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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025011736
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】一括保護システム
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/28 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
H02H3/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114017
(22)【出願日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】後藤 清
(57)【要約】
【課題】交流ケーブルを使用した長距離送電において、コストを抑えた一括保護システムを提供する。
【解決手段】一つの実施形態によれば、一括保護システムは、第1の昇圧変圧器における二次側及び所内負荷設備側の電流値と、第2の昇圧変圧器における一次側、二次側及び所内負荷設備側の電流値とを取得する第2の取得部と、第2の取得部が取得した電流値に基づいて電気事故の発生を検知する第2の検知部と、第2の検知部が電気事故を検知した際に、遮断指令を出力する第2の制御部とを備える第2の一括保護装置を含む。さらに、第2の検知部は、第1の昇圧変圧器と、第2の昇圧変圧器との間の送電線路へ流入する電流と、流出する電流との差分によって送電線路における電気事故を検知する。さらに、第2の検知部は、第2の昇圧変圧器における一次側巻線を通過する電流と、二次側巻線を通過する電流との比率によって第2の昇圧変圧器における電気事故を検知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の昇圧変圧器における二次側及び所内負荷設備側の電流値と、第2の昇圧変圧器における一次側、二次側及び所内負荷設備側の電流値とを取得する第2の取得部と、
前記第2の取得部が取得した電流値に基づいて電気事故の発生を検知する第2の検知部と、
前記第2の検知部が電気事故を検知した際に、遮断指令を出力する第2の制御部とを備える、
第2の一括保護装置を含み、
前記第2の検知部は、
前記第1の昇圧変圧器と、前記第2の昇圧変圧器との間の送電線路へ流入する電流値と流出する電流値との差分によって、前記第1の昇圧変圧器と、前記第2の昇圧変圧器との間の前記送電線路における電気事故を検知し、
前記第2の昇圧変圧器における一次側巻線を通過する電流値及び二次側巻線を通過する電流値の比率によって、前記第2の昇圧変圧器における電気事故を検知する、
一括保護システム。
【請求項2】
前記第1の昇圧変圧器における二次側及び所内負荷設備側の電流値と、前記第2の昇圧変圧器における一次側、二次側及び所内負荷設備側の電流値とを取得する第1の取得部と、
前記第1の取得部が取得した電流値に基づいて、電気事故の発生を検知する第1の検知部と、
前記第1の検知部が電気事故を検知した際に、遮断指令を出力する第1の制御部とを備える、
第1の一括保護装置をさらに含み、
前記第1の検知部は、
前記第1の昇圧変圧器と、前記第2の昇圧変圧器との間の送電線路へ流入する電流値と流出する電流値との差分によって、前記第1の昇圧変圧器と、前記第2の昇圧変圧器との間の前記送電線路における電気事故を検知する、
請求項1に記載の一括保護システム。
【請求項3】
前記一括保護システムは、
前記第2の昇圧変圧器における二次側及び所内負荷設備側の電流値と、第3の昇圧変圧器における一次側、二次側及び所内負荷設備側の電流値とを取得する第3の取得部と、
前記第3の取得部が取得した電流値に基づいて電気事故の発生を検知する第3の検知部と、
前記第3の検知部が電気事故を検知した際に、遮断指令を出力する第3の制御部とを備える、
第3の一括保護装置をさらに含み、
前記第3の検知部は、
前記第2の昇圧変圧器と、前記第3の昇圧変圧器との間の送電線路へ流入する電流値と流出する電流値との差分によって、前記第2の昇圧変圧器と、前記第3の昇圧変圧器との間の前記送電線路における電気事故を検知し、
前記第3の昇圧変圧器における一次側巻線を通過する電流値及び二次側巻線を通過する電流値の比率によって、前記第3の昇圧変圧器における電気事故を検知する、
請求項2に記載の一括保護システム。
【請求項4】
前記第2の制御部は、前記第2の昇圧変圧器における二次側の遮断器を開放する遮断指令を出力する、請求項1に記載の一括保護システム。
【請求項5】
前記第1の制御部は、前記第1の昇圧変圧器における二次側の遮断器を開放する遮断指令を出力する、請求項2に記載の一括保護システム。
【請求項6】
前記第3の制御部は、前記第3の昇圧変圧器における二次側の遮断器を開放する遮断指令を出力する、請求項3に記載の一括保護システム。
【請求項7】
前記第2の昇圧変圧器における一次側の電流値は、直接接地方式により接地された前記第2の昇圧変圧器の接地点における電流値を含む、請求項1に記載の一括保護システム。
【請求項8】
前記第3の昇圧変圧器における一次側の電流値は、直接接地方式により接地された前記第3の昇圧変圧器の接地点における電流値を含む、請求項3に記載の一括保護システム。
【請求項9】
前記第2の昇圧変圧器と前記送電線路との間には、遮断器が設けられていない、請求項1に記載の一括保護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一括保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電における送変電設備の特徴は、洋上風車から系統連系点までの送電距離が長いことが挙げられる。特に、風車の容量が大容量になる場合は、例えば、超高圧(275kV等)での系統接続となり、陸上での送電距離も長距離になるケースが多い。
【0003】
また、近年は、景観維持等の観点から、架空送電ではなく、地中送電が行われる場合があり、この場合、送電には裸線ではなく被覆により絶縁された送電ケーブルが用いられる。
【0004】
超高圧による系統接続において送電距離が長距離となる場合、送電ケーブルは、154kVケーブルが選択されることがある。送電ケーブルの充電電流は、距離及び電圧に比例して大きくなるため、これによる電圧変動や無効電力の影響を考慮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-154321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
送電ケーブルの距離が長距離になるほど充電電流の影響は大きくなり、保護装置の設置等、対策を講じるためのコスト増が想定される。一方、再生エネルギー発電の普及には、設備コストの低減化が望まれており、洋上風力発電においても各事業者は設備コストの低減化に取り組んでいる。
【0007】
