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特開2025-17390補綴装置、補綴装置形成装置及び補綴装置の形成方法
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  • 特開-補綴装置、補綴装置形成装置及び補綴装置の形成方法 図1
  • 特開-補綴装置、補綴装置形成装置及び補綴装置の形成方法 図2
  • 特開-補綴装置、補綴装置形成装置及び補綴装置の形成方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017390
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】補綴装置、補綴装置形成装置及び補綴装置の形成方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/70 20170101AFI20250130BHJP
   A61C 19/06 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61C5/70
A61C19/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120364
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】523281261
【氏名又は名称】辻 将
(74)【代理人】
【識別番号】100130281
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 道幸
(74)【代理人】
【識別番号】100214813
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 幸江
(72)【発明者】
【氏名】辻 将
【テーマコード(参考)】
4C052
4C159
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052NN02
4C052NN03
4C052NN04
4C052NN15
4C159GG15
4C159RR02
4C159SS01
4C159SS03
4C159SS04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本願補綴装置を用いることで、治療前や治療途中に顎位の変化や歯根破折等が起こることを抑制でき、治療計画の変更を減らすことができる補綴装置、補綴装置形成装置及び補綴装置の形成方法を提供する。
【解決手段】本願補綴装置1は、治療対象の歯20に対する隔壁状で、歯の咬合面12に根管への治療を可能にする開放部14を有する補綴本体10からなり、補綴本体が、治療前又は治療中の歯の歯冠又は歯根に合着させるものであることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科治療における補綴装置において、
治療対象の歯に対する隔壁状で、該歯の咬合面に根管への治療を可能にする開放部を有する補綴本体からなり、
該補綴本体が、治療前又は治療中の該歯の歯冠又は歯根に合着させるものであることを特徴とする補綴装置。
【請求項2】
前記補綴本体が円環状で、
該補綴本体の前記開放部が、前記咬合面に設けられた前記根管への治療を可能にするアクセス穴であることを特徴とする請求項1記載の補綴装置。
【請求項3】
歯科治療における補綴装置の形状を形成させる補綴装置形成装置において、
治療前又は治療中の歯及びその周辺を撮像するスキャン手段と、
該スキャン手段により撮像されたデータに基づき該補綴装置の形状を形成させる補綴形成手段を備え、
該補綴形成手段によって形状を形成される該補綴装置が、治療前又は治療中の該歯の歯冠又は歯根に合着させるものであって、該歯に対する隔壁状で、該歯の咬合面に根管への治療を可能にする開放部を有するものであることを特徴とする補綴装置形成装置。
【請求項4】
前記補綴形成手段が形成する前記補綴装置が、円環状で、
該補綴装置の前記開放部が、前記咬合面に設けられた前記根管への治療を可能にするアクセス穴であることを特徴とする請求項3記載の補綴装置形成装置。
【請求項5】
歯科治療における補綴装置の形成方法において、
治療前又は治療中の歯及びその周辺の印象採得を行い、
該印象採得により得られた型の情報に基づき、治療前又は治療中の該歯の歯冠又は歯根に合着させるものであって、該歯に対する隔壁状で、該歯の咬合面に根管への治療を可能にする開放部を有する該補綴装置の形状を形成させることを特徴とする補綴装置の形成方法。
【請求項6】
歯科治療における補綴装置の形成方法において、
治療前又は治療中の歯及びその周辺を撮像し、
撮像されたデータに基づき、治療前又は治療中の該歯の歯冠又は歯根に合着させるものであって、該歯に対する隔壁状で、該歯の咬合面に根管への治療を可能にする開放部を有する該補綴装置の形状を形成させることを特徴とする補綴装置の形成方法。
【請求項7】
形成される前記補綴装置が、円環状で、
該補綴装置の前記開放部が、前記咬合面に設けられた前記根管への治療を可能にするアクセス穴であることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の補綴装置の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療における補綴装置、補綴装置形成装置及び補綴装置の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、虫歯等の歯科の治療においては、補綴装置として人工の歯冠(いわゆるクラウン)が用いられている。従来からの歯科の治療方法としては、非特許文献1に下記の手順が示されている。
