(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154143
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】ドア支持装置
(51)【国際特許分類】
E05B 83/40 20140101AFI20251002BHJP
E05D 15/10 20060101ALI20251002BHJP
E05B 79/20 20140101ALI20251002BHJP
E05F 15/643 20150101ALI20251002BHJP
E05F 15/655 20150101ALI20251002BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
E05B83/40
E05D15/10
E05B79/20
E05F15/643
E05F15/655
B60J5/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056992
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】増田 充行
【テーマコード(参考)】
2E034
2E052
2E250
【Fターム(参考)】
2E034FA01
2E034GA01
2E034GB15
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA16
2E052EC01
2E052LA02
2E250HH01
2E250JJ45
2E250KK01
2E250LL01
2E250MM01
2E250PP04
2E250PP05
2E250QQ08
(57)【要約】
【課題】スライドドアの開閉作動時にリリースケーブルに負荷が掛かることを抑制できるドア支持装置を提供する。
【解決手段】ドア支持装置40は、ロアレール51に対して転動するガイドローラ122,123と、スライドドア30に固定されるドアブラケット110と、ガイドローラ122,123を回転可能に支持するとともにドアブラケット110に対して回転可能に連結される可動アーム121と、を有するロアヒンジユニット61と、可動アーム121に固定され、スライドドア30が全開位置に配置されるときに、スライドドア30をストライカに拘束するロック機構130と、を備える。ロック機構130は、スライドドア30のストライカに対する拘束を解除するリリースケーブル150と、リリースケーブル150を保持するケーブルガイド137と、を有する。ケーブルガイド137は、可動アーム121に対して回転可能である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部を側面に有する車体に、前記ドア開口部を開閉するスライドドアを支持させるドア支持装置であって、
前記車体の前後方向が長手方向となるように前記車体に固定されるガイドレールと、
前記ガイドレールに対して転動することにより前記ガイドレールに沿って移動するガイドローラと、前記スライドドアに固定されるドアブラケットと、前記ガイドローラを回転可能に支持するとともに前記ドアブラケットに対して回転可能に連結される可動アームと、を有するヒンジユニットと、
前記可動アームに固定され、前記スライドドアが前記ドア開口部を全開する全開位置に配置されるときに、前記スライドドアを前記車体のストライカに拘束するロック機構と、を備え、
前記ロック機構は、
牽引されることにより、前記ロック機構による前記スライドドアの前記ストライカに対する拘束を解除するリリースケーブルと、
前記リリースケーブルを保持するケーブルガイドと、を有し、
前記ケーブルガイドは、前記可動アームに対して回転可能である
ドア支持装置。
【請求項2】
前記ドアブラケットと前記可動アームの回転軸線との前記車体の幅方向における距離は、前記スライドドアが前記ドア開口部を全閉する全閉位置に配置される場合の方が、前記スライドドアが前記全開位置に配置される場合よりも短くなる
請求項1に記載のドア支持装置。
【請求項3】
前記スライドドアの閉作動に伴う前記ケーブルガイドの回転方向を第1方向とし、前記第1方向の逆方向を第2方向としたとき、
前記ロック機構は、前記第2方向に、前記ケーブルガイドを付勢するガイドスプリングを有する
請求項2に記載のドア支持装置。
【請求項4】
前記ロック機構は、
前記ストライカに係止可能なフルラッチ位置と前記ストライカに係止不能なアンラッチ位置との間を回転するように構成されるラッチと、
前記フルラッチ位置に位置する前記ラッチに係止することにより前記ラッチの前記アンラッチ位置に向かう回転を規制する規制位置と、前記ラッチから退避することにより前記ラッチの前記アンラッチ位置に向かう回転を許容する退避位置と、の間を回転するように構成されるポールと、
前記スライドドアが前記全開位置に配置される場合に、前記ケーブルガイドを位置決めする位置決め部と、を有する
請求項3に記載のドア支持装置。
【請求項5】
前記ロック機構は、
前記ストライカに係止可能なフルラッチ位置と前記ストライカに係止不能なアンラッチ位置との間を回転するように構成されるラッチと、
前記フルラッチ位置に位置する前記ラッチに係止することにより前記ラッチの前記アンラッチ位置に向かう回転を規制する規制位置と、前記ラッチから退避することにより前記ラッチの前記アンラッチ位置に向かう回転を許容する退避位置と、の間を回転するように構成されるポールと、
前記ラッチを回転可能に支持するラッチ支持軸と、
前記ポールを回転可能に支持するポール支持軸と、を有し、
前記リリースケーブルは、前記ポールに接続され、牽引されることにより前記ポールを前記退避位置に向かって回転させるものであり、
前記ケーブルガイドは、前記ラッチ支持軸又は前記ポール支持軸に回転可能に支持される
請求項2~請求項4の何れか一項に記載のドア支持装置。
【請求項6】
前記ロック機構は、前記ラッチ支持軸及び前記ポール支持軸が固定されるベースを有し、
前記ベースが前記可動アームに固定されることにより、前記ロック機構が前記可動アームに固定される
