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特開2025-1598445-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート及びそれを用いた2,7-ジアセトキシウンデカンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025159844
(43)【公開日】2025-10-22
(54)【発明の名称】5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート及びそれを用いた2,7-ジアセトキシウンデカンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/24 20060101AFI20251015BHJP
   C07C 67/297 20060101ALI20251015BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20251015BHJP
   C07C 69/16 20060101ALI20251015BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20251015BHJP
【FI】
C07D317/24
C07C67/297 CSP
C07C67/08
C07C69/16
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062647
(22)【出願日】2024-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】三宅 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武
(72)【発明者】
【氏名】長江 祐輔
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC44
4H006AC48
4H006AC80
4H006BA53
4H006BD70
4H006BR10
4H006KA06
4H006KA30
4H006KC12
4H039CA62
4H039CG90
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2,7-ジアセトキシウンデカンを効率良く製造するための合成中間体である新規な化合物を提供する。また、該新規な化合物の製造方法、及び該新規な化合物から2,7-ジアセトキシウンデカンを製造する方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテートを提供する。また、前記化合物を、酸又は過酸化物の存在下、ケタールを脱保護することによる10-アセトキシ-5-ウンデカノンの製造方法、及び任意的に、10-アセトキシ-5-ウンデカノンの還元反応により、10-アセトキシ-5-ウンデカノールを得る工程、及び前記10-アセトキシ-5-ウンデカノールをアセチル化反応することによる、2,7-ジアセトキシウンデカンの製造方法を提供する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
で表される5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート。
【請求項2】
下記一般式(2):
【化2】
(式中、Xはハロゲン原子又は3-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル基を表す。)
で表される有機マグネシウム化合物(2)を下記式(3):
【化3】
で表されるプロピレン=オキシドへの求核付加反応に付し、その後、下記一般式(4):
【化4】
(式中、Xは、ハロゲン原子又はアセトキシ基、メトキシ基又はエトキシ基を表す。)
で表されるアセチル化剤と反応させることにより、下記式(1):
【化5】
で表される5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)を得る工程
を含む、5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)の製造方法。
【請求項3】
下記式(1):
【化6】
で表される5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテートを酸又は過酸化物の存在下、ケタールを脱保護することにより、下記式(5):
【化7】
で表される10-アセトキシ-5-ウンデカノンを得る工程
を含む、10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)の製造方法と、
前記10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)を還元反応により、下記式(6):
【化8】
で表される10-アセトキシ-5-ウンデカノールを得る工程と、
前記10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)をアセチル化反応することにより、下記式(7):
【化9】
で表される2,7-ジアセトキシウンデカンを得る工程と
を含む、2,7-ジアセトキシウンデカン(7)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート及びそれを用いた2,7-ジアセトキシウンデカンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Pear gall midge(学名:Contarinia pyrivora)はヨーロッパの果樹害虫であり、ナシ(pear)を食害する。Pear gall midgeの幼虫は果実に侵入し食害する。Pear gall midgeに食害された果実は、黒ずみ、そして木から落ちてしまう。該幼虫は果実内に入り込むため、通常の農薬は接触不良により効果が低いことが多く、その防除は困難である。また、残留農薬の懸念により、生物学的防除方法が注目されつつあり、その一つとして性フェロモン物質の利用が期待されている(下記の非特許文献1)。
【0003】
Pear gall midgeの性フェロモン組成物は、2,7-ジアセトキシウンデカンと7-(アセトキシ)-2-ウンデカノンとの混合物であることが報告されている(下記の非特許文献2)。
【0004】
このうち、主成分である2,7-ジアセトキシウンデカンの製造方法としては、例えば、1,4-ジブロモブタン、1-ペンタナール及びアセトアルデヒドを、テトラヒドロフラン(THF)中でマグネシウムと反応させ、5,10-テトラデカンジオール、2,7-オクタンジオール及び2,7-ウンデカンジオールの3種類の混合物を合成する。次に、該得られた5,10-テトラデカンジオール、2,7-オクタンジオール及び2,7-ウンデカンジオールの混合物についてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離精製を行い、2,7-ウンデカンジオールを単離精製する。続いて、該得られた2,7-ウンデカンジオールをピリジンの存在下、無水酢酸でアセチル化することにより、製造する方法が報告されている(下記の非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Elisabeth A. Hodgdon et al.,The Canadian Entomologist,2022,154,e37,1-17.
