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特開2025-16597DNAメチル化バイオマーカーの組み合わせ、検出方法および試薬キット
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  • 特開-DNAメチル化バイオマーカーの組み合わせ、検出方法および試薬キット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016597
(43)【公開日】2025-02-04
(54)【発明の名称】DNAメチル化バイオマーカーの組み合わせ、検出方法および試薬キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6886 20180101AFI20250128BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20250128BHJP
   G16B 25/00 20190101ALI20250128BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
C12Q1/686 Z
G16B25/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024189308
(22)【出願日】2024-10-28
(62)【分割の表示】P 2022525590の分割
【原出願日】2020-01-17
(31)【優先権主張番号】201911367385.4
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522172195
【氏名又は名称】広州市基准医療有限公司
【氏名又は名称原語表記】ANCHORDX MEDICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】3rd Luoxuan Road, No.8, Unit 502, International Bio-island Guangzhou Guangdong China
(74)【代理人】
【識別番号】100124659
【弁理士】
【氏名又は名称】白洲 一新
(72)【発明者】
【氏名】阮 微媚
(72)【発明者】
【氏名】蒋 沢宇
(72)【発明者】
【氏名】李 霞
(72)【発明者】
【氏名】陳 志偉
(72)【発明者】
【氏名】范 建兵
(57)【要約】      (修正有)
【課題】DNAメチル化バイオマーカーの組み合わせ、検出方法および試薬キットを提供する。
【解決手段】ヒト被験者から得られた尿サンプルのDNAをバイサルファイト処理するステップと、特定の相補配列の少なくとも一つのCpG領域について、メチル化特異的定量PCRを実施してDNAを増幅し、CT値を得るステップと、前記得たCT値を、少なくとも一つのCpG領域の予め定められたCT値の範囲と比較し、被験者に膀胱癌の有無を判定するステップとを含んでなり、前記予め定められたCT値の範囲が、膀胱癌が存在するサンプルと膀胱癌が存在しないサンプルを含むトレーニングセットのサンプルの統計的解析から導出されたことを特徴とする膀胱癌リスクの判定方法を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト被験者から得られた尿サンプルのDNAをバイサルファイト処理するステップと、
配列番号3または配列番号3の相補配列の少なくとも一つのCpG領域について、メチル化特異的定量PCRを実施してDNAを増幅し、CT値を得るステップと、
前記得たCT値を、少なくとも一つのCpG領域の予め定められたCT値の範囲と比較し、被験者に膀胱癌の有無を判定するステップとを含んでなり、
前記予め定められたCT値の範囲が、膀胱癌が存在するサンプルと膀胱癌が存在しないサンプルを含むトレーニングセットのサンプルの統計的解析から導出されたことを特徴とする膀胱癌リスクの判定方法。
【請求項2】
前記メチル化特異的定量PCRによりDNAを増幅しCT値を得るステップが、配列番号5の配列またはその相補配列の少なくとも第2のCpG領域のCT値を取得するステップであることと、
前記判定するステップが、前記サンプルの前記第2のCpG領域の取得したCT値を、前記第2のCpG領域の前もって決められたCT値の範囲と比較するステップであることとを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
前記メチル化特異的定量PCRによりDNAを増幅しCT値を得るステップが、配列番号7の配列またはその相補配列の少なくとも第3のCpG領域のCT値を取得するステップであることと、
前記判定するステップが、前記サンプルの前記第3のCpG領域の取得したCT値を、前記第3のCpG領域の前もって決められたCT値の範囲と比較するステップであることとを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
【請求項4】
前記被験者に膀胱がんが存在するかを判定するステップが、さらに、その膀胱がんが低グレードか高グレードかを決定することを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
【請求項5】
前記ヒト記被験者に膀胱がんが存在するかを判定するステップが、さらに、膀胱がんが非筋層浸潤性膀胱がんまたは筋層浸潤性膀胱がんであるかを決定することを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
【請求項6】
ヒト被験者から得られた尿サンプルのDNAに対して、バイサルファイト処理を行うステップと、
配列番号3、5、7の配列またはこれらの配列の相補配列の少なくとも3つのCpG領域について、メチル化特異的定量PCRで前記DNAを増幅し、CT値を得るステップと、
前記少なくとも3つのCpG領域の得られたCT値を、膀胱癌が存在するサンプルと膀胱癌が存在しないサンプルを含むトレーニングセットの統計的解析により導出された前記少なくとも3つのCpG領域のCT値の予め定められた範囲と比較することにより、前記被験者に膀胱癌が存在するか否かを判定するステップと、を含むヒト被験者の膀胱癌リスクの判定方法。
【請求項7】
ヒト被験者から得られた尿サンプルのDNAに対して、バイサルファイト処理をするステップと、
配列番号3、5、7の配列またはこれら配列の相補配列の少なくとも3つのCpG領域について、メチル化特異的定量PCRで前記DNAを増幅し、CT値を求めるステップと、
得られたサンプルの少なくとも3つのCpG領域のCT値を、膀胱癌が存在するサンプルと存在しないサンプルを含むトレーニングセットの統計解析から得られた各々のCpG領域のあらかじめ設定されたCT値の範囲と比較し、被験者の膀胱癌のリスクレベルを、低・中等リスク非筋侵襲性膀胱癌(NMIBC)、高リスクNMIBC、筋侵襲性膀胱癌(MIBC)のいずれかに層別化するステップと含む、膀胱癌のリスク層別化方法。
【請求項8】
前記リスク層別化方法が、膀胱癌を低リスクから中等度リスクの膀胱癌、または高リスク膀胱癌のいずれかに分類することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に属し、特に、DNAメチル化バイオマーカーの組み合わせと検出試薬キットおよび検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膀胱がんは、泌尿器系で最も一般的な悪性腫瘍の1つで、2014年の中国での膀胱がんの発症数は7.8万人/年で、発症率は年々増加の傾向にある。膀胱がんは、発症率が高く、再発しやすいという特徴がある。血尿は、膀胱がんの一般的な臨床症状で、血尿患者の約17%に膀胱がんが検出されていた。現在、膀胱がんの主な診断方法として、膀胱鏡検査、尿中剥離細胞診、尿FISH検出および腫瘍マーカー検査が挙げられる。生体組織診断(生研)と組み合わせた膀胱鏡検査は、膀胱鏡診断のゴールドスタンダードであるが、この方法は、侵襲的で合併症を起こしやすく、患者への依存性が低くなっていた。しかし画像検査では、小さな病巣を診断する能力が限られており、尿中剥離細胞診の感度も低く、尿FISH検出の操作が複雑で、判読結果は主観的である。従来の腫瘍マーカー検査は、主に尿中の特定のタンパク質の存在に基づくが、尿中における検出に用いる蛋白の含有量が少ないため、感度と特異度がやはり制限されている。
