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特開2025-11521二次電池の残存価値算出装置、方法およびコンピュータプログラム
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  • 特開-二次電池の残存価値算出装置、方法およびコンピュータプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011521
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】二次電池の残存価値算出装置、方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20250117BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250117BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20250117BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20250117BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/48 P
G01R31/387
G01R31/389
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113692
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】門田 行生
(72)【発明者】
【氏名】井出 誠
(72)【発明者】
【氏名】寺田 克己
(72)【発明者】
【氏名】松井 光彦
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AA08
2G216BA22
2G216BA23
2G216BA51
2G216BA63
2G216BA71
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503DA07
5G503EA05
5G503EA08
5G503EA09
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二次利用の用途に応じた二次電池の残存価値を算出する二次電池の残存価値算出装置、方法およびコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】実施形態による二次電池の残存価値算出装置1は、一次利用が終了した二次電池の第1容量Xおよび第1内部抵抗Rの値を取得し、二次電池の二次利用の使用条件における二次電池の充放電可能時間又は充放電可能電力量を第1評価値として算出する第1評価値算出部103と、一次利用が終了した時点よりも過去の二次電池の第2容量X´および第2内部抵抗R´の値を取得し、二次電池の二次利用の使用条件における二次電池の充放電可能時間又は充放電可能電力量を第2評価値として算出する第2評価値算出部104と、第2評価値に対する第1評価値の比率Kを算出する比率算出部105と、比率Kに基づいて、二次電池の一次利用が終了した時点の残存価値を算出する残存価値算出部106と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次利用が終了した二次電池の第1容量および第1内部抵抗の値を取得し、前記二次電池の二次利用の使用条件における前記二次電池の充放電可能時間又は充放電可能電力量を第1評価値として算出する第1評価値算出部と、
一次利用が終了した時点よりも過去の前記二次電池の第2容量および第2内部抵抗の値を取得し、前記二次電池の二次利用の使用条件における前記二次電池の充放電可能時間又は充放電可能電力量を第2評価値として算出する第2評価値算出部と、
前記第1評価値と前記第2評価値とに基づいて、前記二次電池の一次利用が終了した時点の残存価値を算出する残存価値算出部と、を備えた二次電池の残存価値算出装置。
【請求項2】
前記残存価値算出部は、前記第1評価値と前記第2評価値とを比較した比較結果に基づき前記残存価値を算出する、請求項1記載の二次電池の残存価値算出装置。
【請求項3】
前記第2評価値に対する前記第1評価値の比率を算出する比率算出部を備え、
