(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025014401
(43)【公開日】2025-01-30
(54)【発明の名称】スラッジ除去装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20250123BHJP
B01D 21/02 20060101ALI20250123BHJP
B01D 21/24 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
B01D21/02 F
B01D21/02 J
B01D21/24 G
B01D21/24 H
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116921
(22)【出願日】2023-07-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】520470925
【氏名又は名称】岡田 政寿
(72)【発明者】
【氏名】岡田 政寿
(72)【発明者】
【氏名】岡田 政和
(72)【発明者】
【氏名】岡田 久美
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011BB33
(57)【要約】
【課題】工作機械から排出されるダーティクーラント液に含まれるスラッジを簡便且つ低ランニングコストで除去して工作機外へ排出し、工作機械の保全性と作業環境の向上を図る。
【解決手段】ダーティクーラント液を非容積式の送液ポンプでスラッジ除去箱へ抽送し、スラッジが除去されたクリーンクーラント液を同一送液ポンプの圧力を利用してスラッジ除去箱からクリーンクーラントタンクへ抽送し、スラッジ除去箱内で重力による自然沈降現象によってスラッジを除去し、除去したスラッジをサイフォンの原理によってスラッジ除去箱底部へ押し流し、必要に応じて前記送液ポンプの圧力を利用してスラッジ除去箱底部に堆積したスラッジをスラッジ除去箱外へ簡便に排出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダーティクーラントタンクとスラッジ除去箱とクリーンクーラントタンクによって構成され、ダーティクーラントタンクは工作機械の加工作業時に常時排出されるダーティクーラント液量以上の吐出量を持つ非容積式の送液ポンプと該送液ポンプに運転開始信号および運転停止信号を出力する液面センサーおよび該送液ポンプの吐出口からスラッジ除去箱下部にあるダーティクーラント液受入用開口を繋ぐ配管を具備することを特徴とし、スラッジ除去箱は密閉された筐体の中央部に同一傾斜角かつ同一間隙で並べられた複数の傾斜板部あるいは同一傾斜角かつ同一内径を持つ複数の傾斜管部によって形成される通水路の集合体を持ち、筐体上部でダーティクーラントタンク液面よりも高い位置に濾過済みクーラント液溜りを持ち、筐体最上部に濾過済みクーラント液排出用開口を持ち、筐体下部にダーティクーラント液受入用開口を持ち、筐体最下部にスラッジ排出用開口を持つことと、筐体最上部にある濾過済みクーラント液排出用開口からクリーンクーラントタンクを繋ぐ配管を具備することを特徴とすることにより、送液ポンプ運転時にはスラッジ除去箱の通水路内に発生する上昇流によって上方へと運ばれるダーティクーラント液に含まれるスラッジがクーラント液とスラッジの比重差によって通水路経路上で鉛直方向へ下降して、隣接する傾斜板部または傾斜管部の傾斜面に沈底してクーラント液から除去され、送液ポンプ運転停止時にはダーティクーラントタンクの液面とクーラント液溜まりの液面の高低差によるサイフォンの原理によって濾過済みクーラント液溜まりにあるクーラント液が通水路内を逆流する下降流によって通水路経路上の傾斜板部の斜面または傾斜管部の内壁面で形成される傾斜面に沈底しているスラッジをスラッジ除去箱の底部へ押し流すことを特徴とするスラッジ除去装置。
【請求項2】
ダーティクーラント液受入用開口をスラッジ除去箱側面下部に配置し、反対側側面の最下部にスラッジ回収用開口を配置し、送液ポンプによってダーティクーラント液受入用開口へ抽送されたダーティクーラント液をスラッジ除去箱底部に沿ってスラッジ回収用開口に向かって流すための整流板を持つことにより、スラッジ除去箱底部に沈底して堆積したスラッジを同一送液ポンプの圧力によってスラッジ回収用開口付近へ集めることを特徴とする請求項1のスラッジ除去装置。