【非特許文献2】Lakmali Amarawardana et al.,Thesis Uni. Greenwich,2009,1-184.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献2における2,7-ジアセトキシウンデカンの製造方法においては、第1工程において3種類のジオールが生成する上、目的物の中間体である2,7-ウンデカンジオールは水溶性が高いため収率が悪いと推測される。さらに、上記第1工程で使用しているアセトアルデヒドは発がん性がありシックハウス症候群の原因物質でもあるため、その取り扱いには専用の設備が必要となり厳密な廃水処理が必要となる等、工業的な製造に適していない。加えて、3種類のジオールを分離精製するためにシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行っているが、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製は工業規模(100kg超)での実施は困難であることから工業的な製造に適していない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、2,7-ジアセトキシウンデカンを効率良く製造するための合成中間体である新規な化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、該新規な化合物の製造方法、並びに該新規な化合物から、2,7-ジアセトキシウンデカンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、新規な化合物である5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテートを見出した。本発明に従う該5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテートは、安価かつ大量に製造することができ、蒸留のみで精製することができる。また、本発明者らは、該5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテートを用いて、2,7-ジアセトキシウンデカンを効率良く製造することができることを見出した。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、下記式(1):
【化1】
で表される5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテートを提供できる。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、下記一般式(2):
【化2】
(式中、Xはハロゲン原子又は3-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル基を表す。)
で表される有機マグネシウム化合物(2)を下記式(3):
【化3】
で表されるプロピレン=オキシドへの求核付加反応に付し、その後、下記一般式(4):
【化4】
(式中、Xは、ハロゲン原子又はアセトキシ基、メトキシ基又はエトキシ基を表す。)
で表されるアセチル化剤と反応させることにより、前記5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)を得る工程
を含む、5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)の製造方法を提供できる。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、下記式(1):
【化5】
で表される5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテートを酸又は過酸化物の存在下、ケタールを脱保護することにより、下記式(5):
【化6】
で表される10-アセトキシ-5-ウンデカノンを得る工程
を含む、10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)の製造方法を提供できる。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、前記10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)を還元反応により、下記式(6):
【化7】
で表される10-アセトキシ-5-ウンデカノールを得る工程と、
前記10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)をアセチル化反応することにより、下記式(7):
【化8】
で表される2,7-ジアセトキシウンデカンを得る工程と
を含む、2,7-ジアセトキシウンデカン(7)の製造方法を提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、環境負荷が少なく、効率的に、目的化合物である2,7-ジアセトキシウンデカンを高収率で製造することができる。また、本発明によれば、目的化合物である、2,7-ジアセトキシウンデカンを経済的に製造することができる。本発明によれば、各工程で目的物と類似した化合物はほとんど生成しないため、カラムクロマトグラフィーによる精製は不要であり、スケールアップに適した蒸留により精製することが可能である。さらに、本発明によれば、上記2,7-ジアセトキシウンデカンを製造するにあたって有用な新規合成中間体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<I> 下記一般式(1)で表される5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)の製造方法について
上記の5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)の製造方法について説明する。
【化9】
【0015】
5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)は例えば、下記の化学反応式で示される通り、下記一般式(2)で表される有機マグネシウム化合物を、下記式(3)で表されるプロピレン=オキシドへ求核付加反応させ、その後に下記一般式(4)で表されるアセチル化剤とアセチル化反応させることにより調製することができる。
【0016】
【化10】
【0017】
(i)上記の有機マグネシウム化合物(2)について、以下に説明する。
上記一般式(2)におけるXは、ハロゲン原子又は3-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル基を表す。ハロゲン原子Xとしては、具体的には、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、取り扱いやすさの観点から塩素原子及び臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0018】
有機マグネシウム化合物(2)の具体例としては、[3-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル]クロロマグネシウム、[3-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル]ブロモマグネシウム及び[3-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル]ヨードマグネシウム等の有機マグネシウム化合物(グリニャール試薬)が挙げられ、調製のしやすさ(汎用性)の観点から、[3-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル]クロロマグネシウムが好ましい。
有機マグネシウム化合物(2)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、有機マグネシウム化合物(2)は、例えば、後述されている製造方法によって調製することができる。
【0019】
(ii)次に、有機マグネシウム化合物(2)と、プロピレン=オキシド(3)との求核付加反応、続くアセチル化剤(4)とのアセチル化反応について、以下に説明する。
該求核付加反応において、プロピレン=オキシド(3)の使用量は、経済性の観点から、有機マグネシウム化合物(2)1モル(mol)に対して、好ましくは0.8~2.0モル、より好ましくは0.9~1.7モル、更に好ましくは1.0~1.5モルである。
【0020】