【0003】
非特許文献1に示される治療方法は、虫歯が神経まで達してしまって歯冠がぼろぼろになった場合、虫歯の部分を削り取り、虫歯が神経まで達した場合には神経をとって薬で治療する。そして、神経の治療をした歯の虫歯になった歯冠の部分を削り取り、金属やプラスチックの土台を付け形を整えてから、次に印象材という歯の型を取る材料を使い、型どりをする。この型をもとに削った歯と同じ形の模型を作り、その上でセラミックス(陶器)やプラスチック、金属を用いて冠を作り、この冠を金属の土台にセメント(接着剤)で付ける。
【0004】
虫歯が神経まで達していない場合は、虫歯の部分を削り、その上に直接冠をかぶせることになるが、歯根がある程度しっかりしている場合であっても、歯の根管の治療が必要な場合が多い。
【0005】
また、特許文献1には、人工歯は、補綴物と、補綴物に一方向に挿入される挿入部、および補綴物から突出する突出部を含むアバットメントとを含み、挿入部は、一方向に外周面の直径が大きくなるように傾設され、突出部は、一方向に外周面の直径が小さくなるように傾設され、補綴物が被削物構造体である場合には、突出部の一側端部は人工歯加工装置に結合される旨が記載されている。そして、補綴物は、一方向に補綴物の内部を貫通する貫通孔を含む旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-22069号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】補綴歯科ってなに?,[online],公益社団法人日本補綴歯科学会,掲載日不明,<URL:https://hotetsu.com/p2_01.html>,[2023年7月10日検索],インターネット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の補綴歯科に係る治療の手順では、虫歯治療や根管治療等のすべての治療を終わらせた上で補綴装置を製作して合着させることになる。このような従来の治療手順では、咬合崩壊等が起きており全顎的に治療が必要な場合、個々の歯の治療の途中で顎位の変化や歯根破折等が起こってしまい、治療途中で治療計画の変更を余儀なくされるケースが少なからず発生する。
【0009】
尚、特許文献1のインプラントの上部構造体とアバットメントとをスクリュー固定式で製作するために、咬合面方向に円柱上の穴が設けられているもので、虫歯治療や根管治療等のすべての治療を終わらせた上で補綴装置を製作して合着させることになることには変わりはない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、本願補綴装置を用いることで、治療前や治療途中に顎位の変化や歯根破折等が起こることを抑制でき、治療計画の変更を減らすことができる補綴装置、補綴装置形成装置及び補綴装置の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の補綴装置は、治療対象の歯に対する隔壁状で、歯の咬合面に根管への治療を可能にする開放部を有する補綴本体からなり、補綴本体が、治療前又は治療中の歯の歯冠又は歯根に合着させるものであることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の補綴装置は、請求項1の構成に加え、補綴本体が円環状で、補綴本体の開放部が、咬合面に設けられた根管への治療を可能にするアクセス穴であることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の補綴装置形成装置は、治療前又は治療中の歯及びその周辺を撮像するスキャン手段と、スキャン手段により撮像されたデータに基づき補綴装置の形状を形成させる補綴形成手段を備え、補綴形成手段によって形状を形成される補綴装置が、治療前又は治療中の歯の歯冠又は歯根に合着させるものであって、歯に対する隔壁状で、歯の咬合面に根管への治療を可能にする開放部を有するものであることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の補綴装置形成装置は、請求項3の構成に加え、補綴形成手段が形成する補綴装置が、円環状で、補綴装置の開放部が、咬合面に設けられた根管への治療を可能にするアクセス穴であることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の補綴装置の形成方法は、治療前又は治療中の歯及びその周辺の印象採得を行い、印象採得により得られた型の情報に基づき、治療前又は治療中の歯の歯冠又は歯根に合着させるものであって、歯に対する隔壁状で、歯の咬合面に根管への治療を可能にする開放部を有する補綴装置の形状を形成させることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の補綴装置の形成方法は、治療前又は治療中の歯及びその周辺を撮像し、撮像されたデータに基づき、治療前又は治療中の歯の歯冠又は歯根に合着させるものであって、歯に対する隔壁状で、歯の咬合面に根管への治療を可能にする開放部を有する補綴装置の形状を形成させることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の補綴装置の形成方法は、請求項5又は請求項6の構成に加え、形成される補綴装置が、円環状で、補綴装置の開放部が、咬合面に設けられた根管への治療を可能にするアクセス穴であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によれば、本願補綴装置を用いることで、治療前や治療途中に顎位の変化や歯根破折等が起こることを抑制でき、治療計画の変更を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願発明の補綴装置の一例を示す説明図である。
