(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025153699
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20251002BHJP
【FI】
H02K3/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056310
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100186211
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 敏彰
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕人
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB03
5H603CC03
5H603CD02
5H603CD11
5H603CD22
5H603CE02
5H603CE05
(57)【要約】
【課題】コイルエンド部同士の干渉を抑制することが可能であるとともに、加圧成型を行うことなくコイルエンド部の軸方向長さが大きくなるのを抑制することが可能なステータを提供する。
【解決手段】このステータ100は、隣接する複数のコイルエンド部20bにおいて、一方および他方の周方向傾斜部22は、軸方向において互いに重ならず、かつ、周方向側の側面同士が互いに対向して隣接し、隣接する複数のコイルエンド部20bにおいて、一方のコイルエンド部20bの周方向傾斜部22の下面と、他方のコイルエンド部20bのクランク部23の軸方向傾斜部21側の端部とは、軸方向において重ならず、かつ、周方向において隣接するように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
前記ステータコアに挿通され、前記ステータコアの端面から軸方向外側に突出して延びる複数のコイルエンド部を含み、平角線により構成されるコイルと、を備え、
前記複数のコイルエンド部は、
前記ステータコア側に設けられ、前記ステータコアの端面に対して軸方向外側に傾斜するとともに、周方向に沿って延びる軸方向傾斜部と、
軸方向から見て、前記軸方向傾斜部に対して周方向に傾斜するとともに、径方向外側に向かって延びる周方向傾斜部と、
前記軸方向傾斜部と前記周方向傾斜部との間を接続するように構成され、軸方向外側に湾曲するクランク部と、を有し、
隣接する前記複数のコイルエンド部において、一方および他方の前記周方向傾斜部は、軸方向において互いに重ならず、かつ、周方向側の側面同士が互いに対向して隣接し、
隣接する前記複数のコイルエンド部において、一方の前記コイルエンド部の前記周方向傾斜部の下面と、他方の前記コイルエンド部の前記クランク部の前記軸方向傾斜部側の端部とは、軸方向において重ならず、かつ、周方向において隣接するように構成されている、ステータ。
【請求項2】
前記ステータコアの端面から前記周方向傾斜部までの軸方向長さは、前記ステータコアの端面から前記コイルエンド部の他の部分までの軸方向長さよりも大きい、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記周方向傾斜部は、前記ステータコアの端面の延びる方向に沿って延びるように構成されている、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記コイルエンド部は、前記軸方向傾斜部と前記クランク部とを接続する接続部をさらに含み、
前記接続部は、軸方向から見て、前記軸方向傾斜部に対して径方向外側に傾斜するように構成されている、請求項1に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータが知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1には、複数のスロットを備えた円環状のステータコアと、スロットに挿通されるコイルとを備える回転電機のステータが開示されている。特許文献1では、ステータコアの軸方向の少なくとも一方の端部において、コイルは、スロットの径方向内側の部分から他のスロットの径方向外側の部分までをつなぐ渡り部が、周方向に重なるように配置されるとともに軸方向から見て重なるように配置されることにより、コイルエンド部を形成している。また、渡り部は、コイル同士が干渉しないように、径方向から見て交差状態となるようにねじられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のステータコアでは、コイルエンド部(コイル)を径方向から見て交差状態になるようにねじって加工するため、形状が複雑化する。
【0006】