該求核付加反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、一般的な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;-ジメチルホルムアミド(DMF)、-ジメチルアセトアミド(DMAC)、-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒が挙げられるが、反応性の観点から、トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒;並びに、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、有機マグネシウム化合物(2)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000g、更に好ましくは100~1000gである。
【0021】
該求核付加反応には、必要に応じて触媒を用いてもよい。
該触媒としては、塩化第一銅、臭化第一銅及びヨウ化第一銅等の一価のハロゲン化銅、並びに、塩化第二銅、臭化第二銅及びヨウ化第二銅等の二価のハロゲン化銅の銅化合物が挙げられ、反応性の観点から、一価のハロゲン化銅が好ましく、塩化第一銅がより好ましい。
該触媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該触媒は、市販されているものを用いることができる。
該触媒の使用量は、有機マグネシウム化合物(2)1モルに対して、反応速度及び/又は後処理の観点から、好ましくは0.0003~0.3モル、より好ましくは0.001~0.1モルである。
【0022】
該求核付加反応における反応温度は、用いる有機マグネシウム化合物(2)によって異なるが、反応性の観点から、好ましくは-78~70℃、より好ましくは-20~50℃、更に好ましくは0~30℃である。
該求核付加反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0023】
該アセチル化反応に用いるアセチル化剤としては、塩化アセチル、臭化アセチル及びヨウ化アセチル等のハロゲン化アセチル;無水酢酸;並びに、酢酸メチル及び酢酸エチル等の酢酸アルキルが挙げられ、反応性の観点から酢酸エチル、塩化アセチル及び無水酢酸が好ましく、塩化アセチル及び無水酢酸がより好ましく、無水酢酸が更に好ましい。
【0024】
該アセチル化反応において、アセチル化剤(4)の使用量は、経済性の観点から、有機マグネシウム化合物(2)1モルに対して、好ましくは0.8~2.0モル、より好ましくは0.9~1.7モル、更に好ましくは1.0~1.5モルである。
【0025】
該アセチル化反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、一般的な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;-ジメチルホルムアミド(DMF)、-ジメチルアセトアミド(DMAC)、-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒が挙げられるが、反応性の観点から、トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒;並びに、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、有機マグネシウム化合物(2)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000g、更に好ましくは100~1000gである。
【0026】
該アセチル化反応における反応温度は、用いる有機マグネシウム化合物(2)によって異なるが、反応性の観点から、好ましくは-30~100℃、より好ましくは0~80℃、更に好ましくは20~60℃である。アセチル化工程では低温では塩が析出し撹拌しづらくなることがあるため、撹拌効率の観点から20℃以上で反応させることが望ましい。
該アセチル化反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0027】
プロピレン=オキシドと反応させ、その後、アセチル化剤と反応させ5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)を製造しているが、プロピレン=オキシドと反応させ、その後、アセチル化剤と反応させずに10-ヒドロキシ-5-ウンデカノンを合成し、2,7-ウンデカンジオールを経由して2,7-ジアセトキシウンデカンを合成することも可能である。しかしながら、この場合、フリーの水酸基がアセタールの脱保護工程で分子内/分子間でケトンと反応する可能性がある。また、2,7-ウンデカンジオールは本発明の中間体である10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)よりも水溶性が高いため反応後の抽出が困難であると推測される。この様な背景から、プロピレン=オキシドと反応させ、その後、アセチル化剤と反応させ5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)を製造した上で、5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)を鍵中間体として2,7-ジアセトキシウンデカンを合成する手法が望ましい。
【0028】
(iii)次に、上記の有機マグネシウム化合物(2)の製造方法について、以下に説明する。
有機マグネシウム化合物(2)は、下記で説明する方法に従って調製することができる。
【0029】
有機マグネシウム化合物(2)はグリニャール試薬である。
【0030】
有機マグネシウム化合物(2)は、例えば、下記の化学反応式で示される通り、下記一般式(8)で表される2-ブチル-2-(3-ハロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物を溶媒中、マグネシウムと一定温度で反応させることにより調製することができる。
【0031】
【化11】
【0032】
(a)まず、上記2-ブチル-2-(3-ハロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8)について、以下に説明する。
上記一般式(8)におけるXは、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子Xとして、具体的には、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、取り扱いやすさの観点から臭素原子及び塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
2-ブチル-2-(3-ハロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8)の具体例としては、2-ブチル-2-(3-クロロプロピル)-1,3-ジオキソラン、2-ブチル-2-(3-ブロモプロピル)-1,3-ジオキソラン及び2-ブチル-2-(3-ヨードプロピル)-1,3-ジオキソラン等が挙げられる。
【0033】
2-ブチル-2-(3-ハロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、2-ブチル-2-(3-ハロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0034】
マグネシウムの使用量は、2-ブチル-2-(3-ハロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8)1モルに対して、反応完結の観点から、好ましくは0.8~2.0グラム原子、より好ましくは0.9~1.6グラム原子、更に好ましくは1.0~1.4グラム原子である。
上記溶媒としては、一般的な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒が挙げられるが、上記グリニャール試薬生成の反応速度の観点から、トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒;並びに、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピランがより好ましく、テトラヒドロフランが更に好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、2-(3-ハロプロピル)-2-ブチル-1,3-ジオキソラン化合物(8)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000g、更に好ましくは100~1000gである。
【0035】
上記マグネシウムとの反応における反応温度は、副反応抑制の観点から、好ましくは-10~80℃、より好ましくは10~70℃、更に好ましくは30~65℃、特に好ましくは45~60℃である。
上記マグネシウムとの反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間、より好ましくは1~30時間、更に好ましくは1.5~15時間、特に好ましくは2~8時間である。
