(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017471
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】空調ダクト
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
F24F13/02 B
F24F13/02 A
F24F13/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120510
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】524115752
【氏名又は名称】株式会社ATJ
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】柿花 勝
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AA02
3L080AC01
3L080AC05
3L080AD02
3L080AD03
3L080AE01
(57)【要約】
【課題】本発明は、空調機による所定温度の空気を建築物の室内空間に効率的に供給することができる空調ダクトを提供することを目的とする。
【解決手段】建築物の室内空間Rに配置され、可撓性のシート材により構成される空調ダクト1であって、空気の送風方向に沿って延びる態様で内側に配置される第1のダクト10と、空気の送風方向に沿って延びる態様で第1のダクト10の周囲の外側に配置される第2のダクトを備える。第1のダクト10は、空調機100からの所定温度の空気が流入する第1の流入口11と、第1のダクト10内の空気を室内空間Rに吐出する第1の吐出口12が設けられる。第2のダクト20は、空調機100からの所定温度の空気が流入する第2の流入口21と、第2のダクト20内の空気を室内空間Rに吐出する第2の吐出口22が設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の室内空間に配置され、可撓性のシート材により構成される空調ダクトであって、
空気の送風方向に沿って延びる態様で内側に配置される第1のダクトと、空気の送風方向に沿って延びる態様で前記第1のダクトの周囲の外側に配置される第2のダクトを備え、
前記第1のダクトは、空調機からの所定温度の空気が流入する第1の流入口と、前記第1のダクト内の空気を建築物の室内空間に吐出する第1の吐出口が設けられ、前記第1のダクト内を流れる空気によって筒状に膨らむものとなされ、
前記第2のダクトは、前記空調機からの所定温度の空気が流入する第2の流入口が設けられ、前記第2のダクト内を流れる空気によって筒状に膨らむものとなされていることを特徴とする空調ダクト。
【請求項2】
前記第1のダクトは、前記第1の吐出口が前記第2のダクトを径方向に貫通する態様で周面に設けられている請求項1に記載の空調ダクト。
【請求項3】
前記第2のダクトは、前記第2のダクト内の空気を建築物の室内空間に吐出する第2の吐出口が設けられている請求項1に記載の空調ダクト。
【請求項4】
前記第1のダクトおよび前記第2のダクトは、前記空調機に対して前記第2の吐出口が前記第1の吐出口よりも相対的に近い位置に設けられている請求項3に記載の空調ダクト。
【請求項5】
前記第1のダクトおよび/または第2のダクトは、前記空調機と反対側の先端部においてダクト内の空気を排出するための開閉可能なファスナ部が設けられている請求項1に記載の空調ダクト。
【請求項6】
前記第1のダクトおよび/または第2のダクトは、第1の流入口および/または第2の流入口の周縁部にワイヤ部材が設けられている請求項1に記載の空調ダクト。
【請求項7】
空気の送風方向に沿って第2のダクトの周囲の外側に配置される筒状の第3のダクトを備え、
前記第3のダクトは、建築物の室内空間の空気を吸引する吸引口と、該第3のダクト内の空気を前記空調機に排出する排出口とが設けられ、該第3のダクト内を流れる空気によって筒状に膨らむものとなされている請求項1に記載の空調ダクト。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の空調ダクトと空調機から構成されることを特徴とする空調機セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の室内空間に配置され、可撓性のシート材により構成される空調ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、災害時や緊急時あるいはイベント時などにおいて、体育館、避難所、仮設テント、小屋などの建築物の室内空間に空調ダクトが設置されることがある。この空調ダクトは、可撓性のシート材により構成されており、空調機から吹き出された空気が基端部から流入し、ダクト内を流れたあと、ダクトの周面から吐出される。これによれば、室内空間における空調機の近傍位置のみならず、空調機から離れた位置などの各所に空気を供給することができる(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-148345号公報
