IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社湯山製作所の特許一覧

<>
  • 特開-装置 図1
  • 特開-装置 図2
  • 特開-装置 図3
  • 特開-装置 図4
  • 特開-装置 図5
  • 特開-装置 図6
  • 特開-装置 図7
  • 特開-装置 図8
  • 特開-装置 図9
  • 特開-装置 図10
  • 特開-装置 図11
  • 特開-装置 図12
  • 特開-装置 図13
  • 特開-装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025161730
(43)【公開日】2025-10-24
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20251017BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025008581
(22)【出願日】2025-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2024064955
(32)【優先日】2024-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小田 夏子
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047JJ07
4C047JJ08
4C047JJ25
4C047JJ26
4C047JJ31
4C047KK01
4C047KK25
4C047KK28
4C047KK32
(57)【要約】
【課題】有効期限に基づく薬剤の払出し制御を行うことができる。
【解決手段】薬剤払出装置(1)は、対象薬剤に対して指定された服用期間の最終日を特定する特定部(211)と、薬剤払出装置に保管されている薬剤の有効期限を記憶する記憶部(22)から、対象薬剤の有効期限を取得する取得部(212)と、取得部が取得した有効期限と特定部が特定した最終日との関係が所定の条件を満たすかを判定する判定部(213)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤保管装置から払出すか又は取出しを可能とするかどうかの判断の対象となる対象薬剤に対して指定された服用期間の最終日を取得する第1取得部と、
前記薬剤保管装置に保管されている薬剤の有効期限を記憶する記憶装置から、前記対象薬剤の有効期限を取得する第2取得部と、
前記第2取得部が取得した前記有効期限と前記第1取得部が取得した前記最終日との関係が、所定の条件を満たすかを判定する判定部と、を備える装置。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記第2取得部が取得した前記有効期限が前記最終日よりも前であるか、前記最終日以前であるか、又は、前記最終日より後の指定日以前である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2取得部が取得した前記有効期限が前記所定の条件を満たすと前記判定部が判定した場合、前記対象薬剤を前記薬剤保管装置から払出さない薬剤又は取出し不可の薬剤として決定する決定部を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記決定部が前記薬剤保管装置から払出さない薬剤又は取出し不可の薬剤として決定した前記対象薬剤に関する情報を、前記対象薬剤の払出し若しくは取出しが可能な第1装置、及び、前記対象薬剤を保管する箇所からの取出しを補助する第2装置の少なくとも何れかに送信する送信部を備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記決定部が前記薬剤保管装置から払出さない薬剤又は取出し不可の薬剤として決定した前記対象薬剤を、前記薬剤保管装置から払出さないこと又は取出し不可であることを報知する報知部を備える、請求項3又は4に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤保管装置からの薬剤の払出し又は取出し可否を制御する装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、PTP(Press Through Package)シート又はブリスター包装シート等の薬剤シートを払出す薬剤払出装置の一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6690541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の薬剤払出装置では、有効期限を用いた払出しの制御については記載されていない。
【0005】
本開示の一態様は、有効期限に基づく薬剤の払出し又は取出し可否の制御を行うことが可能な装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る装置は、薬剤保管装置から払出すか又は取出しを可能とするかどうかの判断の対象となる対象薬剤に対して指定された服用期間の最終日を取得する第1取得部と、前記薬剤保管装置に保管されている薬剤の有効期限を記憶する記憶装置から、前記対象薬剤の有効期限を取得する第2取得部と、前記第2取得部が取得した前記有効期限と前記第1取得部が取得した前記最終日との関係が所定の条件を満たすかを判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、有効期限に基づく薬剤の払出し又は取出し可否の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る薬剤払出システムの一例を示すブロック図である。
図2】薬剤払出装置の外観の一例を示す正面図である。
図3】薬剤取出可能装置の外観の一例を示す斜視図である。
図4】薬剤払出装置が払出すジャーナルの一例を示す図である。
図5】薬剤払出装置の制御部による処理の一例を示すフローチャートである。
図6】薬剤払出装置のタッチパネルに表示される薬剤の充填画像の一例を示す図である。
図7】別の実施形態に係る薬剤払出システムの一例を示すブロック図である。
図8】薬剤払出装置が備えるカセットの一例を示す模式図である。
図9】薬剤払出装置のタッチパネルに表示される充填画像の一例を示す図である。
図10】薬剤に付されたバーコードとカセットに付されたバーコードとの照合時に、薬剤払出装置のタッチパネルに表示される充填画像の一例を示す図である。
図11】薬剤払出装置の印刷部が薬剤に関する情報と共にバーコードを印刷したジャーナルの一例である。
図12】別実施形態に係る薬剤払出装置の一例を概略的に示す模式図である。
図13】上記薬剤払出装置の一例を概略的に示す模式図である。
図14】第2照明部における薬剤シートの位置を模式的に示す平面図、及び、特定された薬剤シートの切断位置の一例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
<薬剤払出システム>
図1は、本実施形態の薬剤払出システム100の一例を示すブロック図である。薬剤払出システム100は、薬剤の払出しを可能とするシステムであり、例えば、薬剤払出装置1、補助装置2及び薬剤取出可能装置3を備える。薬剤払出システム100は、補助装置2及び薬剤取出可能装置3の何れか一方を備える構成であってもよい。
【0010】
(薬剤払出装置)
薬剤払出装置1は、薬剤払出装置1に保管されている薬剤を払出す装置である。薬剤払出装置1は、上位システム(不図示)から受信する処方データに基づき、自装置に保管している薬剤の中から、処方された薬剤を払出す。処方データには、例えば、患者識別情報(例えば、患者に付与された番号(患者ID)、及び、患者名等)に対応付けられた、患者に処方された薬剤の種類を示す情報(例:薬剤識別情報)が含まれている。また、処方データには、例えば、薬剤識別情報に対応付けられた、薬剤の個数、及び、薬剤の服用期間(処方日数)を示す情報が含まれている。
【0011】
本実施形態では、薬剤払出装置1は、薬剤シートに収容された状態の薬剤(錠剤)を保管する。薬剤払出装置1は、薬剤を保管する薬剤保管装置の一例である。そのため、薬剤払出装置1は、規定された形状の薬剤シートの全体(フルシート)、又は、その一部の切欠いた端数シートを払出す。薬剤シートは、PTPシートであってよい。但し、薬剤払出装置1には、薬剤シートに収容された状態で薬剤が保管されていなくてもよい。薬剤払出装置1に保管される薬剤は、錠剤に限らず、例えば、散薬、軟膏若しくは目薬等の外用薬、又は、注射薬等であってよい。また、薬剤払出装置1に保管される薬剤は、薬剤シートに限らず、例えば、ボトル、チューブ、瓶、筒状のフィルム、又は、箱等に収容されていてもよい。筒状のフィルムにより薬剤を収容した包装形態は、ピロー包装とも称される。
【0012】
図2は、薬剤払出装置1の外観の一例を示す正面図である。図2に示すように、薬剤払出装置1は、例えば、カセット棚11、タッチパネル12、及び、バーコードリーダ13を備える。
【0013】
カセット棚11は、薬剤払出装置1に保管される薬剤を保管する保管棚の一例として、当該薬剤を収容する複数のカセットCa1を保管するカセット棚である。1つのカセットCa1には1種類の薬剤が収容される。図2に示すように、薬剤払出装置1には、トレイ120がセットされている。本実施形態では、薬剤払出装置1は、カセットCa1に収容されている払出対象の薬剤を、カセットCa1からトレイ120に払出す。
【0014】
タッチパネル12は、各種情報を表示する表示装置として機能する共に、ユーザによる入力操作を受付ける入力装置として機能する。
【0015】
バーコードリーダ13は、バーコードを読取る読取装置である。バーコードリーダ13は、薬剤に付された薬剤識別情報を示すバーコードを読取ることができる。当該バーコードは、例えば、薬剤シート又は薬剤箱等、薬剤を収容する包装物に付されている。また、バーコードリーダ13は、カセットに付されたカセット識別情報を示すバーコードを読取ることができる。
【0016】
薬剤払出装置1は、図1に示すように、例えば、印刷部14、通信部15、制御部21、及び、記憶部22を備える。
【0017】
印刷部14は、薬剤払出装置1が払出した薬剤に関する情報を印刷する印刷装置である。薬剤に関する情報には、例えば、患者識別情報、調剤日、薬剤名、払出数等が含まれる。印刷部14は、薬剤払出装置1が払出した薬剤に関する情報を印刷したジャーナル(調剤記録紙)を払出す。印刷部14は、ジャーナルを、薬剤払出装置1が薬剤を払出したトレイ120に払出す。
【0018】
通信部15は、外部装置と通信する通信装置である。本実施形態では、通信部15は、補助装置2及び薬剤取出可能装置3と通信可能に接続される。通信部15は、例えば、薬剤払出装置1が払出しできないと判定した薬剤に関する情報(例えば、薬剤識別情報、及び、薬剤払出装置1が払出すべきであった個数を示す情報)を、補助装置2又は薬剤取出可能装置3に送信する。なお、補助装置2及び薬剤取出可能装置3もまた、外部装置と通信する通信部を有する。
