ポンプデューティを20%に設定する。
【0109】
(ステップS13~S17)
診断部は、送液弁434を開き、送液ポンプ433をオンにして、設定したポンプデューティで送液ポンプ433を所定時間(例えば、5秒)駆動し、その後、送液ポンプ433をオフにして、送液弁434を閉じる。
【0110】
所定時間としては、フィルタ432及び送液ポンプ433が新品の場合において、目標高さまで液面が上昇する秒数を予め設定しておく。所定の高さは、高いほど、劣化度診断の精度が向上するが、上限のエラーを避けるため、上限までは余裕を持って設定しておく。例えば、上限の検知が30mmであれば、20mmを目標高さとする。フィルタ432及び送液ポンプ433が新品の場合において、送液速度が4mm/sであるとすると、所定時間は5秒と設定することになる。
【0111】
また、フィルタ劣化度を診断する場合には、ポンプデューティを100%に設定し、ポンプ劣化度を診断する場合には、ポンプデューティを20%に設定するので、ポンプデューティに応じて、目標高さに液面が上昇する時間を所定時間として設定する。
【0112】
(ステップS18)
診断部は、液面センサ445で第2サブタンク441内のインクIの液面高さを計測して、所定高さ(第2サブタンク441の下限)からの液面上昇幅を取得する。フィルタ432や送液ポンプ433が使用により劣化すると、送液速度が低下する。例えば、送液速度が3mm/sまで低下した場合、送液ポンプ433を5秒間駆動すると、液面上昇幅は15mmとなる。診断部は、液面上昇幅から送液ポンプ433によるインクIの送液量を求めることができる。
【0113】
(ステップS19)
診断部は、設定されたポンプデューティと求められた送液量とに基づいて、フィルタ432や送液ポンプ433の劣化度を求める。例えば、診断部は、設定されたポンプデューティと求められた送液量とに基づいて、図4A図5Dに示すグラフを参照して、フィルタ432や送液ポンプ433の劣化度を正確に診断することができる。
【0114】
以上説明したように、本実施の形態において、インク供給部40は、診断部を備える。診断部は、通常使用する駆動力に関する第1設定値(ポンプデューティ40%)とは異なる第2設定値(ポンプデューティ20%、100%)で送液ポンプ433を駆動して、第2インク貯留部440へ送液される送液量に関する数値を取得する。そして、診断部は、取得された数値に基づいて、送液ポンプ433及びフィルタ432の少なくとも一方の劣化度を診断する。
【0115】
このように構成した本実施の形態によれば、フィルタ劣化度やポンプ劣化度を診断するのに適切なポンプデューティを用いるので、フィルタ432及び送液ポンプ433の少なくとも一方の劣化度を正確に診断することができる。
【0116】
また、本実施の形態では、装置構成を変更したり、装置に新たな構成を追加したりする必要がないので簡易な構成で、フィルタ432及び送液ポンプ433の少なくとも一方の劣化度を正確に診断することができる。
【0117】
なお、本実施の形態では、第2サブタンク441内のインクIの液面高さに基づいて、送液量を求めているが、例えば、サブ送液部430に流量計を設け、流量計の計測結果(流速や流量)に基づいて、送液量を求めてもよい。この場合、送液ポンプ433を駆動する所定時間は、流量計の計測精度が十分に得られる時間に設定することが望ましい。
【0118】
<変形例1>
図7は、インク供給部40において、フィルタ診断とポンプ診断とを組み合わせて、フィルタ432及び送液ポンプ433の劣化度をより正確に診断する方法を説明するフローチャートである。図8A図8Cは、フィルタ診断とポンプ診断とを組み合わせて、フィルタ劣化度とポンプ劣化度とを算出する方法を説明する図である。図8Aは、ポンプ診断値からポンプ劣化度を算出する方法を説明する図である。図8Bは、図8Aで算出したポンプ劣化度を基に、フィルタ診断値からフィルタ劣化度を算出する方法を説明する図である。図8Cは、図8Bで算出したフィルタ劣化度を基に、ポンプ診断値からポンプ劣化度を算出する方法を説明する図である。
【0119】
上記実施の形態では、フィルタ劣化度、ポンプ劣化度を診断するのに適切なポンプデューティを用いて、フィルタ432、送液ポンプ433の劣化度を診断していた。上記実施の形態で説明したフィルタ劣化度、ポンプ劣化度の診断をベースに、以下に説明する方法により、フィルタ432及び送液ポンプ433両方の劣化度をより正確に診断することができる。