また、特許文献1には開示されていないが、ねじりによってコイルエンド部を形成する場合、コイルエンド部の形状が複雑化することにより、加工が難しくなるため、形状のばらつきを考慮して予め寸法を大きめに設定して加工する。そして、加工後にコイルエンド部を加圧成型して軸方向長さを小さくすることが行われる。しかしながら、加圧成型することによって、コイルエンド部に過大な負荷が掛かる。このため、ねじることなくコイルエンド部同士の干渉を抑制するとともに、加圧成型を行うことなくコイルエンド部の軸方向長さを抑制することが望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、コイルエンド部同士の干渉を抑制することが可能であるとともに、加圧成型を行うことなくコイルエンド部の軸方向長さが大きくなるのを抑制することが可能なステータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるステータは、ステータコアと、ステータコアに挿通され、ステータコアの端面から軸方向外側に突出して延びる複数のコイルエンド部を含み、平角線により構成されるコイルと、を備え、複数のコイルエンド部は、ステータコア側に設けられ、ステータコアの端面に対して軸方向外側に傾斜するとともに、周方向に沿って延びる軸方向傾斜部と、軸方向から見て、軸方向傾斜部に対して周方向に傾斜するとともに、径方向外側に向かって延びる周方向傾斜部と、軸方向傾斜部と周方向傾斜部との間を接続するように構成され、軸方向外側に湾曲するクランク部と、を有し、隣接する複数のコイルエンド部において、一方および他方の周方向傾斜部は、軸方向において互いに重ならず、かつ、周方向側の側面同士が互いに対向して隣接し、隣接する複数のコイルエンド部において、一方のコイルエンド部の周方向傾斜部の下面と、他方のコイルエンド部のクランク部の軸方向傾斜部側の端部とは、軸方向において重ならず、かつ、周方向において隣接するように構成されている。
【0009】
この発明の一の局面によるステータでは、上記のように、軸方向傾斜部と周方向傾斜部とクランク部とを有することにより、軸方向傾斜部と周方向傾斜部とにより軸方向長さを調整しつつ、クランク部によりコイルエンド部同士が干渉しないように配置することができる。また、隣接する複数のコイルエンド部において、一方および他方の周方向傾斜部は、軸方向において互いに重ならず、かつ、周方向側の側面同士が互いに対向して隣接しているため、隣接するコイルエンド部を周方向に沿って干渉させずに配置することができる。このため、コイルエンド部をねじって配置する必要がない。また、隣接する複数のコイルエンド部において、一方のコイルエンド部の周方向傾斜部の下面と、他方のコイルエンド部のクランク部の軸方向傾斜部側の端部とが、軸方向において重ならず、かつ、周方向において隣接することにより、複数のコイルエンド部を軸方向に重ならないように配置することができるとともに、クランク部の位置を低くすることができるため、コイルエンド部の軸方向の長さが大きくなることを抑制することができる。これらの結果、コイルエンド部同士の干渉を抑制することができるとともに、加圧成型を行うことなくコイルエンド部の軸方向の長さが大きくなることを抑制することができる。ここで、「隣接」とは、2つのコイルエンド部同士が接していないが、近くに位置していることを指す。
【0010】
上記一の局面によるステータにおいて、好ましくは、ステータコアの端面から周方向傾斜部までの軸方向長さは、ステータコアの端面からコイルエンド部の他の部分までの軸方向長さよりも大きい。
【0011】
このように構成すれば、ステータコアの端面から周方向傾斜部までの軸方向長さが、ステータコアの端面からコイルエンド部までの軸方向の長さの最大値となるため、周方向傾斜部を周方向に沿って並べることにより、軸方向の長さが大きくなることを容易に抑制することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、周方向傾斜部は、ステータコアの端面の延びる方向に沿って延びるように構成されている。
【0013】
このように構成すれば、ステータコアの端面からコイルエンド部までの軸方向の長さが最大である周方向傾斜部を径方向において水平に配置することができるため、コイルエンド部の軸方向長さが大きくなることを効果的に抑制することができる。
【0014】
上記一の局面によるステータにおいて、好ましくは、コイルエンド部は、軸方向傾斜部とクランク部とを接続する接続部をさらに含み、接続部は、軸方向から見て、軸方向傾斜部に対して径方向外側に傾斜するように構成されている。
【0015】
このように構成すれば、接続部が、径方向外側に傾斜することにより、隣接するコイルエンド部と接触することを抑制することができる。また、クランク部によって軸方向に傾斜する前に、接続部によってコイルエンド部を径方向外側に傾斜させることができるため、クランク部において径方向外側に傾斜させる必要がなく、クランク部の構造が複雑化することを抑制することができる。
