(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025162779
(43)【公開日】2025-10-28
(54)【発明の名称】金属製品の製造方法及び金属製品
(51)【国際特許分類】
C23F 1/04 20060101AFI20251021BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20251021BHJP
【FI】
C23F1/04
C23C14/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066197
(22)【出願日】2024-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】明野 康剛
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄祐
【テーマコード(参考)】
4K029
4K057
【Fターム(参考)】
4K029BB03
4K029BD01
4K029CA01
4K029HA02
4K029HA03
4K057WA11
4K057WB02
4K057WD05
4K057WD07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高精細、且つ変形不良が抑制された金属製品を製造する方法を提供する。
【解決手段】第1面とその裏面である第2面とを有している金属箔を準備し、第1貫通孔を有する第1エッチングマスク(EM)を第1面の上に形成し、第1EMを設けた第1面へ第1エッチング液を供給して、第1貫通孔の位置で第1面に第1凹部を形成し、第1面から第1EMを除去し、第1ドライフィルムレジスト(DFR)からなる保護層を第1面へ貼り合わせるとともに、第1凹部の内壁に保護層を密着させ、第2DFRを第2面へ貼り合わせ、第1凹部の位置で第2DFRに第2貫通孔を形成して、第2EMを得、第2EMを設けた第2面へ第2エッチング液を供給して、第2貫通孔の位置で第2面に第2凹部を、第1凹部及び第2凹部がそれらの底部の位置で繋がって第3貫通孔を生じるように形成し、第3貫通孔が設けられた金属箔から保護層及び第2EMを同時に除去する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面とその裏面である第2面とを有している金属箔を準備することと、
第1貫通孔を有する第1エッチングマスクを前記第1面の上に形成することと、
前記第1エッチングマスクを設けた前記第1面へ第1エッチング液を供給して、前記第1貫通孔の位置で前記第1面に第1凹部を形成することと、
前記第1面から前記第1エッチングマスクを除去することと、
第1ドライフィルムレジストからなる保護層を前記第1面へ貼り合わせるとともに、前記第1凹部の内壁に前記保護層を密着させることと、
第2ドライフィルムレジストを前記第2面へ貼り合わせることと、
前記第1凹部の位置で前記第2ドライフィルムレジストに第2貫通孔を形成して、第2エッチングマスクを得ることと、
前記第2エッチングマスクを設けた前記第2面へ第2エッチング液を供給して、前記第2貫通孔の位置で前記第2面に第2凹部を、前記第1凹部及び前記第2凹部がそれらの底部の位置で繋がって第3貫通孔を生じるように形成することと、
前記第3貫通孔が設けられた前記金属箔から前記保護層及び前記第2エッチングマスクを同時に除去することと
を含んだ金属製品の製造方法。
【請求項2】
剥離液としてアルカリ溶液を使用して前記金属箔から前記保護層及び前記第2エッチングマスクを同時に除去する請求項1に記載の金属製品の製造方法。
【請求項3】
前記第1ドライフィルムレジストと前記第2ドライフィルムレジストとは、組成及び厚さが等しい請求項1に記載の金属製品の製造方法。
【請求項4】
前記金属箔として15乃至50μmの範囲内の厚さを有しているものを使用する請求項1に記載の金属製品の製造方法。
【請求項5】
前記第1面から前記第1エッチングマスクを除去するのに先立って、前記第1凹部の前記内壁を粗化する第1粗化処理を行うことを更に含んだ請求項1に記載の金属製品の製造方法。
【請求項6】
前記第1粗化処理は、前記第1凹部の粗化した前記内壁が0.30乃至0.70μmの範囲内の算術平均粗さSaを有するように行う請求項5に記載の金属製品の製造方法。
【請求項7】
前記金属箔から前記保護層及び前記第2エッチングマスクを除去するのに先立って、前記第2凹部の内壁を粗化する第2粗化処理を行うことを更に含んだ請求項1に記載の金属製品の製造方法。
【請求項8】
前記第2粗化処理は、前記第2凹部の粗化した前記内壁が0.30乃至0.70μmの範囲内の算術平均粗さSaを有するように行う請求項7に記載の金属製品の製造方法。
【請求項9】
前記第1凹部及び前記第2凹部は、前記第2凹部が前記第1凹部と比較してより大きな深さを有するように形成する請求項1に記載の金属製品の製造方法。
【請求項10】
前記金属製品として蒸着マスクを得る請求項1乃至9の何れか1項に記載の金属製品の製造方法。
【請求項11】
第1面とその裏面である第2面とを有し、
第2面へ向けて先細りした第1凹部が前記第1面に設けられ、
前記第1面へ向けて先細りした第2凹部が前記第2面に設けられ、
前記第1凹部及び前記第2凹部は、それらの底部の位置で繋がって貫通孔を形成しており、
前記第1凹部の内壁は、0.30乃至0.70μmの範囲内の算術平均粗さSaを有している金属製品。
【請求項12】
前記第2凹部の内壁は、0.30乃至0.70μmの範囲内の算術平均粗さSaを有している請求項11に記載の金属製品。
【請求項13】
前記第2凹部は、前記第1凹部と比較してより大きな深さを有している請求項11に記載の金属製品。
【請求項14】
15乃至50μmの範囲内の厚さを有している請求項11に記載の金属製品。
【請求項15】
蒸着マスクである請求項12乃至14の何れか1項に記載の金属製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製品の製造方法及び金属製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の急速な小型化、高性能化に伴い、その製造に用いられる高精細な金属製品の需要が高まりつつある。このような金属製品の具体例として、蒸着マスクが挙げられる。有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置の製造工程では、有機EL素子を形成するために真空蒸着法が適用される。真空蒸着法では、所望のパターンで配列された貫通孔を含む蒸着マスクを用いることで、有機EL表示装置の所望の領域に有機EL素子の薄膜を選択的に形成することができる。
【0003】
また、積層セラミックコンデンサの製造工程においても小型化及び大容量化を実現するために、蒸着マスクの活用が期待されている。積層セラミックコンデンサは、セラミック誘電体層と内部電極層の積層体を所定枚数、セラミック誘電体層と内部電極層とが交互に配置されるように積層したものである。セラミック誘電体層と内部電極層を薄くし、多く積層することで体積あたりの静電容量を多くすることができ小型化できる。積層セラミックコンデンサの一般的な製造工程において、内部電極層は、セラミック誘電体層上に、ニッケル等を含んだ導電体ペーストをスクリーン印刷することにより形成されるが、スクリーン印刷ではペースト内の粒子径サイズの問題により内部電極層を薄膜化できない問題があった。そこで近年は、スクリーン印刷に代わる手法として蒸着法が注目されており、蒸着に用いるメタルマスクとして蒸着マスクが検討されている。
