(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025103481
(43)【公開日】2025-07-09
(54)【発明の名称】押圧部材および保持装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20250702BHJP
【FI】
G01R31/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220903
(22)【出願日】2023-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁平 崇
(72)【発明者】
【氏名】廣中 佑哉
【テーマコード(参考)】
2G003
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AC03
2G003AD04
2G003AG01
2G003AH04
(57)【要約】
【課題】押圧対象への均一な押圧と、該押圧対象への効率的な加熱または冷却を両立することができる押圧部材および保持装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る押圧部材は、押圧対象を押圧する押圧部材であって、外部からの荷重を受ける被押圧部と、被押圧部から延び、押圧対象に当接して押圧する押圧部と、を備え、押圧部には、延伸方向に貫通する複数の貫通孔と、貫通孔の貫通方向と直交する方向に延びる孔部と、が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧対象を押圧する押圧部材であって、
外部からの荷重を受ける被押圧部と、
前記被押圧部から延び、前記押圧対象に当接して押圧する押圧部と、
を備え、
前記押圧部には、延伸方向に貫通する複数の貫通孔と、
前記貫通孔の貫通方向と交差する方向に延びる孔部と、
が形成される、
ことを特徴とする押圧部材。
【請求項2】
前記複数の貫通孔は、格子状に配列されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の押圧部材。
【請求項3】
前記孔部は、前記端面に形成されるスリットである、
ことを特徴とする請求項1に記載の押圧部材。
【請求項4】
前記孔部は、前記端面に連なる側面に形成される貫通孔である、
ことを特徴とする請求項1に記載の押圧部材。
【請求項5】
前記被押圧部から前記押圧部側にかけて延びる空間を形成する凹部を有し、
前記押圧部は、前記凹部によって空間が形成されるとともに、前記被押圧部側とは反対側に設けられる底部を有する有底筒状をなし、
前記孔部は、前記凹部を形成する壁面に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の押圧部材。
【請求項6】
フレームと、
前記フレームを転動自在に支持するベースプレートと、
前記フレームおよび前記ベースプレートの間に設けられ、押圧対象を押圧する押圧部材と、
を備え、
前記押圧部材は、
外部からの荷重を受ける被押圧部と、
前記被押圧部から延び、前記押圧対象に当接して押圧する押圧部と、
を有し、
前記押圧部には、延伸方向に貫通する複数の貫通孔と、
前記貫通孔の貫通方向と交差する方向に延びる孔部と、
が形成される、
ことを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧部材および保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路などの検査対象の導通状態検査や動作特性検査を行う際には、検査対象と検査用信号を出力する回路基板を有する信号処理装置との間の電気的な接続を図るために、複数のコンタクトプローブが用いられる。この複数のコンタクトプローブは、リッドと呼ばれる検査対象保持装置にセットされたり、ソケットに収容されたりする(例えば、特許文献1、2を参照)。この際、リッドやソケットには、検査対象をコンタクトプローブに押し付ける押圧部材が設けられる。押圧部材には、例えば、検査対象を加熱または冷却する媒体(液体または気体)を通過させる貫通孔が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-162254号公報
