(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025146204
(43)【公開日】2025-10-03
(54)【発明の名称】車両監視装置、車両監視方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 13/00 20060101AFI20250926BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20250926BHJP
B60R 25/31 20130101ALI20250926BHJP
【FI】
G08B13/00 B
G08B21/00 U
B60R25/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046857
(22)【出願日】2024-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤栄 哲也
【テーマコード(参考)】
5C084
5C086
【Fターム(参考)】
5C084AA02
5C084AA06
5C084AA13
5C084DD07
5C084EE06
5C084HH01
5C084HH07
5C086AA28
5C086BA22
5C086CA06
5C086DA08
5C086FA02
5C086FA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両を監視するセンサの死角に不審者が存在することを検出できるようにする。
【解決手段】電磁波を照射して当該電磁波の反射波を検出することにより動体を検出する動体センサが生成したデータであって、車両の周囲の動体の少なくとも位置を示す検出データを取得する取得部100と、検出データが、以下の1)、並びに2)及び2´)の少なくとも一方の条件を満たすとき、動体が、所定の体勢になることにより、動体センサの死角のうち対応が必要な死角である第1の死角に位置している第1状態になったと判断する判断部と、を備える車両監視装置。1)動体が、動体センサに検出された後に、検出されなくなった。2)最後に検出された動体の位置が、動体センサの検出範囲の内側、かつ当該範囲の縁から所定距離離れている。2´)最後に検出された動体の移動方向が、電磁波が車両の車体に遮られることによって生じた第2の死角に入る方向でない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を照射して当該電磁波の反射波を検出することにより動体を検出する動体センサが生成したデータであって、車両の周囲の動体の少なくとも位置を示す検出データを取得する取得部と、
前記検出データが、以下の1)、並びに2)及び2´)の少なくとも一方の条件を満たすとき、前記動体が、所定の体勢になることにより、前記動体センサの死角のうち対応が必要な死角である第1の死角に位置している第1状態になったと判断する判断部と、
を備える車両監視装置。
1)前記動体が、前記動体センサに検出された後に、検出されなくなった。
2)最後に検出された前記動体の位置が、前記動体センサの検出範囲の内側、かつ当該範囲の縁から所定距離離れている。
2´)最後に検出された前記動体の移動方向が、電磁波が前記車両の車体に遮られることによって生じた第2の死角に入る方向及び前記動体センサの検出範囲から出る方向のいずれでもない。
【請求項2】
前記動体が前記第1状態になったと判断した場合に、所定の処理を行なう処理部を備える、請求項1に記載の車両監視装置。
【請求項3】
前記所定の処理は、前記車両に取り付けられた出力装置から音及び光の少なくとも一方を出力することを含む、請求項2に記載の車両監視装置。
【請求項4】
前記所定の処理は、前記車両に対応付けられている通信装置への通知処理を含む、
請求項2に記載の車両監視装置。
【請求項5】
前記所定の処理は、前記第1状態と判断したときから所定時間前までの時間における、前記車両に取り付けられている撮像装置が取得した画像の少なくとも一部を、前記通信装置にて閲覧可能にする処理を含む、
請求項4に記載の車両監視装置。
【請求項6】
前記所定の処理は、前記動体を最後に検出した位置に応じて異なる、
請求項2乃至5のいずれかに記載の車両監視装置。
【請求項7】
前記動体を最後に検出した位置が、前記車両の電子ロック解除を行うことができる位置である場合、
前記所定の処理は、前記車両の電子ロック解除が行われている可能性があることを通知することを含む、請求項6に記載の車両監視装置。
【請求項8】
前記動体を最後に検出した位置が、前記車両のタイヤから所定距離以内の位置である場合、
