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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025173064
(43)【公開日】2025-11-27
(54)【発明の名称】電磁波吸収発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20251119BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20251119BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20251119BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20251119BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
C08L23/00
C08K3/04
H05K9/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024078406
(22)【出願日】2024-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 達彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勇史
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
5E321
【Fターム(参考)】
4F074AA20
4F074AC02
4F074AD11
4F074AG01
4F074AG11
4F074AG20
4F074BB02
4F074BC15
4F074CC06X
4F074CC06Y
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA24
4J002BB031
4J002BB121
4J002BB151
4J002BB171
4J002DA036
4J002DE100
4J002EH040
4J002EK030
4J002EQ017
4J002ET010
4J002FD016
4J002FD140
4J002FD170
4J002FD327
4J002GQ00
5E321BB32
5E321BB60
5E321GG11
(57)【要約】
【課題】電磁波吸収性に優れる電磁波吸収発泡体を提供できる。
【解決手段】電磁波吸収発泡体は、ポリオレフィン系樹脂とカーボンブラックとを含む。カーボンブラックのBET比表面積は、500m/g以下である。ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、カーボンブラックの含有量は15質量部以上50質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂とカーボンブラックとを含む電磁波吸収発泡体であって、
前記カーボンブラックのBET比表面積が、500m/g以下であり、
前記ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、前記カーボンブラックの含有量は15質量部以上50質量部以下である電磁波吸収発泡体。
【請求項2】
JIS C2139-3-2:2018に準じて印加電圧1Vで測定した表面抵抗率が3.00×10Ω以下である請求項1に記載の電磁波吸収発泡体。
【請求項3】
ASTM D4935-18に準じて測定した0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域におけるピークの電磁波吸収量が5dB以上である請求項1又は請求項2に記載の電磁波吸収発泡体。
【請求項4】
ASTM D4935-18に準じて測定した1GHzの周波数帯域における複素比誘電率εの虚数部ε"が1.50F/m以上である請求項1又は請求項2に記載の電磁波吸収発泡体。
【請求項5】
ポリオレフィン系樹脂とカーボンブラックを含む電磁波吸収発泡体であって、
ASTM D4935-18に準じて測定した0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域におけるピークの電磁波吸収量が20dB以上である電磁波吸収発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁波吸収発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電波吸収体が開示されている。この電波吸収体は、特定の樹脂成分と、カーボンブラックと、を含んでいる。
【0003】
特許文献2には、導電性架橋ポリエチレン発泡体が開示されている。この発泡体は、低密度ポリエチレン樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂と、カーボンブラックと、を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-311586号公報
【特許文献2】特開2003-183436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁波吸収性に優れる電磁波吸収発泡体が求められている。
本開示は、電磁波吸収性に優れる電磁波吸収発泡体を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕ポリオレフィン系樹脂とカーボンブラックとを含む電磁波吸収発泡体であって、
前記カーボンブラックのBET比表面積が、500m/g以下であり、