【特許文献2】特公平1-9735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した押圧部材に形成される貫通孔は、特許文献1、2に記載されているように、当該押圧部材の中央部に設けられている。この際、加熱または冷却の効率的を向上させるために貫通孔の大きさを大きくすると、検査対象への押圧が不安定となる場合があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、押圧対象への均一な押圧と、該押圧対象への効率的な加熱または冷却を両立することができる押圧部材および保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る押圧部材は、押圧対象を押圧する押圧部材であって、外部からの荷重を受ける被押圧部と、前記被押圧部から延び、前記押圧対象に当接して押圧する押圧部と、を備え、前記押圧部には、延伸方向に貫通する複数の貫通孔と、前記貫通孔の貫通方向と交差する方向に延びる孔部と、が形成される、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る押圧部材は、上記発明において、前記複数の貫通孔は、格子状に配列されてなる、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る押圧部材は、上記発明において、前記孔部は、前記端面に形成されるスリットである、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る押圧部材は、上記発明において、前記孔部は、前記端面に連なる側面に形成される貫通孔である、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る押圧部材は、上記発明において、前記被押圧部から前記押圧部側にかけて延びる空間を形成する凹部を有し、前記押圧部は、前記凹部によって空間が形成されるとともに、前記被押圧部側とは反対側に設けられる底部を有する有底筒状をなし、前記孔部は、前記凹部を形成する壁面に形成される、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る保持装置は、フレームと、前記フレームを転動自在に支持するベースプレートと、前記フレームおよび前記ベースプレートの間に設けられ、押圧対象を押圧する押圧部材と、を備え、前記押圧部材は、外部からの荷重を受ける被押圧部と、前記被押圧部から延び、前記押圧対象に当接して押圧する押圧部と、を有し、前記押圧部には、延伸方向に貫通する複数の貫通孔と、前記貫通孔の貫通方向と交差する方向に延びる孔部と、が形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、押圧対象への均一な押圧と、該押圧対象への効率的な加熱または冷却を両立することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態にかかるリッドの構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施の形態にかかるリッドが備える押圧部材の一部の構成を示す斜視図(その1)である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施の形態にかかるリッドが備える押圧部材の一部の構成を示す斜視図(その2)である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態の変形例1にかかるリッドが備える押圧部材の一部の構成を示す斜視図(その1)である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態の変形例1にかかるリッドが備える押圧部材の一部の構成を示す斜視図(その2)である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態の変形例2にかかるリッドが備える押圧部材の一部の構成を示す斜視図(その1)である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態の変形例2にかかるリッドが備える押圧部材の一部の構成を示す斜視図(その2)である。
【
図8】
図8は、従来の押圧部材の一部の構成を示す斜視図(その1)である。
【
図9】
図9は、従来の押圧部材の一部の構成を示す斜視図(その2)である。
【
図10】
図10は、従来の押圧部材の一部の構成を示す斜視図(その3)である。
【
図11】
図11は、従来の押圧部材の一部の構成を示す斜視図(その4)である。
【
図12】
図12は、
図2、3に示す押圧部材による押圧時の押圧部材および検査対象の変位を説明するための図である。
【
図13】
図13は、