【0003】
膀胱がん特異的DNAメチル化生物指標化合物(マーカー)の組み合わせを探すことにより、複数のDNAメチル化部位に基づいて検出し、単一のDNAメチル化シグナルが低いという問題を克服することで、検出の感度および特異度を向上させる。同時にDNAメチル化に基づく検出は、簡単で実施しやすく、客観的な判読であるため、人間による判読結果の主観性を避け、精度を向上させる。またこの検出は、非侵襲的であり、膀胱鏡検査による合併症を防ぎ、患者への依存性を高めることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sambrookら、分子クローニング:実験室マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一つは、膀胱がんの診断に用いられることができるDNAメチル化マーカーの組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための技術的手段は、次の通りである。
【0007】
膀胱がんを検出するためのDNAメチル化マーカーの組み合わせであって、[CG]により示される共メチル化部位の配列番号1~配列番号22の任意の2つ以上の配列の組み合わせから選択され、または配列番号1~配列番号22の完全に相補的な配列の任意の2つ以上の配列の組み合わせから選択される。
【0008】
さらに、任意の2~3個、2~4個、2~5個、2~6個、2~8個、2~9個、2~10、2~11個、2~12個、2~13個、2~14個、2~15個、2~16個、2~17個、2~18個、2~19個、2~20個、2~21、2~22個のDNAメチル化マーカーの配列の組み合わせを選択できる。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記膀胱がんを検出するためのDNAメチル化マーカーの組み合わせは、配列番号2、配列番号3、配列番号6、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17から選択される少なくとも2つの組み合わせ、または配列番号2、配列番号3、配列番号6、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号17の完全に相補的な配列から選択される少なくとも2つの組み合わせを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記膀胱がんを検出するためのDNAメチル化マーカーの組み合わせは、配列番号1と配列番号2の組み合わせ、またはこれらの完全に相補的な配列の組み合わせである。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記膀胱がんを検出するためのDNAメチル化マーカーの組み合わせは、配列番号1、配列番号2と配列番号3の組み合わせ、または配列番号1、配列番号2および配列番号3から選択される完全に相補的な配列の組み合わせである。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記膀胱がんを検出するためのDNAメチル化マーカーの組み合わせは、配列番号1~配列番号8の組み合わせまたはこれらの完全に相補的な配列の組み合わせである。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記膀胱がんを検出するためのDNAメチル化マーカーの組み合わせは、配列番号1~配列番号22の組み合わせまたはこれらの相補的配列の組み合わせである。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記膀胱がんを検出するためのDNAメチル化マーカーの組み合わせは、以下のグループのいずれか、または以下のグループのいずれかのDNAメチル化マーカーの完全に相補的な配列の組み合わせである。
【0015】
【表1】
【0016】
本発明の別の目的は、膀胱癌の検出、診断、分類または予測、治療モニタリング、予後或いは他の評価のための試薬キットの調製における上記DNAメチル化マーカーの組み合わせの応用を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、膀胱がん患者の診断、モニタリング、コンパニオン診断、分析、グレーディング、治療などに用いられ、膀胱癌を検出するための試薬キットを提供することである。
【0018】
膀胱がんの異なるグレードまたは異なるステージ分類を判断するための試薬キットであって、[CG]により示される共メチル化領域の配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号21、配列番号22のうち少なくとも2つのDNAメチル化マーカーの組み合わせ、またはこれらの完全に相補的な配列の組み合わせを含む共メチル化程度を検出する試薬を有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記DNAメチル化マーカーの組み合わせは、配列番号6、配列番号13、配列番号16、と配列番号18またはこれらの完全に相補的な配列のDNAメチル化マーカーを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記DNAメチル化マーカーの組み合わせは、配列番号6、配列番号10、配列番号13、配列番号16、および配列番号18またはこれらの完全に相補的な配列のDNAメチル化マーカーを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記DNAメチル化マーカーの組み合わせは、配列番号17、および配列番号13またはこれらの完全に相補的な配列のDNAメチル化マーカーを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記DNAメチル化マーカーの組み合わせは、配列番号17、配列番号13と配列番号5、またはこれらの完全に相補的な配列、或いは前記DNAメチル化マーカーの組み合わせは、配列番号17、配列番号13および配列番号22、またはこれらの完全に相補的な配列である。
【0023】
別の態様は、上記DNAメチル化マーカーの組み合わせのメチル化の程度を検出する試薬を含む膀胱がん検出試薬キットを提供する。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記検出試薬キットは各メチル化領域に対応して増幅プライマーおよび蛍光プローブを含む蛍光定量PCR法を用い、前記増幅プライマーおよび蛍光プローブは、
配列番号1に対応して配列番号23と配列番号45と、そして配列番号67であり、
配列番号2に対応して配列番号24と配列番号46と、そして配列番号68であり、
配列番号3に対応して配列番号25と配列番号47と、そして配列番号69であり、
配列番号4に対応して配列番号26と配列番号48と、そして配列番号70であり、
配列番号5に対応して配列番号27と配列番号49と、そして配列番号71であり、
配列番号6に対応して配列番号28と配列番号50と、そして配列番号72であり、
配列番号7に対応して配列番号29と配列番号51と、そして配列番号73であり、
配列番号8に対応して配列番号30と配列番号52と、そして配列番号74であり、
配列番号9に対応して配列番号31と配列番号53と、そして配列番号75であり、
配列番号10に対応して配列番号32と配列番号54と、そして配列番号76であり、
配列番号11に対応して配列番号33と配列番号55と、そして配列番号77であり、
配列番号12に対応して配列番号34と配列番号56と、そして配列番号78であり、
配列番号13に対応して配列番号35と配列番号57と、そして配列番号79であり、
配列番号14に対応して配列番号36と配列番号58と、そして配列番号80であり、
配列番号15に対応して配列番号37と配列番号59と、そして配列番号81であり、
配列番号16に対応して配列番号38と配列番号60と、そして配列番号82であり、
配列番号17に対応して配列番号39と配列番号61と、そして配列番号83であり、
配列番号18に対応して配列番号40と配列番号62と、そして配列番号84であり、