前記所定の処理は、前記車両のタイヤが盗難されている可能性があることを通知することを含む、請求項6に記載の車両監視装置。
【請求項9】
前記検出データが、さらに以下の条件を満たすときに、前記第1状態になったと判断する、請求項1乃至5のいずれかに記載の車両監視装置。
3)前記動体が検出されなくなる前に、前記動体が前記車両に沿う方向に移動していた。
【請求項10】
前記検出データが、さらに以下の条件を満たすときに、前記第1状態になったと判断する、請求項1乃至5のいずれかに記載の車両監視装置。
4)前記動体が検出されなくなってから所定時間が経過しても、前記動体が検出されない。
【請求項11】
コンピュータが、
電磁波を照射して当該電磁波の反射波を検出することにより動体を検出する動体センサが生成したデータであって、車両の周囲の動体の少なくとも位置を示す検出データを取得し、
前記検出データが、以下の1)、並びに2)及び2´)の少なくとも一方の条件を満たすとき、前記動体が、所定の体勢になることにより、前記動体センサの死角のうち対応が必要な死角である第1の死角に位置している第1状態になったと判断することを含む車両監視方法。
1)前記動体が、前記動体センサに検出された後に、検出されなくなった。
2)最後に検出された前記動体の位置が、前記動体センサの検出範囲の内側、かつ当該範囲の縁から所定距離離れている。
2´)最後に検出された前記動体の移動方向が、電磁波が前記車両の車体に遮られることによって生じた第2の死角に入る方向及び前記動体センサの検出範囲から出る方向のいずれでもない。
【請求項12】
コンピュータを、
電磁波を照射して当該電磁波の反射波を検出することにより動体を検出する動体センサが生成したデータであって、車両の周囲の動体の少なくとも位置を示す検出データを取得する取得部、
前記検出データが、以下の1)、並びに2)及び2´)の少なくとも一方の条件を満たすとき、前記動体が、所定の体勢になることにより、前記動体センサの死角のうち対応が必要な死角である第1の死角に位置している第1状態になったと判断する判断部、
として機能させるプログラム。
1)前記動体が、前記動体センサに検出された後に、検出されなくなった。
2)最後に検出された前記動体の位置が、前記動体センサの検出範囲の内側、かつ当該範囲の縁から所定距離離れている。
2´)最後に検出された前記動体の移動方向が、電磁波が前記車両の車体に遮られることによって生じた第2の死角に入る方向及び前記動体センサの検出範囲から出る方向のいずれでもない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両監視装置、車両監視方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に取り付けたセンサによって、物体の有無を判断することが行われている。例えば、特許文献1には、死角領域における物体の有無を判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不審者による車両への行為は、車両を監視するセンサの死角で行われる場合がある。本発明が解決しようとする課題の一例は、車両を監視するセンサの死角に不審者が存在することを検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の車両監視装置、車両監視方法、及びプログラムが提供される。
【0006】
請求項1に記載の発明は、
電磁波を照射して当該電磁波の反射波を検出することにより動体を検出する動体センサが生成したデータであって、車両の周囲の動体の少なくとも位置を示す検出データを取得する取得部と、
前記検出データが、以下の1)、並びに2)及び2´)の少なくとも一方の条件を満たすとき、前記動体が、所定の体勢になることにより、前記動体センサの死角のうち対応が必要な死角である第1の死角に位置している第1状態になったと判断する判断部と、
を備える車両監視装置である。
1)前記動体が、前記動体センサに検出された後に、検出されなくなった。
2)最後に検出された前記動体の位置が、前記動体センサの検出範囲の内側、かつ当該範囲の縁から所定距離離れている。
2´)最後に検出された前記動体の移動方向が、電磁波が前記車両の車体に遮られることによって生じた第2の死角に入る方向及び前記動体センサの検出範囲から出る方向のいずれでもない。
【0007】
請求項11に記載の発明は、
コンピュータが、
電磁波を照射して当該電磁波の反射波を検出することにより動体を検出する動体センサが生成したデータであって、車両の周囲の動体の少なくとも位置を示す検出データを取得し、