図2、3に示す押圧部材による押圧時の検査対象の変位を説明するための図である。
【
図14】
図14は、
図4、5に示す押圧部材による押圧時の押圧部材および検査対象の変位を説明するための図である。
【
図15】
図15は、
図4、5に示す押圧部材による押圧時の検査対象の変位を説明するための図である。
【
図16】
図16は、
図6、7に示す押圧部材による押圧時の押圧部材および検査対象の変位を説明するための図である。
【
図17】
図17は、
図6、7に示す押圧部材による押圧時の検査対象の変位を説明するための図である。
【
図18】
図18は、
図8、9に示す押圧部材による押圧時の押圧部材および検査対象の変位を説明するための図である。
【
図19】
図19は、
図8、9に示す押圧部材による押圧時の検査対象の変位を説明するための図である。
【
図20】
図20は、
図10、11に示す押圧部材による押圧時の押圧部材および検査対象の変位を説明するための図である。
【
図21】
図21は、
図10、11に示す押圧部材による押圧時の検査対象の変位を説明するための図である。
【
図22】
図22は、各押圧部材における温度上昇の時間変化について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎず、従って、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態にかかるリッドの構成を示す断面図である。
図1に示すリッド1は、検査対象物である半導体集積回路100の電気特性検査を行う際に使用する装置である。リッド1は、半導体集積回路100を、プローブホルダ101によって保持されるコンタクトプローブ102に押圧するとともに、加熱または冷却するための媒体を半導体集積回路100側に送って半導体集積回路100を加熱または冷却する。コンタクトプローブ102は、回路基板から出力される検査用信号を半導体集積回路100へ伝達する。
【0016】
リッド1は、フレーム2と、ベースプレート3と、ラッチ4と、ベアリング5と、押圧部材6と、圧縮スプリング7と、トーションスプリング8と、ボルト9と、ハンドル10とを備える。
【0017】
フレーム2は、ベースプレート3に対して所定の軸のまわりに回転可能に設けられる。
ベースプレート3は、検査対象(半導体集積回路100)およびプローブホルダ101に対して固定される。
フレーム2は、トーションスプリング8によって、ベースプレート3から離れる方向に付勢されている。
トーションスプリング8は、ベースプレート3に形成される軸3aに取り付けられるとともに、一端がフレーム2に固定され、他端がベースプレート3に固定される。
【0018】
ラッチ4は、フレーム2に対して軸2aのまわりに回転可能に支持される。ラッチ4は、ベースプレート3に係止することによって、フレーム2がベースプレート3に対して圧接した状態を維持させる。ラッチ4は、圧縮スプリング7によって、ベースプレート3側に向かって回転するように付勢されている。このため、ラッチ4が転動することによって、ラッチ4とベースプレート3との係止状態が変わる。この際、ラッチ4がベースプレート3に係止されている状態では、ベースプレート3に対してフレーム2の位置が固定される。
【0019】
ベアリング5は、ボルト9の軸のまわりの回転がフレーム2や押圧部材6に伝わらないように、フレーム2およびボルト9をそれぞれ支持する。
【0020】
押圧部材6は、一端がボルト9に当接するとともに、他端が押圧対象である検査対象(半導体集積回路100)に当接している。押圧部材6は、ボルト9に当接して該ボルト9からの荷重が加わる被押圧部61と、被押圧部61のボルト9に当接する側とは反対側に延び、検査対象を押圧する押圧部62とを有する。被押圧部61は、平板状をなす。押圧部62は、被押圧部61の中央部から角柱状をなして延びる。
押圧部材6は、例えば、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)、銅、アルミニウム、アルマイト、セラミックス等を用いて形成される。なお、例えば、銅がニッケルめっきで被覆されていたり、アルミニウムとアルマイトとを混在させたり、PEEKをベースとして特性を調整したりした材料を用いてもよい。
【0021】
ボルト9は、フレーム2と螺合しており、一端が押圧部材6に当接するとともに、他端にハンドル10が設けられる。使用者は、ハンドル10を回転させることによって、ボルト9を軸のまわりに回転させる。
また、フレーム2、ボルト9およびハンドル10には、軸N方向に貫通する貫通孔1aが形成される。この軸Nは、押圧部材6の中心を通過する。