【特許文献2】特開平8-294339号公報
【特許文献3】実開昭62-43231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の空調ダクトは、いずれも常温の空気を建築物の室内空間に単に供給するという送風目的であれば問題ないが、空調機から吹き出された冷気または暖気のような所定温度の空気を室内空間に供給する場合、所定温度の空気がダクト内を流れる過程において室内空間から吸熱したり、あるいは室内空間に放熱するため、特にダクトの先端部や中央部の周面から吐出されるときには室内空間と同じ温度あるいは近い温度になり、空調機による所定温度の空気を建築物の室内空間に効率的に供給することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、空調機による所定温度の空気を建築物の室内空間に効率的に供給することができる空調ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、建築物の室内空間に配置され、可撓性のシート材により構成される空調ダクトであって、空気の送風方向に沿って延びる態様で内側に配置される第1のダクトと、空気の送風方向に沿って延びる態様で前記第1のダクトの周囲の外側に配置される第2のダクトを備え、前記第1のダクトは、空調機からの所定温度の空気が流入する第1の流入口と、前記第1のダクト内の空気を建築物の室内空間に吐出する第1の吐出口が設けられ、前記第1のダクト内を流れる空気によって筒状に膨らむものとなされ、前記第2のダクトは、前記空調機からの所定温度の空気が流入する第2の流入口が設けられ、前記第2のダクト内を流れる空気によって筒状に膨らむものとなされていることを特徴とする。
【0007】
これによれば、第1のダクト内の空気層は第2のダクト内の空気層により周囲を被覆されることにより断熱状態になるため、空調機から第1のダクトに流入した所定温度の空気は、所定温度を概ね維持しながら第1のダクト内を通過したあと、第1の吐出口から室内空間に吐出される。このため、空調機による所定温度の空気を建築物の室内空間に効率的に供給することができる。
【0008】
また、前記第1のダクトは、前記第1の吐出口が前記第2のダクトを径方向に貫通する態様で周面に設けられてもよい。これによれば、第1のダクト内の所定温度の空気を該第1のダクトの周面の一ないし複数の吐出口から建築物の室内空間に向けて径方向に吐出することができる。
【0009】
また、前記第2のダクトは、前記第2のダクト内の空気を建築物の室内空間に吐出する第2の吐出口が設けられてもよい。これによれば、第2のダクトに流入した空気も第2の吐出口から建築物の室内空間に吐出することができる。
【0010】
また、前記第1のダクトおよび前記第2のダクトは、前記空調機に対して前記第2の吐出口が前記第1の吐出口よりも相対的に近い位置に設けられてもよい。これによれば、第2のダクトに流入した所定温度の空気は、空調機から吹き出されたときの温度を概ね維持しながら第2の吐出口から吐出されるため、空調機による所定温度の空気を建築物の室内空間により一層効率的に供給することができる。
【0011】
また、前記第1のダクトおよび/または第2のダクトは、前記空調機と反対側の先端部においてダクト内の空気を排出するための開閉可能なファスナ部が設けられてもよい。これによれば、ファスナ部を所定の範囲で開けることにより、空調ダクト内の空気を建築物の室内空間に逃がすことができ、空調ダクトの膨らみ度合いを調整したり、結露を防止することができる。
【0012】
また、前記第1のダクトおよび/または第2のダクトは、第1の流入口および/または第2の流入口の周縁部にワイヤ部材が設けられてもよい。これによれば、空調ダクトの第1のダクトおよび第2のダクトを空調機の吹出口やアダプタに簡単かつ確実に接続することができる。
【0013】