【0019】
制御部21は、薬剤払出装置1を統括的に制御する制御装置である。記憶部22は、例えば、制御部21が使用する各種プログラム、及び、上述した各種情報を記憶している。制御部21の詳細については後述する。
【0020】
その他、薬剤払出装置1は、例えば、カセットCa1から薬剤を取出しトレイ120に払出す払出機構(不図示)を備える。払出機構は、トレイ120への払出位置にカセットCa1を搬送する搬送機構(不図示)を備えていてもよい。搬送機構は、カセットCa1から取出した薬剤を、トレイ120まで搬送するものであってもよい。また、薬剤払出装置1は、フルシートを切断し端数シートを生成する切断部を備える。切断部は、薬剤シートを切断可能な部材で構成されていればよく、例えば、ハサミ、又は、レーザ若しくは超音波を照射する照射部で実現されていてもよい。
【0021】
また、薬剤払出装置1としては、薬剤としての錠剤を収容するカセットCa1を保管するカセット棚11と、少なくとも1つのカセットCa1から払出された薬剤を分包する分包部(不図示)と、を備える錠剤分包機であってもよい。この場合、薬剤払出装置1は、カセットCa1に収容されている払出対象の錠剤を分包した状態で払出す。薬剤払出装置1が錠剤分包機である場合、薬剤払出装置1は、上述の払出機構、搬送機構および切断部もトレイ120も備えていなくてよい。また、印刷部14は、薬剤払出装置1が払出す薬剤に関する情報を、当該薬剤を収容する薬包に印刷する機能を有していてよい。また、印刷部14は、ジャーナルをトレイ120に払出さず、ジャーナルの少なくとも一部を薬剤払出装置1の筐体の外部に送り出せばよい。
【0022】
(補助装置)
補助装置2は、薬剤を保管する箇所からの薬剤の取出しを補助する第2装置の一例である。薬剤を保管する箇所は、例えば、薬剤を保管する薬剤棚(不図示)である。これに限らず、薬剤を保管する箇所は、薬剤を保管する装置であってもよい。補助装置2は、例えば、薬剤払出装置1及び/又は薬剤取出可能装置3から送信された薬剤に関する情報を報知する。これにより、ユーザは、薬剤払出装置1から払出されなかった薬剤、又は、薬剤取出可能装置3から取出されなかった薬剤を、薬剤棚から取出すことができる。補助装置2は、例えば、スマートフォンおよびタブレット等の携帯型端末で実現される。
【0023】
補助装置2は、薬剤棚において薬剤を収容するカセットに付されたバーコードを読取る読取装置として機能してもよい。当該バーコードは、例えば、カセットが収容対象とする薬剤の薬剤識別情報を示す。そのため、補助装置2は、当該バーコードを読取ることにより、カセットに収容された薬剤の種類を示す情報を、自装置の表示部に表示させることができる。
【0024】
また、薬剤払出装置1から払出されるジャーナルに、薬剤払出装置1から払出された薬剤に関する情報を示すバーコードが印刷されている場合、補助装置2は、当該バーコードを読取ってもよい。この場合、補助装置2は、カセットに付されたバーコードと、ジャーナルに付されたバーコードとを照合し、薬剤棚から取出そうとしている薬剤が適切な薬剤であるかを報知してもよい。薬剤取出可能装置3から払出されるジャーナルに、薬剤取出可能装置3から取出された薬剤に関する情報を示すバーコードが付されている場合も、補助装置2は同様の処理を行うことができる。
【0025】
(薬剤取出可能装置)
薬剤取出可能装置3は、薬剤を保管すると共に、薬剤の充填及び取出しを可能とする装置である。薬剤取出可能装置3は、薬剤を保管する薬剤保管装置の一例である。また、薬剤取出可能装置3は、薬剤の取出しが可能な第1装置の一例である。図3は、薬剤取出可能装置3の外観の一例を示す斜視図である。図3の符号1001は、薬剤取出可能装置3を前方から見たときの斜視図であり、符号1002は、薬剤取出可能装置3を後方から見たときの斜視図である。
【0026】
図3に示すように、薬剤取出可能装置3は、例えば、本体ユニット31と、ピッキングユニット32と、を備える。その他、薬剤取出可能装置3は、本体ユニット31の内部、及び、ピッキングユニット32の内部で薬剤を搬送する(本実施形態ではカセットCa2を搬送する)搬送機構を備える。
【0027】
本体ユニット31は、薬剤を保管するユニットである。本体ユニット31には、病院又は薬局等の1施設での使用が想定されている種類(例:約1500~2000種類)の薬剤を保管することが可能である。本体ユニット31には、例えば、錠剤、散薬、軟膏若しくは目薬等の外用薬、又は、注射薬等が保管される。本体ユニット31に保管される薬剤は、PTPシート等の薬剤シート、ボトル、チューブ、瓶、筒状のフィルム、又は、箱等に収容されていてもよい。
【0028】
本実施形態では、本体ユニット31は、薬剤を保管する保管棚を備える。本体ユニット31は、保管棚の一例として、複数のカセットCa2を保管するカセット棚311を備える。カセット棚311は、大きさ(種類)の異なるカセットCa2を保管し得る。カセットCa2には、仕切部(不図示)が設けられ、複数の収容領域が形成されてもよい。薬剤払出装置1のカセットCa1についても、カセットCa2と同様に、互いに大きさが異なってもいてもよいし、複数の収容領域が形成されてもよい。
【0029】
ピッキングユニット32は、例えばユーザが本体ユニット31に保管された薬剤を取扱うことを可能とする装置である。本実施形態では、ピッキングユニット32は、ユーザが、所定数の薬剤をカセットCa2から取出すピッキング作業を行う装置として機能し得る。また、ピッキングユニット32は、ユーザが、薬剤をカセットCa2に充填する充填作業を行う装置として機能し得る。ピッキングユニット32には、例えば、薬剤授受部321、タッチパネル322、トレイ載置台323、出力部324、及び、バーコードリーダ325が設けられている。
【0030】
薬剤授受部321は、本体ユニット31に保管されている薬剤の取出しを可能とし、また、本体ユニット31への薬剤の充填を可能とする部分である。薬剤授受部321にはシャッタが設けられている。
【0031】
薬剤取出可能装置3の制御部(不図示。以下、DS制御部と称する。)は、上位システムから受信した処方データ、又は、薬剤払出装置1から受信した薬剤に関する情報に基づき、本体ユニット31から取出す薬剤を特定する。そして、DS制御部は、当該薬剤を収容するカセットCa2を薬剤授受部321に搬送した後、当該薬剤の収容領域のみにアクセス可能なようにシャッタを開く。また、DS制御部は、タッチパネル322に、取出対象の薬剤およびその個数を表示する。これにより、ユーザは、タッチパネル322の表示に従い、薬剤授受部321に搬送されたカセットCa2から、取出対象の薬剤を所定数分、取出すことができる。
【0032】
ユーザは、カセットCa2から取出した薬剤を、トレイ載置台323に載置されたトレイ(不図示)に収容する。トレイ載置台323では、薬剤の重量が計測される。DS制御部は、計測された薬剤の重量が、取出対象の薬剤の個数から算出した重量と一致するかを判定することにより、所定数の薬剤が取出されたかを判定する。
【0033】
出力部324は、薬剤取出可能装置3が払出した薬剤に関する情報を印刷し、印刷したジャーナル(調剤記録紙)を払出す出力装置である。薬剤に関する情報には、例えば、患者識別情報、調剤日、薬剤名、払出数等が含まれる。ユーザは、出力部324から払出されたジャーナルを、カセットCa2から取出した薬剤を収容したトレイに収容する。
【0034】
また、ユーザは、薬剤を充填する場合、薬剤に付された薬剤識別情報を示すバーコードをバーコードリーダ325に読取らせる。これにより、DS制御部は、読取ったバーコードが付された薬剤と同一種類の薬剤を収容するカセットCa2を薬剤授受部321に搬送した後、当該薬剤の収容領域のみにアクセス可能なようにシャッタを開く。これにより、ユーザは、同一種類の薬剤をカセットCa2の同一領域に収容できる。
【0035】
従って、ユーザは、薬剤の取出し及び充填作業において、薬剤の種類を厳密に確認することを要しない。そのため、薬剤取出可能装置3のユーザは、薬剤師等の資格を有する者に限らず、当該資格を有していない者であってもよい。
【0036】
なお、薬剤払出システム100は、薬剤の取出しが可能な薬剤取出可能装置3に代えて、薬剤の払出しが可能であって薬剤払出装置1とは異なる薬剤払出装置(第1装置の一例)を備えていてもよい。
【0037】
<薬剤払出装置の制御部>
図1に示すように、制御部21は、例えば、特定部211、取得部212、判定部213、決定部214、印刷制御部215、タッチパネル制御部216、及び、送信部217を備える。
【0038】
特定部211は、薬剤払出装置1から払出すかどうかの判断の対象となる対象薬剤に対して指定された服用期間の最終日を特定する。本実施形態では、対象薬剤が、処方データに示された薬剤(処方された薬剤)であるものとして説明する。特定部211は、対象薬剤の服用開始日及び服用期間から、当該服用期間の最終日を算出する。
【0039】
特定部211は、例えば、対象薬剤の処方データの受信日を対象薬剤の服用開始日として特定する。また、特定部211は、例えばユーザの入力操作により、対象薬剤の服用開始日を取得してもよい。特定部211は、このように特定又は取得した服用開始日と、処方データに含まれる対象薬剤の服用期間とから、当該服用期間の最終日を算出する。
【0040】
対象薬剤は、処方データに示された薬剤でなくてもよく、例えば、薬剤払出装置1から払出すかどうかの判断の対象として、払出指示を受付けた薬剤であってもよい。この払出指示は、ユーザの入力操作により行われてもよいし、薬剤払出装置1と通信可能に接続される装置から受付けてもよい。また、服用開始日は、処方データに含まれていてもよい。また、服用期間が処方データに含まれていない場合、特定部211は、例えばユーザの入力操作により、服用期間を取得してもよい。また、特定部211は、例えばユーザの入力操作により、服用期間の最終日を取得してもよい。
【0041】
取得部212は、記憶部22から、対象薬剤の有効期限を取得する。記憶部22には、例えば、カセット識別情報に対応付けて、カセットCa1に収容される薬剤の種類、薬剤の収容数、薬剤の有効期限、薬剤のロット番号、薬剤の収容位置(本実施形態ではカセットCa1の収容位置)、薬剤の充填日を示す情報等が記憶されている。また、記憶部22には、例えば、カセット識別情報に対応付けて、カセットCa1の最大収容数を示す情報等が記憶されている。
【0042】
判定部213は、薬剤払出装置1に保管されている薬剤の払出日において当該薬剤の有効期限が切れているか、及び、当該払出日から第1所定期間内に当該薬剤の有効期限が切れるかを判定する。
【0043】