【0022】
図2および
図3は、本発明の一実施の形態にかかるリッドが備える押圧部材の一部の構成を示す斜視図である。
図2は、押圧部62における、被押圧部61に連なる側と反対側の端部を示している。
図3は、押圧部材6を4等分にカットした一部分(1/4)の構成を示す。
【0023】
押圧部材6には、被押圧部61の押圧部62側とは反対側の端面と、押圧部62の被押圧部61側とは反対側の端面とを貫通する複数(ここでは16個)の貫通孔63と、押圧部62の被押圧部61側とは反対側の端面から、該端面に連なる側面に延び、貫通孔63の貫通方向と直交する方向に延びる複数(ここでは8本)のスリット64とが形成される。複数の貫通孔63は、格子状に配列されてなる。例えば、各貫通孔63は、押圧部62の両端面において、各開口が格子状に配列されている。また、各スリット64は、交差する各貫通孔63の中心をそれぞれ通過する。また、互いに交差するスリット64同士は、互いに直交する方向に延びる。
【0024】
なお、
図3では、貫通孔63の被押圧部61側の開口において、外部に向かって拡径するテーパ状をなしている例を示しているが、この形状に限らず、例えば均一な径をなして開口するものであってもよい。また、本実施の形態では、複数の貫通孔63が格子状に配列されてなる例について説明するが、千鳥格子状や、一部間欠している格子状もしくは千鳥格子状に配列されるもの、または、押圧対象の特性に合わせて不規則に配列されるものであってもよい。また、スリット64は、互いに交差するスリット64同士が直交する必要はなく、交差するスリット64同士がなす角度は、直角以外の角度に設定することができる。さらに、スリット64の延伸方向は、貫通孔63の貫通方向と直交する方向に限らず、該貫通孔63の貫通方向と交差する方向であればよい。
【0025】
ここで、リッド1を介して検査対象(半導体集積回路100)を加熱または冷却する際には、貫通孔1aを介して媒体(液体または気体)が導入される。この際、押圧部材6では、複数の貫通孔63と、複数のスリット64が形成されているため、媒体を検査対象まで迅速かつ均一に伝達させることができる。
【0026】
また、リッド1によって検査対象をコンタクトプローブ102側に加圧する際には、押圧部62が、貫通孔63間に素材部分(肉)を有するとともに、貫通孔63の開口およびスリット64以外の部分が検査対象への当接面を形成するため、接触面積が確保され、その結果、検査対象を均一に押圧することができる。
図2に示す押圧部62は、格子状に配列される接触面を有する。このように規則的に接触面が配列されることによって、押圧対象に対して均一に加圧することが可能となる。
【0027】
以上説明した実施の形態によれば、貫通孔63およびスリット64が形成されている部分以外の素材部分(肉)の確保によって検査対象への均一な押圧を実現するとともに、貫通孔63およびスリット64の形成によって検査対象への効率的な加熱または冷却を実現することができる。
【0028】
(変形例1)
次に、本実施の形態の変形例1について、
図4および
図5を参照して説明する。
図4および
図5は、本発明の実施の形態の変形例1にかかるリッドが備える押圧部材の一部の構成を示す斜視図である。変形例1は、実施の形態にかかるリッド1において押圧部材の構成を変えた以外は、上述した実施の形態の構成と同じである。上述した実施の形態と同じ構成には、同じ符号を付す。
【0029】
変形例1にかかる押圧部材6Aは、ボルト9に当接して該ボルト9からの荷重が加わる被押圧部61Aと、被押圧部61Aのボルト9に当接する側とは反対側に延び、検査対象(半導体集積回路100)を押圧する押圧部62Aとを有する。被押圧部61Aは、平板状をなす。押圧部62Aは、被押圧部61Aの中央部から角柱状をなして延びる。
【0030】
図4は、押圧部62Aにおける、被押圧部61Aに連なる側と反対側の端部を示している。
図5は、押圧部材6Aを4等分にカットした一部分(1/4)の構成を示す。
【0031】
押圧部材6Aは、被押圧部61Aから押圧部62A側にかけて延びる空間を形成する凹部65を有する。すなわち、押圧部62Aは、凹部65によって空間と、被押圧部61A側とは反対側に設けられる底部621とが形成される有底筒状をなす。なお、凹部65は、後述する複数の第1貫通孔66のすべてに連なる空間を形成する。
また、押圧部62Aの底部621には、凹部65に連なり、かつ底部621を貫通する複数(ここでは16個)の第1貫通孔66と、凹部65を形成する壁面に設けられ、該壁面を貫通する複数(ここでは16個)の第2貫通孔67とが形成される。複数の第1貫通孔66は、格子状に配列されてなる。例えば、各第1貫通孔66は、押圧部62Aの被押圧部61A側とは反対側の端面からみて、各開口が格子状に配列されている。