【0016】
なお、上記一の局面によるステータにおいて、以下のような構成も考えられる。
【0017】
(付記項1)
上記一の局面によるステータにおいて、コイルは、軸方向傾斜部と周方向傾斜部とを含む複数のセグメントコイルが接合されることにより構成されている。
【0018】
このように構成すれば、軸方向傾斜部と周方向傾斜部とを含む複数のセグメントコイルを接合することによりコイルが構成されるため、軸方向長さが大きくなることを抑制しつつ、容易にコイルを構成することができる。
【0019】
(付記項2)
上記一の局面によるステータにおいて、複数の周方向傾斜部は、ねじることなく周方向側の側面同士が互いに対向して隣接するように配置されている。
【0020】
このように構成すれば、複数の周方向傾斜部をねじらずにコイルを形成することができるため、コイルエンド部の形成する工程が複雑化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態におけるステータを示す斜視図である。
【
図3】実施形態におけるセグメントコイルを示す斜視図である。
【
図4】実施形態におけるセグメントコイルを示す上面図である。
【
図5】セグメントコイルの一部を拡大した上面図である。
【
図6】セグメントコイルの一部を径方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1~
図6を参照して、実施形態によるステータの構成について説明する。
【0024】
(ステータの全体構成)
図1に示すステータ100は、ステータ100に対向するようにステータ100のR1側に配置されるロータ(図示しない)とともに回転電機(図示しない)の一部を構成する。回転電機は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータである。ステータ100は、円筒形状である。ステータ100は、ロータが挿通される孔部が中央に形成されている。以下の説明では、ステータ100の径方向をR方向とし、ステータ100の周方向をC方向とし、ステータ100にロータを挿通する方向である軸方向をZ方向とする。
【0025】
ステータ100は、ステータコア1と、コイル2とを備える。ステータ100は、三相交流のステータ100である。
【0026】
ステータコア1は、Z方向に沿った中心軸線(図示しない)を中心軸とした円筒形状を有する。ステータコア1は、複数の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)がZ方向に積層されることにより形成されている。
【0027】
ステータコア1は、Z方向に延びる溝である複数のスロット部11が設けられている。スロット部11には、複数のセグメントコイル20からなるコイル2が挿通される。
【0028】
図2に示すように、コイル2は、複数のセグメントコイル20が接合されることにより構成されている。コイル2を構成する複数のセグメントコイル20は、平角線から構成されている。複数のセグメントコイル20は、一例として、銅線から構成されている。コイル2は、電源部(図示せず)から3相交流の電力が供給されることにより、磁束を発生させるように構成されている。セグメントコイル20は、スロット部11をZ方向に往復することにより、ステータコア1の周方向に沿って配置される(巻かれる)。コイル2は、接合された複数のセグメントコイル20がステータコア1の周方向に沿って2巻き以上巻かれることにより、形成される。
【0029】
複数のセグメントコイル20は、U字形状のセグメントコイル20と、I字形状のセグメントコイル20とを含んでいる。
【0030】
U字形状のセグメントコイル20は、ステータコア1のスロット部11に挿通される一対のスロット挿通部20aと、一対のスロット挿通部20aを接続するコイルエンド部20bとを含む。U字形状のセグメントコイル20は、軸方向傾斜部21と周方向傾斜部22とを含む。複数のセグメントコイル20は、隣接して配置される。ここで、本願明細書において、「隣接」とは、2つのコイルエンド部同士が接していないが、近くに位置していることを指す。
【0031】
ステータコア1に挿通された状態において、U字形状のセグメントコイル20は、ステータコア1のZ方向の一方側の端面からコイルエンド部20bが露出するとともに、ステータコア1のZ方向の他方側の端面からセグメントコイル20のコイルエンド部20bによって接続されていない、両端部20cが露出している。一対のスロット挿通部20aは、異なるスロット部11に亘って両端部20cが挿通されるように構成される。また、ステータコア1のZ方向の他方側の端面から露出する複数のセグメントコイル20の端部20c同士が接続されて、1つのコイル2が形成される。
