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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025162728
(43)【公開日】2025-10-28
(54)【発明の名称】検証システム及び検証方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/18 20090101AFI20251021BHJP
【FI】
H04W16/18
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066118
(22)【出願日】2024-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小川 大介
(72)【発明者】
【氏名】平尾 雄也
(72)【発明者】
【氏名】木村 康佑
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE10
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】複数の無線アクセスポイントの配置を検証して撤去可能な無線アクセスポイントを適切に抽出することが可能な技術の実現が望まれる。
【解決手段】検証システム40は、基準電波強度設定部42と電波強度情報取得部41と検証処理部44とを備える。基準電波強度設定部42は、対象エリア内の複数の観測地点のそれぞれにおける基準電波強度を設定する。電波強度情報取得部41は、観測地点毎に演算された電波強度の予測値及び観測地点毎に計測された電波強度の実測値の少なくとも一方である観測地点電波強度情報を取得する。検証処理部44は、観測地点電波強度情報に基づいて検証処理を行う。検証処理は、複数の観測地点の全てにおいて基準電波強度以上の電波強度が確保されるという電波強度条件を満たしつつ撤去可能である無線アクセスポイントを抽出する、撤去可能アクセスポイント抽出処理を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象エリアに電波を提供するように配置された複数の無線アクセスポイントを備え、前記対象エリアを移動する移動体との無線通信を行う無線通信システムを対象とした検証システムであって、
前記対象エリアの形状の情報、及び、前記対象エリアにおける電波の伝搬に影響を与える物体の配置の情報を含む情報を、レイアウト情報とし、複数の前記無線アクセスポイントの配置を示す情報を、配置情報として、
前記対象エリア内の複数の観測地点のそれぞれにおける前記無線通信システムからの電波強度の基準値である基準電波強度を設定する基準電波強度設定部と、
前記レイアウト情報と前記配置情報とに基づいて前記観測地点毎に演算された、複数の前記無線アクセスポイントのそれぞれから提供される前記電波強度の予測値、及び、前記観測地点毎に計測された、複数の前記無線アクセスポイントのそれぞれから提供される前記電波強度の実測値、の少なくとも一方である観測地点電波強度情報を取得する電波強度情報取得部と、
前記観測地点電波強度情報に基づいて、複数の前記無線アクセスポイントの配置についての検証処理を行う検証処理部と、を備え、
前記検証処理は、複数の前記無線アクセスポイントの中から、複数の前記観測地点の全てにおいて前記基準電波強度以上の前記電波強度が確保されるという電波強度条件を満たしつつ撤去可能である前記無線アクセスポイントを抽出する、撤去可能アクセスポイント抽出処理を含む、検証システム。
【請求項2】
複数の前記観測地点のそれぞれにおける、前記基準電波強度以上の前記電波強度を提供する前記無線アクセスポイントの数のしきい値であるアクセスポイント数しきい値を設定するアクセスポイント数しきい値設定部を更に備え、
前記撤去可能アクセスポイント抽出処理では、前記電波強度条件に加えて、複数の前記観測地点の全てにおいて前記基準電波強度以上の前記電波強度を提供する前記無線アクセスポイントの数が前記アクセスポイント数しきい値以上であるというアクセスポイント数条件も満たすように、撤去可能な前記無線アクセスポイントを抽出する、請求項1に記載の検証システム。
【請求項3】
前記検証処理部は、前記撤去可能アクセスポイント抽出処理において、複数の前記無線アクセスポイントの全てが対象アクセスポイントに設定されていると共に複数の前記観測地点の全てが対象地点に設定されている状態から、撤去不可アクセスポイント設定処理と、対象地点設定処理と、を繰り返し実行し、
前記撤去不可アクセスポイント設定処理は、前記対象アクセスポイントに設定されている前記無線アクセスポイントのうち、前記基準電波強度以上の前記電波強度を提供している前記対象地点の数が最も多い前記無線アクセスポイントが、1つ以上の前記対象地点に対して前記基準電波強度以上の前記電波強度を提供している場合に、当該無線アクセスポイントを、撤去不可アクセスポイントに設定して前記対象アクセスポイントから除外する処理であり、
前記対象地点設定処理は、前記撤去不可アクセスポイントが新たに設定される毎に、前記対象地点に設定されている前記観測地点のうち、前記アクセスポイント数しきい値以上の前記撤去不可アクセスポイントにより前記基準電波強度以上の前記電波強度が提供されている前記観測地点を、電波確保済地点に設定して前記対象地点から除外する処理であり、
前記検証処理部は、前記撤去不可アクセスポイント設定処理において、前記基準電波強度以上の前記電波強度を提供している前記対象地点がなくなった前記対象アクセスポイントを、撤去可能な前記無線アクセスポイントとして抽出する、請求項2に記載の検証システム。
【請求項4】
前記移動体は、予め定められた移動経路に沿って移動するように構成され、
前記観測地点は、少なくとも前記移動経路に沿った地点に設定されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の検証システム。
【請求項5】
前記基準電波強度設定部は、前記移動経路の区間毎に複数の段階を設定し、前記基準電波強度を前記段階に応じて異なる値に設定する、請求項4に記載の検証システム。
【請求項6】
前記検証処理は、前記観測地点電波強度情報に基づいて、複数の前記観測地点のうち、前記基準電波強度以上の前記電波強度が提供されない前記観測地点である電波強度不足地点があると判定した場合に、前記電波強度不足地点に対して前記基準電波強度以上の前記電波強度を提供できる位置に新たな前記無線アクセスポイントを追加する修正のためのデータを生成する処理を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の検証システム。
【請求項7】
対象エリアに電波を提供するように配置された複数の無線アクセスポイントを備え、前記対象エリアを移動する移動体との無線通信を行う無線通信システムを対象とした検証方法であって、
前記対象エリアの形状の情報、及び、前記対象エリアにおける電波の伝搬に影響を与える物体の配置の情報を含む情報を、レイアウト情報とし、複数の前記無線アクセスポイントの配置を示す情報を、配置情報として、
前記対象エリア内の複数の観測地点のそれぞれにおける前記無線通信システムからの電波強度の基準値である基準電波強度を設定する基準電波強度設定工程と、
前記レイアウト情報と前記配置情報とに基づいて前記観測地点毎に演算された、複数の前記無線アクセスポイントのそれぞれから提供される前記電波強度の予測値、及び、前記観測地点毎に計測された、複数の前記無線アクセスポイントのそれぞれから提供される前記電波強度の実測値、の少なくとも一方である観測地点電波強度情報を取得する電波強度情報取得工程と、
前記観測地点電波強度情報に基づいて、複数の前記無線アクセスポイントの配置についての検証処理を行う検証処理工程と、を備え、
