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特開2025-17475アームアタッチメント、ガス溶断ロボットシステム、ティーチング用トレースピン、及びワーク支持ユニット
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  • 特開-アームアタッチメント、ガス溶断ロボットシステム、ティーチング用トレースピン、及びワーク支持ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025017475
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】アームアタッチメント、ガス溶断ロボットシステム、ティーチング用トレースピン、及びワーク支持ユニット
(51)【国際特許分類】
   B23K 7/10 20060101AFI20250130BHJP
   B25J 17/02 20060101ALI20250130BHJP
   B23K 7/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B23K7/10 501C
B25J17/02 A
B23K7/00 501A
B23K7/10 501F
B23K7/10 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120522
(22)【出願日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】523281504
【氏名又は名称】株式会社梶哲商店
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】森 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】梶 哲郎
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS12
3C707BT01
3C707DS01
3C707EU04
3C707EU13
3C707JU08
(57)【要約】
【課題】厚物のワークでも、ロボット本体であるアームの可動限界を懸念することなく高精度な溶断を、加工場所の制限が少なく行うことができるアームアタッチメント、ガス溶断ロボットシステム、ティーチング用トレースピン、及びワーク支持ユニットを提供する。
【解決手段】アームアタッチメント18は、第1連結部31と、第2連結部32とを備える。第1連結部31は、アームの先端に固定される。第2連結部32は、先端から火炎を射出する火口ノズル25を把持する。第2連結部32は、アームを構成する複数のリンクのうち、最も先端にある先端リンク13aの軸方向に対して、火口ノズル25の軸方向が0°以上45°以下の範囲内で角度調整されるように、第1連結部31に固定される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの先端に固定される第1連結部と、
先端から火炎を射出する火口ノズルを把持し、前記アームを構成する複数のリンクのうち、最も先端にある先端リンクの軸方向に対して、前記火口ノズルの軸方向が0°以上45°以下の範囲内で角度調整されるように前記第1連結部に固定される第2連結部と
を備えるアームアタッチメント。
【請求項2】
前記第1連結部は、前記先端リンクの軸方向と交差する方向に突出し、
前記第2連結部は、前記第1連結部の突出した部分に固定される請求項1に記載のアームアタッチメント。
【請求項3】
前記第1連結部は、前記先端リンクの軸方向と直交する方向に突出し、
前記火口ノズルの軸方向が前記第1連結部の突出した方向に直交する面内において回動して角度調整される請求項2に記載のアームアタッチメント。
【請求項4】
前記第2連結部は、前記火口ノズルの周面を把持するC字状の把持部を有する請求項1または2に記載のアームアタッチメント。
【請求項5】
アームと、
アームの先端に固定される第1連結部と、先端から火炎を射出する火口ノズルを把持し、前記アームを構成する複数のリンクのうち、最も先端にある先端リンクの軸方向に対して、前記火口ノズルの軸方向が0°以上45°以下の範囲内で角度調整されるように前記第1連結部に固定される第2連結部とを有するアームアタッチメントと、