請求項5に記載のドア支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドア開口部を有する車体と、ドア開口部を開閉するスライドドアと、を備える車両が記載されている。車体は、ドア開口部の下端付近かつ後端付近に配置されるストライカシャフトを有する。スライドドアは、ドア本体と、ドア本体の下端部に固定されるドアブラケットと、ドアブラケットに対して回転可能に連結される可動アームと、可動アームに配置されるロック機構と、を有する。スライドドアが開閉作動する場合には、可動アームがドアブラケットに対して回転することで、ドア本体が車体に対する姿勢を維持した状態で前後方向及び幅方向に移動する。また、スライドドアがドア開口部を全開する全開位置に配置される場合には、ロック機構はストライカシャフトに係止する係止状態となる。こうして、スライドドアは、全開位置で車体に対して拘束される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スライドドアを全開位置から閉作動させる場合には、ロック機構の係止状態を解除する必要がある。このため、上記のようなロック機構には、ロック機構の係止状態を解除するための動力を伝達するリリースケーブルが接続されることが一般的である。ただし、上記のような車両において、スライドドアが開閉作動される場合には、ロック機構の設置される可動アームが回転する。したがって、上記のような車両において、スライドドアが開閉作動される場合には、可動アームの回転に伴い、リリースケーブルに曲げ荷重が作用するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するドア支持装置は、ドア開口部を側面に有する車体に、前記ドア開口部を開閉するスライドドアを支持させるドア支持装置であって、前記車体の前後方向が長手方向となるように前記車体に固定されるガイドレールと、前記ガイドレールに対して転動することにより前記ガイドレールに沿って移動するガイドローラと、前記スライドドアに固定されるドアブラケットと、前記ガイドローラを回転可能に支持するとともに前記ドアブラケットに対して回転可能に連結される可動アームと、を有するヒンジユニットと、前記可動アームに固定され、前記スライドドアが前記ドア開口部を全開する全開位置に配置されるときに、前記スライドドアを前記車体のストライカに拘束するロック機構と、を備え、前記ロック機構は、牽引されることにより、前記ロック機構による前記スライドドアの前記ストライカに対する拘束を解除するリリースケーブルと、前記リリースケーブルを保持するケーブルガイドと、を有し、前記ケーブルガイドは、前記可動アームに対して回転可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
ドア支持装置は、スライドドアの開閉作動時にリリースケーブルに負荷が掛かることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、ドア支持装置を備える車両の模式図である。
【
図2】
図2は、
図1のドア支持装置のロアレールとロアヒンジユニットとの平面図である。
【
図3】
図3は、
図1のドア支持装置のロアヒンジユニットの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3のロアヒンジユニットのロック機構の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3のロアヒンジユニットのロック機構の平面図である。
【
図6】
図6は、
図1のドア支持装置の作用を説明する平面図である。
【
図7】
図7は、
図1のドア支持装置の作用を説明する平面図である。
【
図8】
図8は、
図1のドア支持装置の作用を説明する平面図である。
【
図9】
図9は、別の実施形態のドア支持装置の作用を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ドア支持装置を備える車両の一実施形態について説明する。本実施形態の車両は、例えば、床下の空間に大型のバッテリを備える電気自動車又はハイブリッド自動車である。
【0009】
<本実施形態の構成>
図1及び
図2に示すように、車両10は、車体20と、スライドドア30と、ドア支持装置40と、リモコン80と、ドア駆動装置90と、を備える。
【0010】
以降の説明では、車両10の幅方向、車両10の前後方向及び車両10の上下方向をそれぞれ幅方向、前後方向及び上下方向という。図中において、前後方向はX軸の延びる方向であり、幅方向はY軸の延びる方向であり、上下方向はZ軸の延びる方向である。また、幅方向において、車両10の中心に向かう方向を内方といい、車両10の中心から離れる方向を外方という。
【0011】
<車体20>
車体20は、ドア開口部21と、収容空間22と、を有する。ドア開口部21は、車体20の幅方向における側面に開口している。ドア開口部21は、幅方向における側面視において、前後方向を短手方向とし上下方向を長手方向とする矩形状をなしている。ドア開口部21は、後席に対して乗降するユーザが通過する部位である。収容空間22は、車体20の幅方向における側面に開口している。収容空間22は、ドア開口部21の下方に位置している。収容空間22は、後述するロアレール51とロアヒンジユニット61とを収容するための空間である。車両10が幅方向における両側にスライドドア30を備える場合、収容空間22は幅方向に間隔をあけて2つ存在する。また、幅方向に間隔をあけて位置する2つの収容空間22の間の空間がバッテリを搭載するための空間となる。
【0012】
<スライドドア30>
スライドドア30は、ドア本体31と、ドアハンドル35と、を備える。ドア本体31は、ドア開口部21に応じた形状をなしている。
【0013】
ドア本体31は、インナパネル32とアウタパネル33とを有する。インナパネル32はドア本体31における車両10の内方を向く部分である。インナパネル32は、インナパネル32を板厚方向に貫通するケーブル挿通孔32aを含む。ケーブル挿通孔32aは、インナパネル32の下端付近かつ前端付近に設けられている。アウタパネル33はドア本体31における車両10の外方を向く部分である。ドアハンドル35は、スライドドア30を開閉する際にユーザに操作される。ドアハンドル35は、ドア本体31のインナパネル32に設けられるインサイドドアハンドルと、ドア本体31のアウタパネル33に設けられるアウトサイドドアハンドルと、を含む。スライドドア30は、ドア開口部21を全閉する全閉位置及びドア開口部21を全開する全開位置の間を移動可能となっている。
【0014】
<ドア支持装置40>
図1に示すように、ドア支持装置40は、ロアレール51、センターレール52及びアッパレール53と、ロアヒンジユニット61、センターヒンジユニット62及びアッパヒンジユニット63と、ストライカ70と、を備える。ロアレール51は「ガイドレール」に相当し、ロアヒンジユニット61は「ヒンジユニット」に相当している。
【0015】
<ロアレール51>
ロアレール51は、長尺部材である。ロアレール51の長手方向は、前後方向である。ロアレール51は、後側部分を構成する第1湾曲部51a、前側部分を構成する第2湾曲部51bと、を有する。第1湾曲部51aは、前方に進むにつれて幅方向における内方に向かうように湾曲している。第2湾曲部51bは、第1湾曲部51aの前端から前方に進むにつれて幅方向における外方に向かうように湾曲している。
【0016】
第1湾曲部51aの後端部における長手方向は、概ね前後方向に沿うように延びている。一方、第2湾曲部51bの前端部における長手方向は、前後方向と交差するように延びている。前後方向において、第1湾曲部51aの長さは、第2湾曲部51bの長さよりも長くなっている。第1湾曲部51aの曲率半径は、第2湾曲部51bの曲率半径よりも大きくなっている。また、第1湾曲部51aに沿うように曲線を引いた場合、当該曲線は、前後方向における中間部に変曲点を有している。一方、第2湾曲部51bに沿うように曲線を引いた場合、当該曲線は前後方向における中間部に変曲点を有していない。