前記検出データが、以下の1)、並びに2)及び2´)の少なくとも一方の条件を満たすとき、前記動体が、所定の体勢になることにより、前記動体センサの死角のうち対応が必要な死角である第1の死角に位置している第1状態になったと判断することを含む車両監視方法である。
1)前記動体が、前記動体センサに検出された後に、検出されなくなった。
2)最後に検出された前記動体の位置が、前記動体センサの検出範囲の内側、かつ当該範囲の縁から所定距離離れている。
2´)最後に検出された前記動体の移動方向が、電磁波が前記車両の車体に遮られることによって生じた第2の死角に入る方向及び前記動体センサの検出範囲から出る方向のいずれでもない。
【0008】
請求項12に記載の発明は、
上記の車両監視方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における車両監視装置の概要を示すブロック図である。
【
図2】車両と第1の死角の関係を示す概要図である。
【
図4】車両と第2の死角の関係を示す概要図である。
【
図5】記憶部が記憶するデータの一例を示す図である。
【
図6】車両監視装置のハードウェアの構成の一例を示す図である。
【
図7】第1実施形態における車両監視装置の動作の一例を示す図である。
【
図8】第2実施形態における車両監視装置の概要を示すブロック図である。
【
図9】第2実施形態における車両監視装置の動作の一例を示す図である。
【
図10】第3実施形態における車両監視装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、全ての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る車両監視装置10の概要を示すブロック図である。車両監視装置10は、取得部100、判断部200、及び記憶部300を有し、動体センサ20と共に使用される。ただし、記憶部300は、車両監視装置10の内部に含まれてもよいし、外部に備えられていてもよい。また、車両監視装置10は、さらに監視カメラなどの撮像装置と一緒に用いられてもよい。
【0012】
取得部100は、動体センサ20から、車両の周囲の動体の少なくとも位置を示す検出データを取得する。そして、判断部200は、取得部100が取得した検出データが所定の条件を満たす場合に、動体が、所定の体勢になることにより動体センサ20の死角に位置している第1状態になったと判断する。
【0013】
動体センサ20が検出する動体は、車両に近づく不審者を含む。すなわち、第1状態とは、例えば車両に接近した不審者がしゃがんで動体センサ20の死角に入った状態であり、盗難行為が行われている可能性がある状態である。本実施形態に係る車両監視装置10によれば、上記のような、不審者が動体センサ20の死角に入った状態を検出することで、盗難行為を防ぐことができる。以下、各構成の詳細について説明する。
【0014】
[取得部100]
取得部100は、動体センサ20が生成したデータであって、車両の周囲の動体の少なくとも位置を示す検出データを取得する。取得部100が取得した検出データは、後述する判断部200が、第1状態か否かを判断する際に用いられる。
【0015】
[動体センサ20]
動体センサ20は、例えば電磁波を照射して電磁波の反射波を検出することにより動体を検出するセンサである。動体センサ20は、基本的に電磁波の反射波を観測可能な範囲内であれば動体を検出できる。しかし、死角、例えば後述する第1の死角及び第2の死角には電磁波を照射できず、動体を検出できない可能性がある。なお、動体センサ20は、一つの車両に対して複数備えられていてもよい。
【0016】
図2は、動体センサ20を含む車両1、検出範囲2及び第1の死角3の関係を示す概要図である。
図2は、車両1の後方から見た図である。
【0017】
本実施形態において、検出範囲2は、動体センサ20から電磁波の反射波を観測可能な限界距離Rより狭い範囲であり、動体センサ20から動体までの距離及び動体センサ20から動体への角度の両方を検出できる範囲である。なお、動体が限界距離Rより近くに位置しているが検出範囲2の外側に位置している場合、動体センサ20は、動体の存在を検知できるが、その位置すなわち動体までの距離及び方向を検知できない。限界距離Rは、例えば車両1から9m以上11m以下の距離であり、例えば10mである。
【0018】
次に、第1の死角3について説明する。第1の死角3は、動体センサ20から電磁波を照射できない領域である。第1の死角3は、例えば、動体センサ20から見て車体のうち電磁波を遮る部分(例えば、窓以外の部分)により隠れる領域であり、検出範囲2の下側の領域である。