そこで、本発明の実施形態は、交流ケーブルを使用した長距離送電において、コストを抑えた一括保護システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施形態によれば、一括保護システムは、第1の昇圧変圧器における二次側及び所内負荷設備側の電流値と、第2の昇圧変圧器における一次側、二次側及び所内負荷設備側の電流値とを取得する第2の取得部と、第2の取得部が取得した電流値に基づいて電気事故の発生を検知する第2の検知部と、第2の検知部が電気事故を検知した際に、遮断指令を出力する第2の制御部とを備える第2の一括保護装置を含む。さらに、第2の検知部は、第1の昇圧変圧器と、第2の昇圧変圧器との間の送電線路へ流入する電流と、流出する電流との差分によって送電線路における電気事故を検知する。さらに、第2の検知部は、第2の昇圧変圧器における一次側巻線を通過する電流と、二次側巻線を通過する電流との比率によって第2の昇圧変圧器における電気事故を検知する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態における発変電系統の概略構成図である。
図2】比較例における発変電系統の概略構成図である。
図3】電気事故発生時における遮断器開放箇所の例である。
図4】第1実施形態における第1の一括保護装置のブロック図の例である。
図5】第1実施形態における第2の一括保護装置のブロック図の例である。
図6】第1実施形態における第2の一括保護装置の電気事故検知時のフローチャートの例である。
図7】第2実施形態における発変電系統の概略構成図である。
図8】第2実施形態における第3の一括保護装置のブロック図の例である。
図9】第3実施形態における発変電系統の概略構成図である。
図10】第4実施形態における第1の一括保護装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、以下の説明では、3巻変圧器において、変圧器の低圧側となる一次巻線側を一次側と呼び、高圧側となる二次巻線側を二次側と呼ぶ。また、所内負荷設備側に電力を供給する三次巻線側については、所内負荷設備側と呼ぶ。また、以下では、昇圧変圧器について、変圧比を66kV/154kVのように表す。この場合、昇圧変圧器の一次側巻線の電圧は、66kVであることを表し、二次側巻線の電圧は、154kVであることを表す。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における発変電系統の概略構成図である。
【0012】
図1の発変電系統100では、洋上風車50は、一次変電所70及び二次変電所80に接続され、それぞれの変電所にて発電電力が昇圧(2段階昇圧)された後、電力系統に接続される。また、一次変電所70と、二次変電所80との間は、地中に埋設された154kV電力ケーブル12によって接続される。長距離ケーブル送電の場合、154kV電力ケーブル12における静電容量が非常に大きくなり、進み充電電流の低減のため、一次変電所70及び二次変電所80に分路リアクトル13及び14が設けられる。一次変電所70は、揚陸変電所とも呼ばれ、二次変電所80は、連系変電所とも呼ばれる。また、154kV電力ケーブル12は、送電線路の例である。
【0013】
説明のためこの例では、発変電系統100は、洋上風車50、一次変電所70、154kV電力ケーブル12、二次変電所80及びこれらの区間に含まれるケーブルや発変電設備を指す。
【0014】
図1の発変電系統100では、洋上風車50によって発電された電力の66kVの電力は一次変電所70で154kVに昇圧される。また、昇圧された電力は、154kV電力ケーブル12を介して二次変電所80に送電され、二次変電所80で275kVに昇圧される。275kVに昇圧された電力は、電力会社等が保有する電力系統に系統接続される。また、一次変電所70と、二次変電所80との間には、一括保護システム1が構築され、この一括保護システム1は、保護対象区間における変圧器や電力ケーブルの電気事故等、設備の異常の発生を検知した際は、遮断器(CB:Circuit Breaker)を開放し、発変電系統100から洋上風車50等を切り離す。これにより、発変電系統100は電力系統から切り離され、電気事故の波及を防止することができる。66kV/154kV昇圧変圧器10は、第1の昇圧変圧器の例であり、154kV/275kV昇圧変圧器11は第2の昇圧変圧器の例である。
【0015】
この構成では、一括保護システム1は、二次変電所80における154kV/275kV昇圧変圧器11の二次側の遮断器25または、一次変電所70における66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側の遮断器24を開放することで、課電された154kV電力ケーブル12の進み充電電流を開放する。
【0016】
本実施形態において、一括保護システム1が対象とする保護対象区間は、一次変電所70に設置される66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側から、二次変電所80に設置される154kV/275kV昇圧変圧器11の二次側の遮断器25までとして説明する。この保護対象区間には、2箇所の変電所間を結ぶ154kV電力ケーブル12や、上述した154kV/275kV昇圧変圧器11のほか、二次変電所80における所内負荷設備等、種々の設備が含まれる。
【0017】
この例では、直列に接続された複数の洋上風車50が互いに並列に接続され、洋上風車50の群を形成している。洋上風車50によって発電された電力は、海底ケーブルを通じて、一次変電所70に送電される。
【0018】
一次変電所70は、洋上風車50で発電された電力を受電する。受電した電力は、電圧階級が電圧66kVから154kVに昇圧されて、二次変電所80に送電される。一次変電所70に設置される主な設備は、66kV/154kV昇圧変圧器10、分路リアクトル13、第1の一括保護装置2、遮断器22、遮断器23、遮断器24及び断路器26である。遮断器24は、66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側に設置される。一次変電所70は、分路リアクトル13と、電路との間に分路リアクトル13用の遮断器が設けられずに、断路器26が設けられる構成となっている。
【0019】
この例では、66kV/154kV昇圧変圧器10は3巻線変圧器であり、電圧階級を66kVから154kVに昇圧する二次巻線を有するほか、一次変電所70の所内負荷設備へ電力を供給する電圧に変圧する三次巻線を有する。また、66kV/154kV昇圧変圧器10は、中性点接地方式のうち、抵抗接地方式が採用され、中性点接地抵抗器(NGR:Neutral Grounding Resistor)が接続されている。また、一次変電所70には、66kV/154kV昇圧変圧器10の一次側の遮断器23から、二次側の遮断器24までを保護対象区間とする66kV/154kV変圧器保護装置(不図示)が設置される。
【0020】
