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特開2025-154667電子部品、電子部品の製造方法および電子部品の製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025154667
(43)【公開日】2025-10-10
(54)【発明の名称】電子部品、電子部品の製造方法および電子部品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/32 20060101AFI20251002BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20251002BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20251002BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20251002BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20251002BHJP
【FI】
H01F27/32 170
H01F27/32 103
H01F27/02 170
H01F41/12 C
H01F41/04 B
H01L23/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057788
(22)【出願日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】塚本 直人
(72)【発明者】
【氏名】黒川 智
(72)【発明者】
【氏名】門井 亨
(72)【発明者】
【氏名】吉野 世菜
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋史
(72)【発明者】
【氏名】乾 京介
【テーマコード(参考)】
4M109
5E044
5E059
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA03
4M109CA22
4M109DA03
4M109EA02
5E044AA02
5E044AB01
5E059LL16
5E062FF02
5E070AB02
5E070DA13
(57)【要約】
【課題】取り扱いが容易な電子部品を提供する。
【解決手段】外装体30と、外装体30の内部に配置された素子本体10とを有する電子部品1であって、外装体30は、熱硬化性樹脂を含み、対向する第1主面1aと第2主面30b、および前記第1主面1aと前記第2主面30bを接続する1つ以上の側面30c~30fを有し、前記側面30c~30fの少なくとも1つは、第1領域30c1と、第1領域より表面粗さが大きい第2領域30c2とを含み、前記外装体30の前記第1領域30c1を形成する部分と、前記外装体30の前記第2領域30c2を形成する部分とは、同じ種類の熱硬化性樹脂を含む電子部品。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体と、前記外装体の内部に配置された素子本体とを有する電子部品であって、
前記外装体は、熱硬化性樹脂を含み、対向する第1主面と第2主面、および前記第1主面と前記第2主面を接続する1つ以上の側面を有し、
前記側面の少なくとも1つは、第1領域と、前記第1領域より表面粗さが大きい第2領域とを含み、
前記外装体の前記第1領域を形成する部分と、前記外装体の前記第2領域を形成する部分とは、同じ種類の熱硬化性樹脂を含む電子部品。
【請求項2】
前記第1主面は実装面であり、前記第2主面は前記第1主面より面積が小さくなるように前記側面が傾斜している請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1主面は実装面であり、前記側面の少なくとも1つにおいて、前記第1主面に近い側の所定の範囲に前記第2領域が配置され、前記第2領域よりも前記第1主面から遠い側に前記第1領域が配置されている請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記側面の全周に沿って連続して、前記第1領域と前記第2領域を有する請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
端子電極をさらに有し、前記端子電極の一部が、前記外装体の前記第2領域に装着されている請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1主面に装着される第1主面装着部と、前記側面の少なくとも1つに装着される側面装着部とを有する端子電極をさらに有し、
前記側面装着部は、前記外装体の前記第2領域に装着されている請求項2に記載の電子部品。
【請求項7】
前記素子本体は、コイルである請求項1~6のいずれかに記載の電子部品。
【請求項8】
前記素子本体は、半導体集積回路である請求項1~6のいずれかに記載の電子部品。
【請求項9】
前記素子本体は、センサ素子である請求項1~6のいずれかに記載の電子部品。
【請求項10】
前記素子本体は、ポリマアルミ電解コンデンサ素子である請求項1~6のいずれかに記載の電子部品。
【請求項11】
外装体の内部に素子本体が配置された電子部品の製造方法であって、
キャビティに前記素子本体を配置する工程と、
前記素子本体が配置された前記キャビティに前記外装体の材料となる外装材を充填し前記外装体を成形する工程と、を有し、
少なくとも1つの枠面が、枠面第1領域と、前記枠面第1領域より表面粗さが大きい枠面第2領域とを含む枠部材を用いて、前記キャビティの少なくとも一部を形成する電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記枠部材の前記少なくとも1つの枠面は、前記電子部品の少なくとも1つの側面を形成する面であり、
前記枠面第2領域は、前記電子部品の実装面に近い側となる所定の範囲に配置され、前記枠面第1領域は、
前記枠面第2領域よりも前記電子部品の前記実装面から遠い側となる所定の範囲に配置されている請求項11に記載の電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記枠部材の前記少なくとも1つの枠面は、板状部材に打ち抜き加工して形成されている請求項11または12に記載の電子部品の製造方法。
【請求項14】
外装体の内部に素子本体が配置された電子部品の製造装置であって、
前記素子本体が配置されたキャビティに前記外装体の材料となる外装材を充填し前記外装体を成形するための枠部材を有し、
前記枠部材は、前記外装材が接する枠面を有し、少なくとも1つの前記枠面が、枠面第1領域と、前記枠面第1領域より表面粗さが大きい枠面第2領域とを含み、