図3に示すように、第1の死角3は、一例として、車両1の後方から見て略三角形である。基本的に、車両1の周辺の地面付近の領域は、動体センサ20から見て車体のうち電磁波を遮る部分により隠れる領域になるため、第1の死角3となる。そのため、動体(不審者)が上面視において検出範囲2の内側にいる場合であっても、しゃがむなどの所定の姿勢になった場合、第1の死角3に隠れて検出されなくなる可能性がある。
【0019】
次に、第2の死角4について説明する。
図4は、動体センサ20を含む車両1、検出範囲2及び第2の死角4の関係を示す概要図である。
図4は、車両1の上面視における図である。
図4に示す例では、動体センサ20は、3つ(20a、20b、20c)備えられており、それぞれが検出範囲2a、2b、2cを有する。検出範囲2a、2b、2cは互いに一部が重なっていてもよい。また、タイヤの盗難等は車両側面から行われることが通常であることから車両側面への監視を最低限行えればよいのであれば、2aを除いた2b、2cを検出範囲としてもよい。
【0020】
図4に示すように、本実施形態において検出範囲2は、上面視においては、例えば動体センサ20を中心として扇状の領域である。ただし、上面視における検出範囲2の形状は、扇形に限らない。例えば、車両1から所定距離以内の範囲が検出範囲2となるように設定されていてもよい。所定距離は、例えば車両1から1m以上3m以下の距離であり、例えば2mである。
【0021】
第2の死角4は、動体センサ20からの電磁波が届かない領域、すなわち動体センサ20から見て車体のうち電磁波を遮る部分に隠れる領域であり、例えばピラーに隠れる領域である。
図4に示すように、第2の死角4は、一例として、上面視において検出範囲2の内側の所定方向における車両の外側の領域である。検出範囲2が第2の死角4を含む場合、動体(不審者)が上面視において検出範囲2の内側を水平方向に移動している場合であっても、第2の死角4に移動した場合には検出されなくなる可能性がある。
【0022】
なお、上述した第1の死角3及び第2の死角4の範囲は、後述する記憶部300に予め記憶されている、或いは、車両監視装置10及び動体センサ20が起動したときに、動体センサ20の検出結果から、第1の死角3及び第2の死角4の範囲は設定される。また、上記した第1の死角3及び第2の死角4は一例であり、車両1の種類や動体センサ20の数及び取り付け位置によって、第1の死角3及び第2の死角4となる領域は異なる。
【0023】
本実施形態に係る車両監視装置10は、後述する判断部200によって、第1の死角3に存在する不審者を検出することができる。
【0024】
[判断部200]
判断部200は、上述した検出データが所定の条件を満たす場合に、第1状態と判断する。第1状態とは、動体(不審者)が、しゃがむなどの所定の体勢になることにより動体センサ20の第1の死角3に位置している状態であり、例えば
図3に示す状態である。
図4に示すように、しゃがんだ不審者5は、第1の死角3に隠れる場合がある。
【0025】
判断部200が、第1状態と判断する条件の一例について説明する。判断部200は、例えば検出データが以下の1)、並びに2)及び2´)の少なくとも一方の条件を満たすとき、動体が、所定の体勢になることにより、動体センサ20の死角のうち対応が必要な死角である第1の死角3に位置している第1状態になったと判断する。
1)動体が、動体センサに検出された後に、検出されなくなった。
2)最後に検出された動体の位置が、上面視における動体センサの検出範囲2の内側、かつ検出範囲2の縁から所定距離離れている。
2´)最後に検出された動体の移動方向が、電磁波が車両の車体に遮られることによって生じた第2の死角4に入る方向及び動体センサ20の検出範囲から出る方向のいずれでもない。
【0026】
上記の条件について説明する。まず、1)動体が、動体センサに検出された後に、検出されなくなった場合は、検出範囲2の付近に不審者(動体)が潜んでいる可能性がある。さらに、2)最後に検出された動体の位置が、上面視における動体センサの検出範囲2の内側、かつ検出範囲2の縁から所定距離離れている場合、不審者(動体)が水平方向に移動して第2の死角4に入った、又は検出範囲2の外側に行ったのではなく、しゃがむなどの所定の体勢になることにより動体センサ20の死角に位置している可能性が高い。上面視における検出範囲2の縁は、言い換えると、検出範囲2の、第2の死角4との縁、及び検出範囲2の外側との縁である。なお、所定距離は例えば、15cm以上50cm以下の距離である。また、2´)最後に検出された動体の移動方向が、電磁波が車両の車体に遮られることによって生じた第2の死角4に入る方向及び動体センサ20の検出範囲から出る方向のいずれでもない場合、不審者(動体)が検出されなかった理由は、不審者(動体)が、水平方向に移動して第2の死角4に入った又は動体センサ20の検出範囲から出たのではなく、しゃがむなどの所定の体勢になることにより動体センサ20の死角に位置していることである可能性が高い。以上から、判断部200は、上記1)、並びに2)及び2´)の少なくとも一方の条件を満たす場合に、第1状態と判断する。