【0004】
ここで蒸着マスクとしては、通常、フォトリソグラフィー技術を利用したウェットエッチング(フォトエッチング法)によって得られる金属エッチング製品が用いられる。このフォトエッチング法による蒸着マスクの製造においては、金属板表面に耐腐食性のフォトレジスト膜を所望するパターンに形成し、パターンから露出した金属部分をエッチング液にて腐食し貫通孔が形成される(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
蒸着マスク等の金属製品の高精細化は、有機EL表示装置や積層セラミックコンデンサなどの電子機器の小型化、高性能化に直結する。このためそれら電子機器の製造に用いられる高精細な金属製品の需要が高まっており、更なる高精細化が期待されている。しかし、フォトエッチング法による金属製品の製造において、エッチング液を用いたウェットエッチングは一般的に等方エッチングであるため、金属板の厚さよりも開口幅が狭い高アスペクト比の貫通孔を形成することは困難とされている。
【0006】
この問題を改善する手法として、2段エッチングがある。2段エッチングとは、金属板の両面にレジストパターンを形成し、片面側について所定の深さまでハーフエッチングを行った後、一旦、ハーフエッチング部(凹部)にバックコート材として感光性樹脂等を含む液状樹脂組成物を充填し、これを固化して保護層を形成する。次いで他面側からエッチングを行うことで貫通孔を形成する加工方法である(例えば、非特許文献1を参照)。貫通孔の形成後、レジストパターン及びバックコート材からなる保護層は、アルカリ溶液等の剥離液を用いて同時に除去される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】加藤凡典著、「湿式エッチングの基礎と応用」、ジャーナルフリー、1998年49巻10号P.1031-1037<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1989/49/10/49_10_1031/_pdf/-cHar/ja>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記2段エッチングによれば、金属板の厚さよりも開口幅が狭い高アスペクト比の貫通孔を形成することができ、高精細な金属エッチング製品を得ることが可能となる。しかしながら、貫通孔形成後にレジストパターンとバックコート材からなる保護層とを剥離液を用いて同時に除去する際に、各々の剥離液に対する剥離性(剥離速度)の相違に起因した応力(反り)が被加工金属板に生じ、変形不良が発生する問題がある。
【0009】
本発明は、高精細な貫通孔を有し、且つ変形不良の発生が抑制された金属製品を製造する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によると、第1面とその裏面である第2面とを有している金属箔を準備することと、第1貫通孔を有する第1エッチングマスクを上記第1面の上に形成することと、上記第1エッチングマスクを設けた上記第1面へ第1エッチング液を供給して、上記第1貫通孔の位置で上記第1面に第1凹部を形成することと、上記第1面から上記第1エッチングマスクを除去することと、第1ドライフィルムレジストからなる保護層を上記第1面へ貼り合わせるとともに、上記第1凹部の内壁に上記保護層を密着させることと、第2ドライフィルムレジストを上記第2面へ貼り合わせることと、上記第1凹部の位置で上記第2ドライフィルムレジストに第2貫通孔を形成して、第2エッチングマスクを得ることと、上記第2エッチングマスクを設けた上記第2面へ第2エッチング液を供給して、上記第2貫通孔の位置で上記第2面に第2凹部を、上記第1凹部及び上記第2凹部がそれらの底部の位置で繋がって第3貫通孔を生じるように形成することと、上記第3貫通孔が設けられた上記金属箔から上記保護層及び上記第2エッチングマスクを同時に除去することとを含んだ金属製品の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の他の側面によると、剥離液としてアルカリ溶液を使用して上記金属箔から上記保護層及び上記第2エッチングマスクを同時に除去する上記側面に係る金属製品の製造方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに他の側面によると、上記第1ドライフィルムレジストと上記第2ドライフィルムレジストとは、組成及び厚さが等しい上記側面の何れかに係る金属製品の製造方法が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の側面によると、上記金属箔として15乃至50μmの範囲内の厚さを有しているものを使用する上記側面の何れかに係る金属製品の製造方法が提供される。
【0014】
本発明のさらに他の側面によると、上記第1面から上記第1エッチングマスクを除去するのに先立って、上記第1凹部の上記内壁を粗化する第1粗化処理を行うことを更に含んだ上記側面の何れかに係る金属製品の製造方法が提供される。
【0015】
本発明のさらに他の側面によると、上記第1粗化処理は、上記第1凹部の粗化した上記内壁が0.30乃至0.70μmの範囲内の算術平均粗さSaを有するように行う上記側面に係る金属製品の製造方法が提供される。
【0016】
本発明のさらに他の側面によると、上記金属箔から上記保護層及び上記第2エッチングマスクを除去するのに先立って、上記第2凹部の内壁を粗化する第2粗化処理を行うことを更に含んだ上記側面の何れかに係る金属製品の製造方法が提供される。
【0017】
本発明のさらに他の側面によると、上記第2粗化処理は、上記第2凹部の粗化した上記内壁が0.30乃至0.70μmの範囲内の算術平均粗さSaを有するように行う上記側面に係る金属製品の製造方法が提供される。
【0018】
本発明のさらに他の側面によると、上記第1凹部及び上記第2凹部は、上記第2凹部が上記第1凹部と比較してより大きな深さを有するように形成する上記側面の何れかに係る金属製品の製造方法が提供される。
【0019】
本発明のさらに他の側面によると、上記金属製品として蒸着マスクを得る上記側面の何れかに係る金属製品の製造方法が提供される。
【0020】
本発明のさらに他の側面によると、第1面とその裏面である第2面とを有し、第2面へ向けて先細りした第1凹部が上記第1面に設けられ、上記第1面へ向けて先細りした第2凹部が上記第2面に設けられ、上記第1凹部及び上記第2凹部は、それらの底部の位置で繋がって貫通孔を形成しており、上記第1凹部の内壁は、0.30乃至0.70μmの範囲内の算術平均粗さSaを有している金属製品が提供される。
【0021】
本発明のさらに他の側面によると、上記第2凹部の内壁は、0.30乃至0.70μmの範囲内の算術平均粗さSaを有している上記側面に係る金属製品が提供される。
【0022】
本発明のさらに他の側面によると、上記第2凹部は、上記第1凹部と比較してより大きな深さを有している上記側面の何れかに係る金属製品が提供される。