払出日は、例えば、制御部21が上位システムから処方データを受信した日、タッチパネル12を介して薬剤を払出す入力操作を受付けた日、又は、薬剤払出装置1の電源を起動する入力操作を受付けた日のうちの最新の日であってよい。第1所定期間は、予め設定される期間であり、例えばユーザがタッチパネル12を介して設定できる期間である。第1所定期間は、例えば90日に設定される。第1所定期間は、例えば、薬剤払出装置1が稼働する医療機関における薬剤の払出実績等に基づき、有効期限を超えた薬剤の払出しが可能な限り行われないように設定されてよい。第1所定期間は、薬剤の種類に関係なく一律に設定されてもよいし、薬剤の種類毎に設定されてもよい。
【0044】
判定部213が、薬剤払出装置1に保管されている薬剤の中に、払出日に有効期限が切れているか、又は、第1所定期間内に有効期限が切れる薬剤が存在すると判定した場合を考える。この場合、タッチパネル制御部216は、例えば、その薬剤の種類、及び、その薬剤を収容するカセットCa1に付された番号を、タッチパネル12に表示する。
【0045】
これにより、ユーザは、既に有効期限が切れている薬剤、又は、第1所定期間内に有効期限が切れる薬剤が薬剤払出装置1に保管されていることを認識できる。そのため、ユーザは、このような薬剤をカセットCa1から取出し、有効期限に余裕がある薬剤を当該カセットCa1に充填し直すことができる。
【0046】
従って、薬剤払出装置1が薬剤を払出した後に、有効期限が切れているかどうかをユーザがチェックする手間が生じない。従って、ユーザの作業効率を向上させることができる。また、有効期限が切れている薬剤、又は、服用期間に有効期限が切れ得る薬剤が患者に渡されるリスクを低減できる。また、判定部213が薬剤払出装置1の起動時に上記の判定を行う場合、ユーザは、調剤業務の開始前に上記のような薬剤の交換作業を行うことが可能となる。
【0047】
また、判定部213は、取得部212が取得した対象薬剤の有効期限と特定部211が特定した服用期間の最終日とが所定の条件を満たすかを判定する。本実施形態では、判定部213は、所定の条件として、取得部212が取得した対象薬剤の有効期限が、特定部211が特定した服用期間の最終日よりも前であるかを判定する。さらに、判定部213は、特定部211が特定した服用期間の最終日から第2所定期間内に、取得部212が取得した対象薬剤の有効期限が切れるかを判定する。判定部213は、対象薬剤をカセットCa1から払出す前に、これらの判定処理を行う。
【0048】
第2所定期間は、予め設定される期間であり、例えばユーザがタッチパネル12を介して設定できる期間である。第2所定期間は、例えば90日に設定される。第2所定期間は、例えば、薬剤払出装置1が稼働する医療機関における薬剤の払出実績等に基づき、有効期限を超えた薬剤の払出しが可能な限り行われないように設定されてよい。第2所定期間は、薬剤の種類に関係なく一律に設定されてもよいし、薬剤の種類毎に設定されてもよい。
【0049】
決定部214は、取得部212が取得した対象薬剤の有効期限が、特定部211が特定した服用期間の最終日よりも前であると判定部213が判定した場合、所定の条件を満たしたものとして、対象薬剤を薬剤払出装置1から払出さない薬剤として決定する。一方、決定部214は、取得部212が取得した対象薬剤の有効期限が、特定部211が特定した服用期間の最終日以降であると判定部213が判定した場合、対象薬剤を薬剤払出装置1から払出す薬剤として決定する。
【0050】
このように、判定部213の判定結果に基づき、制御部21は、有効期限に基づく対象薬剤の払出し制御を行うことが可能となる。本実施形態では、対象薬剤の有効期限が、対象薬剤に対して指定された服用期間の最終日よりも前であるかに基づき、制御部21は、有効期限に基づく対象薬剤の払出し制御を行うことが可能となる。
【0051】
具体的には、制御部21は、対象薬剤の有効期限が、対象薬剤に対して指定された服用期間の最終日よりも前である場合には、対象薬剤の払出しを行わない。そのため、対象薬剤について、服用期間内に有効期限が切れてしまうかどうかをユーザがチェックする手間が生じない。従って、ユーザの作業効率を向上させることができる。また、服用期間内に有効期限が切れてしまう薬剤が患者に渡されるリスクを低減できる。また、有効期限切れの薬剤が机上に散乱する可能性も低減できる。
【0052】
印刷制御部215は、印刷部14の動作を制御する。例えば、印刷制御部215は、決定部214が薬剤払出装置1から払出さない薬剤として決定した対象薬剤を、薬剤払出装置1から払出さないことを報知する報知部として機能する。この場合、印刷制御部215は、印刷部14に、対象薬剤を薬剤払出装置1から払出さないことを印刷したジャーナルを出力させる。
【0053】
印刷制御部215は、対象薬剤が有効期限切れであることをジャーナルに印刷することにより、薬剤払出装置1から払出さないことを報知してもよい。例えば、印刷制御部215は、有効期限切れであるため対象薬剤を手払いするよう促す情報を、ジャーナルに印刷してもよい。手払いとは、ユーザが、補助装置2を用いて対象薬剤を薬剤棚から取出すことを意味する。また例えば、印刷制御部215は、有効期限切れであるため対象薬剤を薬剤取出可能装置3からの取出対象とすることを、ジャーナルに印刷してもよい。
【0054】
タッチパネル制御部216は、タッチパネル12に各種情報を表示すると共に、タッチパネル12が受付けた入力操作を取得する。例えば、タッチパネル制御部216は、タッチパネル12を介して、決定部214が薬剤払出装置1から払出さない薬剤として決定した対象薬剤を、薬剤払出装置1から払出さないことを報知する報知部として機能する。
【0055】
タッチパネル制御部216は、対象薬剤が有効期限切れであることを報知することにより、薬剤払出装置1から払出さないことを報知してもよい。例えば、タッチパネル制御部216は、有効期限切れであるため対象薬剤を手払いするよう促す情報を、タッチパネル12に表示してもよい。また例えば、タッチパネル制御部216は、有効期限切れであるため対象薬剤を薬剤取出可能装置3からの取出対象とすること、又は、当該情報に加え対象薬剤の有効期限を、タッチパネル12に表示してもよい。
【0056】
印刷制御部215及びタッチパネル制御部216がこのような報知を行うことにより、薬剤払出装置1から払出されなかった対象薬剤を、薬剤払出装置1以外の装置又は箇所から補填する必要があることを、ユーザが認識できる。ユーザは、補填の必要性を認識次第、薬剤払出装置1から払出されなかった対象薬剤を、薬剤払出装置1以外の装置又は箇所に取りに行くことができる。本実施形態では、ユーザは、薬剤取出可能装置3又は薬剤棚に取りに行くことができる。そのため、薬剤払出装置1から払出された後に有効期限のチェックを行い、有効期限切れの薬剤を薬剤払出装置1以外の装置又は箇所に取りに行く場合に比べ、調剤業務に要する時間を短縮できる。
【0057】
判定部213が、特定部211が特定した服用期間の最終日から第2所定期間内に、取得部212が取得した対象薬剤の有効期限が切れると判定した場合を考える。この場合、印刷制御部215は、対象薬剤の有効期限が迫っていることを、ジャーナルに印刷してもよい。印刷制御部215は、図4に示すように、対象薬剤の有効期限が迫っていることに加え、対象薬剤の有効期限を、ジャーナルに印刷してもよい。図4は、印刷部14が出力するジャーナルの一例を示す図である。またこの場合、タッチパネル制御部216が、対象薬剤の有効期限が迫っていること、又は、当該情報に加え対象薬剤の有効期限を、タッチパネル12に表示してもよい。これにより、薬剤払出装置1に保管されている薬剤のうち、有効期限が迫っている薬剤を、ユーザが認識できる。
【0058】
上述した報知処理は、印刷制御部215及びタッチパネル制御部216の両方で行われず、印刷制御部215及びタッチパネル制御部216の何れかのみで行われてもよい。また例えば、タッチパネル制御部216は、薬剤払出装置1に保管されている薬剤のうち、払出日において有効期限が切れている薬剤、又は、払出日から第1所定期間内に有効期限が切れる薬剤を、薬剤払出装置1から払出さないことを報知してもよい。
【0059】
送信部217は、通信部15を制御することにより、外部装置との通信を制御する。例えば、送信部217は、通信部15を制御して、決定部214が薬剤払出装置1から払出さない薬剤として決定した対象薬剤に関する情報を、補助装置2又は薬剤取出可能装置3の少なくとも何れかに送信する。
【0060】
対象薬剤に関する情報が補助装置2に送信された場合、補助装置2は、対象薬剤に関する情報を報知する。そのため、ユーザは、薬剤払出装置1から払出すべきであった個数の対象薬剤を、薬剤棚から取出すことができる。また、対象薬剤に関する情報が薬剤取出可能装置3に送信された場合、DS制御部は、対象薬剤を収容するカセットCa2を薬剤授受部321に搬送する。また、DS制御部は、カセットCa2から取出すべき個数(薬剤払出装置1から払出すべきであった個数)を、タッチパネル322に表示する。これにより、薬剤払出装置1から払出すべきであった個数の対象薬剤を、薬剤取出可能装置3から取出すことができる。
【0061】
送信部217は、決定部214が薬剤払出装置1から払出さない薬剤として決定した対象薬剤に関する情報を、補助装置2及び薬剤取出可能装置3の両方に送信する。これに限らず、送信部217は、対象薬剤に関する情報を、補助装置2及び薬剤取出可能装置3の何れかのみに送信してもよい。また例えば、送信部217は、薬剤払出装置1に保管されている薬剤のうち、払出日において有効期限が切れている薬剤、又は、払出日から第1所定期間内に有効期限が切れる薬剤に関する情報を、補助装置2及び/又は薬剤取出可能装置3に送信してもよい。
【0062】
<制御部による処理>
図5は、制御部21による処理の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、特定部211は、対象薬剤に対して指定された服用期間の最終日を特定する(S1)。本実施形態では、処方データにおいて指定された服用開始日及び服用期間から、服用期間の最終日を算出する(S1)。また、取得部212は、記憶部22から、対象薬剤の有効期限を取得する(S2)。制御部21は、S1及びS2の処理を逆順に、又は、並行して実行してもよい。
【0063】
判定部213は、S2で取得した有効期限が、S1で特定した服用期間の最終日よりも前であるかを判定する(S3)。判定部213が、有効期限が服用期間の最終日よりも前であると判定した場合(S3でYES)、決定部214は、対象薬剤を、薬剤払出装置1から払出さない薬剤として決定する(S4)。
【0064】
S4の決定に基づき、送信部217は、対象薬剤に関する情報を補助装置2に送信する(S5)。送信部217は、補助装置2に代えて、又は、補助装置2への送信と共に、対象薬剤に関する情報を薬剤取出可能装置3に送信してもよい。また、印刷制御部215は、印刷部14を制御して、薬剤払出装置1から対象薬剤を払出さないことを示す情報として、例えば、有効期限切れのため対象薬剤を手払いするよう促す情報をジャーナルに印刷する(S6)。この印刷制御部215の制御に代えて、又は、印刷制御部215の制御と共に、タッチパネル制御部216は、薬剤払出装置1から対象薬剤を払出さないことを示す情報を、タッチパネル12に表示してもよい。制御部21は、S5及びS6の処理を逆順に、又は、並行して実行してもよい。