配列番号19に対応して配列番号41と配列番号63と、そして配列番号85であり、
配列番号20に対応して配列番号42と配列番号64と、そして配列番号86であり、
配列番号21に対応して配列番号43と配列番号65と、そして配列番号87であり、
配列番号22に対応して配列番号44と配列番号66と、そして配列番号88であり、または上記配列の複数の連続ヌクレオチドに対して少なくとも70%、80%、90%、95%または99%の配列同一性を有するプライマーおよびプローブである。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記検出試薬キットは各メチル化領域に対応する増幅プライマーおよび蛍光プローブを含む蛍光定量PCR法を用い、前記増幅プライマーおよび蛍光プローブは、
配列番号1に対応して配列番号89と配列番号111と、そして配列番号133であり、
配列番号2に対応して配列番号90と配列番号112と、そして配列番号134であり、
配列番号3に対応して配列番号91と配列番号113と、そして配列番号135であり、
配列番号4に対応して配列番号92と配列番号114と、そして配列番号136であり、
配列番号5に対応して配列番号93と配列番号115と、そして配列番号137であり、
配列番号6に対応して配列番号94と配列番号116と、そして配列番号138であり、
配列番号7に対応して配列番号95と配列番号117と、そして配列番号139であり、
配列番号8に対応して配列番号96と配列番号118と、そして配列番号140であり、
配列番号9に対応して配列番号97と配列番号119と、そして配列番号141であり、
配列番号10に対応して配列番号98と配列番号120と、そして配列番号142であり、
配列番号11に対応して配列番号99と配列番号121と、そして配列番号143であり、
配列番号12に対応して配列番号100と配列番号122と、そして配列番号144であり、
配列番号13に対応して配列番号101と配列番号123と、そして配列番号145であり、
配列番号14に対応して配列番号101と配列番号124と、そして配列番号146であり、
配列番号15に対応して配列番号103と配列番号125と、そして配列番号147であり、
配列番号16に対応して配列番号104と配列番号126と、そして配列番号148であり、
配列番号17に対応して配列番号105と配列番号127と、そして配列番号149であり、
配列番号18に対応して配列番号106と配列番号128と、そして配列番号150であり、
配列番号19に対応して配列番号107と配列番号129と、そして配列番号151であり、
配列番号20に対応して配列番号108と配列番号130と、そして配列番号152であり、
配列番号21に対応して配列番号109と配列番号131と、そして配列番号153であり、
配列番号22に対応して配列番号110と配列番号132と、そして配列番号154であり、または上記配列の複数の連続ヌクレオチドに対して少なくとも70%、80%、90%、95%または99%の配列同一性を有するプライマーおよびプローブである。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記検出試薬キットは各メチル化領域に対応する増幅プライマーおよび蛍光プローブを含む蛍光定量PCR法を用い、前記増幅プライマーおよび蛍光プローブは、
配列番号1に対応して配列番号155と配列番号177と、そして配列番号199であり、
配列番号2に対応して配列番号156と配列番号178と、そして配列番号200であり、
配列番号3に対応して配列番号157と配列番号179と、そして配列番号201であり、
配列番号4に対応して配列番業158と配列番号180と、そして配列番号202であり、
配列番号5に対応して配列番号159と配列番号181と、そして配列番号203であり、
配列番号6に対応して配列番業160と配列番号182と、そして配列番号204であり、
配列番号7に対応して配列番号161と配列番号183と、そして配列番号205であり、
配列番号8に対応して配列番号162と配列番号184と、そして配列番号206であり、
配列番号9に対応して配列番号163と配列番号185と、そして配列番号207であり、
配列番号10に対応して配列番号164と配列番号186と、そして配列番号208であり、
配列番号11に対応して配列番号165と配列番号187と、そして配列番号209であり、
配列番号12に対応して配列番号166と配列番号188と、そして配列番号210であり、
配列番号13に対応して配列番号167と配列番号189と、そして配列番号211であり、
配列番号14に対応して配列番号168と配列番号190と、そして配列番号212であり、
配列番号15に対応して配列番号169と配列番号191と、そして配列番号213であり、
配列番号16に対応して配列番号170と配列番号192と、そして配列番号214であり、
配列番号17に対応して配列番号171と配列番号193と、そして配列番号215であり、
配列番号18に対応して配列番号172と配列番号194と、そして配列番号216であり、
配列番号19に対応して配列番号173と配列番号195と、そして配列番号217であり、
配列番号20に対応して配列番号174と配列番号196と、そして配列番号218であり、
配列番号21に対応して配列番号175と配列番号197と、そして配列番号219であり、
配列番号22に対応して配列番号176と配列番号198および配列番号220、または上記配列の複数の連続ヌクレオチドに対して少なくとも70%、80%、90%、95%または99%の配列同一性を有するプライマーおよびプローブである。
【0027】
実際の応用において、特異的なメチル化領域の組み合わせにより、対応するプライマーおよびプローブを選択する。
【0028】
いくつかの実施形態において、内部標準遺伝子を有するプライマーおよびプローブである配列番号221-配列番号223を含み、または上記配列の複数の連続ヌクレオチドに対して少なくとも70%、80%、90%、95%または99%の配列同一性を有するプライマーおよびプローブから選択される。
【0029】
本発明の別の目的は、膀胱がんの検出方法を提供することである。
【0030】
上記目的を達成するための技術的手段は、次の通りである。
膀胱がんの検出方法であって、以下のステップ:
被験生体試料のゲノムDNAおよび/または遊離DNAを抽出するステップと、
前記DNAをバイサルファイト変換するステップと、
バイサルファイト変換された前記DNAと対照群に対して上記のようなDNAメチル化マーカーの組み合わせの共メチル化検出を行って、メチル化プロファイルを得るステップと、
メチル化マーカーの組み合わせのメチル化プロファイルをデータセットによる数学的モデリングから得られたプロファイルの判定閾値と比較して、生体試料中の膀胱がんの存在を判断するステップと、
を含む、膀胱がんの検出方法。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記共メチル化検出方法としては、メチル化特異的PCR、DNAメチル化チップ、標的DNAメチル化シーケンシング、デジタル・定量PCRおよび蛍光定量PCRが挙げられる。
【0032】
別の態様において、本発明は、膀胱がんの診断、ステージ分類および分類のための方法をさらに提供する。
【0033】
膀胱がんの診断、ステージ分類、分類のための方法であって、以下のステップ:
被験生体試料のゲノムDNAおよび/または遊離DNAを抽出するステップと、
前記DNAをバイサルファイト変換するステップと、
バイサルファイト変換された前記DNAに対して上記のようなDNAメチル化マーカーの組み合わせの共メチル化検出を行うステップと、
標的DNAメチル化マーカー領域の相対サイクル数d-CTを得て、設定された閾値と比較し、異なる由来の生体試料の膀胱がんのグレード分類またはステージ分類を判断するステップと
を含む、膀胱がんの診断、ステージ分類、分類のための方法。
【0034】
別の態様において、本発明は、膀胱がんの予測、治療モニタリング、予後またはその他の評価のための方法をさらに提供する。
【0035】
膀胱がんの予測、治療モニタリング、予後またはその他の評価のための方法であって、以下のステップ:
個体の生体試料を取得するステップと、
