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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025016834
(43)【公開日】2025-02-05
(54)【発明の名称】潜像物
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/328 20140101AFI20250129BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20250129BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
B42D25/328 100
G02B5/32
G02B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119553
(22)【出願日】2023-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】森永 匡
【テーマコード(参考)】
2C005
2H249
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HB01
2C005HB02
2C005HB09
2C005HB10
2C005HB13
2C005JB09
2H249AA12
2H249AA25
2H249AA50
2H249AA51
2H249AA60
2H249AA61
2H249CA01
2H249CA15
2H249CA22
(57)【要約】
【課題】動画効果を高めることが可能な潜像物を提供する。
【解決手段】本発明に係る潜像物は、基画像を圧縮または分割圧縮して形成された画線を、一定のピッチで複数配置してなる潜像画像と、潜像画像が存在しない領域からなる背景画像と、を備える。また、潜像画像が、円弧状の画線で構成された複数の第1格子線からなる第1回折格子の模様を有し、さらに、背景画像が、第1格子線とは傾きが異なる円弧状の画線で構成された複数の第2格子線の模様を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基画像を圧縮または分割圧縮して形成された画線を、一定のピッチで複数配置してなる潜像画像と、
前記潜像画像が存在しない領域からなる背景画像と、を備え、
前記潜像画像が、円弧状の複数の第1格子線からなる第1回折格子の模様を有し、
前記背景画像が、前記第1格子線の回折方向と異なる方向に、円弧状の複数の第2格子線からなる第2回折格子の模様を有することを特徴とする潜像物。
【請求項2】
前記第1格子線における接線と、前記第2格子線における接線において、傾きが異なることを特徴とする請求項1に記載の潜像物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像画像が、動的に変化しつつ、濃淡をネガ型からポジ型又はポジ型からネガ型へと反転させる潜像物に関する。
【背景技術】
【0002】
基画像の動的変化に伴う潜像を実現する方式には、基画像を圧縮する圧縮画像方式がある。圧縮画像方式には、さらに、モアレ方式と、IP(Integral Photography)画像方式がある。ここで、図12を参照して一般的なモアレ方式の潜像の形成方法を説明するとともに、図13を参照して一般的なIP画像方式の潜像の形成方法を説明する。
【0003】
図12は、一般的なモアレ方式の潜像の形成方法の一例を示す図である。図12に示すモアレ方式では、まず、複数の基画像111を水平方向に圧縮する。次に、各基画像111を圧縮した複数の圧縮画像112を、所定のピッチP1で一列に並べる。これらの圧縮画像112を、ピッチP1と異なるピッチP2の縞模様(スリット)が形成されたサンプリング器具(不図示)でサンプリングすると、潜像113が出現する。
【0004】
図13は、一般的なIP画像方式の潜像の形成方法の一例を示す図である。図13に示すIP画像方式では、まず、一定の幅を有するフレームを使って基画像121を複数の分割画像に分割する。続いて、各分割画像を水平方向に圧縮して複数の分割圧縮画像122を形成する。このとき、複数の分割圧縮画像122は、所定のピッチP1で一列に並べられる。これらの分割圧縮画像122を、ピッチP1と同じピッチの縞模様(スリット)が形成されたサンプリング器具(不図示)でサンプリングすると、潜像123が出現する。
【0005】
上記のようなモアレ方式の潜像またはIP画像方式の潜像には、潜像の出現方法をネガ型またはポジ型にすることが可能な技術が、特許文献1に提案されている。ここで、ネガ型およびポジ型について説明する。
【0006】
図14は、ネガ型の潜像物の構造例を示す図である。図14に示す潜像物では、円形の基画像を分割圧縮したIP画像140が形成される。また、IP画像140の背景画像141には、基材上に回折格子が形成される。