【0032】
図2に示す1つのコイル2は、U字形状のセグメントコイル20にI字形状のセグメントコイル20が周方向の両端に各々接合されている。I字コイルは、端子部を形成している。本実施形態では、1つのスロット部11に対して2本のセグメントコイル20が挿通されている。また、三相交流のU相、V相、W相に対して各々2本ずつコイル2が配置されている。各相のコイル2は、ステータコア1の外周面から突出している一方端と、ステータコア1の外周面から突出していない他方端とを有している。コイル2の一方端は、各相2つずつあるとともに、他部材に接続される。また、他方端は、各相2つずつあるとともに、U相とV相とW相とを接続する中間接続線が接続される。なお、端子部は、U字形状のセグメントコイル20の接合部が設けられるステータコア1の軸方向の一方側に配置されてもよく、コイルエンド部20bが形成されるステータコア1の軸方向の他方側に配置されてもよい。
【0033】
図3および
図4に示すように、コイルエンド部20bは、軸方向傾斜部21と、周方向傾斜部22と、クランク部23、接続部24とを有している。また、コイルエンド部20bは、周方向傾斜部22に接続される他方端側部分25を含む。
【0034】
セグメントコイル20は、ステータコア1の軸方向の端面から軸方向に延びた後、軸方向傾斜部21により、軸方向外側に傾斜する。軸方向傾斜部21により、軸方向外側に傾斜した後、接続部24により、径方向外側に傾斜する。クランク部23によって軸方向外側に傾斜し、周方向傾斜部22によってステータコア1の端面に沿って延びる。周方向傾斜部22から他方端側部分25により径方向外側に湾曲するとともに軸方向内側に傾斜した後、軸方向に沿ってステータコア1の端面に向かって軸方向に延びる。
【0035】
図5および
図6に示すように、軸方向傾斜部21は、ステータコア1側に設けられる。軸方向傾斜部21は、軸方向および周方向から見て矩形状である。軸方向傾斜部21は、ステータコア1の端面に対して軸方向外側に傾斜している。セグメントコイル20は、ステータコア1から軸方向の外側に延びた後、軸方向傾斜部21により軸方向外側に傾斜する。軸方向傾斜部21は、周方向に沿って延びている。
図6では、ステータコア1の端面を簡略化して破線で示している。
【0036】
複数のセグメントコイル20の軸方向傾斜部21は、ステータコア1の内周に沿って配置される。また、隣接するセグメントコイル20の軸方向傾斜部21は、互いに軸方向に対向するように配置されている。なお、隣接するセグメントコイル20の軸方向傾斜部21は、一方のセグメントコイル20の上面全体と、他方のセグメントコイル20の下面の全体とが対向する必要がなく、一方のセグメントコイル20の上面の一部と、他方のセグメントコイル20の下面の一部とが対向していればよい。また、隣接するセグメントコイル20の軸方向傾斜部21は、周方向にずれて配置されている。
【0037】
周方向傾斜部22は、軸方向および周方向から見て矩形状である。周方向傾斜部22は、軸方向から見て、軸方向傾斜部21に対して周方向に傾斜している。周方向傾斜部22は、周方向において隣接するセグメントコイル20と接触しない程度に傾斜している。周方向傾斜部22は、径方向外側に向かって延びている。周方向傾斜部22は、ステータコア1の端面の延びる方向に沿って延びるように構成されている。言い換えると、周方向傾斜部22は、径方向に沿って延びている。周方向傾斜部22は、径方向から見てほぼ水平に形成されている。好ましくは、周方向傾斜部22は、ステータコア1の端面に対して平行に延びるように構成される。
【0038】
隣接する複数のコイルエンド部20bにおいて、一方および他方の周方向傾斜部22は、軸方向において互いに重ならず、かつ、周方向側の側面22a同士が互いに対向して隣接している。隣接する複数のコイルエンド部20bにおいて、一方および他方の周方向傾斜部22は、ステータコア1の端面からの軸方向長さが略同じになるように形成されている。また、一方および他方の周方向傾斜部22は、ともに周方向に沿って延びているが、互いに平行である必要はなく、一方が他方に対して傾斜していてもよい。また、一方および他方の周方向傾斜部22の周方向側の側面22aは、全体が対向している必要はなく、一部分が対向していればよい。複数の周方向傾斜部22は、ねじることなく周方向側の側面22a同士が互いに対向して隣接するように配置されている。
【0039】