第2貫通孔67は、
図4および
図5においては底部621側に位置する例を示しているが、この位置に限らず、押圧部62Aの被押圧部61Aとは反対側の端面に連なる側面に設けることができ、被押圧部61A側であってもよいし、貫通孔ごとに位置が異なるものであってもよい。
【0032】
ここで、変形例1にかかるリッドを介して検査対象を加熱または冷却する際には、貫通孔1aを介して媒体(液体または気体)が導入される。この際、押圧部材6Aでは、凹部65および複数の第1貫通孔66が形成されているため、媒体を検査対象まで迅速かつ均一に伝達させることができる。また、第2貫通孔67が形成されているため、押圧部材6Aにおける媒体の循環が促され、効率よく媒体を流通させることができる。
【0033】
また、リッドによって検査対象をコンタクトプローブ102側に加圧する際には、押圧部62Aが、第1貫通孔66間(ここでは底部621)に肉を有し、この第1貫通孔66の開口以外の部分が検査対象への当接面を形成するため、接触面積が確保され、その結果、検査対象を均一に押圧することができる。
【0034】
以上説明した変形例1によれば、凹部65および第1貫通孔66が形成されている部分以外の素材部分(肉;ここでは主に底部621)の確保によって検査対象への均一な押圧を実現するとともに、凹部65、第1貫通孔66および第2貫通孔67の形成によって検査対象への効率的な加熱または冷却を実現することができる。
【0035】
(変形例2)
次に、本実施の形態の変形例2について、
図6および
図7を参照して説明する。
図6および
図7は、本発明の実施の形態の変形例2にかかるリッドが備える押圧部材の一部の構成を示す斜視図である。変形例2は、実施の形態にかかるリッド1において押圧部材の構成を変えた以外は、上述した実施の形態の構成と同じである。上述した実施の形態と同じ構成には、同じ符号を付す。
【0036】
変形例2にかかる押圧部材6Bは、ボルト9に当接して該ボルト9からの荷重が加わる被押圧部61Bと、被押圧部61Bのボルト9に当接する側とは反対側に延び、検査対象(半導体集積回路100)を押圧する押圧部62Bとを有する。被押圧部61Bは、平板状をなす。押圧部62Bは、被押圧部61Bの中央部から角柱状をなして延びる。
【0037】
図6は、押圧部62Bにおける、被押圧部61Bに連なる側と反対側の端部を示している。
図7は、押圧部材6Bを4等分にカットした一部分(1/4)の構成を示す。
【0038】
押圧部材6Bには、貫通孔63(ここでは第1貫通孔63という)と、押圧部62Bに形成され、第1貫通孔63の貫通方向に対して直交する方向に貫通する複数(ここでは8本)の第2貫通孔68とが形成される。第2貫通孔68は、押圧部62Bの被押圧部61B側とは反対側の端面に連なる側面に形成される。
第2貫通孔68は、
図6および
図7においては押圧部62Bの被押圧部61B側とは反対側の端部側に位置する例を示しているが、この位置に限らず、被押圧部61A側であってもよいし、貫通孔ごとに位置が異なるものであってもよい。
【0039】
ここで、変形例2にかかるリッドを介して検査対象(半導体集積回路100)を加熱または冷却する際には、貫通孔1aを介して媒体(液体または気体)が導入される。この際、押圧部材6Aでは、複数の第1貫通孔63が形成されているため、媒体を検査対象(半導体集積回路100)まで迅速かつ均一に伝達させることができる。また、第2貫通孔68が形成されているため、押圧部材6Bにおける媒体の循環が促され、効率よく媒体を流通させることができる。
【0040】
また、リッドによって検査対象(半導体集積回路100)をコンタクトプローブ102側に加圧する際には、押圧部62Bが、第1貫通孔63間に肉を有するとともに、第1貫通孔63の開口以外の部分が検査対象への当接面を形成するため、検査対象(半導体集積回路100)を均一に押圧することができる。
【0041】
以上説明した変形例2によれば、凹部65および第1貫通孔66が形成されている部分以外の肉(ここでは主に底部621)の確保によって検査対象への均一な押圧を実現するとともに、第1貫通孔63および第2貫通孔68の形成によって検査対象への効率的な加熱または冷却を実現することができる。
【0042】
(解析例)
以下、実施の形態および変形例1、2と、従来例に係る押圧部材について、検査対象の押圧時の変位と、加熱時の温度上昇との解析を行った例を、
図8~