【0007】
図15は、図14に示す潜像の出現方法を説明する模式図である。ネガ型では、背景画像141に形成された回折格子が、入射光を回折する。そのため、基画像142は、背景画像141よりも暗いネガ型の潜像として出現する。また、基画像142は、入射光の角度に応じて一方向に動くように見える。
【0008】
図16は、ポジ型の潜像物の構造例を示す図である。図16に示す潜像物では、回折格子が、円形の基画像を分割圧縮したIP画像150のみに形成され、背景画像151には形成されない。
【0009】
図17は、図16に示す潜像の出現方法を説明する模式図である。ポジ型では、IP画像150に形成された回折格子が、入射光を回折する。そのため、基画像152は、背景画像151よりも明るいポジ型の潜像として出現する。また、基画像152は、入射光の角度に応じて一方向に動くように見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-081705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の技術では、出現する潜像は、ネガ型またはポジ型のいずれか一方に限定される。また、ネガ型は、モアレ画像またはIP画像の背景画像のみに回折格子を形成し、ポジ型は、モアレ画像またはIP画像のみに回折格子を形成するため、回折格子を形成できる面積が制限される。この面積の制限が、結果的に動画効果の制約を招いている。
【0012】
そこで、本発明は、ネガ型またはポジ型のいずれか一方に限定されずに、動画効果を高めることが可能な潜像物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る潜像物は、基画像を圧縮または分割圧縮して形成された潜像要素を、一定のピッチで複数配置してなる潜像画像と、潜像画像が存在しない領域からなる背景画像と、を備え、潜像画像が、円弧状の画線で構成された複数の第1格子線からなる第1回折格子の模様を有し、背景画像が、第1格子線の回折方向と異なる方向に、円弧状の画線で構成された複数の第2格子線からなる第2回折格子の模様を有する。
【0014】
また、第1格子線における接線と、第2格子線における接線において、傾きが異なっていてもよい。
【0015】
例えば、入射光が第2回折格子で回折する角度範囲のときに、背景画像よりも暗いネガ型の潜像が一方向に動き、入射光が第1回折格子で回折する角度範囲のときに、背景画像よりも明るいポジ型の潜像が、ネガ型の潜像と同じ方向に動いてもよい。
【0016】
また、入射光が第2回折格子で回折する角度範囲のときに、背景画像よりも暗いネガ型の潜像が一方向に動き、入射光が第1回折格子で回折する角度範囲のときに、背景画像よりも明るいポジ型の潜像が、ネガ型の潜像と逆方向に動いてもよい。
【0017】
本発明に係る潜像物の形成方法は、基画像を圧縮または分割圧縮して形成された潜像要素を、規則性を有して複数配置してなる潜像画像を形成し、潜像画像の画線に、第1回折格子を形成し、潜像画像が存在しない背景画像に、第1回折格子と傾きが異なる第2回折格子を形成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ネガ型またはポジ型のいずれか一方に限定されずに、潜像の動画効果を高めることが可能な潜像物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る潜像物の形成方法を示すフローチャートである。
図2】基画像の一例を示す図である。
図3】分割圧縮画像の一例を示す図である。
図4】(a)は、分割圧縮画像の画線に第1実施形態に係る第1回折格子を形成した潜像画像を示す図であり、(b)は、(a)に示す第1回折格子の拡大図である。
図5】(a)は、第1実施形態に係る第2回折格子が形成された背景画像を示す図であり、(b)は、(a)に示す第2回折格子の拡大図である。
図6】第1実施形態に係る潜像物の模式図である。
図7】第1実施形態に係る潜像の出現方法を説明する模式図である。
図8】(a)は、分割圧縮画像の画線に第2実施形態に係る第1回折格子を形成した潜像画像を示す図である。(b)は、(a)に示す第1回折格子の拡大図である。
図9】(a)は、第2実施形態に係る第2回折格子が形成された背景画像を示す図であり、(b)は、(a)に示す第2回折格子の拡大図である。
図10】第2実施形態に係る潜像物の模式図である。
図11】第2実施形態に係る潜像の出現方法を説明する模式図である。
図12】一般的なモアレ方式の潜像の形成方法の一例を示す図である。
図13】一般的なIP画像方式の潜像の形成方法の一例を示す図である。
図14】ネガ型の潜像物の構造例を示す図である。
図15図14に示す潜像の出現方法を説明する模式図である。
図16】ポジ型の潜像物の構造例を示す図である。
図17図16に示す潜像の出現方法を説明する模式図である。