前記残存価値算出部は、前記比率に基づいて前記残存価値を算出する、請求項1記載の二次電池の残存価値算出装置。
【請求項4】
前記第2容量および前記第2内部抵抗の値は、前記二次電池が未使用の状態における容量および内部抵抗の値である、請求項1記載の二次電池の残存価値算出装置。
【請求項5】
一次利用が終了した前記二次電池を充電および放電したときの電流値および出力電圧値を測定した時系列情報を記憶した記憶部と、
前記時系列情報を用いて、前記電流値と充放電時間との積により前記二次電池の第1容量の値を算出する容量算出部と、
前記時系列情報の前記二次電池にパルス電流を印加したときの前記パルス電流の値と前記二次電池の出力電圧の値とを用いて、前記第1内部抵抗の値を算出する内部抵抗算出部と、を備えた請求項1記載の二次電池の残存価値算出装置。
【請求項6】
前記過去の時点の前記二次電池のコストを記憶した記憶部を備え、
前記残存価値算出部は、前記比率について前記二次利用において前記二次電池が寿命となるときの閾値Yを設定し、前記比率をKとし前記二次電池のコストをPとしたときに、前記残存価値をP×(K-Y)/(100-Y)として算出する、請求項3記載の二次電池の残存価値算出装置。
【請求項7】
前記比率と前記残存価値のランクとを対応づけたテーブルを記憶した記憶部を備え、
前記残存価値算出部は、前記テーブルから前記比率に応じた前記残存価値の前記ランクを算出する、請求項3記載の二次電池の残存価値算出装置。
【請求項8】
前記充放電可能時間は、前記二次電池の二次利用における充放電電力により、前記二次電池を充放電可能な時間である、請求項1記載の二次電池の残存価値算出装置。
【請求項9】
前記充放電可能電力量は、前記二次電池の二次利用における充放電可能な時間での、前記二次電池の充放電可能な電力量である、請求項1記載の二次電池の残存価値算出装置。
【請求項10】
一次利用が終了した二次電池の第1容量および第1内部抵抗の値を用いて、前記二次電池の二次利用の使用条件における前記二次電池の充放電可能時間又は充放電可能電力量を第1評価値として算出し、
一次利用が終了した時点よりも過去の前記二次電池の第2容量および第2内部抵抗の値を用いて、前記二次電池の二次利用の使用条件における前記二次電池の充放電可能時間又は充放電可能電力量を第2評価値として算出し、
前記第1評価値と前記第2評価値とに基づいて、前記二次電池の一次利用が終了した時点の残存価値を算出する、二次電池の残存価値算出方法。
【請求項11】
コンピュータに、請求項10記載の方法を実行させるコンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二次電池の残存価値算出装置、方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な電子機器に二次電池が利用されている。二次電池は使用により劣化するため、劣化が進んだ二次電池は新たな二次電池に交換される。一度使用された使用済み二次電池は初期状態より劣化してはいるものの、他の用途であればまだ使用できる可能性がある。例えば、車載用として一次利用された二次電池は、車両駆動用として十分な性能を発揮できなくなってもまだ多くの容量を使用可能である。この様な使用済み二次電池を他の用途に転用して二次利用したいとの要求があり、二次電池のリユースに関する規格等が検討されている。
【0003】
二次電池のリユースに関する規格では、リユース電池の製造者は、リユース電池の等級付けに関する明確な基準を持たなければならないとされており、電池の容量維持率と内部抵抗増加率とに関して同等のセル、電池モジュールおよび電池システムでリユース電池を組み立てるように等級付けする必要があると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-169067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、一次利用の用途で寿命と判断された二次電池が、使い方の異なる二次利用の用途ではまだ十分に利用できると言うケースがあり、このことからも用途に応じて二次電池の残存価値が変わることが予測できる。