また、遮断器22及び23は、洋上風車50の群を発変電系統100から切り離す。また、遮断器24は、154kV電力ケーブル12から洋上風車50等を切り離す。
【0021】
第1の一括保護装置2は、各測定箇所における電流値及び電圧値から電気事故の発生を検知し、遮断器24の開放を行う。各測定箇所における電流値の取得は、変流器(CT:Current Transformer)によって大電流から小電流に変換された値が用いられ、各測定箇所における電圧値の取得は、計器用変圧器(VT:Voltage Transformer)によって高電圧から低電圧に変換された値が用いられる。また、これらの値の取得は、例えば、計器用変成器(VCT:Voltage and Current Transformer)等を用いてもよい。
【0022】
本実施形態では、第1の一括保護装置2は、66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側に設けられた変流器31及び計器用変圧器41から電流値及び電圧値を取得し、同変圧器の所内負荷設備側に設けられた変流器30及び計器用変圧器40から電流値及び電圧値を取得する。また、第1の一括保護装置2は、分路リアクトル13と、電路との間に設けられた変流器32から電流値を取得する。
【0023】
また、第1の一括保護装置2は、後述する第2の一括保護装置3から、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側の電流値等を取得する。第1の一括保護装置2は、66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側の電流値と、所内負荷設備側の電流値と、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側の電流値等とを比較し、電流の漏れがないかを検知する。この例では、第1の一括保護装置2は、66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側の電流値として、変流器31及び32の値を用いる。また、第1の一括保護装置2は、所内負荷設備側を流れる電流値として変流器30の値を用いる。また、第1の一括保護装置2は、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側を流れる電流値として、第2の一括保護装置3が取得した変流器33、34等の値を用いる。
【0024】
第1の一括保護装置2は、154kV電力ケーブル12へ流入する電流値及び154kV電力ケーブルから流出する電流値の差分によって、電流の漏れを検知することができる。例えば、154kV電力ケーブル12に流入する電流と、流出する電流との和が0にならない場合、電流の漏れが発生していることが分かる。例えば、この電流の漏れは、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側の変流器34で検出することができる。このように、第1の一括保護装置2は、電流差動リレーの機能を有し、154kV電力ケーブル12における電気事故を検知する。
【0025】
また、第1の一括保護装置2と、第2の一括保護装置3とは、それぞれ、通信装置4及び通信装置5を介して、ネットワーク6によって接続されており、常時、ネットワーク6を介して各装置が取得した電流値や電圧値等の測定情報を送受信している。このネットワーク6は、例えば、有線回線、無線回線等の電力保安用通信網に加え、一般公衆回線を用いることができる。第1の一括保護装置2及び第2の一括保護装置3は、電流差動リレーの機能を実現するため、例えば、PCM(Pulse Code Modulation)方式を用いることができる。
【0026】
第1の一括保護装置2は、電流の漏れがあった場合、遮断器24を切り離す遮断指令を出力する。このように、電気事故が発生した場合、洋上風車50等は、電力系統から切り離される。
【0027】
二次変電所80は、154kV電力ケーブル12を介して一次変電所70から送電された電力を受電する。受電した電力は、電圧階級が電圧154kVから275kVに昇圧され、電力系統に接続される。二次変電所80に設置される主な設備は、154kV/275kV昇圧変圧器11、分路リアクトル14、第2の一括保護装置3、遮断器25、断路器27及び断路器28である。遮断器25は、154kV/275kV昇圧変圧器11の二次側に設置される。二次変電所80は、分路リアクトル14と電路との間の遮断器が設けられずに、断路器27が設けられる構成となっている。加えて、二次変電所80は、154kV/275kV昇圧変圧器11と、154kV電力ケーブル12との間の遮断器が設けられずに、断路器27が設けられる構成となっている。
【0028】
この例では、154kV/275kV昇圧変圧器11は3巻変圧器であり、電圧階級を154kVから275kVに昇圧する二次巻線を有するほか、二次変電所80の所内負荷設備へ電力を供給する電圧に変圧する三次巻線を有する。また、154kV/275kV昇圧変圧器11は、中性点接地方式が採用され、抵抗接地方式ではなく、直接接地方式が採用されている。これにより、第2の一括保護装置3は、抵抗接地方式と比較して、サージ電流の流入時等、電気事故発生時の地絡電流をより確実に検出することができる。
【0029】
154kV/275kV昇圧変圧器11の二次側には、電力系統と、二次変電所80の設備とを切り離す遮断器25が設けられている。
【0030】
第2の一括保護装置3は、各測定箇所における電流値及び電圧値から電気事故の発生を検知し、遮断器25の開放を行う。第2の一括保護装置3は、各測定箇所における電流値及び電圧値について、変流器及び計器用変圧器を用いて取得する。また、第2の一括保護装置3は、これらの値について、例えば、計器用変成器を用いて取得してもよい。
【0031】
本実施形態では、第2の一括保護装置3は、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側に設けられた変流器34から電流値を取得し、計器用変圧器42から電圧値を取得する。また、第2の一括保護装置3は、同変圧器の一次側に設けられた変流器38及び所内負荷設備側に設けられた変流器37から電流値を取得し、計器用変圧器43から電圧値を取得する。また、第2の一括保護装置3は、154kV/275kV昇圧変圧器11の二次側に設けられた変流器35及び36から電流値を取得し、計器用変圧器44から電圧値を取得する。また、第2の一括保護装置3は、分路リアクトル14と、電路との間に設けられた変流器33から電流値を取得する。
【0032】
また、第2の一括保護装置3は、ネットワーク6を介して第1の一括保護装置2が取得した電流値や電圧値等の測定情報を受信する。
【0033】