【0027】
また、検出データがさらに以下の条件を満たすときに、第1状態と判断してもよい。
3)動体が検出されなくなる前に、動体が車両1に沿う方向に移動していた。
4)動体が検出されなくなってから所定時間が経過しても、動体が検出されない。
【0028】
3)の条件について、例えば、不審者が盗難行為を行う場合、直前に車両1の周辺を物色している可能性が高い。そして、物色する際には、動体(不審者)が車両1に沿う方向に移動している可能性が高い。そのため、3)の条件を加えることで、より盗難行為が行われている可能性が高い状態を第1状態と判断することができる。
【0029】
また、4)の条件について、例えば、車両1付近の通行人(動体)が靴ひもを直すなどの理由でしゃがんで第1の死角3へ隠れる場合がある。この場合、第1の死角3へ隠れている時間はあまり長くならない可能性が高い。第1状態と判断する条件に上記条件を加えることで、単に車両1付近で通行人がしゃがんだ場合などの状態を、第1状態と判断しないことができる。一方で、不審者(動体)が、車両1への盗難行為等を行う場合は、第1の死角3へ隠れている時間が長くなる可能性が高い。そのため、4)の条件を加えた場合でも、不審者が、車両1へ盗難行為等を行っている場合には、第1状態と判断することができる。
【0030】
[記憶部300]
次に、車両監視装置10の記憶部が記憶する検出データの一例を、
図5に示す。記憶部300は、一例として、動体センサ20が検出した動体の、検出時間、動体ID、動体特徴量、検出開始位置、検出終了位置、及び移動方向を記憶する。検出時間とは、動体を検出開始してから、動体が検出されなくなるまでの時間である。また、動体IDとは、検出した動体を識別するための情報であり、例えば文字列である。また、動体特徴量は、検出した動体の外見の特徴量であり、例えば動体の大きさ、形、及び色などを含む。動体特徴量は、例えば監視カメラ等の撮像装置が取得した画像を画像処理することで取得される。また、検出開始位置は動体を最初に検出した位置を示し、検出終了位置は動体を最後に検出した位置を示す。検出開始位置及び検出終了位置は、いずれも水平方向における位置(言い換えると上面視における位置)を示し、例えば車両1からの角度及び距離で表される。検出開始位置及び検出終了位置は、この他にも、座標で表されてもよいし、車両1からの各位置に対応づけられた識別情報によって表されてもよい。また、移動方向は、検出した動体が移動している方向を示す。移動方向を算出する方法としては、例えば動体の位置の時系列データを用いるなど、既存の方法を用いることができる。記憶部300は、動体を検出している間の全てにおける動体の移動方向を記憶していてもよいし、動体を最初に検出したときと、動体を最後に検出したときの移動方向のみを記憶していてもよい。
【0031】
例えば、単に通行人が車両1の近くを通った場合、上記の検出時間は非常に短い時間となる。また検出終了位置は、検出範囲2の上面視における外側付近となる。一方で、不審者が盗難行為を行う場合、車両1の周囲を観察するなどして、検出時間が長くなる可能性がある。また、盗難行為をする際に、しゃがんで第1の死角3に隠れるなどして、検出終了位置が検出範囲2の上面視における内側となる可能性がある。
【0032】
なお、記憶部300は、車両監視装置10が監視カメラ等の撮像装置等と共に用いられる場合には、動体を検出したときに撮像装置が撮像した画像をさらに対応付けて記憶してもよい。
【0033】
また、記憶部300は、動体が移動した経路をさらに対応付けて記憶してもよい。動体の移動した経路を算出する方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0034】
さらに記憶部300は、所定の条件を満たす情報のみを記憶してもよい。例えば、車両1に近づく方向に移動している動体のみを記憶するなど、盗難行為を行う可能性が高い動体(不審者)に関する情報のみを記憶してもよい。
【0035】
本実施形態に係る車両監視装置10は、コンピュータ等のハードウェアによって実現できる。
図6は、車両監視装置10のハードウェアの構成の一例を示す図である。車両監視装置10は、バス1010、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060を有する。
【0036】