前記ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、前記カーボンブラックの含有量は15質量部以上50質量部以下である電磁波吸収発泡体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電磁波吸収性に優れる電磁波吸収発泡体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕JIS C2139-3-2:2018に準じて印加電圧1Vで測定した表面抵抗率が3.00×10Ω以下である〔1〕に記載の電磁波吸収発泡体。
〔3〕ASTM D4935-18に準じて測定した0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域におけるピークの電磁波吸収量が5dB以上である〔1〕又は〔2〕に記載の電磁波吸収発泡体。
〔4〕ASTM D4935-18に準じて測定した1GHzの周波数帯域における複素比誘電率εの虚数部ε"が1.50F/m以上である〔1〕又は〔2〕に記載の電磁波吸収発泡体。
〔5〕ポリオレフィン系樹脂とカーボンブラックを含む電磁波吸収発泡体であって、
ASTM D4935-18に準じて測定した0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域におけるピークの電磁波吸収量が20dB以上である電磁波吸収発泡体。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0010】
1.第1実施形態
第1実施形態の電磁波吸収発泡体は、ポリオレフィン系樹脂とカーボンブラックとを含む。
【0011】
1-1.電磁波吸収発泡体の原料
(1)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン成分単位を主成分とする樹脂である。オレフィン成分単位を主成分とする樹脂とは、オレフィン成分単位が50質量%以上含まれる樹脂である。樹脂中のオレフィン成分単位の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、樹脂成分がポリオレフィン系樹脂のみから構成されていることが特に好ましい。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン、及びオレフィン系モノマーと該オレフィン系モノマーと共重合し得るモノマーとの共重合体からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0013】
ポリエチレン系樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン単独重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-ブテンブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、及びエチレン-メチルメタクリレート共重合体からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂は、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、及びアタクチックポリプロピレン等のプロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン三元共重合体、プロピレン-アクリル酸共重合体、及びプロピレン-無水マレイン酸共重合体からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン系樹脂を用いる好ましい。ポリエチレン系樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることが好ましい。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂の含有量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。
【0017】
なお、電磁波吸収発泡体の原料には、ポリオレフィン系樹脂の他に、本技術の目的や作用効果を損なわない範囲で他の樹脂、エラストマー等のポリオレフィン系樹脂以外の樹脂、ゴム成分等が含まれていてもよい。ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂は、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる群より選択される1種以上が好ましい。ポリオレフィン系樹脂以外のエラストマーは、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選択される1種以上が好ましい。ゴム成分は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、及びシリコーンゴム(SI)からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0018】
(2)カーボンブラック
カーボンブラックは、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックからなる群より選択される1種以上が好ましい。特に、カーボンブラックは、ファーネスブラックであることが好ましい。
【0019】