【0036】
通常、グリニャール試薬は対応するハロゲン化物とマグネシウムとの反応により調製されるが、本グリニャール試薬(有機マグネシウム化合物)(2)は一定温度以上で環化反応が進行する。具体的には内温60℃を超えると徐々に環化反応が進行し、95℃以上では速やかに環化が進行し4員環化合物を形成する。したがって、目的のグリニャール試薬である有機マグネシウム化合物(2)を収率良く得るためには、温度が極めて重要であり、30~60℃で調製することが望ましい。
【0037】
【化12】
【0038】
(b)次に、上記の2-ブチル-2-(3-ハロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8)の製造方法について、以下に説明する。
2-ブチル-2-(3-ハロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8)は、常法に従い、又は下記で説明する方法に従って調製することができる。
【0039】
2-ブチル-2-(3-ハロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8)は、例えば、下記の化学反応式で示される通り、酸の存在下、下記一般式(9)で表される1-ハロ-4-オクタノン化合物と、下記式(10)で表されるエチレングリコールとのアセタール化反応により調製することができる。
【0040】
【化13】
【0041】
上記の1-ハロ-4-オクタノン化合物(9)について、以下に説明する。
上記一般式(9)におけるXはハロゲン原子を表し、具体的には、塩素原子、臭素原子及びヨウ素等が挙げられ、臭素原子及び塩素原子が好ましい。
【0042】
1-ハロ-4-オクタノン化合物(9)の具体例としては、1-クロロ-4-オクタノン、1-ブロモ-4-オクタノン及び1-ヨード-4-オクタノン等が挙げられ、調製のしやすさ(汎用性)の観点から、1-クロロ-4-オクタノン及び1-ブロモ-4-オクタノンが好ましい。
1-ハロ-4-オクタノン化合物(9)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。1-ハロ-4-オクタノン化合物(9)は、市販されているものであってもよく、又は、例えば、4-クロロブチリル=クロリドとブチルマグネシウム=ハライドとの求核置換反応によって調製することができる。
【0043】
該アセタール化反応において、エチレングリコール(10)の使用量は、経済性の観点から、1-ハロ-4-オクタノン化合物(9)1モルに対して、好ましくは0.8~2.0モル、より好ましくは0.9~1.7モル、更に好ましくは1.0~1.5モルである。
【0044】
該アセタール化反応には、必要に応じて、酸を用いてもよい。
該酸としては、塩酸、硫酸及び硝酸等の鉱酸;ギ酸及びシュウ酸等のカルボン酸;ベンゼンスルホン酸及び-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;並びに、三塩化アルミニウム、アルミニウム=エトキシド、アルミニウム=イソプロポキシド、酸化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫=ジメトキシド、ジブチル錫=オキシド、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド及び酸化チタン(IV)等のルイス酸が挙げられ、反応性の観点からベンゼンスルホン酸及び-トルエンスルホン酸が好ましい。
該酸は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
該酸を使用する場合、該酸の使用量は、1-ハロ-4-オクタノン化合物(9)1モルに対して、反応性及び経済性の観点から、好ましくは0.0001~1.00モル、より好ましくは0.0005~0.5モル、更に好ましくは0.001~0.1モルである。
【0045】
該アセタール化反応には、必要に応じてオルトギ酸トリアルキルを用いても良い。
オルトギ酸トリアルキルとしては、オルトギ酸トリメチル及びオルトギ酸トリエチルが挙げられ、オルトギ酸トリメチルが好ましい。
該オルトギ酸トリアルキルを使用する場合、該オルトギ酸トリアルキルの使用量は、1-ハロ-4-オクタノン化合物(9)1モルに対して、反応性及び経済性の観点から、好ましくは0.8~2.00モル、より好ましくは0.9~1.7モル、更に好ましくは1.0~1.5モルである。
【0046】
該アセタール化反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、一般的な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;-ジメチルホルムアミド(DMF)、-ジメチルアセトアミド(DMAC)、-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒が挙げられるが、反応性の観点から、トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒;並びに、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒が好ましく、ヘキサン、トルエン及びキシレンがより好ましく、トルエン及びキシレンが更に好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、1-ハロ-4-オクタノン化合物(9)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000g、更に好ましくは100~1000gである。
【0047】
該アセタール化反応における反応温度は、反応性の観点から、好ましくは0~120℃、より好ましくは10~100℃、更に好ましくは40~80℃である。
該アセタール化反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0048】
<II> 下記一般式(7)で表される2,7-ジアセトキシウンデカンの製造方法について
本発明の目的化合物の一つである、下記一般式(7)で表される2,7-ジアセトキシウンデカンは、下記の化学反応式で示される製造方法に従って調製される。すなわち、5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)のアセタールを脱保護し、10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)を合成する。続いて、該10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)のケトン部位のみを還元剤で選択的に還元することで10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)を合成する。次に、該10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)の水酸基をアセチル化剤でアセチル化することで2,7-ジアセトキシウンデカン(7)を合成する。
【0049】
【化14】
【0050】
(iv)まず、上記10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)の製造方法について説明する。
10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)は5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)を酸又は過酸化物でアセタールを脱保護することにより調製することができる。
【0051】
【化15】
【0052】
脱保護反応は、例えば、酸又は過酸化物の存在下で行われることができる。具体的には、該脱保護反応は、例えば、(1)酸を用いた交換反応、(2)酸加水分解反応、又は(3)過酸化物等を用いた酸化反応で行うことができる。
酸を用いた交換反応及び酸加水分解反応における酸としては、塩酸、硫酸及び硝酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸等のカルボン酸;ベンゼンスルホン酸及び-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;並びに、三塩化アルミニウム、アルミニウム=エトキシド、アルミニウム=イソプロポキシド、酸化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫=ジメトキシド、ジブチル錫=オキシド、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド及び酸化チタン(IV)等のルイス酸が挙げられ、反応性の観点からベンゼンスルホン酸及び-トルエンスルホン酸が好ましい。