前記火口ノズルと
を備えるガス溶断ロボットシステム。
【請求項6】
先細の棒状に形成され、ワークに記された罫書をトレースするために先端が前記ワークに接触される先細部材と、
前記先端が一端から突出するように前記先細部材を中空部に収容する筒状部材と、
前記筒状部材の前記中空部に配され、前記先細部材を前記一端側に付勢する付勢部材と
を備えるティーチング用トレースピン。
【請求項7】
棒状に形成され、起立した姿勢で互いに間隔をあけて並んで配され、ワークを下方から支持する複数の支持棒と、
前記複数の支持棒を起立した姿勢に保持し、水平姿勢とされた保持板と、
上下方向において移動自在に設けられ、前記複数の支持棒の上端よりも突出し、前記ワークの水平方向における移動を規制する移動規制位置と、前記支持棒の上端よりも低い退避位置との間で変位する規制部材と
を備えるワーク支持ユニット。
【請求項8】
前記保持板は、第1方向に並んで形成された複数の第1貫通孔と、前記第1方向に交差する第2方向に並んで形成された複数の第2貫通孔とを有し、
前記規制部材は、起立した姿勢で複数の前記第1貫通孔のそれぞれに挿通される第1棒状部材と、複数の前記第2貫通孔のそれぞれに挿通される第2棒状部材である請求項7に記載のワーク支持ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームアタッチメント、ガス溶断ロボットシステム、ティーチング用トレースピン、及びワーク支持ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
溶断や、端部の面取りを行う開先などの加工に、プラズマ加工機やレーザ加工機が用いられている。しかし、プラズマ加工機やレーザ加工機は、加工対象の金属と電極との間にプラズマアークを発生させるためのアーク発生機構や、レーザ射出機構などにより機器が大型であることから、機器を運搬ないし移動することは容易ではない。そのため、ワークをこれら機器が設置されている箇所に運搬ないし移動して加工せざるを得ない。しかし、大きなワークや大重量のワークの場合には、ワークの運搬ないし移動も容易ではない。また、プラズマ加工機やレーザ加工機は、溶断することができるワークの厚みに限界があることから、厚物のワークの溶断はガス溶断機を用いる方が現実的である。
【0003】
ところでロボットは、溶断などの各種加工において広く用いられるようになってきている。例えば特許文献1には、種々の厚みの鋼板を、ガス溶断ロボットにトーチ(火口ノズル)を装着したガス溶断ロボットにより溶断する技術が記載されている。また、ロボットとしては、作業者とともに作業を分担して加工等を行う協働ロボットも広く普及している。協働ロボットには、100V電源で稼働可能かつ小型のものが多く、加工する場所の制限が少ないため有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-85435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、協働ロボットの本体であるアームは、可動域の限界に近づくと、その動きに円滑さを欠き、加工精度に問題が残る。例えば、大型の円柱状のワークを周方向に溶断、あるいは、周面に沿って開先を行う場合には、上面部分に対する加工は高精度で行うことができても、下方にアームの可動域の限界があるため、下方部分に対する加工は精度が低いものとなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、厚物のワークでも、ロボット本体であるアームの可動限界を懸念することなく高精度な溶断を、加工場所の制限が少なく行うことができるアームアタッチメント、ガス溶断ロボットシステム、ティーチング用トレースピン、及びワーク支持ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアームアタッチメントは、第1連結部と、第2連結部とを備える。第1連結部は、アームの先端に固定される。第2連結部は、先端から火炎を射出する火口ノズルを把持する。第2連結部は、アームを構成する複数のリンクのうち、最も先端にある先端リンクの軸方向に対して、火口ノズルの軸方向が0°以上45°以下の範囲内で角度調整されるように第1連結部に固定される。