前記生体試料のゲノムDNAおよび/または遊離DNAを抽出するステップと、
前記DNAをバイサルファイト変換するステップと、
バイサルファイト変換されたDNAを上記DNAメチル化マーカーの共メチル化程度を特異的に検出する複数の試薬と接触させ、前記生体試料の前記的DNAメチル化マーカーの共メチル化程度をアッセイし、データセットによる数学的モデリングから得られた共メチル化程度の判定閾値と比較して、膀胱がんの予測、治療検出、予後を判断するステップと、
を含む、膀胱がんの予測、治療モニタリング、予後またはその他の評価のための方法。
【0036】
本発明は、複数の特異的なメチル化領域(マーカー、marker)の共メチル化(co-methylation)状態の組み合わせを利用して膀胱がんの発生を識別し、この特異的なメチル化の組み合わせは膀胱がんの発生を識別する感度が高く、検出方法が簡単で実施可能である。本発明者らは、単一のメチル化領域の共メチル化状態に比べると、前記選択された複数のメチル化領域の共メチル化状態の組み合わせが膀胱がんの発生を識別する際により優れたパフォーマンスを有することを見出した。
【0037】
本発明の前記複数のメチル化領域の検出試薬キットにおいて、プライマーペアとプローブの設計およびこれらの組み合わせの設計は、複数のメチル化領域の共メチル化程度を同時並行的に検出することに重要な役割を果たす。この試薬キットのプライマーペアの組み合わせは、プライマー配列設計上で単一のメチル化部位のミスマッチ検出による偽陽性の欠点を克服し、複数のメチル化バイオマーカープライマーおよびプローブの組み合わせの間の相互作用を考慮する。この試薬キットのマルチプレックス蛍光定量PCR反応システムは、反応成分を最適化し、高い増幅効率を持ち、検出方法の感度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】膀胱がん組織と正常組織の複数のDNAメチル化領域の共メチル化の差のヒートマップである。
図2】膀胱がん患者群と正常者群の尿DNA中の複数のメチル化領域の共メチル化の差のヒートマップである。
図3】膀胱がん患者群と正常者群との間のDNA共メチル化の組み合わせに基づく膀胱がんリスクスコアの有意差である。
図4】3個の組み合わせのプライマープローブペアによる配列番号8のメチル領域の共メチル化程度検出の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の理解を容易にするため、以下に本発明をより具体的に説明する。本発明は、多種多様な形態で実施することができるが、本明細書に記載の実施形態に限定されない。むしろ、これらの実施形態を提供する目的は、本発明の開示内容をより理解し易くするためである。
【0040】
下記の実施形態において具体的な条件を明記していない実験方法は、一般的に従来の条件、例えば非特許文献1の条件、またはメーカーが推奨する条件に従うものとする。実施形態で使用される各種常用化学試薬は、いずれも市販の製品である。
【0041】
特に他に定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が普通に理解するものと同じ意味を有する。本発明の明細書で使用される用語は、具体的実施形態を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明で使用される「および/または」という用語は、1つまたは複数の、関連して列挙されている項目のあらゆる組み合わせも含む。
【0042】
(定義)
本技術の理解を容易にするため、以下にいくつかの用語および文言を定義する。
【0043】
明細書全体および特許請求の範囲において、以下の用語は、その付近の文脈において別段の明確な指示がない限り、本明細書に明示的に関連付けられた意味を有する。本発明で使用される文言「一つの実施形態において」は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らないが、そうである場合もある。また、本発明で使用される文言「別の実施形態において」は、必ずしも異なる実施形態を指すとは限らないが、そうである場合もある。したがって、以下に述べるように、本発明の範囲または技術的思想から逸脱することなく、本発明の各実施形態を容易に組み合わせることができる。
【0044】
また、本明細書で使用される用語として、文脈上明らかな指定がない限り、「または」という用語は、包括的な「または」を意味するものとし、「および/または」という用語と同義である。文脈上明らかな指定がない限り、「に基づいた」という用語は排他的ではなく、記載のない他の要因に基づくことを認めるものである。また、本明細書全体において、「1個」、「一種」、および「前記/該(当該)」の意味は、複数の指示対象物を含む。「..内において」の意味には、「..内において」および「..上において」が含まれる。
【0045】
「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対形成規則に関連するヌクレオチド(例えば、1つのヌクレオチド)またはポリヌクレオチド(ヌクレオチドの配列)を指すために使われる。例えば、「5’‐A-G-T-3’」という配列は、「3’-T-C‐A-5’」という配列と相補的である。相補性は、核酸の塩基の一部のみが塩基対形成規則に従う、「部分的」な場合もある。或いは、核酸の間に「完全」または「全体」相補性が存在する場合もある。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率と強度に対して影響を与える。これは増幅反応において、また、核酸間の結合に依存する検出法において、特に重要である。
【0046】
「ポリメラーゼ連鎖反応」という用語は、標的配列の増幅に用いられ、以下のステップによって構成される。所望の標的配列を含むDNA混合物に2つのオリゴヌクレオチドプライマーの大過剰量を導入し、続いて、DNAポリメラーゼの存在下で正確なサーマルサイクリングシーケンスを行う。その2つのプライマーは、二本鎖標的配列のそれぞれの鎖に相補的である。増幅を行うために、その混合物を変性させた後、プライマーを標的分子内のそれらの相補的配列へアニールさせる。アニール後、ポリメラーゼでプライマーを増幅し、相補鎖の新しい対を形成する。変性、プライマーのアニール、およびポリメラーゼの伸長のステップを、高濃度の所望の標的配列の増幅されたセグメントを得るために、複数回、繰り返すことができる(すなわち、変性、アニーリングおよび伸長は1つの「サイクル」を構成し、多数の「サイクル」がありうる)。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、お互いに関するプライマーの相対的位置により決定され、それゆえ、この長さは、制御可能なパラメータである。増幅ステップの繰り返しによって、その方法は「ポリメラーゼ連鎖反応」(以下「PCR」)と呼ばれる。所望の増幅された標的配列のセグメントが混合物において優勢な配列(濃度に関して)になるため、それらは「PCR増幅」されていると言われ、「PCR産物」或いは「アンプリコン」である。
【0047】
本明細書で使用される場合、「核酸検出アッセイ」という用語は、標的核酸のヌクレオチド成分を決定する任意の方法を意味する。核酸検出アッセイには、DNAシーケンシング法、プローブハイブリダイゼーション法が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
「増幅可能な核酸」という用語は、任意の増幅方法で増幅できる核酸を意味する。「増幅可能な核酸」は、一般に「試料の鋳型」を含むと予想される。
【0049】
「試料の鋳型」という用語は、「標的」(以下において定義される)の有無を分析するための試料に由来する核酸を指す。対照的に、「バックグラウンド鋳型」は、試料に存在するまたは存在しない可能性がある試料鋳型以外の核酸に関連して用いられる。バックグラウンド鋳型はしばしば偶然であることが多い。これは繰り越し汚染の結果である可能性があり、または試料から精製して除去しようとした核酸混入物の存在による可能性がある。例えば生体由来の被検核酸以外の核酸が、試験試料においてバックグラウンドとして存在する可能性がある。
【0050】