【0023】
本発明のさらに他の側面によると、15乃至50μmの範囲内の厚さを有している上記側面の何れかに係る金属製品が提供される。
【0024】
本発明のさらに他の側面によると、蒸着マスクである上記側面の何れかに係る金属製品が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高精細な貫通孔を有し、且つ変形不良の発生が抑制された金属製品を製造する技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る金属製品の製造方法により得られる金属製品の一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す金属製品を部分的に拡大した断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る金属製品の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る金属製品の製造方法の他の工程を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態に係る金属製品の製造方法の更に他の工程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1実施形態に係る金属製品の製造方法の更に他の工程を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1実施形態に係る金属製品の製造方法の更に他の工程を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1実施形態に係る金属製品の製造方法の更に他の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0028】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0029】
なお、同様又は類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、及び、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態に係る金属製品の製造方法により得られる金属製品の一部を示す、厚さ方向に平行な断面図である。
図2は、
図1に示す金属製品を部分的に拡大した断面図である。
図3乃至
図8は、第1実施形態に係る金属製品の製造方法を説明するための工程図である。第1実施形態に係る製造方法により得られる金属製品は、例えば、蒸着マスク等の高精細パターンを要求される用途に用いることができる。
【0031】
図1及び
図2に示す金属製品1は、第1面11aとその裏面である第2面11bとを有し、第2面11bへ向けて先細りした第1凹部111が第1面11aに設けられ、第1面11aへ向けて先細りした第2凹部211が第2面11bに設けられた金属箔11からなる。金属製品1において、第1凹部111及び第2凹部211は、それらの底部の位置、すなわちくびれ部311で繋がり、第1凹部111と第2凹部211とで第3貫通孔を形成している。詳細は後述するが、第3貫通孔の寸法精度の観点から、第2凹部211は第1凹部111より大きいことが好ましい。すなわち、第2凹部211の深さH2は、第1凹部111の深さH1より大きいことが好ましい。また、第2凹部211の開口径W2は、第1凹部111の開口径W1より大きいことが好ましい。そして、くびれ部31の開口径W3は、第1凹部111の開口径W1よりも小さくなる傾向にあるが、この差は小さいことが好ましく、くびれ部31の開口径W3は、第1凹部111の開口径W1と等しいことがより好ましい。ここで、くびれ部31の開口径W3は、第3貫通孔の寸法を意味する。
【0032】
金属製品1は、以下に説明する第1実施形態に係る製造方法により得られる金属エッチング製品である。この第1実施形態に係る製造方法は、2段エッチングにより高精細な貫通孔の形成を可能としつつ、2段エッチングの問題点であった被加工金属板における変形不良の発生を抑制することを可能としている。
【0033】
すなわち、第1実施形態に係る製造方法は、第1面11aとその裏面である第2面11bとを有している金属箔11を準備することと、第1貫通孔を有する第1エッチングマスクを上記第1面の上に形成することと、上記第1エッチングマスクを設けた上記第1面へ第1エッチング液を供給して、上記第1貫通孔の位置で上記第1面に第1凹部を形成することと、上記第1凹部の内壁を粗化する第1粗化処理を行うことと、上記第1面から上記第1エッチングマスクを除去することと、第1ドライフィルムレジストからなる保護層を上記第1面へ貼り合わせるとともに、上記第1凹部の内壁に上記保護層を密着させることと、第2ドライフィルムレジストを上記第2面へ貼り合わせることと、上記第1凹部の位置で上記第2ドライフィルムレジストに第2貫通孔を形成して、第2エッチングマスクを得ることと、上記第2エッチングマスクを設けた上記第2面へ第2エッチング液を供給して、上記第2貫通孔の位置で上記第2面に第2凹部を、上記第1凹部及び上記第2凹部がそれらの底部の位置で繋がって第3貫通孔を生じるように形成することと、上記第2凹部の内壁を粗化する第2粗化処理を行うことと、上記第3貫通孔が設けられた上記金属箔から上記保護層及び上記第2エッチングマスクを同時に除去すること、とを含んでいる。上記工程のうち、第1粗化処理と第2粗化処理は省略することができる。
以下、各工程について詳述する。
【0034】
<金属箔の準備>
金属製品1を構成する金属箔11の材質としては、エッチング可能な金属であればよく、例えば、鉄、銅、あるいはこれらの合金などが挙げられる。鉄合金としては、鉄ニッケル系合金、鉄ニッケルコバルト系合金、鉄クロムニッケル系合金等が挙げられる。鉄ニッケル系合金は、例えば、34質量%以上38質量%以下のニッケルを含む鉄合金、すなわちインバー材であってよい。鉄ニッケルコバルト系合金は、例えば、30質量%以上34質量%以下のニッケルと、コバルトとを含む鉄合金、すなわちスーパーインバー材であってよい。鉄クロムニッケル系合金は、クロムニッケル系ステンレス鋼であってもよく、例えば、SUS304、SUS430等であってよい。なお、鉄クロムニッケル系合金は、鉄ニッケル系合金、および、鉄ニッケルコバルト系合金に比べて熱膨張係数が大きい。そのため、金属製品1が蒸着マスクとして用いられる場合において、蒸着時に蒸着マスクの温度が上昇する度合いが小さい場合には、鉄クロムニッケル系合金を好適に使用することができ、また、蒸着マスクの温度が上昇する度合いがより大きい場合には、鉄ニッケル系合金又は鉄ニッケルコバルト系合金が好適に用いられる。
【0035】
金属箔11の厚さT1は特に限定されず、例えば用途に応じて適宜設定される。一例によると、金属箔11の厚さT1は、50μm以下であることが好ましく、5乃至50μmの範囲内であることがより好ましく、15乃至50μmの範囲内であることが更に好ましい。金属箔11の厚さT1が薄くなるに従い、金属箔11の強度が低下し、変形不良の問題が生じやすくなる傾向がある。
【0036】
