(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154029
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20251002BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20251002BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F27/29 123
H01F27/28 104
H01F17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056803
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】志賀 悠人
(72)【発明者】
【氏名】石森 晃
(72)【発明者】
【氏名】小林 創
(72)【発明者】
【氏名】小松 大飛
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AA08
5E070AA01
5E070AB07
5E070CB13
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】自己共振周波数の向上が可能な積層コイル部品を提供する。
【解決手段】積層コイル部品1は、素体2と、素体2内に配置されたコイル3と、素体2の表面上に配置された外部電極41,42とを備える。コイル3は、それぞれ厚さ及び経路長を有する複数のコイル導体30を含む。外部電極41,42は、コイル3と電気的に接続されている。複数のコイル導体30は、一方向に並び、かつ、互いに隣り合う、コイル導体33、コイル導体34、及びコイル導体35を含む。コイル導体34は、コイル導体33及びコイル導体35のそれぞれの経路長より短い経路長を有し、かつ、コイル導体33及びコイル導体35の少なくとも一方の厚さより大きい厚さを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体内に配置され、それぞれ厚さ及び経路長を有する複数のコイル導体を含むコイルと、
前記素体の表面上に配置され、前記コイルと電気的に接続された外部電極と、を備え、
前記複数のコイル導体は、一方向に並び、かつ、互いに隣り合う、第一コイル導体、第二コイル導体、及び第三コイル導体を含み、
前記第二コイル導体は、前記第一コイル導体及び前記第三コイル導体のそれぞれの経路長より短い経路長を有し、かつ、前記第一コイル導体及び前記第三コイル導体の少なくとも一方の厚さより大きい厚さを有する、
積層コイル部品。
【請求項2】
前記第二コイル導体は、前記第一コイル導体及び前記第三コイル導体の前記少なくとも一方の前記厚さの1.25倍以上の前記厚さを有する、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記第一コイル導体は、前記コイルの径方向で互いに対向する第一外面及び第一内面を含み、
前記第二コイル導体は、前記径方向で互いに対向する第二外面及び第二内面を含み、
前記第三コイル導体は、前記径方向で互いに対向する第三外面及び第三内面を含み、
前記第一外面は、前記外部電極から該第一外面に直交する垂線が引かれ得る第一領域を含み、
前記第二外面は、前記外部電極から該第二外面に直交する垂線が引かれ得る第二領域を含み、
前記第三外面は、前記外部電極から該第三外面に直交する垂線が引かれ得る第三領域を含み、
前記第二領域の面積は、前記第一領域の面積及び前記第三領域の面積の少なくとも一方よりも小さい、請求項1又は2に記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記素体の前記表面は、少なくとも一つの主面を含み、
前記外部電極は、前記少なくとも一つの主面のうち一つの主面上にのみ配置されている、請求項1又は2に記載の積層コイル部品。
【請求項5】
前記複数のコイル導体のうち互いに隣り合う一対のコイル導体の端部同士は、互いに重なり、かつ、互いに連結されている、請求項1又は2に記載の積層コイル部品。
【請求項6】
素体と、
前記素体内に配置され、それぞれ厚さを有する複数のコイル導体を含むコイルと、
前記素体の表面上に配置され、前記コイルと電気的に接続された外部電極と、を備え、
前記複数のコイル導体は、互いに隣り合う第一コイル導体及び第二コイル導体を含み、
前記第二コイル導体は、前記第一コイル導体の厚さより大きい厚さを有し、
前記第一コイル導体は、前記コイルの径方向で互いに対向する第一外面及び第一内面を含み、
前記第二コイル導体は、前記径方向で互いに対向する第二外面及び第二内面を含み、
前記第一外面は、前記外部電極から該第一外面に直交する垂線が引かれ得る第一領域を含み、
前記第二外面は、前記外部電極から該第二外面に直交する垂線が引かれ得る第二領域を含み、
前記第二領域の面積は、前記第一領域の面積よりも小さい、
積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
素体と、素体内に配置されているコイルとを備える積層コイル部品が知られている(たとえば、特許文献1)。コイルは、互いに電気的に接続されている複数のコイル導体を有する。複数のコイル導体は、第一コイル導体及び第二コイル導体を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一つの態様は、自己共振周波数の向上が可能な積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様に係る積層コイル部品は、素体と、素体内に配置されたコイルと、素体の表面上に配置された外部電極とを備える。コイルは、それぞれ厚さ及び経路長を有する複数のコイル導体を含む。外部電極は、コイルと電気的に接続されている。複数のコイル導体は、一方向に並び、かつ、互いに隣り合う、第一コイル導体、第二コイル導体、及び第三コイル導体を含む。第二コイル導体は、第一コイル及び第三コイルのそれぞれの経路長より短い経路長を有し、かつ、第一コイル及び第三コイルの少なくとも一方の厚さより大きい厚さを有する。
【0006】