また、空気の送風方向に沿って第2のダクトの周囲の外側に配置される筒状の第3のダクトを備え、前記第3のダクトは、建築物の室内空間の空気を吸引する吸引口と、該第3のダクト内の空気を前記空調機に排出する排出口とが設けられ、該第3のダクト内を流れる空気によって筒状に膨らむものとなされてもよい。これによれば、第3のダクト内を逆方向に流れる室内空間からの空気と第2のダクト内を順方向に流れる空調機からの空気との間において熱交換が行われるため、第3のダクトから空調機に吸い込まれる空気と空調機から第1のダクトおよび第2のダクトに吹き出される空気との間の温度差を小さくすることができ、空調機における空気の熱交換を効率的に行うことが可能となる。
【0014】
また、本発明は、上記に記載の空調ダクトと空調機から構成されることを特徴とする空調機セットである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1のダクト内の空気層は第2のダクト内の空気層により周囲を被覆されることにより断熱状態になるため、空調機から第1のダクトに流入した所定温度の空気は、所定温度を概ね維持しながら第1のダクト内を通過したあと、第1の吐出口から室内空間に吐出される。このため、空調機による所定温度の空気を建築物の室内空間に効率的に供給することができる。
【0016】
これにより、災害時や緊急時あるいはイベント時などにおいて、体育館、避難所、仮設テントなどの建築物の室内空間に空調ダクトを簡単に設置することができる上、暑い日や寒い日でも快適な室内空間を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態における空調ダクトを室内空間に設置した状態を示す図である。
【
図2】
図1の空調ダクトおよび空調機を示す斜視図である。
【
図3】
図2の空調ダクトを示す側面視断面図である。
【
図4】
図2の空調ダクトを示す平面視断面図である。
【
図5】
図4の空調ダクトの(a)A-A線矢視断面図、(b)B-B線矢視断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る空調ダクトを示す側面視断面図である。
【
図7】
図6の空調ダクトを示す平面視断面図である。
【
図8】
図7の空調ダクトのC-C線矢視断面図である。
【
図9】
図7の空調ダクトのD-D線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
次に、本発明に係る空調ダクト1の第1の実施形態について、
図1~
図5を参照しつつ説明する。
【0019】
本空調ダクト1は、
図1に示すように、体育館、避難所、仮設テント、小屋などの建築物の室内空間Rにおいて、床面から所定高さで水平方向に沿って30m程の長さで設けられ、空調機100に接続されることにより所定温度の空気(本実施形態では冷気)を建築物の室内空間Rに供給する。なお、本空調ダクト1の設置に際しては、空調機100に接続するだけでもよいし、天井から吊り下げたり、床面に直接載置したり、あるいは床面に設置された支持部材で支持してもよい。
【0020】
前記空調機100は、一般に使用されている室内機101と室外機102に分離されたものであり、室内機101において所定温度の冷気を吹出口101aから吹き出すとともに、室内空間Rの空気を吸込口101bから吸い込むものとなされており、室内機101で熱を吸収したガス媒体を室外機102に送るとともに、室外機102で熱を放熱したガス媒体を室内機101に送るものとなされている。なお、空調機100は、室内機101と室外機102の機能が一体に構成されたものを使用してもよい。
【0021】
また、前記空調機100は、所定温度の冷気が吹き出される吹出口101aに吹出側アダプタ200が設けられている。この吹出側アダプタ200は、
図3に示すように、基枠の内側に配置された第1の筒状部201と、第1の筒状部201の周囲の外側に配置された第2の筒状部202を備え、所定温度の空気が空調機100の吹出口101aから第1の筒状部201および第2の筒状部202を通って本空調ダクト1の内部に吹き出される。
【0022】
次に、本空調ダクト1の構成について具体的に説明する。
【0023】
本空調ダクト1は、
図3および
図4に示すように、折り畳み可能な柔軟な可撓性の袋状のシート材により構成され、冷気の送風方向(本実施形態では水平方向)に沿って内側に配置される有底円筒状の第1のダクト10と、冷気の送風方向に沿って第1のダクト10の周囲の外側に配置される有底円筒状の第2のダクト20とを備え、第1のダクト10内の円柱状の第1の空気層K1と第2のダクト20内の円筒状の第2の空気層K2(第1のダクト10と第2のダクト20の間の空気層)による二層構造に構成される。
【0024】
前記第1のダクト10は、