【0006】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、二次利用の用途に応じた二次電池の残存価値を算出する二次電池の残存価値算出装置、方法およびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態による二次電池の残存価値算出装置は、一次利用が終了した二次電池の第1容量および第1内部抵抗の値を取得し、前記二次電池の二次利用の使用条件における前記二次電池の充放電可能時間又は充放電可能電力量を第1評価値として算出する第1評価値算出部と、一次利用が終了した時点よりも過去の前記二次電池の第2容量および第2内部抵抗の値を取得し、前記二次電池の二次利用の使用条件における前記二次電池の充放電可能時間又は充放電可能電力量を第2評価値として算出する第2評価値算出部と、前記第2評価値に対する前記第1評価値の比率を算出する比率算出部と、前記比率に基づいて、前記二次電池の一次利用が終了した時点の残存価値を算出する残存価値算出部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の二次電池の残存価値算出装置の一構成例を概略的に示す図である。
図2図2は、二次電池の等価回路の一例を示す図である。
図3図3は、価値算出対象の二次電池の放電可能時間の一例を概略的に示す図である。
図4図4は、一実施形態の二次電池の残存価値算出方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態の二次電池の残存価値算出装置、方法およびコンピュータプログラムについて、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、一実施形態の二次電池の残存価値算出装置の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の二次電池の残存価値算出装置1は、プロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムが記録された記憶部と、を備えた演算装置であって、ソフトウエアにより若しくはソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより種々の機能を実現することができる。
【0011】
二次電池の残存価値算出装置1は、制御部10と、記憶部12と、入力部14と、出力部16と、通信部18と、を備えている。
入力部14は、例えばマウスやキーボードやタッチパネルなどの操作手段に接続され、ユーザの操作による入力情報を取得することができる。また、入力部14は、マイクなどの音声入力手段に接続され、入力された音声入力情報を取得することができる。入力部14は、取得した入力情報を記憶部12に記録する。
【0012】
出力部16は、二次電池の残存価値算出装置1に接続された機器に対し種々の情報を出力する。出力部16は、例えばディスプレイ等の表示手段や、スピーカ等の音声出力手段を出力手段として含んでいてもよい。出力部16は、視覚的に認識される情報や聴覚的に認識される情報を出力手段に出力する。
【0013】
通信部18は、インターネットやイーサネット(登録商標)等のネットワークを介して、他の機器と通信可能に構成されている。通信部18は、外部機器から取得した情報を記憶部12に記録するとともに、記憶部12から読み出された情報を外部機器へ送信することができる。
【0014】
記憶部12は、例えば、主記憶部と、補助記憶部とを備えている。主記憶部は、例えば、ROM(read-only memory)、RAM(random-access memory)を含み得る。ROMは、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリであり、後述する制御部10が各種の処理を行う上で使用するデータ及び各種の設定値などを記憶することができる。また、RAMは、後述する制御部が各種の処理を行う上で一時的にデータを記憶しておく、いわゆるワークエリアとして利用され得る。本実施形態の主記憶部は、例えばRAMであって、メモリとして用いられる。
【0015】