前記検証処理は、複数の前記無線アクセスポイントの中から、複数の前記観測地点の全てにおいて前記基準電波強度以上の前記電波強度が確保されるという電波強度条件を満たしつつ撤去可能である前記無線アクセスポイントを抽出する、撤去可能アクセスポイント抽出処理を含む、検証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムを対象とした検証システム及び検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムの一例が、特開2022-160219号公報(特許文献1)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。特許文献1に記載の無線通信システムは、複数の無線アクセスポイント(AP)を備えており、端末(T)との無線通信を行うように構成されている。特許文献1には、無線アクセスポイント(AP)の配置対象となる配置対象エリアが、少なくとも周囲に壁面(Sw)を有するエリアである場合に、電波の壁面(Sw)での反射を考慮して無線アクセスポイント(AP)を配置することが記載されている。具体的には、特許文献1の図7に示されているように、壁面(Sw)を含む領域での無線アクセスポイント(AP)のカバーエリアの半径(Rca1)を、壁面(Sw)を含まない領域での無線アクセスポイント(AP)のカバーエリアの半径(Rca2)よりも大きい値に設定し、これらの半径(Rca1,Rca2)から配置対象エリアに応じた無線アクセスポイント(AP)の配置を行うことが記載されている。特許文献1によれば、このように無線アクセスポイント(AP)を配置することで、配置対象エリアに配置する無線アクセスポイント(AP)の数を最適化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-160219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、対象エリア(無線アクセスポイントから電波が提供されるエリア)における電波の伝搬は、一般に、特許文献1で考慮されているような壁だけでなく、対象エリアに配置される設備等の各種物体による影響を受ける。また、その影響の大きさは、同じ種類の物体であっても物体毎に(例えば、壁面の材質によって)変わり得る。そのため、特許文献1に記載の技術のように壁面の有無によってカバーエリアの半径を異ならせるだけでは、複数の無線アクセスポイントの配置を必ずしも最適化することはできず、例えば必要以上に多くの無線アクセスポイントが配置されるおそれがある。このように必要以上に多くの無線アクセスポイントが配置される場合、不要な無線アクセスポイントを撤去することで、電波干渉の抑制やコストの低減を図ることができる。従って、複数の無線アクセスポイントの配置を検証して、撤去可能な無線アクセスポイントがある場合にはそれを適切に抽出できることが望ましいが、特許文献1にはこのような検証についての記載はない。
【0005】
そこで、複数の無線アクセスポイントの配置を検証して撤去可能な無線アクセスポイントを適切に抽出することが可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る検証システムは、対象エリアに電波を提供するように配置された複数の無線アクセスポイントを備え、前記対象エリアを移動する移動体との無線通信を行う無線通信システムを対象とした検証システムであって、前記対象エリアの形状の情報、及び、前記対象エリアにおける電波の伝搬に影響を与える物体の配置の情報を含む情報を、レイアウト情報とし、複数の前記無線アクセスポイントの配置を示す情報を、配置情報として、前記対象エリア内の複数の観測地点のそれぞれにおける前記無線通信システムからの電波強度の基準値である基準電波強度を設定する基準電波強度設定部と、前記レイアウト情報と前記配置情報とに基づいて前記観測地点毎に演算された、複数の前記無線アクセスポイントのそれぞれから提供される前記電波強度の予測値、及び、前記観測地点毎に計測された、複数の前記無線アクセスポイントのそれぞれから提供される前記電波強度の実測値、の少なくとも一方である観測地点電波強度情報を取得する電波強度情報取得部と、前記観測地点電波強度情報に基づいて、複数の前記無線アクセスポイントの配置についての検証処理を行う検証処理部と、を備え、前記検証処理は、複数の前記無線アクセスポイントの中から、複数の前記観測地点の全てにおいて前記基準電波強度以上の前記電波強度が確保されるという電波強度条件を満たしつつ撤去可能である前記無線アクセスポイントを抽出する、撤去可能アクセスポイント抽出処理を含む。
【0007】
本開示に係る検証方法は、対象エリアに電波を提供するように配置された複数の無線アクセスポイントを備え、前記対象エリアを移動する移動体との無線通信を行う無線通信システムを対象とした検証方法であって、前記対象エリアの形状の情報、及び、前記対象エリアにおける電波の伝搬に影響を与える物体の配置の情報を含む情報を、レイアウト情報とし、複数の前記無線アクセスポイントの配置を示す情報を、配置情報として、前記対象エリア内の複数の観測地点のそれぞれにおける前記無線通信システムからの電波強度の基準値である基準電波強度を設定する基準電波強度設定工程と、前記レイアウト情報と前記配置情報とに基づいて前記観測地点毎に演算された、複数の前記無線アクセスポイントのそれぞれから提供される前記電波強度の予測値、及び、前記観測地点毎に計測された、複数の前記無線アクセスポイントのそれぞれから提供される前記電波強度の実測値、の少なくとも一方である観測地点電波強度情報を取得する電波強度情報取得工程と、前記観測地点電波強度情報に基づいて、複数の前記無線アクセスポイントの配置についての検証処理を行う検証処理工程と、を備え、前記検証処理は、複数の前記無線アクセスポイントの中から、複数の前記観測地点の全てにおいて前記基準電波強度以上の前記電波強度が確保されるという電波強度条件を満たしつつ撤去可能である前記無線アクセスポイントを抽出する、撤去可能アクセスポイント抽出処理を含む。
【0008】
これらの検証システムや検証方法によれば、複数の無線アクセスポイントの配置についての検証処理を、観測地点毎の電波強度である観測地点電波強度情報に基づいて行うことができるため、検証処理に含まれる撤去可能アクセスポイント抽出処理において、撤去可能な無線アクセスポイントを適切に抽出することができる。この際、観測地点電波強度情報は、観測地点毎に演算された電波強度の予測値及び観測地点毎に計測された電波強度の実測値の少なくとも一方であるため、実際に無線アクセスポイントを設置しているか否かにかかわらず、撤去可能な無線アクセスポイントを適切に抽出することができる。以上のように、上記の検証システムや検証方法によれば、複数の無線アクセスポイントの配置を検証して、撤去可能な無線アクセスポイントを適切に抽出することが可能となっている。
【0009】
検証システム及び検証方法の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】対象エリアの一例を示す図
図2】移動体の一例を示す図
図3】実施形態に係る検証システムの構成を示すブロック図
図4】観測地点の一例を示す図
図5】実施形態に係る事前処理及び検証処理を示すフローチャート
図6】実施形態に係る撤去可能アクセスポイント抽出処理を示すフローチャート
図7】アクセスポイント毎の通信エリアの3つの例(第1例、第2例、第3例)を示す図
図8】第1例についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図
図9】第1例についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図
図10】第1例についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図
図11】第1例についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図
図12】第2例についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図
図13】第2例についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図
図14】第2例についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図
図15】第2例についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図
図16】第3例についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図
図17】第3例についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図
図18】第3例についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図
図19】第3例についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