【0017】
ロアレール51は、車体20におけるドア開口部21の下端よりも下方に固定されている。ロアレール51が車体20に固定される状態では、第1湾曲部51aの後端から前方に進んだ位置に第2湾曲部51bの前端が位置している。つまり、幅方向において、ロアレール51の後端及び前端は同じ様な位置に位置している。
【0018】
<ロアヒンジユニット61>
図2及び
図3に示すように、ロアヒンジユニット61は、ドアブラケット110と、ガイド機構120と、ロック機構130と、連結軸160と、2つのボルト170と、を備える。
【0019】
ドアブラケット110は、例えば、金属板をプレス加工することにより成形される。ドアブラケット110は、側壁111と、底壁112と、を有する。側壁111及び底壁112は板状をなしている。側壁111は、ドア本体31に固定される際にドア本体31と面接触する固定面111aを含む。底壁112は、側壁111の下端から側壁111の板厚方向に延びている。本実施形態において、ドアブラケット110は、別々に構成される2つの部材から構成されているが、他の実施形態において、1つの部材から構成されていてもよい。
【0020】
<ガイド機構120>
ガイド機構120は、可動アーム121と、2つのガイドローラ122,123と、支持ローラ124と、を有する。
【0021】
可動アーム121は、板状をなす長尺部材である。可動アーム121は、主壁121aと、支持壁121bと、を有する。可動アーム121は、例えば、金属板材をプレス加工することにより構成される。この点で、主壁121a及び支持壁121bは、板状をなしている。主壁121aは、長尺の平板状をなしている。支持壁121bは、主壁121aの基端部から主壁121aの板厚方向に屈曲している。可動アーム121の先端部は、連結軸160を介して、ドアブラケット110の底壁112と相対回転可能に連結されている。以降の説明では、可動アーム121のドアブラケット110に対する回転軸線を「ヒンジ軸線Axh」という。
【0022】
2つのガイドローラ122,123は、可動アーム121の主壁121aの基端部に回転可能に支持されている。2つのガイドローラ122,123の回転軸線は、ヒンジ軸線Axhと平行の位置関係を取っている。支持ローラ124は、可動アーム121の支持壁121bに回転可能に支持されている。支持ローラ124の回転軸線は、2つのガイドローラ122,123の回転軸線とねじれの位置関係を取っている。ガイド機構120を上方から見たとき、支持ローラ124は、2つのガイドローラ122,123の間に位置している。
【0023】
<ロック機構130>
図3~
図5に示すように、ロック機構130は、メインベース131と、サブベース132と、ラッチ支持軸133と、ポール支持軸134と、ラッチ135と、ポール136と、ケーブルガイド137と、ラッチスプリング141と、ポールスプリング142と、ガイドスプリング143と、2つのナット144と、リリースケーブル150と、を有する。
【0024】
メインベース131及びサブベース132は、例えば、金属板をプレス加工することにより成形される。メインベース131及びサブベース132は、板状をなしている。メインベース131は、スプリング141~143の端部を支持する第1支持部131a及び第2支持部131bを有する。本実施形態において、メインベース131の下面には、2つのナット144が溶接などにより接合されている。つまり、メインベース131は、2つのナット144と一体に構成されている。他の実施形態において、メインベース131は、2つのナット144と別体に構成されていてもよい。
【0025】
ラッチ支持軸133及びポール支持軸134は、円柱状をなしている。ラッチ支持軸133及びポール支持軸134は、メインベース131及びサブベース132をこれらの板厚方向に連結している。言い換えれば、ラッチ支持軸133の一端及びポール支持軸134の一端はメインベース131に固定され、ラッチ支持軸133の他端及びポール支持軸134の他端はサブベース132に固定されている。このとき、メインベース131及びサブベース132の間には隙間が存在している。
【0026】
ラッチ135は、円板状をなしている。ラッチ135は、板厚方向と直交する方向に延びる係合溝135aを有する。ラッチ135は、ラッチ支持軸133に回転可能に支持されている。ラッチ135は、ストライカ70に係止可能なフルラッチ位置及びストライカ70に係止不能なアンラッチ位置の間を、ラッチ支持軸133の軸線回りに回転可能となっている。
【0027】
ラッチスプリング141は、トーションスプリングである。ラッチスプリング141のコイル部には、ラッチ支持軸133が挿入されている。ラッチスプリング141の第1端はラッチ135に係止し、ラッチスプリング141の第2端はメインベース131の第2支持部131bに係止している。ラッチスプリング141は、ラッチ135をフルラッチ位置からアンラッチ位置に向かう方向に付勢している。
【0028】
ポール136は、鉤状をなしている。ポール136は、ポール支持軸134に回転可能に支持されている。ポール136は、規制位置と退避位置との間を回転可能となっている。規制位置は、フルラッチ位置に位置するラッチ135に係止することにより、ラッチ135のフルラッチ位置からアンラッチ位置に向かう回転を規制する位置である。退避位置は、フルラッチ位置に位置するラッチ135から退避することにより、ラッチ135のフルラッチ位置からアンラッチ位置に向かう回転を許容する位置である。
【0029】
ポールスプリング142は、トーションスプリングである。ポールスプリング142のコイル部には、ポール支持軸134が挿入されている。ポールスプリング142の第1端はポール136に係止し、ポールスプリング142の第2端はメインベース131の第1支持部131aに係止している。ポールスプリング142は、ポール136を退避位置から規制位置に向かう方向に付勢している。
【0030】
ケーブルガイド137は、第1部分137aと、第2部分137bと、第3部分137cと、を有する。ケーブルガイド137は、例えば、金属板をプレス加工することによって成形される。この点で、第1部分137a、第2部分137b及び第3部分137cは、平板状をなしている。第1部分137aは長尺状をなしている。第2部分137bは、第1部分137aの先端から屈曲している。第3部分137cは、第2部分137bの幅方向における端部から第2部分137bの板厚方向に屈曲している。ケーブルガイド137の第1部分137aの基端部は、ポール支持軸134に回転可能に支持されている。つまり、ケーブルガイド137の回転軸線は、ポール136の回転軸線と一致している。ケーブルガイド137は、ポール支持軸134の軸方向において、メインベース131とポール136との間に位置している。ケーブルガイド137は、ポール136に対して独立に回転可能となっている。
【0031】