「プライマー」という用語は、精製された制限性消化物中に天然で存在するまたは合成的に作製されたオリゴヌクレオチドであって、核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘発される条件下に置かれた場合(すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼのような誘発剤の存在下で、適した温度およびpHで)、合成の開始点としての機能を果たせるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、増幅において最高の効率のために、好ましくは、一本鎖であるが、または二本鎖であってもよい。二本鎖の場合には、プライマーは、伸長産物を調製するために使用される前にまずその鎖を分離するために処理される。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘発剤の存在下において伸長産物の合成を開始するのに十分長くなければならない。プライマーの適切な長さは、温度、プライマーの供給源および方法の用途を含む多くの因子に依存する。
【0051】
「プローブ」という用語は、精製された制限性消化物中に天然で存在するか、あるいは合成、組換え、またはPCR増幅により作製されたオリゴヌクレオチド(たとえば、ヌクレオチド配列)であって、別の標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドを指す。プローブは、一本鎖または二本鎖でありうる。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定および単離(例えば「キャプチャープローブ」)に有用である。いくつかの実施形態では、本発明で使用される任意のプローブは、任意の「レポーター分子」により標識されて、任意の検出システムにおいて検出可能であるようになると予測される。
【0052】
本明細書で使用される場合、「メチル化」とは、シトシンのC5位またはN4位のシトシンメチル化、アデニンのN6位、または他の型の核酸メチル化を意味する。インビトロのDNA増幅法は、増幅鋳型のメチル化のパターンを維持できないため、インビトロで増幅されたDNAはメチル化されていない。しかしながら、「メチル化されていないDNA」または「メチル化されたDNA」もまた、元の鋳型が各々メチル化された、またはメチル化されていない増幅DNAを意味する。
【0053】
したがって、本明細書で使用する場合、「メチル化ヌクレオチド」または「メチル化ヌクレオチド塩基」とは、一般的に認識されている典型的なヌクレオチド塩基には存在しないメチル部分がヌクレオチド塩基上に存在することを意味する。例えばシトシンはそのピリミジン環にメチル部分を含有しないが、5-メチルシトシンはそのピリミジン環の5位にメチル部分を含有する。したがって、シトシンはメチル化ヌクレオチドではなく、5-メチルシトシンはメチル化ヌクレオチドである。別の例では、チミンはそのピリミジン環の5位にメチル部分を含有するが、本明細書の目的上、チミンはDNAの典型的ヌクレオチド塩基であるため、DNAに存在する場合、チミンをメチル化ヌクレオチドとはみなさない。
【0054】
メチル化状態は、任意選択で、「メチル化値」によって表されまたは示されることができる(例えばメチル化の頻度、量、比率、百分率などを表す)。メチル化値は、例えばメチル化依存性制限酵素を用いて制限性消化後に存在する完全状態の核酸の量の定量、または重亜硫酸塩による反応後の増幅プロファイルの比較、または重亜硫酸塩の処理済核酸と未処理核酸の配列比較によって生成され得る。したがって、例えばメチル化値の値はメチル化状態を表すため、遺伝子座の複数コピーにおけるメチル化状態の定量的指標として使用することができる。共メチル化程度は、複数のメチル化部位のメチル化状態によって表されまたは示される、メチル化領域において、複数のメチル化部位のメチル化状態がいずれもメチル化されている場合、共メチル化と定義される。
【0055】
本明細書で使用される場合、「重亜硫酸塩試薬」という用語は、いくつかの実施形態において、重亜硫酸塩(bisulfite)、二亜硫酸塩(disulfite)、亜硫酸水素塩(hydrogen sulfite)またはこれらの組み合わせを含む試薬を指す。重亜硫酸塩試薬で処理されたDNAにおいて、その非メチル化シトシンヌクレオチドはウラシルに変換される。メチル化されたシトシンおよび他の塩基は変化しないままであるため、メチル化したCpGジヌクレオチド配列と、メチル化されていないCpGジヌクレオチド配列とを識別できる。
【0056】
「メチル化アッセイ」という用語は、核酸配列内の1つまたは複数のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態を決定するために用いられる任意のアッセイを意味する。
【0057】
一態様では、本発明は、個体における膀胱がんの発生を判断するために用いることができる1つのゲノム中のメチル化領域の組み合わせのセットを提供し、これらの領域は膀胱がんの組織DNAにおいて高い共メチル化(co-methylation)の程度を有する。正常組織でのメチル化の程度が低く、メチル化度は癌と非癌の間で有意差があり(図1)、これらのメチル化領域の共メチル化度が膀胱がんの発生をより敏感かつ特異的に反映できることを示している。本発明は、尿サンプルを使用する膀胱がんの発生診断における前記メチル化領域の組み合わせの応用をさらに提供する。組織サンプルの結果と同様に、上記メチル化領域の組み合わせは、膀胱がん患者群の尿DNAにおける共メチル化(co-methylation)の程度が高く、正常者群の尿DNAにおける共メチル化度が低く、共メチル化程度は2つの集団で有意差があり(図2)、選択されたメチル化領域の組み合わせは、尿DNAにおける膀胱がん関連シグナルが高く、膀胱がんの検出感度に優れていることを示している。同時に、尿を試験試料として用いることは非侵襲的な方法であり、患者の負担を大幅に軽減し、患者の検査への依存性を高めることができる。
【0058】
別の態様では、前記検出手法は、メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応と、核酸シーケンシングと、質量分析法と、メチル化特異的ヌクレアーゼと、質量に基づく分離または標的捕捉との使用を含む。
【0059】
本発明の上記メチル化領域の検出方法は、以下のステップ:
DNA抽出キットで被験生体試料のゲノムDNAおよび/または遊離DNAを抽出するステップと、
前記DNAをバイサルファイト変換するステップと、
バイサルファイト変換された前記DNAに対して複数のメチル化領域の共メチル化検出を行うステップと、
を含む、上記検出方法。
【0060】
前記共メチル化検出方法としては、メチル化特異的PCR(MSP)、DNAメチル化チップ、標的DNAメチル化シーケンシング、デジタル・定量PCRおよび蛍光定量PCRが挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態において、商業的に入手することができるキットを含む、当技術分野における任意の標準的な手段を介してDNA(例えばゲノムDNAで、抽出されたゲノムDNAまたは処理されたゲノムDNA)を単離する。
【0062】
いくつかの実施形態において、被検出生体試料は、生検検体である。場合によっては、該生体試料は、組織サンプルである。場合によって、該生体試料は、組織生検サンプルである。場合によっては、該生体試料は血漿、唾液、血清を含む血液サンプルである。場合によっては、該生体試料は尿中剥離細胞、尿沈渣、尿上清を含む尿サンプルである。
【0063】
MSP検出方法は、以下のステップ:
1)特異的プライマーペア配列番号23~44を利用してバイサルファイト変換されたDNAに対して選択された標的領域の共メチル化断片をそれぞれ増幅するステップと、
2)特異的プライマーペアを利用してバイサルファイト変換されたDNAに対して選択された標的領域の非メチル化断片をそれぞれ増幅するステップと、
3)前記1)および2)の増幅産物に対してアガロースゲル電気泳動分析を行うステップと、
4)電気泳動結果のバンドの有無および密度に基づいて、選択された標的領域の共メチル化程度を判断するステップと
を含む、上記方法。
【0064】
DNAメチル化チップ検出方法は、以下のステップ:
1)バイサルファイト変換されたDNAに対して全ゲノム増幅を行うステップと、