積層コイル部品の自己共振周波数は、コイルに含まれる複数のコイル導体間において発生する浮遊容量に応じて変化する。複数のコイル導体間において発生する浮遊容量が増加すれば、積層コイル部品の自己共振周波数が低下する。浮遊容量は、二つの導体の互いに対向する面積に比例し、かつ、互いに対向する二つの導体間の間隔に反比例する。したがって、複数のコイル導体では、浮遊容量は、各コイル導体の経路長と、二つのコイル導体間の間隔とに相関する。
【0007】
積層コイル部品では、所定の外形サイズに対して複数のインダクタンス値が求められる。インダクタンス値は、コイルのターン数に依存するので、コイルを構成する複数のコイル導体のそれぞれの経路長は一定に定まりがたい。他のコイル導体よりも長い経路長を有する複数のコイル導体間には、他の複数のコイル導体間に発生する浮遊容量よりも大きな浮遊容量が発生する。
【0008】
上記一つの態様では、第二コイル導体は、第一コイル導体及び第三コイル導体のそれぞれの経路長より短い経路長を有し、複数のコイル導体において第一コイル導体と第三コイル導体との間に位置する。第一コイル導体及び第三コイル導体は、第二コイル導体の経路長よりも長い経路長を有するので、第一コイル導体と第三コイル導体との間に発生する浮遊容量は、他の構成の第一コイル導体と第三コイル導体との間に発生する浮遊容量よりも大きい。第一コイル導体と第三コイル導体との間の間隔は、第二コイル導体の厚さに応じて変化する。第二コイル導体は、第一コイル及び第三コイルの少なくとも一方の厚さより大きい厚さを有する。上記一つの態様のコイルにおいて発生する浮遊容量は、第二コイルが第一コイルの厚さ及び第三コイルの厚さの双方と同等以下の厚さを有する構成のコイルにおいて発生する浮遊容量よりも小さい。結果として、上記一つの態様は、積層コイル部品の自己共振周波数の向上が可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様は、自己共振周波数の向上が可能な積層コイル部品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るコイルの斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るコイルを一側面から見た平面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るコイルを一側面から見た平面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るコイルを一主面から見た平面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る積層コイル部品の構成を示す分解図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る第一コイル導体の平面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る第二コイル導体の平面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る第三コイル導体の平面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の変形例に係る積層コイル部品の斜視図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の変形例に係るコイルの斜視図である。
【
図12】
図12は、本実施形態の変形例に係るコイルを一側面から見た平面図である。
【
図13】
図13は、本実施形態の変形例に係るコイルを一主面から見た平面図である。
【
図14】
図14は、本実施形態の変形例に係るコイルを一主面から見た平面図である。
【
図15】
図15は、本実施形態の変形例に係る積層コイル部品の構成を示す分解図である。
【
図16】
図16は、変形例に係る第一コイル導体の平面図である。
【
図17】
図17は、変形例に係る第二コイル導体の平面図である。
【
図18】
図18は、変形例に係る第三コイル導体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、図面を参照しながら本発明に係る実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0012】
図1~
図5を参照して、本実施形態に係る積層コイル部品1の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
図2は、本実施形態に係るコイルの斜視図である。
図3は、本実施形態に係るコイルを
図1に示される側面2eから見た平面図である。
図4は、本実施形態に係るコイルを
図1に示される側面2fから見た平面図である。
図5は、本実施形態に係るコイルを
図1に示される主面2bから見た平面図である。本実施形態に係る積層コイル部品1は、電子機器にはんだ実装される。電子機器は、たとえば、回路基板又は電子部品を含む。
【0013】
図1及び
図2に示されるように、積層コイル部品1は、素体2と、素体2内に配置されたコイル3と、素体2の表面上に配置された一対の外部電極41,42と、素体2内に配置された一対の接続導体51,52とを備えている。外部電極41,42は、コイル3と電気的に接続されている。素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされた直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められた直方体の形状が含まれる。
【0014】
素体2は、互いに対向する一対の主面2a,2bと、一対の側面2c,2dと、一対の側面2e,2fとを有している。主面2a,2b、側面2c,2d、及び側面2e,2fは、矩形状を呈している。主面2a,2bは、側面2c,2dと側面2e,2fとに隣り合っている。側面2c,2dと側面2e,2fとは、互いに隣り合っている。積層コイル部品1が電子機器にはんだ実装されるとき、主面2aは、はんだ実装される電子機器に対向する。
【0015】
一対の主面2a,2bが互いに対向している方向D3は、主面2a,2bにそれぞれ直交している。一対の側面2c,2dが互いに対向している方向D1は、側面2c,2dにそれぞれ直交している。一対の側面2e,2fが互いに対向している方向D2は、側面2e,2fにそれぞれ直交している。方向D3は、方向D1と方向D2とに直交している。方向D1と方向D2とは、互いに直交している。素体2には、一対の外部電極41,42に対応する一対の窪みが形成されている。
