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▶ 戸田建設株式会社の特許一覧

<図1>
  • 特開-定着板及び免震構造 図1
  • 特開-定着板及び免震構造 図2
  • 特開-定着板及び免震構造 図3
  • 特開-定着板及び免震構造 図4
  • 特開-定着板及び免震構造 図5
  • 特開-定着板及び免震構造 図6
  • 特開-定着板及び免震構造 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011647
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】定着板及び免震構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
E04H9/02 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113875
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉江 一馬
(72)【発明者】
【氏名】中村 匠
(72)【発明者】
【氏名】稲井 慎介
(72)【発明者】
【氏名】白井 遼
(72)【発明者】
【氏名】恒成 恭宏
(72)【発明者】
【氏名】植 敦紀
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB11
2E139AC19
2E139AC26
2E139CA00
2E139CC02
(57)【要約】
【課題】免震構造の高さを抑える。
【解決手段】定着板24は、中央に孔41の開いた平板状であり、複数のアンカーボルトの先端がそれぞれ固定される複数のボルト固定部(貫通孔42)が、孔41の周りに環状に配置されている。定着板24は、所定の幅を有する円環板状であってもよい。複数のボルト固定部(貫通孔42)は、周方向に略等間隔に配置されてもよい。ボルト固定部は、アンカーボルトが挿通される貫通孔42であってもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に孔の開いた平板状であり、
複数のアンカーボルトの先端がそれぞれ固定される複数のボルト固定部が、前記孔の周りに環状に配置されている、
定着板。
【請求項2】
前記定着板は、所定の幅を有する円環板状である、
請求項1の定着板。
【請求項3】
前記複数のボルト固定部は、周方向に略等間隔に配置されている、
請求項2の定着板。
【請求項4】
前記ボルト固定部は、前記アンカーボルトが挿通される貫通孔である、
請求項1乃至3いずれかの定着板。
【請求項5】
下部基礎構造と、
前記下部基礎構造の上に固定された免震装置と、
前記免震装置の上に固定された上部基礎構造と
を備え、
前記下部基礎構造又は前記上部基礎構造は、
コンクリート体と、
前記コンクリート体のなかに埋設された請求項1乃至3いずれかの定着板と
を有し、
前記免震装置は、前記定着板に固定された複数のアンカーボルトを介して、前記コンクリート体に固定されている、
免震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の耐震安全性確保のための免震構造、及び、そこで使用される定着板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、下部基礎構造と、その上に固定された免震装置と、更にその上に固定された上部基礎構造とを有する免震構造を開示している。
免震装置を下部又は上部基礎構造にアンカーボルトを介して固定する場合、基礎構造のコンクリートがアンカーボルトに生じる引張力によってコーン状破壊する可能性がある。これを防ぐための方法は、いくつかあるが、もっとも基本的な方法は、アンカーボルトを長くして、コーン状破壊するときの破壊面の面積を増やすことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-155928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アンカーボルトを長くすると、その分、基礎構造を厚くしなければならないので、免震層全体の高さが高くなる。免震層の高さが高いと、それを地中に埋め込むために掘削しなければならない土砂の量が多くなるなど、コストが高くなる。
この発明は、免震層の高さを抑えることにより、このような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
定着板は、中央に孔の開いた平板状であり、複数のアンカーボルトの先端がそれぞれ固定される複数のボルト固定部が、前記孔の周りに環状に配置されている。
免震構造は、下部基礎構造と、前記下部基礎構造の上に固定された免震装置と、前記免震装置の上に固定された上部基礎構造とを有する。前記下部基礎構造又は上部基礎構造は、コンクリート体と、前記コンクリート体のなかに埋設された前記定着板とを有する。前記免震装置は、前記定着板に固定された複数のアンカーボルトを介して、前記コンクリート体に固定されている。
【発明の効果】
【0006】
前記定着板及び前記免震構造によれば、アンカーボルトに生じる引張力によりコーン状破壊するときの破壊面の面積を大きくすることができるので、その分、アンカーボルトを短くすることができ、免震層の高さを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】免震構造の一例を示す側面図。
図2】下部基礎構造の一例を示す側面視断面図。
図3】定着板の一例を示す平面図。
図4】コーン状破壊の一例を示す平面図。
図5】前記コーン状破壊を示す側面視断面図。
図6】比較例におけるコーン状破壊の一例を示す平面図。
図7】前記比較例における前記コーン状破壊を示す側面視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照して、免震構造10について説明する。
免震構造10は、例えば、下部基礎構造12と、免震装置13と、上部基礎構造14とを有する。
下部基礎構造12は、例えば地盤や基礎柱などの上(+Z方向)に固定されている。
免震装置13は、複数のアンカーボルト15を介して、下部基礎構造12の上(+Z方向)に固定されている。
上部基礎構造14は、同様に、複数のアンカーボルトを介して、免震装置13の上(+Z方向)に固定されている。上部基礎構造14は、建築物を支持している。