2)配列番号1~配列番号22または配列上でそれらと完全に相補的な核酸配列を標的領域として使用し、チップ上で共メチル化および非メチル化のキャプチャープローブを合成するステップと、
3)前記2)の増幅産物に対してチップ内で標的捕捉を行い、標識された単一塩基伸長反応を行うステップと、
4)蛍光染色反応により、捕捉された配列シグナルを増幅および読み取り、標的領域の共メチル化程度を計算するステップと
を含む、上記方法。
【0065】
標的DNAメチル化シーケンシング方法は、以下のステップ:
1)バイサルファイト変換されたDNAに対して全ゲノム増幅を行うステップと、
2)前記1)の増幅産物をアダプターでライゲーションするステップと、
3)前記2)のライブラリーの作製産物に対して標的捕捉を行うステップ(ここで用いられる捕捉プローブは配列番号1~22またはその逆相補的な対合配列を含む形質転換されたDNA配列である)と、
4)前記3)の捕捉産物をシーケンシングするステップと、
5)シーケンシング結果に基づいて、選択された標的領域の共メチル化程度を計算するステップと
を含む、上記方法。
【0066】
デジタルPCR法は、以下のステップ:
1)特異的プライマーおよびプローブ配列番号23~20を使用してバイサルファイト変換されたDNAに対して選択された標的領域の共メチル化程度の絶対定量をそれぞれ行うステップと、
2)特異的プライマーおよびプローブを使用して形質転換されたDNAに対して選択された標的領域の非メチル化の程度の絶対定量をそれぞれ行うステップと、
3)各領域の非メチル化の程度および共メチル化程度の絶対定量に基づいて該領域のメチル化率を計算するステップと
を含む、上記方法。
【0067】
(好ましい方法)蛍光定量PCR法の主なステップは、下記の方法で示される。
【0068】
別の態様では、標的メチル化領域の共メチル化程度を検出するための上記検出試薬キットの1つを提案する。試薬キットにおいて、プライマーペアとプローブの設計およびこれらの組み合わせ設計は、複数のメチル化領域の共メチル化程度を同時並行的に検出することに重要な役割を果たす。この試薬キットのプライマーペアの組み合わせは、プライマー配列設計上で単一のメチル化部位のミスマッチ検出による偽陽性の欠点を克服し、複数のメチル化バイオマーカープライマーおよびプローブの組み合わせ間に対する相互作用を考慮する。この試薬キットのマルチプレックス蛍光定量PCR反応システムは、反応成分を最適化し、標的断片の増幅効率を確保するという前提下で、最大23個までの標的断片を同時に増幅することができる。この試薬キットのマルチプレックス蛍光定量PCR反応液は、最大3個までの標的領域の共メチル化程度を検出できる。
【0069】
上記の応用は、22個のメチル化標的領域の選択された組み合わせのプライマーペアおよびプローブの3セットの組み合わせのうちの1つを含む下記の試薬キットの組み合わせを含み、その配列は表2-1、2、3に示すような、および内部標準遺伝子のメチル化領域のプライマーペアおよびプローブマルチプレックスPCR反応システムのマルチプレックス蛍光定量PCR反応液などである。
【0070】
別の態様では、上記検出試薬キットに従って、標的メチル化領域の共メチル化程度アッセイを行う検出方法を提供する。前記検出方法は、最大22個までのメチル化領域の共メチル化程度を並行して検出し、複数のサンプルを同時に処理できるため、スループットが高く、簡単で実施やすいという利点がある。
【0071】
上記応用は、以下のステップ:
1)前記プライマー、プローブおよび反応試薬を使用して、バイサルファイト変換された全ゲノムDNAに対して直接蛍光定量PCR反応を行うステップと、
2)得られたCT値を内部標準で補正した後、標的領域の共メチル化程度を測定し、ロジスティック回帰法で膀胱がんリスクスコアを算出するステップと、
を含む、上記応用。
【0072】
別の態様では、上記メチル化領域の共メチル化程度に基づいて膀胱がんの発生を判断する方法(膀胱がんの検出、診断、分類または予測、治療モニタリング、予後または他の評価を含む)を提供する。膀胱がん患者群および正常者群の複数のメチル化領域の共メチル化程度に基づいて、ロジスティック回帰式を当てはめ、当てはめたロジスティック回帰式を用いて膀胱がんのリスクスコアを算出し、このスコアは膀胱がん患者群と正常者群の間に有意差があり(図3)、膀胱がん患者群を正常者群から明確に検出できる。本発明の膀胱がんの発生を判断する方法は、統計的数式を完全に採用し、従来の尿FISH検出における人間による判定結果の主観性を避け、判読をより正確、安定かつ信頼できるものにする。
【実施例0073】
膀胱がんの検出、診断、分類または予測、治療モニタリング、予後またはその他の膀胱がん評価に用いられるメチル化領域の共メチル化は、表1に記載の核酸配列内の[CG]により示される複数のメチル化部位の共メチル化および表1内の[CG]により示される核酸と配列上で完全に相補的な核酸の複数のメチル化部位の共メチル化を含む。
【0074】
【表2】
【実施例0075】
膀胱がんの検出、診断、分類または予測、治療モニタリング、予後またはその他の膀胱がん評価に用いられる複数のメチル化領域の共メチル化試験キットであって、表2に示すように、複数のメチル化領域共メチル化の特異的プライマーペアおよびプローブを含む。
【0076】
【表3-1】
【表3-2】
【0077】
【表4-1】
【表4-2】
【0078】
【表5-1】
【表5-2】
【0079】
実際の応用において、特異的なメチル化領域の組み合わせに基づいて、対応するプライマーおよびプローブを選択する。
内部標準プライマーおよびプローブ:
【0080】
【表6】
【0081】
試薬キットには、PCR増幅プライマーおよびプローブセット(プローブ蛍光標識は、FAM、VICおよびNED等の蛍光基で標識できる)の3セットの組み合わせの1つが含まれる必要があり、3セットの組み合わせの22個の領域に対する検出パフォーマンスが類似し、配列番号8のメチル化領域の共メチル化程度検出を例として、図4に示すように、3個の組み合わせのプライマーペアを使用して、実施例3の検出方法に従って、該領域の一連のメチル化標準品(Qiagen社製)の共メチル化程度を検出した。組み合わせ1、2、3のプライマーペアおよびプローブによる該領域の共メチル化検出の直線関係は、それぞれ0.993、0.998、0.987で、直線関係に有意差がなく、当てはめられた直線の方程式の傾きがそれぞれ-3.73、-3.66、-3.83で、増幅効率は類似しており、有意差はないと判断できる。
【0082】
本発明の前記プライマーは、Invitrogen社から購入し、マルチプレックスPCR反応試薬がThermo Fisher社から購入し、マルチプレックス蛍光定量PCR試薬がQiagen社またはBio-Rad社または諾唯賛社から購入した。
【実施例0083】
マルチプレックス蛍光定量PCRによる2~3個のメチル化領域の共メチル化検出
市販の完全メチル化(陽性対照)および非メチル化(陰性対照)標準品(QIAGEN社から購入)を使用して22個のメチル化領域(配列番号1~22)に対して2~3個のメチル化領域ごとの共メチル化検出を行った。
【0084】
具体的なフローは、次の通りである。
【0085】
1、DNA抽出
抽出キットは、QIAGEN社から購入し、キットの説明書に従って実施した。
【0086】
2、DNAバイサルファイト変換
DNAバイサルファイト変換キットは、Zymo社から購入し、キットの説明書に従って実施した。
【0087】
3、マルチプレックスPCR増幅
22個のメチル化領域(配列番号1~8)のプライマーペアを用い、1つの反応ウェル(プライマー配列は表2を参照)においてマルチプレックスPCRを行い、標的領域を含む標的配列を増幅し、産物サイズは70~130bpの範囲であった。
【0088】
1)マルチプレックス反応の各メチル化領域のフォワードおよびリバースプライマーと、計1つの反応ウェルを含む、単一のプライマー濃度が5μM(各プライマー)のPCRプライマー混合物を調製した。
【0089】
2)PCR混合液の調製:表3に従ってPCR混合液を調製し、その中にDNAを添加しない。
【0090】
【表7】
【0091】
3)DNAサンプルの添加:35μLのPCR混合液をPCR反応ウェルに添加し、その中に形質転換したDNAを添加し、DNA形質転換前に25ngのサンプルをロードし、PCR反応の総体積が50μLであり、ボルテックスおよび遠心分離した。