金属箔11として、通常、長尺状の金属箔が用いられる。長尺状の金属箔11を搬送ローラ等の搬送手段上を搬送させながら、以下に詳述する工程を連続的に行う。一例において、一連の工程が終了し第3貫通孔が形成された金属箔11は断裁され、枚葉状に切断された金属製品1となる。また、金属箔11は、通常、表面を洗浄して酸化被膜層を除去したものが使用される。
【0037】
<第1エッチングマスクの形成>
図3は、金属箔11の第1面11aの上に複数の第1貫通孔22を有する第1エッチングマスク21が形成された工程図を示す。第1エッチングマスク21は、以下に説明するフォトリソグラフィプロセスにより形成することができる。
【0038】
ここでは、まず、ネガ型のフォトレジストを用いて金属箔11の第1面11aの上にレジスト層を形成する。第1面11aの上にレジスト層が形成された構造は図示を省略する。開口幅の狭い第1エッチングマスク21を精度よく作製するためには、レジスト層には膜厚均一性に優れ、且つ高い解像度を有することが求められる。したがって、レジスト層としてドライフィルムレジストを用いることが好ましい。
【0039】
ドライフィルムレジストとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などからなるベースフィルムと、ベースフィルム上に積層され、感光性を有する感光層とを含むドライフィルムレジストを用いることができる。例えば、アクリル系光硬化性樹脂、エポキシ系光硬化性樹脂、ポリイミド系光硬化性樹脂、スチレン系光硬化性樹脂などの感光性材料を含むドライフィルムレジストを用いることができ、中でもアクリル系光硬化性樹脂を含むドライフィルムレジスト(アクリル系ドライフィルムレジスト)を用いることが好ましい。このようなアクリル系ドライフィルムレジストの例としては、(株)レゾナック製のドライフィルムレジスト RY3310を挙げることができる。
【0040】
レジスト層としてドライフィルムレジストを用いる場合には、ラミネーターを用いて金属箔11の第1面11aの上にドライフィルムレジストを貼り合わせることによりラミネートすることができる。ドライフィルムレジストの厚さは、例えば10乃至70μmの範囲内であってよい。
【0041】
なお、レジスト層の形成は、液状フォトレジストを塗布することにより行ってもよい。液状フォトレジストを塗布する場合には、スピンコーター、ロールコーター、ディップコーターなど通常使用されるフォトレジストコート方法を用いることができる。なお、液状フォトレジストの塗布を行った後、乾燥させることが好ましい。
【0042】
次に、レジスト層のうちの除去したい領域に光を透過させないようにした露光マスクを準備し、レジスト層上に配置する。なお、レジスト層の上に露光マスクが配置された構造は図示を省略する。その後、真空密着によって露光マスクをレジスト層に十分に密着させ、露光する。なおフォトレジストとして、ポジ型のものを用いてもよい。この場合、露光マスクとして、レジスト層のうちの除去したい領域に光を透過させるようにした露光マスクが用いられる。
【0043】
次いで、露光後のレジスト層を現像することにより、
図3に示す複数の第1貫通孔22を有する第1エッチングマスク21を得る。現像は、アルカリ現像液に浸漬するか、もしくはアルカリ現像液を噴霧することによって行うことができ、例えば、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル現像法等を使用することができる。アルカリ現像液として、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用される。また、現像液には消泡剤や界面活性剤を添加してもよい。また、第1エッチングマスク21を金属箔11に対してより強固に密着させるため、現像工程の後に、第1エッチングマスク21を加熱する熱処理工程を実施してもよい。
【0044】
<第1面エッチング工程>
図4は、第1エッチングマスク21を設けた金属箔11の第1面11aをエッチング(第1面エッチング)することにより、第1貫通孔22の位置で第1面11aに第1凹部111を形成した工程図を示す。
【0045】
この第1面エッチングはウェットエッチングにより実施される。すなわち、第1エッチングマスク21が設けられた第1面11aに第1エッチング液を供給することにより、第1エッチングマスク21により覆われていない第1貫通孔22の位置で第1エッチング液による第1面11aの浸食が進む。第1エッチング液の第1面11aへの供給は、例えば、スプレーエッチングにより実施される。スプレーエッチングでは、搬送される金属箔11の第1面11aに対面する側に配置されたノズルから、第1エッチングマスク21越しに第1面11aに向けて第1エッチング液が噴射される。これにより第1貫通孔22の位置で第1面11aに複数の第1凹部111が形成される。
【0046】
第1エッチング液は、酸性のエッチング液であって、SUSやインバー等の材質からなる金属箔11をエッチングすることが可能なエッチング液であればよい。酸性のエッチング液は、例えば、塩化第二鉄液、過塩素酸第二鉄液、又は過塩素酸第二鉄液と塩化第二鉄液との混合液に対して、過塩素酸、塩酸、硫酸、蟻酸及び酢酸の何れかを混合した溶液であってよい。
【0047】
その後、第1エッチングマスク21は除去され、
図5に示す金属箔11を得るが、以下に説明するように、第1エッチングマスク21の除去に先立って、第1凹部の内壁111aを粗化する第1粗化処理を行うことが好ましい。
【0048】
<第1粗化処理>
第1実施形態に係る製造方法においては、第1面エッチング工程の後、第1エッチングマスク21の除去に先立って、第1凹部の内壁111aを粗化する第1粗化処理を行うことが好ましい。第1粗化処理は、
図6に示すように、後続の工程において第1面11aの上を第1ドライフィルムからなる保護層30で被覆することと密接な関係がある。
【0049】
すなわち、第1実施形態に係る製造方法は、後述する第2面エッチングに備え、
図6に示すように第1面11aの上を保護層30で被覆する。これにより第2面エッチング工程の際に第2エッチング液が第1凹部の内壁111aに回り込み、内壁111aを浸食することを抑制する。理由は後述するが、第1実施形態に係る製造方法では、保護層30として第1ドライフィルムレジストが用いられる。従来の2段エッチングにおいては、保護層として第1ドライフィルムレジストではなく、液状の感光性樹脂組成物を使用し、その塗膜を硬化させることにより保護層を形成していた。保護層30として第1ドライフィルムレジストを使用した場合、この従来の液状感光性樹脂組成物の硬化塗膜を使用した場合と比較し、密着性に劣る。このため、第1凹部の内壁111aを粗化処理し、アンカー効果により保護層30と第1面の内壁111aとの密着性を向上させることが好ましい。
【0050】
なお、第1ドライフィルムレジストからなる保護層30を加熱することによっても金属箔11との密着性は向上するが、これのみで所望とする密着性を得ようとすると加熱温度が高温になり得る。この場合、保護層30のアルカリ溶解性が悪化するため、剥離時間が長くなるという不利益を伴い得る。
【0051】
