(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012281
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】監視制御システム及び監視制御方法
(51)【国際特許分類】
G05B 9/02 20060101AFI20250117BHJP
G05B 19/05 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G05B9/02 B
G05B19/05 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115008
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200218
【弁理士】
【氏名又は名称】沼尾 吉照
(72)【発明者】
【氏名】小宮 慎太郎
【テーマコード(参考)】
5H209
5H220
【Fターム(参考)】
5H209AA01
5H209DD11
5H209GG06
5H209HH04
5H209JJ09
5H220AA01
5H220BB09
5H220BB13
5H220CC09
5H220CX09
5H220JJ12
5H220JJ17
5H220JJ28
5H220KK03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1つのモジュール異常が発生した場合でも、PLCをエラーダウンさせずに継続した監視制御が可能となり、制御を停止するようなソフトを製作する必要もなく、人為的なミスの発生も防ぐことが可能な監視制御システムを提供する。
【解決手段】プラントの設備機器18の制御を行う制御システムにおいて、設備機器18に対する制御信号の入出力装置である複数のモジュール11と、モジュール11と設備機器18の制御との対応関係を記憶する記憶部15と、モジュール11の異常を検出する異常検出部12と、異常検出部12によってモジュール11の異常が検出された際、記憶部15に記憶された前記対応関係に基づいて、対応する設備機器18の制御を停止する制御部14とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの設備機器の制御を行う監視制御システムにおいて、
前記設備機器に対する制御信号の入出力装置である少なくとも1つのモジュールと、
前記モジュールと前記設備機器の制御との対応関係を記憶する記憶部と、
前記モジュールの異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部によって前記モジュールの異常が検出された際、前記記憶部に記憶され
た前記対応関係に基づいて、前記設備機器の制御を停止する制御部と、
を備えた監視制御システム。
【請求項2】
前記記憶部に記憶されている前記設備機器の制御に使用される変数から、前記モジュー
ルと連関した前記設備機器の制御を特定する対象制御特定部をさらに備え、
前記制御部は、前記対象制御特定部によって特定された異常が検出された前記モジュー
ルと連関した前記設備機器の制御を停止する、
請求項1記載の監視制御システム。
【請求項3】
前記記憶部は、前記制御の停止が有効か無効かを前記制御と連関して記憶し、
前記制御部は、前記制御の停止が有効であると記憶されているときのみ前記制御の停止
を実行する、
請求項1又は請求項2に記載の監視制御システム。
【請求項4】
前記記憶部に記憶されている、前記モジュールと前記変数と、前記設備機器の制御との
対応関係を表示する表示部をさらに備える、
請求項2に記載の監視制御システム。
【請求項5】
プラントの設備機器の制御を行う制御システムにおいて、
前記設備機器に対する制御信号の入出力装置であるモジュールにおいて少なくとも1つ
のモジュールの異常を検出し、
前記設備機器の制御に使用される変数から前記モジュールと連関した前記設備機器の制
御を特定する対象制御特定部に対して、前記異常に関する情報を出力し、
前記対象制御特定部は、前記異常に関する情報に基づいて、前記モジュールと連関した
制御の有無を特定したうえで、前記制御の停止が有効か無効か判定し、
前記制御の停止が有効である場合に、前記設備機器の制御を実行する制御部が、前記制
御を停止する、
監視制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、監視制御システム及び監視制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理プラント等の監視制御システムのPLC(Programmable Logic Controller;制