バス1010は、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1020などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0037】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現されるプロセッサである。
【0038】
メモリ1030は、RAM(Random Access Memory)などで実現される主記憶装置である。
【0039】
ストレージデバイス1040は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などで実現される補助記憶装置である。ストレージデバイス1040は車両監視装置10の各機能を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1020がこれら各プログラムモジュールをメモリ1030上に読み込んで実行することで、そのプログラムモジュールに対応する各機能が実現される。
【0040】
入出力インタフェース1050は、車両監視装置10と各種入出力機器とを接続するためのインタフェースである。
【0041】
ネットワークインタフェース1060は、車両監視装置10をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、例えばLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)である。ネットワークインタフェース1060がネットワークに接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0042】
次に、本実施形態に係る車両監視装置10の動作の一例を示すフローチャート図を
図7に示す。
【0043】
まず、車両監視装置10は、動体センサ20により動体の検出を開始する(ステップS10)。例えば、車両1のエンジンやモーターを制御する制御装置への電源がオフになったタイミングで動体の検出は開始される。次に、動体が検出された場合(ステップS20:Yes)、取得部100は、動体の検出データを取得し、記憶部300がそれを記憶する(ステップS30)。動体が検出されなかった場合(ステップS20:No)、動体の検出を継続する。次に、検出データについて、判断部200が所定の条件を満たすか判断する(ステップS40)。具体的には、検出データに含まれる検出終了位置が、上面視における動体センサ20の検出範囲2の内側、かつ検出範囲2の縁から所定距離離れているか否か、又は最後に検出された動体の移動方向が、第2の死角4に入る方向及び検出範囲20から出る方向のいずれでもないか否かを判断する。検出データが所定の条件を満たす場合(ステップS40:Yes)、判断部200は、第1状態と判断する(ステップS50)。検出データが所定の条件を満たさない場合(ステップS40:No)、動体の検出を再開する。
【0044】
以上、本実施形態に係る車両監視装置10によれば、車両1を監視するセンサの死角における不審者の盗難行為を検出することができる。
【0045】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る車両監視装置10について説明する。第2実施形態に係る車両監視装置10は、以下に記載する点を除いて、第1実施形態と同様である。
【0046】
図8に本実施形態に係る車両監視装置10の概要図を示す。車両監視装置10は、判断部200が、物体が第1状態になったと判断した場合に、所定の処理を行なう処理部400をさらに備える。また、車両監視装置10は、後述する出力装置30及び監視カメラ等の撮像装置40と共に用いられる。所定の処理とは、例えば、車両1の付近に隠れている不審者(動体)に対して警告を行うことや、車両1の持ち主に通知を行うことを含む。
【0047】
[処理部400]
処理部400は、第1状態と判断されたときに所定の処理を行なう。所定の処理は、例えば出力装置30に警告を出力させることである。例えば、処理部400は、出力装置30に音及び光の少なくとも一方を出力させる。これにより、第1の死角3に不審者が隠れている場合に、不審者に対して警告を行うことができる。
【0048】
また、所定の処理は、車両1に対応付けられている通信装置への通知処理を含んでもよい。通信装置とは、例えば車両1の持ち主が所持する携帯端末であり、通知処理とは、例えばメールなどのメッセージを送信することである。この場合、記憶部300は、車両1に対応する携帯端末の連絡先を記憶する。これにより、車両1の持ち主に対して、車両1が盗難される可能性があることを通知することができる。
【0049】