第1凹部の内壁111aの表面に対する第1粗化処理は、例えば、マイクロエッチング剤を用いたケミカルエッチングにより行うことができる。ここで使用するマイクロエッチング剤は、金属表面に接触させることで金属表面をわずかにエッチングして金属表面に微細な凹凸を形成する(マイクロエッチングする)エッチング剤をいう。マイクロエッチング剤としては、第1凹部の内壁111aに所望とする表面粗さを付与することが可能な公知の薬剤を使用することができる。例えば、マイクロエッチング剤として、蟻酸、酢酸等の有機酸を含む有機酸系マイクロエッチング剤、塩酸、硫酸等の無機酸を含む無機酸系マイクロエッチング剤が挙げられる。これらマイクロエッチング剤は、有機酸及び/又は無機酸に加えて、粗化形状やエッチング速度の調整等を目的として、塩化鉄系等の金属化合物、酸化剤、ハロゲン、ポリマー、アンモニウム塩、アミン類、界面活性剤等を更に含んでいてよい。
【0052】
第1粗化処理は、粗化処理後の第1凹部の内壁111aが、好ましくは0.15乃至0.70μmの範囲内、より好ましくは0.30乃至0.70μmの範囲内の算術平均粗さSaを有するように行う。内壁111aの算術平均粗さSaが低過ぎる場合、意図した密着性の向上効果が得られず、第3貫通孔の寸法(くびれ部31の開口径W3)の精度が低下する原因となり得る。また、内壁111aの算術平均粗さSaが高過ぎる場合、第1ドライフィルムレジストが第1凹部の内壁111aに追従できずボイドが発生しやすくなる。この場合も密着性が低下し、第3貫通孔の寸法精度が低下する原因となり得る。第1粗化処理により第1凹部の内壁111aにおける表面粗さを適切な範囲に制御することで密着性が向上し、第2面エッチング時における第2エッチング液の第1凹部の内壁111aへの回り込みが抑制される結果、高精細且つ寸法精度に優れた第3貫通孔を有する金属製品1を形成することができる。
【0053】
ここで、算術平均粗さSaは、ISO25178に規定された方法に従い、3次元白色光干渉型顕微鏡、走査型電子顕微鏡、電子線3次元粗さ解析装置等を用いて測定することができる。
【0054】
マイクロエッチング剤を使用した第1粗化処理は、例えば、スプレーエッチングにより実施される。スプレーエッチングでは、搬送される金属箔11の第1面11aに対面する側に配置されたノズルから、第1エッチングマスク21越しに第1面11aに向けてマイクロエッチング剤が噴射される。スプレーエッチングによる第1粗化処理は、上記表面粗さになるよう適宜、エッチング時間や、ケミカルエッチング剤のスプレー圧、濃度、温度等を調整して行う。
【0055】
<第1エッチングマスクの除去>
次いで、第1面11aから第1エッチングマスク21を除去する。
図5は、第1エッチングマスク21を除去した状態を示す工程図である。第1エッチングマスク21の除去は、例えば、アルカリ系剥離液を用いて行う。この場合、加温したアルカリ系剥離液を用いることができる。また、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドのような強アルカリ性物質を含有する剥離液を使用してもよい。
【0056】
<保護層の貼り合わせ>
図6は、第1エッチングマスク21を除去した後の金属箔11の第1面11aへ保護層30を貼り合わせた状態を示す工程図である。ここで保護層30は、第1凹部の内壁111aに密着している。このように保護層30を第1凹部の内壁111aに密着させる理由は、後述する第2面エッチングに備えたものであり、第2面エッチングの際に第2エッチング液が第1凹部の内壁111aに回り込み、内壁111aを浸食することを抑制するためである。
【0057】
保護層30は、第1ドライフィルムレジストからなる。これは後述する第2面エッチング工程後に金属箔11の両面から保護層30と第2エッチングマスク41とを同時に除去することと密接な関係がある。すなわち、従来の2段エッチングでは、上述したとおり、第2面エッチング工程に備え、液状の感光性樹脂組成物を塗布して第1凹部111を充填し、これを硬化して保護層を形成していた。この場合、第2エッチング工程後に第2ドライフィルムレジストからなる第2エッチングマスク41と硬化塗膜からなる保護層30とを同時に除去する際に、各々の剥離液に対する剥離性(剥離速度)の相違に起因した応力(反り)が金属箔に生じ、変形不良が発生する問題があった。これに対し、保護層30として第1ドライフィルムレジストを使用することにより、金属製品における変形不良の問題が改善されることが本発明者らにより見出された。第1実施形態に係る製造方法によれば、2段エッチングによる高精細な貫通孔の形成を可能としつつ、変形不良の発生が抑制された金属製品を得ることが可能となった。
【0058】
また、保護層が液状の感光性樹脂組成物の硬化膜からなる場合、露光硬化不足等に起因すると思われるボイドが発生しやすく、このため第3貫通孔の寸法精度が低下しやすい。
【0059】
保護フィルム30の第1面11aへの貼り合わせは、ラミネーターを用いて行うことができる。この場合、例えば、所定温度に加温したラミロールにより第1ドライフィルムレジストを軟化させ、所定の圧力、所定の搬送速度で第1面11aに貼り合わせることにより、第1ドライフィルムレジストにおける埋め込み性が高まり、第1凹部の内壁111aとの密着性を更に改善することができる。
【0060】
保護層30には、上述したとおり、第2ドライフィルムレジストからなる第2エッチングマスク41と同様、アルカリ溶液等の剥離液に対する良好な剥離性(アルカリ溶解性)が求められる。また保護層30には、上述した埋め込み性も求められる。更に保護層30には、第2面エッチング工程時における酸性の第2エッチング液により浸食しない耐エッチング性(耐強酸性)も求められる。更に保護層30には、耐熱性(例えば、120℃程度)も求められる。保護層30が第1ドライフィルムレジストからなることは、このような要求特性を満たし得るものである。第1ドライフィルムレジストは膜厚均一性に優れることも好ましい。
【0061】
第1ドライフィルムレジストは、埋め込み性の観点から、70℃における溶融粘度は1000乃至10000Pa・secの範囲内であることが好ましく、2000乃至7000Pa・secの範囲内であることがより好ましい。
【0062】
保護層30の厚さは、10μm以上70μm以下の範囲内であることが好ましく、10乃至40μmの範囲内であることがより好ましい。保護層30の厚さが薄過ぎる場合、第1凹部111への埋め込み性が不十分となり、密着性が低下する傾向がある。一方、保護層30の厚さが厚すぎる場合、剥離液に対する剥離性が低下する。この場合、内壁111aにドライフィルムレジストの一部が剥離せずに残り、貫通孔12の開口寸法の精度が悪化したり、貫通孔の欠陥の原因となり得る。また、第1ドライフィルムレジストの膜厚が厚くなると、その分、金属箔11から保護層30を剥離するのに要する時間が長くなる。
【0063】
保護層30を構成する第1ドライフィルムレジストは、金属製品1の変形不良を抑制する観点から、第2エッチングマスク41を構成する第2ドライフィルムレジストと組成及び厚さが等しいことが好ましい。この場合、金属箔11の両面から保護層30と第2エッチングマスク41とを同時に剥離する際に、剥離に要する各々の時間がほぼ同じになるため、金属箔11に応力(反り)が生じることがなく、金属製品1における変形不良をより効果的に抑制することができる。
【0064】
<第2ドライフィルムレジストの貼り合わせ>
図6に示す第1面11aの上に保護層30を形成した後の金属箔11に対し、第2ドライフィルムレジストを第2面11bに貼り合わせる。第2面11bの上に第2ドライフィルムレジストが形成された構造は図示を省略する。