前記キャビティの内面に前記枠面第1領域と前記枠面第2領域とが位置するように、前記枠部材が前記キャビティの少なくとも一部を形成している電子部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品、電子部品の製造方法および電子部品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外装体の内部にコイル等の素子本体を配置した電子部品が知られている。例えば特許文献1には、インダクタ等として用いられるコイル部品として、巻芯部とともにコイルを外装体で封止したコイル部品が記載されている。
【0003】
素子本体を樹脂等の外装材で封止した電子部品は、小型化(微細化)や表面実装に適したチップ部品として広く使用されており、単体で基板等に面実装される場合の他、金属端子が取り付けられて実装される場合がある。また、基板に実装された状態でさらに外装用樹脂により被覆される場合もある。
【0004】
この種の電子部品は、製造時や、製造後の製品への組立時および実装時、その取り扱いが容易ではない場合がある。たとえば、電子部品の製造時の最終段階に近い、熱硬化樹脂のアフターキュア工程において、電子部品を長時間(数時間)高温状態に曝す場合があるが、このような工程において、狭い間隔で配列した電子部品同士が密着/接着してしまう場合があり、歩留まりの低下につながる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-168610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、製造時の歩留まりを向上させることができ、また、使用時の取り扱いが容易な電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る電子部品は、
外装体と、前記外装体の内部に配置された素子本体とを有する電子部品であって、
前記外装体は、熱硬化性樹脂を含み、対向する第1主面と第2主面、および前記第1主面と前記第2主面を接続する1つ以上の側面を有し、
前記側面の少なくとも1つは、第1領域と、前記第1領域より表面粗さが大きい第2領域とを含み、
前記外装体の前記第1領域を形成する部分と、前記外装体の前記第2領域を形成する部分とは、同じ種類の熱硬化性樹脂を含む。
【0008】
このような電子部品においては、外装体の少なくとも1つの側面が表面の粗さが大きい第2領域を有していることにより、単に、側面同士が接触したような場合には接合性は低い。したがって、このような電子部品が狭い間隔で配列された場合にも、相互に不適当に接触し接合されてしまう(くっついてしまう)可能性を低減でき、電子部品の製造歩留まりを向上させることができる。
【0009】
一方で、このような表面粗さが大きい第2領域は、特定の条件の下では、他の部材との密着性を高めることができる。具体的には、接着剤を用いたり、溶融した樹脂を介在させたりする等の方法により、粗面である第2領域の接合性を高めることができる。例えば、外部に金属端子を取り付ける場合には、金属端子の一部を第2領域(表面粗さが大きい)に対向させて接着剤等で接合することにより、接合強度を高めることができ、金属端子の接合強度を高めることができる。その結果、電子部品全体として、強度を向上させ信頼性を高めることができる。
【0010】
また、例えば電子部品を基板等に実装した後、電子部品の周囲を含む一定の範囲、電子部品を含む周辺回路の一部、あるいは電子部品を実装した基板の全体を、さらに外装用樹脂により被覆封止するような場合に、第2領域(表面粗さが大きい)の箇所において外装用樹脂の接合強度を高めることができる。このため、電子部品を含む周辺回路等全体の信頼性を向上させることができる。
【0011】
また、本開示に係る電子部品の製造方法は、
外装体の内部に素子本体が配置された電子部品の製造方法であって、
キャビティに前記素子本体を配置する工程と、
前記素子本体が配置された前記キャビティに前記外装体の材料となる外装材を充填し前記外装体を成形する工程と、を有し、
少なくとも1つの枠面が、枠面第1領域と、前記枠面第1領域より表面粗さが大きい枠面第2領域とを含む枠部材を用いて、前記キャビティの少なくとも一部を形成する。
【0012】
このような電子部品の製造方法によれば、外装体の少なくとも1つの面が表面粗さが大きい第2領域を有している電子部品を容易に製造することができる。
【0013】
また、本開示に係る電子部品の製造装置は、
外装体の内部に素子本体が配置された電子部品の製造装置であって、
前記素子本体が配置されたキャビティに前記外装体の材料となる外装材を充填し前記外装体を成形するための枠部材を有し、
前記枠部材は、前記外装材が接する枠面を有し、少なくとも1つの前記枠面が、枠面第1領域と、前記枠面第1領域より表面粗さが大きい枠面第2領域とを含み、
前記キャビティの内面に前記枠面第1領域と前記枠面第2領域とが位置するように、前記枠部材が前記キャビティの少なくとも一部を形成している。
【0014】
このような電子部品の製造装置を用いて電子部品を製造することで、外装体の少なくとも1つの面が表面粗さが大きい第2領域を有している電子部品を容易に製造することができる。また、この製造装置の枠部材は、例えば金属製の基材を打ち抜き成形することで容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1Aは、本開示の一実施形態のコイル部品の外観斜視図である。
図1B図1Bは、図1Aに示すコイル部品の透視斜視図である。
図1C図1Cは、本開示に係るコイル部品の第1の変形例を示す斜視図である。
図1D図1Dは、本開示に係るコイル部品の第2の変形例を示す斜視図である。
図1E図1Eは、本開示に係るコイル部品の第3の変形例を示す斜視図である。
図1F図1Fは、本開示に係るコイル部品の第4の変形例を示す斜視図である。
図1G図1Gは、本開示に係るコイル部品の第5の変形例を示す斜視図である。
図1H図1Hは、本開示に係るコイル部品の第6の変形例を示す斜視図である。
図2図2は、図1Aに示すコイル部品の断面図であり、図1BのII-II線における断面図である。
図3A図3Aは、図1Aに示すコイル部品の製造に使用する枠部材を示す斜視図である。
図3B図3Bは、図3Aに示す枠部材の1つの開口部を正面斜め上方から見た図である。
図4図4は、図1Aに示すコイル部品の製造方法の一例を示す第1の図である。
図5図5は、図1Aに示すコイル部品の製造方法の一例を示す第2の図である。
図6図6は、図1Aに示すコイル部品の製造方法の一例を示す第3の図である。
図7図7は、図6に示す金型のVII-VII線に沿う断面図である。
図8図8は、図1Aに示すコイル部品の製造方法の一例を示す第4の図である。
図9図9は、図1Aに示すコイル部品の製造方法の一例を示す第5の図である。
図10A図10Aは、図1Aに示すコイル部品の製造方法の一例を示す第6の図である。