図22を参照して説明する。なお、リッドにおいて、押圧部材以外の構成要素は、同じであるものとして説明する。
【0043】
〔従来例1〕
図8および
図9は、従来の押圧部材の一部の構成を示す斜視図である。
従来例1にかかる押圧部材200は、ボルト9に当接して該ボルト9からの荷重が加わる被押圧部201と、被押圧部201のボルト9に当接する側とは反対側に延び、検査対象を押圧する押圧部202とを有する。被押圧部201は、平板状をなす。押圧部202は、被押圧部201の中央部から角柱状をなして延びる。
【0044】
図8は、押圧部における、被押圧部に連なる側と反対側の端部を示している。
図9は、押圧部材を4等分にカットした一部分(1/4)の構成を示す。押圧部材200は、被押圧部201の押圧部202側とは反対側の端面と、押圧部202の被押圧部201側とは反対側の端面とを貫通する貫通孔203と、押圧部202の被押圧部201側とは反対側の端部に設けられ、貫通孔203の貫通方向と直交する方向に延びる複数(ここでは4個)のスリット204とが形成される。貫通孔203は、押圧部202の延伸方向と直交する平面を切断面とする断面において、外縁のなす矩形の一辺の長さの半分以上の長さの直径を有する開口を形成する。各スリット204は、スリット204の延伸方向にそれぞれ延びる直線同士が、例えば、貫通孔203の中心を通過する。
【0045】
〔従来例2〕
図10および
図11は、従来の押圧部材の一部の構成を示す斜視図である。
従来例2にかかる押圧部材200Aは、ボルト9に当接して該ボルト9からの荷重が加わる被押圧部201Aと、被押圧部201Aのボルト9に当接する側とは反対側に延び、検査対象を押圧する押圧部202Aとを有する。被押圧部201Aは、平板状をなす。押圧部202Aは、被押圧部201Aの中央部から角柱状をなして延びる。
【0046】
図10は、押圧部における、被押圧部に連なる側と反対側の端部を示している。
図11は、押圧部材を4等分にカットした一部分(1/4)の構成を示す。押圧部材200は、被押圧部201Aの押圧部202A側とは反対側の端面と、押圧部202Aの被押圧部201A側とは反対側の端面とを貫通する貫通孔205と、押圧部202Aの被押圧部201A側とは反対側の端部に設けられ、貫通孔205の貫通方向と直交する方向に延びる複数(ここでは4個)のスリット206とが形成される。貫通孔205は、押圧部202Aの延伸方向と直交する平面を切断面とする断面において、外縁のなす矩形の一辺の長さの半分未満の長さの直径を有する開口を形成する。各スリット206は、スリット206の延伸方向にそれぞれ延びる直線同士が、例えば、貫通孔203の中心を通過する。
【0047】
以下、検査対象(モデル400)の押圧部材側と反対側の面を1.54MPaで加圧した際の押圧部材および検査対象の変位を解析した例について説明する。
【0048】
図12は、
図2、3に示す押圧部材による押圧時の押圧部材および検査対象の変位を説明するための図である。
図13は、
図2、3に示す押圧部材による押圧時の検査対象の変位を説明するための図である。
図12、13では、
図2、3に示す押圧部材6に対応するモデル300と、検査対象に対応するモデル400とについて、押圧時における、押圧部材の検査対象側の端部近傍と、検査対象との変位を色で示している。
【0049】
図14は、
図4、5に示す押圧部材による押圧時の押圧部材および検査対象の変位を説明するための図である。
図15は、
図4、5に示す押圧部材による押圧時の検査対象の変位を説明するための図である。
図14、15では、
図4、5に示す押圧部材6Aに対応するモデル310と、検査対象に対応するモデル400とについて、押圧時における、押圧部材の検査対象側の端部近傍と、検査対象との変位を色で示している。
【0050】
図16は、
図6、7に示す押圧部材による押圧時の押圧部材および検査対象の変位を説明するための図である。
図17は、
図6、7に示す押圧部材による押圧時の検査対象の変位を説明するための図である。
図16、17では、
図6、7に示す押圧部材6Bに対応するモデル320と、検査対象に対応するモデル400とについて、押圧時における、押圧部材の検査対象側の端部近傍と、検査対象との変位を色で示している。
【0051】
図18は、
図8、9に示す押圧部材による押圧時の押圧部材および検査対象の変位を説明するための図である。
図19は、
図8、9に示す押圧部材による押圧時の検査対象の変位を説明するための図である。
図18、19では、
図8、9に示す押圧部材200(従来例1)に対応するモデル500と、検査対象に対応するモデル400とについて、押圧時における、押圧部材の検査対象側の端部近傍と、検査対象との変位を色で示している。