【0065】
第2エッチングマスク41を精度よく作製するためには、レジスト層が高い解像度を有することが求められる。ドライフィルムレジストは解像度が高く、且つ膜厚均一性にも優れるため、第2エッチングマスクを構成するフォトレジストとしてドライフィルムレジストを使用することは、高精細且つ寸法精度に優れる第3貫通孔を有する金属製品1を得ることに貢献する。
【0066】
第2ドライフィルムレジストは、ネガ型フォトレジストであることが好ましい。ドライフィルムレジストとしては、PETなどからなるベースフィルムと、ベースフィルム上に積層され、感光性を有する感光層とを含むドライフィルムレジストを用いることができる。例えば、第2ドライフィルムレジストとして、アクリル系光硬化性樹脂、エポキシ系光硬化性樹脂、ポリイミド系光硬化性樹脂、スチレン系光硬化性樹脂などの感光性材料を含むドライフィルムレジストを用いることができ、中でもアクリル系光硬化性樹脂を含むドライフィルムレジストを用いることが好ましい。アクリル系ドライフィルムレジストの例としては、(株)レゾナック製のドライフィルムレジスト RY3310を挙げることができる。なお、第2ドライフィルムレジストとしてポジ型のものを用いてもよい。
【0067】
第2ドライフィルムレジストの金属箔11の第2面11bへの貼り合わせは、例えば、ラミネーターを用いて行うことができる。第2ドライフィルムレジストの厚さは、例えば10μm以上70μm以下の範囲内であってよい。
【0068】
上述したとおり、第2ドライフィルムレジストは、金属製品1の変形不良を抑制する観点から、保護層30を構成する第1ドライフィルムレジストと組成及び厚さが等しいことが好ましい。この場合、保護層30及び第2エッチングマスク41各々の剥離に要する時間がほぼ同じになるため、金属箔11の両面から保護層30と第2エッチングマスク41とを同時に剥離する際に、金属箔11に応力(反り)が生じることがなく、金属製品1における変形不良をより効果的に抑制することができる。
【0069】
<第2エッチングマスクの形成>
図7は、金属箔11の第2面11bの上に、第1凹部111の位置に第2貫通孔42を有する第2エッチングマスク41が形成された工程図を示す。第2ドライフィルムレジストからなる第2エッチングマスク41は、以下に説明するフォトリソグラフィプロセスにより形成することができる。
【0070】
ここでは、第2ドライフィルムレジストのうちの除去したい領域、すなわち、第2ドライレジストフィルムの第1凹部111の位置に光を透過させないようにした露光マスクを準備し、第2ドライフィルムレジスト上に配置する。なお、第2ドライフィルムレジストの上に露光マスクが配置された構造は図示を省略する。その後、真空密着によって露光マスクを第2ドライフィルムレジストに十分に密着させ、露光する。なお、第2ドライフィルムレジストとしてポジ型のものを用いた場合、露光マスクとして、第2ドライフィルムレジストのうちの除去したい領域に光を透過させるようにした露光マスクが用いられる。
【0071】
次いで、露光後の第2ドライフィルムレジストを現像することにより、
図7に示す第1凹部111の位置に第2貫通孔42を有する第2エッチングマスク41を得る。現像は、アルカリ現像液に浸漬するか、もしくはアルカリ現像液を噴霧することによって行うことができ、例えば、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル現像法等を使用することができる。アルカリ現像液として、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用される。また、現像液には消泡剤や界面活性剤を添加してもよい。また、第2エッチングマスク41を金属箔11に対してより強固に密着させるため、現像工程の後に、第2エッチングマスク41を加熱する熱処理工程を実施してもよい。
【0072】
<第2面エッチング工程>
図8は、第2エッチングマスク41を設けた金属箔11の第2面11bをエッチング(第2面エッチング)することにより、第2貫通孔42の位置で第2面11bに第2凹部211を形成した工程図を示す。
【0073】
第2面エッチングは、第1面エッチングと同様、ウェットエッチングにより実施される。第2エッチングマスク41を設けた第2面11bへ第2エッチング液を供給することにより、第2エッチングマスク41により覆われていない第2貫通孔42の位置で第2面11bの浸食が進み、第2凹部211が形成される。第2エッチング液の供給は、第1凹部111と第2凹部211とがそれらの底部の位置で繋がり、第1凹部111と第2凹部211とで第3貫通孔を生じるように行われる。この場合、くびれ部311の開口径W3が第3貫通孔の寸法となる。
【0074】
第2エッチング液の第2面11bへの供給は、例えば、第1面エッチングと同様、搬送される金属箔11の第2面11bに対面する側に配置されたノズルから、第2エッチングマスク41越しに第2面11bに向けて第2エッチング液を噴射するスプレーエッチングにより実施される。第2エッチング液は、第1エッチング液と同様のエッチング液を使用することができる。
【0075】
第2面エッチング工程後、保護層30と第2エッチングマスク41は除去されるが、以下に説明するように、保護層30と第2エッチングマスク41の除去に先立って、第2凹部の内壁211bを粗化する第2粗化処理を行うことが好ましい。
【0076】
<第2粗化処理>
第1実施形態に係る製造方法においては、第2面エッチング工程の後、保護層30と第2エッチングマスク41の除去に先立って、第2凹部の内壁211bを粗化する第2粗化処理を行うことが好ましい。第1実施形態に係る製造方法により得られた金属製品1は、例えば、蒸着マスクとして好適に使用することができる。ここで従来の蒸着マスクの使用においては、蒸着源から放出された蒸着物質(有機材料)の一部が蒸着マスク上に堆積して膜を形成し、これが脱落して異物(パーティクル)として蒸着装置に付着するという問題がある。第2凹部の内壁211bを粗化する第2粗化処理を実施することにより、蒸着マスクに堆積した蒸着物質の落下を抑制し、蒸着物質が異物(パーティクル)となって蒸着装置へ付着することを防ぐことが可能となる。
【0077】
第2凹部の内壁211bに対する粗化処理は、第1粗化処理と同様、マイクロエッチング剤を用いたケミカルエッチングにより行うことができる。ここで使用するマイクロエッチング剤は、第1粗化処理で説明したマイクロエッチング剤と同様のものを使用することができる。また、マイクロエッチング剤を用いた第2粗化処理は、第1粗化処理と同様の方法により実施することができる。
【0078】
第2粗化処理は、第2凹部の粗化した内壁211bが、好ましくは0.15乃至0.70μmの範囲内、より好ましくは0.30乃至0.70μmの範囲内の算術平均粗さSaを有するように行う。内壁211bの表面の算術平均粗さSaが低過ぎる場合、金属製品1を蒸着マスクとして使用した場合に上述した異物(パーティクル)の発生の抑制効果が充分に得られない。また、内壁211bの算術平均粗さSaが高過ぎる場合、第2ドライフィルムレジストが第2凹部の内壁に追従できずボイドが発生しやすくなる。
【0079】
<保護層及び第2エッチングマスクの除去>
次いで、第3貫通孔が設けられた金属箔11の両面から保護層30及び第2エッチングマスク41を同時に除去する。これにより