【0016】
外部電極41,42は、方向D1から見て、L字形状の断面を有している。素体2に形成された外部電極41,42に対応する窪みは、方向D1から見て、L字形状を有している。外部電極41は、部分41a及び部分41bを含んでいる。部分41aの表面は、側面2eと同じ向きを向いており、部分41bの表面は、主面2aと同じ向きを向いている。部分41aと部分41bとは、側面2eと主面2aとの間の稜線部分に沿うように連続している。外部電極42は、部分42a及び部分42bを含んでいる。部分42aの表面は、側面2fと同じ向きを向いており、部分42bの表面は、主面2aと同じ向きを向いている。部分42aと部分42bとは、側面2fと主面2aとの間の稜線部分に沿うように連続している。主面2aは、部分41b,42bに対応する窪みを画成する面を含んでいる。側面2eは、部分41aに対応する窪みを画成する面を含んでいる。側面2fは、部分42aに対応する窪みを画成する面を含んでいる。外部電極41は、主面2a及び側面2eの上に配置されている。外部電極42は、主面2a及び側面2fの上に配置されている。
【0017】
本実施形態では、外部電極41,42の方向D3での長さは、外部電極41,42の方向D2での長さよりも長い。部分41b,42bは、主面2aと同じ向きに露出するように配置されている。部分41b,42bの表面と主面2aとは、同一平面上に位置してもよい。部分41b,42bの表面は、主面2aから突出していてもよい。部分41aは、側面2eと同じ向きに露出するように配置されている。部分41aの表面と側面2eとは、同一平面上に位置してもよい。部分41aの表面は、側面2eから突出していてもよい。部分42aは、側面2fと同じ向きに露出するように側面2fに配置されている。部分42aの表面と側面2fとは、同一平面上に位置してもよい。部分42aの表面は、側面2fから突出していてもよい。本実施形態では、部分41a,42aの方向D3での長さは、部分41b,42bの方向D2での長さよりも長い。
【0018】
図2~
図5に示されるように、コイル3は、複数のコイル導体30を有している。複数のコイル導体30は、互いに電気的に接続されている。複数のコイル導体30は、コイル導体31,32,33,34,35,36,37を含んでいる。コイル導体31~37は、その順番で方向D1に沿って並び、かつ、互いに隣り合っている。コイル導体31は、コイル3の方向D1での一方の端を含む最端のコイル導体である。コイル導体37は、コイル3の方向D1での他方の端を含む最端のコイル導体である。コイル3は、方向D1で連結された七つのコイル導体31~37によって構成されている。コイル3のターン数は、2.5ターンである。各コイル導体31~37は、コイル3のコイル軸X1を中心とする環状の軌道の一部を構成している。各コイル導体31~37は、たとえば、ループの一部が途切れた形状を呈している。複数のコイル導体30は、それぞれ経路長及び厚さを有している。
【0019】
各コイル導体31~37は、ループの一部が途切れた形状における一方の端部に対応する第一端と、ループの一部が途切れた形状における他方の端部に対応する第二端とを含んでいる。各コイル導体31~37は、コイル導体31~37のそれぞれの層において、第一端から第二端までの経路に沿って延在している。各コイル導体31~37の第一端から第二端までの経路の長さは、各コイル導体31~37の経路長と称される。経路長とは、各コイル導体31~37の第一端の端面から第二端の端面までの最小長さであってもよい。たとえば、経路長は、各コイル導体31~37の第一端の端面から第二端の端面までの内周であってもよい。コイル導体31~37のそれぞれの層は、積層コイル部品1を構成する各層に対応する。コイル導体31~37のそれぞれの層は、コイル導体31~37が並んでいる方向D1と交差する平面に沿って延在する。本実施形態では、コイル導体31~37のそれぞれの層は、方向D2及び方向D3に沿って延在する。
【0020】
コイル導体33,34,35は、コイル導体33、コイル導体34、コイル導体35の順番で方向D1に並んでいる。コイル導体33とコイル導体34とは、互いに隣り合っており、コイル導体34とコイル導体35とは、互いに隣り合っている。コイル導体34は、複数のコイル導体30においてコイル導体33とコイル導体35との間に位置する。コイル導体33とコイル導体35とは、方向D1においてコイル導体34の厚さだけ離れている。コイル導体33及びコイル導体35のそれぞれは、方向D1においてコイル導体34の厚さだけ離れて互いに対向する部分を含む。たとえば、コイル導体33は第一コイル導体として規定され、コイル導体34は第二コイル導体として規定され、コイル導体35は第三コイル導体として規定される。
【0021】
各コイル導体31~37の経路と直交する方向での幅は、互いに等しい。本明細書では、「等しい」とは、必ずしも、値が一致していることだけを意味するものではない。予め設定した範囲での微差、製造誤差、又は測定誤差が値に含まれている場合でも、値が等しいとしてもよい。
【0022】
コイル導体31,32,33,35,36,37のそれぞれが有する厚さは、互いに等しい。本明細書では、コイル導体の「厚さ」とは、コイル導体の方向D1での一方の面と、一方の面の反対に位置する他方の面との間の距離である。コイル導体の方向D1での一方の面と他方の面との間の平均距離をコイル導体の厚さとしてもよい。一例において、コイル導体の第一端において隣るコイル導体に面する一方の面と、コイル導体の第二端において別の隣るコイル導体に面する他方の面との間の距離は、コイル導体の厚さとされ得る。
【0023】
コイル導体34は、コイル導体33,35の厚さよりも大きい厚さを有する。コイル導体34は、コイル導体33及びコイル導体35の少なくとも一方の厚さよりも大きい厚さを有していればよい。コイル導体34は、コイル導体33,35の厚さの1.25倍以上の厚さを有する。コイル導体34は、コイル導体33,35の厚さの2倍以上の厚さを有してもよく、3倍以上の厚さを有してもよい。コイル導体34は、複数のコイル導体30のうち最も大きい厚さを有してもよい。コイル導体33,35は、複数のコイル導体30のうち最も小さい厚さを有してもよい。
【0024】