該酸は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
該酸を使用する場合、該酸の使用量は、5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)1モルに対して、反応性及び経済性の観点から、好ましくは0.0001~1.00モル、より好ましくは0.0005~0.5モル、更に好ましくは0.001~0.1モルである。
過酸化物等を用いた酸化反応における過酸化物としては、過塩素酸(HClO)、tert-ブチルヒドロペルオキシド(-BuOOH)及び2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)等が挙げられる。
【0053】
該脱保護反応には、上述の酸とともに、必要に応じて水を更に用いてもよい。該水の使用量は、5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは0超~7000g、より好ましくは10~3000g、更に好ましくは18~1000gである。
【0054】
該脱保護反応には、上述の酸又は水とともに、必要に応じて溶媒を更に用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;-ジメチルホルムアミド(DMF)、-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、アセトン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル及び酢酸n-ブチル等のエステル系溶媒;並びに、メタノール及びエタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられ、反応性の観点から-ジメチルホルムアミド(DMF)、-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、アセトン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒が好ましく、γ-ブチロラクトン(GBL)及びアセトンがより好ましく、アセトンが更に好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒を使用する場合、該溶媒の使用量は、5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは0超~7000g、より好ましくは50~3000g、更に好ましくは100~1500gである。
【0055】
該脱保護反応における反応温度は、用いる酸及び/又は溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは-15~180℃、より好ましくは5~120℃、更に好ましくは40~80℃である。
該脱保護反応における反応時間は、用いる酸、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.5~100時間である。
【0056】
(v)次に、上記10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)の製造方法について説明する。
10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)は、10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)を還元剤で還元することにより調製することができる。
【0057】
【化16】
【0058】
還元剤としては、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム及び水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素アルカリ金属塩;水素化ホウ素マグネシウム及び水素化ホウ素カルシウム等の水素化ホウ素アルカリ土類金属塩;シアノ水素化ホウ素リチウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム及びシアノ水素化ホウ素カリウム等のシアノ水素化ホウ素アルカリ金属塩;シアノ水素化ホウ素マグネシウム及びシアノ水素化ホウ素カルシウム等のシアノ水素化ホウ素アルカリ土類金属塩;水素化トリ-sec-ブチルホウ素ナトリウム及び水素化トリ-sec-ブチルホウ素リチウム等の水素化トリ-sec-ブチルホウ素アルカリ金属塩;並びに、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-Al)及び水素化アルミニウムリチウム等が挙げられ、選択的還元の観点から、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素リチウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム及びシアノ水素化ホウ素カリウムが好ましく、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムがより好ましく、水素化ホウ素ナトリウムが更に好ましい。
還元剤は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。市販の還元剤を用いることができる。
還元剤の使用量は、用いる還元剤により異なるが、反応性の観点から、10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)1モルに対して、好ましくは0.25~5.0モルであり、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合は、10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)1モルに対して、好ましくは0.25~5.0モルであり、より好ましくは0.35~3.0モル、更に好ましくは0.5~1.5モルである。
【0059】
還元反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;-ジメチルホルムアミド(DMF)、-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、アセトン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル及び酢酸n-ブチル等のエステル系溶媒;メタノール及びエタノール等のアルコール系溶媒;並びに、水等が挙げられる。
用いる還元剤に応じて適切な溶媒を選択すればよく、例えば、水素化ホウ素アルカリ金属塩を還元剤として用いる場合においては、エタノール等のアルコール系溶媒、又はアルコール系溶媒とそれ以外の溶媒との混合溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒を使用する場合、該溶媒の使用量は、10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは0超~7000g、より好ましくは50~3000g、更に好ましくは100~1500gである。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。市販の溶媒を用いることができる。
【0060】
還元反応には、必要に応じて塩基を用いてもよい。該塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩等が挙げられる。取扱いの観点から、例えば還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属塩を使用する場合は、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムがより好ましく、水酸化ナトリウムが更に好ましい。
塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。市販の塩基を用いることができる。
なお、塩基が固体である場合においては、固体のまま反応混合物に加えてもよいし、又は還元反応に用いる溶媒に予め溶かしてもよい。
塩基の使用量は、反応性の観点から、10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)1モルに対して、好ましくは0超~10.00モル、より好ましくは0.0001~1.0モル、更に好ましくは0.001~0.1モルである。
【0061】
該還元反応における反応温度は、用いる還元剤により異なるが、反応性の観点から、好ましくは-15~180℃、より好ましくは0~100℃、更に好ましくは10~60℃である。
該還元反応における反応時間は、用いる還元剤、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.5~100時間である。