【0008】
第1連結部は、先端リンクの軸方向と交差する方向に突出し、第2連結部は、第1連結部の突出した部分に固定されることが好ましい。
【0009】
第1連結部は、先端リンクの軸方向と直交する方向に突出し、火口ノズルの軸方向は第1連結部の突出した方向に直交する面内において回動して角度調整されることが好ましい。
【0010】
第2連結部は、火口ノズルの周面を把持するC字状の把持部を有することが好ましい。
【0011】
本発明のガス溶断ロボットシステムは、アームと、上記アームアタッチメントと、火口ノズルとを備える。
【0012】
ティーチング用トレースピンは、先細部材と、筒状部材と、付勢部材とを備える。先細部材は、先細の棒状に形成され、ワークに記された罫書をトレースするために先端がワークに接触される。筒状部材は、先細部材の先端が一端から突出するように、当該先細部材を中空部に収容する。付勢部材は、筒状部材の中空部に配され、先細部材の先端が突出した上記一端側に先細部材を付勢する。
【0013】
ワーク支持ユニットは、棒状に形成された複数の支持棒と、保持板と、規制部材とを備える。複数の支持棒は、起立した姿勢で互いに間隔をあけて並んで配され、ワークを下方から支持する。保持板は、水平姿勢とされており、複数の支持棒を起立した姿勢に保持する。規制部材は、上下方向において移動自在に設けられ、複数の支持棒の上端よりも突出し、ワークの水平方向における移動を規制する移動規制位置と、支持棒の上端よりも低い退避位置との間で変位する。
【0014】
保持板は、第1方向に並んで形成された複数の第1貫通孔と、第1方向に交差する第2方向に並んで形成された複数の第2貫通孔とを有し、規制部材は、起立した姿勢で複数の第1貫通孔のそれぞれに挿通される第1棒状部材と、複数の第2貫通孔のそれぞれに挿通される第2棒状部材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、厚物のワークでも、ロボット本体であるアームの可動限界を懸念することなく高精度な溶断を、加工場所の制限が少なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態であるガス溶断ロボットシステムの説明図である。
図2】アームアタッチメントの概略図である。
図3】アームアタッチメントの説明図である。
図4】ワーク保持ユニットの平面概略図である。
図5】ワーク保持ユニットの一部断面図である。
図6】ワーク保持ユニットの説明図である。
図7】ティーチング用トレースピンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すガス溶断ロボットシステム(以下、ロボットシステムと称する)10は、射出する火炎によりワーク11を溶断するための協働ロボットシステムである。溶断は、ワーク11の切断に加えて、端部の面取り加工である開先(開先加工)を含む。溶断に代えて、溶接に用いることができる。ロボットシステム10は、協働ロボットの本体であるアーム13、アーム13を制御するコントローラ14、ガス溶断装置(図示無し)、アームアタッチメント(以下、アタッチメントと称する)18、ティーチング用トレースピン(以下、トレースピンと称する)21(図7参照)、ワーク支持ユニット22などから構成されている。アーム13及びコントローラ14は協働ロボットであり、また100V電源で稼働する。そのため、加工場所の制限が少なく、溶断を行うことができる。
【0018】
アーム13は、この例では、6軸ロボット、すなわち6自由度をもった多関節型ロボットであり、回転の軸である関節を接続する第1リンク13a,第2リンク13b,第3リンク13c,・・・が複数、直列に接続したシリアルリンク型となっている。第1リンク13aは、アーム13の最も先端のリンクであるので、以下、先端リンク13aと称する。この先端リンク13aに対してアタッチメント18を介してガス溶断装置の火口ノズル(トーチ)25が取り付けられ、火口ノズル25の先端の開口25pから火炎が射出された状態でアーム13が動くことにより、ワーク11が溶断される。先端リンク13aとこの先端リンク13aに連結する第2リンク13bとは、なす角が90°に固定されているが、先端リンク13aと第2リンク13bとの間の関節は回転機構とされ、第2リンク13bに対して先端リンク13aは90°を保持した状態で回転する。