図2】同補綴装置の使用方法の一例を示す説明図である。
図3】同補綴装置の縦断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、本願発明の補綴装置の一例を示す説明図である。図2は、同補綴装置の使用方法の一例を示す説明図である。図3は、同補綴装置の縦断面を示す説明図である。
【0021】
本願に係る補綴装置1は、歯科治療に用いるものである。従来の補綴歯科に係る治療の手順では、虫歯治療や根管治療等のすべての治療を終わらせた上で人工の歯冠を製作して合着させることになるが、補綴装置1は、治療前や治療中の歯20の歯冠22や歯根30に合着させるものである。
【0022】
ここで、補綴装置1(補綴本体10)を合着させるとは、治療前や治療中に仮止め的に接着させることではなく、治療後も継続して使用できる状態に固定又は接着することを意味している。また、本願明細書等で歯冠や歯根の語が用いられているが、歯冠や歯根は、人工のものであってもかまわず、その由来に依存するものではない。尚、本実施の形態及び図面で示す歯冠22及び歯根30は、人工のものではない例で説明している。
【0023】
補綴装置1は、治療対象の歯20に対する隔壁状で、歯20の咬合面12に根管32への治療を可能にする開放部14を有する補綴本体10からなる。そして、補綴本体10は、治療前又は治療中の歯20の歯冠22又は歯根30に合着させるものである。
【0024】
補綴本体10の形状は、歯20の歯冠22の一部又は全体に合着されて、人間本来の人工的ではない歯冠の一部又は全部に置き換わって、咬合面12を形成させるものであり、このような形状を本願では隔壁状と称している。すなわち、補綴本体10の形状は、図の例に示すような円環状である場合もあれば、円環状ではなく例えば平面視で三日月状のような変形している場合もあり、その形状は、治療の状況において決定されるものである。
【0025】
開放部14の形状についても、図の例に示すように補綴本体10が円環状の場合には、アクセス穴として穴形状になる。しかしながら、補綴本体10が三日月状のような形状の場合には、開放部14は、歯20の咬合面12に根管32への治療を可能にする溝状のような形態になる。
【0026】
補綴装置1を構成する補綴本体10の材質は、長期にわたって使用可能な義歯に適したものであればよく、例えばセラミック、レジン、金属等がある。
【0027】
次に、補綴装置1の形成方法を説明する。この補綴装置1の形成方法を実現させるものが補綴装置形成装置になる。まず、治療前又は治療中の歯20及びその周辺をスキャン手段で撮像する。このスキャン手段は、3Dカメラや口腔内スキャナやCTデータの採取手段等であり、それらの組み合わせであってもよい。また、歯科医師や歯科技工士等が、スキャン手段で撮像されたデータに手を加えてもよく、随時適したデータを作成する。そして、スキャン手段で撮像されたデータに基づき、補綴装置1の形状を形成させる。尚、補綴装置1の形状を形成させる補綴形成手段は、従来の一般的な補綴装置を形成させるものであればよい。
【0028】
尚、スキャン手段を用いず、治療前又は治療中の歯20及びその周辺の印象採得を行い、その印象採得により得られた型の情報に基づき、補綴装置1の形状を形成させるようにしてもよい。いずれの方法であれ、形成される補綴装置1の形状は、上述の通りであるが、歯20に対する隔壁状で、歯20の咬合面12に根管32への治療を可能にする開放部14を有するものである。
【0029】
補綴装置1を用いる手順を説明すると、多くの場合には、虫歯等の治療として、歯20の虫歯部分を取り除く治療をまずは施す。その後、スキャン手段を用いたり印象採得を行ったりして、補綴装置1の形状を特定し、補綴装置1を形成させる。
【0030】
そして、図2に示すように、例えば、補綴装置1を合着させる歯20の歯冠22に、補綴装置1のための嵌合面24を形成させておき、その上から、補綴装置1の内周面の一部をなす嵌合面16は嵌まり合うように、形成された補綴装置1を合着させる。ここで、図3に示すように、歯20に補綴装置1が合着された後の状態でも、開放部14を通して、歯20の根管32への治療が可能である。尚、補綴装置1同士を連結で製作するような場合もあり得る。
【0031】
補綴装置1が合着された後に、根管32への治療を施し、治療が終了したところで、レジン等の材料により、開放部14を塞ぐことで、歯20の治療が完了する。但し、歯20の状態等で、治療前に補綴装置1の形状を形成させ、治療前に補綴装置1を歯20の歯冠22や歯根30に合着させる場合もある。治療前に補綴装置1を合着させた場合でも、開放部14を介して、歯20の治療は可能であり、治療が終わった後に開放部14を塞ぐようにすればよい。
【0032】
このような構成の補綴装置1を用いることで、治療前や治療途中に顎位の変化や歯根破折等が起こることを抑制でき、治療計画の変更を減らすことができる。また、治療の早期に補綴装置1を用いることで咬合崩壊を抑制することが可能になる。
【0033】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明によれば、治療前や治療途中に顎位の変化や歯根破折等が起こることを抑制でき、治療計画の変更を減らすことができる補綴装置、補綴装置形成装置及び補綴装置の形成方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・・補綴装置
10・・・補綴本体
12・・・咬合面
14・・・開放部
16・・・嵌合面
20・・・歯
22・・・歯冠
24・・・嵌合面
30・・・歯根
32・・・根管
図1
図2
図3