ステータコア1の端面から周方向傾斜部22までの軸方向長さは、ステータコア1の端面からコイルエンド部20bの他の部分までの軸方向長さよりも大きく構成されている。言い換えると、ステータコア1の端面からセグメントコイル20までの軸方向長さの最長部分が周方向傾斜部22に含まれている。周方向傾斜部22が、ステータコア1の端面と略平行である場合は、周方向傾斜部22全体がステータコア1の端面からセグメントコイル20までの軸方向長さの最長部分となり、周方向傾斜部22が、ステータコア1の端面と平行でない場合は、周方向傾斜部22の一部がステータコア1の端面からセグメントコイル20までの軸方向長さの最長部分となる。
【0040】
クランク部23は、軸方向傾斜部21と周方向傾斜部22との間を接続するように構成されている。クランク部23は、軸方向外側に湾曲している。クランク部23は、軸方向外側に湾曲する第1湾曲部分23aに加えて、軸方向内側に湾曲する第2湾曲部分23bを含み、径方向から見てS字形状である。
【0041】
隣接する複数のコイルエンド部20bにおいて、一方のコイルエンド部20bの周方向傾斜部22の下面22bと、他方のコイルエンド部20bのクランク部23の軸方向傾斜部21側の端部23cとは、軸方向において重ならず、かつ、周方向において隣接するように構成されている。クランク部23の軸方向傾斜部21側の端部23cとは、クランク部23と接続部24との境界部分を指す。また、周方向において隣接とは、周方向において接していなくても近い位置にあることを指す。また、周方向に隣接する場合の軸方向長さの関係については、ステータコア1の端面から一方のコイルエンド部20bの周方向傾斜部22の下面までの軸方向長さと、ステータコア1の端面から他方のコイルエンド部20bのクランク部23の傾斜部側端部までの軸方向長さが同じである場合に限らず、少し異なっていてもよい。クランク部23によって、隣接するセグメントコイル20は、ステータコア1側から離れるにつれて、間隔が大きくなるように構成されている。
【0042】
図5および
図6に示すように、接続部24は、軸方向傾斜部21とクランク部23とを接続するように構成されている。接続部24は、周方向から見て軸方向傾斜部21と同じようにステータコア1の端面に対して軸方向外側に傾斜するように構成されている。
図4では、接続部24と軸方向傾斜部21とがステータコア1の端面に対して同じ角度で傾斜している。別の例では、接続部のステータコアの端面に対する傾斜角度と、軸方向傾斜部のステータコアの端面に対する傾斜角度が異なっている。接続部24は、軸方向から見て、軸方向傾斜部21に対して径方向外側に傾斜するように構成されている。接続部24は、軸方向から見て径方向の内側に湾曲する一対の円弧状部分24aと、一対の円弧状部分24aを接続する一対の直線部分24bとを含む扇型のような形状をしている。一対の直線部分24bは、それぞれ、軸方向傾斜部21と、クランク部23とに接続するように構成されている。
【0043】
ステータ100は、電磁鋼板を積層してステータコア1を形成した後に、複数のセグメントコイル20を挿入することにより形成される。複数のセグメントコイル20をスロットに挿通することにより、コイルエンド部20bが形成される。この時、セグメントコイル20は、ねじられることなくスロット部11に挿通される。挿通されたセグメントコイル20同士を接合することにより、コイル2が構成される。
【0044】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0045】
本実施形態では、上記のように、隣接する複数のコイルエンド部20bにおいて、一方および他方の周方向傾斜部22は、軸方向において互いに重ならず、かつ、周方向側の側面同士が互いに対向して隣接し、隣接する複数のコイルエンド部20bにおいて、一方のコイルエンド部20bの周方向傾斜部22の下面と、他方のコイルエンド部20bのクランク部23の軸方向傾斜部21側の端部とは、軸方向において重ならず、かつ、周方向において隣接するように構成されている。これにより、軸方向傾斜部21と周方向傾斜部22とクランク部23とを有することにより、軸方向傾斜部21と周方向傾斜部22とにより軸方向長さを調整しつつ、クランク部23によりコイルエンド部20b同士が干渉しないように配置することができる。また、隣接する複数のコイルエンド部20bにおいて、一方および他方の周方向傾斜部22は、軸方向において互いに重ならず、かつ、周方向側の側面22a同士が互いに対向して隣接しているため、隣接するコイルエンド部20bを周方向に沿って干渉させずに配置することができる。このため、コイルエンド部20bをねじって配置する必要がない。また、隣接する複数のコイルエンド部20bにおいて、一方のコイルエンド部20bの周方向傾斜部22の下面22bと、他方のコイルエンド部20bのクランク部23の軸方向傾斜部21側の端部23cとが、軸方向において重ならず、かつ、周方向において隣接することにより、複数のコイルエンド部20bを軸方向に重ならないように配置することができるとともに、クランク部23の位置を低くすることができるため、コイルエンド部20bの軸方向長さが大きくなることを抑制することができる。