無線通信システムを対象とした検証システム、及び、無線通信システムを対象とした検証方法の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、検証システムを中心に説明するが、本明細書で開示する検証システムの種々の技術的特徴は、検証方法や検証プログラム(コンピュータを検証システムとして機能させるためのプログラム)にも適用可能であり、検証システム、検証方法、及び検証プログラムに加えて、検証プログラムが記憶された記憶媒体(例えば、光ディスクやフラッシュメモリ等の、コンピュータが読み取り可能な記録媒体)も、本明細書によって開示される。
【0012】
検証システム40は、無線通信システム30を対象とした(具体的には、検証対象とした)システムである。図1に示すように、無線通信システム30は、対象エリアTAに電波を提供するように配置された複数の無線アクセスポイント31を備えている。対象エリアTAは、後述する移動体10が移動するエリアである。図1に示す例では、全ての無線アクセスポイント31が対象エリアTAに配置されているが、無線アクセスポイント31は、対象エリアTAに電波を提供するように配置されていればよく、複数の無線アクセスポイント31のうちの少なくとも一部の無線アクセスポイント31が、対象エリアTAの外部に配置されていてもよい。なお、本明細書では、無線通信に用いる電磁波を「電波」と称しており、「電波」は、特定の周波数帯の電磁波に限定されない。本実施形態では、一例として、「電波」は、無線LAN(Local Area Network)で用いられる周波数の電磁波とされている。
【0013】
無線通信システム30は、対象エリアTAを移動する移動体10との無線通信を行う。具体的には、複数の無線アクセスポイント31のうちの移動体10と通信可能に接続された無線アクセスポイント31が、当該移動体10との無線通信を行う。本実施形態では、無線通信システム30は、対象エリアTAを移動する複数の移動体10との無線通信を行う。移動体10は、無線アクセスポイント31と無線通信を行うことが可能な通信モジュールを備えている。移動体10は、いずれかの無線アクセスポイント31(例えば、電波強度が最も強い無線アクセスポイント31)との通信リンクを確立することで、当該無線アクセスポイント31と通信可能に接続される。移動体10の移動に伴い、当該移動体10が通信リンクを確立する相手となる無線アクセスポイント31の切り替え(ローミング)が行われる。図1では、無線アクセスポイント31から基準電波強度以上の電波強度が提供される(言い換えれば、基準電波強度以上の強度の電波が到達する)通信エリアAを、簡略化して、各無線アクセスポイント31を中心とする円で表している。電波強度は、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)の数値で表される。
【0014】
本実施形態では、移動体10は、自ら移動するように構成されている。そのため、移動体10は、移動のための駆動力源(例えば、電動モータ)を備えている。移動体10は、例えば、自律的に又は遠隔操作によって移動する。本実施形態では、図2に示すように、移動体10は、物品搬送体であり、物品2の搬送のために移動するように構成されている。物品搬送体として、図2に例示するような物品搬送車や、物品搬送用の飛行体(例えば、ドローン)を例示することができる。なお、移動体10は、物品2の搬送以外の目的(例えば、監視や情報収集等)で移動するように構成されていてもよい。また、移動体10が移動するエリアである対象エリアTAは、屋外(建物外)のエリアであってもよいが、本実施形態では、対象エリアTAは、屋内(建物内)のエリアとされている。
【0015】
図2に例示する移動体10としての物品搬送車は、天井から吊り下げ支持されたレール4に沿って走行する天井搬送車である。この移動体10は、レール4の走行面を転動する走行輪13を備えた走行部12と、走行部12に連結された本体部14と、を備えている。走行輪13が電動モータ等の駆動力源により回転駆動されることで、走行部12がレール4に沿って走行する。これにより、移動体10は、レール4によって形成される移動経路3に沿って移動する。物品2は、本体部14に収容された状態で、移動体10によって搬送される。物品2は、例えば、半導体ウエハを収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)とされる。なお、移動体10としての物品搬送車は、天井搬送車に限らず、床面に設けられたレールに沿って走行する有軌道搬送車や、AGV(Automated Guided Vehicle)やAMR(Autonomous Mobile Robot)等の無軌道搬送車であってもよい。移動体10が無軌道搬送車である場合、移動体10の移動経路3は、例えば、床面に設けられた複数の被検出体(2次元コードや無線タグ等)を繋ぐように設定され、或いは、周囲環境の認識結果に基づく計算によって自由に設定される。
【0016】
図1は、無線通信システム30が適用される設備の一例として、移動体10により物品2(図2参照)が搬送される搬送設備1を示している。図1及び図4は、搬送設備1の平面レイアウト(平面視でのレイアウト)を表しており、紙面に直交する方向が上下方向(高さ方向)に相当する。図1に示す例では、複数の設備5が対象エリアTAに設けられており、移動体10の移動経路3は、複数の設備5を経由するように予め定められている。設備5として、物品2(或いは物品2に収容された収容物)を処理対象とする処理装置や、物品2を保管する保管装置を例示することができる。設備5は、物品2の搬送元や物品2の搬送先となり得る。
【0017】
図1に示す搬送設備1は、移動体10(ここでは、複数の移動体10)を制御する制御装置7を備えている。制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置と、メモリ等の周辺回路とを備えており、制御装置7の各機能は、演算処理装置等のハードウェアと、当該ハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により実現される。制御装置7は、物品2の搬送のためのタスクをいずれかの移動体10に割り当てる。タスクを割り当てられた移動体10は、当該タスクを実行するように制御される。例えば、搬送元から搬送先に物品2を搬送する搬送タスクを割り当てられた移動体10は、搬送タスクで指定された搬送元まで移動して物品2を受け取った後、搬送タスクで指定された移動先まで移動して物品2を引き渡すように制御される。
【0018】
制御装置7は、移動体10の現在位置(本実施形態では、複数の移動体10のそれぞれの現在位置)を把握している。本実施形態では、移動体10が自身の現在位置を認識するように構成されており、制御装置7は、移動体10の現在位置の情報を当該移動体10から取得する。詳細は省略するが、例えば、位置情報を保持する被検出体(例えば、1次元コード、2次元コード、無線タグ等)が、移動経路3に沿った複数の位置に設けられ、移動体10が、被検出体が保持する位置情報を読み取ることで、自身の現在位置を認識する構成とすることができる。移動体10は、例えば、読み取った位置情報と、当該位置情報を読み取ってからの移動距離とに基づき、自身の現在位置を認識する。移動体10が、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機等の測位装置の出力に基づき、自身の現在位置を認識する構成とすることもできる。
【0019】
図1に示す例では、無線通信システム30は、制御装置7と移動体10との間の通信を行う。無線通信システム30は、複数の無線アクセスポイント31と制御装置7とを通信可能に接続するように構成されている。具体的には、無線通信システム30は、複数の無線アクセスポイント31と制御装置7との間の通信ネットワークを構築するための装置(例えば、LANケーブルやハブ等)を備えている。無線アクセスポイント31は、移動体10と制御装置7との間の通信を中継する。
【0020】
次に、検証システム40の構成について説明する。図3に示すように、検証システム40は、電波強度情報取得部41と、基準電波強度設定部42と、検証処理部44と、を備えている。本実施形態では、検証システム40は、更に、アクセスポイント数しきい値設定部43を備えている。検証システム40が備えるこれらの機能部(41~44)は、少なくとも論理的に区別されるものであり、物理的には必ずしも区別される必要はない。検証システム40(具体的には、検証システム40が備える制御装置)は、演算処理装置と周辺回路とを備えており、検証システム40が備える各機能部の機能は、演算処理装置等のハードウェアと、当該ハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により実現される。なお、検証システム40は、単一の装置(例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータ)ではなく、互いに通信可能な複数の装置によって実現されてもよい。