【請求項3】
濾過済みクーラント液排出用開口とスラッジ排出用開口に開閉弁を持ち、濾過済みクーラント液排出用開口の開閉弁を開としスラッジ排出用開口の開閉弁を閉として送液ポンプを運転することによりスラッジを除去し、濾過済みクーラント液排出用開口の開閉弁を閉としスラッジ排出用開口の開閉弁を開として送液ポンプを運転することによりスラッジ除去箱のスラッジ排出用開口付近に堆積したスラッジを同一送液ポンプの圧力によってスラッジ除去箱外へ排出することを特徴とする請求項1のスラッジ除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械において循環使用されるクーラント液に含まれるスラッジを、簡便に除去してスラッジ除去装置外へ排出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械による切削加工や旋削加工等においては、被加工物や加工刃先等の冷却や潤滑および発生した切粉やスラッジを加工部位から除去する目的で、加工作業中にクーラントタンクから工作機械へと常時供給される比較的少量のクーラント液と、工作機械の加工室内に溜まった切粉やスラッジを加工室外へ流し出す目的でクーラントタンクから工作機械へと加工終了時を含む適時に供給される短時間かつ大容量の所謂ベッドウォッシュ用クーラント液が必要とされ、これらのクーラント液は工作機械の加工室下部に設けられた排出口から工作機械下部に設置されたクーラントタンクへと落下し、切粉やスラッジが取り除かれた後に、濾過済みクーラント液として循環使用される。工作機械の加工室下部から排出されたダーティクーラント液に含まれる切粉は、クーラントタンクの内部または上部に設置されたチップコンベヤによって容易に回収できるが、スラッジはクーラント液と一緒にクーラントタンクへと流出してクーラントタンク底部に沈殿し、沈澱したスラッジによるタンク容量の低下はクーラント液温の上昇による工作機械の加工精度の悪化を招く。また、スラッジに付着したウィルス等の増殖によるクーラント液の腐敗によって悪臭が発生して作業環境の悪化を招く場合もあるので、工作機械の稼働を停止してクーラントタンクに沈殿したスラッジを定期的に除去して工作機外へ回収する保全作業が必要となり工作機械の稼働率低下に繋がっている。
現有のスラッジ除去装置としては濾紙による固液分離方式や遠心力による固液分離方式あるいは磁性体スラッジに対する磁力による固液分離方式がある。
【0003】
しかしながら、濾紙によるスラッジ除去装置の場合には濾紙の目詰まり防止を目的とした逆洗浄機構の追加と定期的な濾紙交換が必要であるとともに、除去したスラッジをスラッジ除去装置外へ排出する機構が別途必要になるので、機構の複雑化による設備費用の高額化やランニングコストの高額化及び濾紙交換作業に伴う工作機械のダウンタイムが問題となる。
【0004】
そして、遠心力を利用した所謂サイクロン方式の固液分離の場合には、サイクロン式分離装置の内壁にスラッジが高速で接触することによってサイクロン式分離装置の内壁面が摩耗するので定期的な交換が必要となることと、サイクロン式分離装置の下部から排出される高濃度なダーティクーラント液からスラッジだけを抽出して工作機外へ搬出する機構が別途必要となる。
【0005】
また、磁力を利用した個液分離手段では非磁性体のスラッジは分離できず、除去した磁性体スラッジを当該分離装置外へ排出する機構が別途必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、工作機械から排出されたダーティクーラント液に含まれるスラッジを、簡便に除去して工作機外へ排出することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、密閉された筐体に収納された同一傾斜角かつ同一間隙で並べられた複数の傾斜板部あるいは同一傾斜角かつ同一内径を持つ複数の傾斜管部によって形成される通水路の集合体の下部からダーティクーラント液を非容積式の送液ポンプによって抽送し、クーラント液とスラッジの比重差を利用した自然沈降現象によって、ダーティクーラント液に含まれるスラッジを通水路上の傾斜板部の傾斜面または傾斜管部の内壁面で形成される傾斜面に沈底させて除去することと、非容積式送液ポンプの運転停止時にダーティクーラントタンクの液面とクーラント液溜まりの液面の高低差によるサイフォンの原理によって濾過済みクーラント液溜まりにあるクーラント液が通水路内を逆流することによる下降流によって通水路経路上の傾斜面に沈底しているスラッジをスラッジ除去箱の底部へ押し流すことを最も主要な特徴とする。