図18】格子線が、配列角度の異なる複数の直線によって、疑似的な円弧状の格子線の構造となる一例を示す図である。
図19】円弧状の格子線の傾きの一例を示す図である。
図20】円弧状の格子線の傾きの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施形態が含まれる。
【0021】
(第1実施形態)
【0022】
図1は、第1実施形態に係る潜像物の形成方法を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに基づく潜像物の形成方法は、画像処理ソフトをインストールしたコンピュータによって実現することができる。
【0023】
まず、ユーザが上記コンピュータを操作して、基画像に関するパラメータを設定する(ステップS11)。このパラメータには、例えば、基画像11の図形、その図形の大きさ、および潜像画像の画線のピッチなどが含まれる。
【0024】
図2は、基画像11の一例を示す図である。ステップS11では、円形の基画像11がユーザの操作によって選定される。なお、本発明では、基画像の図形は、円形のような線対称図形に限定されない。また、各図に示すX方向は、第1方向に相当し、潜像の動く方向(動画方向)に平行な水平方向を示す。一方、Y方向は、第2方向に相当し、XY平面上でX方向に直交する方向を示す。
【0025】
次に、基画像11を分割圧縮して分割圧縮画像12を形成する(ステップS12)。ステップS12では、基画像11をIP画像化する。
【0026】
図3は、分割圧縮画像12の一例を示す図である。ステップS12では、まず、基画像11よりも狭い幅と基画像11よりも大きな高さを有する矩形で構成されたフレームで基画像11の左端から右端まで順番に基画像11の画線を分割する。これにより、フレーム内には、基画像11の画線を分割した分割画線が描かれる。
【0027】
続いて、各フレームを水平方向(X方向)に特定の縮率によって所定の幅Wになるように、各フレーム内の分割画線を圧縮する。最後に、画線が圧縮された複数のフレームをピッチPで水平方向に順次に配置する。その結果、基画像11は、図3に示す分割圧縮画像12に画像処理される。
【0028】
次に、分割圧縮画像12の画線に第1回折格子14を形成する(ステップS13)。ここで、図4(a)および図4(b)を参照して、ステップS13の内容について説明する。
【0029】
図4(a)は、分割圧縮画像12の画線に第1実施形態に係る第1回折格子14を形成した潜像画像13を示す図である。図4(b)は、図4(a)に示す第1回折格子14の拡大図である。
【0030】
図4(b)に示す第1回折格子14には、円弧上の曲線で形成された複数の第1格子線14aがX方向およびY方向に規則的に配列されている。ステップS13において、この第1回折格子14を分割圧縮画像12に形成すると、図4(a)に示す潜像画像13が形成される。潜像画像13の画線には、第1格子線14aの模様が形成される。
【0031】
次に、分割圧縮画像12の背景画像15に、第2回折格子16を形成する(ステップS14)。ここで、図5(a)および図5(b)を参照して、ステップS14の内容について説明する。
【0032】
図5(a)は、第1実施形態に係る第2回折格子16が形成された背景画像15を示す図である。図5(b)は、図5(a)に示す第2回折格子16の拡大図である。
【0033】
図5(b)に示す第2回折格子16には、円弧上の曲線で形成された複数の第2格子線16aがX方向およびY方向に規則的に配列されている。ただし、第2回折格子16のパターンは、上述した第1回折格子14のパターンとは異っている。具体的には、第1回折格子14および第2回折格子16のパターンにおいて、図19に例を示すとおり、円弧状の第1格子線(例えば、図19(a)L1の傾き(θ1))及び円弧状の第2格子線(図19(b)L2の傾き(θ2))のように、円弧の中心(T)に接する接線の傾き(θ1及びθ2)は同じだが、向きが異なっている(第1実施形態ではx軸に対して線対称となっている。)。
【0034】
ステップS13で形成した潜像画像13と、ステップS14で形成した背景画像15とを合成すると、第1実施形態に係る潜像物17が完成する。なお、本実施形態では、分割圧縮画像12の画線に第1回折格子14を形成した後、背景画像15に第2回折格子16を形成しているが、回折格子の形成は、この順番に限定されない。例えば、ステップS14の処理が、ステップS13の処理よりも先に行われてもよい。この場合、第2回折格子16が分割圧縮画像12の背景画像15に形成され、その後、第1回折格子14が分割圧縮画像12の画線に形成される。なお、ステップS13およびステップS14の処理は、同時に並行して行われてもよい。
【0035】