図4に示すように、第2のダクト20の内側において同軸上に配置され、基端部の端面に形成された第1の流入口11と、先端部から中央部にかけて周面に形成された複数の第1の吐出口12とが設けられるとともに、先端部の端面は閉じられた状態に形成されており、第1のダクト10内を順方向に流れる冷気によって送風方向に延びる態様で筒状に膨らむものとなされている。なお、第1のダクト10は、第2のダクト20内の第2の空気層K2によって周囲から均等に支えられた状態となるため、第2のダクト20と同心軸上に自然に配置される。
【0025】
前記第1の流入口11は、空調機100の吹出側アダプタ200の第1の筒状部201に嵌着され、第1の筒状部201から吹き出された冷気が第1の流入口11から第1のダクト10内に流入するものとなされている。
【0026】
前記第1の吐出口12は、第1のダクト10の周面の正面視左側および正面視右側に送風方向に沿って4個ずつ対称に設けられており、第1のダクト10内を順方向に流れてきた冷気を径方向の斜め下方に吐出するものとなされている。なお、第1の吐出口12は、第1のダクト10内と室内空間Rを連通するように第2のダクト20を貫通して、第2のダクト20の周面から突出する態様の円錐台筒状に形成されている。
【0027】
前記第2のダクト20は、
図4に示すように、第1のダクト10を全周に亘って被覆する態様で同軸上に配置され、基端部の端面に形成された第2の流入口21と、基端部から中央部にかけて周面に形成された複数の第2の吐出口22とが設けられるとともに、先端部の端面が閉じられた状態に形成されており、第2のダクト20内を順方向に流れる冷気によって送風方向に延びる態様で円筒状に膨らむものとなされている。
【0028】
前記第2の流入口21は、空調機100の吹出側アダプタ200の第2の筒状部202に嵌着され、第2の筒状部202から吹き出された冷気が第2の流入口21から第2のダクト20内に流入するものとなされている。
【0029】
前記第2の吐出口22は、第2のダクト20の周面の正面視左側および正面視右側に送風方向に沿って4個ずつ対称に設けられており、第2のダクト20内を順方向に流れてきた冷気を斜め下方に吐出するものとなされている。なお、第2の吐出口22は、第2のダクト20内と室内空間Rを連通するように第2のダクト20の周面から突出する態様の円錐台筒状に形成されている。
【0030】
前記第1のダクト10および前記第2のダクト20は、
図4に示すように、空調機100に対して第2の吐出口22が前記第1の吐出口12よりも相対的に離れた位置に設けられている。これにより、第2のダクト20に流入した冷気は、空調機100から吹き出されたときの温度を概ね維持しながら第2の吐出口22から吐出されるため、空調機100による所定温度の空気を建築物の室内空間Rにより一層効率的に供給することができる。
【0031】
また、前記第1のダクト10および第2のダクト20は、
図2に示すように、空調機100の反対側の先端部周縁に環状の第1のファスナ部13および第2のファスナ部23が設けられている。このため、本ダクトの第1のファスナ部13および第2のファスナ部23を所定の範囲で開けることにより、本空調ダクト1内の空気を建築物の室内空間Rに逃がすことができ、本空調ダクト1の膨らみ度合いを調整したり、結露を防止することができる。
【0032】
また、前記第1のダクト10および前記第2のダクト20は、第1の流入口11および第2の流入口21の周縁部に図示略の環状のワイヤ部材が設けられてもよい。これにより、空調ダクト1と吹出側アダプタ200を接続する際、空調ダクト1の第1のダクト10および第2のダクト20を吹出側アダプタ200の第1の筒状部201および第2の筒状部202に簡単かつ確実に接続することができる。
【0033】
次に本空調ダクト1の素材について具体的に説明する。
【0034】
本空調ダクト1は、シート材の素材としてポリエステル繊維からなる折り畳み可能な可撓性のシートが好適に用いられる。例えば、ポリエステル繊維の糸を経糸密度および緯糸密度が50~300本/インチとなるように平織りしたものが用いられる。また、空調機100からの冷気の風圧による形状変化が可能な軽量性を有するとともに、冷気の風圧や施行時の引っ張りなどに対する強度を有するように、シート材の目付けは20g/m2~100g/m2の範囲内であることが好ましい。また、本空調ダクト1の施行時の取扱い易さを向上させるために、シート材の厚さは0.05mm~0.25mmの範囲内であるのが好ましい。また、シート材の引張強度は80MPa以上であって、シート材の引張伸度は10%以上であるのが好ましい。
【0035】