【0092】
4)PCR反応手順:98℃で30秒、98℃で15秒、60℃で15秒、72℃で15秒、20サイクル;72℃で5分、4℃で保存して用意しておく。
【0093】
4、マルチプレックス蛍光定量PCRアッセイ
1)22個のメチル化領域のプライマーとプローブ(配列は表2を参照)、および内部標準プライマーとプローブ内の各メチル化領域は、各プライマー濃度10μM、各プローブ濃度5μMの終濃度に従って1セットの混合液として調製し、22個のメチル化領域の22セットの混合液を2~3個のメチル化領域ごとに等しい割合で混合できる。リストされている3個のメチル化領域の組み合わせを表4に示す。
【0094】
【表8】
【0095】
2)マルチプレックスqPCR反応液の調製:表4の組み合わせスキームに従って選択した2~3個のメチル化領域のプライマープローブ混合液を等しい割合で混合してPCR混合物を調製し、その中にDNAを添加しない。
【0096】
【表9】
【0097】
3)DNAサンプルの添加:8μLのPCR混合液をPCR反応ウェルに添加し、その中に2μLの2倍希釈したマルチプレックスPCR産物を添加した。PCR反応の総体積は10μLであり、ボルテックスおよび遠心分離した。
【0098】
4)蛍光定量PCR反応手順:95℃で5分、95℃で20秒、62℃で60秒、62℃で蛍光シグナルを収集し、40サイクル。
【0099】
5、データ分析
市販の完全メチル化(陽性対照)および非メチル化(陰性対照)標準品を使用して22個のメチル化領域の共メチル化程度に対して表4に示す混合方法(組み合わせA~L)に従ってマルチプレックス蛍光定量PCRアッセイを行い、22個のメチル化領域の単一のメチル化蛍光定量PCRアッセイ(単一の定量)のCT値と比較し、ここで全ての組み合わせおよび単一の定量においていずれも陰性対照が検出されず、陽性対照のCT値を表5に示す。
【0100】
【表10】
【0101】
表5の結果は、これらの組み合わせスキームの組み合わせで任意の2~3個のメチル化領域のプライマープローブ混合物を混合してマルチプレックス蛍光定量PCRを行って得られたCT値が、単一の領域定量CT値と近い値であり、有意差がないことを示し、これによりマルチプレックス蛍光定量の組み合わせスキーム内の22個のメチル化領域の増幅効率は互いに干渉せず、定量パフォーマンスが単一領域定量と同じで、2~3個のメチル化領域の同時定量検出を実現できると判断した。
【実施例0102】
膀胱がん細胞株、膀胱がん組織および膀胱がん周囲組織の22個のメチル化領域の共メチル化検出
実施例3に記載の検出方法を使用して。膀胱がん細胞株5637、T24(上海細胞研究所から購入)と、UM-UC-3(sigmaから購入)の細胞DNAと、16例の膀胱がん組織DNAおよびそれらと対合するがん周囲の正常組織のDNAとに対して22個のメチル化領域の共メチル化を検出して、膀胱がん診断におけるこれらのメチル化領域の応用を検証した。ここで、検出によって得られた各メチル化領域のCT値は、内部標準CT値で補正して標的領域の相対サイクル数d-CT=CT(標的領域)-CT(内部標準)を得た。標的領域が検出されない場合、標的領域の相対サイクル数d-CT=35を与える。
【0103】
18例の膀胱癌患者の病理組織学的情報は、表6に示される。
【0104】
【表11】
【0105】
検出により得られた膀胱がん細胞株、膀胱がん組織、がん周囲正常組織および陽性対照の22個のメチル化領域における共メチル化程度の相対サイクル数d-CT値の中央値を表7に示し、22個のメチル化領域d-CTCT値による全ての組織サンプルのメチル化ヒートマップを図1に示す。
【0106】
【表12】
【0107】
図1および表7を併せて参照すると、膀胱がん細胞株、膀胱がん組織の22個のメチル化領域における相対サイクル数d-CT値の中央値は、陽性対照に近く、がん周囲の正常組織のd-CT値よりも小さく、統計的有意差(p<0.005)があり、d-CT値が小さいほど、共メチル化程度が高くなることを示し、したがって、選択された22個のメチル化領域の共メチル化程度は膀胱がん細胞株、膀胱がん組織で有意に高いと判断でき、膀胱がんの発生と正の相関関係にあり、膀胱がん発生のバイオマーカーとして使用できる。
【0108】
また、膀胱がん組織サンプルのグレード分類とステージ分類に基づいて、異なるグレーディングおよび異なるステージ分類における22個のメチル化領域のd-CT値を分析し、一部のメチル化領域が異なるグレードまたは異なるステージ分類を明らかに区別できることがわかり(p<0.05)、これらのメチル化領域およびその組み合わせはさらに膀胱がんの異なるグレードまたは異なるステージ分類を判断するバイオマーカーとして使用できることを示している。前記メチル化領域を表8に示し、示される値はこれらのメチル化領域の前記群別のd-CT値の中央値およびそのd-CT値の四分位範囲である。
【0109】
【表13】
【実施例0110】
尿からDNAサンプルにおける22個のメチル化領域の共メチル化検出
膀胱がん患者群、良性泌尿器疾患群および健常者群の尿からDNAサンプルに対して22個のメチル化領域の共メチル化を検出して、尿サンプル内の膀胱がん発生およびステージ分類の判断におけるこれらのメチル化領域の応用を確認する。ここで、膀胱がん患者群の尿サンプルは計70例あり、良性泌尿器疾患群(尿路結石、尿路感染症、良性前立腺肥大症、線状膀胱炎などを含む)の尿サンプルが計49例あり、健常者群(尿一般検査/泌尿器系超音波検査の結果が正常で、他の腫瘍の疑いがない)の尿サンプルが5例あり、全てのサンプルの病理・臨床情報を表9に示す。
【0111】
【表14】
【0112】
実施例3に記載の検出方法で上記124例の尿DNAに対して22個のメチル化領域の共メチル化を検出した。ここで、検出によって得られた各メチル化領域のCT値は、内部標準CT値で補正して標的領域の相対サイクル数d-CT=CT(標的領域)-CT(内部標準)を得た。標的領域が検出されない場合、標的領域の相対サイクル数d-CT=35を与える。
【0113】
検出により得られた124例の尿からDNAサンプルの22個のメチル化領域の共メチル化の相対サイクル数d-CTの中央値および四分位範囲を表10に示し、単一のメチル化領域の異なる群の差の比較p-valueも表10に示し、ここで2群間に統計的有意差がある基準はp<0.05であった。124例のサンプルの各々における22個のメチル化領域のメチル化分布ヒートマップを図2に示す。
【0114】
【表15】
【0115】
図2および表10の結果を参照すると、膀胱がん患者群の尿DNAの22個のメチル化領域における相対サイクル数d-CT値の中央値は、良性泌尿器疾患群よりも小さいこと(p<0.05)を示しているため、選択された22個のメチル化領域の共メチル化程度は膀胱がん患者群の尿DNAでより高く、膀胱がんの発生と正の相関関係にあり、尿DNAベースの膀胱がん発生を判断するためのバイオマーカーとして使用できる。同時に、健常者群と比較して膀胱がん患者群は、複数のメチル化領域にも有意差があるため、これらのメチル化領域も尿DNAベースの膀胱がん発生の一般スクリーニングのバイオマーカーとして使用できる。実施例4内の結果と組み合わせると、膀胱がん発生の判断における前記22個のメチル化領域の応用は、同時に組織サンプルおよび尿サンプルに使用されることができ、その結果が近い。
【0116】
また、膀胱がん患者の尿サンプルの病理情報に基づいて、腫瘍の異なるグレードおよび異なるステージ分類における22個のメチル化領域のd-CT値を分析し、一部のメチル化領域が異なるグレードまたは異なるステージ分類を明らかに区別できることがわかり(p<0.05)、これらのメチル化領域およびその組み合わせはさらに尿DNAベースの膀胱がんの異なるグレードまたは異なるステージ分類を判断するバイオマーカーとして使用できることを示している。前記メチル化領域を表11に示し、示される値はこれらのメチル化領域の前記群別のd-CT値の中央値およびそのd-CT値の四分位範囲である。
【0117】
【表16】
【0118】
同時に、この実施例に記載の検出方法は、実施例3の組み合わせスキームに従って、2~22個のメチル化領域の並行検出に使用されることができ、メチル化領域の組み合わせとの併用も柔軟かつ実施しやすい。
【実施例0119】