図6は、第1実施形態に係る潜像物17の模式図である。潜像物17において潜像画像13と背景画像15は隣接して形成されている。この潜像物17において、潜像画像13の画線は、第1回折格子14の模様を有する。また、潜像画像13の背景画像15は、第1回折格子14とは格子線パターンが異なる第2回折格子16の模様を有する。この潜像物17に光が入射すると、基画像11が、潜像として出現する。
【0036】
図7は、第1実施形態に係る潜像の出現方法を説明する模式図である。本実施形態では、潜像物17に入射する光の角度範囲に応じて、潜像の濃淡が反転する。
【0037】
入射光が、背景画像15に形成された第2回折格子16によって回折される第1角度範囲である場合、背景画像15よりも暗いネガ型の潜像11aが出現する。また、第1角度範囲では、ネガ型の潜像11aは、一方向(-X方向)に動くように見える。
【0038】
一方、入射光が、潜像画像13の画線が有する第1回折格子14によって回折される第2角度範囲である場合、背景画像15よりも明るいポジ型の潜像11bが出現する。また、第2角度範囲では、ポジ型の潜像11bは、ネガ型の潜像11aと同じ方向(-X方向)に動くように見える。
【0039】
以上説明した本実施形態では、分割圧縮画像12の画線に第1回折格子14が形成され、分割圧縮画像12の背景画像15に第2回折格子16が形成される。第1回折格子14の角度範囲と第2回折格子16の角度範囲との間には、共通した角度が無い。
【0040】
上記のようにパターンが異なる2種類の回折格子を分割圧縮画像12の画線およびその背景画像15にそれぞれ形成することによって、入射光の角度が、第1角度範囲内のときには、ネガ型の潜像11aが動きながら出現する。また、入射光の角度が、第1角度範囲から第2角度範囲に切り替わるときに、出現する潜像が、ネガ型の潜像11aからポジ型の潜像11bに切り替わる。そして、第2角度範囲内のときに、ポジ型の潜像11bが、ネガ型の潜像11aと同じ方向に動きながら出現する。
【0041】
したがって、本実施形態によれば、潜像が動きながら濃淡反転するため、動画効果を高めることが可能となる。
【0042】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様に、図1に示すフローチャートに沿って潜像物が形成される。ただし、ステップS13で分割圧縮画像12の画線に形成される第1回折格子のパターンが第1実施形態と異なる。また、ステップS14で分割圧縮画像12の背景画像15に形成される第2回折格子のパターンも第1実施形態と異なる。そこで、第2実施形態に係る第1回折格子および第2回折格子について説明する。
【0043】
図8(a)は、分割圧縮画像12の画線に第2実施形態に係る第1回折格子24を形成した潜像画像23を示す図である。図8(b)は、図8(a)に示す第1回折格子24の拡大図である。
【0044】
図8(b)に示す第1回折格子24には、円弧上の曲線で形成された複数の第1格子線24aがX方向およびY方向に規則的に配列されている。この第1回折格子24を分割圧縮画像12に形成すると、図8(a)に示す潜像画像23が形成される。潜像画像23の画線には、第1格子線24aの模様が形成される。
【0045】
本実施形態に係る第1回折格子24と、第1実施形態に係る第1回折格子14との間では、第1接線の傾きが異なる。第1実施形態に係る第1回折格子14では、第1格子線14aに接する第1接線は、右下がりに傾いている。一方、第2実施形態に係る第1回折格子24では、第1格子線24aに接する第1接線は、右上がりに傾いている。
【0046】
図9(a)は、第2実施形態に係る第2回折格子26が形成された背景画像15を示す図である。図9(b)は、図9(a)に示す第2回折格子26の拡大図である。
【0047】
図9(b)に示す第2回折格子26には、円弧上の曲線で形成された複数の第2格子線26aがX方向およびY方向に規則的に配列されている。本実施形態に係る第2回折格子26と、第1実施形態に係る第2回折格子16との間では、第2接線の傾きが異なっている。第1実施形態に係る第2回折格子16では、第2格子線16aに接する第2接線は、右上がりに傾いている。一方、第2実施形態に係る第2回折格子26では、第2格子線26aに接する第2接線は、右下がりに傾いている。
【0048】
また、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第2回折格子26のパターンは、上述した第1回折格子24のパターンと異なる。具体的には、第1回折格子24および第2回折格子26のパターンにおいて、図20に例を示すとおり、円弧状の第1格子線(例えば、図20(c)L3の傾き(θ3))及び円弧状の第2格子線(図20(d)L4の傾き(θ4))のように、円弧の中心(T)に接する接線の傾き(θ3及びθ4)は同じだが、向きが異なっている(第2実施形態ではy軸に対して線対称となっている。)。
【0049】