【0009】
本発明のスラッジ除去装置は、クーラント液とスラッジの比重差を利用した自然沈降現象によってスラッジを除去するので、濾紙を必要としない。また、他の固液分離方式とは異なり、工作機外に配置したスラッジ除去箱から同一送液ポンプの圧力を利用して簡便にスラッジを排出できるという特長を持つ。
【0010】
さらに、本発明のスラッジ除去装置は、低速で抽送されたダーティクーラント液に含まれるスラッジを自然沈降現象によって除去するので、スラッジ除去箱内壁面の摩耗が殆ど発生せず、定期的な交換や補修作業を行う必要がない。
【0011】
そして、本発明のスラッジ除去装置はクーラント液よりも比重が大きな非磁性体のスラッジも自然沈降現象によって除去できる。
【0012】
本発明を構成する独立したダーティクーラントタンクは、工作機械から直接あるいはチップコンベヤを経由して流入するダーティクーラント液に含まれるスラッジがスラッジ除去箱で除去されるまで一時貯留する目的で設置され、運転開始信号と運転停止信号を送液ポンプへ出力するための液面センサーを持ち、運転開始信号を出力する液面高さとダーティクーラントタンク上端高さとの間に、ベッドウォッシュ用クーラント液を一時貯留できる容量を持つものとする。また、運転停止信号を出力する液面高さと運転開始信号を出力する液面高さの間に、送液ポンプの運転停止時にサイフォンの原理によってスラッジ除去箱とダーティクーラントタンクの液面高さが同じになるためにスラッジ除去箱からダーティクーラントタンクへと逆流するクーラント液量を収容できる貯留量があるものとする。
【0013】
本発明を構成するダーティクーラントタンクに具備される送液ポンプはダーティクーラントタンク内のダーティクーラント液をスラッジ除去箱の下部にあるダーティクーラント液受入用開口へと抽送し、その吐出量は工作機械の加工作業時に常時排出されるクーラント液量とベッドウォッシュ用クーラント液量の合計量を、次回のベッドウォッシュ用クーラント液受入れ時までにスラッジ除去箱へ抽送する能力によって決定される。また、本発明で使用される送液ポンプは非容積式ポンプであり、運転停止時には下流側に設置されるスラッジ除去箱の液面高さと上流側に設置されるダーティクーラントタンクの液面高さが同じになるという特性を持つ。
【0014】
本発明を構成する独立したクリーンクーラントタンクは工作機械によって循環使用されるクーラント液の液温上昇を防止する目的と、工作機械が要求するクーラント液量の変動と送液ポンプの吐出量の能力差によって生じる一時的なクーラント液量不足を防止するためのバッファを目的として設置され、液温上昇を防止するために必要とされるクーラント液量からダーティクーラントタンク及びスラッジ除去箱に貯留されているクーラント液量と配管内に充填されているクーラント液量を差し引いた液量と、工作機械が要求するクーラント液量の変動と送液ポンプの吐出量によって決定されるバッファ液量のどちらか大きな液量を貯留できるものとする。
【0015】
送液ポンプによってダーティクーラントタンクからスラッジ除去箱の筐体側面下部にあるダーティクーラント液受入用開口へ抽送されたダーティクーラント液は、筐体内側でダーティクーラント液受入用開口の直近上部に設置された整流板によって流れ方向が規制されてスラッジ除去箱の底部に沿って流れ、スラッジ除去箱底部に堆積しているスラッジをスラッジ除去箱の反対側側面最下部にあるスラッジ排出用開口付近へと押し流す。
【0016】
スラッジ排出用開口の開閉弁1を閉とした状態でスラッジ除去箱に抽送されるダーティクーラント液の液量が増加するにつれて通水路内の液面高さが高くなり、通水路内に上昇流が生まれる。
【0017】
スラッジ除去箱へ抽送されたダーティクーラント液に含まれるスラッジの内、前項の上昇流速以上の沈降速度をもつ粒子径の大きなスラッジは、上昇流速と沈降速度の差速でスラッジ除去箱の底部へと沈降し、新たに抽送されるダーティクーラント液によってスラッジ除去箱の反対側側面最下部にあるスラッジ排出用開口付近へと押し流される。