ガイドスプリング143は、コイルスプリングである。ガイドスプリング143の第1端はメインベース131の第2支持部131bに係止し、ガイドスプリング143の第2端はケーブルガイド137の第3部分137cに係止している。ガイドスプリング143は、ケーブルガイド137の第3部分137cがメインベース131の第1支持部131aに接近する方向に、ケーブルガイド137を付勢している。こうして、ガイドスプリング143は、ケーブルガイド137を第2方向R2に回転させるトルクをケーブルガイド137に発生させている。以降の説明では、ガイドスプリング143の付勢力によってケーブルガイド137に発生するトルクを「ガイドスプリング143の付勢力に応じたトルク」という。
【0032】
以上説明したロック機構130において、ラッチ135は、メインベース131に固定されるラッチ支持軸133に支持されている。また、ポール136とケーブルガイド137とは、メインベース131に固定されるポール支持軸134に支持されている。さらに、ラッチスプリング141、ポールスプリング142及びガイドスプリング143は、メインベース131に支持されている。こうした点で、メインベース131は「ベース」に相当している。また、ポール支持軸134の軸線はケーブルガイド137の回転軸線に相当している。
【0033】
図4及び
図5に示すように、リリースケーブル150は、アウターケーシング151と、2つのアウターエンド152と、インナーワイヤ153と、2つのインナーエンド154と、を有する。
【0034】
アウターケーシング151は筒状をなしている。アウターケーシング151は、金属及び樹脂を含む複数の材質によって構成されている。アウターケーシング151は、所定の曲げ半径で湾曲できるように、適度な弾性を有することが好ましい。2つのアウターエンド152は、アウターケーシング151の長手方向における両端部に固定されている。インナーワイヤ153は、アウターケーシング151の内部で進退可能にアウターケーシング151に挿通されている。2つのインナーエンド154は、インナーワイヤ153の長手方向における両端部に固定されている。本実施形態において、インナーエンド154は球状をなしているが、他の実施形態において、インナーエンド154は板状をなしていてもよいし、円柱状をなしていてもよい。
【0035】
図1に示すように、リリースケーブル150の大部分は、スライドドア30の内部に配策されている。この点で、アウターケーシング151は、1つ以上のケーブルクリップによって、ドア本体31に固定されることが好ましい。また、
図1に示すように、リリースケーブル150の第1端はリモコン80に接続されている。詳しくは、リリースケーブル150の第1端側において、アウターエンド152及びインナーエンド154は、リモコン80に接続されている。一方、リリースケーブル150の第2端側において、アウターエンド152は、ケーブルガイド137の第2部分137bに保持されている。ケーブルガイド137に対するアウターエンド152の保持態様は適宜に選択できる。例えば、ケーブルガイド137に設けた溝にアウターエンド152を挿入してもよいし、締結部材を用いてケーブルガイド137にアウターエンド152を固定してもよい。また、リリースケーブル150の第2端側において、インナーエンド154は、ポール136に係合している。ここで、ポール136におけるインナーエンド154と係合する部分とポール136におけるラッチ135と係合する部分とは、ポール136の回転軸線を挟んだ両側にそれぞれ位置している。
【0036】
本実施形態において、リリースケーブル150を保持する部分には、リリースケーブル150の配策に伴う変位量とリリースケーブル150の弾性率とに応じた力が作用している。具体的には、リリースケーブル150は、第2端側のアウターエンド152を介して、ケーブルガイド137を付勢している。その結果、リリースケーブル150は、ケーブルガイド137を第1方向R1に回転させるトルクをケーブルガイド137に発生させている。以降の説明では、リリースケーブル150の付勢力によってケーブルガイド137に発生するトルクを「リリースケーブル150の付勢力に応じたトルク」という。リリースケーブル150の付勢力に応じたトルクの作用する方向は、ガイドスプリング143の付勢力に応じたトルクの作用する方向の逆方向である。なお、リリースケーブル150の付勢力の向き及び大きさは、リリースケーブル150の配策態様及びリリースケーブル150の弾性率などによって変化し得る。
【0037】
図3に示すように、ロック機構130は、2つのボルト170と2つのナット144とを介して、可動アーム121に固定されている。このとき、可動アーム121の主壁121aにロック機構130のメインベース131が重ねられた状態で、主壁121aにメインベース131が固定される。ロック機構130が可動アーム121に固定される状態において、ロック機構130のラッチ135の少なくとも一部は可動アーム121から突出している。
【0038】
図1及び
図2に示すように、ロアヒンジユニット61は、スライドドア30のインナパネル32に固定されている。詳しくは、ロアヒンジユニット61のドアブラケット110の側壁111が、スライドドア30のインナパネル32の前端付近であって下端付近の位置に固定されている。このとき、側壁111の固定面111aは、インナパネル32に面接触している。ドアブラケット110の固定には、例えば、締結部材を用いればよい。ドアブラケット110がスライドドア30に固定される状態では、底壁112がスライドドア30から幅方向における内方に向かって延びている。また、ヒンジ軸線Axhは、上下方向に延びている。
【0039】
ロアヒンジユニット61のガイド機構120の2つのガイドローラ122,123は、ロアレール51に係合している。このとき、ガイド機構120の2つのガイドローラ122,123及び支持ローラ124は、ロアレール51の長手方向に並んでいる。2つのガイドローラ122,123がロアレール51に対して転動することにより、ロアヒンジユニット61は、ロアレール51に沿って移動可能となっている。以降の説明では、支持ローラ124の回転軸線と前後方向に延びる直線との間をなす角度を「可動アーム121の角度θa」という。本実施形態において、可動アーム121の角度θaが可動アーム121の姿勢に相当する。
【0040】
なお、ロアヒンジユニット61のガイド機構120の支持ローラ124は、ドア支持装置40を車両10に搭載したときに車体20に設けられる支持面上を転動する。ここで、支持面は、上下方向と直交する平面であることが好ましい。また、支持面は、車体20ではなく、ロアレール51に設けることも可能である。
【0041】
<センターレール52及びアッパレール53>
図1に示すように、センターレール52は、車体20におけるドア開口部21の後端よりも後方に固定されている。センターレール52は、アッパレール53よりも下方であって、ロアレール51よりも上方に位置している。アッパレール53は、車体20におけるドア開口部21の上端よりも上方に固定されている。センターレール52及びアッパレール53は、前後方向を長手方向としている。センターレール52及びアッパレール53は、上方からの平面視において、前方に進むにつれて幅方向における内方に向かうように延びていることが好ましい。
【0042】