【0062】
10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)は10位の水酸基をアセチル基で保護されており、2,7-ウンデカンジオールの様なジオールに比べて脂溶性が上がっている。そのため、多量の抽出溶媒を用いずとも水層にロスすることがなく、収率良く回収することが可能である。
【0063】
(vi)2,7-ジアセトキシウンデカン(7)及びその製造方法について
2,7-ジアセトキシウンデカン(7)の製造方法について以下に説明する。
2,7-ジアセトキシウンデカン(7)は、上記の10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)をアセチル化することにより調製することができる。
【0064】
【化17】
【0065】
該アセチル化反応は、例えば、アセチル化剤を用いて水酸基をアセチル化する方法によって行うことができる。
該アセチル化剤としては、酢酸;無水酢酸等の酸無水物;アセチル=クロリド、アセチル=ブロミド及びアセチル=ヨージド等のアセチル=ハライド化合物;並びに、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル及び酢酸ヘキシル等の酢酸エステル化合物が挙げられる。
該アセチル化剤としては、反応性の観点から、酸無水物又はアセチル=ハライド化合物が好ましく、酸無水物がより好ましく、無水酢酸が更に好ましい。
該アセチル化剤の使用量は、10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)1モルに対して、反応性及び経済性の観点から、好ましくは0.8~15.0モル、より好ましくは1.0~10.0モル、更に好ましくは1.2~3.0モルである。
【0066】
該アセチル化には、必要に応じて、酸又は塩基を用いてもよい。
該酸としては、塩酸、硫酸及び硝酸等の鉱酸;ベンゼンスルホン酸及び-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;並びに、三塩化アルミニウム、アルミニウム=エトキシド、アルミニウム=イソプロポキシド、酸化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫=ジメトキシド、ジブチル錫=オキシド、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド及び酸化チタン(IV)等のルイス酸が挙げられる。
該酸は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
該酸を使用する場合、該酸の使用量は、10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)1モルに対して、反応性及び経済性の観点から、好ましくは0超~3.0モル、より好ましくは0.001~1.5モル、更に好ましくは0.01~1.0モルである。
【0067】
該塩基としては、下記の化合物が挙げられる;
トリメチルアミン、トリエチルアミン及び-ジイソプロピルエチルアミン等のトリアルキルアミン化合物;
ピペリジン、ピロリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)等の環状アミン化合物;
ピリジン、ルチジン、-ジメチルアニリン、-ジエチルアニリン、-ジブチルアニリン及び4-ジメチルアミノピリジン等の芳香族アミン化合物;
ナトリウム=メトキシド、ナトリウム=エトキシド、ナトリウム=t-ブトキシド、ナトリウム=t-アミロキシド、リチウム=メトキシド、リチウム=エトキシド、リチウム=t-ブトキシド、リチウム=t-アミロキシド、カリウム=メトキシド、カリウム=エトキシド、カリウム=t-ブトキシド及びカリウム=t-アミロキシド等の金属アルコキシド類;
メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、ヘプチルリチウム、オクチルリチウム、ノニルリチウム及びデシルリチウム等のアルキルリチウム;
メチルマグネシウム=クロリド、メチルマグネシウム=ブロミド及びメチルマグネシウム=ヨージド、エチルマグネシウム=クロリド、エチルマグネシウム=ブロミド及びエチルマグネシウム=ヨージド、プロピルマグネシウム=クロリド、プロピルマグネシウム=ブロミド及びプロピルマグネシウム=ヨージド、ブチルマグネシウム=クロリド、ブチルマグネシウム=ブロミド及びブチルマグネシウム=ヨージド、ペンチルマグネシウム=クロリド、ペンチルマグネシウム=ブロミド及びペンチルマグネシウム=ヨージド、ヘキシルマグネシウム=クロリド、ヘキシルマグネシウム=ブロミド及びヘキシルマグネシウム=ヨージド、ヘプチルマグネシウム=クロリド、ヘプチルマグネシウム=ブロミド及びヘプチルマグネシウム=ヨージド、オクチルマグネシウム=クロリド、オクチルマグネシウム=ブロミド及びオクチルマグネシウム=ヨージド、ノニルマグネシウム=クロリド、ノニルマグネシウム=ブロミド及びノニルマグネシウム=ヨージド、デシルマグネシウム=クロリド、デシルマグネシウム=ブロミド及びデシルマグネシウム=ヨージド等のグリニャール試薬;
リチウム=アセチリド、ナトリウム=アセチリド、カリウム=アセチリド、カルシウム=アセチリド及びシルバー=アセチリド等の金属アセチリド;並びに、
炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウム等の無機金属塩。
該塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
該塩基を使用する場合、該塩基の使用量は、10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)1モルに対して、反応性及び経済性の観点から、好ましくは0超~10.0モル、より好ましくは0.01~5.0モル、更に好ましくは0.1~3.0モルである。
【0068】
該アセチル化には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム及びヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)等の極性溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;並びに、トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該アセチル化は、必要に応じて溶媒を用いてもよいが、無溶媒で反応を行ってもよい。
該溶媒を使用する場合、該アセチル化に用いる溶媒の使用量は、上記10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)1モルに対して、好ましくは0超~5000g、より好ましくは30~2000g、更に好ましくは70~1000gである。
【0069】
該アセチル化における反応温度は、用いるアセチル化剤及び/又は溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは-40~120℃、より好ましくは-20~100℃、更に好ましくは0~80℃である。
該アセチル化における反応時間は、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0070】
以上のようにして、本発明に従うと、合成中間体である5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)を簡便かつ効率的に製造することができる。また、本発明に従うと、5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)から、Pear gall midge(学名:Contarinia pyrivora)の性フェロモンである2,7-ジアセトキシウンデカン(7)を短工程で、生産性高く、しかも効率良く製造することができる。すなわち、目的化合物を選択的に合成することができるためカラムクロマトグラフィー等による分離精製を必要とせずに、効率的に2,7-ジアセトキシウンデカン(7)を製造することができる。
【0071】
[実施例]
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、以下において、「純度」は、特に明記しない限り、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって得られた面積百分率を示し、「生成比」はGC分析によって得られた面積百分率の相対比を示す。また、「収率」はGC分析によって得られた面積百分率を基に算出した。
各実施例において、反応のモニタリング及び収率の算出は、次のGC条件に従って行った。
