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  • 特開-ペレット製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025144248
(43)【公開日】2025-10-02
(54)【発明の名称】ペレット製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/06 20060101AFI20250925BHJP
   B29K 1/00 20060101ALN20250925BHJP
【FI】
B29B9/06
B29K1:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043935
(22)【出願日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506405426
【氏名又は名称】株式会社チヨダマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 康司
(72)【発明者】
【氏名】北原 哲五郎
【テーマコード(参考)】
4F201
【Fターム(参考)】
4F201AA01
4F201AJ08
4F201AK02
4F201AP05
4F201AR06
4F201BA02
4F201BC02
4F201BC13
4F201BL09
4F201BL11
4F201BL25
4F201BL36
(57)【要約】
【課題】植物由来の原料から安定して確実に固めて高品質のペレットを製造できるペレット製造装置を提供する。
【解決手段】ペレット製造装置1であって、植物由来の原料Mを押出成形してペレットPを製造する押出機10と、原料Mに散水する散水装置60と、散水装置60を制御する制御装置70と、を備えている。押出機10は、成形孔21が貫通したダイス20と、ダイス20の温度を計測する温度センサ80と、を備えている。制御装置70は、ダイス20の温度が設定温度範囲の上限温度以上の場合には、散水装置60から散水させ、ダイス20の温度が設定温度範囲の下限温度以下の場合には、散水装置60の散水を停止させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の原料を押出成形してペレットを製造する押出機と、
前記原料に対して散水する散水装置と、
前記散水装置の散水を制御する制御装置と、を備え、
前記押出機は、
前記原料が押し込まれる成形孔が貫通したダイスと、
前記ダイスの温度を計測する温度センサと、を有し、
前記制御装置は、
前記温度が設定温度範囲の上限温度以上の場合には、前記散水装置から散水させ、
前記温度が前記設定温度範囲の下限温度以下の場合には、前記散水装置の散水を停止させることを特徴とするペレット製造装置。
【請求項2】
前記押出機は、
前記ダイスの上面を転動する複数のローラーと、
前記ダイスの下面側に配置された切断刃と、を備え、
前記ダイスの上面から下面に亘って前記成形孔が貫通していることを特徴とする請求項1に記載のペレット製造装置。
【請求項3】
前記原料は、ジャイアントミスカンサスであることを特徴とする請求項1に記載のペレット製造装置。
【請求項4】
前記上限温度は、83.0度であり、
前記下限温度は、82.4度であることを特徴とする請求項3に記載のペレット製造装置。
【請求項5】
前記原料を前記押出機に供給する原料供給装置を備え、
前記原料供給装置および前記押出機は、車両の荷台に搭載可能であることを特徴とする請求項1に記載のペレット製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
灯油や重油などの石油資源からバイオマス資源へのエネルギー転換として、植物由来の原料を圧縮成形したペレットを燃料として利用することが知られている。
そして、植物由来の原料をローラーによってダイスの成形孔に押し込み、成形孔から押し出された原料を切断することで、ペレットを製造する方法がある。
さらに、前記したペレットの製造方法としては、成形直後のペレットの表面温度を計測し、その表面温度が所定の範囲内に収まるように制御することで、原料を確実に固めているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-252783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のペレット製造装置では、成形直後のペレットの表面温度を精度良く計測し難いため、原料を安定して固めることが難しい。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、植物由来の原料を安定して確実に固めて高品質のペレットを製造できるペレット製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、ペレット製造装置であって、植物由来の原料を押出成形してペレットを製造する押出機と、前記原料に対して散水する散水装置と、前記散水装置の散水を制御する制御装置と、を備えている。前記押出機は、前記原料が押し込まれる成形孔が貫通したダイスと、前記ダイスの温度を計測する温度センサと、を備えている。前記制御装置は、前記温度が設定温度範囲の上限温度以上の場合には、前記散水装置から散水させ、前記温度が前記設定温度範囲の下限温度以下の場合には、前記散水装置の散水を停止させる。