図1及び
図2に示す金属製品1を得る。保護層30及び第2エッチングマスク41の除去は、例えば、アルカリ系剥離液を用いて行う。この場合、加温したアルカリ系剥離液を用いることができる。また、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドのような強アルカリ性物質を含有する剥離液を使用してもよい。
【0080】
第1実施形態に係る製造方法では、保護層30及び第2エッチングマスク41の各々がドライフィルムレジストから構成されるため、各々の剥離液に対する剥離性(剥離速度)の相違に起因して金属箔11に生じる応力(反り)が低減され、金属製品1における変形不良の問題を解消することが可能となる。更に、保護層30を構成する第1ドライフィルムレジストと、第2エッチングマスク41を構成する第2ドライフィルムレジストとが、同じ組成で同じ厚さのドライフィルムレジストである場合、剥離に要する各々の時間がほぼ同じになるため、金属製品1における変形不良をより効果的に抑制することができる。
【0081】
図1及び
図2に示す金属製品1において、第1凹部111及び第2凹部211は、それらの底部の位置、すなわちくびれ部311で繋がり、第1凹部111と第2凹部211とで第3貫通孔を形成している。くびれ部311の開口径W3は第3貫通孔の寸法を示す。上述したとおり、第2凹部211は第1凹部111より大きいことが好ましい。すなわち、第2凹部211の深さH2は、第1凹部111の深さH1より大きいことが好ましい。また、第2凹部211の開口径W2は、第1凹部111の開口径W1より大きいことが好ましい。第2凹部211の深さH2又は開口径W2が、第1凹部111の深さH1又は開口径W1と比べて大きい場合、第3貫通孔の寸法(くびれ部311の開口径W3)のばらつきが小さくなり、寸法精度が高くなる。同様の理由から、第1凹部111の開口径W1と第3貫通孔の開口径W3の差は小さいことが好ましく、等しいことがより好ましい。
【0082】
図1及び
図2に示す金属製品1の厚さ方向に平行な断面において、第1凹部111の深さH1に対する第2凹部211の深さH2の比H2/H1は、第3貫通孔の寸法精度の観点から6.5以上であることが好ましい。同様の理由から、第1凹部111の開口径W1に対する第2凹部211の開口径W2の比W2/W1は、1.0以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。一方、比H2/H1、又は、比W2/W1が大き過ぎる場合、金属製品1を蒸着マスクとして使用したときに、蒸着マスク上に堆積した蒸着物質が落下し、異物(パーティクル)として蒸着装置に付着する可能性が高まる。このため比H2/H1は24以下であることが好ましく、比W2/W1は、2.2以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましい。
【0083】
図1及び
図2に示す金属製品1の厚さ方向に平行な断面において、第3貫通孔の寸法(くびれ部31の開口径W3)は、第1凹部111の開口径W1及び第2凹部211の開口径W2の何れよりも小さい。ここで、第3貫通孔の好ましい寸法は、用途に応じて適宜設定される。
【0084】
図2に示す金属製品1の厚さ方向に平行な断面において、L1は、第1凹部111の開口に相当する線分の一端と第2凹部211の開口に相当する線分の一端とを結ぶ線分の長さを表す。金属製品1において、厚さT1に対する上記線分の長さL1の比L1/T1は、第3貫通孔の寸法精度の観点から1.0以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。一方、比L1/T1が大きすぎる場合、金属製品1を蒸着マスクとして使用したときに、蒸着マスク上に堆積した蒸着物質が落下し、異物(パーティクル)として蒸着装置に付着する可能性が高まる。このため比L1/T1は、1.5以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましい。なお、金属箔11の厚さT1の好ましい範囲は、上述したとおりであり、具体的には、金属箔11の厚さT1は、50μm以下であることが好ましく、5乃至50μmの範囲内であることがより好ましく、15乃至50μmの範囲内であることが更に好ましい。
【0085】
本発明の第2実施形態に係る金属製品は、第1実施形態に係る製造方法により得られる
図1及び
図2に示す金属製品1において、第1凹部の内壁111aが、0.30乃至0.70μmの範囲内の算術平均粗さSaを有している金属製品である。このような第2実施形態に係る金属製品1は、第1粗化処理及び第2粗化処理を任意工程として含む上述した第1実施形態に係る金属製品の製造方法に対し、第1処理工程を必須要件として含め、第1粗化処理工程において第1凹部の内壁111aが上記範囲内の算術平均粗さSaとなるよう粗化処理することにより得られる。これ以外は第2実施形態に係る金属製品1は、第1実施形態に係る製造方法により得られる金属製品と同様である。
【実施例0086】
以下に本発明に関連して行った試験について説明する。
1.金属製品の製造
<例1>
図1及び
図2に示す金属製品1を以下の方法により製造した。
図3乃至
図8に示す工程図を参照しながら説明する。
先ず、長尺状のSUS304(厚さ20μm)を準備した。このSUS板の幅方向の中央部から70mm(幅方向)の幅を有し、且つ、130mm(長手方向)の長さを有する試験片を切り出した。この試験片として切り出したSUS板からなる金属箔11の第1面11aの上に、アクリル系ドライフィルムレジスト(RY3310、(株)レゾナック製)をラミネートした。次いで、このドライフィルムレジストをフォトマスクとして介し露光、現像することにより、第1貫通孔22を有する第1エッチングマスク21を得た(
図3参照)。この第1エッチングマスク21は、正方格子のピッチが70μmである各格子点上に1つの第1貫通孔22を有し、各第1貫通孔22はエッチングマスク21の平面視において正方形状を有している。
【0087】
次に、スプレー式エッチング装置を用い、金属箔11の第1面11aを上記エッチングマスク21越しにエッチングし、第1貫通孔22の位置で第1面11aに第1凹部111を形成した(
図4参照)。ここでは、エッチング液として塩化第二鉄を主成分として含有する水溶液を使用し、比重1.525、液温57℃、スプレー圧0.30MPaの条件でエッチングを行った。
【0088】
次いで、第1凹部111の内壁111aについて第1粗化処理を行った。第1粗粗化処理は、マイクロエッチング剤を用いて第1凹部の内壁111aをケミカルエッチングすることにより実施した。ケミカルエッチングは、マイクロエッチング剤として有機酸系マイクロエッチング剤(蟻酸濃度:40質量%)を使用し、液温40℃、スプレー圧0.4MPaの条件で行った。第1粗化処理後の内壁111aの算術平均粗さSaは0.60μmであった。
【0089】
次に、40℃に加温した水酸化ナトリウム水溶液を用いて第1エッチングマスク21を除去した(
図5参照)。この時、第1エッチングマスク21の除去に要した処理時間は20秒であった。
【0090】