これらの結果、コイルエンド部20b同士の干渉を抑制することができるとともに、加圧成型を行うことなくコイルエンド部20bの軸方向長さが大きくなることを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、ステータコア1の端面から周方向傾斜部22までの軸方向長さは、ステータコア1の端面からコイルエンド部20bの他の部分までの軸方向長さよりも大きい。これにより、ステータコア1の端面から周方向傾斜部22までの軸方向長さが、ステータコア1の端面からコイルエンド部20bまでの軸方向の長さの最大値となるため、周方向傾斜部22を周方向に沿って並べることにより、軸方向の長さが大きくなることを容易に抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように周方向傾斜部22は、ステータコア1の端面の延びる方向に沿って延びるように構成されている。これにより、ステータコア1の端面からコイルエンド部20bまでの軸方向の長さが最大である周方向傾斜部22を径方向において水平に配置することができるため、コイルエンド部20bの軸方向長さが大きくなることを効果的に抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、コイルエンド部20bは、軸方向傾斜部21とクランク部23とを接続する接続部24をさらに含み、接続部24は、軸方向から見て、軸方向傾斜部21に対して径方向外側に傾斜するように構成されている。これにより、接続部24が、径方向外側に傾斜することにより、隣接するコイルエンド部20bと接触することを抑制することができる。また、クランク部23によって軸方向に傾斜する前に、接続部24によってコイルエンド部20bを径方向外側に傾斜させることができるため、クランク部23において径方向外側に傾斜させる必要がなく、クランク部23の構造が複雑化することを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、コイル2は、軸方向傾斜部21と周方向傾斜部22とを含む複数のセグメントコイル20が接合されることにより構成されている。これにより、軸方向傾斜部21と周方向傾斜部22とを含む複数のセグメントコイル20を接合することによりコイル2が構成されるため、軸方向長さが大きくなることを抑制しつつ、容易にコイル2を構成することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、複数の周方向傾斜部22は、ねじることなく周方向側の側面同士が互いに対向して隣接するように配置されている。これにより、複数の周方向傾斜部22をねじらずにコイル2を形成することができるため、コイルエンド部20bの形成する工程が複雑化することを抑制することができる。
【0051】
[変形例]
今回開示された上記実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0052】
たとえば、上記実施形態では、セグメントコイルは、接続部を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、セグメントコイルは、接続部を含まずに、軸方向傾斜部とクランク部とが直接接続されていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、クランク部は、S字形状である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、クランク部が径方向から見て扇形であってもよい。また、この場合、軸方向傾斜部および周方向傾斜部の少なくとも一方は、湾曲部を有していてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、ステータコアの端面から周方向傾斜部までの軸方向長さは、ステータコアの端面からコイルエンド部の他の部分までの軸方向長さよりも大きい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ステータコアの端面から周方向傾斜部までの軸方向長さよりもステータコアの端面からクランク部までの軸方向長さが大きくてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、ステータコアが三相交流である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、単相交流のステータであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:ステータコア、2:コイル、20b:コイルエンド部、21:軸方向傾斜部、22:周方向傾斜部、23:クランク部、24:接続部、100:ステータ