【0007】
植物由来の原料が押出成形によって固まる条件としては、原料の含水量が大きく影響している。また、ダイスの成形孔によって原料を押出成形する際に、原料の含水量が多いとダイスの温度が低下し、原料の含水量が少ないとダイスの温度が上昇する。このように、原料の含水量とダイスの温度とは相関している。
本発明では、押出成形に適した含水量を備えた原料を押出成形したときのダイスの温度範囲を予め算出しておき、その温度範囲内に収まるように、原料に対して散水して、ダイスの温度を調整することで、原料が確実に固まるように、原料の含水量を調整していることになる。
ダイスの温度は容易に精度良く計測できるため、本発明のペレット製造装置では、ダイスの温度に基づいて、原料の含水量を精度良く調整できる。これにより、本発明のペレット製造装置では、原料を安定して確実に固めて高品質のペレットを製造できる。
【0008】
前記押出機は、前記ダイスの上面を転動する複数のローラーと、前記ダイスの下面側に配置された切断刃と、を備え、前記ダイスの上面から下面に亘って前記成形孔が貫通しているフラットダイ方式を用いることができる。
例えば、原料が草である場合には、原料に含まれるリグニンの量が少ないため、リグニンの熱軟化のみに依存することなく、100度以下の低温におけるセルロース、ヘミセルロース等の熱軟化も利用した低温成形が望ましい。また、草は柔らかいため、原料を粉化するのが難しい。
前記したフラットダイ方式の押出機では、原料をチップ(小片)の状態で押出成形できるため、原料の処理が容易になる。また、前記したフラットダイ方式の押出機では、リングダイ方式の押出機に比べて、原料を押出成形する際のダイスの温度を抑えることができるため、原料が草である場合でも高品質のペレットを製造できる。
【0009】
前記原料としては、ジャイアントミスカンサス(Miscanthus×giganteus)を用いることができる。ススキ属植物のジャイアントミスカンサスは、低温環境および少ない肥料で栽培可能であるとともに、多年生植物で持続的な生産性や土壌中への炭素貯留機能を有している。また、ジャイアントミスカンサスは、収穫時の含水量が少ないため、収穫後に乾燥機によって含水量を調整しなくても、ペレットの原料として利用できる。
本発明のペレット製造装置では、環境に優しい環境再生型農業の作目であるジャイアントミスカンサスから高品質のペレットを製造できる。
【0010】
また、原料がジャイアントミスカンサスである場合には、前記上限温度を83.0度に設定し、前記下限温度を82.4度に設定することで、ペレットが崩れ難くなる。
【0011】
前記したペレット製造装置に、前記原料を前記押出機に供給する原料供給装置を設け、前記原料供給装置および前記押出機が車両の荷台に搭載可能であることが好ましい。
この構成では、原料を収穫する圃場においてペレットを製造できるため、圃場から工場に原料を搬送する場合に比べて、ペレットの製造効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のペレット製造装置では、ダイスの温度を容易に精度良く計測することができ、ダイスの温度に基づいて、原料の含水量を調整することで、原料を安定して確実に固めて高品質のペレットを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るペレット製造装置を示した側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るペレット製造装置を示した全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態に係るペレット製造装置を示した全体構成図である。
本実施形態では、図2に示すように、ジャイアントミスカンサスを原料とする燃料用のペレットPを製造するペレット製造装置1について説明する。
ジャイアントミスカンサスは、ススキ属植物の草である。本実施形態では、圃場から刈り取ったジャイアントミスカンサスのチップ(小片)を原料Mとする。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るペレット製造装置を示した側面図である。
