(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012424
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】記録媒体
(51)【国際特許分類】
B41M 5/26 20060101AFI20250117BHJP
B42D 25/41 20140101ALI20250117BHJP
【FI】
B41M5/26
B42D25/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115252
(22)【出願日】2023-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】木川田 淳
(72)【発明者】
【氏名】望月 美優
【テーマコード(参考)】
2C005
2H111
【Fターム(参考)】
2C005HA06
2C005HA13
2H111AA35
2H111HA14
(57)【要約】
【課題】
本発明は、積層体にレーザ光を照射した場合の黒色の鮮明性が良好であり、レーザの照射により形成された互いの情報画像の高低差の生じることのない記録媒体を提供する。
【解決手段】
本発明は、レーザ光の照射により黒色系の第一の色相に変化して成る材料又は第一の色相と異なる第二の色相に変化して成る材料を含有する第一のレーザ発色層と、レーザ光の照射により第一の色相に変化する材料を含有し、光透過性を有する第二のレーザ発色層と、レーザ光の照射により第二の色相に変化する材料を含有し、第二のレーザ発色層と同一の厚さから成る光透過性を有する第三のレーザ発色層を備える記録媒体であって、第一のレーザ発色層上に、第二のレーザ発色層と第三のレーザ発色層が隣接して積層されて成ることを特徴とする記録媒体である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の照射により黒色系の第一の色相に変化して成る材料又は前記第一の色相と異なる第二の色相に変化して成る材料を含有する第一のレーザ発色層と、
前記レーザ光の照射により前記第一の色相に変化する材料を含有し、光透過性を有する第二のレーザ発色層と、
前記レーザ光の照射により前記第二の色相に変化する材料を含有し、前記第二のレーザ発色層と同一の厚さから成る光透過性を有する第三のレーザ発色層を備える記録媒体であって、
前記第一のレーザ発色層上に、前記第二のレーザ発色層と前記第三のレーザ発色層が隣接して積層されて成ることを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ発色層を積層して成る記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カード基材が一般的に普及しており、日常生活においても様々な種類のカードが用いられている。例えば、プラスチック基材表面に特定情報等が印刷されたカード、テレフォンカード等の磁気カード、又はICメモリを内蔵したクレジットカードに代表されるICカード、プラスチック基材に個人情報等を印刷したデータページを使用したパスポートなど、身分証明等の用途で顔写真等の画像が印刷されたものもある。
【0003】
このような各種カードの改竄を防止する手法としては、レーザ発色層を積層した記録媒体にレーザを照射し、カラー画像から成る顔画像等の個人情報を記録することができる記録媒体がある。
【0004】
前述の記録媒体の一例として、基材上に、電子供与性を有する呈色性化合物と、電子受容性を有する顕色剤と、マトリックス樹脂とを含む発色層を備えた収容部を有する中間層と、中間層上に設けられたオーバーレイ層とを備え、レーザ照射により呈色性化合物の発色によりカラー画像を形成することが可能な積層体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、特許文献2は感熱発色層とモノクロ発色層を備えた記録媒体であり、感熱発色層がC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の3色の感熱発色層を備え、モノクロ発色層が感熱記録層を囲むように配置される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2022/138766号公報
【特許文献2】実用新案登録第3221579号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術は、レーザ光の照射によりC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色成分を発現する有用な技術であるが、黒色の発現がC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の減法混色によるものであるため、黒色の鮮明性に欠けるという課題があった。