【0021】
電波強度情報取得部41は、観測地点電波強度情報を取得する機能部である。観測地点電波強度情報を取得する工程が、無線通信システム30を対象とした検証方法における「電波強度情報取得工程」に相当し、その工程の実行により「電波強度情報取得機能」が実現される。詳細は後述するが、観測地点電波強度情報は、観測地点P毎の電波強度の情報である。観測地点Pは、対象エリアTA内に複数設定される。観測地点Pは、作業者等により手動で設定され、或いは、検証システム40により自動で設定される。後者の場合、例えば、対象エリアTAの形状の情報及び移動体10の移動経路3の情報に基づき、観測地点Pが検証システム40により設定される。
【0022】
図1に示す例のように、移動体10が予め定められた移動経路3に沿って移動するように構成される場合には、観測地点Pが少なくとも移動経路3に沿った地点に設定されると好適である。この場合に、観測地点Pが移動経路3に沿った地点以外の地点にも設定されていてもよいが、観測地点Pが移動経路3に沿った地点のみに設定される構成とすることもできる。移動体10の移動経路3が、予め定められずにその都度自由に設定される場合であっても、設定され得る移動経路3をある程度絞り込める場合には、観測地点Pが少なくとも、設定され得る移動経路3に沿った地点に設定されると好適である。
【0023】
観測地点Pは、例えば、対象エリアTAを分割(メッシュ分割)して設定される複数のメッシュのそれぞれに設定される。例えば、図4に示す例のように、対象エリアTAを2次元に分割(ここでは、互いに直交する2つの水平方向に分割)して設定される複数のメッシュのそれぞれに観測地点Pが設定される。この場合、観測地点Pの高さ(上下方向の位置)は、例えば、移動経路3の高さ(或いは、移動経路3を移動する移動体10の高さ)に設定される。なお、図4では、第1地点P1、第2地点P2、及び第3地点P3の3種類の観測地点Pを示しているが、第1地点P1、第2地点P2、及び第3地点P3については後述する。
【0024】
図4に示す例では、観測地点Pを、メッシュと同じ範囲を有する地点としているが、観測地点Pを、メッシュよりも狭い範囲を有する地点としてもよい。この場合、例えば、メッシュにおける代表地点(例えば、中心地点)が観測地点Pとして設定される。また、図4に示す例では、対象エリアTAの全体を均等に分割しているが、メッシュの大きさを対象エリアTA内の場所に応じて異ならせてもよい。また、観測地点Pは、対象エリアTAの全体に亘って設定する必要はなく、対象エリアTAにおける、無線通信システム30と移動体10との無線通信が必要なエリア(例えば、移動経路3が配置されたエリア)に少なくとも設定されていればよい。すなわち、観測地点Pは、対象エリアTA内の各エリアの特性(例えば、移動経路3が配置されているか否か)に応じて偏在するように設定されてもよい。例えば、複数のメッシュのうちの移動経路3を含むメッシュのみに、観測地点Pを設定することができる。この場合、観測地点Pは、移動経路3に沿った地点のみに設定される。
【0025】
上述したように、観測地点電波強度情報は、観測地点P毎の電波強度の情報である。具体的には、観測地点電波強度情報は、「観測地点P毎に演算された、複数の無線アクセスポイント31のそれぞれから提供される電波強度の予測値」、及び、「観測地点P毎に計測された、複数の無線アクセスポイント31のそれぞれから提供される電波強度の実測値」、の少なくとも一方である。観測地点電波強度情報が上記の予測値である場合には、全ての観測地点Pに予測値が与えられる。観測地点電波強度情報が上記の実測値である場合には、全ての観測地点Pに実測値が与えられる。観測地点電波強度情報が上記の予測値及び実測値の双方である場合には、下記の3つの場合が含まれる。第1の場合は、複数の観測地点Pの全てに予測値及び実測値の双方が与えられる場合である。第2の場合は、一部の観測地点Pに予測値及び実測値の双方が与えられ、残りの観測地点Pには予測値及び実測値の一方が与えられる場合である。第3の場合は、一部の観測地点Pに予測値が与えられ、残りの観測地点Pに実測値が与えられる場合である。予測値及び実測値の双方が与えられている観測地点Pについては、例えば、予測値及び実測値のいずれか一方を当該観測地点Pの電波強度とし、或いは、予測値及び実測値の双方に基づく値(例えば、これらの平均値)を当該観測地点Pの電波強度とすることができる。
【0026】
上記の予測値や実測値は、無線アクセスポイント31毎に区別できるように与えられる。そのため、観測地点電波強度情報に基づき、後に参照する図7に例示するような、無線アクセスポイント31毎の通信エリアA(基準電波強度以上の電波強度が提供されるエリア)を定めることができる。なお、図7では、第1アクセスポイントAP1、第2アクセスポイントAP2、第3アクセスポイントAP3、及び、第4アクセスポイントAP4の4つの無線アクセスポイント31の通信エリアAについての3つの例(第1例、第2例、及び、第3例)を示している。
【0027】
観測地点電波強度情報に含まれる電波強度の予測値は、レイアウト情報と配置情報とに基づいて演算されたものである。無線アクセスポイント31毎に各観測地点Pに提供される電波の強度を伝搬モデルによって演算することで、観測地点P毎の電波強度の予測値を得ることができる。ここで、レイアウト情報は、対象エリアTAの形状(平面的又は立体的な形状)の情報、及び、対象エリアTAにおける電波の伝搬に影響を与える物体(図1に示す例では、例えば、移動経路3を構成するレール4、設備5、壁6)の配置の情報、を含む情報である。配置情報は、複数の無線アクセスポイント31の配置を示す情報である。配置情報は、シミュレーションのために設定した複数の無線アクセスポイント31の配置を示す情報であっても、実際に設置されている複数の無線アクセスポイント31の配置を示す情報であってもよい。本実施形態では、レール4、設備5、及び、壁6のそれぞれが「物体」に相当する。
【0028】
電波強度情報取得部41が取得する観測地点電波強度情報に電波強度の予測値が含まれる場合、電波強度情報取得部41は、演算後の電波強度の予測値を取得し、或いは、レイアウト情報及び配置情報を取得して、取得したレイアウト情報及び配置情報に基づく演算を行って電波強度の予測値を取得する。図3は、後者の場合を例示している。この場合、レイアウト情報及び配置情報は、例えば、作業者等の人が操作するコンピュータ(例えば、検証システム40による検証結果の表示用のコンピュータ)から電波強度情報取得部41に送信される。電波強度情報取得部41が、制御装置7(図1参照)からレイアウト情報及び配置情報を取得する構成とすることもできる。
【0029】
電波強度情報取得部41が取得する観測地点電波強度情報に電波強度の実測値が含まれる場合、電波強度情報取得部41は、図3に示すように、電波強度の実測値の情報である電波強度実測値情報を取得する。電波強度の実測値は、移動体10(具体的には、移動体10に搭載された通信モジュール)によって計測されたものであっても、移動体10とは別の装置によって計測されたものであってもよい。前者の場合、例えば、移動体10の位置のログ、移動体10が接続していた接続先の無線アクセスポイント31のログ、及び、移動体10が接続先の無線アクセスポイント31から受信した電波の強度のログが記憶されたログ記憶装置を参照して、観測地点P毎の電波強度の実測値を取得する構成とすることができる。このログ記憶装置は、例えば、制御装置7(図1参照)に設けられる。
【0030】
基準電波強度設定部42は、基準電波強度を設定する機能部である。基準電波強度を設定する工程が、無線通信システム30を対象とした検証方法における「基準電波強度設定工程」に相当し、その工程の実行により「基準電波強度設定機能」が実現される。基準電波強度設定部42は、対象エリアTA内の複数の観測地点Pのそれぞれにおける無線通信システム30からの電波強度の基準値である基準電波強度を設定する。基準電波強度は、例えば、許容される電波強度の下限値とされる。基準電波強度設定部42は、例えば、予め設定された値を基準電波強度として設定し、或いは、作業者等の人により入力された値を基準電波強度として設定する。
【0031】