カーボンブラックのBET比表面積は、発泡成形性を悪化させずに添加量を十分に確保する観点から、500m/g以下であり、300m/g以下が好ましく、100m/g以下がより好ましく、70m/g以下がさらに好ましい。カーボンブラックのBET比表面積は、電磁波吸収発泡体の導電率を十分に確保する観点から、50m/g以上が好ましく、55m/g以上がより好ましく、60m/g以上がさらに好ましく、65m/g以上が特に好ましい。これらの観点から、カーボンブラックのBET比表面積は、500m/g以下であり、50m/g以上500m/g以下が好ましく、55m/g以上300m/g以下がより好ましく、60m/g以上100m/g以下がさらに好ましく、65m/g以上70m/g以下が特に好ましい。ここで、BET比表面積は、BET法に準拠して、窒素の吸着等温線から測定することができる。
【0020】
カーボンブラックの揮発分は、0.01%以上1.0%以下が好ましく、0.03%以上0.5%以下がより好ましく、0.05%以上0.1%以下がさらに好ましい。カーボンブラックの揮発分とは、オゾン酸化カーボンブラックを高温に加熱した際の揮発(減量)分であり、カーボンブラックに化学吸着している酸素含有基の揮発量を意味する。高温で加熱している間に化学吸着している酸素含有基は分解されて、二酸化炭素、一酸化炭素、水分等がガスとして揮発する。
【0021】
カーボンブラックの水に接触させたときのpHは、6以上13以下が好ましく、7以上12以下がより好ましく、8以上11以下がさらに好ましい。
【0022】
カーボンブラックの灰分は、0.001%以上0.025%以下が好ましく、0.003%以上0.020%以下がより好ましく、0.005%以上0.015%以下がさらに好ましい。
【0023】
カーボンブラックの量は、十分な導電率を確保する観点から、ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、15質量部以上であり、20質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましい。カーボンブラックの量は、発泡成形性を維持する観点から、ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、50質量部以下であり、40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましい。これらの観点から、カーボンブラックの量は、ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、15質量部以上50質量部以下であり、20質量部以上40質量部以下が好ましく、25質量部以上35質量部以下がより好ましい。
【0024】
(3)発泡剤
電磁波吸収発泡体の原料は、発泡剤を含むことが好ましい。発泡剤は、加熱により分解してガスを発生する熱分解型のものが好適に用いられ、特に制限されるものではない。発泡剤は、アゾジカルボンアミド(ADCA)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼン-1,3-スルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシド-4,4’-ジスルフォニルヒドラジド、4,4’-オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、パラトルエンスルフォニルヒドラジド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジニトロソ-N,N’-ジメチルフタルアミド、テレフタルアジド、p-t-ブチルベンズアジド、重炭酸ナトリウム、及び重炭酸アンモニウムからなる群より選択される1種以上が好ましい。この中で、発泡剤は、特にアゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。
【0025】
発泡剤の量は、ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、5.00質量部以上15.00質量部以下が好ましく、6.00質量部以上10.00質量部以下がより好ましく、7.0質量部以上8.00質量部以下がさらに好ましい。
【0026】
(4)発泡助剤
電磁波吸収発泡体の原料は、発泡助剤を含むことが好ましい。発泡助剤は、特に限定されない。発泡助剤は、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、低級又は高級脂肪酸あるいはそれらの金属塩、尿素及びその誘導体からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0027】
発泡助剤としての尿素の量は、ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、0.03質量部以上0.20質量部以下が好ましく、0.05質量部以上0.15質量部以下がより好ましく、0.08質量部以上0.10質量部以下がさらに好ましい。
【0028】
発泡助剤としての酸化亜鉛の量は、ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、0.05質量部以上0.25質量部以下が好ましく、0.08質量部以上0.20質量部以下がより好ましく、0.10質量部以上0.15質量部以下がさらに好ましい。
【0029】
(5)架橋剤
電磁波吸収発泡体の原料は、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤は、特に限定されない。
架橋剤は、化学架橋による架橋で好適に用いられる。架橋剤は、有機過酸化物が好ましい。架橋剤は、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス-ターシャリーブチルパーオキシヘキサン、及び1,3-ビス-ターシャリーパーオキシ-イソプロピルベンゼンからなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0030】