【0008】
また、
図5(a)は、特許文献1記載の積層体を使用した平面図であり、
図5(b)は、そのA-A´断面図であるが、
図5(b)に示すように、第一のレーザ発色層(1)上に、特許文献1記載の積層体を第三のレーザ発色層(3)として積層し、更に第三のレーザ発色層(3)と隣接して光透過性樹脂層(6)を第一のレーザ発色層(1)上に積層した記録媒体(B1)では、第一のレーザ発色層(1)と第三のレーザ発色層(3)の積層体の厚さ方向とで情報画像を形成する位置が異なり、レーザ光の焦点距離に差が出ることにより、第三のレーザ発色層(3)に記録された第三の情報画像(5)が第一のレーザ発色層(1)に記録された第一の情報画像(7)よりも浮いて見えるという課題があった。
【0009】
特許文献2の技術は感熱発色層とモノクロ発色層のそれぞれにレーザ光の焦点距離を同じ距離に合わせて発色させることで画像が浮いて見えるという課題は解決しているものの、感熱発色層はC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)を使用していることから、感熱発色層における黒色の鮮明性に欠けるという課題は依然として存在していた。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、積層体にレーザ光を照射した場合の黒色の鮮明性が良好であり、レーザ光の照射により形成された互いの情報画像の高低差の生じることのない記録媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、レーザ光の照射により黒色系の第一の色相に変化して成る材料又は第一の色相と異なる第二の色相に変化して成る材料を含有する第一のレーザ発色層と、レーザ光の照射により第一の色相に変化する材料を含有し、光透過性を有する第二のレーザ発色層と、レーザ光の照射により第二の色相に変化する材料を含有し、第二のレーザ発色層と同一の厚さから成る光透過性を有する第三のレーザ発色層を備える記録媒体であって、第一のレーザ発色層上に、第二のレーザ発色層と第三のレーザ発色層が隣接して積層されて成ることを特徴とする記録媒体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、レーザ光の照射により形成する情報画像において、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の減法混色の黒色に、単色の黒色を混色させることで、黒色の鮮明性が良好な記録媒体を提供することができる。
【0013】
また、本発明は、レーザ光の照射により形成された互いの情報画像において高低差の生じることのない記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
【0016】
(実施の形態)
図1に、記録媒体(A1)を示す。本実施の形態における記録媒体(A1)は、第一のレーザ発色層(1)と、第一のレーザ発色層(1)上に、第二のレーザ発色層(2)と、第二のレーザ発色層(2)と同一厚さの第三のレーザ発色層(3)が隣接、かつ、並設して積層されて成る。
【0017】
第一のレーザ発色層(1)の厚さは、特に限定されず、カード形状に作成する場合は、識別カードのJIS規格(JIS X 6301:2005)では、厚さが0.76mmと定められているため、最終的な製品の総厚がこれに収まればよい。
【0018】
第二のレーザ発色層(2)及び第三のレーザ発色層(3)の厚さは、第一のレーザ発色層(1)と同様に特に限定されず、前述の識別カードのJIS規格(JIS X 6301:2005)に準じていればよい。また、第一のレーザ発色層(1)と厚さが異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0019】
第二のレーザ発色層(2)と第三のレーザ発色層(3)を同一の厚さとする理由は、第二のレーザ発色層(2)と第三のレーザ発色層(3)の厚み方向において、同一の位置に情報画像(4、5)を記録することで、レーザ発色層(2、3)上に、更に保護層又は異なるレーザ発色層を積層した場合に、表面に生じる段差が生じないことから、プレス等の加工する際に、製品品質に影響を及ぼす恐れがないためである。
【0020】
また、第二のレーザ発色層(2)と第三のレーザ発色層(3)が隣接して形成されているのは、例えば、第二のレーザ発色層(2)と第三のレーザ発色層(3)の間に隙間があった場合、第一のレーザ発色層(1)の発色が第二のレーザ発色層(2)と第三のレーザ発色層(3)に描画された情報画像の視認性に悪影響を及ぼすためである。
【0021】
なお、第二のレーザ発色層(2)と第三のレーザ発色層(3)は、隣接して形成されていればよく、隣接とは、第二のレーザ発色層(2)と第三のレーザ発色層(3) が隙間なく密着して配置されていることをいう。
【0022】