基準電波強度は、全ての観測地点Pに対して同じ値に設定しても、観測地点P毎に異なる値に設定してもよい。後者の場合、例えば、各観測地点Pの特性に応じて基準電波強度を異なる値に設定することができる。例えば、移動経路3に沿った地点であるか否かや、移動経路3における幹線区間に沿った地点であるか移動経路3における幹線区間以外の区間に沿った地点であるかが、観測地点Pの特性とされる。一例として、基準電波強度設定部42が、移動経路3の区間S毎に複数の段階を設定し、基準電波強度を当該段階に応じて異なる値に設定する構成とすることができる。この段階は、例えば、移動体10の移動速度に応じた段階とされ、或いは、移動体10の通行量に応じた段階とされる。
【0032】
具体的に説明すると、図4に示す移動経路3は、区間Sとして、設備5(図1参照)を経由しない第1区間S1と、設備5を経由する第2区間S2と、を備えている。この場合、第1区間S1が幹線区間となり、第2区間S2が幹線区間以外の区間となる。そして、第1区間S1における移動体10の移動速度(平均移動速度)が高くなることで、第1区間S1において必要となる電波強度が高くなる場合がある。この点に鑑みて、基準電波強度設定部42が、移動経路3の区間S毎に移動体10の移動速度に応じた複数の段階を設定し、当該段階に応じて、移動体10の移動速度が高くなるに従って基準電波強度を高い値に設定する構成とすることができる。この場合、第1区間S1に対して設定される段階が、第2区間S2に対して設定される段階よりも移動速度の高い段階となり、第1区間S1に沿った観測地点Pである第1地点P1に対して、第2区間S2に沿った観測地点Pである第2地点P2よりも高い基準電波強度が設定される。
【0033】
図4では、移動経路3に沿わない観測地点Pを第3地点P3とし、第1地点P1、第2地点P2、及び第3地点P3を区別するために、第3地点P3を無地で示すと共に、第1地点P1及び第2地点P2を互いに異なる種類のハッチングで示している。第3地点P3に対して、第2地点P2よりも低い基準電波強度が設定される構成とすることができ、また、第3地点P3に対して設定される基準電波強度をゼロとする(言い換えれば、第3地点P3を観測地点Pから除外する)こともできる。
【0034】
また、図4に示す例において、第1区間S1における移動体10の通行量(平均通行量)が多くなることで、第1区間S1において必要となる電波強度が高くなる場合がある。この点に鑑みて、基準電波強度設定部42が、移動経路3の区間S毎に移動体10の通行量に応じた複数の段階を設定し、当該段階に応じて、移動体10の通行量が多くなるに従って基準電波強度を高い値に設定する構成とすることもできる。この場合、第1区間S1に対して設定される段階が、第2区間S2に対して設定される段階よりも通行量の多い段階となり、第1区間S1に沿った観測地点Pである第1地点P1に対して、第2区間S2に沿った観測地点Pである第2地点P2よりも高い基準電波強度が設定される。
【0035】
アクセスポイント数しきい値設定部43は、アクセスポイント数しきい値を設定する機能部である。アクセスポイント数しきい値を設定する工程が、無線通信システム30を対象とした検証方法における「アクセスポイント数しきい値設定工程」に相当し、その工程の実行により「アクセスポイント数しきい値設定機能」が実現される。アクセスポイント数しきい値設定部43は、複数の観測地点Pのそれぞれにおける、基準電波強度以上の電波強度を提供する無線アクセスポイント31の数のしきい値であるアクセスポイント数しきい値を設定する。アクセスポイント数しきい値は「1」に設定されてもよいが、通信の安定化のためには「2」以上の値であることが好ましい。また、アクセスポイント数しきい値は、全ての観測地点Pに対して同じ値に設定しても、観測地点P毎に異なる値に設定してもよい。アクセスポイント数しきい値設定部43は、例えば、予め設定された値をアクセスポイント数しきい値として設定し、或いは、作業者等の人により入力された値をアクセスポイント数しきい値として設定する。
【0036】
検証処理部44は、複数の無線アクセスポイント31の配置についての検証処理を行う機能部である。検証処理を行う工程が、無線通信システム30を対象とした検証方法における「検証処理工程」に相当し、その工程の実行により「検証処理機能」が実現される。検証処理部44は、観測地点電波強度情報に基づいて、複数の無線アクセスポイント31の配置についての検証処理を行う。検証処理は、以下に述べる撤去可能アクセスポイント抽出処理を含む。検証処理に、撤去可能アクセスポイント抽出処理以外の処理が含まれていてもよい。例えば、無線アクセスポイント31を追加すべき地点を抽出する追加地点抽出処理や、無線アクセスポイント31を移動させるべき地点を抽出する移動先地点抽出処理が、検証処理に含まれる構成とすることができる。
【0037】
撤去可能アクセスポイント抽出処理は、複数の無線アクセスポイント31の中から、複数の観測地点Pの全てにおいて基準電波強度以上の電波強度が確保されるという電波強度条件を満たしつつ撤去可能である無線アクセスポイント31を抽出する処理である。無線アクセスポイント31の移動や追加を行った上で撤去可能な無線アクセスポイント31を抽出する構成とすることも可能であるが、本実施形態では、撤去可能アクセスポイント抽出処理において、無線アクセスポイント31の移動や追加を行うことなく撤去可能である無線アクセスポイント31を抽出する。
【0038】
本実施形態では、撤去可能アクセスポイント抽出処理では、電波強度条件に加えて、複数の観測地点Pの全てにおいて基準電波強度以上の電波強度を提供する無線アクセスポイント31の数がアクセスポイント数しきい値以上であるというアクセスポイント数条件も満たすように、撤去可能な無線アクセスポイント31を抽出する。なお、全ての観測地点Pに対してアクセスポイント数しきい値として「1」が設定される場合には、電波強度条件が満たされることでアクセスポイント数条件も満たされる。そのため、この場合には、電波強度条件を満たしつつ撤去可能である無線アクセスポイント31を抽出することで、電波強度条件に加えてアクセスポイント数条件も満たしつつ撤去可能である無線アクセスポイント31を抽出することができる。
【0039】
以下、図5及び図6を参照して、本実施形態に係る事前処理及び検証処理について説明する。図5に示すように、事前処理として、観測地点電波強度情報を取得する電波強度情報取得処理が、電波強度情報取得部41により実行され(ステップ#01)、複数の観測地点Pのそれぞれにおける基準電波強度を設定する基準電波強度設定処理が、基準電波強度設定部42により実行される(ステップ#02)。本実施形態では、更に、事前処理として、複数の観測地点Pのそれぞれにおけるアクセスポイント数しきい値を設定するアクセスポイント数しきい値設定処理が、アクセスポイント数しきい値設定部43により実行される(ステップ#03)。なお、図5に示すこれら3つの処理(ステップ#01~#03)の実行順序は一例であり、これら3つの処理はいずれの順序で実行してもよく、2つ又は3つの処理を並行して実行してもよい。そして、事前処理の後に、検証処理として撤去可能アクセスポイント抽出処理が、検証処理部44により実行される(ステップ#04)。
【0040】
図6に示すように、本実施形態では、検証処理部44は、撤去可能アクセスポイント抽出処理において、複数の無線アクセスポイント31の全てが対象アクセスポイントに設定されていると共に複数の観測地点Pの全てが対象地点TP(図8等参照)に設定されている状態から、撤去不可アクセスポイント設定処理と、対象地点設定処理と、を繰り返し実行する。すなわち、検証処理部44は、全ての無線アクセスポイント31を対象アクセスポイントに設定すると共に(ステップ#10)、全ての観測地点Pを対象地点TPに設定する(ステップ#11)。なお、図6に示す2つの処理(ステップ#10、#11)の実行順序は一例であり、これら2つの処理はいずれの処理を先に実行してもよく、これら2つの処理を並行して実行してもよい。
【0041】
撤去不可アクセスポイント設定処理は、対象アクセスポイントに設定されている無線アクセスポイント31のうち、基準電波強度以上の電波強度を提供している対象地点TPの数が最も多い無線アクセスポイント31(以下、「最大カバーアクセスポイント」という)が、1つ以上の対象地点TPに対して基準電波強度以上の電波強度を提供している場合に、当該無線アクセスポイント31を、撤去不可アクセスポイントに設定して対象アクセスポイントから除外する処理である(ステップ#12~#14)。すなわち、検証処理部44は、対象アクセスポイントの中からカバーする対象地点TPの数が最も多い最大カバーアクセスポイントを探索する(ステップ#12)。ここで、「カバーする」とは、基準電波強度以上の電波強度を提供することを意味する。そして、検証処理部44は、最大カバーアクセスポイントがカバーする対象地点TPが1つ以上である場合に(ステップ#13:Yes)、最大カバーアクセスポイントを撤去不可アクセスポイントに設定して対象アクセスポイントから除外する(ステップ#14)。