【0052】
図20は、
図10、11に示す押圧部材による押圧時の押圧部材および検査対象の変位を説明するための図である。
図21は、
図10、11に示す押圧部材による押圧時の検査対象の変位を説明するための図である。
図20、21では、
図10、11に示す押圧部材200A(従来例2)に対応するモデル510と、検査対象に対応するモデル400とについて、押圧時における、押圧部材の検査対象側の端部近傍と、検査対象との変位を色で示している。
【0053】
図20、21に示すように、検査対象との接触面積が大きい押圧部202Aを用いて検査対象を押圧する場合、均一に検査対象に荷重が加わり、押圧時における押圧部材200Aおよび検査対象の変位は小さい。
【0054】
一方で、
図18、19に示すように、検査対象との接触面積が小さい押圧部202を用いて検査対象を押圧する場合、検査対象に荷重が加わる荷重が不均一となり、押圧時における押圧部材200および検査対象の変位は大きくなる。
【0055】
これに対し、
図12~
図17に示すように、本実施の形態および変形例1、2に係る押圧部材6、6A、6Bは、変位が従来例2と同等、または従来例1よりも小さくなっている。なお、
図14、15に示すモデル310(押圧部材6A)およびモデル400(検査対象)は、変位の最大値が大きくなっているが、検査対象が全体的に変位しており最大の変位と最小の変位の差が、
図19に示す検査対象の変位量よりも小さくなっている。
【0056】
これらの解析結果より、本実施の形態および変形例1、2にかかる押圧部材は、従来例1にかかる押圧部材よりも、検査対象を均一に押圧できるといえる。
【0057】
続いて、押圧部材を介して検査対象を加熱した際の熱の広がり(熱分布)を解析した例について説明する。
【0058】
図22は、各押圧部材における温度上昇の時間変化について説明するための図である。
図22は、本願発明(本実施の形態にかかる押圧部材6:
図2、3参照)と、従来例1(押圧部材200:
図8、9参照)と、従来例2(押圧部材200A:
図10、11参照)との温度変化を示している。
【0059】
ここで、貫通孔の開口が大きい押圧部202を用いて検査対象を加熱する場合(従来例1)は、貫通孔の開口が小さい押圧部202Aを用いる場合(従来例2)と比して、熱の広がりが速いことが分かる。
【0060】
これに対し、本実施の形態に係る押圧部材6は、従来例1、2よりも熱の広がりが速いことが分かる。
これらの解析結果より、本実施の形態にかかる押圧部材は、従来例1にかかる押圧部材よりも、検査対象を速く加熱できるといえる。また、変形例1、2に係る押圧部材においても、実施の形態にかかる押圧部材と同様に貫通孔等による空間とが確保されているため、従来例1にかかる押圧部材と同等以上に、検査対象を加熱できるといえる。
【0061】
以上説明した解析結果によれば、本実施の形態および変形例1、2にかかる押圧部材は、従来例1、2と比して、検査対象への均一な押圧と、該押圧対象への効率的な加熱または冷却を両立することができるといえる。
【0062】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。上述した実施の形態および変形例1、2では、貫通孔の貫通方向が互いに平行である例について説明したが、互いに異なるように貫通孔を形成してもよい。また、実施の形態において説明したリッドの構成はあくまでも一例に過ぎず、従来知られているさまざまな種類のリッドを適用することが可能である。さらに、本実施の形態や変形例にかかる押圧部材は、ソケットやハンドラ等の他の保持装置に採用してもよい。
【0063】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【0064】
以上説明したように、本発明に係る押圧部材および保持装置は、押圧対象への均一な押圧と、該押圧対象への効率的な加熱または冷却を両立するのに好適である。
【符号の説明】
【0065】
1 リッド
2 フレーム
3 ベースプレート
4 ラッチ
5 ベアリング
6、6A、6B、200、200A 押圧部材
7 圧縮スプリング
8 トーションスプリング
9 ボルト
10 ハンドル
61、61A、61B、201、201A 被押圧部
62、62A、62B、202、202A 押圧部
63 貫通孔(第1貫通孔)
64、204、206 スリット
65 凹部
66 第1貫通孔
67、68 第2貫通孔
100 半導体集積回路
101 プローブホルダ
102 コンタクトプローブ
203、205 貫通孔
621 底部