【0018】
スラッジ除去箱へ抽送されたダーティクーラント液に含まれるスラッジの内、前項の上昇流速以下の沈降速度をもつ粒子径の小さなスラッジは、上昇流速と沈降速度との差速でスラッジ除去箱の通水路へと運ばれる。
【0019】
スラッジ除去箱の通水路へと運ばれたスラッジは送液ポンプの吐出量と通水路全体の断面積及び経路長で決定される時間で通水路を通過するが、その間に通水路を構成する傾斜板部または傾斜管部の傾斜面に沈底したスラッジはクーラント液から除去される。
【0020】
スラッジ除去箱の通水路を通過した濾過済みクーラント液は引き続き上昇し、ダーティクーラントタンクの液面よりも高い位置にある濾過済みクーラント液溜まりへと運ばれ、濾過済みクーラント液溜まり上端に設けられた濾過済みクーラント液排出用開口から配管を経由してクリーンクーラントタンクへと抽送される。
【0021】
スラッジ除去箱の通水路を構成する傾斜板部または傾斜管部の傾斜面に沈底したスラッジのクーラント液中での安息角が前記傾斜面の傾斜角度以下の場合は、スラッジは通水路内をスラッジ除去箱底部に向けて沈降し、新たに抽送されるダーティクーラント液によってスラッジ除去箱最下部にあるスラッジ排出用開口付近へと押し流される。
【0022】
スラッジ除去箱の通水路を構成する傾斜板部または傾斜管部の傾斜面に沈底したスラッジのクーラント液中での安息角が前記傾斜面の傾斜角度以上の場合は、沈底したスラッジは傾斜面に留まる。
【0023】
送液ポンプの運転によってダーティクーラントタンクの液面が設定高さよりも低下して非容積式送液ポンプの運転が停止すると、スラッジ除去箱の濾過済みクーラント液溜まりにある濾過済みクーラント液はサイフォンの原理によって通水路内を逆流して下降し、傾斜面に沈底して留まっていたスラッジをスラッジ除去箱底部へと押し流し、スラッジ除去箱底部に押し流されて堆積したスラッジは送液ポンプの次回運転によって新たに抽送されるダーティクーラント液によってスラッジ除去箱最下部にあるスラッジ排出用開口付近へと押し流される。尚、送液ポンプの運転停止時にクリーンクーラントタンク内の濾過済みクーラント液の貯留量が減少するのを避けるために、スラッジ除去箱からクリーンクーラントタンクへの配管の出口はクリーンクーラントの液面高さよりも高い位置にする。
【0024】
スラッジ除去箱の最下部にあるスラッジ排出用開口付近へと押し流されたスラッジは、濾過済みクーラント液排出用開口の開閉弁2を閉じると同時にスラッジ排出用開口の開閉弁1を開いて送液ポンプを運転することにより、同一送液ポンプの圧力によってスラッジ除去箱外へと排出される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【0026】
図1は、本発明装置の実施例の三面図であって、送液ポンプは工作機械の加工室またはチップコンベヤからダーティクーラント受けを経由してダーティクーラントタンクに流入したダーティクーラント液をスラッジ除去箱へ抽送すると同時に、スラッジ除去箱にてスラッジが除去された濾過済みクーラント液をクリーンクーラントタンクへと抽送している。
【0027】
図2は、本発明装置の実施例の断面図であって、傾斜板や傾斜管あるいは筐体の傾斜角度、長さと幅及び厚み、隣接する傾斜板との間隙距離あるいは傾斜管の内径、傾斜板の枚数あるいは傾斜管の本数とそれらによって決定される通水路の集合体の断面積及びダーティクーラント液の通水路通過時間は、送液ポンプの吐出量や要求される濾過精度及びスラッジやクーラント液の特性等に応じて任意に決定することができるものとする。
尚、送液ポンプの吐出量が同じであれば、濾過精度を高めるためには通水路の集合体の断面積を広くするか、通水路の経路長を長くするか、隣接する傾斜板間の間隙あるいは傾斜管の内径を小さくすれば良い。また、スラッジ除去箱の仕様が同じであれば、送液ポンプの吐出量を減少させることで濾過精度を高めることができる。
【0028】
図3は、本発明装置のスラッジ除去箱のA部に関する拡大図である。
【0029】
図4は、本発明装置のスラッジ除去箱のB部に関する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一般に微細粒子の沈降速度(終端速度)は、下記の数式1によって求められるということが物理学的にすでにわかっている。
【0031】
ストークスの式