第一のレーザ発色層(1)上に第二のレーザ発色層(2)と第三のレーザ発色層(3)を形成する方法は、特に限定されず、レーザ加熱、高周波加熱、熱板加熱、振動加熱、超音波加熱等の加熱による溶着、接着剤と硬化剤を混合することによって接着する方法、接着剤塗布後に常温で圧力を加えることによって接着する方法等、熱可塑性樹脂の溶融特性又は接着特性によって積層される。
【0023】
(第一のレーザ発色層)
図1に示す第一のレーザ発色層(1)は、第一の波長領域である700nm~2000nmの赤外線領域の波長である第一のレーザ光に吸収特性、又は第一の波長領域と異なる第二の波長領域である350~370nmの紫外線領域の波長又は380~780nmの可視光領域の波長である第二のレーザ光に吸収特性を有する材料を含有して成る。
【0024】
第一のレーザ発色層(1)は、第一のレーザ光の照射により黒色系の第一の色相に変化、又は第一のレーザ光又は第二のレーザ光の照射により黒色系と異なる第二の色相に変化して成る。なお、後述するが、第一のレーザ発色層(1)が第一の色相に変化する場合は、第三のレーザ発色層(3)は第二の色相に変化する。第一のレーザ発色層(1)が第二の色相に変化する場合は、第三のレーザ発色層(3)は第一の色相に変化する。
【0025】
第一のレーザ発色層(1)が第一の波長領域である700nm~2000nmの赤外線領域の波長の第一のレーザ光に吸収特性を有する材料を含有している場合、当該赤外線領域に吸収特性を有する材料としては、カーボン、五酸化二燐(P2O5)、酸化鉄、酸化銅のガラス系粉末、セシウム酸化タングステン化合物等を含有する公知のインキ又は赤外線発色性の熱可塑性の樹脂シートが挙げられる。又は消色状態の電子供与性色素、熱酸発生剤及び光熱変換剤を含む材料又は熱可塑性樹脂層から成る。
【0026】
熱可塑性樹脂層は、単層又は複数の熱可塑性樹脂層を積層して構成される。なお、熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート(PC)又はポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリビニル塩化物(PVC)、アクリロニトリル-ブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等の公知の熱可塑性樹脂シートを使用することができる。
【0027】
(電子供与性色素)
電子供与性色素は、酸及び塩基の作用により可逆的色相変化又は不可逆的色相変化を呈することが可能な化合物である。すなわち、消色状態の電子供与性色素は、酸の作用により構造を変化し発色することが可能である。電子供与性色素は、例えば、ロイコ色素である。ロイコ色素は、当該色素内に含まれるラクトン環が酸と反応すると、ラクトン環が開環状態となり発色し、開環状態となったラクトン環が塩基と反応すると、ラクトン環が閉環状態となり消色する。ロイコ色素は、例えば、既存の感熱紙用染料であってもよい。
【0028】
また、電子供与性色素は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、フルオラン系化合物、トリフェニルメタンフタリド系化合物、アザフタリド系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物及びインドリノフタリド系化合物等が挙げられる。
【0029】
(熱酸発生剤)
熱酸発生剤は、いわゆる顕色剤であり、所定の温度以上で酸を発生する。発生した酸が消色状態の電子供与性色素に作用すると、電子供与性色素の構造が変化し発色する。熱酸発生剤は、例えば、オニウム塩である。オニウム塩は、アンモニウム塩、スルホニウム塩及びヨードニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。アンモニウム塩、スルホニウム塩及びヨードニウム塩の酸発生温度はいずれも、150℃以上280℃未満の範囲内にある。アンモニウム塩、スルホニウム塩及びヨードニウム塩のアニオンは、例えば、硫黄、リン、ホウ素またはアンチモンを含む化合物を含む。
【0030】
(光熱変換剤)
光熱変換剤は、700nm~2000nmの赤外線領域の光を吸収して発熱するものであり、700nm以上2000nm以下の範囲に吸収ピークを有し、可視領域にほとんど吸収を持たない材料であることが好ましい。具体的には例えば、フタロシアニン骨格を有する化合物(フタロシアニン系染料)、スクアリリウム骨格を有する化合物(スクアリリウム系染料)及び無機化合物等からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0031】