【0042】
対象地点設定処理は、撤去不可アクセスポイントが新たに設定される毎に、対象地点TPに設定されている観測地点Pのうち、アクセスポイント数しきい値以上の撤去不可アクセスポイントにより基準電波強度以上の電波強度が提供されている観測地点Pを、電波確保済地点PXに設定して対象地点TPから除外する処理である(ステップ#15)。すなわち、検証処理部44は、最大カバーアクセスポイントを撤去不可アクセスポイントに設定した後(ステップ#14)、アクセスポイント数しきい値以上の撤去不可アクセスポイントにカバーされている観測地点Pを対象地点TPから除外する(ステップ#15)。
【0043】
対象地点TPは、最初は全ての観測地点Pであり、撤去可能アクセスポイント抽出処理の進行に伴い(具体的には、対象地点設定処理で一部の観測地点Pが対象地点TPから除外されることによって)次第に減少する。検証処理部44は、対象地点TPが存在する間(ステップ#16:Yes)、撤去不可アクセスポイント設定処理と対象地点設定処理とを繰り返し実行する(ステップ#12~#15)。そして、検証処理部44は、撤去不可アクセスポイント設定処理において、基準電波強度以上の電波強度を提供している対象地点TPがなくなった対象アクセスポイントを、撤去可能な無線アクセスポイント31(以下、「撤去可能アクセスポイント」という)として抽出する(ステップ#17)。すなわち、検証処理部44は、対象地点TPが存在しなくなると(ステップ#16:No)、カバーする対象地点TPがなくなった対象アクセスポイント(すなわち、その時点で対象アクセスポイントとして設定されている無線アクセスポイント31)を撤去可能アクセスポイントとして抽出する(ステップ#17)。なお、対象地点TPが存在しなくなった時点で(ステップ#16:No)、対象アクセスポイントが存在しない場合(すなわち、全ての無線アクセスポイント31が撤去不可アクセスポイントに設定されている場合)には、撤去可能アクセスポイントはないと判定される。
【0044】
ところで、検証処理の対象とされる複数の無線アクセスポイント31の配置では、アクセスポイント数しきい値以上の無線アクセスポイント31から基準電波強度以上の電波強度が提供されない観測地点Pが存在する場合がある。この場合には、対象地点TPが存在しなくなるまでの間に(ステップ#16:Yes)、最大カバーアクセスポイントがカバーする対象地点TPが1つ以上でないと判定される(ステップ#13:No)。すなわち、その時点で撤去不可アクセスポイントと判断されていない残りの無線アクセスポイント31では、対象地点TPを減らすことができない(言い換えれば、電波確保済地点PXを増やせない)と判定される。このように判定された場合(ステップ#13:No)、検証処理部44は、複数の観測地点Pの中に電波強度不足地点PYがあると判定して(ステップ#18)、撤去可能アクセスポイント抽出処理を終了する。ステップ#18では、その時点で対象地点TPとして設定されている観測地点Pが、電波強度不足地点PYであると判定される。
【0045】
本実施形態では、一例として、検証処理は、観測地点電波強度情報に基づいて、複数の観測地点Pのうち、基準電波強度以上の電波強度が提供されない観測地点P(本実施形態では、アクセスポイント数しきい値以上の無線アクセスポイント31から基準電波強度以上の電波強度が提供されない観測地点P)である電波強度不足地点PYがあると判定した場合に、電波強度不足地点PYに対して基準電波強度以上の電波強度を提供できる位置に新たな無線アクセスポイント31を追加する修正のためのデータを生成する処理を含む。この修正のためのデータは、例えば、電波強度不足地点PYを特定するデータや、上記の位置に無線アクセスポイント31を追加する修正を加えた配置情報のデータとされる。検証システム40は、例えば、上記の修正を加えた配置情報を用いて、再度、電波強度情報取得処理及び検証処理(撤去可能アクセスポイント抽出処理)を実行する。
【0046】
次に、撤去可能アクセスポイント抽出処理の具体例について、図7図19を参照して説明する。ここでは、4つの無線アクセスポイント31(第1アクセスポイントAP1、第2アクセスポイントAP2、第3アクセスポイントAP3、及び、第4アクセスポイントAP4)を対象として撤去可能アクセスポイント抽出処理を実行する場合を想定しており、図7は、3つの例(第1例、第2例、及び、第3例)についての当該4つの無線アクセスポイント31の通信エリアAを示している。これらの例では、対象エリアTAを、図8等に示すように64(=8×8)個のメッシュに分割して、64個のメッシュのそれぞれに観測地点Pを設定している。そして、図7に示す通信エリアAは、観測地点電波強度情報に基づき無線アクセスポイント31毎に定まる、基準電波強度以上の電波強度が提供される観測地点Pの配置領域を表している。
【0047】
図8図19において観測地点P(具体的には、観測地点Pが設定されたメッシュの内部)に付した数字(丸で囲んだ数字)は、各観測地点Pに対して基準電波強度以上の電波強度を提供している無線アクセスポイント31を表している。具体的には、丸で囲んだ「1」を付した観測地点Pには、第1アクセスポイントAP1から基準電波強度以上の電波強度が提供され、丸で囲んだ「2」を付した観測地点Pには、第2アクセスポイントAP2から基準電波強度以上の電波強度が提供され、丸で囲んだ「3」を付した観測地点Pには、第3アクセスポイントAP3から基準電波強度以上の電波強度が提供され、丸で囲んだ「4」を付した観測地点Pには、第4アクセスポイントAP4から基準電波強度以上の電波強度が提供される。複数の無線アクセスポイント31から基準電波強度以上の電波強度が提供される観測地点Pには、丸で囲んだ数字が複数付されている。
【0048】
図8図19では、各図が示す状態において各無線アクセスポイント31(AP1~AP4)がカバーする対象地点TPの数を、右側の部分に示している。また、図8図19では、複数の観測地点Pのうちの対象地点TPに設定されている観測地点Pを太枠で囲むことで、対象地点TPに設定されている観測地点Pと、電波確保済地点PXに設定されて対象地点TPから除外された観測地点Pとを区別している。
【0049】
<第1例>
図8図11は、第1例(図7参照)についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図である。第1例では、全ての観測地点Pに対してアクセスポイント数しきい値が「1」に設定されている場合を想定している。以下では、図6に示す各ステップも参照しながら説明する。
【0050】
まず、図8に示すように、4つの無線アクセスポイント31(AP1~AP4)の全てが対象アクセスポイントに設定されると共に(ステップ#10)、64個の観測地点Pの全てが対象地点TPに設定される(ステップ#11)。この状態では、第3アクセスポイントAP3が最大カバーアクセスポイントとして選択され(ステップ#12)、第3アクセスポイントAP3がカバーする対象地点TPの数(=40)は1つ以上であるため(ステップ#13:Yes)、第3アクセスポイントAP3が撤去不可アクセスポイントに設定されて対象アクセスポイントから除外される(ステップ#14)。そして、アクセスポイント数しきい値以上の撤去不可アクセスポイントにカバーされている観測地点P(ここでは、第3アクセスポイントAP3にカバーされている観測地点P)が、電波確保済地点PXに設定されると共に対象地点TPから除外されて(ステップ#15)、図9に示す状態となる。
【0051】
図9に示す状態においても対象地点TPが存在し(ステップ#16:Yes)、この状態では、3つの無線アクセスポイント31(AP1,AP2,AP4)が対象アクセスポイントに設定されている。なお、一部の観測地点Pが対象地点TPから除外された結果、これら3つの無線アクセスポイント31(AP1,AP2,AP4)がカバーする対象地点TPの数は、図8に示す状態に比べて減少している。そして、第2アクセスポイントAP2が最大カバーアクセスポイントとして選択され(ステップ#12)、第2アクセスポイントAP2がカバーする対象地点TPの数(=19)は1つ以上であるため(ステップ#13:Yes)、第2アクセスポイントAP2が撤去不可アクセスポイントに設定されて対象アクセスポイントから除外される(ステップ#14)。そして、アクセスポイント数しきい値以上の撤去不可アクセスポイントにカバーされている観測地点P(ここでは、第2アクセスポイントAP2にカバーされている観測地点P)が、電波確保済地点PXに設定されると共に対象地点TPから除外されて(ステップ#15)、図10に示す状態となる。