補助記憶部は、制御部10を中枢とするコンピュータの非一時的なコンピュータ可読記憶媒体である。補助記憶部は、例えば、EEPROM(登録商標)(electric erasable programmable read-only memory)、HDD(hard disk drive)又はSSD(solid state drive)などである。補助記憶部は、後述する制御部10により実行されるプログラム、制御部10が各種の処理を行う上で使用するデータ、制御部10での処理によって生成されたデータ又は各種の設定値などを保存することができる。補助記憶部は、各種情報を記憶するメモリであり、例えば、制御部10の演算結果のデータや、残存価値の算出対象である二次電池に関する情報(過去の容量、過去の内部抵抗、価格、一次利用終了時の二次電池の充放電特性(電流に対する電圧の時系列情報)等)や、演算に用いられる種々のパラメータ(例えば、二次利用における電池寿命、充電終止電圧、放電終止電圧、充放電電流等の充放電条件)等を記憶している。また、記憶部12は、二次電池の残存価値算出装置1に外付けされたメモリやHDD等を含んでいてもよい。
【0016】
制御部10は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、二次電池の残存価値の算出処理を行うことができる。なお、本実施形態の二次電池の残存価値算出装置1において残存価値を算出する対象の二次電池は、二次電池セル、複数の二次電池セルを組み合わせた二次電池モジュール、および、複数の二次電池モジュールを組み合わせた二次電池システムのいずれであっても構わない。
【0017】
制御部10は、内部抵抗算出部101と、容量算出部102と、第1SOP算出部103と、第2SOP算出部104と、比率算出部105と、残存価値算出部106と、を備えている。また、制御部10は、例えば通信部18を介して時刻情報を取得する機能を備えていてもよい。制御部10は、過去の電池性能やリアルタイムに取得される情報を時刻情報と共に記憶部12に記録することができ、装置内部データを利用する際に二次電池の過去データの詳細な取得時期を考慮した電池の残存価値算出が可能となる。
【0018】
内部抵抗算出部101は、価値算出の対象である二次電池について、残存価値算出時(一次利用終了時)の内部抵抗値(第1内部抵抗値)を算出する。
図2は、二次電池の等価回路の一例を示す図である。
図2に示す等価回路は、本実施形態の二次電池の残存価値算出装置1において充放電可能時間の算出に使用する二次電池の等価回路の一例である。図2に示す二次電池の等価回路は、電池起電力をコンデンサの静電容量Cで表現し、内部抵抗をRで表現している。一定電流で二次電池を充放電した場合には、二次電池の起電力電圧Vcは一定の割合で増加、もしくは減少するものである。例えば、二次電池の放電時の出力電圧Voは、Vo=Vc-R×iにより算出できる。二次電池の充電時の出力電圧Voは、Vo=Vc+R×iにより算出できる。
【0019】
本実施形態では、例えば、二次電池の一次利用が終了した段階で、対象の二次電池を一次利用時の電子機器から取り外して、測定用の充放電装置(図示せず)と二次電池とを接続して、二次電池の容量と内部抵抗との算出に必要なデータ(例えば、一次利用終了時の二次電池の充放電特性(充放電電流に対する出力電圧の時系列情報))を計測し、記憶部12に記録されている。
【0020】
なお、価値算出対象の二次電池の容量および内部抵抗は、二次電池の一次利用における利用期間の計測情報を用いて算出されてもよい。一部の二次電池システムでは、二次電池のBMU(Battery Management Unit)等が二次電池の電圧、電流、温度等の計測情報を時系列で収集して、逐次演算から二次電池の容量および内部抵抗を算出するケースや、計測情報を上位クラウドサーバに報告してクラウドサーバで二次電池の容量および内部抵抗を算出しているケースがある。これらの場合は、制御部10が一次利用時に計測された情報を取得することにより、二次電池を一次利用時の装置から取り外し、測定用の充放電装置で計測する必要はなく、手間をかけることなく逐次電池の容量と内部抵抗を確認することが可能である。これにより、電池特性を測定することなく容易に二次電池の容量と内部抵抗を確認することができ、いつでも二次電池の残存価値が算出できる。
【0021】
本実施形態では、対象の二次電池にパルス電流を印加したときの出力電圧Voを測定した結果が時系列情報として予め記憶部12に記憶されている。内部抵抗算出部101は、記憶部12に記録されたパルス電流の値と出力電圧Voの値とを用いて、例えば上記等価回路に基づく関係式Vo=Vc-R×iより内部抵抗値Rを算出することができる。内部抵抗算出部101は、算出した内部抵抗値Rを第1SOP算出部103に供給する。
【0022】