御コントローラ)はディジタル入力モジュール(DI)、ディジタル出力モジュール(D
O)、アナログ入力モジュール(AI)、アナログ出力モジュール(AO)等の多数のモ
ジュールで構成される。
このモジュールの構成は対象設備毎に異なるが、PLCは1つ以上のモジュールが異常と
なる場合にエラーダウンすることが一般的である。
また、モジュール異常の場合に、異常モジュールの信号は前回値を保持したまま、異常モ
ジュールのみを切り離して運転を継続させる機能(以降、IO縮退機能と称す)を用いる
ことで、異常となったモジュールのみを切り離して運転を継続することも可能である。さ
らに、制御で使用しているモジュールが異常となった際には、制御を停止するようにソフ
トを製作するといった処置を行う場合もある。
【0003】
特許文献1には、CPUモジュールとリモートIOモジュール等を備え、プラントなど
の設備機器の制御を行う制御コントローラであって、CPUモジュール異常時に制御対象
となる全ての制御機器の制御を停止することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、受配電設備を監視制御する機器を、平常時の監視機能を実現する平常
モードと、平常モードと稼働負荷の異なる非平常モードのいずれかを選択的に動作させる
ことができる監視制御装置であって、縮退モードに切り替えるか否かを選択する選択部を
有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-99879号公報
【特許文献2】特開2019-3292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モジュール異常でPLCをエラーダウンさせる場合は工数がかからずかつ安全ではある
が、1つのモジュール異常で全監視制御が出来なくなるため不便である。
【0007】
また、IO縮退機能を用いた場合、異常となったモジュールの信号の状態が分からなく
なるため、PLCを運転継続したとしてもPLCで行っている制御が正しく行われていな
い可能性がある。
【0008】
さらに、制御を停止するようなソフトを製作する場合、制御の数が多くなると膨大な工
数がかかる上、人為的なミスが発生する可能性が高くなるため、制御が実装されているP
LCではあまり実施されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記課題を解決するために、実施形態の監視制御システムは、プラントの設備
機器の制御を行う制御システムにおいて、前記設備機器に対する制御信号の入出力装置で
ある複数のモジュールと、前記モジュールと前記設備機器の制御との対応関係を記憶する
記憶部と、前記モジュールの異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部によって前記
モジュールの異常が検出された際、前記記憶部に記憶された前記対応関係に基づいて、対
応する前記設備機器の制御を停止する制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】実施形態に係るモジュール、変数、信号の表の一例
【
図5】実施形態に係る監視制御方法のシステムフローの一例
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための実施形態について説明する。
【0012】
実施形態に係る監視制御システムの構成を
図1に示し、以下に
図1を参照して実施形態
に係る監視制御システムを説明する。
【0013】
実施形態に係る監視制御システムは、主にPLC20で構成される。PLC20は設備
機器18の制御をおこなう制御コントローラであって、制御信号の入出力装置であるモジ
ュール11と、モジュール11の異常を検出する異常検出部12と、異常が検出されたモ
ジュールとそのモジュールに連関する制御とを特定する対象制御特定部13と、設備機器
18に対して制御プログラムを実行する制御部14と、記憶装置である記憶部15を備え
る。コンピュータ10はユーザが操作するための操作部16といわゆる監視画面である表
示部17を備える。
【0014】
実施形態に係る監視制御システムは水処理プラント等に設置されている設備機器18を
監視制御するシステムである。設備機器18は複数あるのが一般的で、実施形態に係る監
視制御システムは多数の設備機器18の運転、停止等を制御している。設備機器18はP
LC20とケーブルLで接続され、このケーブルLを通して制御信号の伝達が行われる。
例えば、設備機器18がポンプであった場合に、計測されたポンプの吐出流量をPLC2
0へ入力して、所定の閾値より吐出流量が大きい場合は所定の閾値となるようにPLC2