22個のメチル化領域における任意の1~3個のメチル化領域の共メチル化の並行検出
標的メチル化領域の共メチル化の並行検出は、22個のメチル化領域における任意の1~3個に対して行う場合、実施例3内の組み合わせスキームを使用すると、次の検出方法を用いることができる。具体的な検出フローは、次の通りである。
【0120】
1.DNA抽出
抽出キットは、QIAGEN社から購入し、キットの説明書に従って実施した。
【0121】
2.DNAバイサルファイト変換
DNAバイサルファイト変換キットは、Zymo社から購入し、キットの説明書に従って実施した。
【0122】
3.蛍光定量PCRアッセイ
1~3個のメチル化領域のプライマーとプローブおよび内部標準のプライマーとプローブを選択し、1つの反応ウェルでアッセイする(プライマープローブ配列は、表2を参照し、メチル化領域の組み合わせスキームが実施例3を参照)
【0123】
1)qPCR反応液の調製:表12に従ってPCR混合液を調製し、その中にDNAを添加しない。
【0124】
【表17】
【0125】
2)DNAサンプルの添加:15μLのPCR混合液をPCR反応ウェルに添加し、その中に形質転換したDNAを添加し、DNA形質転換前に25ngのサンプルをロードし、形質転換された産物がPCR反応ウェルとして使用された。PCR反応の総体積が20μLであり、ボルテックスおよび遠心分離した。
【0126】
3)蛍光定量PCR反応手順:95℃で5分、95℃で15秒、62℃で40秒、62℃で蛍光シグナルを収集し、60サイクル。
【0127】
4)データ処理と分析
標的領域の検出により得られた各メチル化領域のCT値は、内部標準CT値で補正して標的領域の相対サイクル数d-CT=CT(標的領域)-CT(内部標準)を得た。標的領域が検出されない場合、標的領域の相対サイクル数d-CT=35を与える。
【0128】
陽性対照、メチル化領域のプライマープローブの組み合わせスキームAとL(実施例3)の検出を例として、実施例3の検出方法と対照して、得られたメチル化領域の相対サイクル数d-CT値と実施例3との比較を表13に示す。
【0129】
【表18】
【0130】
表13の結果は、この実施例に記載の検出方法で検出して得られたd-CT値が22個のメチル化領域の前記検出方法(実施例3)で得られたd-CT値と非常に一致していることを示している。これらの領域の2つの検出方法のd-CT値について相関分析を行い、その相関係数はR=0.995(Pearson R)であるため、この2つの検出方法による同じメチル化領域の共メチル化程度の検出に差がないと判定できる。
【0131】
標的メチル化領域の共メチル化の並行検出は、22個のメチル化領域における任意1~3個に対して行う場合、この実施例の検出方法は、マルチプレックスPCRの前増幅目標断片のステップを減らすことができ、4個未満のメチル化領域の並行検出がより便利で迅速になる。
【実施例0132】
実施例5で得られた124例の尿からDNAサンプルの22個のメチル化領域(配列番号1~22)の共メチル化の相対サイクル数d-CT値に対して、メチル化領域の組み合わせの数学的モデリングを分析し、バイオマーカーの組み合わせとして膀胱がん発生および膀胱がんのステージ分類 における22個のメチル化領域の応用を探究し、マーカーとして単一のメチル化領域を使用してパフォーマンスを判断する優位性を比較した。
【0133】
まず、124例の尿サンプルの病理・臨床情報を比較し、膀胱がん患者群および非(良性泌尿器疾患群および健常者群を含む)における22個のメチル化領域の共メチル化の相対サイクル数d-CT値を病理学と比較して単一のメチル化領域の膀胱がん発生を識別する診断モデルROC曲線を作成し、ROC曲線によりAUC値および該領域を区分する判定閾値を計算する。閾値を病理学と比較して該メチル化領域の識別感度、特異度、AUCおよびYouden指数を計算する。同時に、22個のメチル化領域の共メチル化の相対サイクル数d-CT値に基づいてロジスティック回帰のフィッティング用の2~22個のメチル化バイオマーカーを選択し、フィッティング方程式は各サンプルの膀胱がんリスクスコアの計算に使用されて、膀胱がんの発生を判断できる。異なる2~22個のメチル化領域の組み合わせにより、膀胱がん発生を判断するための複数のロジスティック回帰モデルおよび方程式を生成できる。これらの方程式で計算された膀胱がんリスクスコアを病理学と比較して、該メチル化領域の組み合わせの識別感度、特異度およびYouden指数を得た。単一のメチル化領域と比較した、膀胱がんの発生に対する一部の組み合わせのモデルの判定パフォーマンスのパラメータを表14に示す。また、図3には、膀胱がんおよび非膀胱がん群における22個のメチル化領域のうち8つ(配列番号1~8)の組み合わせモデルを使用したリスクスコアの分布を示している。
【0134】
図3に示すように、8つのメチル化領域の組み合わせの識別モデルを用いて得られた膀胱がんリスクスコアは、膀胱がん患者群と非膀胱がん群を明確に区別でき、これらのメチル化領域の組み合わせを膀胱がんの発生を判断するためのバイオマーカーの組み合わせとして使用できることを再び示している。
【0135】
表14の診断パフォーマンスの比較によると、診断モデルとして単一のメチル化領域を使用した場合の診断パフォーマンスは、複数のメチル化領域の組み合わせのモデルよりも低く、2~22個のメチル化領域の組み合わせは膀胱がんの発生の識別においてより高い感度を有し、感度および特異度を反映する全体的なパフォーマンスパラメータであるYouden指数は、単一のメチル化領域の識別よりも明らかに高く、優れた識別利点を有することが分かる。
【0136】
【表19】
【0137】
さらに、異なるグレードおよび異なるステージ分類に対する2~22個のメチル化領域の組み合わせのモデルの識別感度と単一のメチル化領域の比較を表15に示す。
【0138】
【表20】
【0139】
【表21】
【0140】
また、2~22個のメチル化領域を選択して高異型度および低異型度の膀胱がん患者群または浸潤性膀胱がんおよび非浸潤性膀胱がん患者群に対して数学的モデリングを行い、random forestアルゴリズムを用いて判断できるメチル化領域の組み合わせを選択してから各メチル化領域の閾値判断設定を行って、識別モデルを得た。これらの識別モデルにより、膀胱がん患者群に対してグレーディング(高異型度と低異型度)またはステージ分類(浸潤性と非浸潤性)の区分を行い、病理学的所見と比較して感度、特異度およびYouden指数を得、異なるグレードまたはステージ分類について単一のメチル化領域との比較を表16に示す。
【0141】
表16のグレーディングとステージ分類の診断パフォーマンス比較から分かるように、グレーディングまたはステージ分類の診断モデルとして単一のメチル化領域を使用すると、複数のメチル化領域の組み合わせのモデルよりも診断パフォーマンスが低い。2~22個のメチル化領域の組み合わせは、膀胱がんの異なるグレードまたは異なるステージ分類をさらに区別する際に、より高い感度と特異度を有し、感度および特異度を反映する全体的なパフォーマンスパラメータであるYouden指数が単一のメチル化領域の識別よりも明らかに高く、より優れた識別利点を有する。また、この22個のメチル化領域における複数のメチル化領域の組み合わせは、膀胱がんの更なるグレーディングおよびステージ分類に使用されることができ、膀胱がんの診療スキームおよび投薬指導に非常に有益であることを再び示している。
【0142】
上記の実施例の各技術的特徴は、任意に組み合わせることができる。説明を簡潔にするため、上記の実施例内の各技術的特徴の全ての可能な組み合わせを描写していないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がない場合、本明細書に記載されている範囲に含まれると見なすべきである。
【0143】
これまで説明してきた実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されない。当業者であれば、本発明の技術的思想を脱しない範囲内で各種の変形や改良を加えることができ、かかる各種の変形や改良は本発明の保護範囲に含まれるべきである。したがって、本発明の特許の保護範囲は特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
図1
図2
図3
図4