【数1】
v : 粒子の沈降速度(m /s)、ρs : 粒子の密度(kg /m
3)、
ρw : 分散媒の密度(kg /m
3)、g : 重力加速度(m /s
2)
η : 分散媒の粘性(Pa・s)、d : 粒子径(m)
【0032】
60度に傾けた平行な傾斜板2枚の隙間が2mmの場合、2枚の傾斜板によって形成される通水路中に存在する粒子が重力によって鉛直方向に沈降して隣接する傾斜面に着床する距離は最大で約3.464mm(3,464μ)であり、送液ポンプの吐出量を25L/分、複数の傾斜板によって形成される通水路の集合体の合計断面積が900cm2通水路経路長を50cmとすると、上昇流が通水路を通過するための所要時間は108secとなる。ここで、除去対象物であるスラッジが通水路中に均一に存在している粒子状物質と考え、クーラント液の比重を1、クーラント液の動粘度を1cst、スラッジの比重を鉄と同じ7.8とし、スラッジの沈降開始から終端速度に達するまでの時間を無視できるものとすれば、ストークスの式によって求められる終端速度に基づく108secの間の粒子径毎の沈降距離と最大着床距離3,464μとの比較によって求められるスラッジ除去精度は下記となる。
粒子径1μの当該粒子の終端速度は3.75μ/secなので、108秒での沈降距離は405.00μとなり、着床する最大距離約3,464μとの比率により、11.7%の当該粒子径スラッジが傾斜面に沈底し、下方へ沈降または傾斜面上に留まることによりクーラント液から除去される。
粒子径2μの当該粒子の終端速度は14.99μ/secなので、108秒での沈降距離は1,618.92μとなり、着床する最大距離約3,464μとの比率により、46.7%の当該粒子径スラッジが傾斜面に沈底し、下方へ沈降または傾斜面上に留まることによりクーラント液から除去される。
粒子径3μの当該粒子の終端速度は33.72μ/secなので、108秒での沈降距離は3,641.76μとなり、着床する最大距離約3,464μよりも大きな値となるので、当該粒子径よりも大きなスラッジは全数が傾斜面に沈底し、下方へ沈降または傾斜面上に留まることによりクーラント液から除去される。
【0033】
スラッジ除去箱は、通常は開閉弁1を閉とし開閉弁2を開としてダーティクーラント液に含まれるスラッジの除去を行うが、スラッジ除去箱底部のスラッジ沈澱量が多くなってきた場合には開閉弁1を開とし開閉弁2を閉として送液ポンプを運転することによって、スラッジ除去箱の底部に沈殿したスラッジを同一送液ポンプの圧力によってスラッジ除去箱外へ簡便に排出することができる。
【0034】
スラッジ除去箱は、濾過済みクーラント液溜まりの位置がダーティクーラントタンクの液面よりも高ければ、工作機周辺の任意の場所に設置することができるので、排出されたスラッジの回収や保全作業の効率化に寄与する。
【0035】
スラッジ除去箱の側面下部に点検窓を設けることにより、堆積しているスラッジの量を目視確認して、最適なタイミングで開閉弁1と開閉弁2を操作して、スラッジ除去動作からスラッジ排出動作へと切り替えることができる。
【0036】
ダーティクーラントタンクの容量は、例えば加工作業終了時に工作機械から排出される短時間かつ大容量の所謂ベッドウォッシュ用のクーラント液量をベッドウォッシュ用ポンプの吐出量が200L/分で15秒間運転として50Lとすれば、液面センサーが送液ポンプへ運転開始信号を出力する液面高さの上に50Lのベッドウォッシュ用クーラント液を一時貯留できる仕様として決定できる。上記の場合、本発明を構成する送液ポンプの吐出量を25L/分とすると、加工作業終了から次回加工作業開始までに2分間以上の加工停止時間があればダーティクーラントタンク内の液面高さは送液ポンプ運転開始高さ以下となり、次回のベッドウォッシュ用クーラント液の受け入れが可能となる。
また、加工作業中にも工作機械から50Lのベッドウォッシュ用クーラント液が排出される場合であっても、工作機械の加工作業時に常時排出されるクーラント液量を20L/分とすると、ベッドウォッシュ用クーラント液の排出間隔が10分間以上あればダーティクーラントタンク内の液面高さは送液ポンプの運転開始高さ以下となり、次回の大容量クーラント液の受け入れが可能となる。
【0037】
送液ポンプを水中ポンプ仕様にしてダーティクーラントタンク内に水没させ、ダーティクーラントタンクの高さを低くすることができる。