図10B図10Bは、図10Aに示す工程に対応する他の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本開示の一実施形態について説明する。なお、図示する内容は、本開示の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比等は実物と異なり得る。また、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本実施形態においては、本開示の一実施形態として、例えばインダクタとして機能し、各種の電気機器の電源等に搭載されるコイル部品1について説明する。図1Aおよび図1Bに示すように、コイル部品1は、素子本体としてのコイル10、コア20、外装体30、および端子電極40a,40bを有する。
【0018】
図1Aに示すように、コイル部品1は、基板等に形成された外部回路に接続される実装面(底面、第1主面)1a、実装面1aに対向する(反対側に位置する)上面(第2主面)30b、実装面(第1主面)1aおよび上面(第2主面)30bを接続する第1側面30c~第4側面30fを有する略直方体形状(6面体形状)の電子部品である。
【0019】
本実施形態のコイル部品は、例えば図1A図1Bおよび図2に示されているように、上面30bが実装面1bよりわずかに小さく(面積が小さく)、側面30c~30fが傾斜している。側面30c~30fの傾斜角度は任意の角度でよいが、本実施形態においては例えば0.5°程度である。したがって、本実施形態のコイル部品1の形状は、実質的に直方体とみなして差支えない。本願の図面は、この点において側面30c~30fの傾斜を模式的に強調して表したものである。
【0020】
本実施形態において、コイル部品1の上面30bおよび側面30c~30fは、外装体30の上面および側面により構成される。すなわち、コイル部品1の上面30bおよび側面30c~30fは、外装体30の上面30bおよび側面30c~30fと同一である。したがって、これらは同一の符号を用いて説明する。一方、コイル部品1の実装面1aは、外装体30の底面30aの他に、コア20の鍔部22の端面22a、および端子電極40a,40bにより形成される。
【0021】
本開示においては、例えば図1Aに示すように、コイル部品1の底面(実装面)1aと上面30bとが対向する方向をZ軸方向、第2側面30dと第4側面30fとが対向する方向をX軸方向、第1側面30cと第3側面30eとが対向する方向をY軸方向として、以下説明を行う。これらX軸、Y軸、およびZ軸は、相互に垂直な関係を有する。
【0022】
コイル部品1のサイズは、特に限定されないが、例えば、コイル部品1のX軸方向の長さは0.6mm~6.5mmであり、コイル部品1のY軸方向の長さは0.6mm~6.5mmであり、コイル部品1のZ軸方向の長さは0.5mm~5.0mmである。
【0023】
以下、コイル部品1の各部の構成について説明する。
【0024】
コイル10は、図1Bに示すように、コイル状に巻回された巻回部11と、巻回部11から引き出された第1および第2の(一対の)引出部12a,12bとを有する。巻回部11は、外装体30の内部に位置しており、コア20の巻芯部21の外周面に設けられている。巻回部11は、例えば、コア20の巻芯部21にワイヤを巻回することにより形成されるが、空芯コイルとして形成した巻回部11をコア20の巻芯部21に嵌め込んで形成してもよい。
【0025】
巻回部11を形成するワイヤとして、例えば銅等で構成される平角線、丸線、撚り線、リッツ線、編組線等の導電性芯線、あるいはこれらの導電性芯線を絶縁性の被膜で被覆した絶縁被覆ワイヤを用いることができる。具体的には、AIW(ポリアミドイミドワイヤ)、UEW(ポリウレタンワイヤ)、USTC等の公知の巻線を用いることができる。ワイヤの線径は、特に限定されないが、丸線の場合、例えば50μm~2mmである。平角線の場合、例えば、ワイヤの厚さは20μm~2mmであり、ワイヤの幅は40μm~2mmである。
【0026】
図2に示すように、巻回部11の巻軸方向の層数は例えば3層であり、径方向の層数は例えば3層である。巻回部11の巻軸方向は、Z軸方向、すなわち、コイル部品1の実装面1aに垂直な方向に対応している。
【0027】
図1Bに示すように、一対の引出部12a,12bは、コイル10を形成するワイヤの一端および他端を構成しており、外装体30の底面30aから外部に引き出されている。引出部12a,12bは、外装体30の内部において、巻回部11の巻軸方向(Z軸方向)の一端側の離間した位置において巻回部11から引き出され、それぞれコア20の鍔部22に沿ってコイル部品1の実装面1a方向に案内され、外装体30の外部に引き出される。外部に引き出された引出部12a,12bは、図2から理解できるように、コア20の鍔部22の端面22aに沿ってY軸方向に延在するように配置される。
【0028】
コア20は、図2に示すように、巻芯部21と鍔部22とを有するT型コアである。コア20の巻芯部21の周囲には、コイル10が配置されている。コア20の鍔部22の端面22aはコイル部品1の実装面1aに露出し、コア20のその他の部分は、外装体30の内部に配置された状態となっている。すなわち、コア20は、コイル10とともにその全体が外装体30により被覆された構成である。
【0029】
巻芯部21は、図1Bに示すように円柱形状を有し、図2に示すように鍔部22の中心部から突出している。巻芯部21の形状は、円柱形状に限定されず、例えば、四角柱、八角柱、あるいはその他の多角柱でもよく、鍔部22の中心部からその径方向にオフセットした位置で突出していてもよい。
【0030】
鍔部22は、図1Bに示すように扁平な直方体形状(平板状六面体形状)を有し、巻芯部21の軸方向の一端に形成されている。図2を参照して上述したように、鍔部22の一部は外装体30の底面30aから露出し、外装体30とともにコイル部品1の実装面(底面)1aを形成している。鍔部22の形状は、直方体形状に限定されず、例えば、円形、八角形、あるいはその他の多角形の平板形状であってもよい。
【0031】
コア20は、巻芯部21および1つの鍔部22を有するT型形状に限られず、巻芯部21あるいは鍔部22のいずれか一方を具備しない構成であってもよい。例えば、鍔部22を具備しない巻芯部21のみの構成であってもよい。また、巻芯部21の両端に鍔部22が一対で形成されたドラム型のコアであってもよい。
【0032】
コア20は、例えば、圧粉成形、射出成形あるいは削り出し加工等によって成形された金属、フェライト部材等のセラミクスを、アニール処理をして焼結体として形成された磁性コアである。コア20は、磁性粒子を含む樹脂をアニール処理して形成してもよい。コア20は、後述する外装体30よりも比透磁率の大きい材料で構成されるが、外装体30と同一の材料で構成してもよい。
【0033】
コア20は、その熱膨張係数が、外装体30の熱膨張係数と差が小さい(例えば45ppm/K以下、あるいは10ppm/K以下)ことが好ましい。コア20の特に巻芯部21の熱膨張係数と外装体30の熱膨張係数との差が小さい場合には、巻芯部21の周囲の外装体30にクラックが生じることを防止することができる。
【0034】