無機化合物としては、例えば、ジチオ錯体等の金属錯体、ジイモニウム塩、アミニウム塩、グラファイト、カーボンブラック、金属粉末粒子、四三酸化コバルト、酸化鉄、酸化クロム、酸化銅、チタンブラック、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物、窒化ニオブ等の金属窒化物、炭化タンタル等の金属炭化物、金属硫化物及び各種磁性粉末等からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。この他、優れた耐光性及び耐熱性を有するシアニン骨格を有する化合物(シアニン系染料)を用いてもよい。
【0032】
第一のレーザ発色層(1)が、第二の波長領域である350~370nmの紫外線領域の波長又は380~780nmの可視光領域の波長である第二のレーザ光に吸収特性を有する材料を含有している場合に、当該紫外線領域に吸収特性を有する材料としては、酸化チタン化合物の一つである二酸化チタン(白色チタン)、インドリンスピロピラン(3’、3’-ジメチル-1-イソプロピル-8-メトキシ-6-ニトロスピロ(2H-1-ベンゾピラン-2,2-インドリン))等を含有するインキ又は樹脂シートが挙げられる。また、可視光領域の波長に吸収特性を有する材料としては、赤、緑、青等の色に応じて吸収特性を有する公知の顔料、染料を使用することができる。
【0033】
第一のレーザ発色層(1)自体の色彩は、後述する第二のレーザ発色層(2)と第三のレーザ発色層(3)の発色性に影響を与えなければ特に限定されず、透明、白色又はその他の有色の色彩であってもよい。例えば、酸化チタン化合物の一つである二酸化チタン(白色チタン)を含有する白色のポリカーボネート(PC)等の樹脂シート、又はカーボンを含有する光透過性(透明又は半透明)の赤外線吸収特性を有するIR(赤外)レーザ発色シートが挙げられる。
【0034】
(第二のレーザ発色層)
図1に示す第二のレーザ発色層(2)は、第一の波長領域である700nm~2000nmの赤外線領域の波長の第一のレーザ光に吸収特性有する材料を含有、又は第一の波長領域と異なる第二の波長領域である350~370nmの紫外線領域の波長又は380~780nmの可視光領域の波長である第二のレーザ光に吸収特性を有する材料を含有して成る。
【0035】
第二のレーザ発色層(2)が第一の波長領域である700nm~2000nmの赤外線領域の波長の第一のレーザ光に吸収特性を有する材料を含有している場合、当該赤外線領域に吸収特性を有する材料としては、カーボン、五酸化二燐(P2O5)、酸化鉄、酸化銅のガラス系粉末、セシウム酸化タングステン化合物等を含有する公知のインキ又は赤外線発色性の熱可塑性の樹脂シートが挙げられる。又は消色状態の電子供与性色素、熱酸発生剤及び光熱変換剤を含む材料又は熱可塑性樹脂層から成る。
【0036】
第二のレーザ発色層(2)は、光透過性を有する必要がある。第二のレーザ発色層(2)に光透過性が求められるのは、第一のレーザ発色層(1)に記録された第一の情報画像を視認するためである。なお、光透過性とは、完全に光が透過する意味ではなく、第一のレーザ発色層(1)に第一の情報画像(7)を発現させるためのレーザ光が透過できる程度であればよい。
【0037】
第二のレーザ発色層(2)は、光透過性を有する熱可塑性樹脂層であれば特に限定されず、単層又は複数の熱可塑性樹脂層を積層して構成される。光透過性の熱可塑性樹脂層としては、ポリカーボネート(PC)又はポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリビニル塩化物(PVC)、アクリロニトリル-ブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等の公知の熱可塑性樹脂シートを使用することができる。
【0038】
第二のレーザ発色層(2)は、第一のレーザ光又は第二のレーザ光の照射により黒色系の第一の色相に変化して成る。なお、第一のレーザ発色層(1)が黒色系の第一の色相又は黒色系と異なる第二の色相に変化する場合は、第二のレーザ発色層(2)が黒色系の第一の色相であるため、第二の情報画像(4)の黒色を鮮明にすることができる。
【0039】
(第三のレーザ発色層)
図1に示す第三のレーザ発色層(3)は、第一の波長領域である700nm~2000nmの赤外線領域の波長である第一のレーザ光に吸収特性有する材料を含有、又は第一の波長領域と異なる第二の波長領域である350~370nmの紫外線領域の波長又は380~780nmの可視光領域の波長である第二のレーザ光に吸収特性を有する材料を含有して成る。
【0040】
前述の第一のレーザ発色層(1)と同様に、第三のレーザ発色層(3)が第一の波長領域である700nm~2000nmの赤外線領域の波長の第一のレーザ光に吸収特性を有する材料を含有している場合、カーボン、五酸化二燐(P2O5)、酸化鉄、酸化銅のガラス系粉末、セシウム酸化タングステン化合物等を含有する公知のインキ又は赤外線発色性の熱可塑性の樹脂シートが挙げられる。又は消色状態の電子供与性色素、熱酸発生剤及び光熱変換剤を含む材料又は熱可塑性樹脂層から成る。
【0041】