【0019】
コントローラ14は、取得部(図示無し)、記憶部(図示無し)、動作制御部(図示無し)等を備える。取得部は、ワーク11について溶断すべき溶断位置の位置情報を取得し、記憶部に記憶させる。位置情報は、溶断線についての情報(溶断線の方向及び長さなどの情報)と、位置決めされたワークを想定した原点(ゼロ点)についての情報とを含む。溶断線についての情報としては、例えばCAD(Computer Aided Design)により生成された情報が挙げられる。上記原点は、溶断の基準となる基準点(基準位置)である。動作制御部は、記憶部に記憶された位置情報に基づいて、アーム13を制御し、これにより、火口ノズル25の動き、すなわち火口ノズル25の位置及び姿勢を制御する。この例では、コントローラ14の上面にアーム13が配されているが、アーム13とコントローラ14との位置関係はこの例に限られない。アーム13とコントローラ14を備える協働ロボットは、小型かつ軽量であり、コントローラ14の下面には旋回キャスタ(図示無し)が設けられていることが好ましい。これにより、協働ロボットは運搬及び移動が容易となっている。なお、旋回キャスタには、回転を抑止するストッパが設けられており、これにより、溶断位置の位置情報を取得する際及び溶断中において、アーム13の移動が規制されるようになっている。
【0020】
ガス溶断装置は、前述の火口ノズル25、火口ノズル25への各種ガスの供給を制御するガス制御部などで構成されている。ガス溶断装置は、アセチレンガス、酸素ガス、LPG(liquefied Petroleum Gas、液化石油ガス)、水素ガスの各ボンベと接続されている。溶断時には、これらのうちの2つのボンベからガス溶断装置にガスが送られ、供給される。送られるガスの組合せは具体的には、酸素ガスとアセチレンガスとの組合せ、酸素ガスとLPGガスとの組合せ、酸素ガスと水素ガスとの組合せであり、これらのいずれかの組合せのガスが適宜のタイミングでガス溶断装置に供給される。ロボットシステム10は、ガス溶断装置を備えるから、厚物のワークでも容易に溶断が可能である。
【0021】
アタッチメント18は、アーム13の先端に取り付けられ、火口ノズル25を保持する。トレースピン21は、溶断する際の原点設定、及び、溶断位置の位置情報を取得するためのものであり、ワークに記された罫書をトレースする。トレースの軌跡が、溶断位置の位置情報として、コントローラ14の前述の取得部に送られる。ワーク支持ユニット22は、ワークを支持するとともに、溶断の際の原点設定を容易かつ確実にするためのものである。アタッチメント18、トレースピン21、ワーク支持ユニット22の各詳細については、他の図面を用いて後述する。
【0022】
図2及び図3において、アタッチメント18は、アーム13の先端に取り付けられ、アーム13に対して着脱自在である。これにより、アタッチメント18及びガス溶断装置は、アーム13から取り外した状態で、運搬及び移動ができ、従前のようにワーク11をガス溶断装置のもとに運搬する必要がない。そのため、大きなワーク11や大重量のワーク11であってもアーム13とともにガス溶断装置を運搬して溶断を行うことができる。
【0023】
アタッチメント18は、アーム13の先端、すなわち先端リンク13aの先端に、第2リンク13bとは反対側に突出して設けられている。アタッチメント18は、先端リンク13aの先端に固定される第1連結部31と、火口ノズル25に固定される第2連結部32とを備える。先端リンク13aと第1連結部31、及び、火口ノズル25と第2連結部32とは着脱自在である。火口ノズル25は周知のとおり吹管25aと火口25bとを備え、第2連結部32は火口ノズル25の吹管25aに固定される。このように、アーム13と火口ノズル25の吹管25aとは、アタッチメント18を介して連結されると共に分離可能である。また、吹管25aには、火口25bに代えてトレースピン21が固定される場合がある。このように、アタッチメント18は、火口25bとトレースピン21とのいずれか一方が固定された吹管25aをアーム13の先端に保持する。
【0024】