【0120】
(ステップS21)
診断部は、フィルタ劣化度を0割と仮定し、ポンプ診断値からポンプ劣化度を求める。ここで、ポンプ診断値は、図6に示すフローチャートにおいて、ポンプ診断時の液面上昇幅のことである。図6で説明した方法により、ポンプ診断値を取得する。なお、診断部は、図8Aのグラフに示す、フィルタ劣化度毎のポンプ診断値とポンプ劣化度との関係を示すデータを予め取得し、保持しておく。ポンプ劣化度は、新品時を0(0割)、交換が必要な状態を10(10割)として表す。
【0121】
ここでは、フィルタ劣化度を0割と仮定し、一例として、ポンプ診断値は12mmであるので、図8Aに示すフィルタ劣化度0割のグラフから、ポンプ劣化度が5割と求めることができる。
【0122】
(ステップS22)
診断部は、求められたポンプ劣化度に基づいて、フィルタ診断値からフィルタ劣化度を求める。ここで、フィルタ診断値は、図6に示すフローチャートにおいて、フィルタ診断時の液面上昇幅のことである。図6で説明した方法により、フィルタ診断値を取得する。なお、診断部は、図8Bのグラフに示す、ポンプ劣化度毎のフィルタ診断値とフィルタ劣化度との関係を示すデータを予め取得し、保持しておく。フィルタ劣化度は、新品時を0(0割)、交換が必要な状態を10(10割)として表す。
【0123】
ここでは、ポンプ劣化度が5割であり、一例として、フィルタ診断値は14mmであるので、図8Bにおいて、ポンプ劣化度5割のグラフから、フィルタ劣化度が3.9割と診断することができる。図8Bにおいて、ポンプ劣化度5割のグラフは図示されていないが、例えば、図8Bに示すグラフのデータからポンプ劣化度5割のグラフを作成することができる。また、ポンプ劣化度5割のグラフを作成しなくても、データからポンプ劣化度5割のときのフィルタ診断値に対応するフィルタ劣化度を求めることができる。
【0124】
(ステップS23)
診断部は、求められたフィルタ劣化度に基づいて、ポンプ診断値からポンプ劣化度を求める。
【0125】
ここでは、フィルタ劣化度が3.9割であり、ポンプ診断値は上述した12mmであるので、図8Cにおいて、フィルタ劣化度が3.9割のグラフから、ポンプ劣化度が4.3割と診断することができる。図8Cにおいて、フィルタ劣化度3.9割のグラフは図示されていないが、例えば、図8Cに示すグラフのデータからフィルタ劣化度3.9割のグラフを作成することができる。また、フィルタ劣化度3.9割のグラフを作成しなくても、データからフィルタ劣化度3.9割のときのポンプ診断値に対応するポンプ劣化度を求めることができる。なお、図8Cに示すグラフ自体は、図8Aに示すグラフと同じである。
【0126】
(ステップS24)
診断部は、フローの繰り返しが必要かどうかを判定する。例えば、ユーザーが繰返し回数を予め設定してもよいし、診断部が、フィルタ劣化度及びポンプ劣化度が収束しているかどうかを判定して、繰り返すかどうかを判定してもよい。繰り返しが必要な場合(YES)、ステップS22へ戻り、繰り返しが必要ない場合(NO)、一連のフローを終了する。
【0127】
本変形例では、フィルタの劣化度とポンプの劣化度との関係に基づいて、フィルタの劣化度及びポンプの劣化度を再度診断するので、フィルタ432及び送液ポンプ433両方の劣化度をより正確に診断することができる。更に、フローを繰り返すことにより、フィルタ432及び送液ポンプ433両方の劣化度を更に正確に診断することができる。
【0128】
<変形例2>
図9A図9Cは、インク供給部40のフィルタ432の交換を推奨する方法の一例を説明する図である。図9Aは、使用開始200日経過時点におけるフィルタ劣化度の推移と故障時期を予測する近似式とを示すグラフである。図9Bは、使用開始600日経過時点におけるフィルタ劣化度の推移と故障時期を予測する近似式とを示すグラフである。図9Cは、使用開始909日経過時点におけるフィルタ劣化度の推移と故障時期を予測する近似式とを示すグラフである。
【0129】
上記実施の形態や変形例1では、診断部は、フィルタ劣化度を求めているが、求められたフィルタ劣化度を用いて、フィルタ432の交換を推奨することができる。なお、ここでは、一例として、フィルタ432の交換を推奨するが、送液ポンプ433の交換の推奨も同様に行うことができ、ここでは、送液ポンプ433については、その説明を省略する。