ペレット製造装置1は、図1に示すように、押出機10と、原料供給装置50と、散水装置60と、制御装置70と、を備えている。本実施形態のペレット製造装置1では、押出機10、原料供給装置50および散水装置60がトラックTの荷台T1上に積載可能である。
【0016】
押出機10は、図2に示すように、原料MからペレットPを製造する造粒機である。本実施形態では、フラットダイ方式の押出機10を用いている。
押出機10は、筒状のハウジング11と、ハウジング11内に収容されたダイス20と、ダイス20の上面を転動する複数のローラー30と、ダイス20の下面側に配置された切断刃12と、ダイス20の温度を計測する温度センサ80と、を備えている。
【0017】
ハウジング11の上端部には、原料Mが投入される投入口11aが開口し、ハウジング11の周壁部には、ペレットPを排出するための排出口11bが開口している。
ハウジング11において、投入口11aと排出口11bとの間の空間には、ダイス20、各ローラー30および切断刃12が収容されている。
【0018】
ダイス20は、円板状の金属製の部材であり、両平面が上下に配置されている。ダイス20は、投入口11aの直下に配置されている。ダイス20には、上面から下面に亘って複数の成形孔21が貫通している。
【0019】
ローラー30は、横方向の軸回りに外周面が形成された円柱状の金属製の部材である。ローラー30の外周面の下端部がダイス20の上面に接している。本実施形態では、複数のロータ―30がダイス20の周方向に間隔を空けて配置されている。各ローラー30の回転軸は、ダイス20の上面の中心部に立設された支軸31に連結されている。支軸31が図示しない駆動機構によって軸回りに回転することで、各ローラー30がダイス20の上面を、ダイス20の周方向に転動するように構成されている。
【0020】
切断刃12は、ダイス20の下面側に配置されている。切断刃12の刃面は、ダイス20の下面に平行かつ近接して配置されている。切断刃12は、図示しない駆動機構によってダイス20の下面に沿って往復動可能である。
【0021】
ハウジング11内には、ダイス20の温度を計測する温度センサ80が設けられている。温度センサ80によって計測された温度は、後記する制御装置70に出力される。
【0022】
原料供給装置50は、図1に示すように、ホッパー51と、ホッパー51の下部から斜め上向きに延在しているコンベヤ52と、を備えている。
ホッパー51内には、回転刃(図示せず)が設けられている。圃場で収穫されたジャイアントミスカンサスを、ホッパー51の上端開口部に投入すると、ホッパー51内でチップに破砕されて原料M(図2参照)が製造される。コンベヤ52の先端部に設けられた排出部52aは、押出機10の投入口11aの直上に配置されている。ホッパー51内の原料M(図2参照)は、コンベヤ52によって押出機10の投入口11aに投入される。
【0023】
押出機10では、図2に示すように、ハウジング11の投入口11aに原料Mが投入されると、原料Mはダイス20の上面に載置される。そして、各ローラーを30がダイス20の上面を転動すると、各ダイス20の上面に載置された原料Mは、各ローラー30の外周面によって各成形孔21に押し込まれ、ダイス20の下面側で各成形孔21から押し出される。
各成形孔21からダイス20の下面側に押し出された原料Mは、切断刃12によって所定の長さに切断され、多数のペレットPが形成される。そして、ハウジング11の下部に落ちた各ペレットPは、ハウジング11の排出口11bから外部に排出される。
【0024】
本実施形態のペレット製造装置1は、原料Mに対して散水する散水装置60と、散水装置60の散水を制御する制御装置70と、を備えている。
散水装置60は、散水ノズル61と、貯水タンク62と、ポンプ63と、連結ホース64と、を備えている。
【0025】
散水ノズル61は、押出機10の投入口11aに設けられている。連結ホース64は、散水ノズル61とポンプ63とを連結している。ポンプ63によって貯水タンク62内の水が汲み上げられ、連結ホース64を通じて散水ノズル61に供給される。そして、散水ノズル61からハウジング11内の原料Mに対して散水される。
【0026】
制御装置70は、コンピュータであり、温度センサ80によって計測されたダイス20の温度に応じて、散水ノズル61からの散水を制御する。制御装置70には、予め設定された設定温度範囲が記憶されている。
そして、制御装置70では、ダイス20の温度が設定温度範囲の上限温度以上の場合には、ポンプ63を駆動させて散水ノズル61から散水させる。
また、制御装置70では、ポンプ63が駆動した状態(散水ノズル61から散水している状態)で、ダイス20の温度が設定温度範囲の下限温度以下になると、ポンプ63を停止させて散水ノズル61の散水を停止させる。