<センターヒンジユニット62及びアッパヒンジユニット63>
図1に示すように、センターヒンジユニット62は、スライドドア30の後端付近かつ上下方向における中央付近に固定されている。アッパヒンジユニット63は、スライドドア30の前端付近かつ上端付近に固定されている。センターヒンジユニット62及びアッパヒンジユニット63は、ロアヒンジユニット61におけるドアブラケット110とガイド機構120とに相当する構成を有することが好ましい。そして、センターヒンジユニット62は、センターレール52に対して移動可能に係合している。同様に、アッパヒンジユニット63は、アッパレール53に対して移動可能に係合している。
【0043】
<ストライカ70>
図2に示すように、ストライカ70は、ストライカシャフト71と、クッション72と、ストライカホルダ73と、を有する。
【0044】
ストライカシャフト71は、金属などの剛性の高い材料によって構成されている。ストライカシャフト71は、円柱状をなしている。ストライカシャフト71は、ロック機構130のラッチ135が係止する対象である。クッション72は、粘弾性を有するゴム又は樹脂などのエラストマーによって構成されている。ストライカホルダ73は、ストライカシャフト71と同様に、金属などの剛性の高い材料によって構成されている。ストライカホルダ73は、ストライカシャフト71とクッション72とを保持している。ストライカホルダ73は、ロアレール51の後端よりも後方に固定されている。このとき、ストライカシャフト71の軸方向は、上下方向となっている。
【0045】
<リモコン80>
リモコン80は、ドアハンドル35の操作力をロック機構130に伝達するための構成である。リモコン80は、スライドドア30の内部において、ドアハンドル35に近い位置に配置されることが好ましい。リモコン80は、ドアハンドル35が操作されるときに、リリースケーブル150の第1端側において、アウターケーシング151に対して、インナーワイヤ153を牽引できるように構成されている。そして、リモコン80がインナーワイヤ153を牽引する場合には、リリースケーブル150の第2端側において、ポール136が退避位置に向かって回転する。
【0046】
<ドア駆動装置90>
ドア駆動装置90は、スライドドア30を駆動する。例えば、ドア駆動装置90は、電気モータの動力をケーブル及びワイヤなどの動力伝達部材を介してスライドドア30に伝達することにより、スライドドア30を駆動する。ドア駆動装置90は、スライドドア30が全閉位置に位置する状況下において、ユーザがドアハンドル35を操作する場合に、スライドドア30を全開位置に向けて開作動させる。また、ドア駆動装置90は、スライドドア30が全開位置に位置する状況下において、ユーザがドアハンドル35を操作する場合に、スライドドア30を全閉位置に向けて閉作動させる。
【0047】
<その他の構成>
ドア支持装置40のロック機構130は、スライドドア30を全開位置で車体20に拘束する全開ロックである。説明を省略したが、ドア支持装置40は、スライドドア30を全閉位置で車体20に拘束する全閉ロックを備えることが好ましい。
【0048】
<本実施形態の作用>
図6~
図9を参照して、スライドドア30を全開位置から閉作動させるときの作用について説明する。
【0049】
スライドドア30が全開位置に位置する場合には、ロアヒンジユニット61はロアレール51の後端付近に位置し、センターヒンジユニット62はセンターレール52の後端付近に位置し、アッパヒンジユニット63はアッパレール53の後端付近に位置している。
【0050】
図6に示すように、スライドドア30が全開位置に位置する場合には、ロアヒンジユニット61において、ロック機構130のラッチ135がストライカ70に係止するフルラッチ位置に位置している。詳しくは、ストライカ70のストライカシャフト71がラッチ135の係合溝135aに収まっている。また、ポール136がラッチ135のアンラッチ位置に向かう回転を規制する規制位置に位置している。こうして、スライドドア30は、閉方向に移動できないように車体20に拘束されている。その一方で、スライドドア30が全開位置から開方向に移動しようとする場合には、ロアヒンジユニット61のラッチ135がストライカ70のクッション72に接触する。この点で、スライドドア30は、全開位置から開方向にも移動できないように車体20に拘束されている。
【0051】
スライドドア30が全開位置に位置する場合には、ロアヒンジユニット61のヒンジ軸線Axhは、2つのガイドローラ122,123の回転軸線よりも後方に位置するとともに、2つのガイドローラ122,123の回転軸線よりも幅方向における外方に位置している。また、ロアヒンジユニット61のドアブラケット110は、その移動範囲において、最も後方かつ最も外方に位置している。また、可動アーム121の角度θaは、直角に近い角度となっている。さらに、ドアブラケット110の固定面111aとケーブルガイド137の回転軸線との幅方向における距離Lnは最も長くなっている。
【0052】
スライドドア30が全開位置に位置する場合には、ケーブルガイド137に作用するトルクの大小関係が次の関係になっている。すなわち、ガイドスプリング143の付勢力に応じたトルクがリリースケーブル150の付勢力に応じたトルクよりも大きくなっている。このため、ケーブルガイド137は、回転可能な範囲内で最も第2方向R2に回転している。さらに、ケーブルガイド137は、ナット144に接触することで位置決めされている。こうした点で、ナット144は、ケーブルガイド137を位置決めする「位置決め部」に相当している。また、リリースケーブル150のうち、スライドドア30から露出する部分は、ケーブルガイド137とスライドドア30のケーブル挿通孔32aとの間で略直線状に延びている。
【0053】
スライドドア30を全開位置から閉作動させる場合には、車両10のユーザによって、ドアハンドル35が操作される。すると、ドアハンドル35に対する操作力に基づき、リモコン80がリリースケーブル150のインナーワイヤ153を牽引する。その結果、ロック機構130において、リリースケーブル150のインナーワイヤ153がポール136を牽引することにより、ポール136が係止位置から退避位置に向かって回転する。ここで、リリースケーブル150の第2端側のアウターエンド152は、ナット144によって位置決めされるケーブルガイド137に保持されている。このため、ポール136を退避位置まで回転させるのに必要なドアハンドル35の操作力及び操作量にばらつきが生じにくくなっている。ポール136が退避位置まで回転すると、ラッチ135は、ラッチスプリング141の付勢力に基づき、フルラッチ位置からアンラッチ位置に向かって回転する。その結果、ラッチ135がストライカ70に係止しなくなる。つまり、全開位置に位置するスライドドア30の車体20に対する拘束が解除される。
【0054】
続いて、ドア駆動装置90は、スライドドア30に動力を伝達することにより、スライドドア30を閉作動させる。スライドドア30を閉作動させる場合には、ロアヒンジユニット61がロアレール51に沿って前方に移動し、センターヒンジユニット62がセンターレール52に沿って前方に移動し、アッパヒンジユニット63がアッパレール53に沿って前方に移動する。