0から設備機器18であるポンプへ吐出量を減少させる指示、制御を行うことが出来る。
【0015】
ここで、実施形態に係るPLC20が備えるモジュール11について、
図2のモジュー
ルの構成の一例を使って説明する。
図2のモジュールの構成はあくまで一例であって、モ
ジュールの構成はこれに限らない。
【0016】
IF21はIFモジュールであって、IF(Inter Face)とはインターフェースの略語
である。IFモジュールはPLC20の入出力(I/O)を拡張するためのモジュールで
あって、PLCに接続されることで、PLC20のI/Oポートを拡張し、外部にある複
数の設備機器18との接続を可能とする。
【0017】
電源22は電源モジュールであって、PLC20の各ユニットに電源を供給する役割を
担っている。
【0018】
CPU23はCPUモジュールであって、PLC20のプログラムを実行し、外部入力
信号を監視し、出力信号を制御するための処理を行う。例えば、外部入力信号を読み取り
、プログラムに従って処理し、出力信号を変化させることができる。また、CPUモジュ
ールは、PLC20内の各モジュール間でデータを転送するための通信機能を有している
場合もある。この場合、例えば、AI(Analog Input)モジュールであるAI27から取
得したデータを、プログラムで処理してAO(Analog Output)モジュールであるAO2
8やDO(Digital Output)モジュールであるDO26に送信することが可能となる。
【0019】
DI1~DI8であるDI24はDIモジュール(ディジタル入力モジュール)であっ
て、DI(Digital Input)はディジタルインプットの略語である。DIモジュールは、
PLC20へのディジタルの入力信号を受取ることができて、例えば、スイッチやセンサ
からの信号を受取りCPU23へ送信することができる。また、PLC20へのディジタ
ルの入力信号を処理するためにも使用される。
【0020】
空25は、いわゆるモジュール用の空きスペースであって、モジュールは実装されてい
ない。改造等で新たに何らかのモジュールが必要になった場合にモジュール追加が可能な
スペースである。
【0021】
DO1~DO4であるDO26はDOモジュール(ディジタル出力モジュール)であっ
て、DO(Digital Output)とはディジタルアウトプットの略語である。DOモジュール
は、PLC20のプログラムに基づいて制御信号を発生させ、外部機器のON/OFFな
どの制御を行うためのモジュールである。
【0022】
AI1~AI3であるAI27はAIモジュール(アナログ入力モジュール)であって
、AI(Analog Input)とはアナログインプットの略語である。AIモジュールは、外部
のアナログ信号をPLCに取り込み、PLC20のプログラムによって処理されるための
モジュールである。例えば、アナログ入力モジュールは、一般的にアナログ信号を1~5
V(ボルト)の電圧または4~20mA(ミリアンペア)の電流の形式で受信し、内部の
アナログ-ディジタル変換器(A/D変換器)によってディジタル信号に変換された後、
PLC20のプログラムによって処理され、目的に応じた制御処理を行うことができる。
【0023】
AO1,AO2であるAO28はAOモジュール(アナログ出力モジュール)であって
、AO(Analog Output)とはアナログアウトプットの略語である。AOモジュールは、
PLC20からアナログ信号を出力するためのモジュールである。例えば、内部のディジ
タルアナログ変換器(D/A変換器)によって、PLC20の制御プログラムに基づいて
制御されたアナログ信号を生成し、設備機器18に対して回転速度や開度等のアナログ信
号を出力することができる。
【0024】
次に、異常検出部12は、上述した各モジュール11の動作不良、故障等の異常を検出
することができる機能を有する。異常検出部12によって異常が検出されると、異常検出
部12は異常が検出された少なくとも1つのモジュール11の情報を対象制御特定部13
に出力する機能も併せ持っている。
【0025】
対象制御特定部13は、上述した異常検出部12から出力された異常となったモジュー
ル11の情報に基づいて、異常となったモジュール11と連関した制御を特定する。実施
形態においては、例えば、
図4に示すように、ある制御Aがあった場合に、制御Aに使用
される変数XB1,XB2が存在する。変数XB1,XB2は
図3に示すように、それぞ
れ連関した信号及びモジュールDI1が存在する。変数XB1,XB2を介すると、制御
AにはモジュールDI1が連関していることが特定される。このように、対象制御特定部
13は異常があったモジュールに連関した制御を特定することができる。
【0026】