【0065】
また、判定部213が、有効期限が服用期間の最終日以降であると判定した場合(S3でNO)、対象薬剤を、薬剤払出装置1から払出す薬剤として決定する(S11)。これにより、薬剤払出装置1は、自装置に保管している対象薬剤を払出す。
【0066】
判定部213は、薬剤払出装置1から払出す薬剤として決定した対象薬剤について、S2で取得した有効期限が、S1で特定した服用期間の最終日から第2所定期間内にあるかを判定する(S12)。判定部213が、対象薬剤の有効期限が第2所定期間内にあると判定した場合(S12でYES)、印刷制御部215は、印刷部14を制御して、対象薬剤の有効期限が迫っていることを示す情報をジャーナルに印刷する(S13)。この印刷制御部215の制御に代えて、又は、印刷制御部215の制御と共に、タッチパネル制御部216は、対象薬剤の有効期限が迫っていることを示す情報を、タッチパネル12に表示してもよい。一方、判定部213が、対象薬剤の有効期限が服用期間の最終日から第2所定期間内ではないと判定した場合(S12でNO)、対象薬剤の有効期限に余裕があるため、上記のような報知処理は行わない。
【0067】
<変形例:同一種類の薬剤について有効期限が互いに異なる場合の処理例>
同一種類の薬剤であっても薬剤払出装置1への充填時期が異なる場合には、充填時期毎に、充填された薬剤の有効期限が異なる可能性がある。つまり、薬剤払出装置1には、同一種類の薬剤について有効期限が互いに異なる複数の薬剤が保管される場合がある。この場合、記憶部22には、当該複数の薬剤のそれぞれについての有効期限が記憶されることになる。
【0068】
同一種類の薬剤は、1つのカセットCa1に収容されていてもよいし、複数のカセットCa1のそれぞれに収容されていてもよい。従って、1つのカセットCa1に収容された複数の薬剤のうちの少なくとも2つにおいて有効期限が互いに異なる場合がある。例えば、カセットCa1に薬剤シートが収容される場合、少なくとも2つの薬剤シートにおいて有効期限が互いに異なる場合がある。この場合、記憶部22には、1つのカセット識別情報に対応付けて、複数の有効期限が記憶されている。
【0069】
また、同一種類の薬剤が複数のカセットCa1に収容されている場合、少なくとも2つのカセットCa1に収容された薬剤の有効期限が互いに異なる場合がある。この場合、記憶部22には、各カセットCa1のカセット識別情報に対応付けて、有効期限が記憶されている。すなわち、記憶部22には、同一種類の薬剤について、各カセット識別情報に対応して記憶されている有効期限が1つであったとしても、全体としては複数の有効期限が記憶されていることになる。
【0070】
記憶部22に、同一種類の薬剤について複数の有効期限が記憶されている場合、取得部212は、対象薬剤に対応する複数の有効期限を取得できる。そして、判定部213は、取得部212が取得した複数の有効期限のうち少なくとも何れかの有効期限が、特定部211が特定した服用期限の最終日よりも前であるかを判定する。判定部213が、複数の有効期限のうち少なくとも何れかの有効期限が服用期限の最終日よりも前であると判定した場合、決定部214は、対象薬剤を薬剤払出装置1から払出さない薬剤として決定する。
【0071】
つまり、1つのカセットCa1に有効期限が異なる少なくとも2つの対象薬剤が収容されている場合において、有効期限が最終日以後の対象薬剤が収容されているとしても、決定部214は、対象薬剤を薬剤払出装置1から払出さない薬剤として決定する。また、少なくとも2つのカセットCa1に収容された薬剤の有効期限が互いに異なる場合において、有効期限が最終日以後の対象薬剤が収容されたカセットCa1が存在するとしても、決定部214は、対象薬剤を薬剤払出装置1から払出さない薬剤として決定する。
【0072】
従って、制御部21は、対象薬剤の払出数として指定された指定数が2以上であり、その一部の数の薬剤に対応する有効期限が最終日以後であっても、対象薬剤を1つも払出さない。そのため、ユーザは、指定数分の薬剤を一括して、薬剤払出装置1以外の装置又は箇所に取りに行くことができる。
【0073】
但し、決定部214は、複数のカセットCa1の中に、有効期限が最終日以後の対象薬剤が収容されているカセットCa1が存在する場合には、当該カセットCa1の対象薬剤については、薬剤払出装置1から払出す薬剤として決定してもよい。また、決定部214は、1つのカセットCa1の中に、有効期限が最終日前の対象薬剤と有効期限が最終日以後の対象薬剤が収容されている場合に、後者の対象薬剤については、薬剤払出装置1から払出す薬剤として決定してもよい。これらの場合、上記指定数の一部の対象薬剤については、薬剤払出装置1から払出すことが可能となる。
【0074】
(有効期限の記憶方法)
上述した有効期限の記憶に関連して、以下に、図6に示す薬剤の充填画像(充填画面)の一例について説明する。図6は、タッチパネル12に表示される充填画像の一例を示す図である。図6の充填画像は、1つのカセットCa1についての充填画像の一例を示す図である。
【0075】
ユーザは、薬剤払出装置1に薬剤を充填するとき、バーコードリーダ13に、薬剤の充填対象となるカセットCa1を薬剤払出装置1から取出し、カセットCa1に付されたバーコードを読取らせる。
【0076】
これにより、制御部21は、記憶部22から、バーコードを読取ったカセットCa1のカセット識別情報に対応付けて記憶されている、薬剤の種類、薬剤の収容数、カセットCa1の収容位置、カセットCa1の最大収容数を示す情報を取得できる。そして、制御部21は、図6に示すように、薬剤名、収容数(図中の「在庫量」)、収容位置(図中の「棚No」)、及び、最大収容数(図中の「最大量」)を表示できる。また、制御部21は、記憶部22から、バーコードを読取ったカセットCa1のカセット識別情報に対応付けて記憶されている、薬剤の有効期限及びロット番号を示す情報を取得し、図6に示すように、薬剤の有効期限及びロット番号を表示できる。
【0077】
またユーザは、薬剤払出装置1に薬剤を充填するとき、バーコードリーダ13に、薬剤に付されたバーコード(具体的には、薬剤箱等の包装体(収容体)に付されたバーコード)を読取らせる。これにより、制御部21は、バーコードリーダ13が読取った充填対象の薬剤識別情報と、記憶部22から取得した薬剤識別情報とを照合できる。また、制御部21は、バーコードリーダ13が読取った充填対象の薬剤の有効期限及びロット番号を示す情報を取得できる。
【0078】
図6に示すように、制御部21は、1つのカセットCa1について、有効期限及びロット番号を示す情報を複数表示できる。すなわち、制御部21は、記憶部22に、1つのカセット識別情報に対応付けて、複数の有効期限及びロット番号を示す情報を記憶できる。そのため、制御部21は、カセットCa1に薬剤が収容されている状態において、当該カセットCa1に新たに薬剤を収容する場合に、既に収容されている薬剤の有効期限と、新たに収容される薬剤の有効期限と、をそれぞれ管理できる。
【0079】
有効期限は、バーコードリーダ13の読取りにより取得されなくてもよい。例えば、制御部21は、ユーザが任意で決めた日を、有効期限として取得してもよい。すなわち、有効期限は、ユーザが任意で決めた期限であってよく、使用期限などと称されてもよい。この場合の有効期限は、例えば、ユーザが薬剤箱等から薬剤を取出した日又は充填日に所定日数を加算した日等であってよい。所定日数は、例えば90日、180日といった日数に設定されてもよいし、例えば1~5年に設定されてもよい。所定日数は、服用した患者の安全が担保される日数に設定されてよい。所定日数は、薬剤の種類に関係なく一律に設定されてもよいし、薬剤の種類毎に設定されてもよい。また、充填日は、例えば、制御部21が、薬剤の充填が完了したことを示す入力操作(充填ボタンに対する入力操作)を受付けた日であってよい。
【0080】
制御部21は、例えば、薬剤の充填対象のカセットCa1に対する薬剤の充填日に所定日数を加算した日を算出し、算出した日を当該薬剤の有効期限として記憶部22に記憶(登録)してよい。制御部21は、例えば、バーコードリーダ13がバーコードを読取ったカセットCa1のカセット識別情報に対応付けて、上記算出した日を当該薬剤の有効期限として記憶してよい。例えば、図6に示す充填ボタンに対する入力操作を受付けた場合に、制御部21は、上記算出した日を当該薬剤の有効期限として記憶してよい。これにより、薬剤の充填日に所定日数を加算した日を当該薬剤の有効期限として記憶する場合において、ユーザは、薬剤の充填日に所定日数を加算するという計算を行わなくてよいし、その加算した日を入力しなくてよい。そのため、ユーザの手間を削減できる。また、計算ミスによりユーザの想定と異なる有効期限が記憶される可能性を低減できる。
【0081】
なお、薬剤の充填数は、ユーザにより入力される。制御部21は、図6に示すように、入力された充填数(図中の「充填量」)を表示できる。制御部21は、充填ボタンに対する入力操作を受付けた場合、充填された薬剤の充填数を確定し、当該薬剤の収容数を更新する。
【0082】
また、カセット識別情報は、バーコードとしてカセットCa1に付されていなくてもよい。カセット識別情報は、例えば、2次元コードとしてカセットCa1に付されていてもよい。また、カセット識別情報は、RFID(Radio Frequency Identification)を用いてカセットCa1から読取られてもよい。すなわち、カセット識別情報は種々の形態でカセットCa1に付されていてよく、薬剤払出装置1は、カセット識別情報を読取り可能な情報読取装置を備えていればよい。また、カセット識別情報は、タッチパネル12などの入力装置を介して入力されてもよい。これにより、制御部21は、薬剤の充填対象となるカセットCa1のカセット識別情報を、バーコードの読取り以外の手法で取得できる。薬剤識別情報についてもバーコードとして実現されていなくてもよい。薬剤識別情報は、バーコードリーダ13以外の情報読取装置により読取られてもよいし、入力装置を介して入力されてもよい。
【0083】
さらに、薬剤の充填数および有効期限などを表示する画像は、図6に示す画像に限られない。このような画像として、1つのカセットCa1に関する情報のみを表示するものではなく、複数のカセットCa1に関する情報を一括して表示する画像であってもよい。この場合、薬剤払出装置1に保管されている全てのカセットCa1に関する情報を表示してもよいし、その一部のカセットCa1に関する情報を表示してもよい。当該一部のカセットCa1は、例えば、使用状態であるカセットCa1(薬剤に関する情報が対応付けられたカセット識別情報が示すカセットCa1)であってもよいし、ユーザにより指定されたカセットCa1であってもよい。制御部21は、複数のカセットCa1に関する情報を一括して表示する場合も、充填ボタンに対する入力操作を受付けた場合に、各カセットCa1に充填される薬剤の有効期限として、上記算出した日を記憶してもよい。また、制御部21は、充填ボタンに対する入力操作を受付けた場合に、各カセットCa1に対して入力された薬剤の充填数を確定し、各カセットCa1の薬剤の収容数を更新してよい。