【0038】
工作機械から排出されるダーティクーラント液を、水勾配をつけた配管によって工作機外へ持ち出し、ダーティクーラントタンクと送液ポンプを工作機外に設置することによって保全性を高めることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
通水路を形成する同一傾斜角かつ同一内径を持つ複数の傾斜管は、独立した管の集合体ではなく隣接する管と隔壁を共有している複合管でも良い。
【0040】
スラッジ除去箱の仕様が同じでも、送液ポンプの吐出量の調整によって濾過精度の変更が行えるので、工作機械が行う加工内容に応じた濾過精度の選択が容易であり、スラッジを工作機械外へ簡便に排出して回収でき、消耗品が不要なので、作業環境と保全性の向上及びランニングコストの低減が図れる。
【符号の説明】
【0041】
1クリーンクーラントタンク
2脚
3ダーティクーラントタンク
4ダーティクーラント受け
5非容積式送液ポンプ
6ダーティクーラント液用配管
7ダーティクーラント液受入用開口
8スラッジ除去箱
9開閉弁1
10スラッジ排出用開口
11濾過済みクーラント液排出用開口
12開閉弁2
13濾過済みクーラント液用配管
14整流板
15濾過済みクーラント液溜まり
16筐体
17通水路
18傾斜板あるいは傾斜管
19傾斜面
【手続補正書】
【提出日】2023-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダーティクーラントタンクとスラッジ除去箱とクリーンクーラントタンクによって構成され、ダーティクーラントタンクは工作機械の加工作業時に常時排出されるダーティクーラント液量以上の吐出量を持つ非容積式の送液ポンプと該送液ポンプに運転開始信号および運転停止信号を出力する液面センサーおよび該送液ポンプの吐出口からスラッジ除去箱下部にあるダーティクーラント液受入用開口を繋ぐ配管を具備することを特徴とし、スラッジ除去箱は密閉された筐体の中央部に同一傾斜角かつ同一間隙で並べられた複数の傾斜板部あるいは同一傾斜角かつ同一内径を持つ複数の傾斜管部によって形成される通水路の集合体を持ち、筐体上部でダーティクーラントタンク液面よりも高い位置に濾過済みクーラント液溜りを持ち、筐体最上部に濾過済みクーラント液排出用開口を持ち、筐体下部にダーティクーラント液受入用開口を持ち、筐体最下部にスラッジ排出用開口を持つことと、筐体最上部にある濾過済みクーラント液排出用開口からクリーンクーラントタンクを繋ぐ配管を具備することを特徴とすることにより、送液ポンプ運転時にはスラッジ除去箱の通水路内に発生する上昇流によって上方へと運ばれるダーティクーラント液に含まれるスラッジがクーラント液とスラッジの比重差によって通水路経路上で鉛直方向へ下降して、隣接する傾斜板部または傾斜管部の傾斜面に沈底してクーラント液から除去され、送液ポンプ運転停止時にはダーティクーラントタンクの液面と前記濾過済みクーラント液溜まりの液面の高低差によるサイフォンの原理によって前記濾過済みクーラント液溜まりにあるクーラント液が通水路内を逆流する下降流によって通水路経路上の傾斜板部の斜面または傾斜管部の内壁面で形成される傾斜面に沈底しているスラッジをスラッジ除去箱の底部へ押し流すことを特徴とするスラッジ除去装置。
【請求項2】
ダーティクーラント液受入用開口をスラッジ除去箱側面下部に配置し、反対側側面の最下部にスラッジ排出用開口を配置し、送液ポンプによってダーティクーラント液受入用開口へ抽送されたダーティクーラント液をスラッジ除去箱底部に沿って前記スラッジ排出用開口に向かって流すための整流板を持つことにより、スラッジ除去箱底部に沈底して堆積したスラッジを前記送液ポンプの圧力によって前記スラッジ排出用開口付近へ集めることを特徴とする請求項1のスラッジ除去装置。
【請求項3】
濾過済みクーラント液排出用開口とスラッジ排出用開口に開閉弁を持ち、濾過済みクーラント液排出用開口の開閉弁を開としスラッジ排出用開口の開閉弁を閉として送液ポンプを運転することによりスラッジを除去し、濾過済みクーラント液排出用開口の開閉弁を閉としスラッジ排出用開口の開閉弁を開として前記送液ポンプを運転することによりスラッジ除去箱のスラッジ排出用開口付近に堆積したスラッジを前記送液ポンプの圧力によってスラッジ除去箱外へ排出することを特徴とする請求項1のスラッジ除去装置。