複数のコイル導体30のうち互いに隣り合う一対のコイル導体の端部同士は、互いに重なり、かつ、互いに連結されている。本実施形態では、複数のコイル導体30のうち互いに隣り合う一対のコイル導体の端部同士は、完全に重なっているが、該端部同士は、少なくとも一部が重なっていればよい。コイル導体31,32、コイル導体32,33、コイル導体33,34、コイル導体34,35、コイル導体35,36、及びコイル導体36,37は、方向D1で互いに隣り合う一対のコイル導体である。たとえば、コイル導体33の第二端とコイル導体34の第一端とは、方向D1で互いに重なり、かつ、互いに連結され、コイル導体34の第二端とコイル導体35の第一端とは、方向D1で互いに重なり、かつ、互いに連結されている。複数のコイル導体30のうち互いに隣り合う一対のコイル導体は、それぞれの端部において互いに直接物理的に接続されている。
【0025】
接続導体51は、コイル3と外部電極41とを互いに接続する。コイル3及び外部電極41は、接続導体51を介して電気的かつ物理的に互いに接続されている。接続導体51は、コイル導体31と同じ層においてコイル導体31に連続している。接続導体51は、コイル導体31の第一端と外部電極41の部分41aとの間で延在している。接続導体51の厚さは、コイル導体31の厚さと等しい。接続導体52は、コイル3と外部電極42とを互いに接続する。コイル3及び外部電極42は、接続導体52を介して電気的かつ物理的に互いに接続されている。接続導体52は、コイル導体37と同じ層においてコイル導体37に連続している。接続導体52は、コイル導体37の第二端と外部電極42の部分42aとの間で延在している。接続導体52の厚さは、コイル導体37の厚さと等しい。接続導体51及び接続導体52のそれぞれの厚さは、互いに等しい。
【0026】
図6は、本実施形態に係る積層コイル部品1の構成を示す分解図である。本実施形態では、積層コイル部品1の積層方向は、方向D1に沿っている。
図6は、方向D1から見た、積層コイル部品1を構成する複数の層を示している。積層コイル部品1を構成する複数の層は、素体2を構成する層、コイル3を構成する層、外部電極41,42を構成する層、及び接続導体51,52を構成する層を含んでいる。該複数の層の厚さは、互いに等しい。以下では、
図6を参照して、素体2、コイル3の複数のコイル導体30、外部電極41,42、及び接続導体51,52について説明する。
【0027】
素体2は、積層された複数の絶縁体層20から構成されている。本実施形態では、複数の絶縁体層20の数は、「13」である。
図6には、方向D1での両端にそれぞれ位置する二つの絶縁体層20を省略した、九つの絶縁体層20が示されている。実際の素体2では、各絶縁体層20は、各絶縁体層20の間の境界が視認できない程度に一体化されている。各絶縁体層20は、たとえば、非磁性材料から構成されている。非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料又は誘電体材料を含んでいる。本実施形態では、各絶縁体層20は、非磁性材料を含むグリーンシートの焼結体から構成されている。各絶縁体層20は、磁性材料から構成されていてもよい。
【0028】
外部電極41,42は、積層された複数の電極層410,420からそれぞれ構成されている。本実施形態では、複数の電極層410,420のそれぞれの数は、「9」である。実際の外部電極41では、各電極層410は、各電極層410の間の境界が視認できない程度に一体化されている。実際の外部電極42では、各電極層420は、各電極層420の間の境界が視認できない程度に一体化されている。各電極層410,420は、対応する絶縁体層20に形成されている欠損部に設けられている。各絶縁体層20に形成された欠損部によって、外部電極41,42に対応する一対の窪みが得られる。各電極層410,420は、たとえば、導電性材料から構成されている。導電性材料は、たとえば、Ag又はPdを含んでいる。本実施形態では、各電極層410,420は、導電性材料の粉末を含む導電性ペーストの焼結体から構成されている。
【0029】
接続導体51,52は、電極層510,520からそれぞれ構成されている。電極層510は、コイル導体層310に連続し、電極層520は、コイル導体層370に連続している。各電極層510,520は、対応する絶縁体層20に形成されている欠損部に設けられている。各電極層510,520は、たとえば、各電極層410,420と同じ材料から構成されている。各電極層510,520は、たとえば、導電性ペーストの焼結体から構成されている。
【0030】
複数のコイル導体30は、複数のコイル導体30のそれぞれに対応する複数のコイル導体層から構成されている。コイル導体31は、コイル導体層310から構成されている。コイル導体32は、コイル導体層320から構成されている。コイル導体33は、コイル導体層330から構成されている。コイル導体34は、全体的に互いに重なる複数のコイル導体層340から構成されている。本実施形態では、複数のコイル導体層340の数は「3」である。コイル導体35は、コイル導体層350から構成されている。コイル導体36は、コイル導体層360から構成されている。コイル導体37は、コイル導体層370から構成されている。
【0031】
実際のコイル3のコイル導体34では、各コイル導体層340は、各コイル導体層340の間の境界が視認できない程度に一体化されている。各コイル導体層310~370は、対応する絶縁体層20に形成されている欠損部に設けられている。各コイル導体層310~370は、たとえば、各電極層410,420と同じ材料から構成されている。各コイル導体層310~370は、たとえば、導電性ペーストの焼結体から構成されている。
【0032】
以下では、
図2~
図9を参照して、コイル3及び複数のコイル導体30のそれぞれについて説明する。
図6に示されるコイル導体層310~370は、方向D1から見たコイル導体31~37に対応し、各電極層410,420は、方向D1から見た外部電極41,42に対応する。
図7は、本実施形態に係る第一コイル導体の平面図である。
図8は、本実施形態に係る第二コイル導体の平面図である。
図9は、本実施形態に係る第三コイル導体の平面図である。
【0033】