また、所定の処理は、第1状態と判断したときから所定時間前までの時間における、車両1に取り付けられている撮像装置40が取得した画像の少なくとも一部を、通信装置にて閲覧可能にする処理を含んでもよい。例えば、第1状態と判断してから10分前までの画像を通信装置にて閲覧可能にしてもよい。この場合、記憶部300は、撮像装置40が取得した画像を、取得した時間と対応付けて記憶する。これにより、車両1の持ち主に対して、車両1が盗難される可能性があるときの車両1周辺の画像を確認させることができる。
【0050】
また、所定の処理は、動体を最後に検出した位置に応じて異なるものであってもよい。例えば、動体を最後に検出した位置が、車両1の電子ロック解除を行うことができる位置である場合には、所定の処理は、車両1の電子ロック解除が行われている可能性があることを通知することを含んでもよい。なお、電子ロック解除を行うことができる位置は、車両1ごとに異なる位置であり、記憶部300に記憶されている。
【0051】
また、例えば、動体を最後に検出した位置が、車両1のタイヤから所定距離以内の位置である場合、所定の処理は、車両1のタイヤが盗難されている可能性があることを通知することを含んでもよい。なおこの場合、記憶部300は、車両1のタイヤの位置を記憶している。
【0052】
次に、本実施形態に係る車両監視装置10の動作のフローチャート図を
図9に示す。なお、ステップS10~ステップS50の処理は、第1実施形態と同様である。本実施形態に係る車両監視装置10は、ステップS50の後に、所定の処理を行なう(ステップS60)。
【0053】
以上、本実施形態に係る車両監視装置10によっても、車両1を監視するセンサの死角における不審者の盗難行為を検出することができる。さらに、本実施形態に係る車両監視装置10によれば、不審者の盗難行為を検出した場合に、不審者に対する警告や、車両1の持ち主に対する通知を行うことができる。
【0054】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る車両監視装置10について説明する。第3実施形態に係る車両監視装置10は、以下に記載する処理を行う点を除いて、他の実施形態と同様である。
【0055】
本実施形態に係る車両監視装置10は、動体を検出した位置の、車両からの距離に応じた動作を行う。
【0056】
図10を用いて、本実施形態に係る車両監視装置10が行う動作の具体例について説明する。本実施形態に係る車両監視装置10は、車両からの距離において、距離R1及び距離R2が設定されている。
【0057】
まず、R1について説明する。R1は、
図4にも示した検出範囲2の縁までの距離rより大きく、上述した限界距離R未満の距離である。この距離における動体は、動体センサ20に存在は検出される一方で、位置及び方向までは検出されない。
【0058】
例えば、本実施形態に係る車両監視装置10は、距離R1の範囲内の動体センサ20が動体を検出したときに起動する。これにより、不審者が近づく可能性があるときにのみ、車両監視装置10を起動させることができる。R1は、例えば4m以上6m以下の距離であり、例えば5mである。
【0059】
次に、R2について説明する。R2は、検出範囲2の縁までの距離r未満の距離であり、例えば75cm以上100cm以下の距離である。R2以内の距離で動体が検出された場合、車両1の非常に近くで動体が検出されたことになる。
【0060】
例えば、本実施形態に係る車両監視装置10の処理部400は、第1状態になった動体の車両1からの距離がR2未満の場合に、警告等の処理を行う。この処理の一例は、出力装置30に警告のための出力を行わせる処理である。これにより、特に盗難等が行われている可能性が高い場合にのみ、警告等を行うことができる。一方、第1状態になった動体の車両1からの距離がR2よりも大きい場合、車両監視装置10は、警告等の処理を行わない。
【0061】
以上、本実施形態に係る車両監視装置10によっても、車両1を監視するセンサの死角における不審者の盗難行為を検出することができる。さらに、本実施形態に係る車両監視装置10によれば、動体を検出した距離に応じた動作を行うため、より少ない情報処理量で、不審者の盗難行為を検出することができる。
【0062】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0063】
また、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 車両
2 検出範囲
3 第1の死角
4 第2の死角
10 車両監視装置
20 動体センサ
30 出力装置
40 撮像装置
100 取得部
200 判断部
300 記憶部
400 処理部