第1連結部31は、この例では、先端リンク13aの先端面に固定される例えば柱状の第1部材36、第1部材36の端面に一方の板面37Aが固定された板状の第2部材37、第2部材37の他方の板面37Bに固定された柱状の第3部材38、第3部材の端面に固定された第4部材39等により構成されており、第2連結部32は第4部材39に固定される。第2部材37は、火口ノズル25が先端リンク13aに干渉しないように、先端リンク13aの軸A1の方向(以下、軸方向と称する)と交差する方向に突出して設けられ、突出した先端の板面37Bに第3部材38が配されている。第3部材38の軸方向は先端リンク13aの軸方向と同じ方向であるが、互いの軸はずれている。これにより、第2部材37~第4部材39は、先端リンク13aの軸A1から、その軸方向と交差する方向に突出、この例では、直交する方向に突出する突出部を構成している。この突出部は、先端リンク13aから、第2リンク13bとは反対側に突出している。
【0025】
第4部材39は、断面C字状の2つの部材がC字の開口同士を対向した状態にして蝶ねじ41により固定されることにより、先端リンク13aの軸方向に直交する方向において円形状にくり抜かれた穴39iを形成する。これにより、第4部材39は、第2連結部32の円柱状の雄型部材43が嵌め込まれる雌型部材とされている。
【0026】
第2連結部32は、火口ノズル25の吹管25aの周面を把持するC字状の把持部44と、把持部44の外周に固定された雄型部材43等から構成されている。雄型部材43は、前述の通り円柱状に形成されており、軸心A2の方向(以下、軸心方向と称する)は先端リンク13aの軸方向と直交することにより第2リンク13bの軸A3の方向(以下、軸方向と称する)と平行となっている。雄型部材43は、第4部材39の蝶ねじ41を緩めた状態で、軸心A2周りに第4部材39に対して相対的に回動させることにより、把持部44が雄型部材43と一体に回動し、これにより、先端リンク13aの軸方向に対する火口ノズル25の軸A4の方向(以下、軸方向と称する)の角度θ(単位は°)が調整される。角度θにおける火口ノズル25の軸方向は、火口ノズル25の開口25pが向く方向と定義する。なお、第1連結部31の第4部材39を雄型部材にするとともに第2連結部32の雄型部材43を雌型部材にしてもよい。
【0027】
以上のように、先端リンク13aと第2リンク13bとは90°で角度固定であり、第2連結部32の雄型部材43は第2リンク13bの軸A3と平行な軸心A2周りに回動するから、角度θは、先端リンク13aの軸A1と第2リンク13bの軸A3とを含む平面に対する、開口25pの向きである。第2連結部32は、火口ノズル25の軸方向が先端リンク13aの軸方向に対して0°以上45°以下の範囲内で角度調整されるように前記第1連結部31に固定される。アタッチメント18を用いない場合にはアーム13(図1参照)の先端リンク13aが可動域の限界に近づいた際に火口ノズル25の動きが不安定になるが、アタッチメント18を用いて角度θを例えば45°に調整して固定した場合には、可動域の限界までに45°分の余裕が生まれるので、可動域に達することなく、所望の位置の溶断が高精度で行われる。したがって、平板状のワークのみならず、図1に示すような円管状のワークなど曲面を有する立体物に対する溶断、特に開先であっても、精度よく加工がなされ、アーム13の可動限界を懸念する必要がない。
【0028】
図3においては、火口ノズル25が左傾斜(火口ノズル25の開口25pと逆側の端部が紙面左側に傾いた姿勢)である状態において角度θを示している。これは、アーム13の可動範囲とコントローラ14(図1参照)によるアーム13の制御領域の範囲を加味したアーム13の可動限界を前提としているからである。アーム13の可動限界を、本例と逆側において考慮する場合には、角度θを火口ノズル25が右傾斜である状態において採るとよい。また、本例では、角度θを調整した状態で雄型部材43と第4部材39とを固定する固定部材の一例であるのピン(図示無し)を設けており、これにより、火口ノズル25がより安定して保持され、より高い精度で溶断がなされるようにしてある。
【0029】
把持部44には、スライド機構47が設けられている。スライド機構47は、火口ノズル25の周面に設けられたラックギア48と、把持部44に設けられ、ラックギア48に噛合したピニオンギア(図示無し)と、ピニオンギアに連結された回転ハンドル49などから構成されている。蝶ねじ50をゆるめた状態で回転ハンドル49を回転操作することにより火口ノズル25は図2における上下方向にスライド移動する。スライド機構47で所望とする位置に火口ノズル25の位置を調整した後に蝶ねじ50を締めることで火口ノズル25の位置は固定される。火口ノズル25の周面には、把持部44に対する位置決めのためにナット51が設けられており、このナット51が把持部44に当たった際の位置を火口ノズル25を固定すべき位置としている。