ここで、制御とは、ある設備機器(1台に限らず複数台のこともある)を制御するため
の制御プログラムのことを指す。具体例として、「3台のポンプの台数制御(水位情報な
どから複数のポンプの運転/停止を制御するもの)」という制御があるとすると、その制御
ではAポンプ、Bポンプ、Cポンプの信号(変数)を使用する。制御と設備機器とは1対
1に限らず、1対1の時もあれば1対Nの時もある。
【0027】
制御部14は、対象制御特定部13で特定された制御について予め定められた自動停止
の有効/無効に従って、有効であれば自動停止を実行する。自動停止の有効/無効はユー
ザが予め設定することが可能で、表示部17の画面上で操作部16を用いて操作を行って
設定することが出来る。
【0028】
例えば、実施形態においてはDI1モジュールが異常となった場合は、
図4に示すよう
に自動停止が有効となっているため、制御部14が制御Aについて自動停止する。仮に、
図4に示された自動停止欄が無効となっている場合には、制御Aは自動停止されずに制御
Aは継続されることとなる。
【0029】
記憶部15は、いわゆる記憶装置である。記憶部15によって記憶されているのは、実
施形態においては、例えば、
図3や
図4に示されるモジュール、変数、制御等の対応関係
の情報であって、表形式で制御毎に記憶されている。
【0030】
操作部16は、ユーザが操作する際のツールであって、例えば、キーボード、マウス等
のことをいう。
【0031】
表示部17は、ユーザがPLC20の制御を手動で行う際やプラント状況をリアルタイ
ムに表示し、ユーザが操作するいわゆる監視画面である。実施形態においては、例えば、
図4に示された自動停止を有効から無効に手動で変更する際に操作される。
【0032】
設備機器18は、プラント等の現場設備であってPLC20にて制御される設備機器で
ある。設備機器18に設置されているスイッチ、センサ等の情報に基づいて、実施形態に
おける制御Aの内容は決定される。
【0033】
次に、実施形態に係る監視制御方法を
図5のシステムフローチャートを用いて説明する
。
【0034】
実施形態においては、まず、異常検出部12がモジュール11の動作不良、故障等の異
常を検出する(S101)。
【0035】
次に、検出された異常に関する情報は、異常検出部12によって対象制御特定部13に
出力される(S102)。この異常に関する情報とは、異常が検出されたモジュールの識
別情報だけでなく、どのような異常が発生したのか、異常が発生した時刻等の情報が含ま
れていても良い。
【0036】
対象制御特定部13は、異常が発生したモジュールの識別情報に基づいて、そのモジュ
ールと連関した設備機器の制御の有無を特定する(S103)。これは、例えば、
図4の
ような表形式で記憶部15に記憶されていて、実施形態においては、制御AとDI1モジ
ュールとが連関していることを認識可能である。
【0037】
異常が発生したモジュールに連関した制御が無い場合(S103のNo)、実施形態に
おけるシステムフローは終了する。
【0038】
対象となったモジュールに連関した制御が有る場合(S103のYes)、その制御の
自動停止が有効か無効か対象制御特定部13は判定する(S104)。制御の自動停止が
無効である場合は(S104のNo)、実施形態におけるシステムフローは終了する。制
御の自動停止が有効である場合は(S104のYes)、対象制御特定部13から制御部
14にその情報が出力され、実施形態においては、制御部14によって制御Aの自動停止
が実行され(S105)、制御Aが停止する(S106)。
【0039】
以上より、実施形態によれば、以下に示すような効果が得られる。
【0040】
1つのモジュール異常が発生した場合でも、PLCをエラーダウンさせずに継続した監
視制御が可能となり、制御を停止するようなソフトを製作する必要もなく、ソフト製作の
膨大な工数を削減し、人為的なミスの発生も防ぐことが可能となる。
【0041】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明
の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で
実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、
変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとと
もに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
10…コンピュータ、11…モジュール、12…異常検出部、13…対象制御特定部、1
4…制御部、15…記憶部、16…操作部、17…表示部、18…設備機器、20…PL
C