また、第2の一括保護装置3は、第1の一括保護装置2と同様に、154kV電力ケーブル12へ流入する電流値及び154kV電力ケーブル12から流出する電流値の差分によって、電流の漏れがないかを検知するデジタル電流差動リレーの機能を備える。この例では、電流の漏れは、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側を流れる電流、所内負荷設備側を流れる電流、154kV/275kV昇圧変圧器11の二次側を流れる電流、66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側を流れる電流及び所内負荷設備側を流れる電流の値に基づいて求められる。例えば、第2の一括保護装置3は、デジタル電流差動リレーの機能によって、154kV電力ケーブル12の地絡事故を検知する。
【0034】
この例では、第2の一括保護装置3は、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側の電流値として、変流器33、34及び38の値を用いる。また、第2の一括保護装置3は、所内設備側を流れる電流値として、変流器37の値を用いる。また、第2の一括保護装置3は、154kV/275kV昇圧変圧器11の二次側の電流値として、変流器35及び36の値を用いる。また、第1の一括保護装置2は、66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側の電流値として、第1の一括保護装置2が取得した変流器31、32の値を用いる。また、第2の一括保護装置3は、66kV/154kV昇圧変圧器10の所内負荷設備側を流れる電流値として、変流器30の値を用いる。
【0035】
154kV/275kV昇圧変圧器11の変圧比の関係により、一次側及び二次側における電流値は異なる。そのため、第2の一括保護装置3は、例えば、計器用変圧器42、43及び44等で取得した電圧値から、その電圧値に対応する電流値に換算し、電流の漏れがあるかを検知する。同様に、第2の一括保護装置3は、第1の一括保護装置2から取得する電流値についても、計器用変圧器41によって検出された電圧値に対応する電流値に換算し、電流の漏れがあるか検知する。
【0036】
また、第2の一括保護装置3は、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次巻線を通過する電流値及び二次巻線を通過する電流値を比較して、この値の比率が一定以上となった際に電気事故の発生を検知する比率差動リレーの機能を有する。第2の一括保護装置3は、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次巻線を通過する電流値及び二次巻線を通過する電流値の比率が一定以上であった場合に、154kV/275kV昇圧変圧器11における電気事故を検知し、遮断器25を切り離す遮断指令を出力する。例えば、第2の一括保護装置3は、比率差動リレーの機能によって、154kV/275kV昇圧変圧器11の短絡事故を検知する。
【0037】
図2は、比較例における発変電系統の概略構成図である。
【0038】
比較例における発変電系統100では、第1の一括保護装置2及び第2の一括保護装置3は設けられていない。代わりに、66kV/154kV昇圧変圧器10、154kV電力ケーブル12、154kV/275kV昇圧変圧器11、分路リアクトル13及び分路リアクトル14それぞれに保護装置が備えられる。比較例の構成では、電気事故の発生の際に、それぞれの保護装置の保護対象区間に応じて、発変電系統100を遮断でき、電気事故の波及を抑えることができる反面、遮断器や、保護装置の数が増加するため、大幅なコスト増となる。比較例では、154kV電力ケーブル12から二次変電所80の設備を切り離すために、二次変電所80には、154kV電力ケーブル12と、154kV/275kV昇圧変圧器11との間に遮断器48が設けられる。また、分路リアクトル13及び分路リアクトル14は、それぞれ電路との間に遮断器46及び遮断器47が必要になる。
【0039】
また、上述の通り、長距離ケーブル送電によって、154kV電力ケーブル12における静電容量が非常に大きくなる場合、遮断器48等に進み充電電流の開放能力を確保するため、分路リアクトル13及び14は、容量を大きくすることが必要となる。一方で、電路に備えられる遮断器48は、進み充電電流を低減するため、上位電圧機種の遮断器が採用される場合がある。例えば、二次変電所80に設けられる154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側の遮断器48は、300kVガス遮断器(GCB)が採用され、コスト面で高額となる。
【0040】
比較例では、66kV/154kV昇圧変圧器10における保護装置(66kV/154kV変圧器保護装置とも呼ぶ)の保護対象区間は、66kV/154kV昇圧変圧器10の一次側の遮断器23から二次側の遮断器24までとなる。また、154kV電力ケーブル12における保護装置(送電線保護装置とも呼ぶ)の保護対象区間は、154kV電力ケーブル12の一次側の遮断器24から二次側の遮断器48までとなる。また、154kV/275kV昇圧変圧器11における保護装置(154kV/275kV変圧器保護装置とも呼ぶ)の保護対象区間は、154kV/275kV昇圧変圧器11における一次側の遮断器48から二次側の遮断器25までとなる。また、分路リアクトル13及び14における保護装置の保護対象区間は、それぞれ、遮断器46から接地点(不図示)、遮断器47から接地点(不図示)までである。
【0041】
図3は、電気事故発生時における遮断器開放箇所の例である。
【0042】
図3Aは、154kV電力ケーブル12で地絡事故が発生した際、第1実施形態における一括保護システム1が遮断器を開放する箇所を説明する図の例であり、図3Bは、154kV電力ケーブル12で電気事故発が発生した際、比較例における送電線保護装置が遮断器を開放する箇所を説明する図の例である。
【0043】
図3Aでは、154kV電力ケーブル12で地絡事故が発生した際、第2の一括保護装置3が事故を検知する例について説明する。図3Aでは、154kV/275kV昇圧変圧器11は、接地方式として、直接接地方式を採用しているため、地絡電流は、この接地点から大地に流れ込む。第2の一括保護装置3は、この電流を変流器34によって検知し、154kV電力ケーブル12へ流入する電流及び流出する電流の差分がゼロにならないことによって、電気事故を検知する。第2の一括保護装置3は、154kV/275kV昇圧変圧器11の二次側に設置された遮断器25を開放する。
【0044】
一方、図3Bでは、154kV電力ケーブル12で地絡事故が発生した際、送電線保護装置が事故を検知した場合の例について説明する。図3Bでは、154kV電力ケーブル12を保護する送電線保護装置は、地絡事故発生時の大電流を検知し、154kV電力ケーブル12へ流入する電流及び流出する電流の差分がゼロにならないことによって、電気事故を検知する。送電線保護装置は、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側に設置された遮断器48を開放する。
【0045】
図4は、第1実施形態における第1の一括保護装置のブロック図の例である。
【0046】