【0030】
図4及び図5において、ワーク支持ユニット22は、複数の支持棒61と、保持板62と、規制部材の一例である第1棒状部材65A~65E,66A~66E及び第2棒状部材67A~67Jとを備える。ワーク支持ユニット22は、保持板70、第1シフト機構71、第2シフト機構72、脚部74をさらに備えることが好ましく、本例でもそのようにしている。
【0031】
複数の支持棒61は、ワーク11を下方から支持する棒状部材であり、水平姿勢とされた保持板62の天面に固定され、起立した姿勢に保持されている。複数の支持棒61は同じ高さに形成されており、ワーク11を安定して支持する。保持板62には第1シフト機構71が設けられ、第1シフト機構71は保持板62を上下方向に変位させる。これにより、ワーク11の高さをアーム13の高さに応じて調整することができる。
【0032】
複数の支持棒61は、互いに間隔をあけて並んで配されており、これにより、溶断中において、火口ノズル25から射出される火炎の熱の逃げ道が確保され、支持棒61上に載置されたワーク11及び支持棒61の過度な昇温が抑制される。
【0033】
保持板62には、上方から見たときに、複数の支持棒61をコの字状に囲むように、複数の第1貫通孔62a及び複数の第2貫通孔62bが形成されている。複数の第1貫通孔62aは第1方向Xに並んで、複数の第2貫通孔62bは、第1方向Xと交差、この例では第1方向Xに直交する第2方向Yに並んで形成されている。
【0034】
第1棒状部材65A~65E,66A~66E及び第2棒状部材67A~67Jは、水平姿勢とされた保持板70の天面に、垂直に起立した姿勢で固定されている。保持板70には第2シフト機構72が設けられ、第2シフト機構72は保持板70を上下方向に変位させる。これにより、第1棒状部材65A~65E,66A~66E及び第2棒状部材67A~67Jは上下方向に移動自在となっている。第1棒状部材65A~65E,66A~66E、第2棒状部材67A~67Jは、これらの第1貫通孔62a及び複数の第2貫通孔62bを挿脱可能とされるように、第1貫通孔62a及び複数の第2貫通孔62bと同様に、コの字状に並んで配されている。第1貫通孔62aは第1棒状部材65A~65E,66A~66Eが挿脱し、第2貫通孔62bは第2棒状部材67A~67Jが挿脱する。
【0035】
第2シフト機構72により保持板70が上下方向に変位することにより、第1棒状部材65A~65E,66A~66E及び第2棒状部材67A~67Jは、支持棒61の上端よりも突出し、ワーク11の水平方向における移動を規制する移動規制位置(図5参照)と、支持棒61の上端よりも低い退避位置(図6参照)との間で変位する。移動規制位置にした第1棒状部材65A~65Eと66A~66Eとの少なくとも一方と、第2棒状部材67A~67Jとに、ワーク11を接触させることにより、ワーク11がワーク支持ユニット22上に位置決めされるとともに、支持棒61等の位置等に基づいて原点決めを容易かつ正確に行うことができる。このため、高精度に溶断を行うことができる。また、溶断時においては退避位置にすることにより、火口ノズル25の移動を妨げないので、第1方向X、第2方向Y、第1方向X及び第2方向Yと直交する第3方向Zのいずれの方向でも溶断が円滑に行われる。なお図6に示す例では、退避位置においては、第1棒状部材65A~65E,66A~66E及び第2棒状部材67A~67Jは、第1貫通孔62a及び第2貫通孔62bから抜けた状態としている。しかし、支持棒61の上端よりも低い位置であれば火口ノズル25の移動を妨げないから退避位置はこの例に限られず、第1貫通孔62a及び第2貫通孔62bに挿入した状態であってもよい。
【0036】