上述した潜像画像23および背景画像15を合成すると、第2実施形態に係る潜像物27が完成する。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に回折格子の形成順番は、特に制限されない。
【0050】
図10は、第2実施形態に係る潜像物27の模式図である。この潜像物27において、潜像画像23の画線は、第1回折格子24の模様を有する。また、潜像画像23の背景画像15は、第1回折格子24とは格子線パターンが異なる第2回折格子26の模様を有する。この潜像物27に、光が入射すると、基画像11が、潜像として出現する。
【0051】
図11は、第2実施形態に係る潜像の出現方法を説明する模式図である。本実施形態では、潜像物27に入射する光の角度範囲に応じて、潜像の濃淡が反転する。
【0052】
入射光が、背景画像15に形成された第2回折格子26によって回折される第1角度範囲である場合、背景画像15よりも暗いネガ型の潜像11aが出現する。また、第1角度範囲では、ネガ型の潜像11aは、一方向(+X方向)に動くように見える。
【0053】
一方、入射光が、潜像画像23の画線が有する第1回折格子24によって回折される第2角度範囲である場合、背景画像15よりも明るいポジ型の潜像11bが出現する。また、第2角度範囲では、ポジ型の潜像11bは、ネガ型の潜像11aと逆方向(-X方向)に動くように見える。
【0054】
以上説明した本実施形態では、分割圧縮画像12の画線に第1回折格子24が形成され、分割圧縮画像12の背景画像15に第2回折格子26が形成される。第1回折格子24の第1接線と、第2回折格子26の第2接線とは、傾きが異なる。
【0055】
上記のようにパターンが異なる2種類の回折格子を分割圧縮画像12の画線およびその背景画像15にそれぞれ形成することによって、入射光の角度が、第1角度範囲内のときには、ネガ型の潜像11aが動きながら出現する。また、入射光の角度が、第1角度範囲から第2角度範囲に切り替わるときに、出現する潜像が、ネガ型の潜像11aからポジ型の潜像11bに切り替わる。そして、第2角度範囲内のときに、ポジ型の潜像11bが、ネガ型の潜像11aと逆方向に動きながら出現する。
【0056】
したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様に潜像が動きながら濃淡反転するため、動画効果を高めることが可能となる。
【0057】
さらに、本実施形態では、入射光の角度が、第1角度範囲から第2角度範囲に切り替わる前後で、潜像11aの出現位置は、潜像11bの出現位置とほぼ同じである。そして、潜像11bは、潜像11aと逆方向に動く。そのため、潜像11aおよび潜像11bの動きが連続しつつ、濃淡反転に伴って、動きの方向が逆転する。よって、本実施形態によれば、第1実施形態に比べて、動画効果をより強調することが可能となる。
【0058】
なお、第1実施形態で説明した潜像物17および第2実施形態で説明した潜像物27は、ホログラムやエンボス加工物に適用することができる。また、このホログラムは、例えば、銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等のセキュリティ印刷物に形成することができる。
【0059】
また、第1実施形態および第2実施形態では、ステップS12で基画像をIP画像化しているが、モアレ画像化してもよい。この場合、ステップS12では、基画像を図12に示すように圧縮画像に変換する。また、ステップS13では、この圧縮画像の画線に第1実施形態に係る第1回折格子14または第2実施形態に係る第1回折格子24を形成する。さらに、ステップS14では、この圧縮画像の背景画像に第1実施形態に係る第2回折格子16または第2実施形態に係る第2回折格子26を形成する。その結果、図7または図11と同様の動画効果を得ることが可能となる。
【0060】
以上、本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態について、図面を参照して説明したが、第1格子線及び第2格子線とも、配列角度を異ならせた直線や曲線によって形成されて、入射光の角度変化によって光の反射する領域が連続的に変化する機能を備えていればよいため、前述のような曲線による円弧状の格子線の構造であってもよいし、図18の160に示すように、わずかに配列角度の異なる複数の直線を配置することで、仮想線が円弧状となるような、疑似的な格子線の構造として再現されていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
11:基画像
11a:ネガ型の潜像
11b:ポジ型の潜像
12:分割圧縮画像
13、23:潜像画像
14、24:第1回折格子
14a、24a:第1格子線
15:背景画像
16、26:第2回折格子
16a、26a:第2格子線
17、27:潜像物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20