架橋剤の量は、ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、0.1質量部以上2.0質量部以下が好ましく、0.3質量部以上1.5質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上1.0質量部以下がさらに好ましい。
【0031】
(6)滑剤
電磁波吸収発泡体の原料は、滑剤を含むことが好ましい。滑剤は、特に限定されない。滑剤は、ソルビタンステアレート、ソルビタンラウレート等のソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
【0032】
滑剤の量は、ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、0.10質量部以上1.5質量部以下が好ましく、0.20質量部以上1.0質量部以下がより好ましく、0.30質量部以上0.50質量部以下がさらに好ましい。
【0033】
(7)その他の原料
電磁波吸収発泡体の原料は、必要に応じて、表面張力調整剤、充填剤(炭酸カルシウム等)、顔料、可塑剤、機能付与剤(例えば、難燃剤)等を含んでいてもよい。
【0034】
1-2.電磁波吸収発泡体の構成
(1)密度(見かけ密度)
電磁波吸収発泡体の密度は、30kg/m以上が好ましく、50kg/m以上がより好ましく、70kg/m以上がさらに好ましい。電磁波吸収発泡体の密度は、150kg/m以下が好ましく、100kg/m以下がより好ましく、90kg/m以下がさらに好ましい。したがって、電磁波吸収発泡体の密度は、30kg/m以上150kg/m以下が好ましく、50kg/m以上100kg/m以下がより好ましく、70kg/m以上90kg/m以下がさらに好ましい。電磁波吸収発泡体の密度は、JIS K 6767:2015に基づいて測定できる。
【0035】
(2)表面抵抗率
JIS C2139-3-2:2018に準じて印加電圧1Vで測定した電磁波吸収発泡体の表面抵抗率は、3.00×10Ω以下が好ましく、1.00×10Ω以下がより好ましく、1.00×10Ω以下がさらに好ましい。上記電磁波吸収発泡体の表面抵抗率は、1.00×10Ω以上が好ましく、3.00×10Ω以上がより好ましく、5.00×10Ω以上がさらに好ましい。したがって、上記電磁波吸収発泡体の表面抵抗率は、1.00×10Ω以上3.00×10Ω以下が好ましく、3.00×10Ω以上1.00×10Ω以下がより好ましく、5.00×10Ω以上1.00×10Ω以下がさらに好ましい。上記電磁波吸収発泡体の表面抵抗率は、厚さ10mmの発泡体を試験機にセットし、発泡体表面の表面抵抗値を測定することで算出できる。
【0036】
(3)電磁波吸収量
電磁波吸収発泡体における、ASTM D4935-18に準じて測定した0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域におけるピークの電磁波吸収量は、5dB以上が好ましく、10dB以上がより好ましく、20dB以上がさらに好ましい。上記電磁波吸収発泡体の電磁波吸収量の下限は、特に限定されない。上記電磁波吸収発泡体の電磁波吸収量は、厚さ10mmの発泡体を円筒状に打ち抜いて作製したサンプルを同軸管にセットして、0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域で測定する。
【0037】
(4)比誘電率
電磁波吸収発泡体における、ASTM D4935-18に準じて測定した1GHzの周波数帯域における複素比誘電率εの虚数部ε"は、1.50F/m以上が好ましく、2.00F/m以上がより好ましく、3.00F/m以上がさらに好ましい。上記電磁波吸収発泡体の複素比誘電率εの虚数部ε"は、7.00F/m以下が好ましく、6.00F/m以下がより好ましく、5.00F/m以下がさらに好ましい。したがって、上記電磁波吸収発泡体の複素比誘電率εの虚数部ε"は、1.50F/m以上7.00F/m以下が好ましく、2.00F/m以上6.00F/m以下がより好ましく、3.00F/m以上5.00F/m以下がさらに好ましい。上記電磁波吸収発泡体の複素比誘電率εの虚数部ε"は、厚さ10mmの発泡体を円筒状に打ち抜いて作製したサンプルを同軸管にセットして、0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域でSパラメータを測定する。そして、得られたSパラメータからReflection/Transmission Epsilon Precision Model式より複素比誘電率ε"を算出する。
【0038】
(5)25%圧縮応力
電磁波吸収発泡体の25%圧縮応力は、0.100MPa以上が好ましく、0.110MPa以上がより好ましく、0.120MPa以上がさらに好ましい。電磁波吸収発泡体の25%圧縮応力は、0.500MPa以下が好ましく、0.300MPa以下がより好ましく、0.200MPa以下がさらに好ましい。したがって、電磁波吸収発泡体の25%圧縮応力は、0.100MPa以上0.500MPa以下が好ましく、0.110MPa以上0.300MPa以下がより好ましく、0.120MPa以上0.200MPa以下がさらに好ましい。電磁波吸収発泡体の25%圧縮応力は、JIS K6767:2015に基づいて測定できる。具体的には、50mm×50mm×厚さ20mmのサイズの発泡体のサンプルを圧縮速度10mm/minで圧縮し、25%圧縮時の応力を求める。
【0039】
1-3.電磁波吸収発泡体の製造方法