また、本空調ダクト1は、空調機100からの冷気の風圧を受けて筒状に膨らむことが可能な限りにおいて、通気性が0.01~0.05cm3/cm2/sの範囲内となるように細かい通気孔が形成されてもよい。これによれば、シート材に冷気の風圧により必要以上の力がかかって破損すること防止できるととともに、シート材の表面に結露が生じることを防止できる。
【0036】
また、本空調ダクト1は、難燃剤を含有するポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂またはポリ塩化ビニル系樹脂などの熱硬化性樹脂により被覆されていてもよい。この難燃剤を含有する熱硬化性樹脂の塗布量は、シート材に難燃性を発揮させるとともに、シート材の厚みや重量が過度に大きくならないように1~20g/m2が好ましい。
【0037】
次に本空調ダクト1における冷気の流れについて具体的に説明する。なお、本空調ダクト1は、空調機100の吹出口101aに接続された状態になっている。
【0038】
まず、空調機100の吹出口101aから所定温度の冷気が吹き出されると、
図3および
図4に示すように、冷気が吹出側アダプタ200の第1の筒状部201および第2の筒状部202を通って第1の流入口11および第2の流入口21から第1のダクト10および第2のダクト20の内部に流入する。このとき、本空調ダクト1は、空調機100の吹出口101aから吹き出された冷気の圧力により、第1のダクト10と第2のダクト20が送風方向に沿って円筒状に膨らんだ状態になる。
【0039】
そして、第1のダクト10内に流入した冷気は、順次、第1のダクト10内を基端部から先端部付近まで順方向に流れ、
図5(a)に示すように、第1のダクト10の周面の各第1の吐出口12から室内空間Rに径方向の斜め下方に向けて吐出される。このとき、第1のダクト10内の空気層K1は、第2のダクト20内の空気層K2により周囲を被覆されることにより断熱状態または断熱状態に近い状態になっている。このため、空調機100から第1のダクト10に流入した冷気は、空調機100から吹き出されたときの所定温度を概ね維持しながら、第1のダクト10内を中央部から先端部まで流れる過程において各第1の吐出口12から吐出される。
【0040】
一方、第2のダクト20内に流入した冷気は、順次、第2のダクト20内を基端部から中央部まで順方向に流れ、
図5(b)に示すように、各第2の吐出口22から室内空間Rに吐出される。このとき、第2のダクト20内の空気層K2は室内空間Rの空気に近接した状態となっているが、第2の吐出口22が空調機100に近い位置に配置されているため、空調機100から第2のダクト20に流入した冷気は、空調機100から吹き出されたときの温度を概ね維持しながら、第2のダクト20内を基端部から中央部まで流れる過程において各第2の吐出口22から吐出される。なお、第2のダクト20に流入した冷気の一部は、第2の吐出口22を超えて第2のダクト20の中央部から先端部の間で滞留することにより第1のダクト10の断熱状態を維持する。
【0041】
而して、空調機100から吹き出された冷気は、一部が第1のダクト10を通じて空調機100から離れた位置で所定温度を維持しながら吐出されるとともに、一部が第2のダクト20を通じて空調機100に近い位置で所定温度を維持しながら吐出されるため、空調機100による所定温度の空気を建築物の室内空間Rに効率的に供給することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、本空調ダクト1は、第1のダクト10と第2のダクト20による二層構造としたが、三層以上の構造にしてもよい。
【0043】
また、第2のダクト20は、第2のダクト20内の冷気が吐出される第2の吐出口22が設けられるものとしたが、第2の吐出口22が設けられることなく、第2の流入口21から流入した冷気が第2のダクト20内で滞留する構成としてもよい。
【0044】
また、第1のダクト10および第2のダクト20は、アダプタ200を介して空調機100の吹出口101aに接続されるものとしたが、空調機100の吹出口101aに直接接続されてもよいし、あるいはホース等を介して空調機100の吹出口101aに接続されてもよい。
【0045】
また、第1のダクト10および第2のダクト20は、第1の吐出口12および第2の吐出口22が第2のダクト20の周面から突出する円錐台筒状に形成されたが、第1のダクト10および第2のダクト20の内部と建築物の室内空間Rを連通するものであれば、第2のダクト20の周面から突出しなくてもよいし、その他の形状に形成されてもよい。
【0046】
また、第2のダクト20は、第1のダクト10を全周に亘って被覆する態様で同軸上に配置されるものとしたが、第1のダクト10の周方向の一部を被覆する態様で配置されてもよい。ただ、第1のダクト10の断熱状態を確実に維持するためには第1のダクト10の周方向の80%以上を被覆するのが好ましい。