なお、一次利用が終了したときの二次電池の内部抵抗値は、二次電池の一次利用が終了した段階で計測された値を用いて算出された内部抵抗値が記憶部12に予め記憶されていてもよく、当該二次電池が未使用である初期状態(例えば工場出荷時の状態)における内部抵抗値に基づいて算出された一次利用終了時の内部抵抗値の推定値が予め記憶部12に記憶されていてもよい。この場合には、制御部10の内部抵抗算出部101は省略され得る。
【0023】
容量算出部102は、価値算出の対象である二次電池について、残存価値算出時(一次利用終了時)の容量(第1容量)を算出する。二次電池の容量(充放電容量)は、例えば、出力電圧Voが充電終止電圧である状態(満充電状態)から、放電終止電圧である状態(完放電状態)に達するまで二次電池を放電したときに、二次電池から放電された電気量[Ah]である。二次電池の容量Xは、例えば一定の電流i[A]により満充電状態から完放電状態まで二次電池を放電したときの時間がT[h]であるとき、X[Ah]=i×T(放電電流値と放電時間との積)により算出される。なお、二次電池の容量は、二次電池を完放電状態から満充電状態まで充電するために必要な電気量[Ah]として算出されてもよい。容量算出部102は、記憶部12に記憶された一次利用終了時の二次電池の充放電特性(充放電電流に対する出力電圧の時系列情報)を用いて、価値算出対象である二次電池の一次利用終了時の容量Xを算出することができる。容量算出部102は、算出した容量Xを第1SOP算出部103に供給する。
【0024】
なお、一次利用が終了したときの二次電池の容量は、二次電池の一次利用が終了した段階で計測された値を用いて算出された容量が記憶部12に予め記憶されていてもよく、当該二次電池が未使用である初期状態(例えば工場出荷時の状態)における容量に基づいて算出された一次利用終了時の容量の推定値が予め記憶部12に記憶されていてもよい。この場合には、制御部10の容量算出部102は省略され得る。
【0025】
第1SOP算出部(第1評価値算出部)103は、価値算出対象の二次電池の現在(例えば一次利用終了時)の価値を示す第1評価値(第1SOP(state of power))として、二次利用時の使用条件(放電電流又は放電時間)における放電可能時間又は放電可能電力を算出する。第1SOP算出部103は、価値算出対象の二次電池の一次利用終了時の容量Xと、一次利用終了時の内部抵抗値Rと、二次利用時の利用条件(充放電電流値、充電終止電圧、放電終止電圧)と、を取得し、第1SOPを算出する。
【0026】
第1SOP算出部103は、例えば、価値算出対象である二次電池の充電終止電圧をV1、放電終止電圧をV2とし、二次電池の起電力電圧Vc(若しくは出力電圧Vo)が充電終止電圧V1となる満充電状態から使用用途に応じた使用条件(放電電力)で放電を開始し、出力電圧Vo(若しくは起電力電圧Vc)が放電終止電圧V2に到達するまでの放電可能時間を算出する。
【0027】
例えば、二次電池の等価回路による解析モデルの静電容量C[F]はC=di/dVcとして求めることができる。ここで、二次電池の充放電容量を1[Ah]、充電終止電圧V1を2.8[V]、放電終止電圧V2を1.8[V]と仮定すると、算出対象の二次電池の利用可能な静電容量C[F]は、下記式により算出される。
C=1[Ah]×3600[s]/(2.8[V]-1.8[V])=3600[F]
【0028】
第1SOP算出部103は、二次電池の電池容量X[Ah]と、充電終止電圧V1と、放電終止電圧V2とを記憶部12から取得し、等価回路における静電容量C[F]を算出することができる。
【0029】
第1SOP算出部103は、算出した静電容量C[F]と内部抵抗値R[mΩ]とによる等価回路に対応する解析モデルを用いて、二次利用時の放電電流(放電電力)で二次電池を放電したときの放電可能時間をシミュレーションにより算出する。なお、本実施形態では、二次電池の二次利用時の放電電流の値は一定値である。すなわち、第1SOP算出部103は、静電容量C[F]と内部抵抗値R[mΩ]とから、等価回路に対応する解析モデルを用い、対象の二次電池が満充電の状態で二次利用時の使用条件として一定の電流(若しくは一定の電力)を出力(放電)するときの出力電圧Voをシミュレーションし、放電開始から出力電圧Voが放電終止電圧V2になるまでの時間を放電可能時間(第1SOP)とする。なお、第1SOP算出部103は、算出した静電容量C[F]と内部抵抗値R[mΩ]とによる等価回路に対応する解析モデルを用いて、第1SOPとして二次利用時の充電電流(充電電力)で二次電池を充電したときの充電可能時間をシミュレーションにより算出してもよい。第1SOP算出部103は、算出した第1SOPの値を時刻情報と関連付けて記憶部12に記録する。