【0055】
図7に示すように、スライドドア30を閉作動させる場合において、ロアヒンジユニット61は、ロアレール51の第1湾曲部51aに沿って移動した後に第2湾曲部51bに沿って移動する。2つのガイドローラ122,123がロアレール51の第1湾曲部51aに沿って移動する場合、2つのガイドローラ122,123の回転軸線の幅方向における位置関係が僅かに変化する。詳しくは、前側のガイドローラ122の回転軸線が、後側のガイドローラ123の回転軸線に対して、幅方向における内方に僅かに移動した後に外方に僅かに移動する。その結果、可動アーム121の角度θaは、僅かに大きくなった後に僅かに小さくなる。一方、2つのガイドローラ122,123は、ロアレール51の第1湾曲部51aの形成方向に沿って、前方に進むにつれて幅方向における内方に向かおうとする。その結果、ヒンジ軸線Axhは、前方に進むにつれて幅方向における内方に移動する。
【0056】
なお、2つのガイドローラ122,123がロアレール51の第1湾曲部51aの前端部に沿って移動する場合には、ロアレール51の第1湾曲部51aの他の部分に沿って移動する場合よりも、ロアヒンジユニット61の前方への移動量に対する可動アーム121の角度θaの変化量が大きくなる。この点で、2つのガイドローラ122,123がロアレール51の第1湾曲部51aの前端部に沿って移動する場合には、ロアレール51の第1湾曲部51aの他の部分に沿って移動する場合よりも、ヒンジ軸線Axhの前方への移動量に対する幅方向における内方への移動量が大きくなる。
【0057】
続いて、2つのガイドローラ122,123がロアレール51の第2湾曲部51bに沿って移動する場合、2つのガイドローラ122,123の幅方向における位置関係が大きく変化する。詳しくは、前側のガイドローラ122の回転軸線が、後側のガイドローラ123の回転軸線に対して幅方向における外方に移動する。その結果、可動アーム121の角度θaが急激に小さくなる。一方、2つのガイドローラ122,123は、前方に進むにつれて幅方向における外方に移動する。その結果、ヒンジ軸線Axhは、前方に進むにつれて幅方向における内方に移動する。
【0058】
図2及び
図8に示すように、前側のガイドローラ122がロアレール51の第2湾曲部51bの前端に到達すると、スライドドア30が全閉位置に配置される。スライドドア30が全閉位置に位置する場合には、ロアヒンジユニット61のヒンジ軸線Axhは、2つのガイドローラ122,123の回転軸線よりも後方に位置するとともに、前側のガイドローラ122の回転軸線よりも幅方向における内方に位置している。また、ロアヒンジユニット61のドアブラケット110は、その移動範囲において、最も前方かつ幅方向における最も内方に位置している。また、可動アーム121の角度θaは、取りうる角度範囲のうち最も小さくなっている。さらに、ドアブラケット110の固定面111aとケーブルガイド137の回転軸線との幅方向における距離Lnは最も短くなっている。つまり、スライドドア30が全閉位置に配置されるときの距離Lnは、スライドドア30が全開位置に配置されるときの距離Lnよりも短くなっている。本実施形態では、スライドドア30が全開位置から全閉位置に近付くにつれて、距離Lnが次第に短くなる。
【0059】
図8に示すように、本実施形態において、ロック機構130は、スライドドア30の開閉作動時に姿勢の変化しないドアブラケット110ではなく、スライドドア30の開閉作動時に姿勢の変化する可動アーム121に設けられている。そして、スライドドア30が全閉位置に位置する場合には、スライドドア30が全開位置に位置する場合よりも、可動アーム121の角度θaが小さくなっている。言い換えれば、スライドドア30が全閉位置に位置する場合には、スライドドア30が全開位置に位置する場合よりも、可動アーム121の幅方向の寸法が短くなっている。つまり、スライドドア30が全閉位置に位置する場合において、可動アーム121の幅方向における内方への突出量が少なくなっている。こうした点で、スライドドア30が全閉位置に位置する場合において、スライドドア30を基準とするロアヒンジユニット61の幅方向における内方への突出量が小さくなっている。
【0060】
スライドドア30が閉作動する場合には、可動アーム121の角度θaが小さくなるにつれて、ケーブルガイド137に対するリリースケーブル150の付勢力が大きくなる。これは、可動アーム121の角度θaが小さくなるほど、リリースケーブル150に作用する圧縮荷重が大きくなるためである。詳しくは、アウターケーシング151のうち、ケーブルガイド137に保持される部分に対して、スライドドア30の内部でケーブルクリップによって固定される部分が近付くことにより、リリースケーブル150に作用する圧縮荷重が大きくなるためである。したがって、スライドドア30が全閉位置に位置する場合には、ケーブルガイド137に対するリリースケーブル150の付勢力が最大となるとともに、ケーブルガイド137の付勢力に応じたトルクが最大となる。その結果、
図8に示すようにスライドドア30が全閉位置に位置する場合には、
図6に示すようにスライドドア30が全開位置に示す場合よりも、ケーブルガイド137が第1方向R1に回転しているとともに、ガイドスプリング143が伸長している。よって、ケーブルガイド137のアウターケーシング151におけるスライドドア30から露出する部分は、小さな曲率半径で湾曲する部分を有しない。このため、
図9に示すように、ケーブルガイド137を
図6に示す状態から回転不能とする他の実施例と比較した場合よりも、アウターケーシング151の湾曲する部分の曲率半径が大きくなる。
【0061】
なお、
図8に示す状態において、ケーブルガイド137は、ナット144などに接していない。このため、ケーブルガイド137は、リリースケーブル150の付勢力に応じたトルクとガイドスプリング143の付勢力に応じたトルクとが釣り合うことで、
図8に示す姿勢を取っている。この点で、例えば、ガイドスプリング143のばね定数が小さくなったり、リリースケーブル150のアウターケーシング151の弾性率が高くなったりする場合には、ケーブルガイド137は
図8に示す位置よりも第1方向R1に回転した姿勢を取る。一方、ガイドスプリング143のばね定数が大きくなったり、リリースケーブル150のアウターケーシング151の弾性率が低くなったりする場合には、ケーブルガイド137は
図8に示す位置よりも第1方向R1に回転した姿勢を取る。
【0062】
次に、スライドドア30を全閉位置から開作動させるときの作用について簡単に説明する。
スライドドア30を全閉位置から開作動させる場合には、車両10のユーザによって、ドアハンドル35が操作される。すると、不図示の全閉ロックによるスライドドア30の車体20に対する拘束が解除される。続いて、ドア駆動装置90は、スライドドア30に動力を伝達することにより、スライドドア30を開作動させる。スライドドア30を開作動させる場合には、ロアヒンジユニット61がロアレール51に沿って後方に移動し、センターヒンジユニット62がセンターレール52に沿って後方に移動し、アッパヒンジユニット63がアッパレール53に沿って後方に移動する。