本実施形態では、第1の一括保護装置2は、第1の取得部110、第1の検知部120、第1の制御部130、第1の記憶部140及び第1の通信部150を備える。
【0047】
また、第1の一括保護装置2は、例えばPC(Personal Computer)に第1の一括保護装置2用のプログラムをインストールすることで実現できる。第1の一括保護装置2内のCPU(Central Processing Unit)が、第1の一括保護装置2のプログラムを実行することにより、第1の取得部110、第1の検知部120、第1の制御部130、第1の記憶部140及び第1の通信部150の機能が実現される。第1の記憶部140は、取得した電流値及び電圧値を記憶する領域を備え、例えば、HDD(Hard Disc Drive)上の補助記憶装置上に構築される。
【0048】
第1の取得部110は、66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側に設けられた変流器31、32及び計器用変圧器41から電流値及び電圧値を取得し、同変圧器の所内負荷設備側に設けられた変流器30及び計器用変圧器40から電流値及び電圧値を取得する。また、取得した値は、第1の記憶部140に格納される。第1の記憶部140に格納された電流値及び電圧値は、例えば、ログ解析等に用いられる。
【0049】
第1の検知部120は、第1の取得部110が取得した値に基づいて、電気事故の発生を検知する。この例では、電流の漏れは、66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側及び所内負荷設備側を流れる電流と、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側、二次側及び所内負荷設備側を流れる電流とに基づいて検知される。例えば、第1の検知部120は、これらの値から、154kV電力ケーブル12へ流入する電流値及び流出する電流値の差分を計算し、差分がゼロでない場合、電流の漏れがあると検知する。
【0050】
第1の制御部130は、第1の検知部120が電気事故の発生を検知した場合、遮断器24を開放する遮断指令を出力する。遮断器24は、遮断指令によって解放される。
【0051】
第1の通信部150は、ネットワーク6を介して、後述する第2の一括保護装置3の第2の通信部と接続される。第1の取得部110は、第1の通信部150を介して、第2の一括保護装置3から154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側の電流値及び電圧値、二次側の電流値及び電圧値に加え、所内負荷設備側の電流値及び電圧値を取得する。また、第1の取得部110が取得した一次変電所に関する電流値及び電圧値は、第1の通信部150を介して、第2の一括保護装置3の第2の通信部に伝送され、第2の一括保護装置3における電気事故発生の検知に用いられる。
【0052】
図5は、第1実施形態における第2の一括保護装置のブロック図の例である。
【0053】
本実施形態では、第2の一括保護装置3は、第2の取得部210、第2の検知部220、第2の制御部230、第2の記憶部240及び第2の通信部250を備える。
【0054】
第2の一括保護装置3は、第1の一括保護装置2と同様に、例えばPCに第2の一括保護装置3用のプログラムをインストールすることで実現できる。第2の一括保護装置3内のCPUが、第2の一括保護装置3のプログラムを実行することにより、第2の取得部210、第2の検知部220、第2の制御部230、第2の記憶部240及び第2の通信部250の機能が実現される。第2の記憶部240は、取得した電流値及び電圧値を記憶する領域を備え、例えば、HDD上の補助記憶装置上に構築される。
【0055】
第2の取得部210は、上述した変流器33~37及び計器用変圧器42~44より、電流値及び電圧値を取得する。取得した値は、第2の記憶部240に格納される。第2の記憶部240に格納された電流値及び電圧値は、例えば、ログ解析等に用いられる。
【0056】
第2の検知部220は、第2の取得部210が取得した値に基づいて、電気事故の発生を検知する。この例では、電流の漏れは、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側を流れる電流、所内設備側を流れる電流、二次側を流れる電流に加え、66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側を流れる電流及び所内負荷設備側を流れる電流の値に基づいて検知される。例えば、第2の検知部220は、これらの値から、154kV電力ケーブル12へ流入する電流値及び流出する電流値の差分を計算し、差分がゼロでない場合、電流の漏れがあると検知する。また、第2の検知部220は154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側巻線を通過する電流値及び二次側巻線を通過する電流値を比較して、この比率が一定以上となった際に電気事故の発生を検知する。
【0057】
第2の制御部230は、第2の検知部220が電気事故の発生を検知した場合、遮断器25を開放する遮断指令を出力する。遮断器25は、遮断指令によって解放される。
【0058】
第2の通信部250は、ネットワーク6を介して、第1の一括保護装置2の第1の通信部150と接続される。第2の取得部210は、第1の通信部150を介して、第1の一括保護装置2から66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側の電流値及び電圧値に加え、所内負荷設備側の電流値及び電圧値を取得する。また、第2の取得部210が取得した二次変電所80に関する電流値及び電圧値は、第2の通信部250を介して、第1の一括保護装置2の第1の通信部150に伝送され、第1の一括保護装置2における電気事故発生の検知に用いられる。
【0059】
図6は、第1実施形態における第2の一括保護装置の電気事故検知時のフローチャートの例である。
【0060】
本フローチャートでは、第1実施形態における第2の一括保護装置3が電気事故を検出する際のフローチャートについて説明するが、第1の一括保護装置2については同様のフローにより電流の漏れ検知を行っているため、説明を省略する。また、このフローチャートは、周期的に繰り返し実行される。
【0061】