次に、保護層30として第1ドライフィルムレジストを金属箔11の第1面11aにラミネートし、第1凹部111に第1ドライフィルムレジストを埋め込んだ。ここでは第1ドライフィルムレジストとして、第1エッチングマスク21の形成に使用した上記ドライフィルムレジストと同じアクリル系ドライフィルムレジスト(RY3310、(株)レゾナック製)を使用した。ラミネートはラミネーターを使用し、ラミロール温度110℃、圧力0.4MP、搬送速度0.3m/分の条件で行った。次いで、第1ドライフィルムレジストを全面露光により硬化させ、保護層30を形成した(
図6参照)。
【0091】
次に、金属箔11の第1面11aの裏面である第2面11bに、第2ドライフィルムレジストをラミネートした。第2ドライフィルムレジストとして、上記第1ドライフィルムレジストと同じアクリル系ドライフィルムレジスト(RY3310、(株)レゾナック製)を使用した。次いで、第2ドライフィルムレジストをフォトマスクとしてを介し露光、現像することにより、上記第1凹部111の位置で第2貫通孔42を有する第2エッチングマスク41を得た(
図7参照)。この第2エッチングマスク41は、正方格子のピッチが70μmである各格子点上に1つの第2貫通孔42を有し、各第2貫通孔42はエッチングマスク41の平面視において正方形状を有している。
【0092】
次に、スプレー式エッチング装置を用い、金属箔11の第2面11bを上記第2エッチングマスク41越しにエッチングし、第2貫通孔42の位置で第2面11bに第2凹部211を形成した(
図8参照)。ここでは、エッチング液として塩化第二鉄を主成分として含有する水溶液を使用し、比重1.555、液温53℃、スプレー圧0.4MPaの条件でエッチングを行った。第2凹部211と第1凹部111とはそれらの底部がくびれ部311で繋がり、第2凹部211と第1凹部111とで第3貫通孔を形成している(
図1、
図2及び
図8参照)。
【0093】
次に、第2凹部の内壁211bについて第2粗化処理を行った。第2粗化処理は、マイクロエッチング剤を用いて第2凹部の内壁211bをケミカルエッチングすることにより実施した。ケミカルエッチングは、マイクロエッチング剤として有機酸系マイクロエッチング剤(蟻酸濃度:40質量%)を使用し、液温40℃、スプレー圧0.4MPaの条件で行った。第2粗化処理後の内壁211bの算術平均粗さSaは0.59μmであった。
【0094】
次に、40℃に加温した水酸化ナトリウム水溶液を用いて金属箔11の両面から保護層30及び第2エッチングマスク41を同時に除去することにより、金属製品1を得た(
図1及び
図2参照)。この時、保護層30と第2エッチングマスク41の除去に要した時間はほぼ同じであり、処理時間は25秒であった。
【0095】
本例で得られた金属製品1は、第1面11a側からの平面視において一辺の長さ(W1)が52μmの正方形状をした開口を有する第1凹部111と、第2面11b側からの平面視において一辺の長さ(W2)が64μmの正方形状をした開口を有する第2凹部211とが底部で繋がることにより形成された第3貫通孔を有していた。第3貫通孔の寸法(くびれ部311の開口径W3)は48.70μmであり、寸法ばらつきを示す3σ(σ:標準偏差)は1.00μmであった。
【0096】
<例2>
マイクロエッチング剤の濃度を40質量%から3質量%に変更したこと以外は、例1と同様の方法により金属製品を製造した。
【0097】
<例3>
マイクロエッチング剤の濃度を40質量%から15質量%に変更したこと以外は、例1と同様の方法により金属製品を製造した。
【0098】
<例4>
マイクロエッチング剤の濃度を40質量%から20質量%に変更したこと以外は、例1と同様の方法により金属製品を製造した。
【0099】
<例5>
マイクロエッチング剤の濃度を40質量%から50質量%に変更したこと以外は、例1と同様の方法により金属製品を製造した。
【0100】
<例6>
第1粗化処理を行わなかったこと以外は例1と同様の方法により金属製品を製造した。即ち、本例では、エッチングにより第1凹部111を形成した後(
図4参照)、第1凹部の内壁111aについて第1粗化処理を行うことなく第1エッチングマスク21の除去工程を実施した。この場合、内壁111aの算術平均粗さSaは0.10μmであった。
【0101】
<比較例1>
保護層30として、アクリル系ドライフィルムレジスト(RY3310、(株)レゾナック製)に替えて、液状感光性樹脂ニスを塗布し、全面露光により硬化させた硬化塗膜を使用したこと以外は、例1と同様の方法により金属製品を製造した。
【0102】
<2.測定及び算出方法>
<2.1 第3貫通孔の寸法及び寸法精度3σ>
上掲で得られた各金属製品1は、SUS板から切り出された130mm(長手方向)×70mm(幅方向)サイズの試験片に対し、正方格子の各格子点上に第3貫通孔を有している。第3貫通孔は、70μmピッチの正方格子配列の各格子上に、1600個(長手方向)×850個(幅方向)形成された開口パターンからなる。これら第3貫通孔の寸法(開口径W3)を、金属製品1の第1凹部111が形成された第1面11a側(小孔側)を光源側に位置させた透過光モードで測定した。
【0103】
測定箇所は、第3貫通孔の上記開口パターンを、5mm×5mmサイズの364個の小領域(26箇所(長手方向)×14箇所(幅方向))に分割し、小領域毎に連続して並んだ25個(5個×5個)の開口部を選択し、第3貫通孔の寸法(開口径W3)を測定した。これら測定値から第3貫通孔の寸法(平均値)と寸法精度3σ(σ:標準偏差)を算出した。
【0104】
<2.2 算術平均粗さSaの測定>
粗化処理面の算術平均粗さSaは、ISO25178に規定された方法に従い、3次元白色光干渉型顕微鏡を用いて測定した。本実施例においては、粗化処理後の小孔面の平滑部を開口壁面の値と代用した。
【0105】
<2.3 変形不良検査>
室内の蛍光灯下で金属製品1を検査者の目線まで持ち上げ、蛍光灯の光を反射させ、金属製品1の角度を変えながら外観検査する。長さ10mm以上のスジ状変形が確認されたらカウント1とする。サンプルは5検体として、1サンプル当たりの平均変形不良カウント数を算出した。
【0106】
各例及び比較例1について、金属製品における変形不良の発生率(%)、第3貫通孔の寸法(くびれ部の開口径W1)(μm)、第3貫通孔の寸法精度3σ(nm)、第1凹部111の第1粗化処理後の算術平均粗さSa及び第2凹部211の第1粗化処理後の算術平均粗さSaを、上掲の測定方法及び/又は算出方法に従い測定又は算出した。結果を表1に纏めた。
【0107】
【0108】
表1中、実施例1乃至6と比較例1との対比から、保護層30として、液状感光性組成物の硬化塗膜に替えてドライフィルムレジストを使用し、且つ、このドライフィルムレジストを第2エッチングマスク41を構成するドライフィルムレジストと同じものを選択することにより、金属製品における変形不良の発生率が有意に低減したことがわかる。また実施例1乃至6の対比から、第1粗化処理により第1凹部の内壁111aの算術平均粗さSaを特定範囲に調整することにより、第3貫通孔の寸法精度が改善されることがわかった。
1…金属製品、11…金属箔、11a…第1面、11b…第2面、21…第1エッチングマスク、22…第1貫通孔、30…第1ドライフィルムレジスト(保護層)、41…第2エッチングマスク、42…第2貫通孔、111…第1凹部、111a…第1凹部の内壁、211…第2凹部、211b…第2凹部の内壁、311…くびれ部