【0084】
<変形例:判定部の判定基準(その1)>
判定部213は、所定の条件として、取得部212が取得した対象薬剤の有効期限が、特定部211が特定した服用期限の最終日以前であるかを判定してもよい。つまり、判定部213は、対象薬剤の有効期限が当該最終日よりも前であるかに加え、服用期限の最終日と同日であるかについても判定してもよい。この場合、決定部214は、対象薬剤の有効期限が服用期限の最終日と同日である場合についても、対象薬剤を薬剤払出装置1から払出さない薬剤として決定する。
【0085】
従って、薬剤払出装置1は、服用期間内に有効期限が切れてしまう可能性が高い薬剤を払出さないことができる。そのため、服用期間内に有効期限が切れてしまう可能性が高い薬剤が患者に渡されるリスクを低減できる。
【0086】
<変形例:判定部の判定基準(その2)>
判定部213は、所定の条件として、取得部212が取得した対象薬剤の有効期限が、特定部211が特定した最終日より後の指定日以前であるかを判定してもよい。つまり、判定部213は、対象薬剤の有効期限が服用期限の最終日以前であるかに加え、当該最終日を基準として設定された指定期間内であるかについても判定してもよい。この場合、決定部214は、対象薬剤の有効期限が指定期間内である場合についても、対象薬剤を薬剤払出装置1から払出さない薬剤として決定する。
【0087】
指定期間は、予め設定される期間であり、例えばユーザがタッチパネル12を介して設定できる期間である。上記指定日は、指定期間の最終日を指す。
【0088】
上述のように、服用期限の最終日は服用開始日に基づき設定される。服用開始日は、医師による処方が行われた日又はその近傍の日(例:翌日)に設定されることが予想される。一方で、患者が処方された薬剤の使用を開始する日は、服用開始日から数日後になる場合もある。このような場合としては、例えば、患者が処方された薬剤を受取ったもののすぐに使用を開始せずに数日が経過する場合、患者が処方されてから数日後に薬剤を薬局に受取りに行く場合、処方された薬剤が郵送により患者に届けられる場合等が挙げられる。
【0089】
指定期間は、これらの事情を考慮して、有効期限を超えた薬剤の払出しが可能な限り行われないように設定されてよい。指定期間は、例えばユーザ又は患者からの上記事情に関するヒアリング結果等に基づき、設定されてもよい。指定期間は、例えば3日に設定される。指定期間は、薬剤の種類に関係なく一律に設定されてもよいし、薬剤の種類毎に設定されてもよい。
【0090】
このように指定期間に基づく対象薬剤の払出制御を行うことにより、薬剤払出装置1は、患者が処方された薬剤を使用すると推定される期間に、払出した薬剤の有効期限が切れてしまう可能性を低減できる。
【0091】
<変形例:服用期間の最終日の取得機能>
本実施形態では、特定部211が対象薬剤に対して指定された服用期間の最終日を特定するものとして説明したが、特定部211は、服用期間の最終日を取得する第1取得部として機能してもよい。この場合、例えば、特定部211は、薬剤払出装置1と通信可能に接続され、特定部211の特定機能を有する外部装置から、服用期間の最終日を取得してもよい。またこの場合、対象薬剤の有効期限を取得する取得部212は、第2取得部として機能する。
【0092】
<変形例:薬剤取出可能装置による処理の実現>
上記では、特定部211、取得部212、判定部213及び決定部214の処理が、薬剤払出装置1から払出すかどうかの判断の対象となる対象薬剤に対して行われている。これに限らず、これらの機能部による処理が、薬剤取出可能装置3から取出し可能かどうかの判断の対象となる対象薬剤に対して行われてもよい。この場合、DS制御部が、これらの機能部による処理を行う。なお、本変形例において、対象薬剤は、処方データに示された薬剤でなくてもよく、例えば、薬剤取出可能装置3から取出し可能かどうかの判断の対象として、取出指示を受付けた薬剤であってもよい。
【0093】
DS制御部は、特定部211、取得部212、判定部213の機能を有することにより、判定部213の判定結果に基づき、有効期限に基づく対象薬剤の取出し可否の制御を行うことが可能となる。
【0094】
また、決定部214は、対象薬剤の有効期限が所定の条件を満たすと判定部213が判定した場合、対象薬剤を取出し不可の薬剤として決定する。この場合、DS制御部は、本体ユニット31に保管されている対象薬剤を、薬剤授受部321に搬送しない。
【0095】
また、判定部213は、所定の条件の他、薬剤取出可能装置3に保管されている薬剤の取出日において当該薬剤の有効期限が切れているか、及び、当該取出日から第1所定期間内に当該薬剤の有効期限が切れるかを判定する。また、判定部213は、服用期間の最終日から第2所定期間内に、対象薬剤の有効期限が切れるかを判定する。取出日、第1所定期間及び第2所定期間は、上述した払出日、第1所定期間及び第2所定期間の説明において、薬剤の払出を薬剤の取出しに読み替えればよい。その他、本変形例では、上述した指定期間の説明等においても、薬剤の払出を薬剤の取出しに読み替えればよい。
【0096】
さらに、DS制御部は、印刷制御部215、タッチパネル制御部216及び送信部217の機能を有していてよい。この場合、印刷制御部215及びタッチパネル制御部216は、決定部214が薬剤取出可能装置3から取出し不可の薬剤として決定した対象薬剤を、薬剤取出可能装置3から取出不可であることを報知する報知部として機能する。但し、本変形例では、上述した薬剤取出可能装置3からの取出対象とするという報知に代えて、薬剤払出装置1からの払出対象とすることを報知してもよい。これにより、ユーザは、薬剤取出可能装置3から取出せなかった対象薬剤を、薬剤取出可能装置3以外の装置又は箇所に取りに行くことができる。
【0097】
また、送信部217は、決定部214が薬剤取出可能装置3から取出し不可の薬剤として決定した対象薬剤に関する情報を、補助装置2又は薬剤払出装置1の少なくとも何れかに送信する。そのため、ユーザは、薬剤取出可能装置3から取出すべきであった個数の対象薬剤を、薬剤棚から取出すことができる。あるいは、薬剤払出装置1が、薬剤取出可能装置3から取出すべきであった個数の対象薬剤を払出すことができる。
【0098】
本変形例の印刷制御部215、タッチパネル制御部216及び送信部217の説明における薬剤払出装置1は、薬剤払出装置1以外の薬剤払出装置であってもよい。本変形例にいては、薬剤払出装置1は、薬剤の払出しが可能な第1装置の一例である。
【0099】
<変形例:制御装置及び記憶装置>
例えば、制御部21は、薬剤払出装置1とは異なり、薬剤払出装置1と通信可能に接続される装置(制御装置)として実現されてもよい。また例えば、記憶部22は、薬剤払出装置1と異なり、薬剤払出装置1と通信可能に接続される記憶装置として実現されてもよい。薬剤払出装置1の記憶部22に記憶されている情報は、補助装置2の記憶部(不図示)に記憶されていてもよい。
【0100】
また例えば、制御部21の機能が薬剤取出可能装置3により実現される場合、制御部21の機能は、薬剤取出可能装置3とは異なり、薬剤取出可能装置3と通信可能に接続される装置(制御装置)として実現されてもよい。記憶部22についても同様である。
【0101】
<まとめ>
本開示の態様1に係る装置は、薬剤保管装置から払出すか又は取出しを可能とするかどうかの判断の対象となる対象薬剤に対して指定された服用期間の最終日を取得する第1取得部と、前記薬剤保管装置に保管されている薬剤の有効期限を記憶する記憶装置から、前記対象薬剤の有効期限を取得する第2取得部と、前記第2取得部が取得した前記有効期限と前記第1取得部が取得した前記最終日との関係が、所定の条件を満たすかを判定する判定部と、を備える。
【0102】
本開示の態様2に係る装置は、態様1において、前記所定の条件は、前記第2取得部が取得した前記有効期限が前記最終日よりも前であるか、前記最終日以前であるか、又は、前記最終日より後の指定日以前である。
【0103】
本開示の態様3に係る装置は、態様1又は2において、前記第2取得部が取得した前記有効期限が前記所定の条件を満たすと前記判定部が判定した場合、前記対象薬剤を前記薬剤保管装置から払出さない薬剤又は取出し不可の薬剤として決定する決定部を備える。
【0104】
本開示の態様4に係る装置は、態様3において、前記決定部が前記薬剤保管装置から払出さない薬剤又は取出し不可の薬剤として決定した前記対象薬剤に関する情報を、前記対象薬剤の払出し若しくは取出しが可能な第1装置、及び、前記対象薬剤を保管する箇所からの取出しを補助する第2装置の少なくとも何れかに送信する送信部を備える。
【0105】
本開示の態様5に係る装置は、態様3又は4において、前記決定部が前記薬剤保管装置から払出さない薬剤又は取出し不可の薬剤として決定した前記対象薬剤を、前記薬剤保管装置から払出さないこと又は取出し不可であることを報知する報知部を備える。
【0106】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。実施形態3以降についても同様である。
【0107】
図1に示すように、本実施形態の制御部21は、例えば、カセット特定部221を備える。カセット特定部221は、複数のカセットCa1に同一種類の薬剤が収容されている場合、有効期限に基づき、薬剤を払出すカセットCa1を特定する。具体的には、カセット特定部221は、これらのカセットCa1のカセット識別情報に対応付けられた薬剤の有効期限を取得することにより、有効期限が古い順に薬剤を払出すカセットCa1を特定する。
【0108】
カセットCa1に付された番号順に薬剤を払出すカセットCa1を特定する場合、有効期限が迫っている薬剤が薬剤払出装置1に保管され続ける可能性がある。上記のように、有効期限が古い順に薬剤を払出すカセットCa1を特定することにより、有効期限が迫っている薬剤が薬剤払出装置1に保管され続ける可能性を低減できる。
【0109】
なお、記憶部22に薬剤の有効期限が記憶されていない場合には、カセット特定部221は、当該薬剤については、有効期限に代えて充填日を用いて、薬剤を払出すカセットCa1を特定する。
【0110】
〔実施形態3〕
実施形態2では、複数のカセットCa1に同一種類の薬剤が収容されている場合、カセット特定部221は、有効期限に基づき、薬剤を払出すカセットCa1を特定する。実施形態3では、カセット特定部221は、有効期限だけでなく、充填日及び有効期限の猶予期間に基づき、薬剤を払出すカセットCa1を特定する。
【0111】
記憶部22には、有効期限及び充填日の他、有効期限の猶予期間(以下、単に猶予期間と称する)を示す情報が記憶されている。猶予期間は、予め設定される期間であり、例えばユーザがタッチパネル12を介して設定できる期間である。猶予期間は、例えば1~5年に設定される。猶予期間は、例えば、薬剤払出装置1に有効期限が切れた薬剤が保管され続ける可能性を低減できる期間に設定されてよい。猶予期間は、薬剤の種類に関係なく一律に設定されてもよいし、薬剤の種類毎に設定されてもよい。カセット特定部221は、例えば、薬剤の払出日から起算して猶予期間の最終日を特定する。