【0052】
図10に示す状態においても対象地点TPが存在し(ステップ#16:Yes)、この状態では、2つの無線アクセスポイント31(AP1,AP4)が対象アクセスポイントに設定されている。そして、第1アクセスポイントAP1が最大カバーアクセスポイントとして選択され(ステップ#12)、第1アクセスポイントAP1がカバーする対象地点TPの数(=5)は1つ以上であるため(ステップ#13:Yes)、第1アクセスポイントAP1が撤去不可アクセスポイントに設定されて対象アクセスポイントから除外される(ステップ#14)。そして、アクセスポイント数しきい値以上の撤去不可アクセスポイントにカバーされている観測地点P(ここでは、第1アクセスポイントAP1にカバーされている観測地点P)が、電波確保済地点PXに設定されると共に対象地点TPから除外されて(ステップ#15)、図11に示す状態となる。
【0053】
図11に示す状態では対象地点TPが存在せず(ステップ#16:No)、この状態では、1つの無線アクセスポイント31(AP4)が対象アクセスポイントに設定されている。そのため、カバーする対象地点TPがなくなった対象アクセスポイントである第4アクセスポイントAP4が撤去可能アクセスポイントとして抽出される(ステップ#17)。図11から明らかなように、第4アクセスポイントAP4を撤去しても(図11における×印参照)、全ての観測地点Pに対してアクセスポイント数しきい値以上(本例では、1つ以上)の無線アクセスポイント31から基準電波強度以上の電波強度が提供される。
【0054】
<第2例>
図12図15は、第2例(図7参照)についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図である。第2例では、全ての観測地点Pに対してアクセスポイント数しきい値が「1」に設定されている場合を想定している。以下では、図6に示す各ステップも参照しながら説明する。
【0055】
まず、図12に示すように、4つの無線アクセスポイント31(AP1~AP4)の全てが対象アクセスポイントに設定されると共に(ステップ#10)、64個の観測地点Pの全てが対象地点TPに設定される(ステップ#11)。この状態では、第3アクセスポイントAP3が最大カバーアクセスポイントとして選択され(ステップ#12)、第3アクセスポイントAP3がカバーする対象地点TPの数(=32)は1つ以上であるため(ステップ#13:Yes)、第3アクセスポイントAP3が撤去不可アクセスポイントに設定されて対象アクセスポイントから除外される(ステップ#14)。そして、アクセスポイント数しきい値以上の撤去不可アクセスポイントにカバーされている観測地点P(ここでは、第3アクセスポイントAP3にカバーされている観測地点P)が、電波確保済地点PXに設定されると共に対象地点TPから除外されて(ステップ#15)、図13に示す状態となる。
【0056】
図13に示す状態においても対象地点TPが存在し(ステップ#16:Yes)、この状態では、3つの無線アクセスポイント31(AP1,AP2,AP4)が対象アクセスポイントに設定されている。そして、第2アクセスポイントAP2が最大カバーアクセスポイントとして選択され(ステップ#12)、第2アクセスポイントAP2がカバーする対象地点TPの数(=21)は1つ以上であるため(ステップ#13:Yes)、第2アクセスポイントAP2が撤去不可アクセスポイントに設定されて対象アクセスポイントから除外される(ステップ#14)。そして、アクセスポイント数しきい値以上の撤去不可アクセスポイントにカバーされている観測地点P(ここでは、第2アクセスポイントAP2にカバーされている観測地点P)が、電波確保済地点PXに設定されると共に対象地点TPから除外されて(ステップ#15)、図14に示す状態となる。
【0057】
図14に示す状態においても対象地点TPが存在し(ステップ#16:Yes)、この状態では、2つの無線アクセスポイント31(AP1,AP4)が対象アクセスポイントに設定されている。そして、第1アクセスポイントAP1が最大カバーアクセスポイントとして選択され(ステップ#12)、第1アクセスポイントAP1がカバーする対象地点TPの数(=10)は1つ以上であるため(ステップ#13:Yes)、第1アクセスポイントAP1が撤去不可アクセスポイントに設定されて対象アクセスポイントから除外される(ステップ#14)。そして、アクセスポイント数しきい値以上の撤去不可アクセスポイントにカバーされている観測地点P(ここでは、第1アクセスポイントAP1にカバーされている観測地点P)が、電波確保済地点PXに設定されると共に対象地点TPから除外されて(ステップ#15)、図15に示す状態となる。
【0058】
図15に示す状態においても対象地点TPが存在し(ステップ#16:Yes)、この状態では、1つの無線アクセスポイント31(AP4)が対象アクセスポイントに設定されている。そして、第4アクセスポイントAP4が最大カバーアクセスポイントとして選択され(ステップ#12)、第4アクセスポイントAP4がカバーする対象地点TPの数(=0)は1つ以上ではないため(ステップ#13:No)、対象地点TPが電波強度不足地点PYであると判定される(ステップ#18)。
【0059】
<第3例>
図16図19は、第3例(図7参照)についての撤去可能アクセスポイント抽出処理の説明図である。第3例では、全ての観測地点Pに対してアクセスポイント数しきい値が「2」に設定されている場合を想定している。以下では、図6に示す各ステップも参照しながら説明する。
【0060】
まず、図16に示すように、4つの無線アクセスポイント31(AP1~AP4)の全てが対象アクセスポイントに設定されると共に(ステップ#10)、64個の観測地点Pの全てが対象地点TPに設定される(ステップ#11)。この状態では、第3アクセスポイントAP3が最大カバーアクセスポイントとして選択され(ステップ#12)、第3アクセスポイントAP3がカバーする対象地点TPの数(=53)は1つ以上であるため(ステップ#13:Yes)、第3アクセスポイントAP3が撤去不可アクセスポイントに設定されて対象アクセスポイントから除外される(ステップ#14)。この状態では、撤去不可アクセスポイントに設定されている無線アクセスポイント31の数は、アクセスポイント数しきい値未満の「1」であるため、アクセスポイント数しきい値以上の撤去不可アクセスポイントにカバーされている観測地点Pは存在しない。そのため、観測地点Pの対象地点TPからの除外は行われず、図17に示す状態となる。
【0061】
図17に示す状態においても対象地点TPが存在し(ステップ#16:Yes)、この状態では、3つの無線アクセスポイント31(AP1,AP2,AP4)が対象アクセスポイントに設定されている。そして、第1アクセスポイントAP1が最大カバーアクセスポイントとして選択され(ステップ#12)、第1アクセスポイントAP1がカバーする対象地点TPの数(=49)は1つ以上であるため(ステップ#13:Yes)、第1アクセスポイントAP1が撤去不可アクセスポイントに設定されて対象アクセスポイントから除外される(ステップ#14)。そして、アクセスポイント数しきい値以上の撤去不可アクセスポイントにカバーされている観測地点P(ここでは、第1アクセスポイントAP1及び第3アクセスポイントAP3にカバーされている観測地点P)が、電波確保済地点PXに設定されると共に対象地点TPから除外されて(ステップ#15)、図18に示す状態となる。
【0062】
図18に示す状態においても対象地点TPが存在し(ステップ#16:Yes)、この状態では、2つの無線アクセスポイント31(AP2,AP4)が対象アクセスポイントに設定されている。そして、第2アクセスポイントAP2が最大カバーアクセスポイントとして選択され(ステップ#12)、第2アクセスポイントAP2がカバーする対象地点TPの数(=26)は1つ以上であるため(ステップ#13:Yes)、第2アクセスポイントAP2が撤去不可アクセスポイントに設定されて対象アクセスポイントから除外される(ステップ#14)。そして、アクセスポイント数しきい値以上の撤去不可アクセスポイントにカバーされている観測地点P(ここでは、第1アクセスポイントAP1及び第3アクセスポイントAP3の少なくとも一方と、第2アクセスポイントAP2とにカバーされている観測地点P)が、電波確保済地点PXに設定されると共に対象地点TPから除外されて(ステップ#15)、図19に示す状態となる。