電磁波吸収発泡体の製造方法は、原料の混合工程と、1次加熱工程と、2次加熱工程と、を含む。原料の混合工程では、ポリオレフィン系樹脂、カーボンブラック、及びその他の原料を混合し、樹脂混合物を作製する。例えば、ポリオレフィン系樹脂、カーボンブラック、及びその他の原料を、120℃で15分間ニーダーを用いて加熱混錬し、樹脂混合物を作製する。1次加熱工程では、金型内で樹脂混合物を137℃で60分間、10MPaで1次熱プレスを行い、1次プレス体を作製する。2次加熱工程では、金型内で1次プレス体を163℃で90分間2次熱プレスを行い、電磁波吸収発泡体を作製する。
【0040】
1-4.第1実施形態の効果
第1実施形態の電磁波吸収発泡体は、成形性が良好で電磁波吸収性に優れる。
第1実施形態の電磁波吸収発泡体は、耐久性があり、構造体として使用できる。
【0041】
2.第2実施形態
第2実施形態の電磁波吸収発泡体は、ポリオレフィン系樹脂とカーボンブラックを含む。第2実施形態の電磁波吸収発泡体は、ASTM D4935-18に準じて測定した0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域におけるピークの電磁波吸収量が20dB以上である。
【0042】
2-1.電磁波吸収発泡体の原料
電磁波吸収発泡体の原料において、「ポリオレフィン系樹脂」「発泡剤」「発泡助剤」「架橋剤」「滑剤」「その他の原料」については、第1実施形態の「電磁波吸収発泡体の原料」の欄における説明をそのまま適用し、その記載は省略する。すなわち、第1実施形態の「電磁波吸収発泡体の原料」の項目で説明した「ポリオレフィン系樹脂」「発泡剤」「発泡助剤」「架橋剤」「滑剤」「その他の原料」をそのまま適用する。
【0043】
・カーボンブラック
カーボンブラックについては、第1実施形態の「電磁波吸収発泡体の原料」の項目で説明した「カーボンブラック」におけるBET比表面積及び量の記載以外の記載をそのまま適用する。
【0044】
カーボンブラックのBET比表面積は、発泡成形性を悪化させずに添加量を十分に確保する観点から、500m/g以下が好ましく、300m/g以下がより好ましく、100m/g以下がさらに好ましく、70m/g以下が特に好ましい。カーボンブラックのBET比表面積は、電磁波吸収発泡体の導電率を十分に確保する観点から、50m/g以上が好ましく、55m/g以上がより好ましく、60m/g以上がさらに好ましく、65m/g以上が特に好ましい。これらの観点から、カーボンブラックのBET比表面積は、50m/g以上500m/g以下が好ましく、55m/g以上300m/g以下がより好ましく、60m/g以上100m/g以下がさらに好ましく、65m/g以上70m/g以下が特に好ましい。ここで、BET比表面積は、BET法に準拠して、窒素の吸着等温線から測定することができる。
【0045】
カーボンブラックの量は、十分な導電率を確保する観点から、ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましい。カーボンブラックの量は、発泡成形性を維持する観点から、ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、35質量部以下がさらに好ましい。これらの観点から、カーボンブラックの量は、ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、15質量部以上50質量部以下が好ましく、20質量部以上40質量部以下がより好ましく、25質量部以上35質量部以下がさらに好ましい。
【0046】
2-2.電磁波吸収発泡体の構成
電磁波吸収発泡体の構成において、「密度(見かけ密度)」「表面抵抗率」「比誘電率」「25%圧縮応力」については、第1実施形態の「電磁波吸収発泡体の構成」の欄における説明をそのまま適用し、その記載は省略する。すなわち、第1実施形態の「電磁波吸収発泡体の構成」の項目で説明した「密度(見かけ密度)」「表面抵抗率」「比誘電率」「25%圧縮応力」をそのまま適用する。
【0047】
・電磁波吸収量
電磁波吸収発泡体における、ASTM D4935-18に準じて測定した0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域におけるピークの電磁波吸収量は、20dB以上であり、25dB以上が好ましく、30dB以上がより好ましい。上記電磁波吸収発泡体の電磁波吸収量の上限は、特に限定されない。上記電磁波吸収発泡体の電磁波吸収量は、厚さ10mmの発泡体を円筒状に打ち抜いて作製したサンプルを同軸管にセットして、0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域で測定する。
【0048】
2-3.電磁波吸収発泡体の製造方法
電磁波吸収発泡体の製造方法において、第1実施形態の「電磁波吸収発泡体の製造方法」の欄における説明をそのまま適用し、その記載は省略する。
【0049】
2-4.第2実施形態の効果
第2実施形態の電磁波吸収発泡体は、成形性が良好で電磁波吸収性に優れる。
第2実施形態の電磁波吸収発泡体は、耐久性があり、構造体として使用できる。
【実施例0050】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
1.電磁波吸収発泡体の作製
表1,2に示す配合割合で、実施例及び比較例の電磁波吸収発泡体を作製した。表1,2における電磁波吸収発泡体の原料の詳細を表3,4に示す。表1,2において、配合割合は、ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたときの配合割合(質量部)を表す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】