【0030】
第2SOP算出部(第2評価値算出部)104は、価値算出対象の二次電池の過去の価値を示す第2評価値(第2SOP)として、過去の時点での二次電池の容量(第2容量)および内部抵抗(第2内部抵抗)の値を用いて、上記第1SOPの算出に用いた二次利用時の使用条件における放電可能時間又は放電可能電力を算出する。本実施形態では、第2SOP算出部104は、価値算出対象の二次電池の初期(例えば工場出荷時点の未使用状態)の容量X´と内部抵抗R´との値を記憶部12から取得して、これらの値を用いて第2SOPを算出している。
【0031】
第2SOPの算出方法は、上述の第1SOPの算出方法と同様である。すなわち、第2SOP算出部104は、二次電池の電池容量X´[Ah]と、充電終止電圧V1と、放電終止電圧V2とを記憶部12から取得し、等価回路における静電容量C[F]を算出することができる。
【0032】
第2SOP算出部104は、算出した静電容量C´[F]と内部抵抗値R´[mΩ]とによる等価回路に対応する解析モデルを用いて、二次利用時の放電電流で二次電池を放電したときの放電可能時間をシミュレーションにより算出する。なお、本実施形態では、二次電池の二次利用時の放電電流の値は一定値である。すなわち、第2SOP算出部104は、静電容量C[F]と内部抵抗値R[mΩ]とから、対象の二次電池が満充電の状態で一定の電流(若しくは一定の電力)を出力するときの出力電圧Voをシミュレーションし、放電開始から出力電圧Voが放電終止電圧V2になるまでの時間を放電可能時間(第2SOP)とする。なお、第2SOP算出部104は、算出した静電容量C´[F]と内部抵抗値R´[mΩ]とによる等価回路に対応する解析モデルを用いて、第2SOPとして二次利用時の充電電流(充電電力)で二次電池を充電したときの充電可能時間をシミュレーションにより算出してもよい。第2SOP算出部104は、算出した第2SOPの値を記憶部12に記録する。
【0033】
図3は、価値算出対象の二次電池の放電可能時間の一例を概略的に示す図である。
図3には、価値算出対象の二次電池の初期特性(例えば工場出荷時の特性)および一次利用終了時の特性として、所定の放電電流で放電したときの放電可能時間の一例を示している。
【0034】
二次電池の特性は、使用期間や使用条件によって容量は減少し、内部抵抗は増加する傾向を示す。このため、過去の性能に対して価値算出対象電池の放電可能時間は短くなり、過去の二次電池に対して性能低下を判断する指標として充放電可能時間の変化を利用することができる。このことから、本実施形態では、所定の充放電電力に対して充放電可能な時間を評価指標としている。図3に示す例では、二次電池の初期特性における放電可能時間は3281[s]であり、二次電池の一次利用終了時の特性における放電可能時間は3164[s]であった。
【0035】
なお、上述のSOP算出の説明では、二次電池の簡易的な等価回路モデルを使用した例を説明したが、等価回路モデルは詳細な電池モデルであっても良く、特に等価回路モデルを限定するものではない。例えば、図4に示す例では、二次電池の内部抵抗が一定値であるものとしシミュレーションされているが、内部抵抗値が使用により変化するようにシミュレーションが行われてもよい。
【0036】
また、第1SOP算出部103および第2SOP算出部104は、所定の時間に対して充放電可能な電力(充放電可能電力量)を第1評価値および第2評価値として算出してもよい。これは、例えば、二次電池が満充電の状態から所定時間(例えば10秒間)に放電可能な電力量(最大電力)若しくは二次電池が完放電の状態から所定時間(例えば10秒間)に充電可能な電力量(最大電力)を指標とするもので、放電時には二次電池の電池容量が減少または内部抵抗が増加することで所定時間における放電電力は小さくなるといった特性を示す。第1SOP算出部103および第2SOP算出部104は、二次電池の容量X、X´と内部抵抗R、R´との値を用いて、算出した静電容量C、C´[F]と内部抵抗値R、R´[mΩ]とによる等価回路に対応する解析モデルを用いて、満充電時の二次電池を所定時間放電したときの放電可能電力をSOPとしてシミュレーションにより算出することができる。
【0037】