外装体30は、コイル10およびコア20を封止収容し、コイル部品1の外形を規定する部材である。すなわち、外装体30の内部には、コイル10およびコア20が配置され、外装体30の外部には、端子電極40a,40bが装着されている。ただし、コア20の鍔部22の一部が外装体30の底面30aから露出してコイル部品1の底面1aの一部を形成しているように、コイル部品1の表面としては、外装体30の外面に加え、外装体30以外の他の部材の表面も含まれうる。
【0035】
外装体30は、磁性粒子と樹脂とを含む外装材で形成されている。外装体30を形成する磁性粒子は、特に限定されないが、例えばフェライトあるいは金属磁性体等である。外装体30を形成する磁性粒子の粒径は、特に限定されないが、例えば1μm~50μmである。外装体30を形成する樹脂は、特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂である。電子部品がコイル部品等の場合、外装体30の比透磁率は、特に限定されないが、例えば1~20000である。
【0036】
外装体30は、後述するように、コイル10およびコア20が設置された金型のキャビティ内に外装材を充填し、これを圧縮および硬化することにより成形される。
【0037】
外装体30は、端子電極40a,40bが配置されている底面30aと、底面30aと対向する上面30bと、底面30aと上面30bとを接続する側面30c~30fとを有する略直方体形状の六面体である。外装体30の形状は、六面体に限定されず、八面体等の他の多面体でもよい。また、外装体30の形状は、有効磁束の観点から円柱等の柱体でもよく、柱体の場合には、円錐台形等のように、底面30aと上面30bとが合同ではない立体であってもよい。
【0038】
本実施形態では、外装体30が六面体であるため、外装体30は第1側面30c~第4側面30fの4つの側面を有するが、外装体が八面体(外装体の水平断面が六角形)あるいは十面体(外装体の水平断面が八角形)のような他の多面体の場合には、それに応じた数の側面を有することとなる。また、外装体30が円柱や円錐台形である場合、外装体30には、底面30aと上面30bとを接続する1つの側面(曲面)が具備される。
【0039】
外装体30の側面30c~30fのそれぞれは、表面粗さの異なる複数の領域を含む。図1Aに示すように、第1側面30cおよび第4側面30fは、それぞれが、相対的に表面粗さが小さい(平滑な)第1領域(平滑面領域)30c1,30f1と、第1領域30c1,30f1よりも表面粗さが大きい(粗い)第2領域(粗面領域)30c2,30f2を含む。図2に示すように、第2側面30dも、第1領域(平滑面領域)30d1と第2領域(粗面領域)30d2を含む。図面に現れていないが、第3側面30eにも、同様に第1領域(平滑面領域)(30e1)と第2領域(粗面領域)(30e2)が形成されている。これら第1領域および第2領域は、表面粗さが異なるだけで、外装体の素材は同じである。すなわち、表面に第1領域が形成される部分も、表面に第2領域が形成される部分も、同じ種類の磁性粒子と同じ種類の熱硬化性樹脂を含む。
【0040】
このような粗面領域30c2~30f2は、他の部材との密着性を高めるために有効である。本実施形態のコイル部品1の端子電極40a,40bは、図1Bに示すように、実装面装着部(第1主面装着部)40a1,40b1と側面装着部40a2,40b2を有するL字金属端子であり、側面装着部40a2,40b2は外装体30の第1側面30cに接合される。このとき、側面装着部40a2,40b2を外装体30の第1側面30cの粗面領域30c2に対向させて接着剤等で接合することにより、側面装着部40a2,40b2の密着性を向上させることができ、端子電極40a,40bの接合強度を高めることができる。
【0041】
また、例えばコイル部品1を基板等に実装した後、コイル部品1の周辺回路全体を、あるいは、コイル部品1を実装した基板の全体を、外装用樹脂により被覆し封止する場合に、外装体30の側面30c~30fの粗面領域30c2~30f2の箇所において、外装用樹脂との密着性が向上し、接合強度を高めることができる。
【0042】
図1Aに示すように、コイル部品1の側面30c~30fにおいて、平滑面領域(第1領域)30c1~30f1は、コイル部品1の上面30bに近い側の所定の高さ範囲H1に配置されている。換言すれば、平滑面領域30c1~30f1は、コイル部品1の実装面1aから遠い側の所定の高さ範囲H1に配置されている。また、粗面領域(第2領域)30c2~30f2は、コイル部品1の実装面1aに近い側の所定の高さ範囲H2側に配置されている。
【0043】
本実施形態においては、コイル部品1の高さHに対する粗面領域30c2~30f2が形成されている高さ範囲H2の比率H2/Hは、例えばH2/H=0.5となるように、すなわち、平滑面領域30c1~30f1の高さ範囲H1と粗面領域30c2~30f2が形成されている高さ範囲H2の割合が、H1:H2=1:1となるように構成されているが、これに限定されるものではない。コイル部品1の高さHに対する粗面領域30c2~30f2が形成されている高さ範囲H2の比率H2/Hは、0.1≦H2/H≦0.9の範囲の任意の比率としてよく、0.3≦H2/H≦0.7の範囲としてもよい。
【0044】
実際の表面粗さRaについては、外装体30に対して表面処理を行っていない状態で、平滑面領域30c1~30f1の表面粗さRaは、例えば1.4μm以下であり、粗面領域30c2~30f2の表面粗さRaは、1.4μmより大きい。平滑面領域30c1~30f1と粗面領域30c2~30f2との表面粗さの関係は、粗面領域30c2~30f2の表面粗さが、平滑面領域30c1~30f1の表面粗さの1.2倍以上であり、1.5倍以上であってもよく、2~2.5倍であってもよい。
【0045】
外装体30の表面にメッキ等の表面処理を行った場合には、平滑面領域30c1~30f1の表面粗さRaは、例えば1.2μm以下であり、粗面領域30c2~30f2の表面粗さRaは、1.2μmより大きい。この場合の平滑面領域30c1~30f1と粗面領域30c2~30f2との表面粗さの関係は、粗面領域30c2~30f2の表面粗さが、平滑面領域30c1~30f1の表面粗さの1.5倍以上であってもよく、3~5倍であってもよい。
【0046】
本実施形態のコイル部品1においては、外装体30の側面30c~30fの全周に沿って連続して平滑面領域(第1領域)30c1~30f1と粗面領域(第2領域)30c2~30f2とが形成してあるが、側面30c~30fのいずれか1面、2面あるいは3面等、一部の側面に選択的に平滑面領域および粗面領域を設ける構成でもよい。また、側面30c~30fごとに、平滑面領域30c1~30f1の高さ範囲H1と粗面領域30c2~30f2が形成されている高さ範囲H2を変化させた構成でもよい。
【0047】
端子電極40a,40bは、コイル10と外部回路との接続部である。端子電極40aと端子電極40bとは、互いに間隔を空けて配置されており、電気的に絶縁されている。
【0048】