なお、第三のレーザ発色層(3)は、光透過性を有する熱可塑性樹脂層であれば特に限定されず、単層又は複数の熱可塑性樹脂層を積層して構成される。光透過性の熱可塑性樹脂層としては、ポリカーボネート(PC)又はポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリビニル塩化物(PVC)、アクリロニトリル-ブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等の公知の熱可塑性樹脂シートを使用することができる。
【0042】
第三のレーザ発色層(3)がレーザ光により黒色系の第一の色相に変化する場合は、第一のレーザ発色層(1)は黒色系と異なる第二の色相となる。第三のレーザ発色層(3)がレーザ光により黒色系と異なる第二の色相に変化する場合は、前述の第一のレーザ発色層(1)が黒色系の第一の色相となる。第一のレーザ発色層(1)と第三のレーザ発色層(3)を、いずれか一方を黒色系の第一の色相とし、他方を黒色系と異なる第二の色相とすることによって、後述する第三の情報画像(5)の黒色を鮮明にすることができる。
【0043】
次に、各レーザ発色層の第一の色相と第二の色相について説明する。
【0044】
(第一の色相)
第一のレーザ光により形成された第一の色相は、黒色系である。黒色系とは、黒色系の色相であればよく、黒色だけでなく、黒色に近い灰色の色相も含むものである。第一の色相は、第一のレーザ光であるIR(赤外)レーザの赤外線を吸収して黒色系に発色して成る。また、第一の色相は、可逆的又は非可逆的のいずれであってもよく、特に限定されることはない。なお、記録した情報を消去されることを防止するためには、非可逆的であることが好ましい。更に、例えば、第三のレーザ発色層(3)のレーザ光による第二の色相をC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の減法混色により形成されるブラックを形成する場合に、第一の色相の黒色と第二の色相との混色により鮮明(高コントラスト)な黒色となる。
【0045】
(第二の色相)
第一のレーザ光又は第二のレーザ光により形成された第二の色相は、第一の色相と同系色又は異なる色であってもよく、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、R(レッド)、G(グリーン)又はB(ブルー)等のいずれか一つ、又はそれらの組合せ、減法混色により形成されるブラックが挙げられるが、これらの色に限定されるものではない。第二の色相は、第一のレーザ光であるIR(赤外)レーザの赤外線、又は第二のレーザ光の紫外線、可視光線を吸収して、減法混色によるブラック又は黒色系以外の色に発色して成る。第二の色相は、第一の色相と同様に可逆的又は非可逆的であればよく、特に限定されることはない。また、記録した情報を消去されることを防止するためには、非可逆的であることが好ましい。
【0046】
次に、本発明の記録媒体(A1)として、第二のレーザ発色層(2)に第二の情報画像(4)を形成し、第三のレーザ発色層(3)に第三の情報画像(5)を形成した一例を
図2に示す。
【0047】
図2に示すように、第二のレーザ発色層(2)と第三のレーザ発色層(3)の厚さを同一とすることによって、レーザ光の焦点を第三のレーザ発色層(3)と、第二のレーザ発色層(2)とを同一の厚さの位置に調整することが可能である。
【0048】
したがって、第二のレーザ発色層(2)と第三のレーザ発色層(3)を同一の厚さにすることによって、レーザ光の焦点を、第二の情報画像(4)と第三の情報画像(5)の形成位置を同一にすることができるため、互いの情報画像(4、5)の高低差が生じることを防止することができる。
【0049】
また、
図3に示すように、第二の情報画像(4)と第三の情報画像(5)を隣接して形成して一つの画像である第四の情報画像(8)としても良い。又は
図4に示すように、黒色系の第一の色相から成る第一の情報画像(7)の上層に、減法混色によるブラックの第二の色相を含む第三の情報画像(5)を形成した場合には、第一の色相の黒色と第二の色相との混色により第三の情報画像(5)の黒色が鮮明となる。
【0050】
図2、
図3及び
図4の平面図では、表面上の第三のレーザ発色層(3)は四角形であるが、形状、及び位置は特に限定されず、第二の情報画像(4)と第三の情報画像(5)を顔画像としているが、本発明は、顔画像のみならず、文字、図形、記号等により形成してもよい。
【0051】
また、本発明の記録媒体に前述したポリカーボネート等の熱可塑性樹脂シート又は更なるレーザ発色層を積層してもよく、熱可塑性樹脂シート又は更なるレーザ発色層に印刷を施してもよく、層間にホログラム等を貼付してもよい。
【符号の説明】
【0052】
A1 記録媒体
B1 従来の記録媒体
1 第一のレーザ発色層
2 第二のレーザ発色層
3 第三のレーザ発色層
4 第二の情報画像
5 第三の情報画像
6 透明樹脂層
7 第一の情報画像
8 第四の情報画像