比率算出部105は、記憶部12から(若しくは第1SOP算出部103および第2SOP算出部104から)第1SOPと第2SOPとの値を取得し、第1SOPと第2SOPとの比率K(=第1SOP/第2SOP)[%]を算出する。図4に示した例を用いた比率Kは下記となる。
【0038】
K=3164[s]/3281[s]×100=96.4[%]
比率算出部105は、算出した比率Kを記憶部12に記録するとともに、残存価値算出部106に提供する。
【0039】
残存価値算出部106は、第1SOPの値と第2SOPとの値に基づいて、価値算出対象の二次電池の残存価値を算出する。残存価値算出部106は、例えば比率算出部105により算出された比率Kを用いて、価値算出対象の二次電池の残存価値を算出する。残存価値算出部106は、例えば、比率Kについて二次電池が寿命となる閾値を設定し、この閾値と、過去の二次電池のコストとから、一次利用終了時の二次電池の価値を算出する。
【0040】
例えば、二次電池の寿命を充放電可能時間の比率Kの閾値Yが70[%]以下となった時点とし、過去(例えば工場出荷時)の電池コストを1000円と設定すると、この価値算出対象の二次電池の残存価値は、下記のように算出することができる。
残存価値=1000円×(96.4-70)/(100-70)=880円
【0041】
なお、残存価値算出部106は、二次電池の残存価値を比率Kに応じたランクとして算出してもよい。例えば比率Kが70[%]以下の場合は電池寿命と設定し、比率Kが100[%]~90[%]は過去相当(初期状態相当)のAランク、90[%]~80[%]は使用半ばのBランク、80[%]~70[%]は寿命末期のCランクとランク付け設定してもよい。残存価値算出部106は、このランクを基準に、新品の二次電池のコスト1000円に対して、Aランクは800円、Bランクは500円、Cランクは300円といった残存価値を算出してもよい。この場合、例えば比率Kとランクとの対応を示すテーブルが記憶部12に記憶され、残存価値算出部106は、記憶部12のテーブルから比率Kに対応するランクを取得することができる。
【0042】
ここでは二次電池のランクを3段階にわけた例を説明したが、ランク付けの段階数はこれに制限されるものではなく、必要に応じてランク数を増減させればよい。ランクにより残存価値を算出する方法は、二次電池の残存性能に応じた詳細な残存価値を算出する必要が無く、実用的な方法である。また、二次電池の価値がランク数に分類されるため、二次電池を二次利用するユーザにとって二次電池の選択が容易となる。
【0043】
また、残存価値算出部106は、例えば、第1SOPの値と第2SOPの値とを比較した比較結果(例えば第1SOPと第2SOPとの差等)に基づいて、価値算出対象の二次電池の残存価値を算出してもよい。この場合、残存価値算出部106は、例えば第1SOP値と第2SOP値との比較結果とランクとの対応を示すテーブルが記憶部12に記憶され、残存価値算出部106は、記憶部12のテーブルから比較結果に対応するランクを取得することができる。なお、残存価値算出部106において比率Kを用いた残存価値の算出が行われない場合には、比率算出部105は省略され、残存価値算出部106には記憶部12から(若しくは第1SOP算出部103および第2SOP算出部104から)第1SOP値と第2SOP値とが供給される。
【0044】
なお、記憶部12には、第1SOP値と第2SOP値とに対応する二次電池の残存価値のランクを示すテーブルが記録されていてもよい。また、記憶部12に記憶されたテーブルは、二次電池の種類毎に用意されてもよく、二次利用の用途毎に用意されてもよく、一次利用と二次利用との組み合わせ毎に用意されてもよい。
【0045】
なお、本実施形態の二次電池の残存価値算出装置は、二次電池システムのBMUや上位制御装置に組み込まれていてもよい。二次電池の残存価値算出装置が取得したデータは、BMU等の二次電池に付随する装置の内部に保存されていても良いし、クラウドサーバのような外部の情報収集装置に電池特性データとして記憶されていても良い。これにより、BMU等の装置や外部の情報収集装置のデータを確認することで、二次電池の残存価値を算出可能となり、容易に二次電池の残存価値を確認することができる。
【0046】
次に、一実施形態の二次電池の残存価値算出方法の一例について説明する。
図4は、一実施形態の二次電池の残存価値算出方法の一例を説明するためのフローチャートである。