【0047】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る本空調ダクト1の第2の実施形態について
図6~
図9を参照しつつ説明する。なお、以下では上記の実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0048】
本空調ダクト1は、
図6および
図7に示すように、空気の送風方向に沿って第2のダクト20の周囲の外側に配置される有底筒状の第3のダクト30を備え、第1のダクト10内の円柱状の第1の空気層K1、第2のダクト20内の円環状の第2の空気層K2(第1のダクト10と第2のダクト20の間の空気層)並びに第3のダクト30内の円筒状の第3の空気層K3(第2のダクト20と第3のダクト30の間の空気層)による三層構造に構成される。
【0049】
この第3のダクト30は、
図7に示すように、第2のダクト20を全周に亘って被覆する態様で同軸上に配置され、先端部の下方周面に形成された円筒状の吸引口31と、基端部の下方周面に形成された円筒状の排出口32とが設けられるとともに、先端部の端面は閉じられた状態に形成され、第3のダクト30内を逆方向に流れる空気によって送風方向(水平方向)に延びる態様で円筒状に膨らむものとなされている。
【0050】
前記吸引口31は、第3のダクト30の下方を向く態様で形成されており、室内空間Rの空気が吸引口31から第3のダクト30内に吸引される。
【0051】
前記排出口32は、第3のダクト30の下方を向く態様で形成されており、空調機100に接続されて吸引ホース400の一方端部が嵌着されており、第3のダクト30内を逆方向に流れてきた空気が排出口32から吸引ホース400に排出されるものとなされている。
【0052】
また、前記空調機100は、
図6に示すように、室内空間Rの空気が吸い込まれる吸込口101bに吸込側アダプタ300が設けられている。この吸込側アダプタ300は、吸引ホース400の他方端部が筒状部に接続されており、吸引ホース400から流れてきた室内空間Rの空気を筒状部から吸い込む。
【0053】
なお、本実施形態では、第1のダクト10の第1の吐出口12は、
図8に示すように、第1のダクト10内と室内空間Rを連通するように第2のダクト20および第3のダクト30を貫通し、第3のダクト30の周面から突出する態様の円錐台筒状に形成されている。また、第2のダクト20の第2の吐出口22は、
図9に示すように、第2のダクト20内と室内空間Rを連通するように第3のダクト30を貫通し、第3のダクト30の周面から突出する態様の円錐台筒状に形成されている。
【0054】
而して、室内空間Rの空気は、
図6に示すように、吸引口31から第3のダクト30内に吸引され、第3のダクト30内を先端部から基端部にかけて逆方向に流れたあと、排出口32から吸引ホース400に排出され、吸引ホース400を通じて空調機100の吸込口101bから吸い込まれる。このとき、第3のダクト30内を逆方向に流れる室内空間Rからの空気(第3の空気層K3)と第2のダクト20内を順方向に流れる空調機100からの空気(第2の空気層K2)との間において熱交換が行われるため、第3のダクト30から空調機100の吸込口101bに吸い込まれる空気と空調機100の吹出口101aから第1のダクト10および第2のダクト20に吹き出される空気(冷気)との間の温度差を小さくすることができ、空調機100における空気の熱交換を効率的に行うことが可能となる。
【0055】
なお、以上の各実施形態では、本空調ダクト1を空調機100から所定温度の冷気が吹き出される場合に適用したが、空調機100から所定温度の暖気が吹き出される場合に適用してもよい。
【0056】
また、本空調ダクト1は、長さ方向に1本のダクトから構成されるものとしたが、長さ方向に複数本のダクトが直列または並列に構成されてもよい。
【0057】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…空調ダクト
10…第1のダクト
11…第1の流入口
12…第1の吐出口
13…第1のファスナ部
20…第2のダクト
21…第2の流入口
22…第2の吐出口
23…第2のファスナ部
30…第3のダクト
31…吸引口
32…排出口
100…空調機
101…室内機
101a…吹出口
101b…吸込口
102…室外機
200…吹出側アダプタ
201…第1の筒状部
202…第2の筒状部
300…吸込側アダプタ
400…吸引ホース
K1…第1の空気層
K2…第2の空気層
K3…第3の空気層
R…室内空間