【0063】
ロアヒンジユニット61における可動アーム121の姿勢の変化、ヒンジ軸線Axhの位置の変化及びドアブラケット110の位置の変化は、スライドドア30の閉作動時の逆となっている。ロアヒンジユニット61の後側のガイドローラ123がロアレール51の後端付近まで移動すると、ロック機構130のラッチ135がストライカ70のストライカ70に接触する。その後も、ロアヒンジユニット61の移動が継続されると、ストライカ70がラッチ135の係合溝135aの底に向かって相対的に移動する。その結果、ラッチ135がフルラッチ位置に向かって回転する。ラッチ135が回転する場合には、ポール136がラッチ135と摺動する。ラッチ135がフルラッチ位置まで回転すると、ポール136が規制位置に回転する。つまり、スライドドア30が車体20に拘束されるとともに、スライドドア30が全開位置に配置される。こうして、スライドドア30の開作動が完了する。
【0064】
<本実施形態の効果>
(1)ロック機構130を可動アーム121に固定する場合には、スライドドア30の開閉作動に伴い、ロック機構130の姿勢が変化する。その結果、ロック機構130のリリースケーブル150が湾曲することで、リリースケーブル150に負荷が掛かるおそれがある。この点、ドア支持装置40は、リリースケーブル150の第2端側のアウターエンド152を保持した状態で、リリースケーブル150の湾曲を緩和する方向に回転可能なケーブルガイド137を備える。このため、ドア支持装置40は、スライドドア30の開閉作動に伴って、リリースケーブル150に負荷が掛かることを抑制できる。
【0065】
(2)スライドドア30の閉作動に伴って可動アーム121が回転すると、ドアブラケット110と可動アーム121の回転軸線との距離Lnが短くなる。この点、ドア支持装置40は、ケーブルガイド137が回転可能であるため、ドアブラケット110と可動アーム121の回転軸線との距離Lnが短くなる場合であっても、リリースケーブル150に作用する負荷を低減できる。言い換えれば、リリースケーブル150に作用する曲げ荷重が低減される。
【0066】
(3)ドア支持装置40は、ケーブルガイド137を第2方向R2に付勢するガイドスプリング143を有する。このため、ドア支持装置40は、スライドドア30の開閉作動時にリリースケーブル150の姿勢が不安定になることを抑制できる。言い換えれば、ドア支持装置40は、スライドドア30の位置に対して、リリースケーブル150の姿勢が一義的に定まりやすくなる。
【0067】
(4)スライドドア30を全開位置から閉作動させる場合には、ポール136を係止位置から退避位置に回転させることで、ラッチ135をフルラッチ位置からアンラッチ位置に回転させる必要がある。つまり、ポール136が退避位置まで回転するのに必要な動力を、リリースケーブル150を介してポール136に伝達する必要がある。この点、ドア支持装置40において、スライドドア30が全開位置に配置される場合には、位置決め部としてのナット144によってケーブルガイド137が位置決めされる。よって、ドア支持装置40は、ポール136が退避位置まで回転するのに必要な動力を、より確実にポール136に伝達できる。
【0068】
(5)ロアヒンジユニット61において、ケーブルガイド137は、ポール支持軸134に回転可能に支持されている。このため、ドア支持装置40は、ケーブルガイド137を回転可能に支持するための支持軸を新たに備える必要がない。よって、ドア支持装置40は、ロック機構130の構成を簡素化できる。
【0069】
(6)ロック機構130のメインベース131を除く構成部品は、メインベース131に組み付けられている。そして、ロック機構130のメインベース131が可動アーム121に固定されることにより、ロック機構130が可動アーム121に固定される。したがって、可動アーム121にロック機構130を固定する前段階において、ロック機構130のメインベース131に、ロック機構130のメインベース131を除く構成を組み付けることができる。つまり、ロック機構130をユニット化できる。このため、ドア支持装置40の製造時又は車両10の組立時の作業性が高まる。
【0070】
(7)ドア支持装置40において、ロック機構130が固定される可動アーム121は、スライドドア30の開閉作動に伴い姿勢が変化する。よって、可動アーム121が大型化しても、スライドドア30が全閉位置に配置される場合に、可動アーム121の幅方向における内方への突出量が大きくなりにくい。言い換えれば、可動アーム121が大型化しても、スライドドア30が全閉位置に配置される場合に、ロアヒンジユニット61のスライドドア30から幅方向における内方への突出量が大きくなりにくい。よって、ドア支持装置40は、ドア支持装置40と幅方向に隣り合う空間が狭くなることを抑制できる。
【0071】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0072】
・車両10は、ドア駆動装置90を備えなくてもよい。つまり、スライドドア30は、パワースライドドアでなくてもよい。
・車両10において、ロアレール51とアッパレール53とを置き換えるとともに、ロアヒンジユニット61とアッパヒンジユニット63とを置き換えてもよい。また、アッパレール53に変えてロアレール51を採用するとともに、アッパヒンジユニット63に変えてロアヒンジユニット61を採用してもよい。この変更例は、車室の上部の空間が幅方向に狭くなることを抑制できる。
【0073】
・ロアヒンジユニット61において、ロック機構130の構成部品は、可動アーム121に直接組み付けられていてもよい。この場合、ロック機構130は、メインベース131を備えなくてもよい。
【0074】
・ロアヒンジユニット61において、ケーブルガイド137は、ラッチ支持軸133に回転可能に支持されていてもよい。ロアヒンジユニット61は、ケーブルガイド137を回転可能に支持するガイド支持軸をさらに備えてもよい。
【0075】
・ロアヒンジユニット61において、ケーブルガイド137は、メインベース131に対して、直線状に変位できるように構成されていてもよい。
・ロアヒンジユニット61は、「位置決め部」に相当する構成を備えなくてもよい。また、位置決め部は、メインベース131の切り起こしなどによって構成してもよい。
【0076】
・ロアヒンジユニット61は、ガイドスプリング143を備えなくてもよい。この変更例は、スライドドア30が全閉位置に配置される場合において、リリースケーブル150に半径の小さな湾曲が生じることを抑制できる。
【0077】
・ロアヒンジユニット61において、ラッチスプリング141、ポールスプリング142及びガイドスプリング143は、他の種類のスプリングであってもよい。一例として、ガイドスプリング143は、トーションスプリングであってもよい。
【0078】
・ロアヒンジユニット61において、リリースケーブル150は、リモコン80とポール136との間で動力を伝達可能なケーブルであればよい。