GC条件:GC:島津製作所 キャピラリガスクロマトグラフ GC-2014,カラム:DB-5,0.25μmx0.25mmφx30m,キャリアーガス:He(1.55mL/分)、検出器:FID,カラム温度:150℃ 5℃/分昇温 230℃。
【0072】
収率は、原料及び生成物の純度(%GC)を考慮して、以下の式に従い計算した。
収率(%)={[(反応によって得られた生成物の重量×%GC)/生成物の分子量]
÷[(反応における出発原料の重量×%GC)/出発原料の分子量]}×100
なお、THFはテトラヒドロフラン、OFEはオルトギ酸トリエチル及び2-MeTHFは2-メチルテトラヒドロフラン、-TsOHは-トルエンスルホン酸、AcOは無水酢酸を表す。
【0073】
[実施例1]
2-ブチル-2-(3-クロロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8:X=Cl)の製造
【0074】
【化18】
【0075】
室温で、反応器に2-ブチル-2-(3-クロロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(9:X=Cl)(793.15g、4.78モル(mol)、純度98.07%)、エチレングリコール(10)(326.50g、5.26モル、純度100%)、-トルエンスルホン酸一水和物(1.65g、0.0087モル、純度100%)及びトルエン(1653.81g)を加えて、60~70℃にて32分間撹拌した。次に、該反応器にオルトギ酸トリメチル(558.21g、5.26モル、純度100%)を60~70℃にて滴下した。滴下終了後、60~70℃にて3.5時間撹拌した。次に、内温を10~20℃に冷却後反応液に25質量%水酸化ナトリウム水溶液(700.00g)を加えて分液し、有機層を25質量%水酸化ナトリウム水溶液(10.00g)、水(100.00g)を加えて混合し、次に分液し、そして、得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、2-ブチル-2-(3-クロロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8:X=Cl)(940.84g、4.38モル、純度96.32%、b.p.=110.5~113.7℃/0.044kPa(0.33mmHg))が収率91.69%で得られた。
【0076】
上記で得られた2-ブチル-2-(3-クロロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8:X=Cl)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.89(3H,t,J=7.3Hz),1.26-1.37(4H,m),1.52-1.61(2H,m),1.72-1.77(2H,m),1.81-1.88(2H,m),3.55(2H,t,J=6.9Hz),3.91-3.94(4H,m);13C-NMR(125MHz,CDCl):δ=14.01,22.94,25.95,27.15,34.27,36.99,45.30,64.91,111.30
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 207(M+1),149,129,105,77,57
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2957,2874,1461,1445,1314,1083,1045,948,887,652
【0077】
[実施例2]
[3-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル]クロロマグネシウム(2:X=Cl)の製造
【0078】
【化19】
【0079】
室温で、反応器にマグネシウム(35.72g、1.47グラム原子)及びテトラヒドロフラン(770.00g)を加えて、55~60℃にて38分間撹拌した。次に、該反応器に実施例1で製造した2-ブチル-2-(3-クロロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8:X=Cl)(300.45g、1.40モル、純度96.32%)を内温55~60℃にて滴下した。滴下終了後、50~60℃にて2時間撹拌することにより、[3-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル]クロロマグネシウム(2:X=Cl)を調製した。
【0080】
上記で得られた[3-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル]クロロマグネシウム(2:X=Cl)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=-0.72(2H,t,J=7.2Hz),0.83(3H,t,J=7.2Hz),1.19-1.38(4H,m),1.40-1.63(6H,m),3.75-3.88(4H,m);13C-NMR(125MHz,CDCl):δ=7.76,14.24,23.66,24.29,26.80,36.21,44.29,64.73,67.21,113.76
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=1365,1033,950,516
【0081】
[実施例3]
5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)の製造
【0082】
【化20】
【0083】
次に、実施例2で製造した[3-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル]クロロマグネシウム(2:X=Cl)が入っている反応器に塩化第一銅(CuCl)(0.29g、0.0027モル、純度95%)を内温0~10℃で加えて19分間撹拌した。続いて、0~20℃にて、プロピレン=オキシド(3)(93.51g、1.61モル、純度100%)を滴下した。滴下終了後、15~25℃にて2.5時間撹拌した。次に、反応液に無水酢酸(4)(164.36g、1.61モル、純度100%)を20~60℃で滴下し、滴下終了後1.5時間30~35℃で撹拌した。次に、酢酸水溶液(酢酸(164.36g)と水(541.33g))を加えて分液し、そして、得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)(347.47g、1.17モル、純度91.90%、b.p.=115.8~138.5℃/0.056kPa(0.42mmHg))が収率83.75%で得られた。
【0084】
上記で得られた5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.88(3H,t,J=6.9Hz),1.18(3H,d,J=6.5Hz),1.23-1.39(8H,m),1.41-1.61(7H,m),2.00(3H,s),3.90(3H,s),4.86(1H,tq,J=6.2Hz,6.2Hz);13C-NMR(125MHz,CDCl):δ=14.01,19.88,21.32,22.96,23.64,25.66,25.99,35.86,36.84,36.98,64.86,70.96,111.70,170.71
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 241(M-31),215,155,129,99,57,43
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2945,2872,1737,1465,1372,1245,1079,1024,949
【0085】
[実施例4]
10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)の製造
【0086】
【化21】
【0087】
室温で、反応器に実施例3で製造した5-(2-ブチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-1-メチルペンチル=アセテート(1)(334.20g、1.13モル、純度91.90%)、水(40.63g、2.26モル)、アセトン(600.00g)及び-トルエンスルホン酸一水和物(2.15g、0.011モル)を加えて、60~65℃にて2.5時間撹拌した。次に、内温を10~20℃に冷却後、反応液に25質量%水酸化ナトリウム水溶液(3.24g)を加えて減圧下で濃縮しアセトンを除去し、得られた有機層を炭酸水素ナトリウム(3.12g)と水(156.00g)で洗浄後分液し、そして、得られた有機層を減圧下で再度濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)(269.86g、1.10モル、純度92.65%、b.p.=120.0~129.0℃/0.39kPa(2.9mmHg))が収率97.04%で得られた。