第2棒状部材67A~67Jのうち端部の第2棒状部材67A、67Jと、第1棒状部材65A~65E,66A~66Eのうち第2棒状部材67A、67Jに最も近い第1棒状部材65A、66AとのX方向におけるピッチをP1とする。また、第1棒状部材65A~65Eの各ピッチ、第1棒状部材66A~66Eの各ピッチをP2とする。ピッチP1はピッチP2よりも小さくしている。これにより、小さなワーク11でも第1棒状部材65Aと第2棒状部材67Aとの両方、または第1棒状部材66Aと第2棒状部材67Jとの両方に確実に接触させて位置決めをすることができる。さらには、2つのワークの一方を第1棒状部材65Aと第2棒状部材67Aとの両方に接触させ、他方を第1棒状部材66Aと第2棒状部材67Jとの両方に接触させることにより、2つのワークを位置決めして溶断に供することができる。
【0037】
図7において、トレースピン21は、先細部材81と、筒状部材82と、付勢部材の一例としてのばね83などから構成されている。先細部材81は、先細の棒状に金属で形成されている。先細部材81は、ワーク(図1参照)に記された罫書をトレースするために、先端が接触される。
【0038】
筒状部材82は、先細部材81の先端が一端から突出するように、先細部材81を中空部に収容する。筒状部材82には、先細部材81の他に、ばね83、中間部材86A、86B、キャップ87が配されている。キャップ87は、筒状部材82の周面から突出したフランジ87aを有する。ばね83は、先細部材81を筒状部材82の上記一端側に付勢し、中間部材86Aはばね83と先細部材81の間に配されてばね83の付勢力を先細部材81に伝達し、中間部材86Bはばね83をその一端側から押圧する。キャップ87は、筒状部材82の他端にねじ止めされ、先細部材81、ばね83、中間部材86を筒状部材82において安定させる。筒状部材82は、火口25b(図2参照)がセットされる前の吹管25aに固定される。吹管25aの先端は雌ねじとされ、ナット51の雄ねじとはまり合う。筒状部材82は、先端側からナット51に挿入され、フランジ87aがナット51の雄ねじ側の端縁に当たるようになっている。このナット51が吹管25aに固定されることにより、トレースピン21は吹管25aに対して位置決めされた状態で固定される。そのため、トレースピン21は、吹管25aに固定されたときの筒状部材82の先端側端縁からナット51までの距離は、火口25bが吹管25aに固定されたときの開口25p(図2参照)からナット51までの距離に等しくなるように、サイズが設定されている。これにより、筒状部材82から突出して露呈した先細部材81の露呈部分の長さ分が、溶断中における火口ノズル25とワーク11との距離として確保される。その結果、溶断中において火口ノズル25のワーク11に対する接触が防止される。本例においては、筒状部材82から露呈する先細部材81の露呈部分の長さL1は10mm、筒状部材82の長さL2は67mm、フランジ87aの厚みL3は2mmとしている。
【0039】
先細部材81は、ばね83により、筒状部材82の一端側に付勢されているから、先細部材81がワーク11または他の部材にぶつかっても、ぶつかる前、すなわち当初の位置に戻る。当初の位置に戻ることにより、把持部44から先端までの距離が一定の距離に戻るので、トレースが確実に正確になされ、コントローラ14(図1参照)の記憶部に記憶される。このため、高精度な溶断がなされる。
【0040】
先細部材81の先端の径D1は、0.7mm以上1.0mm以下の範囲内であることが好ましい。径D1が0.7mm以上であることにより、0.7mmよりも小さい場合に比べて、罫書に近接した際の先細部材81の視認性が確実に確保される。また、罫書の線幅は1mm前後であり、罫書の線幅以下とすることにより、トレース時において罫書に対する位置合わせがよりしやすい。本例では、径D1を0.86mmとしている。
【符号の説明】
【0041】
10 ガス溶断ロボットシステム
11 ワーク
13 アーム
13a,13b,13c,・・・ 第1(先端)リンク,第2リンク,第3リンク,・・・
18 アームアタッチメント
21 ティーチング用トレースピン
22 ワーク支持ユニット
25 火口ノズル
25p 開口
31 第1連結部
32 第2連結部
44 把持部
61 支持棒
62 保持板
62a、62b 第1貫通孔、第2貫通孔
65A~65E、66A~66E 第1棒状部材
67A~67L 第2棒状部材
71、72 第1シフト機構、第2シフト機構
81 先細部材
82 筒状部材
83 付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7