地震などにより下部基礎構造12が振動すると、免震装置13が振動を吸収し、上部基礎構造14に伝達される振動を抑えることにより、上部基礎構造14に支持された建築物の揺れを抑える。
【0009】
図2を参照して、下部基礎構造12について説明する。
下部基礎構造12は、例えば、コンクリート体21と、定着板24とを有する。
コンクリート体21には、アンカーボルト15を挿入するためのボルト穴22が複数設けられている。コンクリート体21は、例えばプレキャストコンクリートであってもよいし、現場打ちコンクリートであってもよい。ボルト穴22は、アンカーボルト15と螺合する雌ねじを有してもよいし、コンクリート体21のなかに埋設されたインサートであってもよい。
定着板24は、コンクリート体21のなかに埋設されている。
コンクリート体21のなかには、定着板24以外に、コンクリート体21を補強するための鉄筋などが埋設されていてもよい。
【0010】
図3を参照して、定着板24について説明する。
定着板24は、例えば鋼製の平板であり、中央に孔41が開いている。定着板24は、例えば所定の幅を有する円環板状である。すなわち、外周が円形であり、円形の孔41が外周と同心に設けられている。これにより、免震構造10に働く力の向きにかかわらず、ほぼ一定の強度を発揮することができる。しかし、定着板24の外周及び内周は、円形に限らず、例えば矩形など他の形状であってもよい。
また、定着板24には、アンカーボルト15の先端を固定するための貫通孔42が複数設けられている。貫通孔42は、ボルト固定部の一例である。貫通孔42は、例えば、アンカーボルト15が挿通される貫通孔であり、貫通孔42に挿通されたアンカーボルト15の先端にナットを螺合させることにより、アンカーボルト15を定着板24に固定する。貫通孔42は、例えば円周方向に略等間隔に配置されている。すなわち、定着板24の中心からほぼ等距離の位置に、定着板24の中心から見た角度がほぼ等しい間隔で配置されている。
【0011】
図4及び5を参照して、下部基礎構造12のコーン状破壊について説明する。
例えば、図1に矢印で示したように、下部基礎構造12に-X方向へ向かう剪断力81(図1参照。)が働いたとすると、上部基礎構造14には、それとは逆に+X方向へ向かう剪断力82(図1参照。)が働く。これにより、-X側にあるアンカーボルト15には引き抜き力83が働き、+X側にあるアンカーボルト15には逆に押し込み力が働く。
もっとも大きい引き抜き力83が働くのは、もっとも-X側にあるアンカーボルト15であるが、アンカーボルト15の先端が定着板24に固定されているので、コーン状破壊が起こるのは、定着板24の外周から延びる円錐側面状の破壊面92と、孔41の内周から延びる逆円錐側面状の破壊面93とに囲まれた範囲91である。
【0012】
図6及び7を参照して、比較例の下部基礎構造12Zについて説明する。
下部基礎構造12Zは、定着板24の代わりに、それぞれのアンカーボルト15が別々に固定される複数の定着板24Zが、コンクリート体21のなかに埋設されている。
比較例において、もっとも大きい引き抜き力83がもっとも-X側にアンカーボルト15に働き、定着板24Zの外周から延びる円錐側面状の破壊面94に囲まれた範囲91Zがコーン状破壊する。
もっとも-X側にあるアンカーボルト15の周囲でコーン状破壊が発生すると、そのアンカーボルト15は働かなくなるので、次に-X側にあるアンカーボルト15に力が集中し、コーン状破壊が連鎖的に発生する。
このため、想定される最大荷重に耐えられるよう、破壊面94の面積を大きくする必要がある。
【0013】
これに対し、免震構造10では、アンカーボルト15の長さが比較例と同じだとすると、破壊面92及び93の総面積が、破壊面94よりも大きい。したがって、同じ荷重に耐えるために必要なアンカーボルト15の長さは、比較例よりも短くなる。
アンカーボルト15が短くてよいので、その分、下部基礎構造12の高さを抑えることができ、したがって、免震構造10全体の高さが抑えられる。
【0014】
定着板24が所定の幅を有する円環板状であれば、免震構造10に働く力の向きにかかわらず、ほぼ同じ強度を発揮することができる。
貫通孔42などのボルト固定部が周方向に略等間隔に配置されていれば、やはり、免震構造10に働く力の向きにかかわらず、ほぼ同じ強度を発揮することができる。
上部基礎構造14についての説明は省略するが、下部基礎構造12と同様の構成であってもよい。
【0015】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【0016】
建物の耐震安全性確保のために免震構造が採用される場合が多い。そのため、免震装置接合部の工夫による合理化は、コスト等に与える影響が大きい。
一般的に免震層の計画において、免震層高さ、掘削土量を削減するために免震下基礎の高さを抑えることが望ましい。しかし、免震基礎の高さは、引張コーン破壊の検討で決まるアンカーボルト長により決定する場合が多く、相応の高さが必要となる。
そこで、アンカーボルトの引張コーン状破壊に対する耐力を高め、アンカーボルト長を短くし、免震基礎高さを抑えることにより、掘削土量を低減する。
一般に、アンカーボルトの引張コーンに対する検討において、アンカーボルトの必要長さは、免震装置水平変形時に平面保持の仮定が成り立つと仮定して、最も引張力の大きくなる最外端のボルト1本を検討して決定する。
アンカーボルト先端の定着板をリング型の一体型とすることにより、引張側のボルト一体で引張力に抵抗する。これにより、最外端のボルト1本の検討だけでアンカーボルト長さが決まることを防ぐ。なお、リング型定着板は、免震基礎をPCa化する際に、アンカーボルトのガイドとして使用することもできる。
最も引張力の大きい最外端の検討のみでアンカーボルトの必要長さが決まる場合に比べて、引張側のボルト一体で引張力に負担することができるので、アンカーボルトの必要長さを短くすることができ、免震基礎高さを抑えることができる。それに伴い、免震層高さ及び掘削土量の削減による合理化が図れるので、費用削減及び環境負荷低減につながる。
【符号の説明】
【0017】
10 免震構造、12,12Z 下部基礎構造、13 免震装置、14 上部基礎構造、15 アンカーボルト、21 コンクリート体、22 ボルト穴、24,24Z 定着板、41 孔、42 貫通孔、81,82 剪断力、83 引き抜き力、91,91Z 範囲、92~94 破壊面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7