【0088】
上記で得られた10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=;0.88(3H,t,J=7.3Hz),1.17(3H,d,J=6.1Hz),1.28(4H,sext-like,J=7.3Hz),1.40-1.61(6H,m),2.00(3H,s),2.37(4H,q-like,J=7.3Hz),4.86(1H,tq,J=6.1Hz,6.1Hz)13C-NMR(125MHz,CDCl):δ=13.79,19.88,21.29,22.31,23.54,25.01,25.92,35.67,42.47,42.50,70.71,170.68,211.09
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 228(M),186,168,153,139,126,111,97,85,69,57,43
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2936,2872,1735,1715,1463,1372,1245,1131,1023
【0089】
[実施例5]
10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)の製造
【0090】
【化22】
【0091】
室温で、反応器に水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)(24.49g、0.65モル、純度100%)、エタノール(EtOH)(118.26g)、25質量%水酸化ナトリウム水溶液(NaOHaq.)(4.08g)、水(95.17g)を加えて、20~25℃にて4分間撹拌した。次に、該反応器に実施例4で製造した10-アセトキシ-5-ウンデカノン(5)(265.96g、1.08モル、純度92.65%)とトルエン(118.26g)の混合液を25~40℃にて滴下した。滴下終了後、30~40℃にて3時間撹拌した。次に、反応液から水層を分離し、得られた有機層に酢酸水溶液(酢酸(12.08g)及び水(120.77g))を加えて混合し、次に分液し、そして、得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、生成物として、10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)(256.54g、1.01モル、純度90.87%、b.p.=121.0~132.9℃/0.24kPa(1.8mmHg))が収率93.80%で得られた。得られた生成物には、10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)とともに数%の2,7-ジアセトキシウンデカン(7)が含まれていた。
【0092】
上記で得られた10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.89(3H,t,J=7.3Hz),1.19(3H,d,J=6.1Hz),1.23-1.63(14H,m),1.61(1H,br.s),2.01(3H,s),3.52-3.62(1H,m),4.84-4.92(1H,m);13C-NMR(125MHz,CDCl):δ=14.02,19.90,19.93,21.32,22.71,25.40,25.44,27.79,35.85,35.88,37.17,37.25,70.89,70.92,71.72,71.78,170.79
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 213(M-17),129,113,95,69,56,43
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=3420,2933,2860,1738,1717,1464,1373,1245,1127,1023
【0093】
[実施例6]
2,7-ジアセトキシウンデカン(7)の製造
【0094】
【化23】
【0095】
室温で、反応器に実施例5で製造した10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)(253.64g、1.00モル、純度90.87%)、ピリジン(166.28g、2.10モル、純度100%)及びトルエン(109.71g)を加えて、20~30℃にて2分間撹拌した。次に、該反応器に無水酢酸(AcO)(183.95g、1.80モル、純度100%)を25~35℃にて滴下した。滴下終了後、30~35℃にて19時間撹拌した。次に、反応液に水(268.89g)を加えて分液し、そして、得られた有機層に食塩(8.07g)、炭酸水素ナトリウム(10.13g)及び水(101.12g)を加えて混合し、次に分液し、そして、得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、2,7-ジアセトキシウンデカン(7)(301.84g、1.07モル、純度96.65%、b.p.=126.1~132.1℃/0.043kPa(0.32mmHg))が収率107.00%で得られた。原料には、10-アセトキシ-5-ウンデカノール(6)とともに2,7-ジアセトキシウンデカン(7)が含まれていたため(実施例5)、実施例5及び実施例6の2工程収率を算出すると99.26%であった。
【0096】
上記で得られた2,7-ジアセトキシウンデカン(7)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.87(3H,t,J=7.3Hz),1.18(3H,d,J=6.1Hz),1.20-1.39(8H,m),1.39-1.60(6H,m),2.00(3H,s),2.02(3H,d,J=0.8Hz),4.80-4.90(2H,m);13C-NMR(125MHz,CDCl):δ=13.92,19.88,19.91,21.20,21.30,22.54,25.11,25.25,27.43,33.76,33.78,33.96,35.75,35.77,70.80,74.13,74.16,170.69,170.85
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 273(M+1),129,113,95,68,43
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2936,2862,1737,1373,1243,1022
【0097】
[参考例1]
2-(1-ブチルシクロブタン-1-イルオキシ)エタノール(11)の製造
【0098】
【化24】
【0099】
室温で、反応器にマグネシウム(Mg)(1.07g、0.044グラム原子)及び2-メチルテトラヒドロフラン(12.00g)を加えて、60~65℃にて22分間撹拌した。次に、該反応器に実施例1で製造した2-ブチル-2-(3-クロロプロピル)-1,3-ジオキソラン化合物(8:X=Cl)(8.58g、0.040モル、純度96.32%)を60~65℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃にて3時間、95~100℃にて3時間撹拌した。次に、塩化アンモニウム水溶液(塩化アンモニウム(NHCl)(1.00g)と水(40.00g))、20質量%塩酸(10.00g)を加えて分液し、そして、得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、2-(1-ブチルシクロブタン-1-イルオキシ)エタノール(11)(5.26g、0.028モル、純度91.81%、b.p.=85.0~96.0℃/0.45kPa(3.4mmHg))が収率70.09%で得られた。
【0100】
上記で得られた2-(1-ブチルシクロブタン-1-イルオキシ)エタノール(11)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.91(3H,t,J=7.3Hz),1.23-1.37(4H,m),1.51-1.63(3H,m),1.69-1.78(1H,m),1.83-1.90(2H,m),2.05(2H,dq,J=2.7Hz,9.6Hz),2.22(1H,br.s),3.33(2H,t,J=4.6Hz),3.69(2H,t,J=4.6Hz);13C-NMR(125MHz,CDCl):δ=12.58,14.09,23.01,25.05,32.01,34.93,62.10,62.47,79.29
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 172(M),157,143,129,115,102,83,71,59,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=3423,2957,2932,2862,1459,1256,1054,963,891