図1Bに示すように、端子電極40a,40bは、それぞれ実装面装着部40a1,40b1と側面装着部40a2,40b2を有するL字金属端子である。実装面装着部40a1,40b1は、図1Bおよび図2に示すように、コイル部品1の実装面1aに設置され、外装体30の底面30aから外部に引き出されたコイル10の引出部12a,12bを間に介在させて、コア20の鍔部22の端面22aおよび外装体30の底面30aに接合されている。引出部12a,12bは、端子電極40a,40bに対して、熱圧着、ハンダ接続あるいは導電性接着剤等により接続してよい。
【0049】
側面装着部40a2,40b2は、本実施形態においては、図1Aおよび図1Bに示すように、外装体30の第1側面30cに接合されている。側面装着部40a2,40b2は、外装体30の第3側面30eに接合されるように形成されていてもよい。また、側面装着部40a2,40b2は、第1側面30cと第3側面30eの両方に配置されていてもよい。また、端子電極40aにおいては、外装体30の第2側面30dに接合されるように形成された側面装着部40a2を有していてもよいし、端子電極40bにおいては、外装体30の第4側面30fに接合されるように形成された側面装着部40b2を有していてもよい。
【0050】
これらの端子電極40a,40bの側面装着部40a2,40b2は、コイル部品1をハンダ等で基板に接続するときに、端子電極40a,40bにハンダ等のフィレットを形成することができる。
【0051】
端子電極40a,40bは、実装面装着部40a1,40b1および側面装着部40a2,40b2を、それぞれコア20の鍔部22および外装体30の接合対象面に対向させて、接着剤等を介在させて接合することにより、コイル部品1(外装体30)に対して装着される。このとき、端子電極40a,40bの側面装着部40a2,40b2においては、接合対象が外装体30の側面30c~30fの粗面領域30c2~30f2なので、端子電極40a,40bと外装体30との密着性を向上させることができ、端子電極40a,40bの外装体30に対する接合強度を高めることができる。
【0052】
端子電極40a,40bは、例えば導電性の金属板材を機械加工して形成されるが、端子電極40a,40bの形成方法は、特に限定されない。端子電極40a,40bの材質は、導電性を有する金属材料であれば特に限定されず、たとえば鉄、ニッケル、銅、銀等若しくはこれらを含む合金を用いることができる。また、端子電極40a,40bの表面には、Ni、Sn、Cu等の金属被膜が形成されていてもよい。
【0053】
端子電極40a,40bは、金属端子の代わりに、メッキにより外装体30あるいはコア20の鍔部22に対して形成するようにしてもよい。この場合、端子電極40a,40bは、例えば、下地電極膜と、下地電極膜の上に形成されたメッキ膜との積層電極膜で構成される。下地電極膜は、特に限定されないが、例えばSn,Ag,Ni,Cu等の金属またはこれらの合金を含む導電ペースト膜である。メッキ膜は、特に限定されないが、例えばSn,Au,Ni,Pt,Ag,Pd等の金属またはこれらの合金である。
【0054】
次に、このようなコイル部品1の製造方法の一例について、図3A図10Bを参照して説明する。
【0055】
まず、図3Aに示すような枠部材50を準備する。枠部材50は、外装体30をモールド成形するための部材であり、板状部材に、隔壁51で仕切られた複数の区切り空間52が形成された部材である。複数の区切り空間52は、隔壁51で囲まれた無底筒状の空間である。複数の区切り空間52は、X軸およびY軸に沿って、マトリクス状に配置されていてもよい。複数の区切り空間52の各々の軸方向(Z軸方向)に垂直な断面形状は、鍔部22aの端面22aの形状に対応しており、四角形であるが、その他の多角形、あるいは円形等でもよい。
【0056】
区切り空間52を規定する隔壁51の面(枠面と称する)57は、外装体30をモールド成形するときに外装体30の材料となる接する面である。側面30c~30fに平滑面領域30c1~30f1および粗面領域30c2~30f2が形成されている本実施形態のコイル部品1(外装体30)に対応して、枠部材50の各区切り空間52の周面である枠面57には、図3Bに示すように、表面粗さの異なる複数の領域が形成されている。すなわち、区切り空間52の枠面57には、相対的に表面粗さが小さい(平滑な)枠面第1領域(平滑枠面領域)57aと、枠面第1領域57aよりも表面粗さが大きい(粗い)枠面第2領域(粗枠面領域)57bが形成されている。
【0057】
平滑枠面領域57aおよび粗枠面領域57bは、無底筒状の空間である区切り空間52の筒中心軸の方向に沿って、枠面57の一方側および他方側にそれぞれ配置されている。区切り空間52に配置された外装材において、平滑枠面領域57aに接した箇所がコイル部品1の外装体30の平滑面領域30c1~30f1に形成され、粗枠面領域57bに接した箇所が、コイル部品1の外装体30の粗面領域30c2~30f2に形成される。したがって、区切り空間52の枠面57の平滑枠面領域57aと粗枠面領域57bの高さは、図1Aを参照して前述した平滑面領域30c1~30f1の高さH1と粗面領域30c2~30f2の高さH2に対応する。
【0058】
このような構成の枠部材50は、例えば板状部材を加工して製造される。板状部材に区切り空間52に相当する開口を形成し、その内周面を任意の表面加工処理により平滑枠面領域57aおよび粗枠面領域57bに対応する粗さの表面に加工することにより、図3Aおよび図3Bに示すような枠部材50が形成可能である。板状部材は、例えば金属性の板状部材であってよい。
【0059】
また、このような構成の枠部材50は、板状部材を打ち抜き加工することにより、容易に製造することができる。板状部材は、例えば金属性の板状部材であってよい。コイル部品1(外装体30)の上面30bの形状に略等しい形状のパンチを用いて金属材料を打ち抜き加工することにより、金属材料の厚み方向において、パンチが打ち込まれる側の所定の範囲の開口周面は、パンチによる切断面としての表面痕跡が残る(形成される)。
【0060】
一方、パンチが抜ける側の所定の範囲の開口周面は、パンチが打ち込まれたことによる金属材料の変形および変形した結果としての引きちぎれにより開口が形成されることとなり、引きちぎられた表面痕跡が残る(形成される)。その結果、金属材料の厚み方向において、一方側には、切断面としての比較的表面粗さが小さい平滑枠面領域57aが形成され、他方側には、引きちぎり面としての比較的表面粗さが粗い粗枠面領域57bが形成される。
【0061】
このような打ち抜き加工は、金属材料、パンチの硬度や打ち抜き圧力/速度等の条件を制御することにより再現性良く実現できるとともに、容易かつ迅速な加工が可能なため、所望の枠面57(周面)を有する区切り空間52が多数形成された枠部材50を、容易かつ迅速に製造することができる。
【0062】
また、打ち抜き加工をした場合、パンチが打ち込まれた側に対して、パンチが通過して金属部材が外部に打ち除かれる側の開口の方が、周辺部材を巻き込んだ金属材料の引きちぎれや引き剥がれが生じやすく、若干開口が広がる場合がある。その結果、例えば図1A図1Bおよび図2に示したように、上面30bが実装面1aより面積が小さく、側面30c~30fが例えば0.5°程度にわずかに傾斜しているようなコイル部品1を成形するための内周形状を有する枠部材50については、このような打ち抜き加工により容易に製造することができる。