【0130】
診断部は、上記実施の形態や変形例1で求めたフィルタ劣化度を、例えば、日々計測し、記録して、その傾向を把握することにより、フィルタ432の故障時期を予測し、フィルタ432の交換をユーザーに推奨することができる。
【0131】
診断部は、例えば、インクジェットプリンタ100でのジョブ終了後のシャットダウン前等に、診断モード等を実施して、フィルタ劣化度を取得する。診断モードは、インクジェットプリンタ100の稼働日毎に実施してもよいし、劣化が発生しにくいインクIを使用している場合には、実施の頻度を下げてもよい。
【0132】
フィルタ432及び送液ポンプ433を有するサブ送液部430は、色毎に設けられており、装置によっては、同色内で複数のサブ送液部430を有するものもある。全てのサブ送液部430において、それぞれ独立して診断モードを実施可能であれば、診断部は、
全てのサブ送液部430に対し、同時並行で診断モードを実施する。同時並行で診断モードを実施できないサブ送液部430がある場合には、順次、診断モードを実施するようにしてもよいし、実施日を変えて、診断モードを実施するようにしてもよい。
【0133】
診断モードの実施により得られたフィルタ劣化度は、例えば、記憶部94に記録したり、あるいは、入出力インターフェース80を介して、外部装置200の記憶装置に記録したりしておく。診断部は、以下に説明するように、記録したフィルタ劣化度の推移から、フィルタ432の故障時期を予測し、交換を推奨する。
【0134】
具体的には、診断部は、新品のフィルタ432の使用開始後の経過日数に対するフィルタ劣化度の推移に基づいて、例えば、最小二乗法により、故障時期を予測する近似式を求める。求められた近似式を用いて、フィルタ劣化度10割に達する日数を求め、当該日数からフィルタ432を使用可能な残りの日数を求める。
【0135】
例えば、図9Aに示すように、診断部は、新品のフィルタ432の使用開始200日経過時点において、経過日数に対するフィルタ劣化度の推移に基づいて、最小二乗法により、故障時期を予測する近似式(図中の破線を参照)を求める。求められた近似式を用いて、フィルタ劣化度10割に達する日数884日を求め、当該日数からフィルタ432を使用可能な残りの日数684日を求める。なお、図9A図9Cにおいて、劣化度は、新品時を0(0割)、交換が必要な状態を10(10割)として表す。
【0136】
同様に、図9Bに示すように、診断部は、新品のフィルタ432の使用開始600日経過時点において、経過日数に対するフィルタ劣化度の推移に基づいて、最小二乗法により、故障時期を予測する近似式(図中の破線を参照)を求める。求められた近似式を用いて、フィルタ劣化度10割に達する日数980日を求め、当該日数からフィルタ432を使用可能な残りの日数380日を求める。
【0137】
同様に、図9Cに示すように、診断部は、新品のフィルタ432の使用開始909日経過時点において、経過日数に対するフィルタ劣化度の推移に基づいて、最小二乗法により、故障時期を予測する近似式(図中の破線を参照)を求める。求められた近似式を用いて、フィルタ劣化度10割に達する日数959日を求め、当該日数からフィルタ432を使用可能な残りの日数50日を求める。
【0138】
診断部は、残りの日数が所定日数、例えば、50日となった時点で、フィルタ432の交換を推奨するメッセージを、例えば、操作表示部70を用いて、ユーザーに報知する。この所定日数は、少ないほど、フィルタ432を長く使用することができる。しかしながら、余裕を持って交換時間を確保すること、そして、予測した残りの日数には、ある程度の誤差が含まれることを考慮して、所定日数を設定する必要があり、ここでは、一例として、所定日数を50日とする。
【0139】
以上説明したように、診断部は、新品のフィルタ432の使用開始後の経過日数に対するフィルタ劣化度の推移に基づいて、フィルタ432の故障時期を予測し、交換時期を予測して、フィルタ432の交換推奨メッセージをユーザーに報知することができる。
【0140】
送液ポンプ433についても同様である。即ち、診断部は、新品の送液ポンプ433の使用開始後の経過日数に対するポンプ劣化度の推移に基づいて、送液ポンプ433の故障時期を予測し、交換時期を予測して、送液ポンプ433の交換推奨メッセージをユーザーに報知することができる。
【0141】