【0054】
【表4】

【0055】
実施例1-4及び比較例1-5の電磁波吸収発泡体は、上記実施形態と同様の方法によって作成した。具体的には、原料の混合工程と、1次加熱工程と、2次加熱工程と、を行った。原料の混合工程では、ポリオレフィン系樹脂、カーボンブラック、及びその他の原料(発泡剤、発泡助剤、架橋剤、滑剤)を混合し、樹脂混合物を作製した。ポリオレフィン系樹脂、カーボンブラック、及びその他の原料を、120℃で15分間ニーダーを用いて加熱混錬し、樹脂混合物を作製した。1次加熱工程では、金型内で樹脂混合物を137℃で60分間、10MPaで1次熱プレスを行い、1次プレス体を作製した。2次加熱工程では、金型内で1次プレス体を163℃で90分間2次熱プレスを行い、電磁波吸収発泡体を作製した。
【0056】
2.評価方法
(1)発泡成形性
電磁波吸収発泡体の発泡成形性の評価は、外観を目視により確認するとともに、断ち機で発泡体をカットし、セルを目視で観察し、以下を基準とした。
A :しわやボイドが生じておらず、外観が良好である。
B :しわやボイドが生じており、外観が不良である。
【0057】
(2)発泡体密度(見かけ密度)
電磁波吸収発泡体の密度は、JIS K 6767:2015に準じて測定した。
【0058】
(3)表面抵抗率
電磁波吸収発泡体の表面抵抗率は、JIS C2139-3-2:2018に準じて印加電圧1Vで測定した。具体的には、表面抵抗率は、厚さ10mmの発泡体を試験機にセットし、発泡体表面の表面抵抗値を測定することで算出した。
【0059】
(4)電磁波吸収量
電磁波吸収発泡体における、ASTM D4935-18に準じて測定した0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域におけるピークの電磁波吸収量を測定した。電磁波吸収量は、厚さ10mmの発泡体を円筒状に打ち抜いて作製したサンプル(発泡体)を同軸管にセットして、0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域で測定した。
【0060】
(5)比誘電率
電磁波吸収発泡体における、ASTM D4935-18に準じて測定した1GHzの周波数帯域における複素比誘電率εの虚数部ε"を測定した。電磁波吸収発泡体の複素比誘電率εの虚数部ε"は、厚さ10mmの発泡体を円筒状に打ち抜いて作製したサンプルを同軸管にセットして、0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域でSパラメータを測定した。そして、得られたSパラメータからReflection/Transmission Epsilon Precision Model式より複素比誘電率ε"を算出した。
【0061】
(6)25%圧縮応力
電磁波吸収発泡体の25%圧縮応力は、JIS K6767:2015に基づいて測定した。具体的には、50mm×50mm×厚さ20mmのサイズの発泡体のサンプルを圧縮速度10mm/minで圧縮し、25%圧縮時の応力を求めた。
【0062】
3.結果
結果を表1,2に併記する。
実施例1-4では、発泡成形性の評価が「A」であり、発泡性(外観)が良好である電磁波吸収発泡体が得られることが分かった。
【0063】
実施例1-4では、電磁波吸収発泡体の表面抵抗率が2.76×10Ω-5.09×10Ωであった。比較例1-5では、電磁波吸収発泡体の表面抵抗率が4.36×10Ω-6.01×10Ωであった。実施例1-5は、以下の要件(A)(B)を満たすのに対して、比較例1-5は、以下の要件(ア)(イ)を満たしていない。
要件(ア):カーボンブラックのBET比表面積が、500m/g以下である
要件(イ):ポリオレフィン系樹脂を100質量部としたとき、カーボンブラックの含有量は15質量部以上50質量部以下である
実施例1-5は、上記要件(ア)(イ)を満たすことで、電磁波吸収発泡体の表面抵抗率を低減できることが分かった。
【0064】
実施例1-4では、電磁波吸収発泡体における0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域におけるピークの電磁波吸収量が9.19dB以上31.60dB以下であった。比較例1-5では、電磁波吸収発泡体における0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域におけるピークの電磁波吸収量が0.66dB以上7.40dB以下であった。実施例1-4は、上記要件(ア)(イ)を満たすのに対して、比較例1-5は、上記要件(A)(B)を満たしていない。
実施例1-4は、上記要件(ア)(イ)を満たすことで、電磁波吸収発泡体における0.5GHz以上17GHz以下の周波数帯域におけるピークの電磁波吸収量の値を大きくできることが分かった。
【0065】
実施例1-4では、電磁波吸収発泡体における1GHzの周波数帯域における複素比誘電率εの虚数部ε"が2.85F/m-6.58F/mであった。比較例1-5では、電磁波吸収発泡体における1GHzの周波数帯域における複素比誘電率εの虚数部ε"が0.38F/m-1.31F/mであった。実施例1-4は、上記要件(ア)(イ)を満たすのに対して、比較例1-5は、上記要件(ア)(イ)を満たしていない。
実施例1-4は、上記要件(ア)(イ)を満たすことで、物質内部での電磁波の減衰の程度を示す複素比誘電率εの虚数部ε"を高められることが分かった。
4.実施例の効果
以上の実施例によれば、成形性が良好で電磁波吸収性に優れる電磁波吸収発泡体を製造できた。
【0066】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。