【0027】
ここで、ダイス20の各成形孔21によって原料Mを押出成形する際に、原料Mの含水量が多いとダイス20の温度が低下し、原料Mの含水量が少ないとダイス20の温度が上昇するという相関関係がある。
【0028】
本実施形態では、ジャイアントミスカンサスである原料Mが押出成形によって確実に固まるときの原料Mの含水量を予め実験により算出し、その含水量を備えた原料Mを押出成形したときのダイス20の温度範囲を設定温度範囲としている。
すなわち、制御装置では、設定温度範囲内に収まるように、原料Mに対して散水して、ダイス20の温度を調整することで、原料Mが確実に固まるように、原料Mの含水量を調整していることになる。
【0029】
本実施形態において、設定温度範囲の上限温度は83.0度であり、設定温度範囲の下限温度は82.4度に設定されている。
したがって、制御装置70では、ダイス20の温度が83.0度以上の場合には、ポンプ63を駆動させて散水ノズル61から原料Mに対して散水を開始する。
また、制御装置70では、ポンプ63を駆動させた状態で、ダイス20の温度が82.4度以下になると、ポンプ63を停止させて散水ノズル61から原料Mに対する散水を停止する。
【0030】
以上のようなペレット製造装置1では、温度センサ80によって、ダイス20の温度を容易に精度良く計測できる。そして、ペレット製造装置1では、ダイス20の温度に基づいて、原料Mの含水量を精度良く調整できるため、原料Mを安定して確実に固めて高品質のペレットPを製造できる。
【0031】
圃場から収穫したジャイアントミスカンサスを粉化するのは難しいが、フラットダイ方式の押出機10では、原料Mをチップの状態で押出成形できるため、ジャイアントミスカンサスを原料Mとして利用し易い。
また、ジャイアントミスカンサスは、ダイス20の温度が高いと、ペレットPの品質が低下するが、フラットダイ方式の押出機10では、リングダイ方式に比べて、原料Mを押出成形する際のダイス20の温度を抑えることができるため、ジャイアントミスカンサスから高品質のペレットPを製造できる。
また、ジャイアントミスカンサスは、収穫時の含水量が少ないため、収穫後に乾燥機によって含水量を調整しなくても、原料Mとして利用できる。
このように、本実施形態のペレット製造装置1では、環境に優しい環境再生型農業の作目であるジャイアントミスカンサスから高品質のペレットPを製造できる。
【0032】
また、本実施形態のペレット製造装置1では、設定温度範囲の上限温度を83.0度に設定し、設定温度範囲の下限温度を82.4度に設定することで、ジャイアントミスカンサスを原料MとするペレットPが崩れ難くなる。
【0033】
本実施形態のペレット製造装置1では、図1に示すように、原料供給装置、押出機および散水装置60は、トラックT(車両)の荷台T1に搭載可能であるため、ジャイアントミスカンサスを収穫する圃場においてペレットP(図2参照)を効率良く製造できる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
図2に示すように、本実施形態のペレット製造装置1では、ジャイアントミスカンサスを原料Mとしているが、原料Mは限定されるものではなく、各種の植物を原料として用いることができる。そして、設定温度範囲の上限温度および下限温度は、原料の種類に応じて、その原料が押出成形によって固まり易い温度の上限および下限に設定される。
【0035】
ジャイアントミスカンサスを原料Mとする場合には、設定温度範囲の上限温度を83.5度、下限温度を82.0度に設定することでペレットPを製造できるが、より好ましくは、設定温度範囲の上限温度を83.0度、下限温度を82.4度に設定することで、ペレットPが崩れ難くなる。
【0036】
本実施形態の散水装置60では、一定の流水量で散水ノズル61から原料Mに対して散水しているが、ダイス20の温度が上がるに連れて、散水ノズル61からの散水量(原料Mの投入量に対する散水量)が増えるように、流量調整弁を設けてもよい。このようにすると、ダイス20の温度を効率良く低下させることができる。
【0037】
本実施形態では、フラッダイ方式の押出機10を用いているが、押出機(造粒機)の方式は限定されるものではなく、例えば、リングダイ方式の押出機を用いてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 ペレット製造装置
10 押出機
11 ハウジング
11a 投入口
11b 排出口
12 切断刃
20 ダイス
21 成形孔
30 ローラー
31 支軸
50 原料供給装置
51 ホッパー
52 コンベヤ
52a 排出部
60 散水装置
61 散水ノズル
62 貯水タンク
63 ポンプ
64 連結ホース
70 制御装置
80 温度センサ
M 原料
P ペレット
T トラック
T1 荷台
図1
図2