まず、内部抵抗算出部101と容量算出部102とが、価値算出対象の二次電池について、一次利用終了時の二次電池の容量と内部抵抗との値を算出する。本実施形態では、内部抵抗算出部101と容量算出部102とは、記憶部12に記録された一次利用終了時の二次電池の充放電特性の時系列情報を用いて、二次電池の容量と内部抵抗との値を算出する。(ステップS1)
【0047】
続いて、第1SOP算出部103は、ステップS1で算出された二次電池の容量と内部抵抗との値を用いて、二次利用の使用用途に対応する使用条件(充放電電力)に基づいて、一次利用終了時の二次電池の充放電可能時間(第1SOP)を算出する。(ステップS2)
【0048】
続いて、第2SOP算出部104は、二次電池の過去(例えば工場出荷時)の容量と内部抵抗との値を記憶部12から取得し、二次利用の使用用途に対応する使用条件(充放電電力)に基づいて、過去の二次電池の充放電可能時間(第2SOP)を算出する。(ステップS3)
なお、第1SOPと第2SOPとを算出する順序は上記に限定されるものではなく、第2SOPを算出した後に第1SOPが算出されてもよい。
【0049】
比率算出部105は、過去の二次電池の充放電可能時間(第2SOP)に対する、一次利用終了時の充放電可能時間(第1SOP)の比率K(=(第1SOP/第2SOP)×100)[%]を演算する。(ステップS4)
【0050】
残存価値算出部106は、例えば、二次利用における二次電池の寿命を充放電可能時間の比率Y(=(寿命である充放電可能時間/初期の充放電可能時間)×100)[%]により設定し、ステップS4で算出された比率K[%]と過去の二次電池のコストPとから、二次電池の残存価値(P×(K-Y)/(100-Y))を算出する。(ステップS5)
なお、残存価値算出部106は、第1SOPの値と第2SOP値とに基づいて、価値算出対象の二次電池の残存価値を算出すればよく、残存価値の算出方法は上記に限定されるものではない。残存価値算出部106は、第1SOP値と第2SOP値とを比較した比較結果(例えば第1SOPと第2SOPとの差等)に基づいて、二次電池の残存価値を算出してもよい。その場合には、比率Kを算出するステップS4は省略することができる。
【0051】
残存価値算出部106は、算出した残存価値を記憶部12に記録し、たとえば出力部16によりモニタに表示させたり、通信部18を介して外部装置に提供することができる。
なお、残存価値算出部106は、上述のように、二次電池の残存価値を比率Kに応じたランクとして算出してもよい。
【0052】
以上のことから、本実施形態の二次電池の残存価値算出装置、方法およびコンピュータプログラムによれば、電池状態推定技術の一つであるSOP推定技術を用いて、二次電池の容量および内部抵抗と、使用用途に応じた充放電電力(若しくは充放電電流、充放電時間)とから、充放電可能電力若しくは充放電可能時間をSOPとして算出し、過去の二次電池のSOPに対する一次利用終了時の二次電池のSOPの比率を計算することで、価値算出対象電池の残存価値を算出することができる。
【0053】
上記のように、本実施形態の二次電池の残存価値算出装置、方法およびコンピュータプログラムによれば、二次電池の残存価値を算出することで、リユースされる二次電池の残存価値算出および等級付けについて、明確な基準を提示することが可能となる。
【0054】
すなわち、本実施形態によれば、二次利用の用途に応じた二次電池の残存価値を算出する二次電池の残存価値算出装置、方法およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【0055】
本実施形態に係るプログラムは、電子機器に記憶された状態で譲渡されてよいし、電子機器に記憶されていない状態で譲渡されてもよい。後者の場合は、プログラムは、ネットワークを介して譲渡されてよいし、記憶媒体に記憶された状態で譲渡されてもよい。記憶媒体は、非一時的な有形の媒体である。記憶媒体は、コンピュータ可読媒体である。記憶媒体は、CD-ROM、メモリカード等のプログラムを記憶可能かつコンピュータで読取可能な媒体であればよく、その形態は問わない。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…残存価値算出装置、10…制御部、12…記憶部、14…入力部、16…出力部、18…通信部、101…内部抵抗算出部、102…容量算出部、103…第1評価値(第1SOP)算出部、104…第2評価値(第2SOP)算出部、105…比率算出部、106…残存価値算出部

図1
図2
図3
図4