【0063】
枠部材50を準備したら、図4に示すように、必要に応じて、粘着シート120を介して、枠部材50を台座130に貼り合わせる。例えば、粘着シート120として、両面粘着シートを用いることができる。この場合、粘着シート120を加熱雰囲気に曝すことにより、粘着シート120から枠部材50を剥離させ、枠部材50を台座130から離脱させることができる。ただし、粘着シート120に代えて、接着剤等を用いて、枠部材50を台座130に接着してもよい。あるいは、枠部材50を台座130に機械的手段または磁気的手段で固定してもよい。
【0064】
次に、図4に示すように、複数のコイル10と複数のコア20とを準備する。具体的には、複数のコア20を準備し、複数のコア20の巻芯部21にそれぞれ巻回部11を嵌め込むことにより、あるいは、複数の巻芯部21にワイヤを巻回することにより、複数の巻芯部21にそれぞれコイル10を設置する。複数のコイル10の各々において、コイル10の引出部12aおよび12bについては、鍔部22の端面22aに配置しておいてよい。
【0065】
次に、コイル10が設置された複数のコア20を、それぞれ複数の区切り空間52に配置する。複数の区切り空間52の各々において、区切り空間52の軸方向の一方側は粘着シート120で閉塞されているため、コイル10が設置されたコア20を区切り空間52に配置すると、複数の区切り空間52の各々の内部において、コア20の端面22aが、粘着シート120に固定(接着)される。
【0066】
次に、図5に示すように、複数のコア20が粘着シート120に接着された状態で、枠部材50を金型(下金型)60の内部に収容する。ここで、金型60は、本体61と、本体61に形成されたキャビティ62とを有する。キャビティ62は、内壁63と底面64とで囲まれた空間(凹部)である。必要に応じて、キャビティ62の底面64に、離型フィルム110を配置する。図5に示す例では、離型フィルム110は、キャビティ62の内壁63および底面64に沿って、これらに密着するように配置されている。離型フィルム110の外縁部は、キャビティ62の開口縁よりも外側に配置されていてもよい。キャビティ62に離型フィルム110を配置した後、キャビティ62に外装材80を充填する。外装材80としては、流動性のある材料が用いられる。外装材80としては、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等のバインダーと磁性粒子(磁性フィラー)とを含む複合磁性材料が用いられる。
【0067】
枠部材50を金型60の内部(キャビティ62)に収容するときには、枠部材50を図5中の矢印で示す向きに移動させる。これにより、図6に示すように、複数のコア20とともに、複数のコイル10をキャビティ62に収容することができる。枠部材50をキャビティ62に収容する前後において、金型60を加熱する。これにより、粘着シート120と枠部材50との間の接続強度が低下し、図5に示す台座130から枠部材50を離脱させることができる。
【0068】
図7に示すように、キャビティ62の内部において、巻芯部21の頂部は、キャビティ62の底面64側を向いており、底面64から離間した位置に配置されている。また、鍔部22の端面22aは、キャビティ62の開口面側を向いており、キャビティ62の開口面と面一になるように配置されている。すなわち、本実施形態では、鍔部22の端面22aが枠部材50から露出するように、複数の区切り空間52の各々に、コア20とともにコイル10を配置する。
【0069】
枠部材50を金型60のキャビティ62に収容すると、金型60のキャビティ62の内部には、枠部材50の複数の区切り空間52に対応する位置に、枠部材50(隔壁51)で画定された(仕切られた)複数の仕切領域70が形成される。そして、各仕切領域70において、換言すれば、枠部材50の区切り空間52の各々において、巻回部11が外装材80で覆われるとともに、引出部12aおよび12bの少なくとも一部が外装材80で覆われる。また、巻芯部21が外装材80で覆われるとともに、鍔部22の少なくとも一部が外装材80で覆われる。コア20の端面22a、および端面22aに配置された引出部12aおよび12bは、外装材80(金型60のキャビティ62の開口面)から露出させておいてよい。
【0070】
枠部材50は、隔壁51の第2端51bの位置がキャビティ62の開口面の位置と等しくなるように、金型60の内部に収容される。隔壁51の高さは、キャビティ62の深さよりも僅かに小さく形成されており、隔壁51の第1端51aは、底面64から離間した位置に配置される。その結果、金型60のキャビティ62の内部には、枠部材50の区切り空間52を相互に接続する接続領域72が形成される。
【0071】
次に、金型60のキャビティ62に充填された外装材80を圧縮および硬化する。より詳細には、上金型(図示略)を準備し、金型(下金型)60と上金型とを用いて、所定の金型温度で、所定時間の間、外装材80を圧縮および硬化する。これにより、複数の仕切領域70に充填された外装材80が圧縮および硬化し、複数の仕切領域70の内部に複数の外装体30が形成される。また、接続領域72に充填された外装材80が圧縮および硬化し、接続領域72の内部に連結部90が形成される。上述したように、複数の仕切領域70は接続領域72を介して接続されているため、複数の外装体30は、連結部90を介して連結される。このように、本実施形態では、複数の仕切領域70に形成される複数の外装体30と、接続領域72に形成され、複数の外装体30に連結される連結部90とを有する成形体100を形成することができる。他の実施形態では、仕切領域70への外装材80の充填と、外装材80の圧縮および硬化とが、同時に進行してもよい。
【0072】
次に、図8に示すように、成形体100が形成された枠部材50を、金型60(キャビティ62)から取り出す。そして、複数の外装体30を連結部90で切断し、枠部材50から取り出す。複数の外装体30を連結部90において切断することにより、連結部90に連結された複数の外装体30を個片化し、図9に示すような複数の外装体30の個片を得ることができる。
【0073】
次に、図10Aに示すように、外装体30の各々の底面30aに端子電極40a,40bを装着する。本実施形態において、端子電極40a,40bは、それぞれ実装面装着部40a1,40b1と側面装着部40a2,40b2を有するL字金属端子である。実装面装着部40a1,40b1および側面装着部40a2,40b2を、それぞれコア20の鍔部22および外装体30の底面30aあるいは第1側面30cに対向させて、接着剤等を介在させて接合することにより、外装体30に端子電極40a,40bを装着する。このとき、端子電極40a,40bの側面装着部40a2,40b2は、外装体30の側面30c~30fの粗面領域30c2~30f2に接合する。これにおり、端子電極40a,40bと外装体30との密着性を向上させることができ、端子電極40a,40bの外装体30に対する接合強度を高めることができる。