ステップS1では、第2の取得部210は、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側に設けられた変流器33、34及び38から電流値を取得し、計器用変圧器42から電圧値を取得する。また、第2の取得部210は、同変圧器の所内負荷設備側に設けられた変流器37から電流値を取得し、計器用変圧器43から電圧値を取得する。また、第2の取得部210は、154kV/275kV昇圧変圧器11の二次側に設けられた変流器35、36から電流値を取得し、計器用変圧器44から電圧値を取得する。また、第2の取得部210は、第1の一括保護装置2より、66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側における電流値及び電圧値を取得し、所内負荷設備側における電流値及び電圧値を取得する。ステップS2では、第2の検知部220は、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側を流れる電流、所内設備側を流れる電流、二次側を流れる電流に加え、66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側を流れる電流及び所内負荷設備側を流れる電流の値から、275kV電力ケーブル12へ流入する電流値及び流出する電流値の差分を計算し、電流の漏れを検知する。
【0062】
電流値の比較の結果、電流の漏れがない場合(ステップS2のNO)、ステップS3では、第2の検知部220は、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側巻線を通過する電流値及び二次側巻線を通過する電流値を比較する。第2の検知部220は、一次側巻線を通過する電流値と、二次側巻線を通過する電流値との比率の算出に当たり、閾値を用いることが考えられる。例えば、この閾値は、第2の記憶部240にあらかじめ格納し、第2の一括保護装置3用プログラムの実行時に、メモリにロードしてもよい。電流値の比較の結果、比率が閾値以上でない場合(ステップS3のNO)、第1の一括保護装置2は、処理を終了する。電流値の比較の結果、比率が閾値以上であった場合(ステップS3のYES)、ステップS4では、第2の検知部220は、電気事故が発生したと検知する。例えば、第2の検知部220は、154kV/275kV昇圧変圧器11で短絡事故が発生したことを検知する。
【0063】
ステップS5では、第2の制御部230は、遮断器25を開放する遮断指令を出力し、処理を終了する。また、ステップS2において、第2の検知部220による電流値の比較の結果、電流の漏れがあった場合(ステップS2のYES)、ステップS4に移行し、第2の検知部220は、電気事故が発生したと検知する。例えば、第2の検知部220は、154kV電力ケーブル12で電気事故が発生したことを検知する。電気事故の検知により、上述と同様にステップS5では、第2の制御部230は、遮断器25を開放する遮断指令を出力し、処理を終了する。
【0064】
本実施形態では、154kV電力ケーブル12を用いて地中送電する例を取り上げたが、一括保護システム1は、架空送電の場合にも適用することができる。架空送電の場合は、裸線を用いるため、分路リアクトル13及び14は容量を少量化したり、または設置を省略することが可能である。
【0065】
また、本実施形態では、説明のため1系統の送電系統のみを取り上げたが、一括保護システム1は、2系統や3系統といった送電系統が多重化された場合にも適用することができる。例えば、一括保護システム1は、増設した系統ごとに採用される。
【0066】
また、本実施形態では、第1の一括保護装置2は、遮断指令として、遮断器24を開放する例を取り上げたが、遮断器25を開放する構成としてもよい。この場合、遮断指令は、例えば、ネットワーク6を介して伝送される。
【0067】
また、二次変電所80は、変流器38を備えない構成としてもよい。変流器38を備えないことで、二次変電所80の構成をさらに簡略化することができる。第2の一括保護装置3は変流器38の値を取得しないため、154kV/275kV昇圧変圧器11で発生した短絡事故か、または154kV電力ケーブル12で発生した地絡事故かを区別を行わない。第2の一括保護装置3は、発変電系統100における電流の流入及び流出の有無に加え、154kV/275kV昇圧変圧器11の一次側巻線を通過する電流値及び二次側巻線を通過する電流値の比較に基づいて、発変電系統100で発生した電気事故として検知する。電気事故の発生時は、保守作業員が障害調査を行い、事故の発生箇所を特定する。
【0068】
本実施形態によれば、一括保護システム1は、2段階昇圧を行う発変電系統100において、保護対象区間を広く定義し、その区間での電気事故を一括して監視を行うことで大幅な設備導入コスト減が可能となる。例えば、一括保護システム1を用いることで、一次変電所70及び二次変電所80は、遮断器46、47及び48を設けずに、断路器26、27及び28を設置する構成とすることができ、コスト減が可能となる。保護対象区間を広く設けることは、電気事故の波及範囲が広がるという懸念があるが、一括保護システム1によって、発変電系統100で発生した電気事故を二次変電所80までの範囲で抑えることができ、電力系統への波及を防止することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、二次変電所80は、154kV/275kV昇圧変圧器11の接地方式を直接接地方式とすることで、第2の一括保護装置3での地絡電流の検知について確実性を向上させることができる。
【0070】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態における発変電系統の概略構成図である。
【0071】
本実施形態では、洋上風車50によって発電された電力は、一次変電所70、二次変電所80及び三次変電所90それぞれで昇圧され、電力系統に系統接続される。
【0072】
発電された電力は、一次変電所70では、66kVから154kVに昇圧され、二次変電所80では、154kVから275kVに昇圧され、三次変電所90では、275kVから500kVに昇圧される。275kV/500kV昇圧変圧器51は、第3の昇圧変圧器の例である。
【0073】
三次変電所90は、275kV電力ケーブル62を介して二次変電所80から送電された電力を受電し、電圧階級を電圧275kVから500kVに昇圧して、電力系統に接続する。三次変電所90に設置される主な設備は、275kV/500kV昇圧変圧器51、分路リアクトル52、第3の一括保護装置7、遮断器59、断路器55及び断路器56である。遮断器59は、275kV/500kV昇圧変圧器51の二次側に設置される。三次変電所90は、分路リアクトル52と電路との間の分路リアクトル52用の遮断器が設けられずに、断路器55が設けられる構成となっている。加えて、三次変電所90は、275kV/500kV昇圧変圧器51と、275kV電力ケーブル62との間の遮断器が設けられずに、断路器56が設けられる構成となっている。
【0074】
また、275kV/500kV昇圧変圧器51は、一次巻線側の接地点に直接接地方式が採用されている。275kV電力ケーブル62で地絡事故が発生した際、地絡電流は、この接地点から大地に流れ込む。第3の一括保護装置7は、この電流を変流器63によって検知する。
【0075】
この例では、説明のため、発変電系統100は、洋上風車50、一次変電所70、154kV電力ケーブル12、二次変電所80、275kV電力ケーブル62、三次変電所90及びこれらの区間に含まれるケーブルや発変電設備を指す。
【0076】