方向D1から見て、コイル3は、五角形状を呈している。当該五角形は、方向D3に沿った中心線に対して、方向D2で線対称である。当該五角形は、最も主面2bの近くに位置する第一辺と、最も側面2fの近くに位置する第二辺と、最も主面2aの近くに位置する第三辺及び第四辺と、最も側面2eの近くに位置する第五辺とを含んでいる。第一辺と第二辺とは第一頂点で接続され、第二辺と第三辺とは第二頂点で接続され、第三辺と第四辺とは第三頂点で接続され、第四辺と第五辺とは第四頂点で接続され、第五辺と第一辺とは第五頂点で接続されている。第三辺と第四辺との間の第三頂点を通過する中心線に対して、第二辺と第五辺とは互いに線対称であり、第三辺と第四辺とは互いに線対称である。第一辺は、第二辺及び第五辺のそれぞれよりも長い。第二辺及び第五辺のそれぞれは、第三辺及び第四辺のそれぞれよりも長い。方向D1から見て、複数のコイル導体30のそれぞれの経路は、第一辺~第五辺のうち少なくとも一つを含んでいる。
【0034】
コイル導体31,34,37の経路は、第一辺を含んでいる。コイル導体31,34,37が有する経路長は、1/2ターン以下である。コイル導体32,35の経路は、第二辺、第三辺、及び第四辺を含んでいる。コイル導体33,36の経路は、第三辺、第四辺、及び第五辺を含んでいる。コイル導体32,33,35,36が有する経路長は、1/2ターン以上である。コイル導体31,37が有する経路長は、互いに等しい。コイル導体32,33,35,36が有する経路長は、互いに等しい。コイル導体34は、コイル導体33,35のそれぞれの経路長よりも短い経路長を有する。コイル導体33,35のそれぞれは、コイル導体34の経路長よりも長い経路長を有する。コイル導体33,35は、複数のコイル導体30のうち最も長い経路長を有していてもよい。コイル導体34は、複数のコイル導体30のうち最も短い経路長を有していてもよい。
【0035】
コイル導体33の第五辺を含む部分は、外部電極41の部分41aと隣り合っている。コイル導体33の外部電極41の部分41aと隣り合う部分は、コイル導体34の外部電極41の部分41aと隣り合う部分の経路長より長い経路長を有する。コイル導体33の第四辺を含む部分は、外部電極41の部分41bと隣り合っている。コイル導体34は、外部電極41の部分41bと隣り合う部分を有さない。コイル導体35の第二辺を含む部分は、外部電極42の部分42aと隣り合っている。コイル導体35の外部電極42の部分42aと隣り合う部分は、コイル導体34の外部電極42の部分42aと隣り合う部分の経路長より長い経路長を有する。コイル導体35の第三辺を含む部分は、外部電極42の部分42bと隣り合っている。コイル導体34は、外部電極42の部分42bと隣り合う部分を有さない。
【0036】
図7に示されるように、コイル導体33は、コイル3の径方向で互いに対向する外面33a及び内面33bを含む。本実施形態では、コイル3の径方向は、コイル3のコイル軸X1に直交する。
図8に示されるように、コイル導体34は、径方向で互いに対向する外面34a及び内面34bを含む。
図9に示されるように、コイル導体35は、径方向で互いに対向する外面35a及び内面35bを含む。外面33a,34a,35aは、素体2の表面に隣接するように位置する。内面33b,34b,35bは、コイル軸X1を向くように位置する。外面33a,34a,35aは、それぞれ第一外面、第二外面、及び第三外面に対応する。内面33b,34b,35bは、それぞれ第一内面、第二内面、及び第三内面に対応する。
【0037】
外面33aは、外部電極41,42から外面33aに直交する垂線が引かれ得る領域S3を含む。領域S3は、領域S3a及び領域S3bを含む。外部電極41からは、領域S3aに直交する垂線が引かれ得る。
図3及び
図7に示されるように、領域S3aは、外部電極41の部分41aの端からの垂線L1と、外部電極41の部分41bの端からの垂線L2とによって規定される。外部電極42からは、領域S3bに直交する垂線が引かれ得る。
図4及び
図7に示されるように、領域S3bは、外部電極42の部分42aの端からの垂線L3と、外部電極42の部分42bの端からの垂線L4とによって規定される。
外面34aは、外部電極41,42から外面34aに直交する垂線が引かれ得る領域S4を含む。領域S4は、領域S4a及び領域S4bを含む。外部電極41からは、領域S4aに直交する垂線が引かれ得る。
図3及び
図8に示されるように、領域S4aは、外部電極41の部分41aの端からの垂線L5と、外部電極41の部分41bの端からの垂線L6とによって規定される。外部電極42からは、領域S4bに直交する垂線が引かれ得る。
図4及び
図8に示されるように、領域S4bは、外部電極42の部分42aの端からの垂線L7と、外部電極42の部分42bの端からの垂線L8とによって規定される。
外面35aは、外部電極41,42から外面35aに直交する垂線が引かれ得る領域S5を含む。領域S5は、領域S5a及び領域S5bを含む。外部電極41からは、領域S5aに直交する垂線が引かれ得る。
図3及び
図9に示されるように、領域S5aは、外部電極41の部分41aの端からの垂線L9と、外部電極41の部分41bの端からの垂線L10とによって規定される。外部電極42からは、領域S5bに直交する垂線が引かれ得る。
図4及び
図9に示されるように、領域S5bは、外部電極42の部分42aの端からの垂線L11と、外部電極42の部分42bの端からの垂線L12とによって規定される。
領域S4の面積は、領域S3の面積及び領域S5の面積の少なくとも一方よりも小さい。本実施形態では、領域S4の面積は、領域S3の面積及び領域S5の面積の双方よりも小さい。領域S3の面積は、領域S3aの面積と領域S3bの面積との和である。領域S4の面積は、領域S4aの面積と領域S4bの面積との和である。領域S5の面積は、領域S5aの面積と領域S5bの面積との和である。
【0038】
上述のように、コイル導体34は、コイル導体33及びコイル導体35のそれぞれの経路長より短い経路長を有し、複数のコイル導体30においてコイル導体33とコイル導体35との間に位置する。コイル導体33及びコイル導体35は、コイル導体34の経路長よりも長い経路長を有するので、コイル導体33とコイル導体35との間に発生する浮遊容量は、他の構成のコイル導体33とコイル導体35との間に発生する浮遊容量よりも大きい。コイル導体33とコイル導体35との間の間隔は、コイル導体34の厚さに応じて変化する。コイル導体34は、コイル導体33及びコイル導体35の少なくとも一方の厚さより大きい厚さを有する。コイル3において発生する浮遊容量は、コイル導体34の厚さがコイル導体33の厚さ及びコイル導体35の厚さの双方と同等以下の構成のコイルにおいて発生する浮遊容量よりも小さい。結果として、積層コイル部品1は、積層コイル部品の自己共振周波数の向上が可能である。