【0063】
図19に示す状態では対象地点TPが存在せず(ステップ#16:No)、この状態では、1つの無線アクセスポイント31(AP4)が対象アクセスポイントに設定されている。そのため、カバーする対象地点TPがなくなった対象アクセスポイントである第4アクセスポイントAP4が撤去可能アクセスポイントとして抽出される(ステップ#17)。図19から明らかなように、第4アクセスポイントAP4を撤去しても(図19における×印参照)、全ての観測地点Pに対してアクセスポイント数しきい値以上(本例では、2つ以上)の無線アクセスポイント31から基準電波強度以上の電波強度が提供される。
【0064】
本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0065】
〔本実施形態のまとめ〕
以下、上記において説明した検証システムに係る実施形態のまとめを以下に記載する。
【0066】
検証システムは、対象エリアに電波を提供するように配置された複数の無線アクセスポイントを備え、前記対象エリアを移動する移動体との無線通信を行う無線通信システムを対象とした検証システムであって、前記対象エリアの形状の情報、及び、前記対象エリアにおける電波の伝搬に影響を与える物体の配置の情報を含む情報を、レイアウト情報とし、複数の前記無線アクセスポイントの配置を示す情報を、配置情報として、前記対象エリア内の複数の観測地点のそれぞれにおける前記無線通信システムからの電波強度の基準値である基準電波強度を設定する基準電波強度設定部と、前記レイアウト情報と前記配置情報とに基づいて前記観測地点毎に演算された、複数の前記無線アクセスポイントのそれぞれから提供される前記電波強度の予測値、及び、前記観測地点毎に計測された、複数の前記無線アクセスポイントのそれぞれから提供される前記電波強度の実測値、の少なくとも一方である観測地点電波強度情報を取得する電波強度情報取得部と、前記観測地点電波強度情報に基づいて、複数の前記無線アクセスポイントの配置についての検証処理を行う検証処理部と、を備え、前記検証処理は、複数の前記無線アクセスポイントの中から、複数の前記観測地点の全てにおいて前記基準電波強度以上の前記電波強度が確保されるという電波強度条件を満たしつつ撤去可能である前記無線アクセスポイントを抽出する、撤去可能アクセスポイント抽出処理を含む。
【0067】
本構成によれば、複数の無線アクセスポイントの配置についての検証処理を、観測地点毎の電波強度である観測地点電波強度情報に基づいて行うことができるため、検証処理に含まれる撤去可能アクセスポイント抽出処理において、撤去可能な無線アクセスポイントを適切に抽出することができる。この際、観測地点電波強度情報は、観測地点毎に演算された電波強度の予測値及び観測地点毎に計測された電波強度の実測値の少なくとも一方であるため、実際に無線アクセスポイントを設置しているか否かにかかわらず、撤去可能な無線アクセスポイントを適切に抽出することができる。以上のように、本構成によれば、複数の無線アクセスポイントの配置を検証して、撤去可能な無線アクセスポイントを適切に抽出することが可能となっている。
【0068】
ここで、複数の前記観測地点のそれぞれにおける、前記基準電波強度以上の前記電波強度を提供する前記無線アクセスポイントの数のしきい値であるアクセスポイント数しきい値を設定するアクセスポイント数しきい値設定部を更に備え、前記撤去可能アクセスポイント抽出処理では、前記電波強度条件に加えて、複数の前記観測地点の全てにおいて前記基準電波強度以上の前記電波強度を提供する前記無線アクセスポイントの数が前記アクセスポイント数しきい値以上であるというアクセスポイント数条件も満たすように、撤去可能な前記無線アクセスポイントを抽出すると好適である。
【0069】
本構成によれば、撤去可能アクセスポイント抽出処理において、複数の観測地点の全てにおいて電波強度条件に加えてアクセスポイント数条件も満たすようにしつつ、撤去可能な無線アクセスポイントを抽出することができる。従って、複数の観測地点の全てにおける安定した無線通信の確保を図りつつ、撤去可能な無線アクセスポイントを適切に抽出することができる。
【0070】
また、前記検証処理部は、前記撤去可能アクセスポイント抽出処理において、複数の前記無線アクセスポイントの全てが対象アクセスポイントに設定されていると共に複数の前記観測地点の全てが対象地点に設定されている状態から、撤去不可アクセスポイント設定処理と、対象地点設定処理と、を繰り返し実行し、前記撤去不可アクセスポイント設定処理は、前記対象アクセスポイントに設定されている前記無線アクセスポイントのうち、前記基準電波強度以上の前記電波強度を提供している前記対象地点の数が最も多い前記無線アクセスポイントが、1つ以上の前記対象地点に対して前記基準電波強度以上の前記電波強度を提供している場合に、当該無線アクセスポイントを、撤去不可アクセスポイントに設定して前記対象アクセスポイントから除外する処理であり、前記対象地点設定処理は、前記撤去不可アクセスポイントが新たに設定される毎に、前記対象地点に設定されている前記観測地点のうち、前記アクセスポイント数しきい値以上の前記撤去不可アクセスポイントにより前記基準電波強度以上の前記電波強度が提供されている前記観測地点を、電波確保済地点に設定して前記対象地点から除外する処理であり、前記検証処理部は、前記撤去不可アクセスポイント設定処理において、前記基準電波強度以上の前記電波強度を提供している前記対象地点がなくなった前記対象アクセスポイントを、撤去可能な前記無線アクセスポイントとして抽出すると好適である。
【0071】
本構成によれば、多くの観測地点に基準電波強度以上の電波強度を提供している無線アクセスポイントを優先的に残しつつ、撤去可能な無線アクセスポイントを適切に抽出することができる。
【0072】
また、前記移動体は、予め定められた移動経路に沿って移動するように構成され、前記観測地点は、少なくとも前記移動経路に沿った地点に設定されていると好適である。
【0073】
本構成によれば、移動体と無線アクセスポイントとの間の安定した無線通信の確保を図りつつ、撤去可能な無線アクセスポイントを適切に抽出することができる。
【0074】
また、前記基準電波強度設定部は、前記移動経路の区間毎に複数の段階を設定し、前記基準電波強度を前記段階に応じて異なる値に設定すると好適である。
【0075】
本構成によれば、移動経路の区間によって必要となる電波強度が異なる場合であっても、基準電波強度を各区間の段階に応じて異なる値に設定することで、移動体と無線アクセスポイントとの間の安定した無線通信の確保を図りつつ、撤去可能な無線アクセスポイントを適切に抽出することができる。
【0076】
また、前記検証処理は、前記観測地点電波強度情報に基づいて、複数の前記観測地点のうち、前記基準電波強度以上の前記電波強度が提供されない前記観測地点である電波強度不足地点があると判定した場合に、前記電波強度不足地点に対して前記基準電波強度以上の前記電波強度を提供できる位置に新たな前記無線アクセスポイントを追加する修正のためのデータを生成する処理を含むと好適である。
【0077】
本構成によれば、電波強度不足地点がある場合に、当該電波強度不足地点に対して基準電波強度以上の電波強度が提供されるように新たな無線アクセスポイントを追加する修正を行うためのデータを、検証処理において生成することができる。従って、検証処理において電波強度不足地点があると判定された場合には、当該データを用いて複数の無線アクセスポイントの配置を修正することで、複数の観測地点の全てにおいて電波強度条件を満たすように複数の無線アクセスポイントを配置することができる。
【0078】
本開示に係る検証システムは、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0079】
3:移動経路
4:レール(物体)
5:設備(物体)
6:壁(物体)
10:移動体
30:無線通信システム
31:無線アクセスポイント
40:検証システム
41:電波強度情報取得部
42:基準電波強度設定部
43:アクセスポイント数しきい値設定部
44:検証処理部
P:観測地点
PX:電波確保済地点
PY:電波強度不足地点
S:区間
TA:対象エリア
TP:対象地点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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