一次変電所70及び二次変電所80の主な構成は、第1実施形態と同様であるため、差異のみ説明する。二次変電所80には、通信装置9が設けられており、第2の一括保護装置3と、第3の一括保護装置7とは、それぞれ、通信装置8及び通信装置9を介して、ネットワーク6によって接続されており、常時、ネットワーク6を介して各装置が取得した電流値及び電圧値等の測定情報を送受信している。
【0077】
また、二次変電所80の二次側には、分路リアクトル65が設けられ、分路リアクトル65と電路の間には、断路器66が設けられる。第2の一括保護装置3は、変流器67によって、この分路リアクトル65を流れる電流値を取得する。
【0078】
本実施形態では、一次変電所70と、二次変電所80と、三次変電所90との間には、一括保護システム1が構築され、この一括保護システム1は、保護対象区間における変圧器や電力ケーブルの電気事故等、異常の発生を検知した際は、遮断器24、25または59を開放し、発変電系統100から、洋上風車50等を切り離す。これにより、発変電系統100は電力系統から切り離され、電気事故の波及を防止することができる。
【0079】
この構成では、第3の一括保護装置7は、三次変電所90における275kV/500kV昇圧変圧器51の二次側の遮断器59を開放することで、課電された275kV電力ケーブル62の進み充電電流を開放する。
【0080】
本実施形態では、第1の一括保護装置2及び第2の一括保護装置3は、遮断指令として、それぞれ遮断器24及び25を開放する例を取り上げたが、遮断器59を開放する構成としてもよい。この場合、遮断指令は、例えば、ネットワーク6を介して伝送される。
【0081】
本実施形態では、第3の一括保護装置7は、275kV/500kV昇圧変圧器51の一次側に備えられた計器用変圧器54から電圧値を取得し、変流器39、53及び63から電流値を取得する。また、第3の一括保護装置7は、同変圧器の所内負荷設備側に備えられた変流器57から電流値を取得し、計器用変圧器58から電圧値を取得する。また、第3の一括保護装置7は、275kV/500kV昇圧変圧器51の二次側に備えられた変流器60、64から電流値を取得し、計器用変圧器61から電圧値を取得する。
【0082】
また、第3の一括保護装置7は、第2の一括保護装置3と同様に、275kV電力ケーブル62へ流入する電流値及び流出する電流値の差分によって、電流の漏れがないかを検知するデジタル電流差動リレーの機能を備える。この例では、電流の漏れは、275kV/500kV昇圧変圧器51の一次側を流れる電流、所内設備側を流れる電流、275kV/500kV昇圧変圧器51の二次側を流れる電流の値、154kV/275kV昇圧変圧器11の二次側を流れる電流及び所内負荷設備側を流れる電流の値に基づいて求められる。
【0083】
本実施形態において、一括保護システム1が対象とする保護対象区間は、一次変電所70に設置される66kV/154kV昇圧変圧器10の二次側から、三次変電所90に設置される275kV/500kV昇圧変圧器51の二次側の遮断器59までとなる。この保護対象区間には、一次変電所70と、二次変電所80との間を結ぶ154kV電力ケーブル12、二次変電所80と、三次変電所90との間を結ぶ275kV電力ケーブル62、154kV/275kV昇圧変圧器11及び275kV/500kV昇圧変圧器51のほか、二次変電所80や三次変電所90における所内負荷設備等、種々の設備が含まれる。
【0084】
図8は、第2実施形態における第3の一括保護装置のブロック図の例である。
【0085】
本実施形態では、第3の一括保護装置7は、第3の取得部310、第3の検知部320、第3の制御部330、第3の記憶部340及び第3の通信部350を備える。
【0086】
第3の一括保護装置7は、第1の一括保護装置2と同様に、例えばPCに第3の一括保護装置7用のプログラムをインストールすることで実現できる。第3の一括保護装置7内のCPUが、第3の一括保護装置7のプログラムを実行することにより、第3の取得部310、第3の検知部320、第3の制御部330、第3の記憶部340及び第3の通信部350の機能が実現される。第3の記憶部340は、取得した電流値及び電圧値を記憶する領域を備え、例えば、HDD上の補助記憶装置上に構築される。
【0087】
第3の取得部310は、上述した変流器39、53、57、60、63、64及び計器用変圧器54、58、61より、電流値及び電圧値を取得する。取得した値は、第3の記憶部340に格納される。第3の記憶部340に格納された電流値及び電圧値は、例えば、ログ解析等に用いられる。
【0088】
第3の検知部320は、第3の取得部310が取得した値に基づいて、電気事故の発生を検知する。この例では、電流の漏れは、275kV/500kV昇圧変圧器51の一次側を流れる電流、二次側を流れる電流及び所内設備側を流れる電流に加え、154kV/275kV昇圧変圧器11の二次側を流れる電流及び所内負荷設備側を流れる電流の値に基づいて求められる。例えば、第3の検知部320は、これらの値から、275kV電力ケーブル62へ流入する電流値及び流出する電流値の差分を計算し、差分がゼロでない場合、電流の漏れがあると検知する。また、第3の検知部320は275kV/500kV昇圧変圧器51の一次側巻線を通過する電流値及び二次側巻線を通過する電流値を比較して、この比率が一定以上となった際に電気事故の発生を検知する。
【0089】
第3の制御部330は、第3の検知部320が電気事故の発生を検知した場合、遮断器59を開放する遮断指令を出力する。遮断器59は、遮断指令によって解放される。
【0090】
第3の通信部350は、ネットワーク6を介して、第2の一括保護装置3の第2の通信部250と接続される。第3の取得部310は、第3の通信部350を介して、第2の一括保護装置3から154kV/275kV昇圧変圧器11の二次側の電流値及び電圧値に加え、所内負荷設備側の電流値及び電圧値を取得する。また、第3の取得部310が取得した三次変電所90に関する電流値及び電圧値は、第3の通信部350を介して、第2の一括保護装置3の第2の通信部250に伝送され、第2の一括保護装置3における電気事故発生の検知に用いられる。
【0091】
本実施形態によれば、一括保護システム1は、3段階昇圧を行う発変電系統100において、保護対象区間を広く定義し、その区間での電気事故を一括して監視を行うことで大幅な設備導入コスト減が可能となる。例えば、一括保護システム1を用いることで、三次変電所90は、275kV/500kV昇圧変圧器51と、275kV電力ケーブル62との間の遮断器を設けずに、断路器56を設置する構成とすることができる。また三次変電所90は、分路リアクトル52と、電路との間の遮断器を設けずに、断路器55を設置する構成とすることができる。これらの遮断器の設置の省略によりコスト減が可能となる。保護対象区間を広く設けることは、電気事故の波及範囲が広がるという懸念があるが、一括保護システム1によって、発変電系統100で発生した電気事故を三次変電所90までの範囲で抑えることができ、電力系統への波及を防止することができる。