【0039】
積層コイル部品1では、コイル導体34の領域S4の面積は、コイル導体33の領域S3の面積及びコイル導体35の領域S5の面積の少なくとも一方よりも小さい。
領域S3の面積は、コイル導体33と外部電極41,42とが互いに対向する面積である。領域S4の面積は、コイル導体34と外部電極41,42とが互いに対向する面積である。領域S5の面積は、コイル導体35と外部電極41,42とが互いに対向する面積である。したがって、コイル導体33~35と外部電極41,42との間に発生する浮遊容量は、各領域S3,S4,S5の面積に応じて変化する。
積層コイル部品1では、コイル導体34は、コイル導体33の領域S3の面積及びコイル導体35の領域S5の面積の少なくとも一方よりもコイル導体34の面積が小さくなるように配置されている。領域S4の面積が領域S3の面積及び領域S5の面積の双方と同等以上になるようにコイル導体34が配置された構成の積層コイル部品と比して、積層コイル部品1では、コイル導体33~35と外部電極41,42との間に発生する浮遊容量が低減され得る。結果として、積層コイル部品1は、積層コイル部品の自己共振周波数のより一層の向上が可能である。
【0040】
積層コイル部品1では、複数のコイル導体30のうち互いに隣り合う一対のコイル導体の端部同士は、互いに重なり、かつ、互いに連結されている。
隣り合う一対のコイル導体の端部同士が互いに重なり、かつ、互いに連結されていない別の構成の積層コイル部品では、コイルは、互いに隣り合う一対のコイル導体の端部同士を接続する別の導体を含む。該別の構成の積層コイル部品では、コイル3と外部電極41,42とが対向する面積は、該別の導体と外部電極41,42とが対向する面積を含むので、浮遊容量が増加する場合がある。互いに隣り合う一対のコイル導体の端部同士が互いに重なり、かつ、互いに連結されている構成の積層コイル部品1は、該別の導体を含まないので、コイル3と外部電極41,42とが対向する面積は、該別の導体と外部電極41,42とが対向する面積を含まない。したがって、互いに隣り合う一対のコイル導体の端部同士が互いに重なり、かつ、互いに連結されている構成の積層コイル部品1では、該別の構成の積層コイル部品と比して、浮遊容量を低減できるので、自己共振周波数のより一層の向上が可能である。
【0041】
積層コイル部品1では、コイル導体34は、複数のコイル導体30のうち最も大きい厚さを有している。
コイル導体34が複数のコイル導体30のうち最も大きい厚さを有する構成では、他の構成と比してコイル導体33とコイル導体35との間の間隔が広いので、コイル導体33とコイル導体35との間に発生する浮遊容量がより低減されるので、自己共振周波数のより一層の向上が可能である。
【0042】
次に、
図10~
図14を参照して、本実施形態の変形例に係る積層コイル部品1Aの構成を説明する。変形例に係る積層コイル部品1Aは、コイル3、外部電極41,42、及び接続導体51,52に代えてコイル6、外部電極43,44、及び接続導体53,54を備える。
図10は、変形例に係る積層コイル部品の斜視図である。
図11は、変形例に係るコイルの斜視図である。
図12は、変形例に係るコイルを側面2eから見た平面図である。
図13は、変形例に係るコイルを主面2bから見た平面図である。
図14は、変形例に係るコイルを主面2aから見た平面図である。以下では、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
【0043】
素体2には、一対の外部電極43,44に対応する一対の窪みが形成されている。主面2aは、外部電極43,44に対応する窪みを画成する面を含んでいる。外部電極43,44は、主面2a,2b、側面2c,2d、及び側面2e,2fのうち主面2a上にのみ配置されている。外部電極43,44の表面は、主面2a,2b、側面2c,2d、及び側面2e,2fのうち主面2aと同じ向きのみを向いている。外部電極43,44の表面と主面2aとは同一平面上に位置してもよい。外部電極43,44の表面は、主面2aから突出していてもよい。外部電極43と外部電極44とは、方向D2で離れて並んでいる。方向D3から見て、外部電極43,44は、主面2aと各側面2c,2d,2e,2fとの間の稜線から離れて位置している。
【0044】
図11~
図14に示されるように、コイル6は、複数のコイル導体60を有している。複数のコイル導体60は、互いに電気的に接続されている。複数のコイル導体60は、コイル導体61,62,63,64,65,66,67を含んでいる。コイル導体61~67は、その順番で方向D1に沿って並び、かつ、互いに隣り合っている。コイル導体61は、コイル6の方向D1での一方の端を含む最端のコイル導体である。コイル導体67は、コイル6の方向D1での他方の端を含む最端のコイル導体である。コイル6は、方向D1で連結された七つのコイル導体61~67によって構成されている。コイル6のターン数は、2.5ターンである。各コイル導体61~67は、コイル6のコイル軸X2を中心とする環状の軌道の一部を構成している。
【0045】
コイル導体63,64,65は、コイル導体63、コイル導体64、コイル導体65の順番で方向D1に並んでいる。コイル導体63とコイル導体64とは、互いに隣り合っており、コイル導体64とコイル導体65とは、互いに隣り合っている。コイル導体64は、複数のコイル導体60においてコイル導体63とコイル導体65との間に位置する。コイル導体63とコイル導体65とは、方向D1においてコイル導体64の厚さだけ離れている。コイル導体63及びコイル導体65のそれぞれは、方向D1においてコイル導体64の厚さだけ離れて互いに対向する部分を含む。たとえば、コイル導体63は第一コイル導体として規定され、コイル導体64は第二コイル導体として規定され、コイル導体65は第三コイル導体として規定される。
【0046】
コイル導体61,62,63,65,66,67のそれぞれが有する厚さは、互いに等しい。コイル導体64は、コイル導体63,65の厚さよりも大きい厚さを有する。コイル導体は、コイル導体63及びコイル導体65の少なくとも一方の厚さよりも大きい厚さを有していればよい。
【0047】