【0112】
カセット特定部221は、払出対象の薬剤を収容する2つのカセットCa1のそれぞれに対応して記憶されている薬剤の有効期限(2つの有効期限)が同一であるかを判定する。カセット特定部221は、これら2つの有効期限が同一であると判定した場合、充填日が古い薬剤が収容されているカセットCa1を、薬剤を払出すカセットCa1として特定する。
【0113】
カセット特定部221は、2つの有効期限が互いに異なると判定した場合、2つの有効期限が共に猶予期間の最終日を超えているかを判定する。カセット特定部221は、2つの有効期限が共に猶予期間の最終日を超えていると判定した場合、充填日が古い薬剤が収容されているカセットCa1を、薬剤を払出すカセットCa1として特定する。一方、カセット特定部221は、2つの有効期限が共に猶予期間の最終日を超えていないと判定した場合、有効期限が迫っている薬剤が収容されているカセットCa1を、薬剤を払出すカセットCa1として特定する。
【0114】
これにより、制御部21は、同一種類の薬剤が2つのカセットCa1に収容されている場合に、有効期限だけでなく、充填日も考慮して薬剤の払出しを行うことができる。すなわち、薬剤払出装置1に先に収容された薬剤を優先した払出しを行うことが可能となる。そのため、有効期限に余裕があるために、薬剤が長期間に亘り薬剤払出装置1に保管され続ける可能性を低減できる。従って、長期間に亘る保管による薬剤の品質の劣化の可能性、又は、劣化による薬剤の廃棄の可能性を低減できる。
【0115】
なお、払出対象の薬剤は、判定部213の判定結果に基づき、決定部214が薬剤払出装置1から払出すと決定した薬剤であってよい。但し、決定部214は、判定部213の判定結果に依らず、又は、判定部213の処理が行われることなく、処方データに示された薬剤が薬剤払出装置1に収容されている場合には、当該薬剤を払出対象の薬剤として決定してもよい。
【0116】
〔実施形態4〕
図7は、本実施形態の薬剤払出システム100Aの一例を示すブロック図である。薬剤払出システム100Aは、薬剤の払出しを可能とするシステムであり、例えば、第1薬剤払出装置1A、第2薬剤払出装置1B、補助装置2及び薬剤取出可能装置3を備える。
【0117】
実施形態1の薬剤払出システム100と同様、第1薬剤払出装置1Aは、補助装置2及び薬剤取出可能装置3の少なくとも何れかと通信可能に接続されている構成であればよい。また、第2薬剤払出装置1Bは、第1薬剤払出装置1Aと同様、補助装置2及び薬剤取出可能装置3の少なくとも何れかと通信可能に接続されている。第2薬剤払出装置1Bは、第1薬剤払出装置1Aと接続される補助装置2とは異なる補助装置2と接続されてもよい。
【0118】
第1薬剤払出装置1A及び第2薬剤払出装置1Bはそれぞれ、薬剤払出装置1と同様、第1薬剤払出装置1A又は第2薬剤払出装置1Bに保管されている薬剤を払出す装置である。第1薬剤払出装置1A及び第2薬剤払出装置1Bは、第1薬剤払出装置1Aが払出先決定部231を備えている点において異なるが、それ以外の機能は共通する。また、第1薬剤払出装置1A及び第2薬剤払出装置1Bは、他の実施形態で説明する薬剤払出装置1の機能を有していてもよい。
【0119】
第1薬剤払出装置1Aは、第1薬剤払出装置1Aを統括的に制御する制御部21Aを備える。制御部21Aは、印刷制御部215、タッチパネル制御部216及び送信部217に加え、払出先決定部231を備える。
【0120】
払出先決定部231は、払出対象の薬剤の払出先を決定する。本実施形態では、払出先決定部231は、上位システムから受信した処方データに示された薬剤について、当該薬剤の有効期限に基づき、第1薬剤払出装置1A及び第2薬剤払出装置1Bの何れかを、当該薬剤の払出先として決定する。
【0121】
記憶部22には、第1薬剤払出装置1Aに収容されている薬剤に関する第1記憶情報と、第2薬剤払出装置1Bに収容されている薬剤に関する第2記憶情報と、が記憶されている。第1記憶情報及び第2記憶情報にはそれぞれ、例えば、カセット識別情報に対応付けて、カセットCa1が収容される薬剤の種類、薬剤の収容数、及び、薬剤の有効期限等が含まれている。その他、カセット識別情報に対応付けて記憶される情報には、実施形態1で述べた記憶部22が記憶している情報が含まれてもよい。
【0122】
払出先決定部231は、払出対象の薬剤について、第1記憶情報に含まれる当該薬剤の有効期限(以下、第1有効期限と称する)と、第2記憶情報に含まれる当該薬剤の有効期限(以下、第2有効期限と称する)とを取得する。そして、払出先決定部231は、薬剤の払出日において、第1有効期限が切れているか、及び、第2有効期限が切れているかを判定する。
【0123】
払出先決定部231は、第1有効期限及び第2有効期限が共に切れていないと判定した場合、他方の有効期限より有効期限が迫っている薬剤を収容する薬剤払出装置(第1薬剤払出装置1A又は第2薬剤払出装置1B)を、払出対象の薬剤の払出先として決定する。
【0124】
一方、払出先決定部231は、第1有効期限が切れていないが、第2有効期限が切れていると判定した場合、第1薬剤払出装置1Aを払出対象の薬剤の払出先として決定する。また、払出先決定部231は、第2有効期限が切れていないが、第1有効期限が切れていると判定した場合、第2薬剤払出装置1Bを払出対象の薬剤の払出先として決定する。
【0125】
従って、複数の薬剤払出装置において保管されている同一種類の薬剤について、有効期限が切れておらず、また、有効期限が迫っている薬剤から優先して払出すことが可能となる。払出先決定部231は、例えば、複数の薬剤払出装置を順に、薬剤の払出対象の装置として決定するか、又は、払出中でない薬剤払出装置を、薬剤の払出対象の装置として決定することも可能である。しかし、払出先決定部231が、有効期限が迫っている薬剤を保管する薬剤払出装置を、薬剤の払出対象の装置として決定することにより、複数の薬剤払出装置において、有効期限が迫っている薬剤が保管され続ける可能性を低減できる。また、有効期限が切れている薬剤が払出される可能性を低減できる。
【0126】
さらに、払出先決定部231が、第1有効期限及び第2有効期限が共に切れていると判定した場合、送信部217は、実施形態1と同様に、払出対象の薬剤に関する情報を、補助装置2又は薬剤取出可能装置3の少なくとも何れかに送信する。払出対象の薬剤に関する情報には、例えば、薬剤識別情報、及び、第1薬剤払出装置1A又は第2薬剤払出装置1Bが払出すべきであった個数を示す情報が含まれている。これにより、払出対象の薬剤を、ユーザが薬剤棚から取出したり、薬剤取出可能装置3から取出したりすることが可能となり、有効期限が切れている薬剤が払出される可能性を低減できる。
【0127】
また、払出先決定部231が、第1有効期限及び第2有効期限が共に切れていると判定した場合、印刷制御部215は、印刷部14を制御して、払出対象の薬剤が有効期限切れであることを示す情報等をジャーナルに印刷してもよい。また、タッチパネル制御部216は、払出対象の薬剤が有効期限切れであることを示す情報等をタッチパネル12に表示してもよい。すなわち、制御部21Aは、払出対象の薬剤が第1薬剤払出装置1Aからも第2薬剤払出装置1Bからも払出されないことを報知してもよい。
【0128】
なお、払出先決定部231は、薬剤の払出日から第1所定期間内に第1有効期限が切れると判定した場合に、第1有効期限が切れていると判定してもよい。また、払出先決定部231は、第1有効期限が服用期間の最終日よりも前(又は最終日と同日)であると判定した場合に、第1有効期限が切れていると判定してもよい。払出先決定部231は、第1有効期限と同様に、第2有効期限が切れているかを判定してもよい。
【0129】
また、制御部21Aが取得部212を備える場合、第1有効期限及び第2有効期限の取得は取得部212が行ってもよい。制御部21Aが判定部213を備える場合、上記の判定を判定部213が行ってもよい。また、服用期間の最終日を用いた判定を行う場合には、制御部21Aは特定部211を備えていてもよい。
【0130】
また、第1薬剤払出装置1Aに、第2薬剤払出装置1B以外の薬剤払出装置が接続されている場合も、払出先決定部231は、払出対象の薬剤について、薬剤払出装置毎に管理されている有効期限同士を比較する。そして、払出先決定部231は、期限が切れていない少なくとも1つの有効期限のうち、期限が最も迫っている有効期限の薬剤を収容する薬剤払出装置を、払出対象の薬剤の払出先として決定する。払出先決定部231が、全ての有効期限が切れていると判定した場合には、制御部21Aは、上述した送信処理、及び/又は、報知処理を行ってもよい。
【0131】
また、第1薬剤払出装置1Aに代えて、補助装置2が払出先決定部231を備えていてもよい。この場合、上述した記憶部22に記憶されている情報が、補助装置2の記憶部(不図示)に記憶されていてよい。さらに、補助装置2が、払出対象の薬剤に関する情報を、薬剤取出可能装置3に送信する送信部217の機能を備えていてもよい。
【0132】
〔実施形態5〕
図1に示すように、本実施形態の制御部21は、例えば、算出部241を備える。算出部241は、充填対象の薬剤について、薬剤払出装置1に収容されている薬剤の在庫数(全収容数)に基づき、ユーザが薬剤を保管する箇所(例:薬剤棚)から取出し薬剤払出装置1に充填する薬剤の充填数を算出する。タッチパネル制御部216は、算出部241が算出した充填数を表示する。本実施形態では、薬剤シートが充填される場合を例に挙げて説明する。そのため、算出部241は、充填対象の薬剤について、上記在庫数に基づき、ユーザが薬剤を保管する箇所から取出し薬剤払出装置1に充填する薬剤シートの充填数を算出する。
【0133】
以下、上記薬剤の充填数を薬剤充填数と称し、上記薬剤シートの充填数をシート充填数と称する。また本実施形態では、算出部241は、薬剤充填数及びシート充填数を算出するものとして説明するが、薬剤充填数及びシート充填数の何れか一方のみを算出する構成であってもよい。また本実施形態では、上記薬剤を保管する箇所を、保管場所と称する。
【0134】
本実施形態では、制御部21が薬剤充填数及び/又はシート充填数を報知することにより、ユーザは、報知された情報に基づき、薬剤払出装置1に収容可能な数量の薬剤を過不足なく保管場所から取出し、薬剤払出装置1まで運ぶことができる。そのため、ユーザは、薬剤払出装置1に薬剤を充填するために、1度だけ保管場所に薬剤を取りに行けばよく、複数回の往復に費やしていた時間を他の作業に充てることが可能となる。
【0135】
なお、記憶部22には、例えば上述した情報が記憶されている。薬剤シートに収容されている薬剤については、記憶部22に、1つの薬剤シート(フルシート)に対して規定された薬剤の数(未開封のフルシートに予め収容された薬剤の数)を示す情報が記憶されている。1つのフルシートに対して規定された薬剤の数を、規定数と称する。規定数は、シート入り数と称されてもよい。規定数を示す情報は、処方データに含まれていてもよいし、タッチパネル12を介してユーザにより入力されてもよい。