・ロアレール51の構成及びロアヒンジユニット61の構成は、スライドドア30の開閉作動時に可動アーム121の姿勢を変更可能なものであればよい。例えば、ドア支持装置40において、ロアレール51は、S字状をなしていなくてもよい。また、ロアレール51は、2本以上のレールを含んで構成されていてもよい。ただし、可動アーム121は、スライドドア30の開閉作動時に姿勢が変化するように構成されていることが前提である。
【0079】
<本実施形態のまとめ>
ドア支持装置は、ドア開口部を側面に有する車体に、前記ドア開口部を開閉するスライドドアを支持させるドア支持装置であって、前記車体の前後方向が長手方向となるように前記車体に固定されるガイドレールと、前記ガイドレールに対して転動することにより前記ガイドレールに沿って移動するガイドローラと、前記スライドドアに固定されるドアブラケットと、前記ガイドローラを回転可能に支持するとともに前記ドアブラケットに対して回転可能に連結される可動アームと、を有するヒンジユニットと、前記可動アームに固定され、前記スライドドアが前記ドア開口部を全開する全開位置に配置されるときに、前記スライドドアを前記車体のストライカに拘束するロック機構と、を備え、前記ロック機構は、牽引されることにより、前記ロック機構による前記スライドドアの前記ストライカに対する拘束を解除するリリースケーブルと、前記リリースケーブルを保持するケーブルガイドと、を有し、前記ケーブルガイドは、前記可動アームに対して回転可能である。
【0080】
ロック機構を可動アームに固定する場合には、スライドドアの閉作動に伴い、ロック機構の姿勢が変化する。つまり、ロック機構のリリースケーブルが湾曲することで、リリースケーブルに負荷が掛かるおそれがある。この点、上記構成のドア支持装置は、リリースケーブルを保持するケーブルガイドであって、スライドドアの開閉作動時に可動アームに対して回転可能なケーブルガイドを備える。このため、ドア支持装置は、スライドドアの閉作動に伴って、リリースケーブルに負荷が掛かることを抑制できる。
【0081】
上記ドア支持装置において、前記ドアブラケットと前記可動アームの回転軸線との前記車体の幅方向における距離は、前記スライドドアが前記ドア開口部を全閉する全閉位置に配置される場合の方が、前記スライドドアが前記全開位置に配置される場合よりも短くなることが好ましい。
【0082】
スライドドアの閉作動に伴って可動アームが回転すると、ドアブラケットと可動アームの回転軸線との幅方向における距離が短くなる。この点、上記構成のドア支持装置は、ケーブルガイドが回転可能であるため、ドアブラケットと可動アームの回転軸線との幅方向における距離が短くなる場合であっても、リリースケーブルに作用する負荷を低減できる。
【0083】
上記ドア支持装置において、前記スライドドアの閉作動に伴う前記ケーブルガイドの回転方向を第1方向とし、前記第1方向の逆方向を第2方向としたとき、前記ロック機構は、前記第2方向に、前記ケーブルガイドを付勢するガイドスプリングを有することが好ましい。
【0084】
ロック機構がガイドスプリングを備えない場合、スライドドアの開閉作動時にリリースケーブルの姿勢が様々な姿勢を取りやすい。言い換えれば、スライドドアの位置とリリースケーブルの姿勢との関係が一義に定まりにくい。この点、上記構成のドア支持装置は、ケーブルガイドを第2方向に付勢するガイドスプリングを有する。このため、ドア支持装置は、スライドドアの開閉作動時にリリースケーブルの姿勢が不安定になることを抑制できる。
【0085】
上記ドア支持装置において、前記ロック機構は、前記ストライカに係止可能なフルラッチ位置と前記ストライカに係止不能なアンラッチ位置との間を回転するように構成されるラッチと、前記フルラッチ位置に位置する前記ラッチに係止することにより前記ラッチの前記アンラッチ位置に向かう回転を規制する規制位置と、前記ラッチから退避することにより前記ラッチの前記アンラッチ位置に向かう回転を許容する退避位置と、の間を回転するように構成されるポールと、前記スライドドアが前記全開位置に配置される場合に、前記ケーブルガイドを位置決めする位置決め部と、を有することが好ましい。
【0086】
スライドドアを全開位置から閉作動させる場合には、ポールを係止位置から解除位置に回転させることで、ラッチをフルラッチ位置からアンラッチ位置に回転させる必要がある。つまり、ポールが解除位置まで回転するのに必要な動力を、リリースケーブルを介してポールに伝達する必要がある。この点、上記構成のドア支持装置において、スライドドアが全開位置に配置される場合には、位置決め部によってケーブルガイドが位置決めされる。よって、ドア支持装置は、ポールが解除位置まで回転するのに必要な動力を、より確実にポールに伝達できる。
【0087】
上記ドア支持装置において、前記ロック機構は、前記ストライカに係止可能なフルラッチ位置と前記ストライカに係止不能なアンラッチ位置との間を回転するように構成されるラッチと、前記フルラッチ位置に位置する前記ラッチに係止することにより前記ラッチの前記アンラッチ位置に向かう回転を規制する規制位置と、前記ラッチから退避することにより前記ラッチの前記アンラッチ位置に向かう回転を許容する退避位置と、の間を回転するように構成されるポールと、前記ラッチを回転可能に支持するラッチ支持軸と、前記ポールを回転可能に支持するポール支持軸と、を有し、前記リリースケーブルは、前記ポールに接続され、牽引されることにより前記ポールを前記退避位置に向かって回転させるものであり、前記ケーブルガイドは、前記ラッチ支持軸又は前記ポール支持軸に回転可能に支持されることが好ましい。
【0088】
ドア支持装置は、ケーブルガイドを回転可能に支持するための支持軸を新たに備える必要がない。よって、ドア支持装置は、ロック機構の構成を簡素化できる。
上記ドア支持装置において、前記ロック機構は、前記ラッチ支持軸及び前記ポール支持軸が固定されるベースを有し、前記ベースが前記可動アームに固定されることにより、前記ロック機構が前記可動アームに固定されることが好ましい。
【0089】
可動アームにロック機構を固定する前段階において、ロック機構のベースに、ロック機構のベースを除く構成を組み付けることができる。つまり、ロック機構がユニット化される。このため、ドア支持装置の製造時及び車両の組立時の作業性が高まる。
【符号の説明】
【0090】
10…車両、20…車体、21…ドア開口部、30…スライドドア、40…ドア支持装置、51…ロアレール(ガイドレール)、61…ロアヒンジユニット(ヒンジユニット)、70…ストライカ、110…ドアブラケット、120…ガイド機構、121…可動アーム、122,123…ガイドローラ、130…ロック機構、131…メインベース(ベース)、133…ラッチ支持軸、134…ポール支持軸、135…ラッチ、136…ポール、137…ケーブルガイド、141…ラッチスプリング、142…ポールスプリング、143…ガイドスプリング、144…ナット(位置決め部)、150…リリースケーブル、160…連結軸、Axh…ヒンジ軸線、Ln…距離、R1…第1方向、R2…第2方向