接続導体53は、コイル6と外部電極43とを互いに接続する。コイル6及び外部電極43は、接続導体53を介して電気的かつ物理的に互いに接続されている。接続導体53は、コイル導体61と同じ層においてコイル導体61に連続している。接続導体53は、コイル導体61の第一端と外部電極43との間で延在している。接続導体53の厚さは、コイル導体61の厚さと等しい。接続導体54は、コイル6と外部電極44とを互いに接続する。コイル6及び外部電極44は、接続導体54を介して電気的かつ物理的に互いに接続されている。接続導体54は、コイル導体67と同じ層においてコイル導体67に連続している。接続導体54は、コイル導体67の第二端と外部電極44との間で延在している。接続導体54の厚さは、コイル導体67の厚さと等しい。接続導体53及び接続導体54のそれぞれの厚さは、互いに等しい。
【0048】
以下では、
図15を参照して、コイル6の複数のコイル導体60、外部電極43,44、及び接続導体53,54について説明する。
図15は、変形例に係る積層コイル部品の構成を示す分解図である。
【0049】
外部電極43,44は、積層された複数の電極層430,440からそれぞれ構成されている。本変形例では、複数の電極層430,440のそれぞれの数は、「9」である。各電極層430,440は、対応する絶縁体層20に形成されている欠損部に設けられている。各絶縁体層20に形成された欠損部によって、外部電極43,44に対応する一対の窪みが得られる。接続導体53,54は、電極層530,540からそれぞれ構成されている。電極層530は、コイル導体層610に連続し、電極層540は、コイル導体層670に連続している。各電極層530,540は、対応する絶縁体層20に形成されている欠損部に設けられている。各電極層530,540は、たとえば、各電極層430,440と同じ材料から構成されている。
【0050】
複数のコイル導体60は、複数のコイル導体60のそれぞれに対応する複数のコイル導体層から構成されている。コイル導体61~63は、コイル導体層610~630からそれぞれ構成されている。コイル導体64は、全体的に互いに重なる複数のコイル導体層640から構成されている。本変形例では、複数のコイル導体層640の数は「3」である。コイル導体65~67は、コイル導体層650~670からそれぞれ構成されている。
【0051】
以下では、
図11及び
図14~
図18を参照して、コイル6及び複数のコイル導体60のそれぞれについて説明する。
図15に示されるコイル導体層610~670は、方向D1から見たコイル導体61~67に対応し、各電極層430,440は、方向D1から見た外部電極43,44に対応する。
図16は、変形例に係る第一コイル導体の平面図である。
図17は、変形例に係る第二コイル導体の平面図である。
図18は、変形例に係る第三コイル導体の平面図である。
【0052】
方向D1から見て、コイル6は、四角形状を呈している。当該四角形は、たとえば、方向D2に沿った一対の長辺と方向D3に沿った一対の短辺とを含む長方形状を呈している。当該四角形は、最も側面2eの近くに位置する第一辺と、最も主面2bの近くに位置する第二辺と、最も側面2fの近くに位置する第三辺と、最も主面2aの近くに位置する第四辺とを含んでいる。第一辺と第二辺とは第一頂点で接続され、第二辺と第三辺とは第二頂点で接続され、第三辺と第四辺とは第三頂点で接続され、第四辺と第一辺とは第四頂点で接続されている。第一辺及び第三辺は、方向D3に沿った一対の短辺である。第二辺及び第四辺は、方向D2に沿った一対の長辺である。第二辺及び第四辺のそれぞれは、第一辺及び第三辺のそれぞれよりも長い。方向D1から見て、複数のコイル導体60のそれぞれの経路は、第一辺~第四辺のうち少なくとも一つを含んでいる。
【0053】
コイル導体61の経路は、第一辺及び第二辺を含んでいる。コイル導体62,65の経路は、第三辺及び第四辺を含んでいる。コイル導体63,66の経路は、第一辺及び第四辺を含んでいる。コイル導体64の経路は、第二辺を含んでいる。コイル導体67の経路は第二辺及び第三辺を含んでいる。コイル導体61,67が有する経路長は、互いに等しい。コイル導体62,63,65,66が有する経路長は、互いに等しい。コイル導体64は、コイル導体62,63,65,66の経路長よりも短い経路長を有する。コイル導体64は、複数のコイル導体60のうち最も短い経路長を有してもよい。
【0054】
コイル導体63,65は、コイル導体64よりも外部電極43,44の周りに配置されている。コイル導体63,65の第四辺を含む部分は、外部電極43,44と隣り合っている。コイル導体64は、外部電極43,44と隣り合う部分を有さない。コイル導体63と外部電極43との間の最短距離は、コイル導体64と外部電極43との間の最短距離よりも小さい。コイル導体65と外部電極44との間の最短距離は、コイル導体64と外部電極44との間の最短距離よりも小さい。コイル導体63,65は、コイル導体64よりも外部電極43,44寄りに位置する。コイル導体64は、コイル導体63,65よりも外部電極43,44から離れている。
【0055】
図16に示されるように、コイル導体63は、コイル6の径方向で互いに対向する外面63a及び内面63bを含む。本変形例では、コイル6の径方向は、コイル軸X2に直交する。
図17に示されるように、コイル導体64は、径方向で互いに対向する外面64a及び内面64bを含む。
図18に示されるように、コイル導体65は、径方向で互いに対向する外面65a及び内面65bを含む。外面63a,64a,65aは、素体2の表面に隣接するように位置する。内面63b,64b,65bは、コイル軸X2を向くように位置する。外面63a,64a,65aは、それぞれ第一外面、第二外面、及び第三外面に対応する。内面63b,64b,65bは、それぞれ第一内面、第二内面、及び第三内面に対応する。
【0056】
外面63aは、外部電極43,44から外面63aに直交する垂線が引かれ得る領域S6を含む。領域S6は、領域S6a及び領域S6bを含む。外部電極43からは、領域S6aに直交する垂線が引かれ得る。
図14及び
図16に示されるように、領域S6aは、外部電極43の側面2f寄りの端からの垂線L13と、外部電極43の側面2e寄りの端からの垂線L14とによって規定される。外部電極44からは、領域S6bに直交する垂線が引かれ得る。
図14及び
図16に示されるように、領域S6bは、外部電極44の側面2f寄りの端からの垂線L15と、外部電極44の側面2e寄りの端からの垂線L16とによって規定される。
外面64aは、外部電極43,44から外面64aに直交する垂線が引かれ得る領域を含まない。