【0136】
<薬剤充填数及びシート充填数の算出方法>
上述したように、制御部21は、薬剤が充填されるとき、当該薬剤を収容対象とするかカセットCa1に付されたバーコードが示す、当該カセットCa1のカセット識別情報を取得する。また制御部21は、薬剤が充填されるとき、当該薬剤に付されたバーコードが示す、当該薬剤の薬剤識別情報を取得する。そのため、算出部241は、充填される薬剤を収容対象とするカセットCa1の最大収容数、当該薬剤の収容数、及び、規定数を示す情報を記憶部22から取得できる。
【0137】
本実施形態では、算出部241は、シート充填数を例えば以下の式(1)を用いて算出し、薬剤充填数を例えば以下の式(2)を用いて算出する。
・シート充填数 = (最大収容数-収容数)/(規定数)…式(1)。右辺の算出結果が小数第1位の値を含む場合、算出部241は、小数第1位の値を繰り上げた結果を、シート充填数として特定する。小数第1位の値を繰り上げる理由については後述する。
・薬剤充填数 = (シート充填数)×(規定数)…式(2)。
【0138】
また本実施形態では、充填される薬剤を収容対象とするカセットCa1が複数存在する場合、算出部241は、上記式(1)の右辺の分子は、全てのカセットCa1について「(最大収容数-収容数)」を算出したときの合計値とする。つまり、上記式(1)の右辺の分子は、充填される薬剤を収容対象とする全てのカセットCa1の最大収容数の合計値から、薬剤払出装置1に収容されている当該薬剤の在庫数を減算した値である。在庫数を示す情報は、薬剤の種類毎に、カセット識別情報、薬剤の種類及び薬剤の収容数に基づき算出され、記憶部22に記憶されていてもよい。
【0139】
例えば、充填される薬剤αを収容対象とするカセットCa1が1つのみであり、当該カセットCa1の最大収容数が420錠、薬剤αの在庫数が123錠、薬剤αを収容する薬剤シートの規定数が14錠である場合を考える。この場合、算出部241は、上記式(1)を用いて、(420-123)/14=21.2・・と算出する。そのため、算出部241は、薬剤αのシート充填数を22枚と算出する。そして、算出部241は、上記式(2)を用いて、薬剤αの薬剤充填数を22×14=308錠と算出する。
【0140】
また例えば、充填される薬剤αを収容対象とするカセットCa1として、3つのカセットCa1A,Ca1B,Ca1Cが存在し、カセットCa1A,Ca1B,Ca1Cに収容される薬剤αの収容数がそれぞれ、3錠、230錠及び420錠である場合を考える。カセットCa1A,Ca1B,Ca1Cの最大収容数はそれぞれ420錠であり、薬剤αを収容する薬剤シートの規定数は14錠であるものとする。この場合、算出部241は、上記式(1)を用いて、{(420-3)+(420-230)+(420-420)}/14=43.3・・と算出する。そのため、算出部241は、薬剤αのシート充填数を44枚と算出する。そして、算出部241は、上記式(2)を用いて、薬剤αの薬剤充填数を44×14=616錠と算出する。
【0141】
ここで、上記式(1)の算出結果において小数第1位を繰り上げているのは、カセットCa1の運用に関係する。図8は、薬剤シートを収容可能なカセットCa1の一例を示す模式図である。カセットCa1は、例えば、フルシートを収容する第1収容部Ca11と、端数シートを収容する第2収容部Ca12と、を備える。本実施形態では、第2収容部Ca12は、第1収容部Ca11を構成するカセットCa1の側壁の外側に設けられている。これに限らず、第2収容部Ca12は、例えば、側壁の内側又は底壁等、ユーザがアクセスできる箇所に設けられていればよい。
【0142】
記憶部22には、第1収容部Ca11に収容されている薬剤の収容数と、第2収容部Ca12に収容されている薬剤の収容数との合計が、カセットCa1に収容されている薬剤の収容数として記憶されている。そのため、収容数を規定数で除算したときの商は第1収容部Ca11に収容されているフルシートの数を表しており、余りは第2収容部Ca12に収容されている端数シートの数を表している。
【0143】
従って、上記式(1)の算出結果において小数第1位を繰り下げた場合、算出部241は、第1収容部Ca11を満載にできるフルシートの数(保管場所から取出し薬剤払出装置1に運んでくるフルシートの数)よりも1枚少なく算出してしまうことになる。この場合、ユーザが算出部241の算出結果が示すフルシートの数分、フルシートを保管場所から取出し第1収容部Ca11に収容したとしても、第1収容部Ca11は満載状態とはならず、もう1枚収容できる状態となってしまう。そのため、ユーザによっては、第1収容部Ca11を満載状態とすべく、保管場所に再度薬剤シートを取りに行くことになる。
【0144】
一方、上記式(1)の算出結果において小数第1位を繰り上げた場合、第1収容部Ca11を満載にできるフルシートの数を算出できる。従って、ユーザは、充填対象の薬剤を保管場所に一度取りにいくだけで、第1収容部Ca11を満載にできる数の薬剤シートを過不足なく薬剤払出装置1まで運んでくることができる。
【0145】
上述のカセットCa1の最大収容数が420錠、薬剤αの在庫数が123錠、薬剤αを収容する薬剤シートの規定数が14錠である場合を考える。この場合、420/14=30であるため、第1収容部Ca11には最大30枚のフルシートを収容できる。また、123/14=8…11であるため、理論上、第1収容部Ca11に8枚のフルシートが収容されており、第2収容部Ca12に11個の端数シートが収容されていることになる。
【0146】
この状況において、算出部241が(420-123)/14=21.2・・と算出した結果から、シート充填数を21枚と算出した場合を考える。この場合、第1収容部Ca11に収容されているフルシートの数は8枚であるため、充填後の第1収容部Ca11のフルシートの数は、8+21=29枚となり、30枚よりも1枚少ない状態となる。一方、算出部241がシート充填数を22枚と算出した場合、8+22=30枚となるため、第1収容部Ca11をフルシートで満載にできる。
【0147】
なお、充填対象の薬剤が、薬剤シートに収容されていない薬剤である場合、算出部241は、充填される薬剤を収容対象とするカセットCa1の最大収容数から、薬剤の収容数を減算した値を、薬剤充填数として算出すればよい。
【0148】
<表示例>
図9は、タッチパネル12に表示される薬剤の充填画像の一例を示す図である。図9は、薬剤充填数及びシート充填数を表示する充填画像の一例を示す図である。図9の符号1011は、薬剤に付されたバーコードよりもカセットCa1に付されたバーコードを先に取得した場合の充填画像の一例を示す。図9の符号1012は、カセットCa1に付されたバーコードよりも薬剤に付されたバーコードを先に取得した場合の充填画像の一例を示す。図10は、2つのバーコードの照合時にタッチパネル12に表示される充填画像の一例を示す図である。図9及び図10は、1つのカセットCa1についての充填画像の一例を示す図である。また、図9及び図10の充填画像においても、図6の充填画像と同様、互いに異なる有効期限、ロット番号及び充填日が表示されてもよい。
【0149】
図9に示すように、充填画像には、例えば、カセット番号を表示する第1表示領域AR1、シート充填数を表示する第2表示領域AR2、薬剤充填数を表示する第3表示領域AR3、及び、ユーザへの報知情報を表示する第4表示領域AR4が含まれる。
【0150】
タッチパネル制御部216は、充填される薬剤を収容対象とするカセットCa1のカセット番号を第1表示領域AR1に表示する。充填される薬剤を収容対象とするカセットCa1が複数存在する場合、全てのカセットCa1のカセット番号が第1表示領域AR1に表示される。
【0151】
タッチパネル制御部216は、算出部241が算出したシート充填数及び薬剤充填数をそれぞれ、第2表示領域AR2及び第3表示領域AR3に表示する。従って、充填される薬剤を収容対象とするカセットCa1が複数存在する場合、全てのカセットCa1に収容する薬剤の数及び薬剤シートの数が、第2表示領域AR2及び第3表示領域AR3にそれぞれ表示される。
【0152】
カセットCa1に付されたバーコードを先に取得した場合、制御部21は、バーコードが示すカセット識別情報に基づき、薬剤の種類を特定する。そして、制御部21は、特定した種類の薬剤を収容する全てのカセット識別情報を特定する。これにより、制御部21は、充填対象とする薬剤を収容する全てのカセットCa1を特定すると共に、各カセットCa1に収容されている薬剤の収容数及び最大収容数を取得できる。また、図9の符号1011に示すように、タッチパネル制御部216は、充填対象の薬剤に付されたバーコードをバーコードリーダ13に読取らせることをユーザに促す報知情報を、第4表示領域AR4に表示する。
【0153】
一方、充填対象の薬剤に付されたバーコードを先に取得した場合、制御部21は、バーコードが示す薬剤識別情報に基づき、充填対象の薬剤を収容する全てのカセットCa1(カセット識別情報)を特定する。これにより、各カセットCa1に収容されている薬剤の収容数及び最大収容数を取得できる。また、図9の符号1012に示すように、タッチパネル制御部216は、充填対象の薬剤を収容するカセットCa1に付されたバーコードをバーコードリーダ13に読取らせることをユーザに促す報知情報を、第4表示領域AR4に表示する。
【0154】
このような表示を行うことにより、ユーザは、カセットCa1を満載にできる数の薬剤シートを、過不足なく、保管場所から薬剤払出装置1に運んでくることができる。
【0155】
制御部21は、もう一方のバーコードを取得した場合、取得した2つのバーコードの照合を行う。図9の符号1011では、カセットCa1に付されたバーコードを取得した後に、充填対象の薬剤に付されたバーコードを取得した場合に、取得した2つのバーコードの照合を行う。図9の符号1012では、充填対象の薬剤に付されたバーコードを取得した後に、カセットCa1に付されたバーコードを取得した場合に、取得した2つのバーコードの照合を行う。
【0156】
そして、図10に示すように、タッチパネル制御部216は、第4表示領域AR4に、2つのバーコードの照合結果を表示する。このとき、タッチパネル制御部216は、第1表示領域AR1及び第2表示領域AR2を非表示に切り替える。また、タッチパネル制御部216は、1つのカセットCa1に充填した薬剤の数を示す情報が入力された場合に、その充填数(図中の「充填量」)を表示すると共に、薬剤に付されたバーコードから取得した有効期限及びロット番号を表示する。
【0157】
〔実施形態6〕
ある患者に処方された複数種類の薬剤について、薬剤払出装置1から払出されると共に、薬剤取出可能装置3から取出される場合がある。例えば、ある患者の処方データにおいて、薬剤シートに収容された薬剤と、軟膏とが含まれている場合、上位システムは、薬剤シートに収容された薬剤の払出しを薬剤払出装置1に指示し、軟膏の払出しを薬剤取出可能装置3に指示する。これにより、薬剤払出装置1は薬剤シートを払出し、薬剤取出可能装置3は軟膏の取出しが可能な状態とする。