<変形例3>
図10A図10Cは、インク供給部40のフィルタ432の交換を推奨する方法の他の一例を説明する図である。図10Aは、使用開始200日経過時点におけるフィルタ劣化度の推移と交換を推奨するフィルタ劣化度の判定値とを示すグラフである。図10Bは、使用開始600日経過時点におけるフィルタ劣化度の推移と交換を推奨するフィルタ劣化度の判定値とを示すグラフである。図10Cは、使用開始858日経過時点におけるフィルタ劣化度の推移と交換を推奨するフィルタ劣化度の判定値とを示すグラフである。
【0142】
診断部は、上記変形例2に限らず、以下に説明する方法により、フィルタ432の交換を推奨してもよい。なお、ここでも、一例として、フィルタ432の交換を推奨するが、送液ポンプ433の交換の推奨も同様に行うことができ、ここでは、送液ポンプ433については、その説明を省略する。
【0143】
診断部は、上記実施の形態や変形例1で求めたフィルタ劣化度を、例えば、上述した診断モードにより、日々計測し、記録して、計測されたフィルタ劣化度とフィルタ劣化度の判定値とに基づいて、フィルタ432の交換をユーザーに推奨することができる。
【0144】
例えば、図10Aに示すように、診断部は、新品のフィルタ432の使用開始200日経過時点において、計測されたフィルタ劣化度と判定値とに基づいて、交換を推奨するか否かを判定する。
【0145】
判定値は、大きいほど、フィルタ432を長く使用することができる。しかしながら、計測されたフィルタ劣化度には、ある程度の誤差が含まれ、判定値が大きすぎると、計測されたフィルタ劣化度が当該判定値を下回っているにもかかわらず、実際には交換が必要な状態であることもあり得る。そのため、このようなことも考慮して、判定値を設定する必要があり、ここでは、一例として、判定値を9(9割)とする。
【0146】
図10Aに示す使用開始200日経過時点において、フィルタ劣化度は2.06であり、判定値9まで到達していないため、診断部は、フィルタ432の交換を推奨しない。なお、図10A図10Cにおいて、劣化度は、新品時を0(0割)、交換が必要な状態を10(10割)として表す。
【0147】
同様に、図10Bに示すように、診断部は、新品のフィルタ432の使用開始600日経過時点において、計測されたフィルタ劣化度と判定値とに基づいて、交換を推奨するか否かを判定する。使用開始600日経過時点において、フィルタ劣化度は6.63であり、判定値9まで到達していないため、診断部は、フィルタ432の交換を推奨しない。
【0148】
同様に、図10Cに示すように、診断部は、新品のフィルタ432の使用開始858日経過時点において、計測されたフィルタ劣化度と判定値とに基づいて、交換を推奨するか否かを判定する。使用開始858日経過時点において、フィルタ劣化度は9.07であり、判定値9を超えたので、診断部は、フィルタ432の交換を推奨する旨を、例えば、操作表示部70を用いて、ユーザーに報知する。
【0149】
以上説明したように、診断部は、計測されたフィルタ劣化度とその判定値とに基づいて、フィルタ432の交換推奨メッセージをユーザーに報知することができる。
【0150】
送液ポンプ433についても同様である。即ち、診断部は、計測されたポンプ劣化度とその判定値とに基づいて、送液ポンプ433の交換推奨メッセージをユーザーに報知することができる。
【0151】
<変形例4>
上記変形例2、3では、診断部は、求められたフィルタ劣化度やポンプ劣化度を用いて、フィルタ432や送液ポンプ433の故障時期を予測しているが、これらを用いて、送液ポンプ433のポンプデューティを較正するようにしてもよい。
【0152】
第1インク貯留部420から第2インク貯留部440へインクIを送液する通常の送液動作の際には、十分な送液量が得られるよう、所定のポンプデューティ(例えば、ポンプデューティ40%)が設定されている。また、ヘッドモジュール50のインクジェットヘッド内に気泡が入った場合に行うインク循環動作の際には、第2サブタンク441において十分な圧力が得られるよう、所定のポンプデューティ(例えば、ポンプデューティ40%)が設定されている。
【0153】
しかしながら、フィルタ432や送液ポンプ433が使用により劣化していき、ある程度まで劣化が進んでしまうと、インクIの送液動作が適正に行えず、また、第2サブタンク441において十分な圧力が得られず、インク循環動作が適正に行えない。そのため、送液動作やインク循環動作に通常より時間がかかったり、場合によっては、エラーが発生して、インクジェットプリンタ100が停止したりしてしまう。