図14及び
図17に示されるように、外部電極43,44から外面64aに直交する垂線が引かれ得る領域の面積は、ゼロである。
外面65aは、外部電極43,44から外面65aに直交する垂線が引かれ得る領域S7を含む。領域S7は、領域S7a及び領域S7bを含む。外部電極43からは、領域S7aに直交する垂線が引かれ得る。
図14及び
図18に示されるように、領域S7aは、外部電極43の側面2f寄りの端からの垂線L17と、外部電極43の側面2e寄りの端からの垂線L18とによって規定される。外部電極44からは、領域S7bに直交する垂線が引かれ得る。
図14及び
図18に示されるように、領域S7bは、外部電極44の側面2f寄りの端からの垂線L19と、外部電極44の側面2e寄りの端からの垂線L20とによって規定される。
外面64aは、外部電極43,44から外面64aに直交する垂線が引かれ得る領域を含まない。したがって、外部電極43,44から外面64aに直交する垂線が引かれ得る領域の面積は、領域S6の面積及び領域S7の面積の双方よりも小さい。領域S6の面積は、領域S6aの面積と領域S6bの面積との和である。領域S7の面積は、領域S7aの面積と領域S7bの面積との和である。
【0057】
以上説明したように、変形例に係る積層コイル部品1Aでは、素体2の表面は、主面2a,2bを含む。外部電極43,44は、主面2a,2bのうち主面2a上にのみ配置されている。
外部電極が主面2a以外の素体2の表面上にも配置される構成と比して、外部電極43,44が主面2a上にのみ配置されている構成は、コイル導体64と、外部電極43,44との間の距離を確保しやすい。したがって、変形例に係る積層コイル部品1Aでは、外部電極43,44とコイル6との間に発生する浮遊容量がより一層低減されるので、自己共振周波数のより一層の向上が可能である。
【0058】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。実施形態および変形例は適宜組み合わせることが可能である。
【0059】
方向D1から見て、コイル3は、五角形又は四角形以外の多角形状を呈してもよく、円形状を呈してもよい。
コイル導体34は、コイル導体33及びコイル導体35のそれぞれの経路長より短い経路長を有さなくてもよい。たとえば、コイル導体34は、コイル導体33の厚さより大きい厚さを有していればよい。コイル導体33は、コイル3の径方向で互いに対向する外面33a及び内面33bを含み、コイル導体34は、径方向で互いに対向する外面34a及び内面34bを含んでもよい。外面33aは、外部電極41,42から外面34aに直交する垂線が引かれる領域S3を含んでいてもよい。外面34aは、外部電極41,42から外面34aに直交する垂線が引かれる領域S4を含んでいてもよい。領域S4の面積は、領域S3の面積よりも小さければよい。
コイル導体34は、コイル導体33の厚さ及びコイル導体35の厚さの少なくとも一方より大きい厚さを有してもよい。領域S4の面積は、領域S3の面積及び領域S5の面積の少なくとも一方よりも小さければよい。
【0060】
上述した実施形態及び変形例の記載から把握されるとおり、本明細書は以下に示す態様の開示を含んでいる。付記6に記載の積層コイル部品は、付記2,4,5のいずれか一つに適用されてもよい。
(付記1)
素体と、
前記素体内に配置され、それぞれ厚さ及び経路長を有する複数のコイル導体を含むコイルと、
前記素体の表面上に配置され、前記コイルと電気的に接続された外部電極と、を備え、
前記複数のコイル導体は、一方向に並び、かつ、互いに隣り合う、第一コイル導体、第二コイル導体、及び第三コイル導体を含み、
前記第二コイル導体は、前記第一コイル導体及び前記第三コイル導体のそれぞれの経路長より短い経路長を有し、かつ、前記第一コイル導体及び前記第三コイル導体の少なくとも一方の厚さより大きい厚さを有する、
積層コイル部品。
(付記2)
前記第二コイル導体は、前記第一コイル導体及び前記第三コイル導体の前記少なくとも一方の前記厚さの1.25倍以上の前記厚さを有する、付記1に記載の積層コイル部品。
(付記3)
前記第一コイル導体は、前記コイルの径方向で互いに対向する第一外面及び第一内面を含み、前記第二コイル導体は、前記径方向で互いに対向する第二外面及び第二内面を含み、前記第三コイル導体は、前記径方向で互いに対向する第三外面及び第三内面を含み、前記第一外面は、前記外部電極から該第一外面に直交する垂線が引かれ得る第一領域を含み、前記第二外面は、前記外部電極から該第二外面に直交する垂線が引かれ得る第二領域を含み、前記第三外面は、前記外部電極から該第三外面に直交する垂線が引かれ得る第三領域を含み、前記第二領域の面積は、前記第一領域の面積及び前記第三領域の面積の少なくとも一方よりも小さい、請求項1又は2に記載の積層コイル部品。
付記1又は2に記載の積層コイル部品。
(付記4)
前記素体の前記表面は、少なくとも一つの主面を含み、
前記外部電極は、前記少なくとも一つの主面のうち一つの主面上にのみ配置されている、付記1~3の何れか一つに記載の積層コイル部品。
(付記5)
前記複数のコイル導体のうち互いに隣り合う一対のコイル導体の端部同士は、互いに重なり、かつ、互いに連結されている、付記1~4の何れか一つに記載の積層コイル部品。
(付記6)
素体と、前記素体内に配置され、それぞれ厚さを有する複数のコイル導体を含むコイルと、前記素体の表面上に配置され、前記コイルと電気的に接続された外部電極と、を備え、前記複数のコイル導体は、互いに隣り合う第一コイル導体及び第二コイル導体を含み、前記第二コイル導体は、前記第一コイル導体の厚さより大きい厚さを有し、前記第一コイル導体は、前記コイルの径方向で互いに対向する第一外面及び第一内面を含み、前記第二コイル導体は、前記径方向で互いに対向する第二外面及び第二内面を含み、前記第一外面は、前記外部電極から該第一外面に直交する垂線が引かれ得る第一領域を含み、前記第二外面は、前記外部電極から該第二外面に直交する垂線が引かれ得る第二領域を含み、前記第二領域の面積は、前記第一領域の面積よりも小さい、積層コイル部品。
【符号の説明】
【0061】
1…積層コイル部品、2…素体、2a…主面、3,6…コイル、30,60…複数のコイル導体、31,32,33,34,35,36,37,61,62,63,64,65,66,67…コイル導体、41,42,43,44…外部電極、D1,D2,D3…方向。