【0158】
このような場合、薬剤払出装置1から払出された薬剤を収容するトレイ120と、薬剤取出可能装置3から取出された薬剤を収容するトレイ(トレイ120とは異なるトレイ)とを、これらのトレイとは異なる1つのトレイに収集する作業が行われる。この作業において、ユーザが、各トレイに収容された薬剤が同一処方に対応する薬剤であるかを目視により判断する場合、判断のための手間が発生すると共に、判断に間違いが生じる可能性がある。
【0159】
上述したように、薬剤払出装置1も薬剤取出可能装置3も、薬剤と共に、当該薬剤に関する情報を印刷したジャーナルをトレイに収容する。本実施形態では、薬剤払出装置1の印刷部14及び薬剤取出可能装置3の出力部324は、このジャーナルに、処方を特定可能な処方特定情報を印刷する。
【0160】
例えば、上位システムは、各処方に対して、処方を識別する処方識別情報(例えば処方箋番号)を付与し、この処方識別情報を処方データに含めて、薬剤払出装置1及び薬剤取出可能装置3に送信する。印刷部14及び出力部324はそれぞれ、受信した処方識別情報を示すバーコードを、処方特定情報としてジャーナルに印刷する。図11は、印刷部14が薬剤に関する情報と共にバーコードBCを印刷したジャーナルの一例である。
【0161】
ユーザは、バーコードを読取り可能な読取装置を有する携帯型端末に、各トレイに収容されているジャーナルのバーコードを読取らせる。携帯型端末は、例えば、補助装置2であってよい。携帯型端末は、複数のバーコードを取得した場合、これらのバーコードが示す処方識別情報が一致するかを判定し、その判定結果を表示する。これにより、各トレイに収容された薬剤を1つのトレイに収集する作業において、目視の場合よりもユーザの手間を削減できると共に、同一処方に対応するかどうかの判断に間違いが生じる可能性を低減できる。
【0162】
なお、上位システムは、同一処方において、一方の装置からのみ薬剤を払出すと決定した場合、一方の装置には、薬剤に関する情報及び処方識別情報を送信し、他方の装置には、処方識別情報のみを送信する。これにより、他方の装置は、当該処方については一方の装置のみで薬剤の払出し又は取出しが完了する旨の情報を、ジャーナルに印刷できる。そのため、ユーザは、他方の装置から薬剤が払出されていない又は取出されていないことを、容易に認識できる。
【0163】
〔実施形態7〕
図12及び図13は、薬剤払出装置1Cの一例を概略的に示す模式図である。図12及び図13に示すように、薬剤払出装置1Cは、例えば、制御部21C、撮像部25、第1照明部26、第2照明部27、及び、ピンアートボード28を備える。制御部21Cは、撮像部25、第1照明部26及び第2照明部27の動作を制御すると共に、薬剤シート(フルシート)における切断位置を特定する機能を有する。薬剤払出装置1が薬剤払出装置1Cの構成及び機能を有していてもよい。
【0164】
薬剤払出装置1Cは、薬剤シートを切断する切断部を備える。制御部21Cは、薬剤シートが収容する薬剤の部分(以下、ポケット部MSPと称する)を切断しないよう、薬剤シートの切断前に薬剤の切断位置を特定する。
【0165】
薬剤払出装置1Cは、切断位置を示すマスタ情報を薬剤の種類毎に記憶していてもよい。しかしこの場合、例えば、薬剤払出装置1Cで取扱う薬剤として新たな薬剤が追加される場合、薬剤払出装置1Cは、当該薬剤のマスタ情報を記憶していないため、当該薬剤のマスタ情報を新たに記憶する必要がある。また例えば、薬剤払出装置1Cにマスタ情報が記憶されている薬剤について、薬剤シートのデザインの変更等、薬剤の包装形態に変更が生じた場合、マスタ情報を更新する必要がある。搬送先の異なる複数の薬剤払出装置1Cのマスタ情報を一括で管理している場合、マスタ情報の新規登録又は更新のために、搬送先から管理元に連絡を取り、管理元にてマスタ情報を作成し、搬送先に提供することになる。
【0166】
薬剤払出装置1Cによれば、マスタ情報を記憶していなくても、薬剤シートの切断位置を特定できる。従って、マスタ情報を記憶している場合に生じ得る、マスタ情報の新規登録又は更新に要する手間を削減できる。但し、薬剤払出装置1Cは、特定した薬剤シートの切断位置をマスタ情報として新たに記憶してもよいし、既に記憶されているマスタ情報を、特定した薬剤シートの切断位置に更新してもよい。
【0167】
図12に示すように、払出対象の薬剤を収容する薬剤シートMSが第2照明部27の上面に載置された状態で、制御部21Cは、第2照明部27をオンにする。第2照明部27により薬剤シートMSがその下方から照明されている状態において、第2照明部27の上方に位置する撮像部25が、薬剤シートMSを撮像する。第2照明部27の照明により、撮像部25は、薬剤シートMSの外形を鮮明に撮像できる。制御部21Cは、撮像画像から、第2照明部27における薬剤シートMSの位置及び大きさを特定する。
【0168】
図14の符号1031は、第2照明部27における薬剤シートMSの位置を模式的に示す平面図である。薬剤シートMSの位置は、例えば、撮像領域において予め定められた位置を原点Oとするxy平面における位置として特定される。図14の符号1031の例では、制御部21Cは、第2照明部27の1つの角部を原点Oとしたxy平面における薬剤シートMSの対角線上に位置する2つの角部(座標a、b)を、薬剤シートMSの位置として特定する。薬剤シートMSの角部が丸みを有している場合、制御部21Cは、薬剤シートMSの各辺を延伸した仮想線Lの交点を、薬剤シートMSの角部として特定する。また、制御部21Cは、特定した薬剤シートMSの位置から薬剤シートMSの大きさ(図14の例では、x軸方向の長さLx及びy軸方向の長さLy)を特定する。
【0169】
次に、図13に示すように、薬剤シートMSが載置された第2照明部27の上面に、ピンアートボード28を載置する。薬剤払出装置1Cが、ピンアートボード28の位置を変更する機構(不図示)を有している場合、制御部21Cは当該機構を制御することにより、自動で、第2照明部27の上面にピンアートボード28を移動させることができる。薬剤払出装置1Cは、第2照明部27の位置を変更する機構(不図示)を有していてもよい。この場合、制御部21Cは当該機構を制御することにより、自動で、ピンアートボード28の下面に第2照明部27の上面を押付けることができる。また、薬剤払出装置1Cが当該機構を備えず、ユーザが手動で、第2照明部27の上面にピンアートボード28を載置してもよい。
【0170】
ピンアートボード28は、複数のピンが平面上に設けられたボードである。複数のピンは、軸方向(複数のピンが設けられた平面に対して略垂直な方向)に移動可能に設けられている。そのため、図13の符号1022に示すように、第2照明部27の上面に位置する薬剤シートMSにピンアートボード28を押当てることにより、ピンアートボード28の、薬剤シートMSのポケット部MSPに対応するピン部分281が浮き上がる。この状態で、制御部21Cは第1照明部26をオンにし、撮像部25を制御して、ピンアートボード28を撮像する。これにより、制御部21Cは、撮像画像から、ポケット部MSPに対応するピン部分281の位置を特定できる。撮影画像は、例えば、フォトメリックステレオ画像であってよい。この場合、制御部21Cは、精度よくピン部分281の位置を特定できる。
【0171】
その後、制御部21Cは、最初の撮像画像から取得した薬剤シートMSの位置及び大きさから特定される薬剤シートMSに、次の撮像画像から取得したピン部分281の位置を当てはめる。これにより、図14の符号1032に示すように、制御部21Cは、ポケット部MSPに対応するピン部分281を切断しないように、切断位置として、x軸方向の切断線CLx(縦カット位置)、及び、y軸方向の切断線CLy(横カット位置)を特定できる。図14の符号1032は、特定された薬剤シートMSの切断位置の一例を模式的に示す平面図である。
【0172】
一般に、薬剤払出装置1Cに収容し得る薬剤の種類は数千存在することから、薬剤シートの種類も多岐に亘る。また、ポケット部MSPは無色透明である。そのため、あらゆる薬剤シートMSのポケット部MSPを撮像画像から特定するためには、撮像部25として、高解像度の撮像部又は3D(dimension)センサを設けることを要する。
【0173】
一方、ピンアートボード28のピンは、任意の素材及び色を用いて作成できる。そのため、撮像画像からピン部分281を特定しやすいように、ピンの素材及び色を選択できる。また、制御部21Cは、多数の種類に及ぶ薬剤シートMSにおけるポケット部MSPの位置特定を、ピン部分281の位置特定(すなわち、ピンという1種類の指標に基づく位置特定)に代えることができる。そのため、ピンアートボード28を用いてポケット部MSPの位置を特定する場合、撮像部25が高性能な撮像機能を有していなくても、制御部21Cは、撮像画像から、ポケット部MSPに対応するピン部分281を特定できる。
【0174】
従って、薬剤払出装置1Cによれば、安価で、かつ、マスタ情報を必ずしも必要せずに、薬剤シートMSの切断位置を特定できる。
【0175】
なお、本実施形態では、薬剤シートMSの切断位置を特定する機能を、薬剤払出装置1Cが有するものとして説明した。しかし、これに限らず、薬剤払出装置1Cと通信可能に接続される装置により、薬剤シートMSの切断位置が特定されてもよい。
【0176】
〔ソフトウェアによる実現例〕
薬剤払出装置1、1C、第1薬剤払出装置1A(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部21,21A,21Cに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0177】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0178】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0179】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0180】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0181】
〔付記事項〕
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0182】
1 薬剤払出装置(装置、第1装置、薬剤保管装置)
2 補助装置(第2装置)
3 薬剤取出可能装置(装置、第1装置、薬剤保管装置)
22 記憶部(記憶装置)
211 特定部(第1取得部)
212 取得部(第2取得部)
213 判定部
214 決定部
215 印刷制御部(報知部)
216 タッチパネル制御部(報知部)
217 送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14