【0074】
このように、上述した製造方法により、コイル部品1の外装体30の側面30c~30fには、平滑面領域30c1~30f1と、側面30c~30fとが適切に形成可能である。
【0075】
以上説明したように、本開示に係るコイル部品1においては、外装体30の側面30c~30fに、平滑面領域30c1~30f1と、平滑面領域30c1~30f1に対して相対的に表面粗さが大きい(粗い)粗面領域30c2~30f2が形成されており、粗面領域30c2~30f2は、側面30c~30fの実装面1a側の所定範囲に形成されている。
【0076】
したがって、電子部品を密に配列したような場合に、隣接する電子部品同士は側面30c~30fの粗面領域30c2~30f2で接触する状態となり、隣接する電子部品同士が接触したとしても接合してしまう(くっついてしまう)可能性が低減できる。
【0077】
一方、粗面領域30c2~30f2は、接着剤や溶融樹脂が介在されるような特定の条件の下では密着性が高いため、L字金属端子である端子電極40a,40bを外装体30に接着剤等で接合する際には、端子電極40a,40bの側面装着部40a2,40b2が外装体30の側面30c~30fの粗面領域30c2~30f2(図1Aに示す例では第1側面30cの粗面領域30c2)に接合されることとなり、密着性を向上させることができ、端子電極40a,40bの接合強度を高めることができる。
【0078】
また、端子電極40a,40bを外装体30に装着する場合に限られず、外装体30の表面に粗面領域30c2~30f2を設けることにより、例えばコイル部品1を基板等に実装した後、コイル部品1の周辺回路全体、あるいはコイル部品1を実装した基板の全体を外装用樹脂により被覆し封止する場合等には、粗面領域30c2~30f2の箇所において外装用樹脂との密着性が向上し、これらの外装用樹脂についてもコイル部品1への接合強度を高めることができる。
【0079】
このように、本開示に係るコイル部品1においては、製造時の歩留まりを向上させることができるとともに、使用時の取り扱いが容易で接合信頼性や実装信頼性を向上させることができる。
【0080】
コイル部品1、周面30a~30fを平滑な表面とすることは、外装体30がコア20とともに磁気コアを形成する場合に、安定かつ効率よく磁路を形成する観点から、すなわち安定した磁気特性および電気特性を得るために重要である。また、一般的な電子部品においても、そのような特性に関係する観点から、あるいは、たとえば電子部品の表面に刻印を付す容易性や小型化、美観等の観点から、一般的にその周面を平滑面に形成することが望ましい。その結果、端子電極のような周辺部材の接合性や樹脂被覆を行う際の接合性という観点からの要求に対しては、反するものとなる場合があった。
【0081】
しかし本開示に係るコイル部品1においては、1つの電子部品の1つの周面に平滑面領域と粗面領域とを選択的に形成することができる。そのため、たとえば、外装体30の周面のうち、L字金属端子の側面装着部40a2,40b2が接着剤等を介して接合される箇所のみを、すなわち必要な箇所のみを、選択的に粗面とすることができる。その結果、電子部品の特性等の平滑周面により得られる特徴を維持しつつ、端子電極あるいは被覆材料との接合性を向上させることができる。
【0082】
上述した通り、コイル部品1の外装体30にこのような粗面領域30c2~30f2を形成するためには、外装体30をモールド成形する際のキャビティの対応する壁面に、平滑面領域と粗面領域とを形成してモールドすればよい。また、打ち抜き加工によりキャビティの壁面(枠面)に平滑面領域(平滑枠面領域57a)と粗面領域(粗枠面領域57b)とを有する枠部材50を容易に製造することができる。この方法によると、前述したような、1つの周面に平滑面領域と粗面領域とが選択的に形成された電子部品を、容易に製造することができる。
【0083】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【0084】
たとえば、前述した実施形態では、外装体30にL字形状の端子電極40a,40bを装着したコイル部品1について説明したが、本開示に係る電子部品は、たとえば図1Cに示すように、平板状の端子電極42a,42bを底面30aに装着したコイル部品2のような構成でもよい。このような構成であっても、側面30c~30fに形成された粗面領域30c2~30f2においては、たとえば外装用樹脂との密着性を向上させることができる。
【0085】
また、図1Dに示すように、巻回部11の巻軸方向が外装体30の底面30aに対して平行となるように、外装体30の内部にコイル10を配置してもよい。図1Dにおいて、巻回部11の巻軸方向は、Y軸方向に対応している。巻回部11を巻軸方向から見た形状は、X軸方向に長辺を有する長方形であるが、正方形、その他の多角形、円形あるいは楕円形等でもよい。引出部12aおよび12bは、巻回部11から底面30aに向けて直接的に引き出されており、底面30aの表面に配置されている。このような構成のコイル装置3においても、側面30c~30fの底面側には粗面領域30c2~30f2が形成されており、L字形状の端子電極43a,43bの外装体30への接合強度を高めることができるとともに、たとえば外装用樹脂との密着性を向上させることができる。
【0086】
また、図1Eに示すコイル部品4のように、コイルとして、平角線を巻回したコイル10Bを用いてもよい。また、例えば平角線によりコイル10Bを形成したような場合には、別途の金属端子としての部材を有さず、図1Eに示すように、平角線をそのまま底面30aから外部に引き出し端子電極を形成してもよい。さらに、同じく図1Eに示すコイル部品4のように、コア20を有しない空芯コイルを外装体30に収容した構成としてもよい。
【0087】
また、前述した実施形態においては、図1Bに示すように、コイル10およびコア20を外装体30で封止した後に、端子電極40a,40bを外装体30に接合し、コイル10からの引出部12a,12bに端子電極40a,40bを電気的に接続していた。しかし、例えば図1Fに示すコイル部品5のように、外装体30でコイル10およびコア20を封止する前に、端子電極44a,44bをコア20の鍔部22に装着しておき、これにコイル10から引き出した引出部12a,12bを接続するようにしてもよい。外装体30の形成は、コイル10に接続されコア20の鍔部22に接合されている端子電極44a,44bを含めて、コイル10、コア20および端子電極44a,44bの全体に対して、樹脂モールドにより成形するようにしてよい。
【0088】
さらにまた、前述した実施形態において、コア20は、巻芯部21と1つの鍔部22とを有するT型のコアであったが、例えば図1Gに示すコイル装置6のように、対向する2つの鍔部24a,24bを有するドラムコア23を配する構成であってもよい。
【0089】