【0154】
そこで、本変形例では、上述した問題の発生を防止するため、診断部は、求められたフィルタ劣化度やポンプ劣化度に基づいて、送液動作時やインク循環動作時のインク送液力が低下しているかどうかを判定する。そして、診断部は、送液動作時やインク循環動作時のインク送液力が低下している場合、求められたフィルタ劣化度やポンプ劣化度に基づいて、送液動作時やインク循環動作時のポンプデューティを適正な値に較正するようにしている。
【0155】
インク送液力が低下しているかどうかの判定及びポンプデューティの適正な値への較正は、例えば、以下のような方法で行う。
【0156】
(較正方法1)
(1-1)実験値を基に、インク送液力が低下しているかどうかを判定する判定テーブルを予め作成しておき、診断部が参照可能なように、例えば、判定テーブルを記憶部94に格納しておく。そして、診断部は、判定テーブルを参照し、求められたフィルタ劣化度やポンプ劣化度に基づいて、インク送液力が低下しているかどうかを判定し、ポンプデューティの変更が必要かどうかを判定する。診断部は、例えば、判定テーブルを参照して、インク送液力が1割低下していたら、ポンプデューティの変更が必要と判定する。
【0157】
(1-2)診断部は、現在設定されているポンプデューティから所定%(例えば、10%)ずつポンプデューティを上げていき、図6で説明したフローを用いて、液面上昇幅を取得する。診断部は、取得された液面上昇幅から、十分な送液量が得られると判定できた場合には、そのときのポンプデューティを、送液動作時やインク循環動作時の適正なポンプデューティとして設定する。
【0158】
(較正方法2)
(2-1)診断部は、フィルタ劣化度やポンプ劣化度から、送液動作時やインク循環動作時の適正なポンプデューティを算出する算出式を予め保持しておく。算出式の係数を求める際には、例えば、実験結果と劣化度との関係を機械学習することで求めてもよいし、実験結果に基づいて近似式を使って求めてもよい。
【0159】
(2-2)診断部は、求められたフィルタ劣化度やポンプ劣化度に基づいて、算出式からポンプデューティを算出し、算出されたポンプデューティを、送液動作時やインク循環動作時の適正なポンプデューティとして設定する。
【0160】
以上の方法により、送液動作時やインク循環動作時のポンプデューティを適正なポンプデューティに較正することにより、フィルタ432や送液ポンプ433が劣化しても、送液動作やインク循環動作を適正に行うことができる。
【0161】
上記実施の形態や変形例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその要旨、又は、その主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0162】
例えば、本発明に係る送液装置であるインク供給部40は、インクを送液するが、本発明に係る送液装置は、インク以外の液体を送液する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0163】
10 搬送部
20 供給部
30 排出部
40 インク供給部
50 ヘッドモジュール
70 操作表示部
80 入出力インターフェース
90 制御部
100 インクジェットプリンタ
200 外部装置
400 主インク貯留部
401 メインタンク
410 メイン送液部
411 メイン供給路
412 供給ポンプ
413 供給弁
420 第1インク貯留部
421 第1サブタンク
422 液面センサ
430 サブ送液部
431 サブ供給路
432 フィルタ
433 送液ポンプ
434 送液弁
440 第2インク貯留部
441 第2サブタンク
442 空気流路
443 背圧弁
444 背圧ポンプ
445 液面センサ
450 圧力調整部
451 第1大気開放路
452 第1大気開放弁
453 圧力調整路
454 空圧ポンプ
455 圧力調整弁
456 第2大気開放路
457 第2大気開放弁
461 ヘッド供給路
470 循環部
471 循環路
472 循環弁
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C