【0092】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態における発変電系統の概略構成図である。
【0093】
本実施形態では、第1実施形態とは異なり、二次変電所80には、154kV/500kV昇圧変圧器68が設けられる。154kV/500kV昇圧変圧器68以外の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。154kV/500kV昇圧変圧器68は、第2の昇圧変圧器の例である。
【0094】
第2の一括保護装置3は、各測定箇所における電流値及び電圧値から電気事故の発生を検知し、遮断器25の開放を行う。このように、変圧器の変圧比が異なる場合であっても、一括保護システム1は、遮断指令によって、発変電系統100を電力系統から切り離し、電気事故の波及を防止することができる。
【0095】
本実施形態によれば、一括保護システム1は、2段階昇圧を行う発変電系統100において、二次変電所80での昇圧パターンが異なる場合であっても、保護対象区間を広く定義し、その区間での電気事故を一括して監視を行うことで大幅な設備導入コスト減が可能となる。
【0096】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態における第1の一括保護装置のハードウェア構成図である。
【0097】
図10の第1の一括保護装置2は、CPU等のプロセッサ452と、RAM等の主記憶装置453と、HDD等の補助記憶装置454と、LAN(Local Area Network)ボード等のネットワークインタフェース455と、メモリスロットやメモリポート等のデバイスインタフェース456、と、これらの機器を互いに接続するバス457とを備えている。第1の一括保護装置2は例えば、PC等のコンピュータであり、キーボードやマウス等といった外付けの入力装置や、LCD(Liquid Crystal Display)モニタ等の出力装置を備えている。
【0098】
本実施形態においては、第1の一括保護装置2の情報処理をコンピュータに実行させるためのプログラムが、補助記憶装置454内にインストールされている。第1の一括保護装置2は、このプログラムを主記憶装置453にロードして、プロセッサ452により実行する。これにより、図4に示す第1の取得部110、第1の検知部120、第1の制御部130、第1の通信部150及び第1の記憶部140の機能を第1の一括保護装置2内で実現し、第1~3実施形態で説明した電力設備の一括保護が可能となる。なお、この情報処理により生成されたデータは、主記憶装置453に一時的に保持されるか、補助記憶装置454内に格納され保存される。
【0099】
また、第1の記憶部140は、補助記憶装置454上に構築される。上述した閾値は、補助記憶装置454内に格納されている。閾値は、このプログラムの実行時に主記憶装置453にロードされる。
【0100】
また、第1の一括保護装置2及び第2の一括保護装置3は、ネットワークインタフェース455を介して、ネットワーク6に接続される。また、第1の一括保護装置2は、第1の通信部150によって、ネットワークインタフェース455を制御し、第2の一括保護装置3が取得した電流値及び電圧値の値を受信する。
【0101】
第1の一括保護装置2用のプログラムは例えば、このプログラムを記録した外部装置458をデバイスインタフェース456に装着し、このプログラムを外部装置458から補助記憶装置454に格納することでインストール可能である。外部装置458の例は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体や、このような記録媒体を内蔵する記録装置である。記録媒体の例はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、CD-R(Compact Disk Recordable)、フレキシブルディスク、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、DVD-R (Digital Versatile Disk Recordable)であり、記録装置の例はHDDである。また、このプログラムは例えば、このプログラムをネットワークインタフェース455を介してダウンロードすることでインストール可能である。
【0102】
本実施形態によれば、第1~3実施形態における第1の一括保護装置2の機能をソフトウェアにより実現することが可能となる。第2の一括保護装置3または第3の一括保護装置7についても同様に実現することができる。
【0103】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な第1の一括保護装置2は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した第1の一括保護装置2の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0104】
1:一括保護システム、2:第1の一括保護装置、3:第2の一括保護装置、
4:通信装置、5:通信装置、6:ネットワーク、7:第3の一括保護装置、
8:通信装置、9:通信装置、10:66kV/154kV昇圧変圧器、
11:154kV/275kV昇圧変圧器、12:154kV電力ケーブル、
13:分路リアクトル、14:分路リアクトル、22:遮断器、
23:遮断器、24:遮断器、25:遮断器、26:断路器、
27:断路器、28:断路器、30:変流器、31:変流器、32:変流器、
33:変流器、34:変流器、35:変流器、36:変流器、37:変流器、
38:変流器、39:変流器、40:計器用変圧器、41:計器用変圧器、
42:計器用変圧器、43:計器用変圧器、44:計器用変圧器、
46:遮断器、47:遮断器、48:遮断器、50:洋上風車、
51:275kV/500kV昇圧変圧器、52:分路リアクトル、
53:変流器、54:計器用変圧器、55:断路器、56:断路器、
57:変流器、58:計器用変圧器、59:遮断器、60:変流器、
61:計器用変圧器、62:275kV電力ケーブル、63:変流器、
64:変流器、65:分路リアクトル、66:断路器、67:変流器、
68:154kV/500kV昇圧変圧器、70:一次変電所、
80:二次変電所、90:三次変電所、100:発変電系統、
110:第1の取得部、120:第1の検知部、130:第1の制御部、
140:第1の記憶部、150:第1の通信部、210:第2の取得部、
220:第2の検知部、230:第2の制御部、240:第2の記憶部、
250:第2の通信部、310:第3の取得部、320:第3の検知部、
330:第3の制御部、340:第3の記憶部、350:第3の通信部
452:プロセッサ、453:主記憶装置、454:補助記憶装置、
455:ネットワークインタフェース、456:デバイスインタフェース、
457:バス、458:外部装置
図1
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図10