また、端子電極の形態も、上述した実施形態の構成に限られない。例えば、図1Hに示すような形態の端子電極45a、45bであってもよい。端子電極45aは、コイル部品7の底面30aと第1側面30cとが交差する角部を覆うように外装体30に設置されており、端子電極45bは、コイル部品7の底面30aと第3側面30eとが交差する角部を覆うように外装体30に設置されている。このような構成においては、外装体30の側面30c,30eに当接する端子電極45a、45bの板状部分は、側面30c,30eの第2領域(粗面領域)30c2,30e2に設置されているため、端子電極45a、45bの外装体30に対する密着性を向上させることができ、端子電極45a,45bの接合強度を高めることができる。また、端子電極45a,45bにおいては、実装部の面積を広く確保できるため、信頼性を高くすることができる。また、外装体30の側面30c,30eの上部(第1領域30c1,30e1)および上面30bには端子が配置されないため、Agペースト等の使用量が抑えられ、コスト的にも有利である。
【0090】
また、前述した実施形態においては、コイル部品1の端子電極40a,40bとして、金属板からなる電極部材を、接着剤等により外装体30に接合していた。しかし、端子電極の形成は、ペースト法、メッキ法、スパッタリングあるいはスクリーン印刷等によって行ってもよい。
【0091】
また、前述した本開示に係るコイル部品1の製造方法においては、圧縮及び硬化することによりコイル10およびコア20に対して外装体30を形成していた。しかしながら、外装体30の成形方法はこれに限られず、トランスファモールド、射出成形、乾式成形等、種々の成形技術により行ってよい。
【0092】
また、前述した実施形態においては、本開示に係る電子部品として、素子本体としてコイルを有するインダクタを例示した。しかしながら、本開示に係る電子部品はこれに限られるものではなく、素子本体として半導体集積回路(ICチップ)を有し、これが樹脂中にパッケージングされた半導体部品であってもよい。また、素子本体として、温度/湿度センサ、圧力センサ、加速度センサ、光電変換素子、圧電素子等の任意のセンサ素子を有するセンサであってもよい。また、素子本体としてポリマアルミ電解コンデンサ素子を有するコンデンサであってもよい。
【0093】
本明細書は、以下を開示している。
【0094】
[1]
外装体と、前記外装体の内部に配置された素子本体とを有する電子部品であって、
前記外装体は、熱硬化性樹脂を含み、対向する第1主面と第2主面、および前記第1主面と前記第2主面を接続する1つ以上の側面を有し、
前記側面の少なくとも1つは、第1領域と、前記第1領域より表面粗さが大きい第2領域とを含み、
前記外装体の前記第1領域を形成する部分と、前記外装体の前記第2領域を形成する部分とは、同じ種類の熱硬化性樹脂を含む電子部品。
【0095】
[2]
前記第1主面は実装面であり、前記第2主面は前記第1主面より面積が小さくなるように前記側面が傾斜している上記[1]に記載の電子部品。
【0096】
[3]
前記第1主面は実装面であり、前記側面の少なくとも1つにおいて、前記第1主面に近い側の所定の範囲に前記第2領域が配置され、前記第2領域よりも前記第1主面から遠い側に前記第1領域が配置されている上記[1]または[2]に記載の電子部品。
【0097】
[4]
前記側面の全周に沿って連続して、前記第1領域と前記第2領域を有する上記[1]~[3]のいずれかに記載の電子部品。
【0098】
[5]
端子電極をさらに有し、前記端子電極の一部が、前記外装体の前記第2領域に装着されている上記[1]~[4]のいずれかに記載の電子部品。
【0099】
[6]
前記第1主面に装着される第1主面装着部と、前記側面の少なくとも1つに装着される側面装着部とを有する端子電極をさらに有し、
前記側面装着部は、前記外装体の前記第2領域に装着されている上記[1]~[5]のいずれかに記載の電子部品。
【0100】
[7]
前記素子本体は、コイルである上記[1]~[6]のいずれかに記載の電子部品。
【0101】
[8]
前記素子本体は、半導体集積回路である上記[1]~[6]のいずれかに記載の電子部品。
【0102】
[9]
前記素子本体は、センサ素子である上記[1]~[6]のいずれかに記載の電子部品。
【0103】
[10]
前記素子本体は、ポリマアルミ電解コンデンサ素子である上記[1]~[6]のいずれかに記載の電子部品。
【0104】
[11]
外装体の内部に素子本体が配置された電子部品の製造方法であって、
キャビティに前記素子本体を配置する工程と、
前記素子本体が配置された前記キャビティに前記外装体の材料となる外装材を充填し前記外装体を成形する工程と、を有し、
少なくとも1つの枠面が、枠面第1領域と、前記枠面第1領域より表面粗さが大きい枠面第2領域とを含む枠部材を用いて、前記キャビティの少なくとも一部を形成する電子部品の製造方法。
【0105】
[12]
前記枠部材の前記少なくとも1つの枠面は、前記電子部品の少なくとも1つの側面を形成する面であり、
前記枠面第2領域は、前記電子部品の実装面に近い側となる所定の範囲に配置され、前記枠面第1領域は、
前記枠面第2領域よりも前記電子部品の前記実装面から遠い側となる所定の範囲に配置されている上記[11]に記載の電子部品の製造方法。
【0106】
[13]
前記枠部材の前記少なくとも1つの枠面は、板状部材に打ち抜き加工して形成されている上記[11]または[12]に記載の電子部品の製造方法。
【0107】
[14]
外装体の内部に素子本体が配置された電子部品の製造装置であって、
前記素子本体が配置されたキャビティに前記外装体の材料となる外装材を充填し前記外装体を成形するための枠部材を有し、
前記枠部材は、前記外装材が接する枠面を有し、少なくとも1つの前記枠面が、枠面第1領域と、前記枠面第1領域より表面粗さが大きい枠面第2領域とを含み、
前記キャビティの内面に前記枠面第1領域と前記枠面第2領域とが位置するように、前記枠部材が前記キャビティの少なくとも一部を形成している電子部品の製造装置。
【符号の説明】
【0108】
1~7…コイル部品
1a…実装面(底面、第1主面)
10…コイル
11…巻回部
12a,12b…引出部
20,23…コア
21…巻芯部
22,24a,24b…鍔部
22a…端面
30…外装体
30a…実装面(底面、第1主面)
30b…上面(コイル部品第2主面)
30c~30d…側面(コイル部品側面)
40a~44a,40b~44b…端子電極
40a1,40a2…実装面装着部(第1主面装着部)
40a2,40b2…側面装着部
50…枠部材
51…隔壁
51a…第1端
51b…第2端
51c…枠面
52…区切り空間
53…第1開口部
54…第2開口部
55…底壁
56…貫通孔
60…金型
61…本体
62…キャビティ
63…内壁
64…底面
70…仕切領域
72…接続領域
80…外装材
90…連結部
100…成形体
110…離型フィルム
120…粘着シート
130…台座
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B